Humanの町の襲撃を企むNoble Orc率いるOrcの大集落が、その企みを実行する前にGhoulの集落を襲撃する恐れがある。

　Vandalieuはfamily同然のGhoul達と共に、Ghoul Kingの称号を得て戦うのだった。

　そんなVandalieuが今行っているのは、Alchemyの修行だった。

　擂鉢の中身をすり潰しながら、Manaを一定量流し続ける。ちなみに中身は、Koboldのbone、KoboldのMagic Stone、poisonトードの内臓を干して乾かした物、そして自分自身のblood。

　これで出来た物で魔法陣を描き、それがmagic itemとして機能したら成功。しなかったら失敗。どちらの結果でも、skillを習得するまで繰り返す。

　擂鉢の中身が多少違っても、修行の中身は変わらない。

　Orcの上位種であるNoble Orcという強大な敵に率いられた、GoblinやKoboldを合わせれば約五百のmonstersの群れ。そんな強大な敵が存在するというのに、Ghoul Kingなんて称号を貰って置いてこんな事をしていていいのか？

　こうしている今も囚われた女Ghoulや女adventurer達が慰み者にされているというのに！

　なんて事は考えず、Vandalieuは擂鉢の中身をすり潰す作業を続けた。

「こういう時、焦ったり先走ったりすると良くない事が起きるのがお約束だ」

　それがVandalieuを含めたGhoul達のpolicyだった。

　certainly情報収集は行っている。VandalieuがUndead Transformationさせた虫を放ち、Noble Orcの集落の場所や他のGhoul達の居場所を探し、Zadiris達もMemoryにある他のGhoulの集落に使者を送っている。

　だが、情報が手に入るまでは焦って動く必要は無い。相手が動き出すのは早くて春。そして今は真冬前の十二月の終わりだ。

　OrcのBreedingは妊娠期間が半年で、生まれたchildはやはり半年で大人になるというハイpaceなので、敵の数があまり増えないように情報が手に入り次第動くつもりではあるが。

「それにしても、skillって中々手に入らない」

　しみじみとそう思う。既にAlchemyの修行を始めて数か月が経っている。それなのにまだ技能を獲得していない。

「そういうものじゃよ。寧ろ、monstersの中では坊やは早い方じゃ」

　しかし、Zadirisはそう言う。

「Humanとしてなら、別かもしれんが」

　skillは基本的に１から１０level。

　１levelで技術が身に付いて来た新米。武術ならようやく技を実戦で使えるように成った程度で、職人なら素人の趣味と同程度。

　２levelで武術なら平均的なSoldier、職人なら半人前。

　３levelで、武術ならadventurerやmercenaryの中で一人前と認められる。職人ならそれなりの腕だが、独立は許されない程度。

　４levelで武術ならその分野では腕利き、veteranと呼ばれる。職人なら、独立を許される最低限。

　５levelで武術なら一流の使い手で、ＣClass adventurerの平均。

　６levelで武術ならNobleの指南役が務まり、adventurerならＢClassが見えてくる。職人なら大きな都市で店が持てる技量。

　７levelで武術なら国やNobleからのscoutを受け、adventurerならＢClassに成っていなければ素行に余程の問題があるとみなされる。職人ならpupils入り志願者が年に何人もやって来る。

　８levelで国中に知られる程のAdept。

　９level以上で歴史にnameが残る。ＡClass adventurerはこの水準でskillを獲得している。

　１０levelで超人や人外の域だ。

　そして極稀に１０levelを超えて、上位互換skillに変化する場合がある。そうなると最早信仰の対象に成りかねない。Sword Kingや炎帝と称えられ、それ等も超えて神と称えられる腕前だ。

　Earthで言えば宮本武蔵だろうか。流石に彼も常に音よりも早く動く相手と一週間飲まず食わずで戦い続けたり、鋼鉄よりも硬い山のような岩をBisectionしたりする事は出来なかっただろうが。

　それがDarciaやZadirisに聞いた話からVandalieuがconjectureした、このworldでのskillの評価だ。

　そう考えれば、Alchemyや他のmagic系のskillを手に入れるのに何か月もかかるのも納得できる。

　だが、このworldにはEarthやOriginにも無かった要素が存在する。

　Jobによるskill補正だ。

　このLambda worldのHumanは、Jobに就く事でskillの獲得に補正を受ける事が出来る。それによって、skillの獲得やlevel upが早くなるのだ。

