God of ReincarnationであるRodcorteは、Boundary Mountain Range内部の国々でVandalieuが本格的に活動を開始した事に気がついていた。
Rodcorteと彼の力によって人の魂から昇華しFamiliar Spiritと成った者は、MububujengeやZanalpadna達Godsが張り巡らせたBarrierにより、湿地帯以南のHuman、Dwarf、Elfのrecordをリアルタイムに見る事は出来ない。
しかし Bugitasやガルギャ達が癇癪や戯れで殺したHuman等の生前のrecordから、湿地帯以南の国々で大規模な争いが起きた事には気がついていた。
そしてその後、Zanalpadna KingdomやHigh Kobold Kingdom、High Goblin Kingdom、そしてついに先日からNoble Orc EmpireでHuman達がRodcorteのCircle of Reincarnation systemから消えるようになった。
Vida's New Racesの内monstersにrootsを持つraceは、Human等を自らのraceに変異させる事でRodcorte式Circle of Reincarnation systemにある魂を、Vida式Circle of Reincarnation systemに移す事が出来る。
だがそのために必要な儀式の難易度がraceごとに異なり、短期間に大量のHumanをVida's New Racesに変える事はほぼ不可能だ。
唯一の例外は、儀式を必要とせず魂をVida式Circle of Reincarnation systemにGuiding事が出来る、Vandalieuである。
ただ、確認は取れていない。Marshlands以南の国々ではHumanやDwarf、Elfは戦闘要員では無いため、Bugitas達がそれらのraceの者達をあまり殺さなくなってからの情報が、殆ど入っていないからだ。
だからShimada IzumiやMachida Aranはconjectureを重ね、VandalieuがMarshlands以南の国々との争いに介入した結果短期間で勝利し、その後の植民地化と戦後復興を行う過程でHuman達の魂が導かれているのではないかとconjectureした。
ただ、その政策の為にVandalieuは暫くの間……数年から十年以上Continent南部に力を注がなければならないのではないかと、conjectureした。
このconjectureは『Earth』や『Origin』での戦争や植民地政策の歴史に頼り過ぎた物だった。
そして『Origin』で死亡したReincarnator達は、そのconjectureも含めて一ヶ月の期限barelyまで悩み考えたが、「今reincarnationすれば数年から十数年の間、Vandalieuの注目はBoundary Mountain Range内部に向くのではないか」というconjectureに背中を押され、それぞれに決断した。
【Oracle】のEndou Kouyaは、reincarnationでは無く【Inspector】のShimada Izumiや【Calculation】のMachida Aranと同じく、RodcorteのFamiliar Spiritに成る事を選択した。
彼は戦闘に関する技術を最低限しか身につけておらず、また『Origin』ではほぼ完全な精度を誇っていた【Oracle】のAbilityも、Rodcorte式Circle of Reincarnation systemに含まれないmonstersやVida's New Racesが存在する『Lambda』では、参考にもならないと考えたからだ。
それなら一から訓練を積んで苦手な戦闘技術を鍛えるよりも、reincarnationしないまま仲間をfollowする方が貢献でき、また自身の為でもあると判断した。
『Mage Masher』のMinami Asagi、『Ifritah』の赤城晶子、『Clairvoyance』の天道達也は、大人のBodyでreincarnationする事を選んだ。
Asagiと赤城はVandalieuを止めるために、そして天道はVandalieuに「自分は敵対するつもりはない」と伝えるために。
天道はVandalieuが【Death Scythe】のKonoe MiyajiにDivine Realmから直接攻撃された時、利用されただけだった。しかし、その事情をVandalieu本人は知らない。
Vandalieuは天道達也のnameとAbilityしか知らないだろうから、彼がMiyajiと協力して自分を殺そうとしたと思い込み、危険人物、最優先の抹殺対象と認識されていてもおかしくない。
なら逃げ回る方が逆に危険である。そう天道は考えた。一足先にreincarnationした【Noah】のMaoに同行して Bahn Gaia continent外に逃げ出す選択をしなかったのも、Maoまで巻き添えで危険に晒してしまうと考えた結果だった。
