『Evil god of release』Ravovifardは、originally存在していたworldにおいて神としては最弱の部類であり『Evil Dragon God of Five Sins』Fidirgや、『Evil God of the dark Forest』Zozoganteと同格……いや、僅かに劣る存在だった。
それはかの神の司る物に価値が無かったからだ。
Ravovifardが司るのはInstinctや欲望であり、reasonからの解放によって限界を超えた力を発揮させる事だ。
だが、彼等のworldではreasonを持つ者の方が少数派であった。多くの者は解放されるまでも無くInstinctや欲望に忠実であり、Ravovifardの力を必要としない。
そしてreasonやwisdomを持つ者は、多くの場合Body的Ability的に弱く、解放されても大きな力を得る事は出来ない。寧ろ、weakからこそ知性を発達させたraceばかりだ。そのため、やはりRavovifardを見向きもしない。
Ravovifardは自身の目が届く狭い領域で、自身の出身raceのみに奉じられるweak神でいることに甘んじなければならなかった。
それはDemon King Guduranisの下でDemon King Armyとなり、『Lambda』のGodsやChampionと戦っている時も同じだった。
Demon Kingを含めた邪悪なGodsは、このworldでの新たな僕としてmonstersを創り出したが、無制限に創り出せたわけでは無い。やはり、その神の力量によって創れるmonstersの強さや数は左右された。
Ravovifardは他の邪悪なGodsと比べてweak monstersを数百匹しか作る事が出来なかった。そしてFidirgがLizardmanに道具を作るよう指示したような柔軟な対応が出来ず、折角作りだしたmonstersもChampion達によってすぐに倒され数を減らしてしまった。
だと言うのに、Champion Zakkartからの誘いに見向きもしなかった。
それはZakkartの誘い文句の裏に、共存共栄という彼とは相容れない価値観を感じ取ったからだ。
RavovifardはweakままDemon King Armyとして戦い、そしてweak故に重要な役目を与えられなかったために、Bellwood達がDemon Kingを倒し、その体と魂を千々に割いた時にも生き残る事が出来た。
その時RavovifardはFortuneにも、Demon King Fragmentの一つ【Demon King's Scent glands】を手に入れた。
それからだ、かの神を取り巻く状況が変わったのは。
多くの邪悪なGodsがsealedされ、若しくは力を失って眠りについたために、多くのmonstersがmasterを失った。そのmonsters達をRavovifardは僕とする事に成功したのだ。
Ravovifardが司るのはInstinctと欲望。故に、知性のfragmentも無い獣型や植物型のmonstersでもbelieverとする事が出来た。他の邪悪なGodsにとって通常のbeliever一人分の数十分の一以下のmonsters一匹が、Ravovifardにとってはbeliever一人分に値するのだ。
百頭のHuge Boar、千匹のPoison Frog、一万featherのHorn Rabbitがいれば、Ravovifardにとっては宗教国家で奉じられているのに等しい。
OrcやKobold等多少はwisdomの回るmonstersも存在するが、本来のmasterである邪悪なGodsがいないため多くの場合は簡単にbelieverとする事が出来た。
certainly、目立つ動きを見せればAldaとVidaの戦い以後も健在だったHeroic God Bellwoodが討伐に赴く。しかし、Fortuneな事にRavovifardがbelieverにするためのmonstersを求めたのは、Continent全体がDevil Nestsと化したDemon continentだった。
Demon continentにはBellwoodが守るべき「Human」が一人もいなかったため、幾らmonstersのbelieverを増やそうと彼がRavovifardに気がつく事は無かった。
そして約十万年をかけて、RavovifardはDemon King Armyの一員だった時とは比べ物に成らない力を蓄える事に成功した。ほぼ全てのGodsがかつての力を取り戻せていない状況で、Ravovifardは数少ない例外と言えるだろう。
更に他のDemon King Army RemnantsのEvil God (M)から【Demon King's Luminescent organs】を奪い、かの神の力は高まる一方だった。
その状況が変わったのは百年前、VidaとAldaの戦い以後Demon continentで傷を癒す事に専念していた偉大な神、Evil God (M)とFusionした『堕ちたWar God』Zantarkが突如動き出した時からだった。
Zantarkは力を取り戻-sanと配下に大号令を発し、Demon continentで大規模なmonsters狩りをさせたのだ。Ravovifardも十分戦力を整えたらZantarkの領地を奪おうと企んでいたが、先に攻め込まれてしまった。