　そのため僅か数年で素人が一流のSwordsmanや職人に成長する事がある。職人の方はin any case、Swordsmanの方はそこまで経験を積む前に死ぬ事の方が多いという現実もあるが。

　逆に言えば、このworldでJobに就かないままskillを獲得してlevelを上げるのは難しい。優秀な師Artisanが居ても、pupilsがJobに就いている事が前提だからだ。

　そういう意味ではJobに就かないままskillを覚えlevelを伸ばしているVandalieuは、異質だと言える。

　前世の経験はCurseによって技能に反映されないが、それでも覚えた感覚と経験があるので習得に役立つ事と、莫大なManaを使って常人の何倍、何十倍も練習できるからなのだが。

　後は、Dhampirであるというrace補正のお蔭か。

　その証拠のように、EarthでもOriginでも経験の無い武術等のskillは全く習得できていない。

「つまり、Jobに就く事が出来れば習得はより容易だったと」

「まあ、そうじゃろうな」

「……この国を恨む理由がまた一つ出来ました」

　Job changeにはguild等の機関にある特別なroomが必要なので、Amid Empireとその属国ではmonsters扱いのVandalieuはJobに就く事が出来ない。

　尤も、Vandalieuがroomを使えたとしても【Cannot learn existing jobs】のCurseがあるため、Job change出来ない可能性が高いのだが。

「でも恨んでもskillが手に入る訳ではないので、地道に研鑽を積みましょう」

「うむ。偉いぞ、坊や」

　なでなでと頭を撫でるZadirisだが、Vandalieuの【Abnormal Condition Resistance】や【-Surpass Limits-】skillのlevelがincreaseした事を知ったら、すぐにこの地道な研鑽を積む事を止めさせるだろう。

　過労というStatus Effectと幼児の限界を超えた活動を長く続けているため、skillが上がっているのだ。

　ただ、Vandalieu自身は無理を止めるつもりはない。無理をするのは何時もの事だ。それこそ、Darciaが殺されてからずっと。

　次の日、他のGhoulの集落の場所が分かった。集落の数は十。だがその内何日もかけて行く必要があるのは、半分以下の四つだ。

　六つの集落は既にOrc達の襲撃を受けた後だった。

『おぉ、男は殺されっ、お、女は……グルルルルル！』

『ガアアアアア！　俺の群れっ、焼いた！　豚の奴等ガガガガ！！』

『イタイ！　イタイ！　kaa-sanが叫んでいた！　イタイ！　クルゥゥゥシィィィィイイイ！』

『オレタチ、襲った！　Ghoulをっ！　Bugogan -sama、命令！　Ghoulの毒っ、Orc Mage -sama達のmagicで、俺達効かない！』

　虫Undeadについて来たGhoulや返り討ちにされたOrcの霊から、Vandalieuは話を聞いていた。時間が経ちすぎて吠え声と鳴き声を繰り返すだけの霊も多かったし、そうでないのも断片的にしか話をしてくれないが、何があったのかは分かった。

　Noble OrcのBugoganは、規模が小さいGhoulの集落から順に襲撃していたらしい。Zadirisの集落以外のGhoulは、大体三十から五十程の数で纏まっていて、そこを息子のNoble Orcを隊長に据えSlaveのGoblinやKoboldも加えた八十程の数で襲撃したらしい。

　普通のGhoulの群れには、Ghoul MageやGhoul Barbarianのような強力な個体が居ない場合も多いらしい。そんな集落だと、Zadirisの集落では中間managementのようなRank４のGhoul Warriorが長をしているところもあるそうだ。

　そこをRank６のNoble Orcが襲撃するのだから、殆ど一方的にやられても無理は無い。しかも、Orc Mageの何匹かが、Ghoulが爪から分泌する麻痺毒に対してResistanceを得られるmagicが使えるらしい。