ただ、三人はreincarnationを決めた後一つ条件を出した。
『俺達がreincarnationした後にreincarnationするって……せこくないか?』
【Chronos】のMurakami Junpeiが呆れてそう言うと、Asagi達もうんざりした顔つきで言い返した。
『自分の胸に手を当てて考えろ』
『自衛の為には当然だろ』
『あんた達にreincarnationした場所や姿形を見られるなんて、冗談じゃない』
酷い言われようだが、『Origin』でAsagi達『Bravers』を裏切ったのだから無理も無い。
『それだったら、お前等が俺達のreincarnationする場所と新しい姿を見るのは良いのかよ? お前等が後で俺達を殺しに来ないって保証が、何処に在る?』
ごねるMurakamiだが、実際はAsagi達が自分を殺しに来る可能性は低いと思っていた。自分達の方が数は多いし、何よりAsagi達の性格上考えにくいからだ。
『お前達が俺達や他の仲間を殺そうとしない限り、しないって言っただろ。『Lambda』worldのHumanに俺達の力がばれる』
それ以上に、『Lambda』ではUnique skillと呼称されるCheat Abilityが周囲にばれると、自由に生きづらくなると言う事情があった。それを避けるためにも、Reincarnator同士の衝突はExtreme Strength避けたいからだ。
Unique skillを持っていると知られるだけで、another worldからのReincarnatorだと見破られるわけでは無い。しかし、『Lambda』ではUnique skillの所有者は少なく、それだけで注目を浴びる事になる。
そのUnique skillが今までにない特殊なskillだったら……自分や他人のmagicやMartial ArtsのActivate timingを強制的に操作するskillや、周囲のattribute magicをNullification化するskillだと知られたら、その注目はどれ程になるか分かったものでは無い。
certainly Mao同-samaに、guildの登録時等の手続きからUnique skillを隠すskillがReincarnatorには与えられる。そうして普段は隠し、使う時もばれないよう注意するが、生きるか死ぬかの瀬戸際ではそうもいかない。
そして、Rodcorteから釘も刺されている。
『reincarnation後の人生では仕方ない場合もある事は理解する。だが、何度も言うように無益な潰し合いはしないでもらいたい』
釘は刺されてもreincarnationしてしまえばRodcorteはReincarnator達が生きている間は直接どうこうする術は無い。しかし、Murakami達にとっては、報酬を支払う雇い主でもある。正面から意向に逆らうのは拙い。
それに、reincarnationする前に幾つかの制限を付けられている。
【Chronos】や【Mage Masher】、Tsuchiya Kanakoの【Venus】等のCheat Abilityは、Vandalieu以外のReincarnatorには効かないよう調整を施されている。
『その制限は、最初からやっといて欲しかったよな』
『まったくだわ』
Aranと泉が口々にそう言うが、RodcorteはそもそもReincarnator同士でお互いに殺し合う事態になると想定していなかったので、今まで思い至らなくても仕方ないだろう。
『その無益な潰し合いに関してだが、Vandalieuに関する条件は前もって決めた通りで良いんだな?』
『Vandalieuを殺すか、止めるのをお互いに妨害しない。どちらかが先に試みている間は、Vandalieuに接触しない。
そして、もしAsagi達が止める事に成功したら殺すのを止める。よね?』
MurakamiとKanakoの確認にAsagiが頷き、Rodcorteに視線を向ける。
『ああ、そうだ。あんたも不満は無いよな?』
『不満はあるが、-kun達の意思を尊重しよう』
Asagiの言う「Vandalieuを止める」には、幾つかの方法がある。Vandalieuがsuicideを受け入れ、強引に魂をRodcorteのCircle of Reincarnation systemに戻されて、四度目の人生を生きるよう説得するのも一つだが、生きたままVandalieuがDeath-Attribute Magicを手放す……封じる方法もある。
AsagiはそれをVandalieuに持ちかけて説得するつもりだ。……AranやKouya、先にreincarnationしたMao、これから一緒にreincarnationする赤城と天道の二人からも、「失敗するから止めて」と説得されているのだが。
(どう考えても、決裂した挙句殺し合いにdevelopmentする未来しか見えねぇ)
(何でこの人、classmateだっただけなのに、最後は分かり合えると信じられるんでしょうね?)