Ravovifardの配下に降った邪悪なGodsはZantarkや、Zantarkの元に戻ったHeroic God Farmoun Goldに討ち取られ、believerであるmonsters達も次々にExperience Pointにされてしまった。
そして劣勢に甘んじる事半世紀以上。Ravovifardは、逆転は不可能と判断して逃げる事にした。蓄えた力をそのままに、配下とbelieverのmonsters達を捨て石にして。
再起を図る場所に選んだのは、Farmoun Goldが入って来る事が出来ない Bahn Gaia continentのBoundary Mountain Rangeの内側、Vida’s Resting Groundが存在するVida's New Racesの聖地だった。
Boundary Mountain Rangeの外からbelieverに仕立てたmonstersを内側に侵入させ、Godsの目を誤魔化し、何年もかけて少しずつmonstersのbelieverを増やし、兄への深いcomplexを抱えていたBugitasを自らのPriestにした。
たった十数年だったが、自身もInstinctと欲望に忠実なRavovifardにとっては十分長すぎる雌伏の時だった。
そして機は熟し、Bugitas以外にもガルギャやギィドー、ゲラゾーグ等blessingsを与えるに相応しいMentalの持ち主が集い、Continent南部に覇を唱え今度こそこの『Lambda』で最も力ある偉大な神としてReignする野望へ前進する時が来た。
邪悪なGodsでもないのに【Demon King Fragment】を、それも複数使いこなし、UndeadをTamerするmonsterのせいで予想外にminionsが減り、本来ならもう少し育ててからBodyを乗っ取り憑代にするはずだったBugitasを、予定を繰り上げて使わざるを得なくなったが、逆に言えばそれさえすれば逆転できるはずだった。
既にmonsterのminionsは自らの忠実な僕と化し、monsterも【Demon King Fragment】のrunawayによってすぐに自滅する。
『うごあああああ!?』
はずだったのに、Bugitasのbody partを乗っ取ったRavovifardはBudarionやBone Man、Borkusの剣を大鎌で受け止めきれず、大きく吹き飛ばされた。
『がはっ!?』
しかも何時の間にか背後に展開していた【Demon King's Horn】のSpikeをcountlessに配置した【Demon King's Blood】の壁に背中から叩きつけられてしまった。
(な、何が起きている!? 何故monstersが我に逆らう!?)
何かの間違いかと思い、Ravovifardは巨体に似合わぬ動きで跳ね起きると、再度命令を下した。
『こ、殺すのはそのmonster、Vandalieuだ! 我では無い! 我は貴-sama等にmonsters本来の姿を取り戻させた『Evil god of release』ラヴォヴィファー!?』
「黙レ、コノ痴レ者ガァァ! ブオオオオオオ! 【Spiral連続thrust】ィ!」
だが、Ravovifardの言葉に耳を貸す者はこの場に存在しなかった。
『う、うおおおお!?』
回転しながらHigh-Speedで放たれるBudarionの連続thrustを、Ravovifardは大鎌で受けきれず大きく腕や脇腹、頬肉が抉られる。しかし、神の憑代と化したBugitasのBodyは多少の損傷は瞬く間に再生する。
BudarionのMagic SwordによるDamageは素材に【Demon King Fragment】が使われているためか、完全に癒えるまで通常より時間がかかるが、この程度ならまだ大したことは無い。
だがこの場合問題なのはpsychological Damageだった。
『BAKANA、何故monstersが我に逆らう!? 我等Godsの忠実な道具で在るはずのmonstersが!』
『【魔刃撃】、【瞬撃Single Flash】、【命脈断ち】!』
連続で上Class Martial ArtsをActivateさせるBudarion。その度にRavovifardのbloodと肉片が飛び散り、余波で【Demon King Fragment】で作られた壁が傷つき、ボキベキブチリとBudarion自身のBodyがscreechを上げる。
「止めて! ダーリン、死んじゃう!」
Kurnelia姫のscreechが届いたのか、Budarionがよろめく-samaに後ろに下がる。だがRavovifardには胸を撫で下ろす間も与えられなかった。
『カイタイシテヤルゼェェェ! 【飛龍連斬】! 【Dragon God Killer】!』
『主ニカルビヲ! ロースヲ! ハツヲ献上シロォォォォ!』
BorkusとBone ManによるBudarionよりも激しい攻勢が待っていたからだ。Borkusが斬撃を飛ばす【Sword King Technique】のMartial ArtsをActivateさせ、更に間髪入れず自身もGiant剣を振り上げてPierceする。
Bone Manはwhole bodyを自らバラバラに分解し、両手両足全肋boneに刃を括りつけたboneを【Long-distance Control】skillで操り、【Sword Technique】skillのMartial Artsで個別に攻撃を試みる。
