Boundary Mountain Range内部のGodsとの謁見で手に入れた情報により、Vandalieuは念願だった母Darciaのrevivalの目途が立った。
まだ具体的にどんな方法でDarciaをrevivalさせる事が出来るのかまでは、分からない。分からないが、態々『Magic God of Time and Arts』Ricklentや、『God of Space and Creation』ZuruwarnがOracleで教えてくれた情報だ。信用度は高い。
それにlegendのChampionの遺産なのだから、確実だろう。
『ああっ、ありがとう。Vandalieuっ、』
それを知ったDarciaの喜びも大きかった。これまで彼女はVandalieuのDeath-Attribute Magicの【Visualization】や、彼とのfive sensesの共有などにより、通常の霊とは比べられないほど良いconditionだった。だから生き返りたいという強い衝動は無かった。
だが、いざ本当に生き返れると色々と思うところがあるようだ。
『これでVandalieuにご飯を作ったり、服を繕ったり出来るのね!』
やはり母親としては自分の手で息子の世話をしたかったようだ。嬉しそうにそう言うDarciaを、感動の眼差しで見上げるVandalieu。
「kaa-san……」
『だから生き返ったらkaa-sanにCookingとSewingを教えてね。どちらもVandalieuの方が上手だから』
「うん、任せてkaa-san」
他にもdeath attributeのManaによって霊の劣化はほぼ停止しているが、Memoryが不自然に途切れる事があるのに不安を覚えない訳では無かった。
何よりも生き返る事で生者として息子と同じ時間を過ごせる。
そして自分が生き返ればこの先、Vandalieuが無茶な復讐を実行しようとして傷つく事や嘆く事が無くなるかもしれない。それにこれからは自分も力に成れる。
SamやRita、Salire、Pauvina達からもDarciaのrevivalが可能になるという大newsは大いに喜ばれ、今Talosheimはちょっとしたお祭り騒ぎだ。
しかし、Sauron領がきな臭いままなので本当にお祭りを開催する訳にはいかない。
Goblin通信機で連絡を取り合い、Cuoco RagdewというEisen(から作られるsyrup)のfanであるBaronの亡命については、直接出向いて面接するべきだろう。
ついでに、Noble Orc肉を差し入れて情報交換がてら「皆」で食事会でも催そう。
「……何があった?」
その準備を終えて意気揚々と、Legionと共に【Teleportation】したVandalieuが見たのは、傷つき倒れた『Sauron Liberation Front』のmemberや、死相が顔に浮かんでいるIrisだった。
愕然として思わずそう呟くが、すぐに聞くまでも無い事だと判断して、magicを使用する。
「お前がVandalieuか。想像していたよりも小さいな。横のchunk of meatはUndead、か? 何にせよ【Teleportation】とは驚いた。Space-Attribute Magicまで使えるとは」
(何人か死亡している。けど、幸いまだ数分しか経っていないようだし、body partの損傷も修復できない程じゃない)
Bodyから離れたばかりの霊をdeath attributeのmagicで保護し、body partの方の修復と心lung蘇生を行う。細胞、特に脳細胞が死ぬのを遅らせて、heartとlungを【Spirit Form】の手で動かす。
『手伝うわ。Berserk、出番よ』
『グルルゥ!』
Legionの表面に、肉色の熊が現れて倒れたまま動かない者達の近くに、自らを構成するchunk of meatを投げつける。Legionから分離したBerserkのchunk of meatは更に分裂を繰り返しながら不気味に蠢くと、それぞれが負傷者たちに這いより纏わりついてInfestしていく。
「ほう、早速役立たずの死体を使ってUndead作りか? だが――」
「ブブブ、Erwin、違うわ。確かにそう見えるかもしれないけど、どうやら治療するつもりみたいよ」
心lung蘇生と同時に、boneや内臓、nerve等の損傷を生命活動が維持できる程度に修復。それが終わったbody partに、持ち主の霊を入れて、蘇生は完了。
Berserkが蘇生した者にも肉を投げてInfestし、それを包帯や添え木の代わりにして応急処置をしながら強制的に避難させる。
「ボス、そいつ等は――」
「分かっています。良く持ち堪えてくれました、Miles」
