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Chapter 151: 前菜にもならない

 その戦いを何も知らない者が目にしたら、こう評するだろう。

 光り輝く剣を携えた凛々しいHeroが、見るも悍ましいmonsterと戦っているのだと。


 投げつけられる中型犬程の大きさのchunk of meatを、次々にBisectionして『Light Speed Sword』のRickertは胡乱気に呟いた。

「こいつは本当に何者なんだ?」

 自分の一部を幾つもの腕で千切り取って投げつけるという奇妙なLegionの攻撃を、彼は防ぎ続けていた。

 ただ、その額には汗が浮かび、前髪が一筋張り付いている。


『面白いように斬られるな!』

『私が投げたのは斬られていないけど?』

Pluto、あの人も最初から当たらないのを態々斬らないと思うよ』

『……ノーコン』


 対するLegionは暢気におしゃべりしている。countlessの肉マネキンが球状に絡み合っている姿であるため、appearanceから心情が想像しにくい彼女達だったが、消耗している-sama子が無い事ぐらいはRickertにも分かった。

 実際、我が身を削るような攻撃を繰り返しているが、千切られた部分は数秒とかからず盛り上がって元通りに成る。そのためVitalityEnduranceも全く減っていない。


「くっ! 舐めるなぁ!」

 対してRickertは無傷だがEnduranceを徐々に削られていた。

 Holy Sword Nemesis Bellの切れ味と、それを振るうRickertの腕前は凄まじく、その剣は常人の目では剣筋を捕える事は出来ず、光が瞬いたようにしか見えない。


 だが、Legionが投げつけるchunk of meatは見た目よりもずっと重くて硬く、なのにblubberを含んでいるのか斬る度に刃に油が付く。そのため、Rickertが剣を振るう度にEnduranceが奪われていく。


 certainlyRickertmonsters相手にEndurance勝負をする事がどれだけ不利なのか分かっていた。だから、今まで何度か反撃にも出ている。

「【斬空】!」

 Nemesis BellHigh-Speedで振るい、斬撃を飛ばす【Sword Technique】のMartial ArtsActivate。斬撃は、肉を投げようとしていたLegionの腕を数本纏めて切断する。


『瞳-chan、あいつ何かしたの? Jackたち何ともないよ?』

Jack、あいつは『無駄な努力』をしたのよ』

 しかし、全ての腕の切断面から新たな腕が数秒と経たず伸びて来て、元通り。これまでRickertが行った反撃と、全く同じ結果だ。


「……Undeadでも無く、Nemesis Bellの斬撃で受けた傷が回復する以上Vampireや【Demon King Fragment】も関係無く、Life-Attribute Magicで作られた人造生命体でも無いとは、信じがたい」

 Legionがそのどれかで在れば、Nemesis Bellの力で驚異的な再生Abilityを封じる事が出来るのにと、悔しげに唸るRickert


『人をappearanceで判断するなんて、酷いわね。親に教えて貰わなかったの?』

 女の声でそう言われながら、Rickertは思考を切り替えていた。

「それは悪かった。しかしInstructorにはHuman性は人相に出ると教えられたものでな」

 そう軽口を返し、飽きずに投げつけられてくるchunk of meatを避けながら、Legionを改めて観察する。


(再生Abilityが高いmonstersには、それを封じる手段や弱点となる急所があるはずだ。それを見つけろ。このmonstersが無意識に庇っているのは……あのPlutoと呼ばれていた部分だ!)


「見切ったぞ! 【大斬空】!」

『みっ!?』

 Rickertが放った、【斬空】の更に上位のMartial Artschunk of meatBisectionし、Legionの中でもPlutoの人格が担当している人型の上半身を、臍に当たる部分から頭頂まで真っ二つにBisectionした。


『見……切ったって、何を?』

 そして真二つにBisectionされ左右に分かれたPlutoの人型は、あっさりと元通りにくっついた。


BAKANA!?」

 急所では無かったのかと、驚愕するRickert

 自分より剣の腕が立つ敵や、素早くて剣が当たらない敵、驚異的なDefense Powerを誇る敵、そもそも物理的な攻撃が効かない敵等、-sama々な敵を彼は目にしてきた。その度にtacticsを考えるか、Erwin達真の『Fifteen Evil-Breaking Swords』に助けられて生き残って来た。


 しかし、簡単に剣で切る事が出来てDamageも与えられるが、すぐに治ってしまう上に急所も存在しない敵は初めてだ。

 その上、今は他の『Fifteen Evil-Breaking Swords』もいない。Vandalieuから逃げようとしたRickertは、Legionとの攻防の間も動き続けていたため、既に元居た場所からは大分離れてしまっていた。


(このまま強引に逃げるか? 速さ自体は私の方が上だ。しかしmidairに浮遊しているこいつを引き離せるのか? 私にSleygarのような隠形の業があれば……scout職の訓練も受けておくべきだったか)

