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Chapter 139: 休養が必要な人達

 Marme Duke軍所属のMage、タルカスはmagicによって作りだした鳥型の使い魔の目を通して、上空から地上を観察していた。

(良い風だ……夏の暑さもこうしていると気に成らないな)

 彼は使い魔とfive sensesを共有するmagicを得意とし、そして気に入っていた。


 自然と危険がイコールで結ばれる場合が多く、移動手段や映像をrecordする媒体が限られるLambdaでは、『Earth』や『Origin』のように絶景を楽しめる者は少ない。

 優秀なMageなら自由自在に空を飛ぶ事も出来るが、凡百なMageでは鳥の-samaに飛ぶ事は難しい。midairを頼りなく浮遊する程度だ。


 タルカス自身も凡百のMageの一人だ。だが、使い魔とfive sensesを共有するmagicを使えば鳥と同じように風を切って空を飛び、地上を見下ろす事が出来る。


 木々の緑、Sunlightをキラキラと反射する沼の水面、どれもが美しい。

(originallyがあの悍ましいScyllaAutonomous Territoryだったとは思えない風景だな)

 女の上半身とoctopuslower bodyを持つmonster共には、勿体ない土地の-samaに見えるが、実際にはScylla以外が利用するには難しい場所なのだから、ままならないものだ。


(いや、これは仕事だ、集中しろ)

 Marme Duke軍に所属するMageであるタルカスは、先日からResistanceが隠れ住んでいるらしい元Scylla Autonomous Territoryを上空から偵察するmissionに就いていた。


 使い魔の形状と色をこの辺りでは珍しくない鳥に似せ、上空からResistanceや、出来れば姿を消したScylla共の痕跡や情報を探るのだ。

(詳細は分からんが、注意する-samaに言われているからな。何に注意すればいいのか謎だが)

 これ自体は珍しくない偵察missionだ。mountain banditmonstersの集落が無いか探すのに、上空からの偵察は有効だからだ。


 ただ、このScylla Autonomous Territoryで最近missionに就いているはずの同僚達が姿を消している。ただの休養だとしかタルカスは教えられていないが、そう告げる上司の顔色は紙のように白かった。

 そして今日このmissionに就く直前に、注意するようにと言われたのだ。異変を感じたら、すぐにmissionを中断せよ。使い魔を破棄しても構わないと。


 そんな注意と指示を受けるほどの危険を、タルカスは具体的に想像する事は出来なかったが。

 使い魔を通して偵察を行うMageは本来危険とは無縁だ。使い魔とはfive sensesを共有しているが、Damageは共有していない。痛みは感じるが、使い魔とのfive sensesの共有は集中がある程度乱れると中断されるので、悪くても失神する程度で済む。


 集中している間main bodyであるBodyが無防備に成るが、占領軍の砦の中で使い魔を操るタルカス達はcountlessの兵に護られているのと同じだ。


(使い魔を惨たらしく破壊されたら、数日休養を余儀なくされる事ぐらいはあるかもしれないが……)


(……ぃ)


(っ!?)

 何か、声のような音が聞こえたような気がして、タルカスは使い魔をその場で旋回させた。そして見つけたのは、の斜面に生えた木々の間から見える四い岩だ。明らかに自然物では無い。

 Resistanceの手がかりかもしれないと、タルカスはその岩に使い魔を近づけさせた。


 すると、岩の異-samaさに気がついた。

(何だ、これは。monolith、なのか?)

 木々の間に建てられた長方形の板状の黒いmonolith。その中心にはGiantな目のモChief、その周りには細かい記号がびっしり刻まれている。


(……ぇ)


(Resistanceの暗号、では無いな。Scylla共が残した碑文か? 上半身はHumanの女でもmonstersから生まれた穢れたraceだからな。こんな妙な物を残してもおかしくはない。

 待て、これは作られてから時間が経っていない。まだ新しい!)


 monolithには埃があまり積もっておらず、建てられている周囲の地面には掘り返した跡が残っている。

 つまりScylla共が姿を消した後にこのmonolithは建てられたのだ。だとすると、Resistanceの手によるオブジェなのか。


(……へ……ぃ)


 それを探ろうと、更にmonolithに使い魔を近づけるタルカス。だが、ふとそれ以上の奇妙さに気がついた。

 このmonolithに近づいてから、があまりにも静か過ぎる。鳥や小動物が立てる音が一切しない。風に揺れる木々の葉の音すら、遠く感じる。

(気のせいか? いや、何かがおかしい! まさかこれが……!?)