背後からMilesの声がかけられるが、Vandalieuは彼を労いつつ、時間が無いので治療を続ける。
「いや、そうじゃなくてそいつ等は『邪砕――」
「お野菜?」
「……ごめんなさい、あとにするわね」
どうやら、今のVandalieuには細かい話を聞いている余裕は無いらしいと、Milesが口を閉じた。
「おい、俺達を何時まで無視するつもりだ? 俺は『Fifteen Evil-Breaking Swords』の五剣、『Five-headed Snake』のErwin。態々お前みたいなガキに声をかけるために――」
「Iris、あなたの傷が治りません。Blood potionは?」
【Flight】でmidairに浮いているVandalieuに、じっと見られたまま放置されているErwinの額に青筋が浮かぶが、やはり彼は取り合わない。
Vandalieuの虚ろな瞳に映るErwinの顔が引きつる。
「Vandalieu -dono、私の事は……構わずっ……」
『陛下……Irisは、その男の持つHoly Sword……Artifactで、VampireやDemon King Fragment由来の力や、Light Attributeや生命attributeでは、癒えない傷をつけられたのです』
Irisの罅割れた剣に宿る彼女の父、Georgeの霊が深刻な事態を告げる。
IrisはHoly Sword Nemesis Bellによって深く傷つけられたため、Spirit Formを伸ばして一体化しても、Half-VampireであるVandalieuの【Rapid Regeneration】skillの効果はほとんど現れない。
Curseの類かと考え、解呪しようとするがそれも出来なかった。どうやらIce Ageの氷とは違い、Curseでは無いようだ。
Curseとは異なるLight Attributeの上位、若しくは亜種のSacred attributeとでも評するべき力がHoly Swordに宿っているらしい。厄介な事だ。
そのため、Vandalieuは【Death Delay】のmagicをIrisにかけた。傷を癒すのではなく、死亡するまでの時間を先延ばしにするだけのmagicだが、これはHoly Swordの力に阻害される事無く効果を上げた。
黒い霧のように見えるManaに包まれるIrisだが、顔色は白いままだ。瀕死のconditionをただ維持しているだけなのだから当然だが。
「Iris、残念ですが俺でもその傷を治せません。maybe、Jeenaでも無理です。だからあとでUndeadになるか、Vampire以外のVida's New Racesに成るか選んでください」
「……分かりました。『Princess Knight』は、他の者に……」
「分かるんじゃねぇよ。その小娘の首は貰うって言ってるだろうが」
Erwinが苛立ちを紛らわすために振った鞭が空を裂く音を響かせ、Resistanceのhideoutだった瓦礫が砕ける。
そしてやっと注目が自分達に向いた事を確認して、『Insect Army』のBebeckettがErwinに代わって交渉に入る。
「そろそろいいわね? ブブブ、私達はAmid Empireの『Fifteen Evil-Breaking Swords』。DhampirのVandalieu、Emperor陛下がお前に興味をお持ちだよ。
EmpireにLoyaltyを誓い、その力でEmpireの為に尽くすなら命は保証する。お前の手下もね。場合によっては、Boundary Mountain Rangeの向こうの領土も黙認してやるし、Empire領内のGhoulも連れて行って構わない」
Bebeckettが述べた条件はVida's New Races、特にVampireとDhampirを激しく蔑視し迫害するAmid EmpireのEmperorが出したものとしては、破格の条件と言えるだろう。
少なくともMashkzar以外の歴代EmperorならVandalieuに交渉を持ちかけようとは考えない。
しかし、同時にMashkzarは交渉が決裂する可能性が高いと考えていた。今までの調査で明らかに成ったVandalieuの行動から、彼に交渉が通じるだけの正気が残っているのか疑問があったからだ。
もし手に入れば、その力は有用極まりない。だが野放しにするには危険すぎる。既に、Amid Empireを揺るがしかねない存在と化している。
だから、成功率は三割以下だろうと考えつつも交渉をVandalieuに持ち掛け、それを彼が蹴った場合確実に抹殺できるだろう戦力を派遣したのだ。
(賢く長いものに巻かれて生き延びるか、それとも井の中の暴-kunとして潰されるか。どっちを選ぶ?)