Murakami達はAsagiを止めていないが、絶対上手く行かない、確実に失敗すると思っていた。
そしてRodcorteも、内心では『どうせ失敗して最終的には戦う事になるだろうから、放っておこう』と思っているのは明らかだ。
……もしかしたらAsagiも自分が試みようとしている説得の成功率が、限り無く低い事を分かっているのかもしれない。しかし、同じEarth出身であり元classmateの絆があるから、諦めなければ望みはあると思っているのだろう。
『どうでも良いからさっさと行けよ!』
【Marionette】のInui Hajimeが苛立った-sama子で怒鳴り声を上げる。彼は、Murakami達から離れ、しかし Asagi達にも、Maoとも合流せずに一人で、そして最後にreincarnationすると宣言していた。
彼の疑心暗鬼は最後まで晴れなかったようだ。
『はいはい、分かりましたから静かにしてくださいね。じゃあ、あたし達七人、よろしくお願いしまーす』
Kanakoがそう言うと、【Gazer】のMinuma Hitomi、【Death Scythe】のKonoe Miyaji、そしてInui Hajimeを欠いて七人に減ったMurakami組はreincarnationしたのだった。
「かはぁっ……。鼓動に呼吸、生きているって良いものだな」
若返ったbody partの具合を確かめながら、Murakamiはreincarnationする前の魂だけのconditionには無かった充実感に珍しく感傷的な気分に成った。
『Earth』や『Origin』で生きていた時は気がつきもしなかった。大切な物は失って初めて分かるという言葉は、Mariだと分かった。
「【Status】……よし、-chanとMurakami JunpeiからJunpei Murakamiに変わったな」
『Lambda』では氏名を漢字で表記する事は一般には無い。Champion達からJapan語が伝わっているのだが、殆どの平民は平仮名と片仮名しか読めない等幾つかの理由があって、そうなっている。
そのため、Murakami達もRodcorteがStatusを調整する際に氏名も調整するようdemandしたのだ。
ただ本格的な改名は出来ず、カタカナ表記にする事しか出来なかったが。本格的に氏名を変えたいのなら、通常通り生まれ変わって新しい両親に命名してもらうしかないらしい。
「それはin any case……お前等、具合はどうだ?」
「いや、少しは隠そうとしろよ。何であんたそんな堂々としてんだよ」
「……男女別に分けて少し場所を離して欲しいって、注文を付けるべきだったわね」
素っ裸のまま股間を隠そうともしないMurakamiに、【Odin】の狭間田彰……Akira Hazamadaが文句をつけ、【Sylphid】のMisa……Misa Andersonが眉間を抑える。
「恥ずかしがるようなageでも無いだろ。body partは十代に戻ったが」
大人のbody partにreincarnationといっても、Murakami達の新しいBodyはHumanの十代半ば相当のappearanceだ。それぐらいのageなら、barelyだがJobに就いていなくても、そう珍しくないからだ。
これもAranや泉がこのworldの事情を調べた事で、決まった変更点である。
「appearanceはどうだ?」
「ああ、前世の若い頃って感じだよ」
「特に変わった所が無いな。……another worldなのに人類のappearanceが同じなのって、やっぱり妙じゃないか?」
Murakami、Hazamada、そして【Hecatoncheir】のDoug Atlas、male陣三人はreincarnation先のraceに全員Humanを希望した。
その人相や体格はBodyが魂にimpactされるために、前世の姿のvestigesが濃い。前世を知る者に「ageの離れた弟です」と言ったら、「brothersにしても似すぎてないか?」と返されるだろう。
これからVandalieuを殺そうというのに、Maoの-samaに前世のappearanceからかけ離れようとraceを変えないのは何故か。それは今頃RodcorteのDivine RealmでAsagi達が、Murakami達の新しい姿を見ているはずだからだ。
無益な潰し合いはしないと約束したが、Asagiの目的はVandalieuの説得だ。彼の信用を得る為だったら、仲間では無いMurakami達の情報を渡す事を躊躇わないだろう。
Dwarfに生まれ変わろうが、肌の色を白や褐色に変えようが、Asagi達がVandalieuに教えてしまえば意味が無い。無意味どころか、body partのSizeや生態が大きく変わるため慣れるまで時間がかかってしまう分マイナスだ。
なら、『Origin』の頃のBodyに近い物を選んだ方が良い。
「う~ん、なんだか音が良く聞こえる気がしますね」