 はっとしたタルカスは使い魔をfeatherばたかせ、monolithから距離を取ろうとした。


(……おいでぇ)

 その時、妙な音が聞こえる事に気がついた。


(何だ!? 何の音……何の声だ!?)

 驚いて周囲を使い魔に見回させるタルカスだが、そこには人どころかGoblinの姿も無い。

(こっちへ……おいで)

 だが声はどんどん近づいてくる。まるで耳元で囁かれているようだ。


 まさかと思ってmonolithに視線を戻すと、目のモChiefと視線が合った。そう、タルカスはmonolithに見られていたのだ!

(こっちへ……来い!)

 酷く悍ましい、脳髄にthrust刺さるような声が、タルカスのMentalに直接響いた。


「い、嫌だぁぁぁぁ!」

「どうしたっ!? おい、タルカス、落ち着け!」

 集中が途切れたためか、タルカスの意識は本来のBodyに戻っていた。突然screechを上げたタルカスに、何時の間にか近くに居た同じDuke軍のSoldierが慌てて駆けつけてくる。


(こっちへ、おいで)

 しかしタルカスの耳には未だmonolithの声が響いていた。

「俺は行かない! 行かないぞっ!」

 冷や汗にwhole bodyを濡らし、目を剥いて叫ぶタルカス。その-sama子を見てSoldier達は悲痛に顔を歪める。


「クソっ、タルカスもか! 誰かPriest -samaを呼んで来い!」

「は、離せ! 止めろぉぉ! 俺は行かないぃぃ! 行きたくないぃぃぃ!」

「布を噛ませろ! tongueを噛むぞ!」

「ふがっ!? ふむおぉぉぉおっ!」


 Soldier達は手馴れてしまった-sama子でタルカスを取り押さえると、彼の同僚達が『休養』しているroomに彼を連れて行ったのだった。




『このタルカスって男で五人目か。……相変わらず容赦ないな』

『一月から数か月休めば回復するだろうけれど、恐ろしい対策だわ』

 RodcorteDivine Realmでタルカスを含めた、ResistanceSauron Liberation Front』の手がかりを探し出そうとしたMage達のrecord映像を見ていた、Familiar SpiritMachida AranShimada Izumiは青い顔をして言った。


 LambdaHumanの目を通してVandalieuが今何をしているのか探ろうとした二人だったが、recordの主が発狂するまでの過程を見るはめになった。

『……あのmonolithStoneサークルは、【Clairvoyance】対策よね?』

『それ以外無いだろ。全部上からじゃないと見つけられないようになっているし』


 暫く前、Originで死んだ『Bravers』のmemberの一人、【Clairvoyance】の天道の力を使ってReincarnator達はTalosheimVandalieuの情報収集を試みた。

 だが、情報収集だけのつもりが【Death Scythe】のKonoe MiyajiRodcorteと共謀し、【Clairvoyance】で映した映像を介してVandalieuを殺そうとCheat AbilityActivateさせた。


 それは失敗し、Konoe Miyajiは魂を砕かれて消滅した。しかし天道は無事であるため、やろうと思えば再び【Clairvoyance】で情報収集を試みる事は可能なはずだった。

 しかしVandalieuは恐ろしい対策を打っていた。


『上から見ただけで発狂するオブジェか。Familiar Spiritに昇華してなかったら、俺達もヤバイな』

 Vandalieuが設置したのは、accurateには見ただけでDemon Pathに誘われるオブジェやPainトなのだが、それを知らないAran達はそう解釈していた。


 それはオブジェを見つけたMage達がタルカスを含めて全員Demon Pathに導かれる事無く発狂しているからだ。何故そうなってしまったのかというと、タルカス達がAlda過激派の多いMarme Duke軍の一員だったからである。


 タルカス達は当然の-samaAlda過激派で、Vida's New Racesに対する激しい差別意識を持っていた。

 そのためオブジェやPainトに仕掛けられた【Mind Encroachmentskillの効果に、激しい拒否反応を示し、Demon Pathに導かれる事を拒否するあまりMentalに異常をきたしてしまったのだ。


 「××になるくらいなら死んだ方がマシだ」というのを、Emotionalに実行してしまった訳だ。尤も、Vandalieuが本来狙った効果では無い為、一月から数か月静養すればtraumaは残るかもしれないが回復する程度だが。