十五剣、『Insect Army』のBebeckett。countlessの蟲を使役する【Bug Tamer】で在る彼女は、優秀なSpyだが、それ以上に数の暴力に特化した存在だ。
「言い忘れたけれど、その『Liberating Princess Knight』と後ろで呆けたままの裏切り者は駄目よ。私達が来た表向きのmissionを果たした証明の為に二人の首が必要だから。Princess Knightの方はどうしてもって言うなら、他のそれらしい女の首を代わりに貰えれば構わないけど」
countlessの蟲を体中に仕込んでいるBebeckettは、例えるなら数え切れない程大量の兵を抱えたGeneralだ。その蟲を使い、今まで幾つものmonstersのrunawayを殲滅してきた。
その力でVandalieuが支配する、countlessのUndeadを殲滅する事を期待されて彼女はここに派遣されている。
(尤も、今は妙なchunk of meatだけのようだけれど、私に油断はない)
「さあ、答えを聞かせてもらいましょうか?」
「煩い」
一方、VandalieuはBebeckettの言葉を聞いてはいたが検討はしていなかった。
Mashkzarが出した彼等にとって破格の条件は、Vandalieuにとってどんなゴミよりも価値の無いものだ。
何より今のVandalieuは怒りとSelf嫌悪を抑えるので忙しい。自分がもっと真剣に考え、備えていれば……この事態を防げただろうにと。
「……正直に言えば、俺はSauron領に何の思い入れも有りません。Iris達を援助しているのも、将来Orbaum Elective Kingdomと繋がりを持てればという、打算ありきでした。IrisやHaj達のFirst印象も、そんな良くなかったですし」
「だったら、我がEmpireがElective Kingdomの代わりに――」
「だから、殺す」
怒りとKilling Intentを込めて、Vandalieuは両手合わせて十本の指で【Death Bullet】を放ち、Bebeckett達を狙う。
付き合い始めた理由が打算ありきで、First印象も良くない。けど何度も同じ釜の飯を食べ、交流し、同じ時間を過ごしてきた。ボスと呼ばれて慕われ、curryを美味しそうに食べてくれた。
そんなIrisやHaj達を傷つけた連中にKilling Intentを向ける事に、Vandalieuは微塵の躊躇いも覚えなかった。
「だから言っただろう! 交渉は失敗すると!」
「元から成功するとは思っちゃいない! 偉そうにするんじゃねえ!」
黒い握りこぶし大の【Death Bullet】を、『Fifteen Evil-Breaking Swords』の面々はそれぞれ回避し、Holy Swordや鞭で弾き、砕く。
「そう、残念ね。なら死にかけのResistanceと一緒に、私の蟲の餌にお成りなさい!」
Bebeckettのローブの袖や裾が広がり、そこから低いfeather音を響かせて黒いcountlessのshadowが飛び出して来る。彼女が操る蟲だ。
一匹一匹は大きくても掌を超える事は無い程度の、monstersとしては小型な蟲ばかり。Rankも殆どの蟲がCemetery Beeよりも低い。
特殊な毒を持つ蠅や、magicとしか思えない不可思議な攻撃が可能な蛾、鋼鉄も溶かす酸を吐く甲虫等、凶悪な特徴を持つ多種多-samaの蟲。
経験豊かなadventurerや極めて強力なmonstersなら一種類、いや数種類まで対応できるかもしれない。しかし、数十種類の蟲が多種多-samaに群れているため、その特徴に対応しきれるadventurerは存在しないだろう。
殺到する蟲に為す術も無く、【Death Bullet】を撃つ事も出来なくなったらしいVandalieuも同-samaだと確信して、Bebeckettは奇妙な高笑いを上げた。
「ブブブブブ! あなた程度の傑物は今まで何人もいたのよ! でもねっ、大国と言う強大な力の前には屈するか潰されるかのどちらかしかない! 恨むなら自分の愚かさを――」
countlessの蟲に覆われて見えなくなったVandalieuに、「終わったな」とRickertは息を吐いた。予想通り交渉は失敗したが、結局勝つのは『Fifteen Evil-Breaking Swords』、そしてAmid Empireだと。
「ひやあああっ!? 待てっ、待てぇ!」
だが、Bebeckettの奇妙だが勝利に高揚した口調が、一転して驚愕と危機感に満ちたscreechに変わった瞬間、そんな諦観混じりの安堵は吹き飛んだ。
「Bebeckett!?」
驚いて名を呼ぶRickertに構う-sama子も無いのか、Bebeckettは身を捩りながらscreechを上げる。
「待って! 待ちなさいっ、行くな! 私から離れるなぁ! 離れないでおくれぇぇ!」
叫ぶ間もBebeckettからはcountlessの蟲が飛び立ち、Vandalieuに向かっていく。はっと、Erwinが目を見開いた。