「Manaが増えているし、attribute magicが前世よりも使いやすそうね」
「【Status】! なるほど、これはgameだわ」
「【Aegis】……力は前世と同じ手応えね」
そしてKanako……KanakoやMisa、【Super Sense】のGotouda薫ことKaoru Gotouda、【Aegis】のMelissa J Saotome達female陣は全員Elfにreincarnationする事を選んだ。
「お前等、何で全員Elfなんだ?」
もの珍しそうに彼女達の裸体では無く耳を見るMurakamiに、Kanakoは答えた。
「長命でAgingし難いraceだと聞いたので。前世ではお肌の曲がり角を超えていましたからね」
「Manaが多くて、【Sylphid】やattribute magicが使い易くなるだろうraceだからよ。appearanceが良いのも、否定しないけどね」
ElfはHumanよりもMuscular StrengthやEnduranceで劣るが、Manaとmagicの素質では勝るraceだ。そして、Kanakoが言うように五百年前後の寿命を持つ長命のraceである。
Humanに比べるとMuscular StrengthやEndurance面でのハンデがあるが、levelを上げて戦闘系Jobに何度か就けばAbility Valuesがincreaseし、誤差程度になる。
普通は何度もJob changeする事自体大変な努力と労力を必要とするのだが……Rodcorte’s Divine Protectionを持つReincarnator達なら、難しい事では無い。
「一人ぐらいHumanか、Dwarfを選べよ。Elfが四人もなんて、目立って仕方ないだろうが」
「一人だけ早くageを取るなんて嫌ですよ~」
「……Vandalieuを殺したら、別のworldに生まれ変わるんだから、関係無くないか?」
「おしゃべりはそこまでだ。そろそろこの先に居るmountain bandit団を皆殺しにして、服と当座の金と、Experience Pointを手に入れるぞ」
Murakamiの号令で、Reincarnator達は動き出した。
mountain bandit……犯罪者とはいえ人を殺して略奪するとは、Japan人の感覚からかけ離れた行為だ。しかし、Murakami達は自分達の行為に抵抗も違和感も覚え無かった。
前世では『Bravers』を裏切るまで国際的な凶悪犯罪者やterroristを追っていた彼等だ。殺す事が前提のmissionを何度も経験している。
そして『Bravers』を裏切った後は……実際にはUnited Statesの捜査官だった訳だが、terroristとして『The 8th Guidance』と行動を共にしている。相手を殺して物資を略奪するくらい、珍しくも無い。
違うのは相手が研究者や軍人では無く、mountain banditである事だけだ。
そうして粗末ながら服と資金、そして物資を手に入れたMurakami達は近くの町を目指して移動を開始した。
【Gungnir】のKaidou Kanataの-samaに、無軌道に商人やadventurerを襲ったりはしない。この『Lambda』で過ごす三度目の人生を寿命一杯まで末永く過ごすつもりはないMurakami達だったが、流石に数か月でVandalieuを殺せるとは考えていない。
Vandalieuが持つ【Demon King Fragment】に対抗できる力を付ける為に、更に彼を殺した後runawayするだろうfragmentをsealedするために必要な物を集める等、長期戦が予想される。
恐らく最低でも年単位の時間が必要に成るため、目先の欲に駆られて悪事を働いて敵を増やすつもりは無かった。
特に問題無く、事態は進んでいる。
だが町に着いて数日後、Murakamiにとって予想外の事態が発生した。
Kanako、Melissa、そしてDougが彼等の前から姿を消したのだ。
「あいつ等……よりにもよって裏切りやがったな!」
Murakami達が滞在している町から出たKanako、Melissa、そしてDougの三人は街道から外れた森の中を進んでいた。
「銀貨を上げた元商人のhomeレス-sanからあたしの【Venus】で奪ったMemoryによると、このまま進めば三日で他の街道に出るはず。そこからまた他の森に入れば、隣のDuchyに出るはずです。
あ、道中はそれなりに危険なので二人とも覚悟してくださいね」
「危険たって、mountain bandit程度だろ。暇つぶしにしかならないぜ。まあ、Elfの女が二人もいるから、気合を入れて襲い掛かって来るだろうし、面倒だとは思うけど」
「油断はしないようにね。私達はskillやMartial Artsの使い方がまだ慣れてないんだから」