 こうなったら無謀な攻撃か、成功率が低そうな逃走かしかない。そんな思考がRickertの脳裏に浮かんだ。

 その時、何本ものknifeLegionthrust刺さった。


Duke閣下、今の内にお逃げください!」

「我らが時間を稼ぎます故!」

 Legionknifeを投擲したのは、Sleygarが周囲に配置していた『Hilt』memberだ。

 Rickertは知らなかったが、彼等は不測の事態が起きた場合Rickertの撤退を援護するよう前もって命じられていたのだ。


「お前達っ……許せ!」

 『Hilt』達の犠牲を無駄にはするまいと身を翻そうとしたRickertだったが、彼が走り出す前に地面に転がるLegionの、数え切れないほど大量のchunk of meatが不気味に震えだした。


『都合良く隠れているのも出て来たし、そろそろあたし等の出番だね、Izanami

『そうね……お前達、食い殺しておやり』

 LegionRickertに投擲していた自身の肉。それはただ投擲Weapon Equipmentの代わりでは無く、彼女達を構成する一人、Izanamiの力を使うための布石だった。


「GYAAAAA!」

 濁った咆哮を上げながら、chunk of meatskinの無いmuscle剥き出しの類人猿の-samaな姿のmonstersYomotsuikusaに変化する。

「おのれっ、『Hilt』達を誘き出すTrapだったのか!」

 鋭いfangsclawsを剥き出しにして襲い掛かって来るYomotsuikusaを次々にSlash捨てて、Rickertが悔しげに叫ぶ。


 YomotsuikusaRickertの腕ならただの雑魚だが、戦闘専門では無い『Hilt』達にとっては容易く倒せる敵では無い。一匹や二匹ならどうとでもなるが、Legionが今まで投げ、Rickertが切り落としたchunk of meat全てがYomotsuikusaに変化している。その数は百を超える。


「構わずお逃げください!」

 しかし、このままならそう叫ぶ『Hilt』達を犠牲にして、Rickertは結局逃走に成功するだろうと思われた。YomotsuikusaRickertの足を殆ど止められず、『Hilt』を瞬殺できる程強くない。

 『Origin』の軍人達を相手にした時とかなり展開が異なるが、Job systemが実装されているこのworldHumanbody partと戦闘に関するAbilityが、『Origin』と比べて高いからだ。


『いや、無理だね。燃えな!』

 だがBaba Yagaが叫んだ途端、『Hilt』Rickertの周囲のYomotsuikusaやその残骸が爆発炎上した。

「あああああああっ!?」 

 前触れも無くwhole bodyを高熱で炙られて、Rickertが絶叫を上げた。数多くのYomotsuikusaに包囲されていた『Hilt』達は断末魔のscreechを上げる事無く倒れ伏す。


 自身の腫瘍をYomotsushikomeYomotsuikusa等の戦闘生物に変化させるIzanamiの力と、有機物を激しく燃焼させる事が出来るBaba Yagaの力を合わせたコンボ技だ。

『上手く行ったね。まあ、あたし等もちょっと焦げたけど』

『最初から使っていたら、あのSwordsmanに逃げられそうだったからね。Dungeonmonstersと違って、対人戦は面倒だよ』

 表面の焼け焦げた肉を自分で削り落としながらそう言うBaba Yaga達だったが、Rickertがまだ立っているのを見て言葉を止める。


「あ゛ぁぁぁぁ! がぁ!」

 Rickertは隠し持っていたspace attributemagic item、見た目より大量の荷物が入るitem Backからpotionを取り出すと、その瓶を自分の頭にたたきつけて中身の液体を被った。

 かなり上Classpotionだったのだろう、whole bodyの酷い火傷が瞬く間に癒えていく。


potionか。そう言えば、そんな物もあったね』

Blood potion以上の効果とは驚いた!』

『ちょっと待ちなよ! あたしの炎で焼いて即死しないのは何でさ!?』

『鎧が【耐熱】とかのmagic itemだったのかな? それとも単にVitalityが多いのか……『Origin』と同じ調子で考えちゃダメだよ、Baba Yaga


 割れた瓶を投げ捨てたRickertは、荒い息を繰り返しながら何とか剣を構えた。

「貴-sama等、火が、弱点では無かったのか!?」

 Erwinが炎を纏わせた鞭を振るった時、Legionは必要以上に大きく避けた。それを見ていたRickertは、それでLegionの弱点が炎だと思っていた。だから、炎を使う事は無いだろうと。


 しかしLegionはあっさりと答えた。

『そうとも、弱点だ! だが、我々が弱点をそのままにしておく訳があるまい!』

『うん、【炎Resistance】とか【雷Resistanceskillを身につけるために、一日何度も焼いたり痺れたり、頑張ったよねぇ』

『大変だった。まあ、モルモットをしていた時の苦痛に比べれば大した事無かったが』

ValkyrieShadeGhost、態々彼に説明する必要はないんじゃないか?』

EnmaMEIDOの土産ってやつだよ』


 Rickertが見抜いた通り、whole bodyが肉剥き出しのLegion達は炎や雷の熱が弱点だった。

 だからLegion達は、その弱点を克服する事にした。このworldに存在するskillの力で。

「……しょ、正気の沙汰では無い。普通ならskillを獲得する前に死ぬぞ」

 ただ、幾らresistance skillが存在するこのworldでも、Legion達と同じ事を何の工夫もせずに行えば、高い確率で死ぬか取り返しがつかない重い障害を負う事に成る。そもそも、苦痛にMentalが耐えられない。


 それをLegion達は驚異的なVitalityTorture同然の人体実験に耐えきった経験をWeapon Equipmentに、ゴリ押しする事で可能としたのだ。


『それで、そんな私達を相手に貴方はどうするの? 大人しく殺されるのなら、苦しまない-samaに考慮するけれど?』

 Plutoに問われたRickertは、覚悟を決めざるを得ない状況に追い込まれた事を認めた。

(死力を尽くしてこの強敵を倒し、生き延びる!)

