『Fifteen Evil-Breaking Swords』……Amid Empireが誇る、秘密部隊にして、個人では最高の戦闘Abilityを誇る猛者が集められた戦闘集団。
その力で幾つもの戦場の戦況を覆し、単身でmonstersのrunawayを鎮め、不穏分子を抹殺し反乱の芽を摘んで来たと囁かれ、恐れられている。
SClass adventurerの『Thunderclap』のSchneiderとそのpartyがEmpire政府に属さない最大戦力とするなら、Empireに属する最大戦力が彼等だ。
「気に入らないmissionだ」
その『Fifteen Evil-Breaking Swords』に所属し、三の番号を割り振られた『Light Speed Sword』のRickert・Amidは次なるmission地に向かうために街道を進みながら、呟いた。
二十代後半の若さで『Fifteen Evil-Breaking Swords』の三の剣に在る彼は、「光よりも早い」と評される程の剣の達人だ。実際、彼の実力はAClass adventurerに匹敵する。
見た目も鼻筋の通った美丈夫で、秘密部隊の一員でありながら上流階Classのご婦人ご令嬢からの人気は高く、縁談は既に妻を三人娶っているのに、途切れる事が無い。
bloodlineも優秀で、前Amid Empire Emperorの孫で、現EmperorのMashkzarはRickertの叔父にあたる。
法衣Dukeで領地は無いが、将来は一の剣に推挙される事が内定しており、更にMashkzarと彼の産まれたばかりのFirst皇子に何かあれば、次代EmperorのCandidateとして必ずnameが挙がる立場だ。
だが、全てが欺瞞である事をRickertは知っている。
自分の剣は、光よりも遅い。
『Fifteen Evil-Breaking Swords』では、見目とbloodlineが良いからお飾りとして抜擢されているに過ぎない。彼の三も、将来約束されている一も、プロパガンダ用の席だ。
そして彼が生きている間に、Mashkzarに何かある事は無い。
今日までずっとそうだったし、きっと明日からも変わらないだろう。
「気に入りませんか? 旧Sauron領のstability統治は、現在Empireでは最大の懸案事項。Orbaum Elective Kingdomとの戦争の行く末がかかっているのです。これをお館-samaが鎮めれば、その功名はEmpire中に鳴り響きますぞ」
従者のバッスがそう聞き返す。
秘密部隊の『Fifteen Evil-Breaking Swords』だが、Rickertは存在そのものがEmpireの武力を示すための広告塔でもある。そのため、彼の移動に際しては馬車が用いられ、煌びやかな鎧を纏ったKnight達と従者であり実質秘書であるバッスが同行するのが常だった。
これから行くのは任地ではなくDancing会であると言っても誰も疑わないだろう、豪華な馬車のcarriageでRickertは、皮肉と溜め息に塗れた言葉で答えた。
「偽装用のmissionで得た、中身の無い功名で称えられて何が嬉しい」
「お館-sama、外に聞こえます。愚痴を言いたいのでしたら、前もって言っていただかないと」
バッスは、一定範囲内の音が外に伝わり難くなる密談用magic itemを起動しながら主-kunを諌める。
「念の入った事だ。我がEmpireが護衛のKnight達に支給する甲冑は装飾過多でその分音が良く響く。歩いていれば私の愚痴など聞こえやしないさ。Magic Stoneの無駄遣いに成るぞ」
「念を入れるのが私の仕事でございます」
そう答えながら、何時にも増して重症だなとバッスは思った。
「一体何が気に入らないのですか?」
そう思いつつも、主-kunに愚痴を吐き出すよう促すバッス。愚痴を聞くのも、自分の仕事の内だと彼は考えていた。
そしてバッスがそう考えている事を知っているRickertは、遠慮無く愚痴と胸の内で溜まった澱のようなstressを吐き出す。
「何が、か。いつもと同じだ。事の真相を知っていながら、最初から最後まで飾りで置かれる程度でしかない自分自身の才の無さだ。
……今回の一件、勘が多少鋭い者は陛下が無能なMarme Dukeの権勢を削ぐための謀だと考えているらしい」
占領した旧Sauron領の占領統治が順調ではない事に文句をつけたMarme Dukeを上手く乗せ、失敗するだろう占領軍の新たな責任者に据えた。
そしてMarme Dukeが音を上げる適度なtimingを見計らって救いの手を差し伸べる事で、彼の統治Abilityと軍才は取るに足らないと広め、Marme Duke 家の求心力を落す。
