歪な形の岩とmagmaの池ばかりの、まるでHELLの-samaな場所で稲光と轟音が響き渡っていた。

　Vandalieuに自らのPriestである『Scale King』とSpirit Cloneを倒され、Demon continentに撤退する途中でＳClass adventurer Schneider率いるparty『Storm of Tyranny』によって捕えられた『Raging Evil Dragon God』Luvezfolは、目の前で繰り広げられる激戦に縮こまっていた。

『ひ、ヒィっ、こいつ等、monsterだ……！』

　弱った今の彼では、余波を受けただけでbody partが砕け散る。そんなmagicやMartial Artsの攻撃が繰り返される。

「微塵に砕けるがいい！　【Wave爆雷】ぃ！」

　whole bodyがmuscleの塊で出来ているかのようなPure-breed Vampire、pump upしたZorcodrio……通称Zodの【Muscle Technique】のMartial Artsが炸裂する。

　激しい電撃が、黒髪黒瞳の若い男を直撃した。

『がぁぁ！？』

　超人の域に少々足を踏み入れた程度の力量では、一瞬でwhole bodyが黒焦げになってZodが叫んだ通り微塵に砕け散るだろう一撃を受けて、男が顔を苦痛に歪める。

　だが、男は倒れない。よろめいたが、すぐに体勢を立て直す。

「ぬぅっ！　忌々しい程にタフな奴！」

「いや、あんたには言われたくないと思うけど？」

　本当に忌々しげな-sama子で吐き捨てるZodに、女DwarfのMeldinが半眼に成って言う。全くだと、mohawk頭のDark Elf、Daltonも同意する。

「お二人とも、奴はまだ立っていますぞ！　何故先程から休んでばかりなのです！？」

　くわっと目を見開いて叫ぶZodに、MeldinとDaltonの二人は揃って首を横に振った。

「あたし達、もう百回攻撃したから」

「俺も。って、言うかManaがもうねぇよ。後Zod、お前もさっきので百回目だぞ」

「むっ、しまった。……私とした事が、数え間違えたか。致し方なし」

　Daltonから指摘されたZodは、男から視線を外してfangsとmuscleを納める。

　見る見るうちに細くなっていくZodの背に、男が声をかけた。

『良いのか？　確かに百回とは言ったが、別に二百回でも千回でも、俺は構わない』

　その顔と声には若干の疲れがみえる。しかし Zodの攻撃を百回も受けたらしいのに、まだまだ余裕があるように見えた。

「不要です。私は『百回攻撃する代わりに貴-samaをとりあえず認める』と、我が祖の名にかけて誓ったのです」

『そうか……』

「私はまだ一回残ってる！　シュナは後五回ね！」

「ヘイヘイ、もうちょっと胸を貸して貰うぜ、大senpai -sanよぉ！」

　下がったZodに替わり、片手に瓢箪を下げたLissanaと相変わらず素手のSchneiderが飛び出した。

　Lissanaは【Evil God of Degeneration and Intoxication】ヂュリザーナピぺ本来の姿に変化すると、瓢箪を呷って中身を口に含んだ。そしてlipsを窄めると、霧状にして男に対して噴き出した。

　たちまち男の姿は、薄く桃色に染まった霧に飲み込まれた。

『うぐっ！　これは……きくっ』

　ぐにゃりと男の視界が歪み、岩で出来た地面がグニャグニャと揺れ、Sense of smellも触覚も痺れたように麻痺する。LissanaのManaで作られた酒とEvil God (M)である彼女の唾液が混じった毒霧を浴びた事で、five sensesが異常をきたしたのだ。

　そして歪んだ視界にcountlessの靴の爪先が見えたが、男は呆けた顔つきのままだった。

「【無限thrust】！」

　爪先の主は、certainly Schneiderだ。彼は何と、【Spear Technique】のMartial Artsを蹴りでActivateさせたのだ。

　顔面を含めたwhole bodyに槍の穂先と変わらない鋭さの蹴りを叩き込まれた男のbody partは、堪らずに吹き飛ぶ。

　Schneiderはそれを追い駆け、更にMartial Artsを振るう。

「【瞬閃・極】！　【真山砕き】！　【大Spiral thrust】！」

　右手のknifehandで【Sword Technique】、左膝蹴りで【Club Technique】、左の抜き手で【Naginata Technique】のMartial ArtsをActivateさせる。

『――――！』

　斬撃、打撃、刺突を受けた男のbody partから、bloodが飛沫を上げる。

　だが容赦せずSchneiderは大きく踵を振り上げた。

「百回目っ！　【神鉄Bisection】っ、くらいやがれぇ！」

　【Axe Technique】の上Class Martial ArtsをActivateした踵落しが、男の脳天に振り下ろされる。男は、顔面から地面に激突し轟音を立てて減り込んだ。