　このmagicを前もって兵隊のOrc達や一部のSlaveにかけているようだ。

　それでもGhoul達の抵抗は激しく、GoblinやKoboldは多数討ち取られるがそれでGhoulの女が手に入るならOrc達にとっては黒字という訳だ。

　そしてBugoganは百を超えるGhoulの男を皆殺しにし、百を超えるGhoulの女を攫っている。Ghoulの女は捕えてしまえばHumanよりずっと丈夫で長持ちするので、優秀な母体となる。

　どうやら、BugoganはGoblinやKoboldの雌に加えてGhoulの女を使って更に戦力になるOrcを増やしてきたようだ。

　Kobold Shamanがこの事を知らなかったのは、Spiritualistという役割故に前線に出されなかった事とSlaveだったからだろう。

「と、いう訳で大体一年毎にOrcは百匹増える。実際には訓練という名の苛烈な実戦で結構死ぬと思うけど、それでもAcceleration度的に増えて行くと思うので、奴らの臓物を生きたまま抉り、脳髄をばら撒いてやりましょう」

「坊や、怒っているのはよく分かったから落ち着くのじゃ」

「そうだ、冷静に成れ。若い者まで熱くなったら事だぞ」

「怒っている訳じゃない。霊達にemotions移入しているだけで」

「より悪くないか！？」

「坊や、漏れ出たManaが髑髏の形をしていて怖いのじゃが」

　countlessの黒い髑髏にたかられているように見えるVandalieuは、彼と親しいZadirisやVigaroもやや引くくらい怖かった。

　この集落以外のGhoulは、Vandalieuにとって他人であり特別気にかけるような対象では無かった。しかし、霊達から話を聞くとOrcに対する怒りを覚えずにはいられない。

「雄しかいないOrcの生態上、仕方ない部分もあるとは思う。そうしないとraceが維持できないし、libidoは三大欲求の一つだからenduranceしろと言うのも酷だ。寧ろ、Orcをこういう生態のmonstersとして創り出したDemon KingやEvil God (M)こそが一番悪い。

　でもムカつくものは仕方ない」

「……Vandalieu、お前、冷静なのか冷静じゃないのか分からないぞ。後、サンダイ欲求ってなんだ？」

「儂も知らんが……まあ、我を失っている訳ではないらしい事には、安心した。

　それで、まだ生き残っている集落は四つなのじゃな？　早速使者を送ろう」

　Tareaは集落の男達に指示を出し、自分自身は手製の玉座に座って自分に従う同族達を見下して悦に入っていた。

　黄色い瞳に灰褐色の肌、分泌する毒で紫色に染まった爪とTareaは何処から見てもGhoulの女だ。しかし、濁点が付く文字の無いnameからも分かるように、彼女は元HumanのGhoulだった。

　Humanだった頃のTareaは、腕の良いArms Artisanの娘だった。その素質を受け継いでいた彼女は幼いころからaptitudeの片scaleを見せ、将来は親を超える腕利きのArms Artisanになると期待されていた。

　しかし、彼女の住む町に大Chamber of Commerceが進出したimpactで、彼女の両親は店を失ってしまった。そして苦渋の決断を下した。TareaをSlaveとして売ったのだ。

　Tareaは確かにaptitudeのある娘だったが、彼女の下には息子が二人いた。そして当時、家を継ぐのはNobleでも平民でも男と決まっていたのだ。

　Tareaと弟達のaptitudeや技術の優劣がはっきりしていたとしても……いや、はっきりしていたからこそ、familyは彼女を売って、店を取り戻す事にした。

　そしてTareaはaptitudeがあるだけでは無く容姿も整っていて、更にShoujoでありながら既に男好きする体つきをしていたため高値で売れた。

　売られた先でProstituteとして働く事を強いられた彼女は、familyの裏切りと自身の境遇の変化に深い傷を心に負い、更にarroganceな客の相手を何度もさせられ、耐えきれずに逃亡する事を選んだ。

　隙を見て客を殺し娼館を、町を逃げ出し、逃亡を続ける内にTareaは追っ手を撒くためにこのDevil Nestsに逃げ込んでしまった。

　そして追っ手からは逃げ切れたが、Ghoulに捕まってしまった。

　生きたまま食い殺されるとdespairしたTareaだったが、彼女を捕まえたGhoulの群れは小規模な上女が不足していたため、彼女が求められたのは肉では無くBreeding用の女としての役割だった。