Mashkzar EmperorとMarme Dukeの不仲は、Empireでは多少事情に詳しい者なら知っているほど有名だ。そしてNobleなら、多少でも聡ければMarme Dukeに占領した敵国領土の統治など不可能である事に察しがつく。
だから多くの者が今回のRickert達『Fifteen Evil-Breaking Swords』が出動した裏には、EmperorとMarme Dukeの権力争いが存在すると考えている。
確かに、そんな意図もMashkzarには在ったのかもしれない。
「だが、Emperor陛下の真の狙いはMarme Dukeの権勢を衰えさせる事では無い。我々に下されたmissionも、Resistanceの壊滅では無い。
Mirg Shield Nationの遠征軍六千人を皆殺しにし、Orbaum Elective Kingdomでも猛威を振るったDhampir、Vandalieuとの接触、及び交渉。そして交渉が決裂した際の始末だ」
Mashkzarの狙いは、Vandalieuだった。
占領軍とは異なるnet workを使い情報を収集したMashkzarは、Resistance organization『Sauron Liberation Front』がSauron領のGhoulに渡りをつけている事を知った。
それに他の細やかな情報も加えて分析し、『Sauron Liberation Front』の背後にはVandalieuが存在しているという確信を持ったのだ。
だからMarme Dukeを新たな占領軍総司令官として赴任させたのだ。Vandalieuがどれ程Empireに対して敵意を持っているか図るための試金石兼囮として。
皇族のbloodを引く帝位継承権保持者で、Vida's New Racesに対する差別意識がEmpire Nobleの中でも苛烈。更に熱烈なAlda believerだ。しかも Mashkzarにとって殺されても惜しくない人物。
Marme Dukeや彼が連れて行った家臣が殺されても、領地には彼等の跡取りが居るので領地経営に大きな障害にはならない。Dukeと共に赴任した他のNobleも、Emperorにとっては替わりがいるか居なくなっても構わない者達だ。
現実には、Mashkzarが想定していたよりも早くMarme Dukeが折れて『Fifteen Evil-Breaking Swords』の出動を求めたが、それが無くてもRickert達『Fifteen Evil-Breaking Swords』は出動していただろう。
Vandalieuに対応するために。
「しかし Emperor陛下と致しましては、当然の判断では無いでしょうか? 齢六ageにしてMirg Shield Nationの精鋭六千と『Vampire Hunter』のBormack Gordanを皆殺しにし、しかも Undead Transformationさせて逆侵攻をかけ、開拓地をDeadly Poisonの腐海とした。
更にOrbaum Elective KingdomのHartner Duchyで城を傾け、Slave達で運用していた鉱山を、鉱山ごと壊滅させ、Knight団を一つ葬り千人以上の開拓民を何処かへ連れ去った。そしてSauron領ではScylla族とResistanceを裏で操っている……正直、信じがたい事ばかりです」
その上情報部によると例のVandalieuはDungeonを新たに創る事が可能らしい。
Hartner DuchyのNiarkiの町では、Vandalieuと思われるDhampirの姿がAdventurer’s Guildで確認された直後に、Vandalieuが町から逃げた方角にある森にDungeonが発生した。
それ以後、Hartner Duchyには多くのDungeonが発見されている。Niarkiの町近くで発見されたDungeon以外は、階層が一階しか無く、roomが一つで終わりというFClass Dungeonだったようだが。
「バッス、私はDhampirの幼子一人に狩りだされた事に不満を持っている訳じゃない。お前が述べた未確認情報以外にも、多くのGhoulやUndeadを従えている奴だ。それと合わせて全ての未確認情報が事実だったとしたら、その危険度はSauron領一つの問題では無くなる。
対応を誤れば、最悪Amid Empireは滅びかねない」
「御館-sama、滅多な事を言ってはなりません」
「滅多な事では無いぞ、バッス。Vandalieuが個人でどれ程の武威を持っているかは不明だが、三年前の時点でMirg Shield Nationの精鋭六千を打ち破ったのだ。既に、Mirg Shield Nationを含めた属国一国なら滅ぼす事が可能と見るべきだ。