『あれを天道やAsagiが見たら拙いわね。幾らCheat Abilityがあっても、psychological強さが備わる訳じゃないから』

『そうだな。まあ、天道もRodcorteの手口を見てから、【Clairvoyance】を使う事は拒否しているし、そうはならないだろうけど』


 ReincarnatorDivine Realm内に存在すればある程度無理矢理controlできるRodcorteだったが、流石にCheat Abilityを強制Activateさせる事は出来なかった。


 それは安心なのだが……どうすればReincarnator達に対して更に警戒心が高まったVandalieuと仲間達との間を取り持ち、殺し合いが起きないよう出来るのか。

『もう一回天道にVandalieuを見て貰って、筆談で会話するって手が使えるかと思ったんだけどな~』

『やろうとした途端Rodcorteに邪魔されるに決まってる。それに、あんな対策を取られたら絶対に無理よ』

『そうだな……一度皆と相談するか。まだ一ヶ月の期限までには時間がある。』




 異性との関係について、Vandalieuは悩んでいた。

 『Earth』で生きていた頃から、暖かい庭を築く事に彼は憧れていた。その頃からluxuryな事について執着が在ったが、愛する人との心安らげる庭で過ごす時間は、金で買えないluxuryだと思っていたからだ。


 それは『Earth』で死に、『Origin』で死に、この『Lambda』に生まれ変わった今でも変わらない。

(だけど、人数が軽く十人を超えるのはどうなのだろう? 問題あるかな?)

 二人目のchildの父親に成って欲しいと言うBasdiaに、その次で良いと言うBildeと言わないTareaMaidSalireRitaPrincess LeviaZandia PrincessJeenaOrbia、そしてPrivel。以上十名が確定。


 EleonoraBellmondは僕やButlerで良いと言っているがつまりそういう事であろうし、ZadirisKatiaははっきりとは言わないがそんな感じである。IslaEleonoraと張り合う気満々な-sama子だった。

 Legionは友達だが、EleonoraBellmondと同じpatternのような気がする。


 PauvinaJadal達はまだchildだから将来意見が変わるかもしれない。

 EisenRapiéçageYamataは懐いてくれているが、まだそういう意味の好意とは違う気がする。


 そして、GizaniaMyuzeが加わる事になった。『親愛の首飾り』を異性が受け取り首から下げると、プロポーズを受けた事になるそうだ。

 二人から……Zanalpadna人々全体から『Miko』では無く『Shrine Maiden』、女だと勘違いされていた事はVandalieuにとってshockだったが、勘違いが元で婚約する事に成るのはPrivelに続いて二回目である。


 これ程大勢の異性を周りに侍らすことは、現代の『Earth』だと大問題である。江戸の-dono -samaではないのだから、当然非難されるだろう。

 『Origin』でも同-sama


 この『Lambda』の場合は、社会とその社会での立場による。Human社会……HumanDwarfElfなら、基本は一夫一妻制だ。ただ裕福な商人や成功したadventurerの場合はLoverや妾を何人か囲う事は珍しくない。

 Royal Nobilityなら、ほぼ義務とされる。複数の妻を娶る事は経済力のappealであり、一族がstabilityしている事を表すからだ。


Mirg Shield Nationはその方面ではお硬い方だが、兄上……一番上のアルサード兄上は三人だったな。本来は親父と同じ四人か、五人くらいが妥当だが今Legston Earl 家は景気が悪いから……いや、多少無理をしても増やすか?」

 Mirg Shield NationLegston Earl 家当主の場合妻の適正な人数は、以前なら四人から五人くらいらしい。


「何故無理をしてまで増やす必要があるのですか?」

 そうVandalieuが聞くと、Kurtは苦笑いを浮かべて答えた。

「本来分としてアルサード兄上や兄上の子を支えていくはずだった、Chezare兄上と俺が『死んだ』からさ」


 Chezareを殺したのも、Kurtを死んだように偽装して引き抜いたのも、全てVandalieuによるものだ。

 現Legston Earlであるアルサードは、短期間に次々と未婚の弟達を失ったためchildを増やす必要に駆られる事に成るだろうとKurtは予想したのだ。


「……それは悪い事をしましたね。寝返り工作を仕掛ける際のsouvenirVigor剤にしましょうか」

「陛下が作ると効果が凄まじくなりそうだから止めておいてくれ。アルサード兄上は性豪って訳じゃないが跡取り長男はもう生まれているし、childが増え過ぎても困るだろ。