先頭を進むKanakoに、MelissaとDougが続く。三人とも数日の間にAdventurer’s Guildに登録を済ませ、それなりに装備を整えている。
鎧もWeapon Equipmentも新人adventurerらしい安物ばかりだが、三人の実力はそれぞれskillのlevelだけならBClass adventurerに匹敵する上に、Cheat Ability持ちだ。mercenary崩れのmountain bandit程度なら、Originの軍用ボディArmorやコンバットknifeと比べて圧倒的に頼りない皮鎧とknifeでも問題無い。
ただ、『Origin』には存在しないMartial ArtsにReincarnator達は不慣れであり、優れた使い手と戦えば不覚を取る事は十分考えられる。
その優れた使い手がmountain banditに身を落す事はほぼ無いとはいえ、油断しない事にこした事は無い。
「それで、これからどうすんだ?」
「certainly sensei……Murakamiから離れるんですよ。とりあえず、他のDuchyまで行けば大丈夫だと思います。一応、Aran達にあたし達の居場所を教えない-samaにって、頼み込みましたし~」
そしてKanako達三人は誤解でも擦れ違いでも無く、Murakami達から本気で離れるつもりだった。
「追ってこないかしら?」
「ある程度離れたら大丈夫でしょう。『Origin』の時と違って、Reincarnator同士の殺し合いにAbilityが使いにくくなりましたからね。Murakamiも避けるでしょう」
心配顔のMelissaにそう答えるKanako。しかし、まだMelissaとDougは不安らしい。
「だけど、あのMurakamiだぜ。落ち着いたら金で殺し屋を雇うとか、色々してくるんじゃないのか?」
「その可能性が無いとは言いませんけど、その金で雇われた殺し屋はReincarnatorじゃないですから、Abilityが使えますよ」
「あ、そっか」
「それに、Murakamiもそこまで万能じゃないですからね~。特に、今は裸一貫で生まれ変わった直後ですよ。殺し屋を雇うお金も、裏社会とのconnectionも無いんですから」
「でもあいつ等ならそれぐらい、その気になればすぐに手に入れられるんじゃない?」
Melissaの言う通り、Murakami達がその気になれば金もconnectionも数か月程で手に入れる事が出来るだろう。
現時点でmagicの腕はBClass adventurer並なのだから、Murakami達は稼ごうと思えば幾らでも稼げるし、そんな彼等と繋がりを持ちたいHumanは社会の表裏問わず存在するはずだ。
「そりゃあそうですけど、それ凄く目立ちますよ。数か月で大金を稼ぐ新人adventurerなんて、当然瞬く間に昇Classする事になるでしょうし」
MurakamiはVandalieuを殺す事を目標にしているので、目立つ事は避けたいはずだ。だがBClass以上のadventurerはどうしても注目を浴びる。町から町にこっそり移動するだけでも、方法を考えなければならなくなる。
目立ちたくないならCClass adventurer程度で昇Classを止め、実力を隠しながら程々に活動するしかない。
「それなら私達もVandalieuと接触するまで何とかなりそうね、Kanako」
「でしょう? なんたってこのworldには電話もnetも無いですからねー。CClass adventurer程度なら、他のDuchyまでnameが届く事はまず無いそうですし」
「ああ、生きる希望が見えて来たぜ」
Kanako達三人がMurakami達から離れたのは、Vandalieuと接触し彼の国に移住するためだった。
その理由は二つ。まず自分達ではVandalieuを絶対殺せないと確信しているからだ。
Murakami達と協力しても、まだ『Origin』で生きている【Avalon】のRokudou Hijiriや【Braver】のAmemiya Hirotoがこのworldに来ても、きっと勝てない。
それはdeath attributeのManaのrunawayで命を落としたKanako、Melissa、Dougだからこそ抱いた確信だった。
Cheat Abilityを持っていようが、関係無い。【Aegis】のBarrierも、【Hecatoncheir】のMental Powerも通用しなかった。Kanakoの【Venus】もそうだろう。
寧ろ、Murakamiも同じようにdeath attributeのManaのrunawayで死んだのに、何故Vandalieuを殺せると思うのかが、理解できない。
「後、Asagi達にも目を付けられないようにしないと」
そしてAsagi達がVandalieuにしようとする説得は……Reincarnatorと無暗に争わない-samaにして欲しいという交渉はin any case、Death-Attribute Magicを放棄させようとする説得は確実に失敗するとKanakoは考えていた。