 まだbody partの所々に残っている火傷の痛みを意識の外に追いやり、今まで生死を共にしてきたNemesis Bellを上段に構える。


(【-Transcend Limits-】、【Transcend Limits – Magic Sword】。Heroic God Bellwoodよ、私に力を!)

 Familiar SpiritAdventしたRickertBodyに力が漲り、Holy Swordが輝く。それをLegion達は黙って見守っている。

(また何かのTrapか? いや、既に賽は投げられた!)


「我が奥義を受けろっ!」

 必殺の気合を込めて、Rickertが地を蹴る。激しい踏込によって、一瞬でLegionを間合いに捕えた。

「【Light Speed Sword】!」

 自身のsecondary nameと同じ、必殺のMartial Artsを正面から受けたLegionが、二つにBisectionされる。左右に別れるLegionの間からその向こうの風景が見えた時、Rickertは勝利を確信した。


『返すわ』

 だが、その一言が聞こえたと思った瞬間Rickertの視界がずれ……脳天から股間までBisectionされた彼は、二つに分かれて横たわった。


EreshkigalCounter勝ちね。流石だわ』

『褒めてくれるのは嬉しいけれど、どれくらいのDamageで死ぬか分からなかったからって、相手の必殺技を故意に受けるのはどうなの?』

 そう言いながら、二つに分かれたLegion達は切断面をFusionさせると元通り一つに戻る。

 彼女達は自身が受けた攻撃によって受けたDamageを相手にそのまま返す、EreshkigalCounterRickertを倒したのだ。


Vandalieuが私達なら勝てると言ったのだもの。こいつに私達が殺せるはずがないわ。……違ったら教えてくれるはずだし、ね』

 Plutoが仰ぎ見る方向には、小さな蟲のmonstersが球体……Vandalieuの【Demon King's Eyeballs】を抱えて飛んでいた。


『それじゃあ、こいつの死体と剣を持って戻りましょう』

『あのBack、壊れてないといいね』

 黒焦げの『Hilt』の死体を無視して、LegionRickertの死体と持ち物を回収し始めた。




 一方、その頃VandalieuErwinの戦いは白熱していた。その攻防の余波で周りの木々は砕かれるか、不気味に枯れて朽ちていき、既に風景が変わっている。


 Vandalieuから次々に出現した高RankUndeadVampireの姿を見て、こうなれば死中に活を見出す他ないと、despair的に不利な戦いに覚悟を決めたErwinだったが、かかって来たのはVandalieu一人だった。

 Erwinでも戦えば苦戦は免れられないだろうBorkusBellmondは、動こうとしなかったのだ。


 何故ならVandalieuが彼等を出したのは、ErwinMilesIrisを攻撃しないように彼等の護衛に成ってもらうためだったのだ。

「舐めやがって! そんなに手下が大事か!?」


 激高した-sama子で振るわれたOrichalcumの鞭を、Vandalieuは【Demon King's Carapace】と【Demon King's Blood】で壁を作って受け止める。

「……その答えが分りきっている質問、態々答えないといけませんか?」

 しかし、壁は鞭の一撃で大きく罅割れた。【Demon King's Carapace】は爆ぜたように割れ、凝固した【Demon King's Blood】に深い亀裂が走る。鋼鉄よりずっと硬い【Demon King Fragment】だが、相手がOrichalcumだと性能だけでは優位に立てない。


 Demon King Guduranisを倒したChampion達の武具がOrichalcum製だったのだから、それも当然だ。だが、そんな事は戦う前から分かっている。

 だから、magicで戦おうとVandalieuは考えた。前触れも無く【Out-of-body Experience】し、Spirit Formの頭部を分裂させる。


「【Death Bullet】」

『『『【Death Bullet】』』』

『『『【Black Flame槍】』』』

『『『【死氷撃】』』』

『『『【冥雷】』』』


 【Death-Attribute Magic】と【Dead Spirit Magic】をBarrageする。どれも直撃すればただでは済まない攻撃だったが、Erwinはそれに対して鞭を円形に振り回した。

「【円鞭Magic Shield】!」

 High-Speedで回転する鞭にぶつかった瞬間、Vandalieumagicは砕け散った。黒い炎も、死をもたらすcoldも、黒い雷も、全てだ。


「【閃蛇】」

 更にもう片方の鞭を振るう。鞭はまるで独自の意思を持つ蛇のように身をしならせ、側面からVandalieuSpirit Formの頭部を砕き、その奥のBodyの頭部を狙う。