そして国力が大きく損なわれればOrbaum Elective Kingdomが付けこんでくるのは明白」
Amid Empireの属国、南のSea Nation Kallahad、北の鉄国Marmook、西のGrain Nation Yondo、そして属国では最も軍事力を持っている東のMirg Shield Nation。
そのMirg Shield Nationの精鋭軍が勝てなかったのだ。もし他の三国をVandalieuが狙ったら、最悪国として成り立たなくなるほどの被害が出てしまうだろう。
Vandalieuは土地を長期間残留する毒で汚染する事が出来る……どのような手段でそんな毒を作り出しているのかは不明だが、もし広範囲の土地や海域を汚染する事が可能だったら、戦わずして国を潰されかねない。
そんな危険人物に注目しなかったら、まさにEmperor失格だろう。
「ですがお館-sama、今回のmissionはそのVandalieuとの接触と交渉が含まれております。私にはとても彼との交渉が成り立つとは思えませんが?」
「そうか? 実は私も同感だ」
「……お館-sama」
「私個人の感想だ。Emperor陛下や他の十五剣には他の考えがあるようだ」
Mirg Shield NationにVandalieuがした事を考えれば、その宗主国であるAmid Empireに良いemotionsを持っていないのは確実だ。Dhampirである事を考えれば、友好的な関係を築く事も不可能だと考えるのが妥当だ。
寧ろ、敵国であるOrbaum Elective Kingdom側に取り入ろうとするのではないか。Rickertも当初はそう考えていた。
しかし、Mashkzar達はVandalieuがHartner Duchyで起こしたと思われる数々の事件から、Vandalieuは無条件にElective Kingdom側に付くつもりはないと分析していた。
ならば、条件次第でallyに付ける事が出来る。そう考えたようだ。
実際、Sauron領でもVandalieuは占領軍に直接大きな被害を及ぼしてはいない。砦を一つ潰したようだが、Vandalieuが今までした事からconjectureすれば、占領軍全体に壊滅的なDamageを与える事が出来たはずだ。
同時期にResistance organizationの『新生Sauron Duke軍』の上層部が壊滅し、そのRemnantsを『Liberating Princess Knight』率いる『Sauron Liberation Front』がAbsorptionして一大organizationに成長している。
それがVandalieuの仕業なら、彼が被害を与えたのは寧ろOrbaum Elective Kingdom側になる。
「これまでの行動からconjectureすれば、Vandalieuと言うDhampirはAmid EmpireとOrbaum Elective Kingdom、どちらにも与するつもりは無いようだ。奴はUndeadで構成された独自勢力を築くつもりだと、Emperor陛下は考えたのだろう。
確かに、力を持ったchildが考えそうな事だ」
自分の言う事に逆らわず、意見もせず、忠実に働く傀儡の群れにReignする。小山の暴-kun。
「物騒な人形遊びという事ですか。そのような相手ならば、やはりどのような条件を並べてもEmpireに靡く事は無いのでは?」
「だと思うが、交渉の担当は私では無いからな」
『その通りだ、リッキー坊や』
不意に馬車の中に新たな声が響いた。
Rickertは驚かず、しかし苦虫を噛み潰したような顔で声に応える。
「……『Five-headed Snake』-donoか。その呼び方はいい加減止めて貰えないのか?」
Rickertと同じ、しかし真の意味での『Fifteen Evil-Breaking Swords』のmemberである五の剣、『Five-headed Snake』のErwin。
Rickertが『Fifteen Evil-Breaking Swords』の一員に成った時には既にmemberだった男だ。
『ククク、まだ百にも成っていない小僧を坊やと呼ばずに何と呼べと?』
「Erwin -sama、お館-samaはその『リッキー』と言う愛称の方が気に入らないのかと」
『ああ、そっちか。悪かったな、覚えていたら改めよう』
「因みに、その言葉を私が聞いたのは七度目でございます」
『なんと、そうだったか。すまんな、リッキー坊や。俺は忘れっぽくてなぁ。何せ、貴-samaが言う-samaに『爺』だからな』
バッスの指摘を特に気にした-sama子も無く、再びRickertに厭味ったらしい口調で話しかけるErwin。
(……何年も前の事をネチネチと。相変わらず不愉快な男だ!)