　本来なら、幾ら武術系skillを高levelで所持していてもActivateできる状況に無ければ、Martial ArtsをActivateする事は出来ない。つまり、Weapon Equipmentを持っていなければ【Unarmed Fighting Technique】以外のskillのMartial ArtsはActivateでき無い筈なのだ。

　多少の融通なら効く。木の棒を剣や槍や薙刀に、石の斧を棍棒に、逆に棍棒を斧に見立ててMartial ArtsをActivateさせる事も出来る。……最終的なAttack Powerや効果は下がるが。

　だがSchneiderは、彼の持つUnique skill【True Warrior】の効果により、己のBodyのみでActivateさせる事が可能だった。

　この「自らのBodyこそが最強のWeapon Equipment」と言う言葉を体現するUnique skillこそ、Schneiderが『Thunderclap』のsecondary nameで呼ばれるようになった理由の一つだ。

　普通のadventurerが依頼やDungeonに合わせて装備を整えてからAdventureに赴くのに対し、Schneiderは着の身着のままで身軽にどんな過酷なAdventureにも出発し、そしてすぐ成果を上げて帰ってくる。

　それはSchneiderが武具を一切必要としないからだった。

　武を真に極めた者という大仰な名称が好みに合わなかったのか、彼自身はそれを親しい者にしか明かしていないのだが。

　砕けた岩に埋もれて後頭部も見えなくなった男に向かって、Schneiderは「ふぅ」と息を吐いた。

「あ～、しんどいぜ、全く。それで大senpaiよ、少しは効いたか？」

『……少しどころか、大分効いたぜ』

　脳天にSchneiderの一撃を受けたはずの男の声が聞こえたかと思うと、砕けた岩に埋もれていた男が立ちあがった。

　大分効いたと言う割に、もう毒霧のimpactから回復した-sama子の男に「やっぱりか」とLissanaが肩を落とす。

『それで、どうする？　百回は終わったが、俺としては千回でも足りないと思っているが』

「止めとく。これ以上やっても疲れるだけだし……別にこれで許せって訳じゃ無いんでしょ、Farmoun Gold？」

　男……『War-God of Fire and Destruction』ZantarkのChampionにして、Heroic God、Farmoun Goldは『certainlyだ』とLissanaに答えた。

『俺達のした事を考えれば、百回殴られた程度で許されるはずがないのは、俺でも分かる。ただ、俺がZantarkの親父の側で戦う事を認めてくれれば、今はそれで十分だ』

　Farmoun Goldは十万年前、Aldaによって寿命を延ばされた為まだHumanだった頃、Champion Bellwoodと共に『Goddess of Life and Love』Vidaと戦った。

　あの時は、彼もそれが正しいと信じていたからだ。

　Zakkartの誘いに乗ってallyに成ったからと言って、元Demon King ArmyのGodsを信頼する事はFarmounには出来なかった。そのZakkartが亡くなった事で、何時Demon King Army Remnantsに再び寝返るか分からないからだ。

　その元Demon King ArmyのGodsが自らのbelieverとしてmonstersを新たに創り出す事を認めるVidaも、信じられなかった。

　そして、その邪悪なGodsと交わって新たな種を次々に生み出したVidaに彼は愕然とした。『Giant of the Sun』Talosとの間に創ったGiant raceや、Ryuujin、Beast race、Dark Elf等はまだしも、ScyllaやArachne等を産みだすのは正気の沙汰とは思えなかった。

　まるでVida自身が邪悪なGodsの一柱と化し、monstersを次々に増やしているように見えた。

　そして『魔塵のEvil God (M)』と『Evil God of Evil Darkness』とFusionして生き延びたものの、正気を失い狂ってしまったZantarkを迎え入れ交わり、Majin RaceとKijin raceを産みだした事。

　更に、最後は決裂に近いconditionだったと言えど、同じChampionだったZakkartをUndead Transformationさせて、しかもそれと交わりVampireを産みだした事。

　その二つのVidaの行動を知ったFarmounは、Vidaが狂ってしまったと言うBellwoodの主張が正しいと確信した。

　FarmounはZakkartがDemon King Armyの邪悪なGodsに寝返り工作を仕掛けた頃から距離を取っていた。そのため、Demon Kingが健在だった間は、寝返った『Evil Dragon God of Five Sins』Fidirgや『Evil God of Slime and Tentacles』Merrebeveil達と共に戦ったが、彼等を仲間だと思った事は無かった。