「【Impact-Negating Barrier】」

 だがVandalieuが張ったBarrierによって、Erwinの鞭は運動energyAbsorptionされてそのまま絡め取られた。


「チィ、妙な真似を!」

 だがErwinMythril以上のOrichalcumの対魔性能と、自身の腕力で強引に【Impact-Negating Barrier】から鞭を引き戻す。


『手強いですね、陛下』

『もっと強い【Dead Spirit Magic】で攻撃する? Van -kunが前を消した時みたいに』

 戻ってきたPrincess LeviaOrbiaに、砕かれたCloneを再び作りながらVandalieuは答えた。

「防がれて終わりだと思います。あの時も言いましたが、あれは動かないを的にしたから出来た事です」


 小とはいえを一つ消した【Dead Spirit Magic】、【骸炎獄滅連弾】。広範囲への攻撃ではVandalieumagicでは最大のAttack Powerを誇る。しかしErwinのように一騎当千の超人相手では通用しない確率が高い。

 それどころか、隙を突かれて反撃される恐れがある。


「ふぅ……Bugitasよりも、下手をするとGubamonTerneciaよりずっと手強い」

『あのElf bastardが、そこまで!?』

 驚愕するKimberlyに「そこまでです」とnod


Manaとか特殊なskillはそこまでじゃない。だけど、単純に技量が凄く高い。しかも、言動はチンピラですけど頭の中身は冷静」

 今までVandalieuが相手にしてきた強敵は、その多くがEmotionalに大きな問題を抱えている者達だった。人格の問題では無く、追い詰められて錯乱し正気を失いかけている、若しくは失っていた。


 だからVandalieuの攻撃に簡単に動揺し、容易く隙が生まれた。

 しかしErwinは違う。多少は驚くが隙は作らない。無謀な攻撃はせず、冷静に戦いを続けている。

 Humanの力を見せてやると啖呵を切っただけの事は在る。


「今も地味に【Demon King's Scent glands】を使って無臭にした【Deadly Poison】や、【Incurable Disease】を風に乗せて流していますけど効かないし。対策もばっちりの-samaです。

 まあ、俺の方が有利なのは動きませんけど」


『では陛下、確実に勝てる方法で勝ちますか?』

「いえ、奴はまだ俺に勝つ事を諦めていないような気がするので、Mana切れを狙っての持久戦はしません。万一Iris達を狙われても嫌なので、Mikhail達も動かしません」

『……Van -kun、冷静に見えるけど実はかなり頭にbloodが上ってるでしょ』


「はい、俺は激怒しています」

 VandalieuErwinを殺す手段を考えながら、牽制の為の【Death Bullet】を放った。


 その【Death Bullet】を鞭で叩き落としながら、実はErwinは追い詰められつつあった。

(このガキのManaは際限が無いのか!? それにどんな脳みそしてやがる!? 【Demon King Fragment】を複数Activateさせながら連続で、しかも 同時magicを何種類も使うなんてHuman業じゃないぞ!? そもそもattribute magicを使える事自体が異常である事は無視してもだ!)

 それらの猛攻をErwinは凌ぎ、隙を見て反撃すら行っている。その技量は確かに高く、彼が超人Heroの領域に立っている事を証明していた。


 だが、Vandalieuが一向にpaceを落とす事無く戦闘を続けている事に内心では動揺していた。

 戦闘開始直後はVandalieuが無理に攻勢を仕掛けて来ているのだと予想し、これを凌ぎきれば勝機は必ず来ると考えていたErwinだが、Vandalieuの猛攻が全く収まらない。

 まるで砂漠の蜃気楼のように、近づいて来るはずの勝機が遠のいて行く。


(この俺が一撃も入れられねぇ……何とかこのガキの頭部とheartを、出来れば胴体丸ごと粉々に砕いて殺さなきゃならねぇってのに!)

 Sleygarに刎ねられたVandalieuの首は、今では傷跡すら残っていない。そのためErwinは彼を殺すにはBodyを再生不可能な程砕き、潰すしかないと考えていた。だと言うのに掠り傷一つ負わせる事が出来ない。


 それどころか、今のままでは確実に負ける。Vandalieuはその気になれば、何時でもIris達の守りに置いたBorkusMikhailErwinとの戦闘に参加させる事が出来るのだ。

 いくらErwinが強くても、自分自身に匹敵する力量の者達を一度に複数相手にしたら確実に負ける。


 Erwinが生き残るにはVandalieuを倒すだけではなく、彼の後ろにいるBorkus達を倒すか、それとも逃げ切らなければならない。

 死中に見出そうにも、活が全く見えてこない。


 二人の戦いは一見すると膠着しているように見えたが、殺し合いとしては最初からErwinが勝利を手にする可能性は殆ど無かった。


(その上こいつは今も俺を毒やdiseaseで殺そうとしている。俺のresistance skilllevelじゃ、magic itemの腕輪が無ければ今頃bloodを吐いて倒れていたぞ。クソ、どうする? リッキー坊やはもうどうにもならないとして……)

 Legionに追われたRickertが逃げきれたかどうかは、Erwinにはまだ分からない。激しい爆発音と衝撃波が此処まで届いたので、maybe駄目だろうとは思っていたが。


 なら、『Fifteen Evil-Breaking Swords』として出来る事は何か? 生き残る事ではない。情報を持ち帰る事は、Erwinの役割では無い。

(死力を尽くして、こいつが隠している力を少しでも明らかにする事だ!)