「あのガキ、蟲に食われていない!?」
Vandalieuに纏わりついたBebeckettの蟲は、彼の肌に強力なchinで噛みつく事も、"poisonous needle"をthrust刺す事もしていなかった。ただただ彼の肌や髪に張り付き……音も無く飲み込まれて行く。
そして全ての蟲を体内に装備したVandalieuは、ケロリとしていた。
「【Insect User】としては、俺の方が上だったみたいですね」
実際には【Demon King's Scent glands】を使用して蟲を誘うフェロモンの類を出していたが、それも含めて【Insect User】の腕だろう。
自分に懐いた蟲達を傷つけないようにと【Death Bullet】を撃つのを中断したVandalieuがそう告げるのと同時に、Bebeckettは地面に転がった。
「かひゅっ……けひっ、けっへっ……」
ローブから転がり出たのは、body partのあちこちが大きく欠損した老婆だった。
Bebeckettは自分のBodyの一部をmonstersに餌として与え、自分自身のBodyを巣だと誤認させる事で蟲を使役していた。そのためBodyの生命維持も蟲に頼っていたのだ。
その頼りの蟲が全てVandalieuに魅了され、奪われた今『Insect Army』のBebeckettは瀕死の老婆でしかない。
「ぶっ!?」
だが、その息の根は即座に停められた。彼女の後頭部を砕いた男に、Rickertはcertainly Vandalieu達も視線を向けた。
「え、Erwinっ! 何故……!?」
鞭を一振りしてBebeckettのbloodや肉片を飛ばしたErwinは、事も無げに答えた。
「Experience Pointを渡さないためだ。あのままBebeckettを死なせたら、どれだけの量のExperience Pointがあいつに行くと思っている? だったら、仲間の俺が貰ってやるのがせめてもの弔いだろうが」
「それは、そうかもしれないが……」
Vandalieuが【Unable to gain experience independently】のCurseを受けているのを知らなかったとはいえ、Erwinの非情さに思わずRickertは言葉を失った。
そしてVandalieuも敵にExperience Pointを渡さないために瀕死の仲間に止めを刺すという行動に驚いて、ほんの一瞬動きを止めて硬直した。
そしてその首から上だけが、前触れも無く胴体から飛んだ。
「えっ?」
「ぼ、ボス!?」
間の抜けた声を出したIrisやHaj達は、首を切断されたVandalieuと、それを成した黒づくめの男の姿を見た。
Vandalieuの首を刎ねた男は『Fifteen Evil-Breaking Swords』の一人、十一剣『King Slayer』のSleygar。彼は稀代のAssassinだった。
纏った者のsignを消すマント型のArtifact『night神の外套』を装備し、【Silent Steps】のSuperior Skill【Nihility】を習得したSleygarは、Even now Kingの名を持つmonstersや反乱分子の首魁を数え切れないほど暗殺してきた。
敵が多い時はtop、Commanderを狙うのが常套手段だ。その戦法は、Kingの名を持つmonstersが支配する群れを相手にする時に特に有効だ。
群れを構成しているmonstersは、King系のmonstersが持つ【Strengthen Follower】skillの効果でEnhanced (1)されている。だがskillの所有者であるKingを倒せば、その効果は失われる。更に絶対的な統率者を失ったmonstersは容易く混乱し、バラバラに行動する烏合の衆と化す。
それ故Sleygarは頭を一撃で暗殺する事に特化し、その技で-sama々なKingの首を獲り、『King Slayer』の名と十一剣の席を手に入れるに至ったのだ。
Bebeckettが数の暴力担当とすれば、SleygarはVandalieuの僕をすり抜けて一撃で暗殺する事が今回のmissionでの仕事だった。
それ故、今までずっとsignを消して隠れ潜んでいたのだ。
くるくるとmidairを舞うVandalieuの首。胴体から噴水の如く大量のbloodが噴き出し、Sleygarの外套に付着する。その光景にErwinは彼の死を確信した。らしくも無い事だが、黒づくめのSleygarが輝いて見え――
「ぎっ、ぎああああっ!?」
だが、Erwinの確信は、突然顔を片手で押さえたSleygarがscreechを上げ、体勢を崩して地面に背中から落下した事で崩れ去った。
「ぐああああっ!? め、目がっ……俺に、俺に何をしたぁっ!」
地面に落ちたSleygarが、片手で顔を押さえたまま苦しみ悶える。
一方Vandalieuは【Out-of-body Experience】したSpirit Formで、Legionから受け取った自分の頭部を胴体にくっつけていた。