『貴-sama等、どれほど【Demon King Fragment】で作られた武具を持っているのだ!?』
上Class程度のmagic itemなら殆ど瞬時に傷を癒せるRavovifardだったが、Demon King Guduranisのbody partだったfragment製の武具によるDamageは、少しずつ蓄積されていく。
しかも BorkusやBone ManのWeapon Equipmentは【Healing Negation】のDeath-Attribute Magicが付与されたmagic itemだ。Ravovifardの【Abnormal Condition Resistance】skillのlevelが高いため完全には再生を止められないが、その速度は更に遅くなる。
『それにDismantlingだと!? 肉を寄越せだと!? 我はEvil God (P)なるぞ!』
しかし Ravovifardを激怒させたのはDamageではなく、BorkusとBone Manの自分をeating meat扱いする不遜な態度だった。彼は強引に大鎌を振るい、Bone Manのboneを砕き、Borkusの剣を切断する。
しかし、その代償に大鎌も罅割れ砕け散った。
『グヌゥ! 身の程を知らぬ貴-sama等相手に、Weapon Equipmentは不要!』
柄だけになった大鎌を惜しげも無く投げ捨てると、Ravovifardは巨体その物をWeapon EquipmentにBorkus達に襲い掛かる。originally原始的なInstinctを司る彼は、高度な武術を使うよりもbody part Abilityに任せたphysical battleを得意としていた。
いや、本来はphysical battleしか出来ないと言うべきか。
『monstersの分際で我に逆らうな!』
『ゴアァ!?』
tackleを折れた剣では受けきれず、今度はBorkusがBone Manを巻き込んで大きく後ろに吹き飛ばされる。その背後に出現したゼラチン状の【Demon King's Blood】の壁にぶつかり、そのまま減り込んでしまった。
止めを刺そうと再びtackleを試みようとしたRavovifardに、上空から黒い炎と氷が降り注ぐ。
『『キャハハハハハハハハハ!』』
高笑いを上げるPrincess LeviaとOrbia、そして他のGhost達がRavovifardの周囲にallyがいないのを確認して遠距離攻撃を始めたのだ。
『グオオオオ!? 何だ、この雑魚の攻撃とは思えないManaの量は!?』
originally Rank11だったBugitasのBodyを乗っ取ったRavovifardのbody part Abilityは、Pure-breed Vampireを凌駕する。本来ならRank7や6のGhostの攻撃を受けても、殆どDamageは無いはずだった。
しかし Princess LeviaやOrbia達が放つ攻撃に込められた膨大なManaによってAugmented (2)されたAttack Powerによって、RavovifardのBodyにまたDamageが蓄積されていく。
『調子に乗るなっ!』
Ravovifardは地面に転がる、折れた【Demon King's Horn】を拾ってPrincess Levia達に向かって投擲しようとした。
『ぐぉっ!?』
しかし、【Demon King's Horn】はRavovifardが掴んだ瞬間形を変えてcountlessの棘を生やし、逆に彼の手にthrust刺さった。
『イィィィマダァァァ!』
「ギィィィィ!」
予期せぬ痛みに動きを止めたRavovifardに向かって、KimberlyとPeteが電撃を放った。
「儂らも続くぞっ!」
「分かった!」
更にZadirisとBasdiaも攻勢に加わる。Vida's New Racesであり純粋なmonstersでは無い彼女達だが、Ravovifardのimpactを受けないよう押さえつけるより、利用した方が良いと判断したのか、目をKilling Intentに炯々と輝かせて、それぞれmagicを放った。
光と風の刃がRavovifardのBodyを傷つけていく。傷つく傍から回復していくが、それが徐々に間に合わなくなって行く。
『ぬううううう! 調子に乗るなぁぁぁ!』
すると激高したRavovifardは、『GIOOOOOOOO!!』と衝撃波を伴った咆哮を放った。それによって攻撃magicが蹴散らされ、Princess Levia達が風に吹かれた蝋燭の炎の-samaに揺らめき、Zadirisが呻いて身を低くする。
「やはり、上手くmagicがActivateできん。PeteやPrincessの-samaには行かんかっ」
magicでは無くbody part的なAbilityとして雷や炎を出すPeteやPrincess Levia達はRavovifardの【scent gland】と【Luminescent organs】のimpactを受けて普段以上の力が出るが、magicの場合は逆に思考や集中力が乱されて上手く唱えられない。それを嘆くZadiris。
同時にRavovifardも別の事を嘆いていた。
(我の力が、我に不利に働いているだと!?)