「【Familiar Spirit Advent】!」

 そう決断したErwinの行動は早かった。【Familiar Spirit AdventskillActivateし、我が身にFamiliar Spiritを――

「ファイエル」

 ――降ろそうとしたら、空から伸びて来た光の柱、神のFamiliar SpiritVandalieuの【Demon King's Blood】の銃身と【Demon King's Horn】の弾丸による、【Artillery Technique】によって砕かれた。


「んー、ただのFamiliar Spiritだと薄味ですね。物足りない」

「み、Familiar Spiritを撃ちやがっただと!? 神を畏れないのか、お前は!?」

「恐れていますよ。恐れているから、備えています」

 戦いが始まってから初めて動揺を露わにするErwinに、一旦途切れていた【Death Bullet】での攻撃を再開するVandalieu


 Erwinは「そう言う事じゃない!」とVandalieuに突っ込む代わり、再び叫んだ。

「【Familiar Spirit Advent】!」

idiotが! ボス、こいつも結局はcrazyちまったようだぜ!』

 再び空から伸びる光の柱。そしてやはりVandalieuの【Artillery Technique】で砕かれた。嘲笑うKimberlyの声を無視して、ErwinOrichalcumの鞭を手放した。


「尊い犠牲に感謝するぜ、Familiar Spiritよ!」

 そして背中に隠していた鞭の柄を取り出した。なんとErwinは、神のFamiliar SpiritVandalieuに隙を作るための捨て石にしたのだ。

「あ、ちょっと拙い」

 【Danger Sense: Death】の反応に気がついたVandalieuが攻撃を再開するが、間に合わなかった。


「『Demon KingEquipmentantenna』、Activate!」

 鞭の柄から黒く長い鞭が不気味な音を立てて伸びる。

「【輝炎鞭】! 【旋風鞭】!」

 その鞭に付与magicを施してAttack Powerを上げ、Martial ArtsActivateしてVandalieuを攻撃する。高熱を発しながら光り輝く黒い鞭は、Vandalieuが張っている【Impact-Negating Barrier】を易々と切り裂き、彼の身に迫る。


「【Demon King's Jointed legs】、【Demon King's Carapace】、【Demon King's exoskeleton】、【岩盾】、【岩体】」

 Vandalieuはぞろりと背中から四対八本の蜘蛛の足を思わせるArthropod Legsを生やし、Arthropod Legsと自分のbody partを強固なexoskeletoncarapacex2に覆い、更に【Shield Technique】と【Armor Technique】のMartial ArtsActivateさせる。

 服の下で既に展開している液体金属の鎧も合わさって、そのDefense Powerは城塞を超える。


 だがErwinの鞭は【Arthropod Legs】と【carapace】を砕いて叩きSlashVandalieuの胴体を覆うexoskeletonに食い込んだ。

『陛下っ!?』

Vandalieu -samaっ」

 Princess LeviaEleonorascreechを上げ、Erwinが口を釣り上げた。


「……戦闘中に相手の攻撃でDamageを受けたのは、久しぶりですね」

 しかし、致命傷には程遠かった。平然と砕けたArthropod Legscarapaceを再び生やすVandalieu。因みに、Sleygarに首を刎ねられたのは不意打ちだったのでノーカンだ。

 しかしErwinの目に失望は無かった。


「『Demon KingEquipment』を使ってやっと掠り傷か、流石monster。クク、だが次はその人形みたいな面を苦痛に歪ませてやるぜ」

 Erwinの奥の手、Demon KingEquipment。それは【Demon King Fragment】のsealedを解き悪用する者達と戦うHuman達が作り出した、【Demon King Fragment】のsealedそのものを使用したArtifactだ。


 何時、誰が作り上げたのかは不明だがsealedされた【Demon King Fragment】を、sealedを維持したまま武具として人が利用できるようにした物が、Demon KingEquipmentだ。

 歴史に登場した当初は【Demon King Fragment】を取り込んだ者達や、強力なmonsters、邪悪なGods相手にDemon KingEquipmentは有効なWeapon Equipmentとして、数多のHeroの手に渡り活躍してきた。


 だがある時、Demon KingEquipmentが破壊され装備していたHeroEquipmentの【Demon King Fragment】にInfestされrunawayしてしまった。それをきっかけに『Demon KingEquipment』はHeroWeapon Equipmentでは無く危険なCurseの武具として、Royal Palacetempleの奥深くにsealedされた。

 だがその有用性に目を止めたMashkzarの手によって、幾つかのEquipmentAmid Empireの手で回収された。

 その一つがErwinの持つ鞭だ。


 そうした経緯をVandalieuは知らなかったが、Demon KingEquipmentがどれ程危険なWeapon Equipmentなのか、見ただけで察する事が出来た。

「【Demon King Fragment】をbody partInfestさせずにWeapon Equipmentとして利用する。だから使っても正気を失わないし、attribute magicも使える。maybeManaの消費量も少なくて済むのでしょう。

 でも、代わりにfragmentの力の一部しか活用できないみたいですね」


 Erwinが鞭として使っているDemon KingEquipmentfragmentは、antenna。昆虫や海老等の甲殻類に生えている器官だ。伊勢海老の-samaWeapon Equipmentとしても活用する生物もいるが、本来は感覚器官である。