『あー、驚いた。あ、Hajもうちょっと下がって。チクチクしますよ』
VandalieuはSleygarが隠れている事に気がつかなかったが、【Danger Sense: Death】のmagicで首が狙われている事を寸前で感知した。しかし、彼はSleygarのSpeedに対応する事が出来なかった。
そこでVandalieuは逃げる事を諦めた。そしてSleygarに首を切断された瞬間に【Demon King's Fur】、【Demon King's Luminescent organs】をActivateしたのだ。ただ、防御では無く攻撃の為に。
そして首が切断された瞬間、【Demon King's Fur】をmidairに飛ばしたのだ。
Earthの大型の蜘蛛、タランチュラの仲間は危険を感じると足でbody partに生えた細かい毛、刺激毛を飛ばして身を守る。Vandalieuはそれと同じ事を、極細の【Demon King's Fur】を飛ばす事で再現したのだ。
タランチュラの刺激毛なら、肌に受けても腫れて痛みや痒みに苦しむ程度ですむ。しかし、【Demon King's Fur】で顔を、そして目を傷つけられたSleygarが感じている激痛は、いったいどれほどか。少なくとも、チクチクなんてlevelでは無い。
「く、首を刎ねられて何故生きている!? Vampireでも死ぬのに、Dhampirの貴-samaが何故!?」
顔にhorrorすら浮かべて叫ぶRickertに、首を繋げ終えたVandalieuは答えた。
「それは、俺が首を刎ねられても死なないからです」
不真面目な答えを適当に返したVandalieuは、絶句するRickertからSleygarに注意を戻した。
「ぐっ!」
Sleygarは激痛を強引に無視して立ち上がると、何と地面を蹴って何meterも飛び上がった。そして、そのまま木々の枝を足場に森の中に消えようとする。刺激毛で視覚を封じられていると思えない動きだ。
SleygarはVandalieu達から離れれば、『night神の外套』と【Nihility】skillの効果で再び姿を消す事が出来る。それを狙ったのだろう。
だが、実は頼りのnight神の外套にはVandalieuがbloodに混ぜて飛ばした【Demon King's Luminescent organs】の青白く輝く液体や、Activateしたままの【Demon King's Scent glands】で作った匂いの元がべったりと付着しており、その効果は失われていたのだが。
「追ってください、Isla」
『畏まりました!』
しかも Vandalieuから、Vampire ZombieのIsla率いるDark Night Knightsの面々が出現する。
『者共、私に付いて来い! Vandalieu -samaの猟犬たる真価を示す時だ!』
『ヴオオオオオオオ! 匂いと光を追え!』
『Isla Delegation Leaderに続け!』
最大の強みである隠形を封じられたSleygarが、Isla達空をFlightするVampire Zombie達にPursuitされ生き延びられる可能性は限りなく低い。
「BAKANA……十五剣が、瞬く間に二人も……」
「手下の数が多くて、本人も強いだと? 滅茶苦茶だ」
驚愕に喘ぐRickertと、Coordinationする間もなく仲間を二人喪って冷や汗を浮かべるErwin。
驚いているのはIrisやHaj、そして意識を取り戻したGhoulやResistanceのmemberも同じだった。自分達が手も足も出なかった強敵が、Vandalieuが来た途端逆に数を減らしている。
VandalieuがPure-breed Vampire Gubamonと戦い倒すところを見ているIrisだったが、それでも『Fifteen Evil-Breaking Swords』の四人の内二人を苦も無く倒した事に驚かずにはいられなかった。
因みにIrisの後ろに居るCuocoは、驚愕の連続に対応できず、先程から立ち尽くしたまま呆然としている。今はLegionを眺めながら「良い肉質だ」等と呟き、現実逃避しているようだ。
「……まあ、こうなると思ったわ」
先程から【Warning】が一回も響かないため、MilesはもうVandalieuがいる限り、危険は無いと判断していた。
つまり、『Fifteen Evil-Breaking Swords』の三人……実際は四人だったが、それはVandalieuにとって強敵ではあっても、脅威では無い。そういう事だ。
『Vandalieuが今更この程度の連中に勝てないはず無いもの』
『ところで、残り二人に成ってしまったがこいつ等は結局何者なのだ!?』
『Amid Empireの秘密部隊らしいよ。まあ、Vandalieuの敵じゃないけど』
『敵じゃないの? じゃあ、殺しちゃ拙いの?』
『そう言う意味じゃないわ、Jack』
『……ちょっとチクチクする』
Legion達も、プルートを含め誰も危機感を抱いていなかった。心lungを強制停止されても死ななかったVandalieuが、首を刎ねられたくらいで死ぬはずがないと思っていたからだ。