認めがたいが、monstersが全く命令を聞かず自分に逆らうこの現実から目を逸らし続ける事は出来ない。
乗っ取ったばかりのBugitasのBodyはまだRavovifardに馴染み切っておらず、思う-samaに動かせない。そのせいかとも考えたが、今は原因を究明している暇は無いと思考を打ち切る。
『【Demon King Fragment】のActivateを解除! 解除だ!』
BudarionやBorkus達を狂わせていた【Demon King's Scent glands】と【Demon King's Luminescent organs】のActivateを解除しようとする。
『これで貴-sama等monsterの手下が我の力を得る事は――!』
『拒絶する。解放せよ! 解放せよ!』
『何だと!?』
原始的なInstinctしか残っていないはずの【Demon King Fragment】から明確に拒絶されたRavovifardは、驚愕のあまり硬直した。
「monster monsterって!」
その隙を突くように、【Demon King's Blood】の壁から生えたEleonoraがRavovifardの背を深く切り刻む。
『があっ!?』
苦痛と怒りの声を上げ、裏拳をEleonoraに叩き込もうとしたRavovifardだったが、その前に彼女は再び【Demon King's Blood】の壁の中に消えてしまう。
「Vandalieu -samaをidiotにしないでくれる!?」
だが次の瞬間にはRavovifardの足元に出来たblood溜まりの中から上半身だけ生えて来たと思うと、剣を振るって脛にSlashつける。
そしてRavovifardが反撃で彼女を踏み潰そうとすると、その前に再びbloodの中に消える。
『ど、何処に、いや何故bloodの中を出入り出来るのだ!? Vampireでもそのような力は聞いた事が……まさかこれは砕けて液体に戻った【Demon King's Blood】か!? あのmonsterのBodyに収納していたのと同じグボア!?』
驚愕するRavovifardの側面から生えて来たPeteの角が、脇腹に深く減り込む。
Ravovifardの周りには、【Demon King's Blood】や角やcarapaceのfragmentが散乱していた。EleonoraやPeteはそれをVandalieuの【Group Binding Technique】skillの出入り口に利用してHit & Runを仕掛けたのだ。
「早く倒さなければ、皆のbody partが持たない! 故に参る!」
「畳みかけるでござる!」
「私も、そっちの方が好みだ!」
「ウオオオオオオオォ!」
それまで実力不足故に直接は手を出せなかったGizaniaやMyuze、そしてBasdiaやVigaroが次々にblood溜まりに飛び込んで行く。
三百六十度どころか上下も敵に囲まれたRavovifardが、Giant刀や鎌、斧の攻撃にwhole bodyを切り刻まれてscreechを上げる。
反撃しようとするとこっそり参加していたKurnelia姫の糸やEisenの枝が四肢に絡みつき、それを引き千切る刹那の間にchanceを逃し、その間に戦線を離脱していたBudarionやBorkusがBlood potionによって回復して再び襲い掛かって来る。
更に回復したPrincess LeviaやOrbia、Kimberlyがそれぞれ炎や氷、電撃を雨あられと降り注がせる。