『Fifteen Evil-Breaking Swords』に就任した直後、RickertはmissionでErwinと顔を合わせる機会が在った。その際、Rickertは嫌味な態度でsenpai風を吹かせるErwinに、一度だけ「爺が」と言い返した事がある。
それをErwinは未だに根に持っているのだ。
『さて、話を戻すがリッキー。お前の役目は表向きのmission……Resistance共を排除する強くてカッコイイHero -samaを演じる事だ。
途中までは働いてもらうが、Vandalieuってガキとの交渉、それが決裂した際の始末は俺と他の連中でする』
「他の連中? 貴-donoだけでは無いのか」
『買い被ってもらって光栄だがねぇ、流石に俺も千匹以上のUndeadを相手にするには手が足りん。占領軍のボンクラ共を駆り出すと、次々に殺されUndeadにされかねんからな』
『Fifteen Evil-Breaking Swords』は、特にErwinのような真のmemberは単騎で千を超える敵と戦う力がある。しかし、幾ら力があっても大勢相手には後手に回ってしまう状況がある。
今回のmissionの場合、恐らく『Sauron Liberation Front』の裏に隠れているだろうVandalieuを表に引きずりだし、その上で交渉し、失敗したら始末しなければならない。
もしVandalieuが『Sauron Liberation Front』を見捨てて裏から出て来なければ、表に出て来ても交渉決裂後に戦おうとせず逃げに徹したら、一人では追うのは困難だとEmperorと『Fifteen Evil-Breaking Swords』のleaderである零剣は判断したようだ。
『俺の他に後二人。十五剣の『Insect Army』のBebeckett、十一剣の『King Slayer』のSleygarが参加する』
「待て、何故それを私に教える?」
Rickertは表社会に露出するお飾りであるが故に、Erwinを含めた真の『Fifteen Evil-Breaking Swords』のmemberに関する詳しい情報を持っていない。nameと顔を知っているのはErwinくらいで、他の真のmemberに関してはEmperorが与えた半ばCodenameであるsecondary nameを聞いた事がある程度だ。
なのに態々nameまで教える事に奇妙さを覚えたRickertに、Erwinは答えた。
『certainly現地で会うからさ。今回のmission、事前に得られる情報が殆ど無い。空から偵察も出来ねぇし、直接人をやって調べても、行方不明に成っちまう』
「Marme Duke軍の偵察が上手く行かないのは知っていたが、『Hilt』の連中もか?」
『Fifteen Evil-Breaking Swords』は、番号を与えられたmemberだけの部隊では無い。その手足と成ってSuportを行うSpy organization、通称『Hilt』が存在する。
腕利きの工作員やSpyで構成され、十五剣の中にはその『Hilt』出身のmemberも存在する。少なくとも、Marme Duke軍よりも優秀なはずだ。
『ああ。妙な石碑があるって情報を寄越した後、揃って消息不明。
だから現地に着いたら俺達でAttack Power偵察だ。何、ResistanceやらGhoulやらを捕まえて尋問するなり殺すなりしていれば、何れ黒幕が出て来るか、知っている奴が出て来るだろうぜ』
随分と手間がかかるなと思いつつ、Rickertは一応聞いて置いた。
「交渉する前から相手の手の者を殺すのは拙いのではないのか?」
『問題ある訳がないだろう? 今までの手口から考えて、どう考えても今回の相手は手下の命なんざ消耗品としか考えちゃいない類の奴さ。
違うと思うのかい、リッキー坊や?』
聞き返されたRickertは、目を閉じて今迄のVandalieuの手口を思い起こした。
遠征軍を皆殺しにしたらしい事はin any case、その後Undead Transformationさせて送り返し、町を攻めさせ、開拓地を人が住めない環境にした事。