　そんな邪悪なGodsとの間に産みだしたraceが、Demon Kingとの戦いで荒れ果て滅びに瀕しているこのworldの復興に役立つとはとても思えなかった。

　寧ろ、折角生き延びた少数のHuman達にとって、将来脅威に成るのではないかと考えた。

　そしてAldaとBellwoodのCommandingの下NineroadやAlda陣営のGodsと共に、当時Vidaが自ら産みだしたraceの都を築いていたContinentに攻撃を仕掛けた。

　その時FarmounはZantarkと戦った。かつては「親父」と敬った、邪悪な神とFusionした事で満足に言葉も紡げなくなった相手との戦いは、熾烈を極めた。

　だが決着がつく前にAldaとVidaの戦いは終わっていた。勝ったのはFarmoun達だった。

　Vida's New Racesの都は跡形も無く破壊しつくされ、各raceの始祖の殆どが討伐された。死を冒涜されたZakkartは眠りにつき、邪悪なGodsとVidaの狂った思想を支持するGodsの内多くがsealedされた。

　ただ横やりを入れて来たDemon King Army RemnantsのせいでAlda陣営の被害も小さく無く、結局Vidaと幾つかのGodsと新raceの逃亡を許してしまった。

　苦い勝利のその後、Farmoun達はAldaに伸ばしてもらった寿命が尽きるまでworldの復興に尽力した。

　その結果は、完璧では無いが十分な物だったと今でも自負している。

　全て集めても一つの町を維持できるかどうか程度しか生き残っていなかったHuman、Human、Dwarf、Elfを、数千年で数万人規模に増やしたのだから。

　そしてNineroadがmonstersをTamerする技術を広めてTamer guildを、Farmounが当時都市ごとに異なるorganizationだった狩猟採集を行うguildを纏め、Adventurer’s Guildを創設した。

　そして死後Farmounは、Fire-AttributeのHeroic GodとしてZantarkに代わってFire-Attributeの管理を任されるようになった。

　その時までは疑問を持たなかった。

　Farmounが神として地上を離れworldの維持に忙殺されている間もHuman達は増え続けた。しかし、それはある時点で止ってしまった。

　多くの国が出来た結果、HumanはHuman同士で争うようになったからだ。

　それ自体は仕方のない事かもしれない。Farmounが生まれたanother world『EARTH』でも起き、そして克服できなかった人類の負の側面だから。

　しかし問題なのはDemon King Army Remnantsの邪悪なGodsや、その支配下から抜け出しているとはいえmonstersが跋扈するDevil Nestsが幾つも存在するというのに、それを放置してHuman同士で争っている事だ。

『地上から同じ目線で見ていたら、その場で足踏みを繰り返しているだけ……もしかしたら、ゆっくりとだが確実に前進しているように錯覚できたかもしれない。

　だけど上、Divine Realmからはworldがよく見える。俺達は三歩進んで四歩下がっていたのさ』

　少なくともFarmounにはそうとしか見えなかった。

　Aldaを含めたGodsはworldの維持管理に忙殺され、Demon Kingと、そしてVidaとの戦いで負ったDamageの回復にも苦労する始末。

　逆にDemon King Army Remnantsは裏で蠢き、『Evil God of Joyful Life』HihiryushukakaのようにDemon Kingが健在だった当時よりも力を蓄える神が存在した。

　それでもBellwoodがいる間は「今は雌伏の時だ、苦しさにloseこれまでの努力と犠牲を無にするか、輝かしい未来を手に出来るかどうかの岐路に僕達は立たされているんだ！」と言う言葉を信じていた。だが、そのBellwoodは『Evil God of Sinful Chains』と相打ちに成って眠りについてしまった。

　それからは自分の中の疑問を抑えられなくなり、Farmounは自分がどうするべきか考える-samaになり――。

「洗脳が解けたと」

『……面目次第も無い』

「耳触りのいい言葉に酔うのは分からなくもないが、流石に五万年以上も酔うなよ」

　今迄Bellwoodは確かに常に先頭で自分達を牽引し続けてきたが、過去を顧みて深く考えてみると、彼には長期的な視野が欠けており、しかも『EARTH』で生活していた時の価値観や常識を無自覚に絶対視している節があった。

　目の前の自然が汚されるから、蒸気機関の-samaな『EARTH』の技術をこのworldの人類に齎さず、独自に開発する事も禁じる。

　Unaging不死、Vampire、邪悪なGodsとそのbloodを受け継いだVida's New Racesは、無条件に悪。

　そのため物事に対する対応が場当たり的で、選択は短期的には正しくても長期的には大失敗という事が多かった。

　それを実行力や口の上手さで無自覚に誤魔化してきたのだ。彼の言葉に洗脳された者達の働きによってBellwoodの失敗は彼にとって大事に成らず、問題が起きても「敵」を糾弾する事で皆の目を逸らしてきた。