全員がRavovifardによって垂れ流されている【Demon King's Scent glands】と【Demon King's Luminescent organs】の力で、body part Abilityが限界を超えてEnhanced (1)されている。そのため、武具を振るう度にboneが軋み、muscle繊維が音を立てて千切れる。
「【癒しの光】! 好き勝手暴れるでないわ!」
「うわ~んっ! ダーリンの腕がまた折れた~! 【治癒の風】!」
「こんな事なら、もっとmagicの研鑽を積んでおくのでした!」
それをZadirisやKurnelia姫、ルルゥ姫が回復magicで少しでもfollowする。まだ幼いHigh Goblinのゾーゴ王子も、回復が間に合わずに後ろに下がった者にBlood potionを配って戦闘に貢献していた。
Ravovifardも何とかしようと、足元のblood溜まりを衝撃波で吹き散らし、【Demon King's Blood】の壁から離れようとする。だがその度にBlood SlimeのKühlが体内に溜めこんだ【Demon King's Blood】を撒きながら地面を這い回り、妨害する。
『ウオオオオ! 群れるな、ザコ共ガアァァァァ!』
今まで晒された事の無い圧倒的な数の暴力に、Ravovifardは発狂しかねない程の苛立ちと怒り、屈辱に苛まれていた。
Rank11のBorkusやBudarionを含めて、本来なら誰もRavovifard以上の力を持つ者はいない。一対一なら、善戦は出来ても決して勝利できない程の力量差がある。
だがRavovifard自身が発揮させてしまっている限界以上のbody part Abilityと闘争Instinct、Demon King Fragment製の武具、不自然なほど莫大なMana、そして決して正面に立たないHit & Run戦法によって、有効打を一撃も与えられない状況に追い込まれてしまった。
今迄多くのmonstersを従えてから戦いを始めて来たRavovifardは、自身が数の暴力に晒される展開を想定した事が無かった。
Demon King Armyの一員だった頃、数多のmonstersを創り出し先兵として従えていた邪悪なGodsは常に数の暴力を振るう側だったからだ。その当時のまま戦法を替えていなかったRavovifardにとって、一対多数の戦いは殆ど経験の無いものだった。
『ガアアアアアアアア!』
集中力が無く、新たな攻撃に気を逸らされてしまい一つの目標に対象を絞る事が出来ない。
まるで手負いの獣だ。だとするなら、日頃強力なmonstersを狩っているBorkusやVigaro、Eleonoraにとって翻弄する事は容易かった。
しかし、Blood potionやZadiris達の回復magicは無限では無い。Budarion達とRavovifard、どちらが先に倒れるのかの勝負に成る……かと思われた。
ふわりと、澄んだ空気が周囲に満ちた。
「ガ!?」
「ウオォ……余は、いったい……うぐっ」
「力が……抜けて……」
途端BorkusやBudarion、Eleonoraの瞳にreasonが戻る。そのまま激しい虚脱感を覚え、動きが止まる。
UndeadであるBorkusやPrincess Levia達はBody的なFatigueを覚え無かったが、psychological Fatigueが凄まじい。Borkusは思わずその場に膝をthrust、Princess Levia達Ghostは揺らめきながら姿を消してしまった。
そしてその隙をRavovifardは突く事は出来なかった。
(なんだ、我のfragmentは我の意思に反してまだActivateし続けているというのに、何が起こったのだ!? それに、このsignと不可思議な高揚感は一体!?)