 それで陛下の場合だが……別に良いんじゃないか、十人以上でも」


 顔色の悪い Kurtは悩むVandalieuに対して、「悩むほどの事じゃない」と肩を竦めた。

「国の規模にもよるが、国王ならそれぐらい囲ってもおかしくはない。先代のAmid Empire Emperorは後宮に数十人囲っていたって聞くしな。今のEmperor Mashkzarは、十人も居なかったと思うが。

 今は亡きSauron Dukeも、Maidも含めれば十数人以上手を出していたはずだ。お蔭で遺児が多くて当時は苦労させられた……」


 どうやらSauron DukeRaymond Parisの父親は性豪だったらしい。


EmpireSauron領と、うちの国は違うと思いますが」

 人口は圧倒的にAmid Empireが、そしてSauron領の方が多い。maybe、経済力もAmid Empireの方に軍配が上がるのではないだろうか? そう思うVandalieuだが、Kurtの意見は異なるようだ。


「確かに違うが……そもそもEmpireElective Kingdomと同じ基準で比べられないだろ、違い過ぎて。

 maybe、今の数2x Augment Multiplierえても誰も気にしないんじゃないか?」

 冷や汗が滲む顔を横に振ったKurtは、そう言った。


 彼から見ればTalosheimは復興した新興国で、Noble的に考えれば初代国王であるVandalieuは多くの子孫を残さなければならない立場だ。分や他の有力者との政略結婚など、国を纏めるためには少々励んだ程度ではとても足りない。


 だがVandalieuの寿命は短くても三千年を超えるので、殺されでもしない限りKurtが生きている間はSuccessorの心配なんてしなくて良い。

 そもそも、通常のNoble的な価値観を持つ者がTalosheimには殆ど居ない。

 更に国民はVida believerで、一夫多妻制に理解があるか……そもそも深く考えていなかったり、結婚という概念自体持っていなかったりする。


 そして国の経済は良好だ。数千年後は分からないが……少なくとも後数百年は不景気にはならないだろうとKurtは見ている。

(ZanalpadnaやこのGhoulの国に倣って、Talosheimに非常時のShelterFarmingや水産業用の低等Class Dungeonを帰ったら作るって言い出すし……この陛下、普通は領内の未開地を開拓するか他国を侵略でもしないと手に入れられないはずの土地を、たった数時間で増やすからな)


 【Labyrinth CreationskillDungeonを新たに創り出す事が出来るVandalieuが、Boundary Mountain Range内部で行われているDungeon利用法を採用する。それはDungeonが領地と同じ意味を持つ事に成るという事だ。

 しかもVandalieuの場合Dungeon内で生成されるmonstersを大雑把にだがcontrolできる。普段はskilllevelincreaseさせるためにあまりしないが、Shelterや産業に利用するためのDungeon内のmonstersなら常に棒立ちのconditionにさせるだろう。


 複数の妻を娶るにはやはり甲斐性が必須だが、何時でも必要なだけ甲斐性を持てるのだから、Kurtが適当に答えるのも無理も無い。

 そして言われた当人は、何度か瞬きを繰り返した後「そうですか?」と首を傾げている。

 やはり自分が領地を無から創り出す事が出来る事に自覚が無いようだ。


『なぁ、おい』

 それを延々説明する気になれないKurtは、肩をつつくBorkusの指を無視して話題をずらす事にした。

「重要なのは陛下がどうしたいのかって事じゃないか。つまり、陛下自身の気持ちだな。その辺りどうなんだ?」

『そりゃあ俺もその通りだと思うが……』


「俺の気持ちですか……皆に好かれてとても嬉しいです」

 Vandalieuの気持ちを端的に表すと、嬉しい以外にない。

 複数の異性に好かれて、嬉しく無い筈がない。しかもEarth』とは違い、複数の異性と同時に付き合っても問題視されない立場にある。


 ならそれを享受するのに何の不都合があるだろうか。

 人生の目標がSelf幸福の追求であるVandalieuは、とても俗物であった。


「じゃあ、問題無いだろ」

『坊主、Kurtがこっちを振り向こうとしねぇんだが、どうしたんだ?』

「そっちにZozoganteが居るからだと思います」

 Kurtの意識をZozoganteから逸らす事も兼ねて相談を持ち掛けながら、同時進行で【Mind Encroachmentskillによる治療を施しているVandalieuは、Kurtの後ろで困惑しているBorkusと、Zozoganteに答えた。