そこから連想されるVandalieuの人物像は、非戦闘員が巻き込まれるかもしれない事や、更に遠征軍の遺族の心を深く長く苛む事を躊躇わず……いや、恐らく考慮したうえで敢えて行う冷酷で残酷な性格。
Hartner DuchyにおけるDungeonの発生事件やSlave鉱山壊滅事件からconjectureすると、情けや容赦を持ち合わせているようには見えない。
そしてSauron領で恐らく何らかの手段で配下に加えた『Liberating Princess Knight』率いる『Sauron Liberation Front』が勢力を拡大させるのに起こした、『新生Sauron Duke軍』上層部の謀殺。
conjectureを重ねると邪魔者を消す為なら無関係な者の命が危険にさらされても気にせず、配下を消耗品と同じ感覚で使い捨て、殺されたとしても大して気にもしない。そんな人物像が出来上がる。
しかし、そのconjectureとはやや合わない情報もある。
「いや、違うとは考えにくいが……妙な情報もあったはずだ」
Hartner DuchyでVandalieuはcultivation villageを援助していたらしく、更に彼が出没していたらしい時期に極小Dungeonが発見された場所の近くに在る農村を中心に、老いた家畜を供えると中に貴金属や現金、食料が詰まった『Vidaの土人形』が訪れると言う、謎の現象が起きている。
それに、Mirg Shield Nationの一部のGhoul以外にもHartner DuchyでのGhoulが姿を消している理由が、Vandalieuが集めたからだとすると不自然だ。戦力が欲しいなら、幾らでもUndeadを作り戦力に出来るはずのVandalieuが態々他のGhoulを集めるまでも無いはず。
「それらを総合すると、奴はUndeadを操り使い捨ての戦力にし、敵対する者や邪魔な者には一切容赦はせず、それどころか嬉々として加虐しようとするが、保護対象と考えた者には施しを与える程度の情けは持っている人格をしているのではないのか?
丁度、Marme DukeにとってのHumanとVida's New Racesを裏返したような」
『そうかもな』
ErwinもRickertのconjectureを頭から否定はしなかった。
『だが、どうせ『自分は良い事をしている』って悦に入るためのaccessory代わりだろうぜ。それか、Undeadにするまでの間、活かして確保しているだけかもしれねぇ。生簀の中の魚さ。
もしかしたら既に『Liberating Princess Knight』を含めた『Sauron Liberation Front』の連中の上層部もUndeadにされていて、手下は何も知らずに動いているって事もあり得る』
「それはそうだが……」
『それに、俺達は奴と仲良しに成りに行くわけじゃねぇ。取り込めるようなら取り込み、無理っぽければ始末する。奴が大切にする弱みがあるってんなら、寧ろ好都合だ。人質として使える。
リッキー坊や、お前-sanは気にせず『Liberating Princess Knight』の首を上げて、『Fifteen Evil-Breaking Swords』を派遣した偉大なるEmperor陛下のお蔭でもう大丈夫だと、安心させるためのスピーチでも考えておきな』
そう言い終えた途端、微かにあったErwinのsignが消えた。立ち去ったのか、それとも何処かに潜んでいたのかは分からなかったが、会話はもう終わりという事だろう。
「……あの爺、私が気に入らない事を言い当ててから会話を打ち切ったな」
Rickertが気に入らないのは、『Fifteen Evil-Breaking Swords』の手口やEmperorの思惑では無く、自分が最初から最後までお飾りであると痛感させられるmissionの内容。
Rickertの役割は、Vandalieuとの交渉や始末の成否にかかわらず、表向きのmissionであるResistanceの排除を「完遂した」と占領軍に明らかにする事だった。
その『Liberating Princess Knight』の首が本物か、でっち上げた偽者に成るかはVandalieuとの交渉次第に成るが。
「お館-sama。お館-samaのmissionもまた、Amid Empire千年の繁栄のためには必要なお役目かと」