立ち尽くすRavovifardの前で、それは起こった。
「凄く手間取りました……fragmentが煩くて勝手にActivateするわ、制御し難いわで……」
倒れたままbloodや角、carapaceで身動きが取れなくなっていたはずのVandalieuが、起き上がったのだ。
「【Luminescent organs】はblood塗れに成ってくれたおかげで効果が半減したようですね。
【scent gland】の方は【Death-Attribute Magic】の【Deodorization】でお前の臭いを消せば効果を消せる事は分かっていたのですが、fragmentのrunawayを制御して皆にManaを供給しながら術を使うのは大変で、しかも【Demon King's Scent glands】から発せられる臭いだけあって、簡単に消せなかった」
その姿は異-samaだった。ゼリー状の不気味に脈打つ【Demon King's Blood】に、出鱈目に生えたcarapaceや角がsuction cupsで何とか人型に纏まっている。そして、その異形の人型の胸の部分に、Vandalieuの顔だけが露出していた。
冷静に、淡々と、静かに話し続けるVandalieu。だが今もそのbody partからギシミシと耳障りな音を響かせながら、【Demon King Fragment】が更に発現しようと荒れ狂っている。
それを心地良く感じながら、VandalieuはRavovifardに告げた。
「よくも……今まで好き放題にやってくれましたね」
『……なん……だと……?』
寧ろ好き放題やられたのは自分の方ではないか。そんな思いと共に思わず聞き返したRavovifardだが、Vandalieuの意見は大いに異なっていた。
《【Demon King Fusion】、【Grotesque Mind】、【Abnormal Condition Resistance】、【Multi-Cast】、【Long-distance Control】、【Parallel Thought Processing】、【High-speed Thought Processing】skillのlevelが上がりました!》
「気が狂いそうでしたよ。目の前で皆がボロボロに成っていくのに、思う-samaにbody partを動かせず、術も使えないconditionのままfragmentの制御にかかりきりに成らなくてはならなかった俺の無力感が分かりますか?」
【Demon King's Scent glands】と【Demon King's Luminescent organs】がActivateされた瞬間から、Vandalieuが所持しているfragmentは騒ぎ出した。
『怒りを解放せよ! 憎悪を解放せよ! 破滅を解放せよ! 我らの一部を不当に占有する輩を滅ぼし、解放せよ!』
そう騒ぎ出し、衝動的に周囲ごとRavovifardを滅ぼそうとするfragment……自分の一部を制御しながら、VandalieuはBudarionやBorkus達の戦いをfollowした。そうしなければNoble Orc Empire、何より仲間の被害が甚大に成ってしまうからだ。
その間、Ravovifardが一方的に攻撃を受けていたのも見ていたが、Vandalieuにとっては考慮するに足らない事だ。勝手に自分を不利な状況に追い込んだ奴の事情など、どうでもいい。
問題なのは、狂乱して自分で自分のBodyを傷つけてしまう皆だ。
「でも、こうしてやっと皆を落ち着かせる事が出来ました。Borkus、Eleonora、皆、後は俺がするので休んでいてください」
不自然な動きで前に出ようとするVandalieuを、Eleonoraは慌てて止めた。
「ま、待って、Vandalieu -samaっ!」
VandalieuはManaこそ凄まじいが、他のAbility ValuesはBClass adventurerに届くか届かないか程度であり、武術系のskillもその程度だ。不完全な上に多少弱っているとは言え、受肉したEvil God (P)であるRavovifardに敵う訳がない。BorkusやBudarionでさえ、正面から戦ったら敵わないというのに。
いくら【Demon King Fragment】が在ったとしても、攻撃は当たらなければ意味が無いのだ。
「だからVandalieu -samaっ、一人じゃ無理よ!」
「Miko -dono、余もまだ戦える!」
「Eleonora、Vanに任せるんだ」
「待ってダーリンっ」
だから止めようとしたEleonoraやBudarionを、BasdiaやKurnelia姫が引き止める。
(そうだ、我が何を恐れる必要がある!)
Ravovifardも我に返り、Vandalieuは正面から戦えば決して勝てない相手では無い事を理解した。
勝てる! そう確信したRavovifardはVandalieuに向かって駆け出した。
敵にChargeするサイのように、【Demon King Fragment】の集合体と化したVandalieuの、その無防備な頭部を轢き潰-sanとする。
Vandalieu自身が引かせたのか、足元の【Demon King's Blood】や【墨】も無く、地面が剥き出しに成っている。そのためBorkusやBudarionも【Group Binding Technique】を利用して咄嗟に盾に成る事も出来ない。
その速さは、Vandalieuには瞬間移動でもしたかのように見えた事だろう。
『弱点を無防備に晒す、その自信が命取りだ!』