 ここは『Zozogante大森林』の最深部。Dungeonボスを倒した者のみが辿り着ける宝物庫だった。


 暇つぶしに一人『Zozogante大森林』を攻略していたBorkusは、立ち塞がるmonstersを全てSlash伏せてここに到達した。その彼の前にBoundary Mountain Rangeの内側、Continent南部のGhoul達の後見である神、『Evil God of the dark ForestZozoganteAdventした。

 そしてZozoganteBorkusに告げた。『悪いんだけど、-kunの上司を呼んで来ていただけませんでしょうか』と。


 そう頼まれたBorkusは、とりあえずVandalieuと一応副GeneralであるKurtを連れて来たのだった。


 そして一見幹が捻じれた大木のような、しかし目を凝らすと枝にたわわに実ったFruitは全てeyeballで、幹や枝には裂け目のような口が幾つもあるZozoganteの姿に、KurtMentalは大きな衝撃を受けてしまった。

 それをVandalieuが治療していたのである。


 『Scale Kingの巣』の最深部に『Evil Dragon God of Five SinsFidirgAdventした時、Vandalieu自身はcertainlyBasdia達も少し動揺する程度で、無力な霊であるDarcia以外は大丈夫だったので危機感が薄れていたが、神との邂逅はHumanMentalに多大なimpactを及ぼすのだ。

 『Zozogante大森林』の長も、Zozoganteに拝謁する際は頭を下げ決して顔を上げないらしい。


『何も身を張ってまで自分は普通だって証明しなくて良いだろうによ』

Borkusは平気だったんですか?」

『まあ、少しビビったが、それぐらいだぜ』


 Borkusの場合は自身が既にUndeadであり【Mental Corruptionskillを所持している事、更にRankも11とlegendからMythの域に足を踏み入れつつあるため、大きなimpactを受けなかったようだ。


『あのー……そろそろ良いですか?』

 木が軋むような声のZozoganteが、遠慮がちな口調で話しかけてきた。

「あ、はい。Kurt、振り返っちゃいけませんよ」

「おいおい陛下、俺をchild扱いするなよ。……このまま目を瞑って耳を手で塞いで座り込むから、俺は大丈夫だ」


「それは大丈夫なのでしょうか?」

 思わずそう聞き返すが、Kurtは三座りの姿勢で目と耳を塞いでいるので答えようとしない。とりあえず、眠ってもらった方が良いだろうと、Vandalieuは揮発性の睡眠薬を分泌してKurtを眠らせておいた。


 Kurtの寝息を確認してから、Zozoganteが話し始める。

『あー、まずはそれでこの度Ghoul達を救っていただき感謝いたします。彼等は私にとって重要なbelieverであるだけでなく我が子も同然であるため、Ravovifardの手の者共に蹂躙されるのは避けたかったので、助かりました』


「いえいえ、一応『Ghoul King』ですから気にしないでください。でも以後色々便宜を図ってくれるととても助かります」

『あ、はい。じゃあ何人か娘を御傍に――』

「その便宜はいいです」


『複数の異性に好かれるのは嬉しいのでは?』

「当人の意思が問題です」

 信仰しているKami-samaに言われたからという理由だと、いまいち嬉しくないVandalieuだった。


blood縁を深める交流はVigaroに任せるので」

『そうですか……では、数百年後に気が向いたらと言う事で』

 断られたZozoganteも残念そうだが、数百年単位で気長に機会を窺うつもりのようだ。


『では、とりあえずblessings的な便宜を図ると言う事で宜しいでしょうか? 私は【Demon King Fragment】をsealedしておりませんし、他に今出来るお礼も思いつきませんので。

 お仲間のGhoul達と、あの植物系のmonstersに』

Eisenの事ですか? お願いします」


 神's Divine ProtectionAbility ValuesAugmented (2)skillの効果や取得に補正がかかり、更に成長の限界を引き上げる事が出来る。後天的にaptitudeを与えられる-samaなものだ。