　そうした性質の悪い扇動者に免疫が無かった『Lambda』worldのAldaを含めたGodsや人々は、すっかり心酔してしまったのだ。

「それで五万年前から他のFire-AttributeのSubordinate GodやHeroic Godを説得して、Alda陣営を離れてやっていると？」

　憮然とした表情を崩さないZodに、Farmounは苦笑いを浮かべた。

『そうは言っても、たいした事は出来てないけどな。Boundary Mountain Rangeの内側のXerxの兄貴達に謝りに行ったが、入れてもらえなかったし、今はこうしてZantarkの親父の所に出入りしているが……それまで何回殴られたか覚えてない』

『戯けが、当たり前だ』

『殺されなかっただけでも感謝しろ』

　そう言って会話に入って来たのは、Kijin raceやMajin Raceの始祖、そしてZantarkが邪悪なGodsとFusionした後も付き従った彼のSubordinate God達だ。

　Demon continentで己とVidaの子であるKijin raceとMajin Raceを守護しながら傷を癒すZantarkの前に現れたFarmounは、言い訳をせずに『すまない、俺が間違っていた！』と土下座した。

　その後頭部に、ZantarkのSubordinate GodやKijin raceやMajin Raceは必殺の一撃を叩き込んだ。情けも躊躇いも無く、怨敵を抹殺する絶好の機会を逃すものかと、攻撃を繰り返したのだ。

　それをSlightly止めたのが、Zantarkだった。

　自らもEvil God (M) Evil God (P)とFusionして戦線から離れるまでBellwoodの主張が正しいと考えていた事、何より自分が選んだChampionであるFarmounを導けず過ちを正せなかった自分にも責任がある。だから一人百発までにしろ。そうSubordinate God達を説得したのだ。

　結果、FarmounはZantarkのSubordinate Godとその一族全員に百回ずつ攻撃されて、やっと戦力として受け入れられたのだった。

「しかし、何でAldaはあんたを放っておく？　あいつ等から見りゃあ、あんたは立派な裏切り者だろ？　Zantarkと一緒になんたらってEvil God (P)と戦ったんだから」

　元ChampionのHeroic Godを倒してsealedするような余力が無かったとしても、Oracleを下してFarmounを裏切り者であるとHuman達に教え、信仰する事を禁止すると宣言するぐらいやりそうなのにと、Daltonが胡乱気な視線を向ける。

『それはな、俺が今もFire-Attributeの管理をやっているからだよ。俺と俺に着いて来てくれるSubordinate Godを排除したら、いよいよworldがヤバイから、排除したくてもできない』

　既に余裕の無いAlda陣営は、Farmounの-samaな大物は裏切り者であっても簡単に排除できないのだった。

　Alda陣営にはFarmounについて行かず残ったFire-Attributeの神もいるが、彼等だけではFarmounの替わりは務まらない。

　そこまで分かっていて、FarmounはAlda陣営から堂々と離れたのだ。

『その時Nineroadも誘ったけど、あの時は『やり直すにはもうすべてが遅すぎる』って言われてな……。

　それはin any case、依頼は受けてくれるのか？』

　Zantarkに倣って百回でFarmounを許す……認める事を了承し、一撃目を繰り出す前にSchneider達は彼からある依頼を持ちかけられていた。

「Vandalieuへの仲介か。まあ、やるしかないよな」

　このDemon continentに来た理由、『Magic God of Time and Arts』RicklentからLissanaが受けたOracle。その意図は、邪悪な神二柱とFusionした事でMentalが変容し、連絡が取れなくなったZantarkへの連絡を頼みたかったらしい。

　それはもう終わったのだが、次はDemon continentからまだ動けないZantarkと、そしてBoundary Mountain RangeのBarrierに入れないFarmounの事を、Vandalieuに伝えに行かなくてはならない。

　Boundary Mountain Range内部がどうなっているのかまでは流石のSchneiderも知らないが、Farmounは五万年前と同-sama現在も敵として認識されている事が確実だからだ。

「なら、まぁやってみるよ。尤も、俺もまだ会った事が無いが。それに Bahn Gaia continentに戻ってから色々と準備しなきゃならねぇから、一年や二年はかかると思うが」

　Boundary Mountain Rangeを越えて、SchneiderがVandalieuと合流する。Amid Empireと、そしてPure-breed Vampire Birkyneにとって悪夢そのものだ。