思っていたが、不愉快でない訳が無い。Legionを形成する『The 8th Guidance』のmemberにとって、Vandalieuは友人であると同時に信仰対象なのだから。
『Vandalieu、私達もAssassinのPursuitに加わっても?』
「いえ、それよりもあっちの人の相手をお願いします。Legionなら勝てます」
『分かりました!』
しかし、結局はVandalieuの意思が優先されるため、Legionは逃走中のSleygarではなくRickertに対して向き直った。
Legionの異形が迫って来る事で我に返ったのか、Holy Swordを構え直すRickertにErwinが指示を出した。
「リッキー坊や、テメェはさっさと逃げろ!」
炎を帯びた鞭がLegionを牽制する。背中から新たな鞭を取り出し、両手でManaを帯びた鞭を振るうErwinに、Legionも一旦下がる。
「何故!? 私のNemesis Bellが役立つはずだ!?」
お飾りである事に対するcomplexを刺激されて、Rickertが反射的に怒鳴るが、Erwinは冷静に吐き捨てた。
「てめえにはDukeって表での立場があるだろうが。ここは俺に任せて引け」
Rickertは帝位継承権を持つ現Emperorの甥だ。それに三剣『Light Speed Sword』はプロパガンダ用のお飾りだが、だからこそ簡単に死なせるわけにはいかない。……ErwinやBebeckett、Sleygarとは違って。
「くっ……分かったっ」
『見逃すわけが無いでしょう?』
それを理解し、悔しげだが指示通りに撤退しようとしたRickertだったが、【Size Alteration】skillでGrowしたLegionが迫る。
「うおっ!?」
LegionのSpeed自体はRickertにとって脅威ではないが、巨石の如き体積は脅威だった。
柱の如き肉のtentacleを振り回しながら迫るLegionを無視して逃げる事は出来ない。
「ちぃっ! 手間のかかる!」
咄嗟に両手で握った鞭を振りRickertの撤退を援護しようとしたErwinが、magicで炎を纏わせた鞭を振って牽制する。
『おっと、火は嫌いなのに』
「お前はこっちです」
Legionの動きを一旦は鈍らせたErwinだったが、Vandalieuが【Demon King's Horn】を放ったことで中断しなければならなかった。
「それが【Demon King Fragment】か。ガキが、fragmentを一つや二つ振り回せば強くなったと勘違いするなよ!」
Demon King Fragmentに対抗し、sealedするための装備を所持しているErwinに動揺は無い。……既に【Demon King's Scent glands】、【Demon King's Fur】や【Demon King's Luminescent organs】でBebeckettやSleygarを撃退したのだが、彼はあれがfragmentだったとは気がつかなかったらしい。
「これまで【Demon King Fragment】で自分は強くなったと勘違いする愚か者が何人いたと思う!? その愚か者がどうなったか、俺がお前に教えてやる。
人の力を舐めるなよ、ガキが!」
そうOrichalcumを使用した対Demon King Fragment用の鞭を持つErwinは、Vandalieuの胸から新たに生えた黒い穂先のような角にそれを叩きつけようとした。
『それは、-kunには難しいだろう』
だが、Orichalcumの鞭はVandalieuの胸から出現した生前Mirg Shield NationのHeroだったZombie、『Divine Spear of Ice』のMikhailの槍捌きによって、弾き返されてしまった。
「まあ、努力したいなら構わないわよ」
『食前の運動には丁度良いだろうしなぁ』
『Elfって美味しいんでしょうか?』
『あの人は不味そうですよ、姉-san』
Eleonora、Borkus、それにLiving Maid ArmorのSalireとRitaが出現する。
「何だと!?」
Sleygarを追って行ったVampire Zombie以外にも、まだこんなに手下を隠していたのかと驚くErwinに、「皆で」肉を食べる予定だったVandalieuから新たに出現した森林猿系Beast race出身のAbyss種Vampire、Bellmondが告げる。
「それではお客-sama、旦那-sama相手にその『人の力』とやらを存分にお示しください。結果は決まりきっていますので気にせず、心行くままに」
言い終わったBellmondが一礼するのに合わせて、Vandalieuは猛然とErwinに襲い掛かった。
・Name: Bebeckett
・Race: Human
・Age: 75
・Title: 【Insect Army】 【Fifteen Evil-Breaking Swords】