 なので、余程性質が合わない神でも無ければblessingsは受け取っておくべきである。


 ZozoganteはどうやらFidirgと同格……つまり神としては下の部類であるらしいが、効果はあるはずだ。


blessingsは有りがたいですが、そこまでGhoulを守りたかったなら何故今まで何もしなかったのですか。責める訳ではありませんが、ここは貴方が作ったDungeonです。もっと何か出来たのでは?」

『確かになぁ。Dungeonボスや中ボスをブディルードのbastardに送り込むとかすれば、勝てはしなくても少しはGhoulの被害も減ったんじゃねぇか?』


 Vandalieuの質問に合わせてBorkusも口を挟む。ZozoganteFidirg-samasealedされていた訳では無いので、本人がAdventして戦う事は流石に出来なかったかもしれないが、Dungeonで生成されるmonstersGhoul達の援軍に使うぐらいは出来たのではないだろうか。


『そうしたかったのですが……Barrierの維持で手いっぱいでして』

 しかし Continent南部のVida's FactionGodsにも苦しい事情があった。

 それは十万年前の戦争でVidaや、Zozoganteを含むVida's FactionGodsを傷つけ追いやった『God of Law and LifeAlda、そしてVida's New Racesの存在に否定的な『God of ReincarnationRodcorteの介入を防ぐためのBarrierだ。


 傷ついたVidaが最後の力でContinentを隆起させBoundary Mountain Rangeを創り出し眠りについた直後、Zozoganteを含む当時活動が可能だったGodsBoundary Mountain Range内にBarrierを張り巡らせた。

 このBarrierがあるため、AldaBoundary Mountain Range内に直接Familiar Spiritを遣わす事や、Boundary Mountain Range内のHumanに『声』をかけてbelieverに勧誘する事が出来ない。impactを及ぼすには、believerを物理的に外部からBoundary Mountain Range内に侵入させるしかない。

 このBarrierの効果は、Talosheimを含めたBoundary Mountain Range内に及んでいる。


 Rodcorteも、ZanalpadnaVida's FactionGodsが守る都市に存在する人々recordを見る事が出来ない。あの神がworldに直接干渉する事は無かったが、自身が知り得た情報をAldaに流す程度の協力ならしかねないので、それを防止しているのだ。

 ただこちらの効果は十万年前の戦争直後に活動不能に陥った『Giant of the SunTalosや『Evil Dragon God of Five SinsFidirgが守るはずだったTalosheimMarshlandsには及んでいない。


 それぞれGiant raceLizardmanだけであったし、今はVandalieuの【Guidance: Demon Pathskillがあるため問題は無かったが。


 Rodcorteにまで干渉するBarrierは強力だがその分特殊で、維持するためには莫大な力を使用する。そのためZozoganteや他の力のweak神はBarrierの維持に力の大部分を割いているのだ。

 そしてZozoganteよりも力のある神は、力がある分【Demon King Fragment】のsealedも任されている。


 そして十万年前の戦いの傷が未だ癒えていない神が多い。


『そのため私はblessingsを与え、こうして虚像を限られた場所に映し会話をする程度の事しか出来ません。

 Pure-breed Vampireの皆-samaも、それぞれBarrierの維持やVida -samaの守護、傷の回復にかかりきりです。ZanalpadnaMububujengeはそれでも余裕がありましたが、それもRavovifardの奴めが……一体何処であれほどの力を手に入れたのか。元は私と同程度の力しか持たなかったのに』


 『Evil god of Carapaces and Compound EyesZanalpadnaVandalieuの前に姿を現さなかったのは、どうやらRavovifardに妨害されていた為らしい。

 そしてRavovifardは本来ZozoganteFidirgと同格の神だったらしいが、何故か格上の筈のMububujengeZanalpadnaを抑えられるほどの力を手に入れたようだ。


「なるほど。Bugitasを倒してBudarion皇子に帝位についてもらうだけでは無く、やはりRavovifardをどうにかしないといけない訳ですか。

 ……出来るかな? 神としてもかなり強いようですし」


maybe、貴方なら何とかなるかと』

『大丈夫だろ、坊主なら。それに次のJob changeも近いんだろ?』

「いや、そんな簡単な話じゃないと思いますけど」


 口々にそう言うZozoganteBorkusにそう言いかえすVandalieuしかしZozoganteBorkusの態度は変わらなかった。




《【Mind Encroachment】、【Labyrinth Creation】、【Golem Creationskilllevelが上がりました!》


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