 しかし Erwin-sama子からするとantennaを鞭としてしか活用できていないようだ。

 そう分析を告げると、Erwinは「その通りだ」と答えた。


「だが、Weapon Equipmentとして使えれば十分だ! 【空裂鞭】!」

 Erwinが振るう『Demon KingEquipment』が、空を裂いて迫る。Vandalieuはそれを再び【Demon King Fragment】で身を守って、軽傷に抑える。

 同じ【Demon King Fragment】、それも【carapace】や【exoskeleton】等明らかに防御に向いた物で防ごうとしているのに、【antenna】の鞭を防ぎきれない。


 今回は【Surpass Limits: Fragmentsskillも使ってみたのだが、傷が多少小さくなる程度の効果しかなかった。

「やはり物を言うのはfragmentの数ではなく地力、腕ですか」

「分かっているじゃねぇか!」

 Erwinは【Whip Technique】のSuperior Skill、【Killing Snake Whip Technique】に目覚めている腕利きだった。もし彼がadventurerだったら、SClassへの昇格も夢では無かっただろう。


 ただし、驚いているのは実は彼も同じだったが。

(この俺がDemon KingEquipmentまで使って掠り傷しか負わせられないだと? 数十年前に始末した奴は、fragmentごと叩き潰してやったのに……このガキ、fragment一つ一つの力をどれ程引き出しやがるんだ!? このmonsterが!)


 しかしErwinがその驚愕を表に出さないのでVandalieu達はまだ彼には余裕があるのだと判断してしまった。

Vandalieu -kun、【Magic Absorption Barrier】は!? 付与magicだけでも解けるんじゃないの!?』

「一応張ってみましたけど、ダメでした」

 どうやらBarrierを破壊する【Demon King Fragment】特性の方が強く出るらしく、あらゆるManaAbsorptionするはずの【Magic Absorption Barrier】でもEquipmentに掛けられた【輝熱鞭】の付与magicを解除する前に、Barrierが破壊されてしまうようだ。


『じゃあ、Gubamonをやっつけた時みたいに!』

「はい、【死氷烈刃】」

 Orbiaを使った氷の【Dead Spirit Magic】で創り出した氷の刃を放つと、やはりErwinEquipmentSingle Flashして刃を叩き割った。だがEquipmentに付与された【輝熱鞭】のmagicが解けた。


「【骸炎獄滅弾】」

 次いで放ったPrincess Leviaを使った炎の【Dead Spirit Magic】で、Gubamonの【Demon King's Carapace】を割った強烈な温度差による熱膨張と同じ事をしてEquipmentを破壊しようと試みた。


「俺が何故『Five-headed Snake』と呼ばれているか教えてやる! 【風氷鞭】!」

 しかしErwinは付与magicで氷と風のattributeEquipmentに付与し、黒い炎のSkeletonを砕き散らしてしまった。

 Erwinsecondary nameの由来は、鞭を蛇の如く巧みに振るう事以外にも、土水火風と光の五つのattribute magicの素質を持ち、特に付与magicに特化して習得している事にあった。


 Erwinが鞭を一振り持つと五匹の蛇を操っているようだと例えて、Mashkzarが命名したのだった。


「【Death Bullet】、【冥Roaring Lightning】、【Screw Strike】、【轟拳】」

「牽制のつもりか!? 【円鞭Magic Shield】!」

 【Death-Attribute Magic】や【Dead Spirit Magic】、そして【Demon King's Horn】や伸ばした【Arthropod Legs】でActivateさせた【Throwing Technique】や【Unarmed Fighting Technique】のMartial Artsは、容易くErwinの鞭に弾かれた。


『おい、坊主っ! そろそろ出番か!?』

『陛下く~ん、無理は良くないよ~!』

 背後でIris達を守っているBorkusや、Borkusと同じpartyだった元AClass adventurerGiant race Zombie、『Saintess of HealingJeena達の声がかけられる。


 Demon King Fragment製武具を装備した彼等が戦線に加われば、Erwinも一溜りも無い。

「そうだ、来てみろ! 汚らわしいUndead共が!」

 それはErwin本人も分かっているが、彼自身は既に生きて帰る事を諦めている。Vandalieuを道連れにというのも、これまでの攻防を考えれば望みが薄い。

 だがVandalieuでも簡単には作れないだろう上位のUndeadを一体でも倒しておければ、めっけものだ。


 【Familiar Spirit Advent】を除いても、まだEnduranceの消費が激しい【-Transcend Limits-skillや、body partへの負担が大きい為に使っていない数種類のMartial Arts等の奥の手がある。それを駆使すれば、一匹ぐらい道連れに出来るとErwinは踏んでいた。

「いえ、もうちょっとやってみます」

 しかしVandalieuErwinのそんな目算を見抜いた訳ではないが、Borkus達の救援を断った。


「何だ? そんなに俺を自分の手で殺したいか!?」

 背中から生えた【Arthropod Legs】が八本同時に繰り出したMartial Artsを避け、鞭で【Arthropod Legs】を纏めて締め上げ、そのまま砕き潰してErwinが叫ぶ。