　そして儀式を受けさせられてHumanからGhoulと化したTareaは、反抗する気力も失い無気力にGhoulの男達にbody partを開き、彼らの指図に従って生きる毎日を過ごした。

　Ghoulになってしまったため、群れを逃げだしても人に見つかれば殺されてしまう。

　しかも元HumanであるためGhoulになって手に入れたMysterious Strengthや毒を活かす術を知らない。

　そんなTareaが生きていくには、群れの男達に従うしかない。だが、こんな生き方を続けて未来があるのだろうか？

　そんなdespairに瞳を曇らせる日々に変化が起きたのは、男達が狩って来たGiantな猪のmonsters、Huge Boarのfurを目にした時だった。

　Tareaはそのfurを撫でながら昔を思い出し、良い鎧に成りそうだと呟いた。その呟きを耳にした男達が「じゃあ、作ってくれ」と言った。

　彼女は素直に作った。限られた材料で、Humanの町で売っているのと変わらない品質のGhoul用のleather Armorを。

　その瞬間から、Tareaの群での地位は長に次ぐものとなった。

　Tareaは男達が狩ってくるmonstersを材料に、次から次に武具を作った。HumanからGhoulにraceが変化していても、彼女のaptitudeはその輝きを変えていなかったのだ。

　GIANT Scorpionの甲殻で盾を、Iron Turtleのcarapaceで鎧を、Impaler Oxの角で槍を。

　Tareaが属する群れのWarrior達は、adventurer並の装備で武装し次々にmonstersを狩り、adventurerすら返り討ちにする力を手に入れた。

　更に気力を取り戻した彼女はProstitute時代に学んだ技術で男達を虜にし、bone抜きにした。それにjealousyする女達には、何と男をbone抜きにする手練手管を教え込んでやり、自分の下につくようにした。

　そしてGhoulになって百年、Tareaは群れの誰よりもweakまま群れの頂点に立ったのだ。

　それから百年以上、かつては十数匹しかいなかった消滅寸前の群れは六十を超える数に成り、他のGhoulの集落からもTareaの武具を求めてGhoulが代金代わりの食料を持って訪ねてくる程だ。そのinfluenceは既に百を超える数のZadirisの集落を超えている。

「フフ、この分なら後十年もすればこのDevil Nestsを支配できますわね」

　Treantから切り出した座り心地の良い玉座に座り、adventurerの死体から奪った宝石を嵌め込んだaccessoryで身を飾り、豊かな黒髪を伸ばし、Iron Turtleのcarapaceを薄く削りだし磨いて作った扇で口元を隠すTareaの姿は、まさにGhoulのQueenと称えられるに相応しい。

　……全て彼女自身の手作りなのが微妙だが。

　Zadirisの集落と付き合いが無く、Bugogan率いるOrcの大集落の情報を手に入れていないTareaは、自分の野望が現実になる事を疑っていなかった。

「ただの平民の、それもSlaveにまで堕ちた私がHumanよりもずっと強力なmonstersが跋扈するDevil Nestsの支配者……フフフ、胸が躍りますわ」

「Tarea -sama、俺の盾作ってくれ」

「Tarea -sama、あたしの鎧もお願いします！」

「もうちょっと待ってなさい！　言われなくても-chanと作ってあげますわっ！」

　もうそろそろ長の毎朝の日課は終わったかなと、-sama子をうかがっていたGhoul達が話しかける。毎朝ああやって悦に入るのが、Tareaの日常だった。

「長っ！　皆でメタルSlime倒してきたぞ！」

「何ですって！？」

　そしてnightの間に狩に出ていたWarrior達が戻って来ると、思わず玉座から立ち上がって瞳を輝かせる。

　そして彼女の前に皮の袋に入った銀色の、鉄と同じ重さのメタルSlimeのmucusと、やはり銀色のメタルSlimeの核が運ばれてくる。

　それを見た瞬間、Tareaはまるでloverに久しぶりに会う乙女のように頬を染めbody partをくねらせた。

「まぁ……液体と金属の両方の性質を持つメタルSlimeの素材！　どんなWeapon Equipmentに……いいえ、鎧？　ああん、どうしましょう、どうすれば良い武具が作れるかしらっ♪」