・Job: Bug Master Tamer
・Level: 89
・Job History: Apprentice Beekeeper、Beekeeper、Animal Trainer、Perfumer、Tamer、Bug Tamer
・Passive skills
Mental Corruption:3Lv
Disease and Poison Resistance:4Lv
Detect Presence:2Lv
Strengthen Subordinates:10Lv
・Active skills
Housework:4Lv
養蜂:5Lv
調香:7Lv
Training:10Lv
Commanding:5Lv
Silent Steps:4Lv
・Unique skill
Insect Person
originallyは細々と養蜂を営む一般人だったが、蜜蜂を扱う内に蟲を操る特異なaptitudeを開花させる。その才を天が与えた特別な力だと信じ、のめり込んでいった。
Production related Jobに就き、独自のTraining法や香りを使い、蟲を操る技を高めるうちにAmid Empireの情報網によって目を付けられ、scoutを受ける。
その後Tamer系のJobに就き更に蟲を操る術を高め、『Insect Army』のsecondary nameを与えられ『Fifteen Evil-Breaking Swords』に抜擢されるまでになる。
一芸に秀でたTypeで、数は多いが一体一体は強くないザコを一掃する時にその真価を発揮する。
蟲をInfestさせた相手の位置や、周囲の音を探る等諜報活動にも有用な人物。ただ、本来は『Hilt』で十分調査できるのであまり出番は無かった。
蟲をより操る為でもあるが、老齢によるBody的衰えを自分自身にInfestさせた蟲に生命活動を補助させる事で補っている。ただ、それが仇となって蟲を全てVandalieuに奪われ、無力化されてしまった。
・Name: Sleygar
・Race: Half-Elf(Human)
・Age: 57
・Title: 【King Slayer】 【Fifteen Evil-Breaking Swords】
・Job: Master Assassin
・Level: 90
・Job History: Apprentice Thief、Thief、Pursuer、Treasure Hunter、Assassin、Dagger User、Magic Sword User、Decapitation Enforcer
・Passive skills
Night Vision
Enhanced Agility:10Lv
Non-metallic armor equipped, then Enhanced Agility : Large
短Strengthened Attribute Values when equipped with a Sword (Large)
Intuition:6Lv
Detect Presence:9Lv
Abnormal Condition Resistance:4Lv
・Active skills
Decapitation Technique:2Lv
Throwing Technique:9Lv
Archery:6Lv
Unarmed Fighting Technique:6Lv
Nihility:5Lv
Assassination Technique:10Lv
Trap:8Lv
Lockpicking:7Lv
-Transcend Limits-:1Lv
Surpass Limits: Magic Sword:10Lv
・Unique skill
King Slayer
下部organizationの『Hilt』からその腕を認められて『Fifteen Evil-Breaking Swords』に抜擢された人物。【Dagger Technique】のSuperior Skillである【Decapitation Technique】(首を刎ねる事に特化した、短剣を使用した武術系skill)を所有する等、正面から戦っても強力なAssassin。
ただその真価は、不意を突いて行われる一撃必殺の暗殺時に発揮される。
【Nihility】skillや隠形専用のArtifact『night神の外套』の効果が発揮している時、彼を発見する事は至難の業で、隠形の業は現在Legionの一部を構成している『The 8th Guidance』のGhostに匹敵する。
Unique skill【King Slayer】により、race名やsecondary nameに王の名を持つ存在に対する攻撃に高い補正を得る為、今までGoblin KingやKobold King等のmonstersが発生し、Adventurer’s Guildが討伐をしくじる度に彼が派遣されて来た。
ただ首を落としても死なない存在の暗殺を命じられた時点で、彼の命運は尽きていたのだった。