「それも否定しませんけどね」

 しかし Vandalieuは激怒しつつも、奇妙な冷静さを保っていた。

Demon KingEquipmentは、それ一つではないのでしょう?」

 目先の勝利を拾うのなら簡単だが、敵はErwinだけでは無い。Amid Empireだ。

 Empireには、他にも【Demon KingEquipment】があるに違いない。Equipmentから素材を取った、Demon King Fragment製の武具も幾つかあるかもしれない。

 そしてErwin並の使い手も、後何人抱えているのかも分からない。


 なのに、Erwin一人に苦戦するようではEmpireとの戦いで勝利が覚束ないではないか。自分もEmperorに成るのに。

Emperorに成る身でありながら前線で戦うのですから、絶対に死なずに勝利できるようにならなければ無責任と言うものです」


Emperorに成るだと? 不敬が過ぎるぜっ! まさか、追い詰められたら真の力に目覚めるとか、そんな夢を見ているんじゃないだろうな!?」

「打つ手なら、もう考えついたものを実行中です」

 そう言ってVandalieuが指差すのは、Erwinが振るうDemon KingEquipmentだ。その表面には付与された風とcoldで凍りついた【Arthropod Legs】の不気味な体液が――。


「【Death Flame Prison】」

 次の瞬間、Demon KingEquipmentとそれを握るErwinは激しい爆炎に飲み込まれた。

『ええっ? 【Dead Spirit Magic】!? だけどPrincess -chanはあそこに居るのに!?』

「いえ、新しいDeath-Attribute Magic……【Hell King Magic】です」

 爆音に負けずに届いたJeenaの声に、Vandalieuは答えた。


 【Demon King Fragment】にBarrierの類が効かないのは既に分かっていた。しかし Gubamonの【carapace】には普通に【Dead Spirit Magic】が効いていた。だからfragmentを利用するDemon KingEquipmentも、magic全般をNullificationにする訳では無いとconjectureした。

そこで、Equipmentの対魔性能とErwinの技量を上回るmagicで攻撃すれば、今までのように弾かれないと考えたのだ。


Baba Yagaの発火の真似なのですけどね。燃料は、さっきあいつが潰した【Arthropod Legs】の中に詰めておいた【Demon King's Blubber】です」

 Vandalieuの視線の先では、高熱の炎が燃え盛っていた。既に周囲はVandalieumagicErwinの鞭の余波で木々や岩が砕け、森では無くなっている。そうでなければ火事ぐらいには成ったかもしれない。


「【円鞭大Magic Shield】! 【硬氷鎧】!」

 だが炎を鞭で散らし、付与magicで作り出した氷の鎧を纏ったErwinが再び姿を現し、空に成ったpotionの瓶を投げ捨てる。

「クソ……何処までも底が知れない奴……!」

 ただ氷の鎧はすぐに崩れ落ち、originally彼が着ていた皮鎧やマントもボロボロで、治りきらなかった火傷も幾つか残っている。


 再び【Death Flame Prison】の炎で包まれたら、立っていられないかも知れない。


「だが耐えきった! もう同じ手はくわん!」

 そう啖呵を切るErwinを、Vandalieuは指差して言った。

「じゃあ、違う手です」

 指先に、【Death Bullet】を集中させる。


 今までの【Death Bullet】はあっさり砕かれてきた。ならもっとManaを、Killing Intentを集中して撃てばどうだろうか?

「【Death Cannon】」

 黒いlaserのようなものが、Erwinに向かって放たれた。


 今までの【Death Bullet】を上回る速さに、慌ててEquipmentを振るうErwin

BAKANA!?」

 だが、【Death Cannon】に叩きつけた途端、Demon KingEquipmentは【Death Cannon】に触れた場所から土塊のように崩れた。

 動揺したために体勢を大きく崩したが、何とか回避するErwin。【Death Cannon】は彼のずっと後ろに生えていた木に命中し、その木もDemon KingEquipmentと同じように崩れ散った。


Demon KingEquipmentを……Orichalcum製のArtifactでは無く、magicだけで破壊しただと!?」

「これで俺一人でもお前を殺せそうですね」

 信じられないと叫ぶErwinは、淡々と事実を述べるVandalieuの言葉を聞いて、はっとした。


「では、底も知れたのでサクサク行きますね。【Demon King's Blood】、【Demon King's Jaws】、【Demon King's EyeballsActivate

 Vandalieuが背中から黒いbloodを大量に出したかと思うと、赤黒いGiantな蛇と成ってゾロリと生えたfangsを剥き出しにする。


 この世のhorrordespairを体現したような姿に、Erwinは堪らず叫んでいた。

「じゃ、『Fifteen Evil-Breaking Swords』を、この『Five-headed Snake』のErwin -samaを舐めるんじゃねぇ!」

 威勢よく叫び、Manaを注いでEquipmentから再び【Demon King's Antenna】を生やすが、彼の胸中に広がるのは怒りでは無く、horror。叫びは、それを誤魔化すための虚勢だった。

 だがそうでもしなければ喋る事すらできなくなるのではないかと思ったのだ。


 久しく覚えていなかった絶対的なdespair。それがErwinを包んでいた。

(こいつの底は何処に在る!? 本当に俺の戦いに、敗北に、死に意味はあるのか!?)