magic itemで沸かしたお湯で淹れた紅茶を勧めながらバッスが言った言葉に、Rickertは溜息で返事をした。
「しかし、Erwin -dono達でそのDhampirを倒せるのでしょうか? いえ、皆-samaの実力を疑っている訳では無いのですが」
紅茶の香りで鼻腔を満たし、肩の力を抜いたRickertは「出来るだろう」と答えた。
「Erwinは、本人の弁を信じるなら『Fifteen Evil-Breaking Swords』の中でも腕利きだ。それに『Insect Army』と『King Slayer』の噂は聞いた事がある」
『Insect Army』はEmpireが唯一確認している【Bug Tamer】。単身で『Trial of Zakkart』の表層から溢れだしたmonstersの群れを一掃した事がある。
『King Slayer』は『Hilt』出身で、今まで何度も数百数千の手下に護られたKingの名を持つmonstersを退治してきた。
彼等の手柄を広告塔として受けて来たRickertは、その強さを知っている。
「それに、今まで集めたVandalieuに関する情報の中に奴個人の武威を示すものは無い。恐らく、特殊な【Tamer】だろう。自分自身がweakからminionsの数を増やそうとする。Hartner DuchyのSlave鉱山を襲撃したのも、GhoulやScylla、Resistanceを手先にするのも、恐らくそのためだ。
開拓地を汚染した事から毒や、恐らくDiseaseに関する攻撃手段を持っているだろうが、それにさえ注意すれば敵では無い」
Rickertにとって今回のmissionは、気に入らないが、少なくとも失敗はしないだろう。そんな程度のmissionだった。
【Noah】のMao Smithは、久しぶりにskinで感じるSunlightの温かさや微風のくすぐったさに、思わず頬を緩めた。
「worldが変わっても、お天道-samaと風は変わらないもんだね。しかし、本当に裸だよ……葉っぱで隠せってのかね?」
周りに人が居ない……自分が立っているのが草原である事を認識してから、Maoは三度目の人生を生きる事に成る自分のbody partの-sama子を点検した。
栗色の髪に赤銅色の肌。背は『Earth』や『Origin』で生きていた時と比べてずっと低く、身も蓋も無く言えばチビだ。
その代わりのように、手足にはmuscleがついている。何回か握り拳を作り、その場でジャンプし、歩いて、軽く走ってみる。
「う~ん、体重計や握力計が無いからaccurateには分らないけど、Muscular Strengthが上がった気がする。その割にbody partが重い感じなのは、やっぱりこのraceを選んだからか」
そう呟くMaoの顔は、『前世』の彼女を知っている者が見たらvestigesがある事に気がつくだろうが、全体的に幼かった。ageの離れた、髪と瞳と肌の色が異なるImoutoと言えば、信じさせる事も出来たかもしれない。
ただ、この『Lambda』では難しいだろう。raceが異なるのだから。
Maoが三度目の人生で選んだraceは、Dwarfだった。
別にどうしてもDwarfに成りたかった訳では無い。単に、Vandalieu達に知られている人相から遠ざかりたかったからだ。
単にRodcorteに人相を変える-samaに注文を付ける事は出来ない。BodyがMemoryや人格を前世から受け継いでいる魂のimpactを受けてしまうからだ。
そのimpactも『Origin』の時のように赤ん坊から生まれ直す方法なら、最小限に出来る。しかし、直接大人のbody partを創ってreincarnationする方法では不可能。
そのため、MaoはHumanやElfでは無くDwarfを選択したのだ。
本当は性別も男にして欲しいと注文を付けたのだが、出来なかった。Rodcorte曰く『男女で脳の構造が異なるのは知っているだろう? Bodyと魂が合わずに人格に大きなimpactが出る……最悪、数日中に死ぬ危険があるので止めておいた方が良い』との事だった。
certainly【Inspector】のShimada Izumiに確認したが、嘘は無かった。