　無暗に色気を放ちながら色気の無い事を言っているTareaだが、彼女の集落のGhoul達は既に慣れきっているので驚きもしない。寧ろ嬉しそうだ。

　Tareaは腕の良い武具を作る長だし、平民だった頃の習慣の為か下の者にも大らかなので、二百五十ageを超えた事で女として一線を退いていても彼らにとって人気の族長-samaなのだ。

　なんだかんだでTareaもGhoulに馴染んでおり、Humanだった頃よりも充実した人生を楽しんでいる。

「長っ！　見張りの奴らから、ここに馬車が近づいてくるって報告が！」

　そこにまだ若いGhoulが慌てた-sama子で報告してくる。

「っ！　adventurerか。人数は何人なの？」

　Devil Nestsに馬車を使うmonstersなんて居るはずがない。ならadventurerしかない。

　メタルSlimeの素材を前にデレデレしていたのが嘘のように、Tareaの表情が引き締まり眼光が鋭くなる。

「それが、馬車の周りに居るのはGhoulで、馬車もUndeadっぽいらしいよ」

「……Ghoulは何人いましたの？　一人か二人なら、TamerにTamerされたGhoulの可能性があるわ」

　馬車の外にTamerしたmonstersだけを配置して、自分はcarriageの中に籠って偽装しているのかと思ったTareaだったが、馬車の外にはGhoulが五人。

　GhoulはGoddess Vidaにrootsを持つraceだが、monstersのbloodが混じっているためTamer出来ない訳ではない。しかし普通のmonstersよりもずっと難易度が高い。そんなGhoul五人と馬車のUndeadを同時にTamerしているとしたら、Tamerとしたら一流だ。

　そんな一流のTamerが、手間をかけて偽装するとは思えない。

「他の集落のGhoulが妙なUndeadを手懐けたのかもしれないわね……残っているWarriorは全員出なさい。私を守るのよ」

　流石に五人とUndead一匹で、集落のWarriorが半分しか残っていなくても殴り込みをかけに来るとは思えないが、念のために護衛を掻き集めて、Tareaは集落の表に出た。

　すると報告通り妙な馬車のUndeadを囲むようにしてGhoulが五人。

「止まりなさい。私の集落に何の用かしら？」

　大勢のGhoulに守られたTareaが声をかけると、馬車が止まった。

「話し合いたい。共通の敵が出た、お前達と繋がってる他の集落の奴らは、協力すると同意した」

「共通の敵……」

　Ghoulは共通の敵が出現した時は、race全体で協力体制を取る。それがただの同族意識による物では無く、最も生き残る確率が高いからだと元HumanのTareaにも解っているが、彼女は元Humanだけに疑り深かった。

　もしかしたら、自分達の集落の利益のために自分達を巻き込もうとしているのかもしれないと。

　共通の敵という言葉に動揺する群れのGhoul達を、扇をパチっと閉じる音だけで鎮めるとTareaは用件を告げたGhoulを見据えた。

「詳細を聞かせてもらえますわね？」

　Ghoulになって分かった事だが、Ghoul達は単純な性格の者が殆どだ。腹芸や陰謀にはとても向かない。

　だから、質問はstraightに、分りやすくした方が効果的だ。

「はい。詳細は俺から説明します」

　すっと馬車の幌から出て来た小さい人shadow。Ghoul達のshadowに隠れて見過ごしそうなそのちっぽけな姿と声にTareaは気が付いた。

　いや、見逃す事が出来なかった。

　ただそこにいるだけで、思わず跪きたくなるほどのcharisma性。

　長い白髪、bloodのような真紅と不思議な紫紺の瞳、そしてabnormalなまでに白い肌。明らかにGhoulでは無いのに、それでも目の前の存在が上位者であると確信させる何か。

　気が付くと他のGhoul達は既に膝を地面に突いていた。Tareaも耐えきれず両膝を地面に突こうとしたその時、それを止めるようにVandalieuは言った。

「あの、楽にしてください。Tarea -sanですね？　俺はこの度Ghoul Kingに就任致しましたVandalieuと申します」

　charisma性の主は、平伏しようとするGhoul達に只管恐縮していた。

　Goblin KingやKobold KingといったKingの名を持つ個体は、遭遇した同族を無条件に服従させ、配下に加える事が出来る。

　それは【Strengthen Follower】のskill効果に反応して、配下に加わる事でSelfとrace全体のEnhanced (1)を図りたいというmonstersのInstinctが原因だ。