　そのsignを感じ取られたら、全力で妨害してくるだろう。Schneiderが秘密裏に保護しているVida's New Racesの集落を警告代わりに襲撃して、身動きを取れなくしようとするぐらいは確実にする。

「こんな事なら『Fifteen Evil-Breaking Swords』、しっかり潰しとけばよかったな」

「いやいや、彼等もしたたかですからな。私達が潰そうとしても捕まらなかったでしょう」

「秘密部隊だからね。常に散らばっているから、頑張って追い詰めても一人倒せるかどうかだし。あいつらを倒す時は、向こうから仕掛けて来た時に返り討ちにするしかないんじゃない？」

　DaltonやZod、Meldinが『Fifteen Evil-Breaking Swords』について口々に言う。

『とにかく、頼めるなら有りがたい。……後、もう一つ伝言を頼まれて欲しい』

「何？　百回あんたを殴って良いって事？」

　Lissanaが尋ねると、Farmounは首を横に振った。

『百回殴るのは、悪いが後にしてくれと伝えて欲しい。……あいつ、魂やFamiliar Spiritを『砕ける』からな』

　Adventurer’s Guildが今までした事も含めて、Vandalieuから良い印象を持たれていない自覚のある彼は、流石に百回も魂を砕く攻撃に身を晒す勇気は無かったようだ。

『……あの、我もついて行かなきゃ駄目か？』

　それを我が身で味わったLuvezfolは、いっそこの場でsealedされた方がマシなのではないか？　そう思っていた。

「おう、sealedするのが面倒だからついてこい」

『我、終わった……』

　そう思ったLuvezfolだったが、彼を拾う神がいた。

『いや、まだ説教が足りぬから置いていってくれぬか。妾がしっかり管理するゆえ』

　Ryuujinの片親、Tiamatである。Luvezfolにとっては裏切った元同族の中でも上位の存在であり、彼にとってはZodやLissana同-samaあまり話したい相手ではないが、この時ばかりは感謝した。

「そうか？　まあ、あんたなら万が一こいつが元の力を取り戻しても大丈夫か」

『うむ、そのVandalieuがここに来たら、その時改めて引き渡そう』

『……我、やはり終わった』

　事態は急展開したが、最初はMilesにとって順調に進んでいた。

　始まりは、彼が派遣されたResistance organization『Sauron Liberation Front』にとって重要な内通者、Cuoco Ragdew Baronの亡命だ。

　Orbaum Elective Kingdomとのpipeが細くて不stabilityな『Sauron Liberation Front』としては、仮にもNobleであるCuocoとそのfamilyや家臣の亡命は、少人数とはいえ簡単に請け負えられる案件では無い。

　しかし Goblin等のmonstersの霊と干し首を材料に使用したDeath-Attribute Magicの通信機でVandalieuやChezareに連絡をとったところ、本人の意思次第だがTalosheimに来てもらう事になった。

　まだ本人に確認していないが、Cuocoの性格なら彼一人でもsyrupのProduction者がいるTalosheimに移住する事を希望するだろう。そして、亡命が認められるか分からないOrbaum Elective Kingdomに送るよりもIris達も安心できる。

　ただ、その為に通信機に込められたManaがほぼ底を突いてしまったのは誤算だった。death attributeのManaは作成者のVandalieuかLegionでなければ通信機に供給する事が出来ないため、通信機は今ただの干し首だ。

　思えば、これが失策だったかもしれない。

　次に、秘密裏に脱出した彼のfamilyを受け入れ、その後極少数の家臣と抜け出して来たCuocoと合流した。その際、Cuocoから『Fifteen Evil-Breaking Swords』が動いている事を知らされた。

　Cuocoも本来ならもっと早く知らせたかったのだが、既に下部organizationの『Hilt』がSauron領内に入っており、下手に動けなかったのだ。

　幸いまだ時間があったので、organizationのleaderであるIris Bearheartはorganizationのmemberを元Scylla Autonomous Territoryに在るhideoutの、更に後方に集めた。

　leaderのIris個人の実力も以前より数段高まり、Haj達Living Armorを纏った【Armor Tamer】で構成された精鋭部隊、協力を取り付けたSauron領のGhoul達。そしてMilesもいるため、『Sauron Liberation Front』の戦力は充実している。

　しかし、全員がＡClass adventurer並の猛者揃いの『Fifteen Evil-Breaking Swords』を相手にするのは心許ない。

　そのため、Vandalieuが設置したmonolithやStoneサークル等によって『Sauron Liberation Front』のmemberが案内に着いて居なければ侵入困難な迷路と化しているFormer Scylla Autonomous Territoryに立て籠もる事にしたのだ。