Asagiが存在を信じて疑わない元classmateや同じ学校の仲間としての絆は、Vandalieuとの間には存在しないのは明らかだ。そもそも、彼を『Origin』で殺したのはその元classmate達だ。
もしそんな物があったとしても、自分が持つ最大の力を自ら手放すidiotが何処にいるのか。
倫理観や正義で説得するにしても、望みは薄い。僅かな情報だけを見ても、Vandalieuが独自の価値観で生きている事は確実なので効果があるとは思えないのだ。
赤城と天道が上手くAsagiに諦めるよう説得するしかないだろう。
その際、Kanako達がAsagi達と一緒に行動していたら、Vandalieuの中の彼女達の印象まで悪化してしまう。
それに最悪の場合、Asagiが引かずに結局Vandalieuと殺し合いになる可能性もある。それに巻き込まれるのは絶対に避けたい。
「まあ、そもそもAsagi達が俺達を信用するとも思えないし。俺達の間には絆が無いし~」
「そうよね、絆が無いし」
「あたしも元classmateなんですけどね~」
そう口々に言いながら、三人は歩く。
Murakami達から離れた二つ目の理由、この『Lambda』worldで最も文明的、文化的に発達するだろうTalosheimへの移住を目指して。
因みに、RodcorteはKanako達を今の所は静観する積もりらしい。実際にVandalieuに擦り寄ろうとしたら、警告を告げるOracleや、blessingsの剥奪ぐらいは在るかもしれないが、現時点ではKanako達が再度心変わりをする事を期待しているのだろう。
「でも受け入れてもらえるかしら。土下座くらいするけど」
「靴を舐めろって言われたら、抵抗はあるな」
「希望は有りますよ。【Death Scythe】のidiotがやらかした時に、あたし必死にappealしましたし」
あの時腕でバツを作って首を横に振って、必死にappealしたKanako。彼女は、そんな自分をVandalieuがしっかり見ていた事に気がついていた。
「四度目の人生に無謀な夢を見るのは止めて、三度目の人生は堅実に、そして快適に生き延びる事目指しましょう。出来れば、Idolにも成りたいですけどねー」
「それは一人で頑張ってね」
「おう、応援はするぜ」
「……いや、三人Unitでなんて言ってないじゃないですか~」
Murakami達七人がreincarnationした後、Asagi達三人がreincarnationした。更にその後、【Marionette】のInui Hajimeはreincarnationした。
Vandalieuも恐ろしかったが、自分の姿と生態を大きく変える事を恐れた彼は、新しい人生を生きるのに『Earth』や『Origin』の人類とほぼ同じ、Humanを選んだ。
そして、通常通り赤ん坊にreincarnationする事も避けた。幼く自由が効かない幼年期から少年期の間に、他のReincarnatorやVandalieuに殺される可能性を考えると、大人のbody partでreincarnationする以外の選択肢が無かったのだ。
「……後は、森か山の中で余生を過ごすか。いや、でも『Origin』のSurvival術が、そのまま使える訳じゃ無いし……やっぱり、暫くは町で暮らすか」
Murakami達と同じようにmountain banditから奪った服と装備を身につけてInui Hajimeは――Hajime Inuiは歩いていた。
一応軍隊で訓練を受けたためSurvival術も一通り習得している彼だが、another worldでそれが通用するか自信は無かった。
「村は、人口が少ない分異物である僕は目立つ。やっぱり町か……少し稼ぎながらこの辺りで必要なSurvivalの知識を……いや、いっそ纏まった金を稼いで何処かの村で家と畑を買って自給自足の生活をするのはどうかな? 引退したadventurerですとでも言えば、そう目立つ事は無いだろうし」
『随分と弱気じゃないか』
「っ!? Rodcorte!? それともAranか!?」
自分の声以外に聞こえた、いや脳内に直接響く声に驚いたHajimeは、思わず身構えた。
『そう怯えるな。それに、俺はRodcorteやそのFamiliar Spirit共じゃない。俺は『God of Thunderclouds』Fitun。Hajime Inui、お前を見込んだ神さ』
「このworldの神だって!?」
聞いた事の無い神の名に、Hajimeは驚愕に目を見開いた。Rodcorteから『Lambda』には人格を持つGodsが存在していて『Earth』や『Origin』と比べると頻繁に地上へ干渉している事を聞かされていたし、Aran達から代表的なMythやlegendの類を基礎知識として聞かされていた。
しかし、その神が何故自分に直接声をかけるのか、それに見込んだとは一体?