　それと同じ事が……いや、それ以上の事態がVandalieuの訪ねたGhoulの集落で起こった。【Strengthen Follower】に加えて、【Death-Attribute Charm】のskill効果も加わって、相乗効果が凄い事になっているらしい。

「凄いっすね、King」

「まさか話しかけただけで平伏されるとは思わなかった」

　護衛のGhoulが言うように、色々と凄かった。まるで自分が某時代劇のご老公にでもなったかのような光景だった。

　Vandalieuにしてみれば、自分よりbody partのずっと大きい大人たちが土下座する光景は、気持ち良いどころか逆に申し訳ない気持ちになるのだが。

　三つの人生を合計すると四十年近く生きているが、主観的には十七ageと二十ageと二age七か月でMentalの成長はバラバラ。なので大人の自覚も意識も全く無いVandalieuは、Ghoul Kingの称号はskill効果を有効活用するためのHonorary職程度にしか考えていなかったので、大いに動揺していた。

　特に他の集落で聞いた、複数の群れにinfluenceを持つGhoulのQueenとも呼ばれるTareaまで膝を突こうとした時は、罪悪感すら覚えた。

「と、いう次第でしてTarea -sanの集落にも是非お力をお借りしたいと思っておりまして。certainly、報酬と呼べるかは分かりませんが、見返りをご用意させて頂きます」

　その結果、この腰の低さになっていた。

　communication Abilityの低いVandalieuの他人に接する時の基本policyは、「怒られないように下手に出る」事なのだがそれに更に拍車がかかっている。

「そ、そうでしたの。それで、見返りとは……？」

「今すぐではありませんが、少子化問題を解決する手段と、食料を長期保存するためのitemを提供できます」

　貨幣経済の無いGhoulに渡す報酬は限られる。Vandalieuが渡すと確約できるのは、近い将来作る少子化問題を解決するための物と、【Preservation】のmagicを込めたmagic itemぐらいだ。

「それは本当ですの！？」

　しかしその少子化問題を解決するという言葉に、Tareaも含めてGhoul達が驚き感嘆の声を上げる。Zadirisの集落だけでなく、少子化問題はGhoul race全体の問題だったからだ。

　それを解決できると言うVandalieuを、彼女達は崇拝の眼差しで見つめる。

『stressでAbnormal Condition Resistanceのskillがまた上がりそう……』

　と、口に出すのも悪い気がする。だって「友好的に成れ、でも過剰に反応するのは禁止」と言うのはselfishnessとしか思えない。

「でしたら、我々は喜んであなたの下に降りますわ、Vandalieu -sama」

「……もっと親しみを持って呼び捨てとか、-san付けとか、坊やとかで良いですよ」

　-samaづけは止めて。せめてもう少し成長してからにしてください。

「まぁっ♪」

　何故にそんなに嬉しそう？

「ではVan -sama、このTarea、御意志に従いお側に仕えさせて頂きます」

　そんな事求めた覚えは無いのだが、何故かTareaが側近に成った。解せぬ。

　しかし、Tareaにしてみれば新たな野望を見つけた瞬間だった。

　この幼いGhoulの王を盛り立てこのDevil Nestsの外に支配領域を広げてReignさせ、自分はその側近として栄華を極めるという野望を。

『まさか齢二百六十を超えて、こんなchanceがやって来るなんて！　フフっ、一度はどん底にthrust落とされたのですもの、何処まで上に上がれるか試してやりますわ。死ぬ瞬間までね！』

　そう野望に瞳をギラギラと輝かせるTarea。その瞳の輝きに負けたようにVandalieuはCouch Driving台に座るSamのSpirit Formに視線を向けるが……。