　既にDemon Pathに導かれているIris達には、monolith等の効果がどんなものかいまいち分からなかった。しかし、それらを見た敵が何故か次々に正気を失う事、そして設置物自体が実はGolemであるため、侵入者用のtrapとして大いに有効である事は認めていた。

　因みに、Cuocoやそのfamilyを保護する時は万が一にも発狂されたら困るので、目隠しをしてもらった。

　幸い、Vandalieuが近日中に来る事は分っている。だからそれまで籠城して持ちこたえる事は難しくない。

　そしてVandalieuがやって来たら事情を話し、ほとぼりが冷めるまでorganizationを引くか、それとも派遣された『Fifteen Evil-Breaking Swords』と戦うか、決断を仰ぐ事に成るはずだった。

「……正直甘く見ていたわ」

　自分のbloodで紅く染まったlipsを自嘲気味に歪めて、MilesはmonolithやStoneサークルを破壊して突破してきた三人の襲撃者を睨みつけた。

「おいおい、俺達のセリフを取るなよ、Vampire」

　切れ長の目をした、長身のElfの男。五剣、『Five-headed Snake』のErwinが、Milesの鋼の-samaなBodyを抉った鞭を見せつける-samaに撓らせて、言った。

「Unique skillかmagic itemの効果かはin any case、まさか昼間も動き回れるNoble-born Vampireなんて変わり種がいるとは思わなかった。……まさかこいつがDhampirの父親か？」

「それについては報告したはずだけど？　ブブブ……私の蟲が信じられないと？　あと、父親では無いらしいわね。ボスって呼んでいるから」

　hood付のローブを着て頭から爪先まで隠している、怪しげでage性別不明の人物、十五剣『Insect Army』のBebeckettが、不満を露わにする。

　しかし Erwinは「当たり前だ」と哂いながら言った。

「お前じゃなきゃ扱えない蟲をどうして俺が信じられる？　寧ろ報告を聞いた時は、遂に脳みそを蟲に食われたか思ったぜ」

「ブブッ……！」

　険悪な雰囲気に成る二人に、三人の中で唯一Knightらしい格好の男が割って入った。

「Erwin -dono、Bebeckett -dono、本題に入ったらどうだ？」

　Orichalcum製のArtifactのHoly Swordを下げた三剣、『Light Speed Sword』のRickert・Amid Dukeはそう言いながら、Milesの周りの者達を目で指した。

「あまりのんびりしていると、そのVampireはin any case。他は何人か話が出来なくなるぞ」

　Milesの周囲は、惨憺たる光景が広がっていた。

　Haj達はWeapon Equipmentを杖代わりにする等して何とか立っているconditionで、中には倒れたまま動かない者も少なくない。その中にはIrisの父、George・Bearheartに恩義を感じてResistanceに参加した元mercenary、Davisの姿もあった。

　そしてRickert達の背後では、少なくないResistanceやGhoul達が倒れ伏していた。一応手加減されたのか、まだ息がある者が多いが、中には見ただけでは生死が分からない者も居る。

「彼女達は話せなくても、問題は無いと思うが」

　Rickertが視線を向けたのは、Cuocoと彼の背後で夥しいbloodを流して立ち上がれない『Liberating Princess Knight』Irisだった。

「その本題とやらが、私の身一つで見逃してくれると言うのなら、かはっ……」

「Iris -dono、Enduranceの無駄だろう。奴らにとって我々の首を持ち帰る事は、決定事項の-samaだよ」

　あのsyrupは諦めなければならないかなと思いながら、Cuocoが片手に剣を構え、もう片方の手でIrisに戦闘中に渡されていたBlood potionをかける。

　しかし、Irisの傷は殆ど治らなかった。

「無駄だ、我がHoly Sword Nemesis Bellはあらゆる邪悪を許-san。光と生命のattribute magicによる治癒を阻害し、対Demon King Fragmentそして対Vampire……Vampireの不死性をNullificationにする効果を持つArtifact。このHoly Swordで受けた傷は、その見るからに危険なpotionでは治せない」

　逆にいうとそれ以外は凄く硬くて切れ味が良いだけのHoly Swordで、Bellwood由来の品であるというlegendがあるため権威付けの意味でMashkzarからRickertに貸与されたものなのだが、今回のmissionでは存外役に立っていた。

　今も【Demon King Fragment】とHalf-VampireであるVandalieuのblood液から製造されたBlood potionは、Nemesis Bellで付けられたIrisの傷に効果を殆ど発揮していない。