『疑問は尽きないだろうが、俺も無条件にお前と意思疎通できる訳じゃあない。地上にSpirit Cloneを降ろすだけでも、結構な力が必要なんでな。とりあえず俺のFamiliar Spiritを受け入れろ』
「なっ!? とりあえず受け入れろって、そんな事出来るはずないだろ!?」
Fitunのdemandを、Hajimeは当然拒絶した。Fitunがどんな神なのかも分からないのに、頷けるはずがない。
『何だ? 力が欲しくは無いのか?』
「欲しい訳ないだろ! 僕なんかが力を手に入れても、結局何も出来ないに決まってる!」
『本当に要らないのか? 負け犬のままで良いのか? お前、Vandalieuに殺されてもいいのか?』
「っ!?」
最も恐れている未来を言い当てられ、絶句するHajime。その彼の心に、Fitunは囁き続けた。
『自信を持てよ、Hajime。お前には素質が、aptitudeがある。Heroとして名を馳せ、神にまで至ったこのFitunが保証してやろうじゃないか。Hajime、お前はHeroに成れる器だ』
「僕が、Heroに……?」
『そうだとも、前世じゃ散々な目に合ったんだろう? 分かるぜ、負け戦ってのは辛いもんだ。
だが考えて見ろ、お前が望んだのは世捨て人としての生活か? 平和な村で畑を耕しながら、総白髪になるまで晴耕雨読を続ける人生か? Vandalieuの目に留まらない-samaに一生縮こまって怯えながら生きるつもりか?』
「そ、それは……」
『違うよなぁ? 男に産まれて素質とaptitudeもある。豪邸で良い女を侍らせて、美味い物を食って、何不自由なくluxuryに暮らしたい。高みから自分を称える民衆共を見下ろしたい。そうだろう?』
「でも、前世では……」
『前世では出来なかった。だから、現世ではこのFitunが与えようと言うのさ。それが可能に成る力を。
それとも、負け犬のままでいる方が心地良いのか? 強者の気まぐれで踏み躙られるような、細やかな幸せを大事にしたいのか? 自分を殺して下らない人生を生きる事を選ぶのか?』
「……」
言葉を無くしたHajimeは、そのまま立ち尽くした。
『Origin』で死亡してからずっと心が折れていたHajimeだが、彼はoriginally Self顕示欲、そして支配欲が強い人格の持ち主だった。
だからこそ前世では『Bravers』の中の一人では……Hero集団の中の一人ではenduranceできずに、Murakamiの誘いに乗ったのだ。
そんなHajimeにとって、Fitunの誘い文句はどうしようもなく甘美に響いた。そして、この誘いを受ける事が正しく、断る事が間違っているのではないか。そんなFitunの言葉に彼は同調していく。
「本当に、僕が……Heroに成れるのか?」
『ああ、成れるとも。お前なら、あのVandalieuを倒し、このworldのHuman全てに認められ、俺以外のGodsにも賛美される、真のChampionに成る事が出来る』
「僕がVandalieuを……そうだ、考えてみれば、全てあいつが悪いんじゃないか」
『Earth』では自分と同じただの学生だった……それなのにdeath attributeなんてManaに目覚めて、しかも死ぬ前に下らない人助けをして『The 8th Guidance』なんて厄介な連中を残しやがって。奴のせいで『Origin』は滅茶苦茶になったじゃないか。
そもそもあのAmemiya Hirotoだって、Vandalieuが『Origin』にreincarnationする前、Rodcorteにnameを間違えられた事に気がついていれば、自分の分のCheat Abilityを-chanと受け取っていれば、あそこまで強力に成る事は無かったんだ。
一度そう考えると、『Origin』で経験した不遇が……自業自得だったものも含めて、全てVandalieuに原因があるようにHajimeには思えた。
「莫大なManaとDeath-Attribute Magicで、今は自分の国を治めて何人も女を侍らせて好き勝手……しかも『The 8th Guidance』の連中も、あのIsisも!
なのに、何で僕が三度目の人生まであいつに怯えて生きなけりゃならないんだ!? 分かった、僕はあんたを受け入れる!」
『よ、よし。今からお前にblessingsとArtifactを与える。Hajime Inui、お前はこの瞬間から俺のChampionだ』
自分で煽ったとは言えHajimeのrunaway気味な思考に、「止めておくべきか?」と若干躊躇ったFitunだったが、他のReincarnatorを待つのも面倒だし、その前にAldaにReincarnator達の存在がばれる可能性もある。
それに、Hajime以上に自分が利用するのに便利なReincarnatorがいるのかも不明だ。
そのまま彼にblessingsとArtifactを与える事にしたのだった。