『Bocchan、相変わらず年上のfemaleにモテますな』

　そう褒められたが、望んでいるモテ方とはちょっと違う気がする。

『でもNobleになったらああいう人も寄って来るだろうし、丁度良い練習になると思うのよ』

　DarciaはTareaの分りやすい下心を見抜いていたが、これも経験よねと見守るつもりのようだ。

　Vandalieuにとって救いなのはTarea達が今感じているらしいcharisma性が、彼の下に完全に降って【Strengthen Follower】のimpact下に加わったらmonstersとしてのInstinctが満足して、弱まる事だろうか。

《【Strengthen Follower】skillのlevelがincreaseしました！》

　Devil Nestsの中を奇妙な女がたった一人で進んでいた。

　一人だけなのは、珍しいが無いわけではない。Adventurer’s Guildでは、adventurerの安全と依頼達成率維持のためにpartyを組む事を推奨しているが、ソロ活動が禁止されている訳ではないからだ。

　しかしよく見れば装備と挙動がおかしい。

　女の装備はどれも真新しく、しかも頼りなく見えた。傷一つない、胸や腰回り等を隠すだけの小さな、最低限ですら守っていないleather Armorに、彼女の顔と同じくらい小さな小盾。そして手に持つのは、ただの鉄でできた小剣。

　だが怯えた-sama子も無くDevil Nestsを進み、襲い掛かって来たHorn RabbitやGoblinといった低Rankのmonstersを、剣の一振りで屠って行く。

　しかし殺したmonstersから換金可能な討伐証明部位や素材を剥ぎ取ろうとしない。

「ソロソロカ」

　lipsの間から、全く生気を感じさせない声が洩れる。すると、女の周囲にOrcが現れた。完全に囲まれているうえに、その奥には通常のOrcより二回り以上Giantで、金色の髪を生やしたNoble Orcの姿が見えた。

　鼻息荒く身振りでWeapon Equipmentを捨てるように指図するOrc達に対して、女は抵抗するどころか迷うそぶりも見せず小剣をその場に落とした。

　その顔にはやはりhorrorも何も、あらゆるemotionsが浮かんでいなかった。

・Name: Tarea

・Rank: ３

・Race: Ghoul

・Level: １

・Job: Prostitute

・Job Level: １００

・Job History: Apprentice Arms Artisan、Arms Artisan→Slave(４７Ｌｖ時強制Job change)、Apprentice Prostitute

・Age: ２６３age

・Passive skills

Night Vision

Pain Resistance：１Ｌｖ

Mysterious Strength：１Ｌｖ

Paralyzing Venom Secretion (Claws)：１Ｌｖ

Allure：３Ｌｖ

・Active skills

Estimation：６Ｌｖ

Armor Smithing：６Ｌｖ

Weapon Smithing：６Ｌｖ

Seduction：５Ｌｖ

Dancing：２Ｌｖ

Love-making：２Ｌｖ

　TareaはArms Artisanとしてのaptitudeと同時にnightのaptitudeに恵まれたHumanのShoujoが、儀式を経てGhoulに成った特殊な個体である。群れのWarriorが使う武具を作り、更にbone抜きにして籠絡。自分以外の女Ghoulには、自分の手練手管を教えると同時にArms Artisanとしての技術を教え込む事で、上下関係をはっきりと分からせている。

　だが碌に獲物を狩った事が無いためmonstersとしてのlevelも上がらず、彼女はGhoulとしては最弱と言える。だが同時に、Weapon SmithingとしてはNobleのお抱えや、大きな町でも一番の腕前に成れるほどの技術を持っている。

　尤も、これは二百年余りの努力と経験の結果だが、Human社会なら手に入る最新の道具や整った環境と多種多-samaな素材があり、そしてJobをProstituteからArms Artisanに戻せば彼女の技術はより高まる事だろう。

・強制Job changeについて

　罪を犯した罪人やSlaveに堕ちた者に施される特別な処置。ただし、これによってAbility Valuesが落ちたりskillを喪ったりする事は無く、Status上の効果は当時就いていたJobのlevelが上がらなくなるだけだ。

　ただguild等でStatusを確認する時必ず表示されるので、Slaveの逃亡を防ぐ効果がある。

　しかしこれは二百年以上前に行われていた措置であり、現在ではAlchemyのdevelopmentにより所有者しか外す事が出来ない首輪を嵌める事の方が主流となっている。