 先程までのErwinは敗北とその先に在る死を覚悟しつつも、despairはしていなかった。自分の死の先に在る、Amid Empireの勝利を信じていたからだ。その勝利に貢献できることに、愉悦と陶酔すら覚えていたからだ。


 だが本当にこんなmonsterMonstrosity、得体の知れない異形にEmpireは勝つ事が出来るのか?


 それに自分がした事に意味があるのか? この異形のmonsterは自分との殺し合いの間に、新しいmagicを二つも編み出し、Demon KingEquipmentに対抗する術を手に入れてしまった。命と引き換えに力を探るどころか、奴が力を付ける手助けをしてしまっただけでは無いのか!?

 今も奴は俺を人形みたいな面と爪で――。


「うおぉっ!?」

 何時の間にかVandalieuに接近を許していたErwinは、barelyclawsの一撃を避けた。

「……【Blind Spot】。Ghostの真似は難しいですね」

 存在感を消すGhostの力を真似た【Hell King Magic】の精度は、original程では無かった。だが、見えているはずの攻撃に気がつくのを遅らせるこのmagicは、接近戦では有用だ。


 ErwinVandalieubody part Ability、特にAgilityさでは本来圧倒的な差がある。それをずっと縮める事が出来るのだから。


「よ、寄るなっ! 近づくな!」

 horrorに耐えきれず温存していた【-Transcend Limits-skillActivateさせ、Vandalieuの【Blind Spot】に対抗しようとするErwin

 決して見逃すまいと、Vandalieuを必死に睨みつける。


「睨み合いなら、きっと俺の勝ちですよ」

 Vandalieuは閉じていた額の瞼を開き、Activateさせた【Demon King's Eyeballs】を露わにした。虚ろな第三の眼差しが、Erwinを捕える。


「【Demon King's Luminescent organs】、Activate

 その光の無い瞳に、内側から青白い光が灯る。eyeballをレンズ代わりにして、【Demon King's Luminescent organs】の輝きを収斂。

「本当に、幾つfragmentを――」

「ファイエル」

 顔を歪めるErwinbody partを、【Demon King's Eyeballs】から放たれた青白いlaserが貫いた。


「が、ガアアアア!?」

 抉り取られるように肩を貫かれ、Demon KingEquipmentを掴んだままの腕が地面に落ちる。それを見てVandalieuは「収斂がいまいち」とSelf評価を下した。


 絶叫を上げるErwinは必死に落したDemon KingEquipmentに手を伸ばすが、そこに【Demon King's Jaws】が襲い掛かった。

 【Blind Spot】のmagicで反応が遅れたErwinは、fangsに引っかけられてbloodと肉片をばら撒きながら木の葉のように宙を舞う。


(畜生っ、犬死か! この俺が! だが、渡-san!)

 宙を舞うErwinは、自らの死を目前にして秘密部隊らしい行動を取ろうとした。

 自決である。


 自ら死ぬ事でこれ以上のhorrorと苦痛から逃げる事が出来、自分のExperience PointVandalieuが得る事を妨害する事も出来る。奥歯に仕込んだ特殊な毒を使えば、死体も溶け崩れる。

 Erwinが出来るせめてもの復讐だ。幸いと言って良いか微妙だが、毒・Disease Nullification化の腕輪も、腕ごと千切れ飛んでいる。


(精々悔しがるがいいっ!)

 地面に激突した瞬間、Erwinは毒を仕込んだ奥歯を噛み砕いた。


 だが、意識が途切れない!


「なん……だ? 何故、俺が死ねない!?」

 横たわったまま大分小さくなったErwinが叫ぶと、Vandalieuの声が聞こえた。

「【Disinfect】のmagicをかけました。その-sama子だと、suicideするための仕掛けがあったみたいですね」

 Vandalieuが先ほど【Demon King's Jaws】でErwinに攻撃した際に、念のために使用したmagic。それによって、彼が奥歯に仕込んだ毒の毒性は消えていた。


 suicideすら出来ない事に気がついてはっきりとdespairの表情を浮かべるErwinVandalieuは彼の髪を掴むと、そのまま持ち上げた。

Bellmond……前菜です。切り分けて」


「畏まりました。

 お客-sama、ご愁傷-samaです。どうやらお客-samaの言う『人の力』とやらは、旦那-samaにとっては前菜にすらならなかったようです」


 Erwinの視界で優雅に一礼する銀髪の女Vampireの背で、長いtailが揺れていた。

 次の瞬間、視界がずれたかと思ったら何もわからなくなった。




《【Rapid Regeneration】、【Hell King Magic】、【Enhanced Body Part (Hair, Claws, Tongue, Fangs)】、【Spirit Form】、【Unarmed Fighting Technique】、【High-speed Thought Processing】、【Dead Spirit Magic】、【Artillery Technique】、【Armor Technique】、【Shield Technique】、【Surpass Limits: Fragments】、【Grotesque Mind】、【Demon King Fusionskilllevelが上がりました!》

《【-Surpass Limits-skillが【-Transcend Limits-skillAwakeningしました!》


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