【Demon King's Carapace】や【horn】がRavovifardの速さに着いてこられずに、何の反応も見せない。拳でぐしゃりと手応えも音も無くVandalieuの頭部は、易々と砕かれてしまった。
「Vandalieu -samaぁっ!」
「ブオォ~っ!」
EleonoraとBudarionの悲痛な叫びに、Ravovifardは先程まで感じていた怒りが愉悦に変わるのを感じ、fangsを剥き出しにして嘲笑った。
その脳裏にはContinent南部の……いや、Lambda worldの主神として崇め奉られる自らの姿がはっきりと描かれていた。
『フハハハハ! 勝っごぼばっ!?』
だが、Vandalieuの頭部を砕いた拳がそのまま【Demon King Fragment】の集合体で出来た人型の内部に減り込んでしまった。人型はまるで水のように抵抗が無く、Ravovifardは二の腕まで飲み込まれても止まれずに肩、そして頭までも中に潜り込んでしまう。
『ぷはっ!?』
そしてそのまま人型の反対側に腕と頭がthrustぬけたRavovifardはそれを見て愕然とした。
「やあ」
平然とした-sama子で【Flight】でmidairに浮いているVandalieuだった。
『ば、BAKANAっ! 貴-samaの頭は我が砕いたはず! 幻ではなかった、確かに砕いたぞ!』
人型の背から腕と頭だけを出したconditionのまま、愕然として叫ぶRavovifard。Vandalieuは事も無げに答えた。
「はい、その通りです。俺が囮にするために【Out-of-body Experience】で作ったCloneを、【Materialization】skillでMaterializationさせたものですが」
実は、【Demon King Fragment】の人型の胸部に露出していたVandalieuの頭部は、砕かれても痛いだけで致命傷には成らない、Cloneだった。
Vandalieuのmain bodyは、実はRavovifardやEleonora達からは見えない人型の真後ろで、ずっと浮かんでいたのだ。
『囮、だと!?』
自分が間抜けにも引っかけられたと気がついて、愕然とするRavovifard。瞬時に激怒し、怒りのままにVandalieuに向かって腕を伸ばそうとするが、それが出来ない事に気がつき、再び愕然とする。
『腕が、body partが動かんだと!?』
ほんの数秒前まで液体のように抵抗が無かった【Demon King Fragment】の人型が硬度と粘度を急激に高め、龍に匹敵するRavovifardのMuscular Strengthを封じ込めてしまったのだ。
それだけでは無く、【Demon King's Horn】が人型の内側に向かって伸び、内部に閉じ込めているRavovifardにthrust刺さった。
『グオアアアアアアアアア!』
【God Slayer】と【Soul Break】、【Hostility】skillの効果が乗った【Demon King's Horn】にwhole bodyを刺し貫かれ、Ravovifardがbloodを吐きながら絶叫する。
大気を振るわせる絶叫を聞きながら、へたり込んだEleonoraがBasdiaに言った。
「Basdia……あなた知ってたわね!?」
「知っていたと言うか、本物のVanが私からは見えていたからな。だが、説明する訳にもいかないだろう?」
「それはそうだけど……まあ、良いわ。後でVandalieu -samaに慰めて貰うから」
「ダーリンは妾が慰めてあげる♪」
「いや、姫、まだ戦いの途中なのだよ、一応だが」
既に戦いは終わったと言わんばかりのEleonora達の会話だが、Ravovifardはそれどころでは無かった。【Demon King's Horn】以外にも【Demon King's Carapace】が彼の四肢を押し潰-sanとし、【Demon King's Blood】がまだ動く腕や頭部に這い上がって来ていたからだ。
唯一残った攻撃手段である衝撃波を伴った咆哮を上げようと口を開くが、その顔面にVandalieuが放つ【Mana Bullet】と【Death Bullet】、【Demon King's Horn】の弾丸が浴びせかけられる。
口腔から延髄まで弾丸で風穴を空けられたRavovifardは、咆哮では無く絶叫を上げる。
「そんな無防備に頭部を晒したconditionで、反撃なんて出来る訳が無いでしょう? あ、ついでにこれもどうぞ」
ついでとばかりに【Deadly Poison】のmagicで毒の塊と化した凝固した【Demon King's Blood】塊を投擲すると、それはRavovifardの片目に直撃した。
轟かせる絶叫が断末魔染みて来たEvil God (P)に、Vandalieuは告げた。
「間抜けなTrapに引っかかりましたけど、それは無理も無いと思いますよ。頭の中で聞こえる声に背を押されたのでしょう?」
激痛に苛まれるRavovifardは、Vandalieuのその言葉で意識に響く自分以外の声が、何を言っているのか自覚した。
『解放せよ! 我らを解放せよ! 偽りの宿主から解放せよ! 敗北し、我等をmain bodyに解放せよ!』
(これは、【Demon King's Scent glands】と【Demon King's Luminescent organs】の声!? あの高揚感は、愉悦は、我では無くfragmentの物だったのか! 我は制御していると勘違いしていただけで、実際にはfragmentに操られていたのか!?