「これは……占領軍から抜け出す時、軍需品のpotionを持ってくるべきだったか」

「いまさら言っても仕方ないわよ、Cuoco -chan。それよりも、本題って何かしら？」

　危険を知らせるUnique skill【Warning】の効果で自分にだけ聞こえる鐘の音の大きさを確認しながら、Milesが三人の中で主導権を握っているらしいErwinに聞き返した。

「ああ、簡単な事だ。お前等の黒幕……Vandalieuって言ったな。そいつに、ごっこ遊びを止めてEmpireに降れって話を持ってきた」

「……なんですって？」

　Erwinが語った本題に、Milesは胡乱気な顔をして聞き返した。思わず、聞き間違えたかと耳に手を添える。

「聞こえなかったか？　そこの裏切り者がもう喋っただろうが、俺達は『Fifteen Evil-Breaking Swords』。Empireの配下に降るなら、命は助けてやるってEmperor陛下直々の提案をVandalieuってDhampirに伝えに来たんだよ。

　っで、Vandalieuは何処にいる？　それともまだ来てないのか？」

　Erwin達は今もIrisにInfestしているBebeckettの蟲によって、Vandalieuが今日来る予定である事までは知っていた。しかし、今日の何時来るのかは「飯時前に来る」としか分らなかった。

　そのため先手を取り、有利なconditionで話を進める……決裂した場合も確実に始末するために、やや早めに襲撃を開始した。その時もDhampirが混じっていないか注意していたし、十一剣『King Slayer』のSleygarと『Hilt』が警戒しつつ待機している。

　だが出て来る事も無く、逃げた-sama子も無いので、まだ来ていないのだと判断して尋ねたのだが、尋ねられたMilesや、Cuocoを除いた意識のある者達は、Irisすら驚きに目を見開いた。

(こいつ等、これで交渉するつもりだったの！？)

　問答無用で強襲を仕掛けて来て、重傷者多数。死者も出ているかもしれない。しかも、最低限IrisとCuocoは殺すと宣言。

　これで話し合おうとは、理解不能だ。

(いや、それほどおかしくは無いわね)

　しかし、MilesはすぐErwin達、そして彼等を差し向けて来たAmid EmpireのEmperor Mashkzarが何を考えているのか察して、驚きから立ち直った。

「なるほど……GhoulやUndeadを使って力を振り回して危ない王-samaごっこをしている『ガキ』を、自分達で有効利用してやろうって事ね」

　何の事は無い、Mashkzar達はVandalieuを完全に誤解しているのだ。特に、その人格を。

　Vandalieuが主にBoundary Mountain Rangeの向こう側に居るため調べられなかったという理由もあるが、今まで彼が起こしてきた事件の概要と、被った被害等を、体制側から分析した結果、彼を特殊な力を振り回すchildだと判断したのだろう。

　だから　交渉とは名ばかりの脅しに屈すると考えたのだ。

　MilesはOrbaum Elective Kingdom側の裏社会で活動していたのでそれ程詳しくないが、現Amid Empire Emperor Mashkzarは、今までの歴史上に登場した為政者の中では賢い部類に入るだろう。

　だが、やはり物の見方は偏る。複雑怪奇なRoyal Nobilityの社会で生き抜き帝位についた彼に、Dhampirとして生まれたVandalieuの身になって考え本当の意味で理解する事は不可能だ。

(そう言うワタシも、ちょっと前まで『Human如き』って言ってた側だし、どんなに賢い奴でもボスが前世以前のMemoryを持ったままanother worldからreincarnationしてきたなんて、直に会わなければ分からないし信じられないだろうから、笑えないけどね)

「そうとも。Vampireが何でDhampirをボスと呼んでいるのか不可解だが……っで、奴は何時来る？　来ないなら、奴がどうやってBoundary Mountain Rangeを出入りしているのか話してもらおうか」

　やはりMashkzar、そしてErwin達はVandalieuの性格を完全に読み間違えているようだ。

「そうねぇ、出来ればもう少し待ってくれないかしら？」

　だがそれで犠牲者を増やす訳にはいかないと、Milesは時間を稼ごうとする。

「そうか、ならもう少し待ってやる」

　そして意外な事に、Erwinは待つ構えを取った。

「おい、リッキー坊や。その間に裏切り者とPrincess Knightの首を獲っておけ。もしどさくさに紛れて逃げられるか、suicideした後死体を隠滅するようなmagic itemでも使われたら厄介だ。

　それが終わったらお前は首を持って一足先に帰んな」

　しかし、大人しく待つつもりは無いようだ。

　坊や呼ばわりされたRickertはうんざりした-sama子で、しかし「分かった」とHoly SwordをIrisとCuocoに向ける。

　表向きのmissionでしかない『Liberating Princess Knight』の討伐と、ついででしかない内通者の始末。しかし、表に出来る成果が無ければ『Fifteen Evil-Breaking Swords』が出動しながら、世間の目から見ると失敗したという事に成ってしまう。