「まあ、nameがStatus上変えられないし、ばれる時はばれるから別にいいけどね。
body partにはこの後慣れるとして……【Status】。お~、本当に出るんだ」
自分のAbility Values、変化したskillを確認する。Unique skillの【God of Reincarnation’s fortune】と【Target Radar:death attributeの一億以上のMana所有者】、【Unique Skill Concealment】も確認する。
この【Unique Skill Concealment】によって、Maoは【Magic Eye of Appraisal】やguild登録の際にUnique skillを見られる事は無い。
Kaidou Kanataがreincarnationした時の反省点や、泉とAranが考慮した変更点だ。これでStatusを見られても、Reincarnatorだとばれる事は無い。
「しかし、運転や操縦が【Mount】やらなんやらに……あたしこれでもpilotだったんだけどねぇ。それに他のskillのlevelも高くないし……このworldの連中ってどんだけmonsterなんだか。
まあ、裸で独り言を言うのもこれぐらいにしてと……はいはい、こっちね。う~ん、脚が短くなると歩きにくいな~」
脳内に流れるRodcorteからのmessageを聞きつつ、Maoは歩き出した。彼女が向かう先には小規模なmountain bandit団がいて、それを倒して衣服や必要な物を奪うためだ。
そして旅の準備を整える頃には、mountain banditを殺して得たExperience Pointで【Joblessし】、通称【一般人】のlevelが100に成っている。
そのまま近くの町に向かってguildに登録して身分証を得て、適当な身の上をでっち上げ、ついでにJob changeを行えば、怪しむ者はいないだろう。
ageも十五と成人したばかりのDwarfなので、最初の頃は町に出て来るまでJobに就いていない事を奇妙に思う者もいるかもしれないが、Job changeを何回か繰り返しながら住む町や国やContinentを変えれば誤魔化せるはずだ。
「さて、金を貯めたらさっさとこのContinentからおさらばして、他のContinentで商売でも始めるか」
Maoは、Vandalieuと関わるつもりは毛頭なかった。Murakami達のように彼を殺すつもりも、Minami Asagiのように彼を説得して止めるつもりも無い。
Vandalieuの行動範囲から大きく離れた場所に逃げ、そこで生活するつもりだ。だから彼等よりも早くreincarnationする事を決めたのだ。
他のReincarnator、【Clairvoyance】の天道や【Ifritah】の赤城、【Oracle】のEndou Kouyaにも声をかけたが、彼等は付いてこなかった。
ただ応援はしてくれた。これからもVandalieuと戦いたくないReincarnatorが来るかもしれない。その時Maoを訪ねて来たら力を貸してやって欲しいと。
因みに、その時や他に緊急事態が起きた場合は泉やAranから連絡が来る事に成っている。
RodcorteもMaoの選択は認めていた。Vandalieuを殺す以外にも、ReincarnatorにはLambdaをdevelopmentさせる役目もあるからだ。
この後、Orbaum Elective KingdomでFishingと海運業で知られたDuke Farzon領では、Maoと言う名のDwarfなのに珍しくWind-Attribute Magicが得意なadventurerが、やや活躍する事に成る。
彼女は普通のadventurerよりずっと早く、登録から一年程でCClassにまで上り詰めたが、すぐに船で Bahn Gaia continentから旅立ってしまった。
【Noah】のMao Smith Rodcorteによって創られたDwarfのBodyにreincarnation。
残りReincarnator RodcorteのDivine Realm 十二名
Origin 七十九名