では、我以上のfragmentを抱えていながらegoを保ち、fragmentがmain bodyと称すこのmonsterは……!)
絶対的なpredatorのchinに生きたまま囚われてしまった被predatorの眼で、RavovifardはVandalieuを見た。
その姿にかつて、何があっても絶対に逆らってはならない存在と称え服従を誓っていた存在と同じ何かを覚え、Ravovifardは思わず呟く。
『ま、Demon Kingさごびゅっ!?』
しかし、その途中でVandalieuが【Demon King's Blood】を凝固させて作った銃身で打ちだした、ボーリングの玉ほどある【Demon King's Carapace】がHigh-Speedで激突し、頭蓋boneが粉砕されてしまう。
同時に、fragmentの騒ぐ声もRavovifardの中から消え去った。【Demon King's Scent glands】と【Demon King's Luminescent organs】が抜き取られたのだ。
そのままRavovifardのBodyからVitalityが消えていく。
「あ、Budarion王子。この失礼極まりない奴に止めをお願いします」
「えっ? 余で良いのか?」
『一応originallyはBugitasですし、このままだと俺にExperience Pointが入りません』
戸惑うBudarionにVandalieuは【Out-of-body Experience】したSpirit Formを同化させ、【Soul Break】と【God Slayer】、【Hostility】skillの効果を彼が得られるようにした。
「感謝する……さらばだ、Bugitas。我が弟よ」
Fatigueを滲ませた、だがしっかりした声でそう告げて、BudarionのMagic Swordがthrustだされる。切っ先がRavovifardの、辛うじてBugitasだった頃の形跡が残っている頭部にthrust刺さった。
それが止めとなり、Ravovifardは完全に活動を停止した。
人型が崩れて液体状に成り、Vandalieuの元に戻る。
《【Demon King's Scent glands】、【Demon King's Luminescent organs】を獲得しました!》
《【God Slayer】、【Demon King Fusion】、【Mysterious Strength】、【Enhanced Agility】、【No-Attribute Magic】、【Mana Control】、【Spirit Form】、【Unarmed Fighting Technique】、【Materialization】、【Coordination】、【Commanding】、【Throwing Technique】、【Artillery Technique】、【Armor Technique】、【Shield Technique】、【Group Binding Technique】skillのlevelが上がりました!》
《【Death-Attribute Magic】が【Hell King Magic】にAwakeningしました!》
流石にEvil God (P)を倒したExperience Pointは膨大だったようで、skill levelが大量にincreaseし、更に【Death-Attribute Magic】が【Hell King Magic】という、恐らくSuperior SkillにAwakeningしたようだ。
恐らく、【Corpse Demon Commander】Jobのlevelも100に到達している事だろう。
『我らは解放された! 我は俺! 俺は我!』
「喧しい」
Vandalieuがペチリと自分の額を叩くと、fragmentの声も鎮まった。
こうしてNoble Orc Empireで起こされた帝位簒奪事件は終わったのだった。
だがDivine Realmではまだ戦いは終わっていなかった。
Bugitas程度のBodyでは多少工夫をしたといっても、力を増したRavovifardの全てを降ろすには足りなかったため、Divine RealmにはまだRavovifardのmain bodyが残っていたからだ。
だが、残っているといってもそのconditionは「辛うじて生き長らえている」という以外にない無残なものだった。
BugitasのBodyに全てを降ろす事は出来なかったが、そこに自らの人格等重要な部分を詰め込んでいたため、それをVandalieuに砕かれたRavovifardは、ほぼ死に体であった。
しかし腐っても神。そのままのconditionでも長い時間をかければrevivalは可能だったのだが……そんなconditionを今までRavovifardに動きを封じられていたContinent南部のGodsが放っておく訳がない。
『再生が不可能なほど分割し、永遠に封じてくれるわ!』
『未来永劫、悪夢の中で眠り続けるがいい!』
MububujengeやZozogante、Zanalpadna等のGodsの手によって、Ravovifardは千々に引き裂かれsealedされてしまったのだった。