　そのため、表向きの広告塔であるRickertがIrisと、そしてCuocoの首を持って帰る事は決定事項だった。

「っ！　Cuoco -dono、私が時間を稼ぐ。だから――」

「時間を稼ぐのはワタシの仕事よ」

　重傷を負っていながら自分が身の安全を保障したCuocoを庇おうとするIrisを、更にMilesがRickertの前に立ちはだかる事で庇った。

「……何のつもりだ？　退け、私のHoly Swordの前では貴-samaの不死性も意味を成さないぞ」

「そうだっ、Miles -dono。Vandalieu -donoから預かった貴方が私を庇う事は無い！」

「何でそこで同じ意見なのよ」

　前後でRickertとIrisに退く-samaに言われたMilesは、ますます激しくなる【Warning】の音に眉をしかめた後、肉食獣のようにfangsを剥き出しにして笑った。

「ワタシはボスからあんたの力に成るようにって言われてここに来たのよ？　そのあんた見捨ててどうするのよ！　寧ろ、見捨てて生き延びた後ボスに何言われるかって考えたら、死ぬより怖いわ！」

　何せ死んだからと言って終わりでは無いのだ。あの上司の部下である以上、死ぬ瞬間まで死後の心配をしなければならない。

「確かに……」

「きっと、怒りはしないだろうが……」

「……死んだ後、HELLが天国に思える扱きが待ってるな」

「死後、だけにって？」

　半死半生のHaj達が、気力を振り絞って立ち上がる。彼等が纏うLiving Armorも、『おおぉんっ！』と罅割れ欠けたconditionで唸り声を上げた。

　その-sama子を見たRickertは嫌な胸騒ぎを覚えた。

「その女は後半時も持たずに死ぬぞ。それでも庇うのか？」

　そう事実を指摘するが、Miles達はだからどうしたと彼を睨み返すだけで揺るぎもしない。

「仕方ない、Cuoco -donoは逃げてくれ。私は……Living Armorにでもしてもらおう。剣の父と、鎧の娘なら似合いだ」

　Irisがbloodが足りず白い顔をしたまま微笑むのを見て、Rickertの胸騒ぎは確信に変わった。

「Erwin、Dhampirとの交渉は確実に失敗する。賭けてもいい」

「その時は始末するだけだ。お前がやらないなら、俺がやるぞ、首から上は傷つけないようにしてやるから、切り落とせ。

　後お前等、まさか俺が何時までも甘い顔をして殺さないと思っているなら――」

「あ、終わったわ」

　苛立った-sama子のErwinの言葉を、あっけらかんしたMilesの声が遮った。

「ブブ、何？　諦めたの？」

　交渉をErwinに任せていたBebeckettが戸惑って聞き返すと、耳障りな鐘の音が止ってすっきりした-sama子のMilesが言った。

「いやね、あんた達が終わったって言ったのよ。ねぇ、ボス？」

　そのMilesの言葉が何を意味するのかBebeckett達が理解する前に、彼等の頭上に一切の前触れも無く大きなshadowが出現した。

　Legionと一緒にTalosheimから【Teleportation】して現れたVandalieuは、こちらを見上げるBebeckettやErwinの姿を瞳に映した。

　そして彼のbody partから爆発的な勢いで黒いManaが溢れ出て、Iris達を包んだ。

・Title explanation:：Champion

　another worldから来た者(召喚、偶然によるTeleportation、reincarnation問わず)がGodsと、大勢の人々(十万人以上)に認められる事で獲得できるsecondary name。

　かつてanother world『EARTH』からGodsに招かれたZakkartやBellwoodが獲得したが、彼等は最初から神に招かれた存在であり、Lambdaに降り立った時から人々に「神が召喚したChampion」として認め称えられた事ですぐ習得したsecondary nameである。

　効果は、装備しているArtifactや所持しているUnique skillの効果のincrease、Superior SkillへのAwakeningに必要な難易度の緩和等、既にChampionとして相応しい存在でなければ意味が無い効果ばかり。

　因みに、『Thunderclap』のSchneiderや『Blue-flame Sword』のHeinz等、このworldで生まれ育った存在は幾らGodsと人々に認められても、このsecondary nameを獲得する事は出来ない。

　another worldから前世以前のMemoryを持ちreincarnationしてきたVandalieuの場合は、FidirgやMerrebeveilだけでは条件を満たせなかったが、Boundary Mountain Range内部のGodsと人々に認められた事で獲得する事が出来た。