「体blubber率を極限まで下げた鎧のようなmuscleも、blubberの奥に息づくmuscleも、どちらもmuscleである」

「……すまない。-kunが語る事は、余には難解すぎるようだ」

　前線基地のNoble Orc Generalの腕とeyeballの移植Surgeryを受けたBudarion皇子は、Vandalieuに困惑を隠さずに答えた。

　痛みをDeath-Attribute Magicで消され、更に【Out-of-body Experience】で増えたVandalieuのCloneに定期連絡でやって来たLegionまで加わったSurgery陣が行った施術の効果は著しく、Budarion皇子の視界や腕の感覚は既に戻りつつある。

　縫合する時に使ったlife goldや、術後に飲んだBlood potionの効果もあり、Endurance的にも回復している。

　他人の腕を縫合して大丈夫なのかと思うかもしれないが、Noble Orcの-samaなmonstersのBodyはこの場合良い意味で単純な作りをしている。

　同種や、ある程度近いraceの場合移植Surgeryを行っても拒絶反応の類がほとんど出ずに馴染むのだ。

　尤も、この特徴を活かせるのはVandalieuやLegionぐらいだろう。この『Lambda』worldでは高度な外科Surgeryの概念が存在しないからだ。

　普通のHumanやmonstersなら高価なpotionや高度なmagicの業で、失った部位を再生させようと考えるだろう。

　だからこそBudarionは同種とはいえ他の個体の部位を移植すると言う発想に驚いていた。

「だが、それ以上に驚いたのは-kunが余のbody partを侵す不治のCurseを容易く解除した事だな。バコタ-donoとは以前から交流があったが、彼があれほど驚きを露わにするのはそう無い」

「まあ、Curseなら大体解けますから。……神のCurse以外なら」

　Bugitas皇子の固有skillや彼のWeapon EquipmentであるDeath Scytheの効果なのか、彼が奉じるRavovifardの力なのかは結局わからなかったが、Budarion皇子の傷の治癒を妨げていたCurseは、あっけなく解かれていた。

　だがバコタMage長すら不可能だったCurseを容易く解くVandalieuでも、解けないCurseに彼自身が侵されている事を知り、Budarion皇子はhorrorを覚えた。

　彼にCurseをかけたのは、どれほど強大な神なのかと。しかしそれを表には出さず、周囲を指して言った。

「いいや、大したものだ。-kun達のお蔭で、余の家臣達も助かった」

　Zanalpadnaのある塔の地下にある通称『Shelter』にはBudarionと共に戦い、Bugitasに敗北しEmpireから逃げる際も付いて来てくれた忠臣達がbody partを休めていた。

　Bugitasと直接争ったBudarion皇子以外にCurseをかけられた者はいないが、多くのNoble Orcが癒えない傷に苦しんでいた。バコタMage長以下Mage達の治療によって傷が癒えている者も多いが、中には目や四肢を失った者や障害が残った者も少なくない。バコタ達も流石に全員に完璧な治療を施せるほどの余裕は無かった。

「うおぉぉぉっ！　私の腕がっ、腕が動くぞぉぉお！　ブヒィィィ！　感謝致す、Shrine Maidenの肉婦-sama！」

『嬉しいのハ分かったから少しは落ち着きナ！　Isisの手が滑るだろうガ！』

「俺のっ、俺の鼻がモドッタブヒィィイ！　肉婦-sama万age！　肉婦-sama万age！」

『だから落ち着けってんだヨ！　後ニクフって何サ！？』

『ハッハッハ！　良いではないカ、Baba Yaga。歴戦の勇士達に称えられるのハ、悪い気分ではナイゾ！　……しかし、褒められているのカ！？』

　Legionが治療を受けて傷が完治したNoble Orc達に纏わりつかれ、Baba YagaとValkyrieの人格がそれの相手をしている。

『そうねぇ、EnmaやEreshkigalは褒められていると思っていないようだけど』

　その反対側では、Isisの人格が動かす腕が今もNoble Orcに施術している。前世では生きている者に対して【Surgery】を行った経験が少ない彼女だが、Vitality旺盛なmonstersは良い練習台に成っているようだ。

「肉婦というのはね、『Evil God of Degenerate Corpulence』Mububujengeが自らの肉片から創り出してOrcやNoble Orcに遣わすmonstersらしいわよ」

　Vandalieu達の手伝いをしている間にNoble Orcから肉婦について聞いたEleonoraが、Legionにそう説明する。

　Orc達はrace的な特性として強い、場合によっては他の三大欲求や生存Instinctまで蔑にするほど強いlibidoを持つ。

　Noble Orc EmpireのOrcは十万年の月日によって、他のOrcよりはlibidoが弱くなっている。しかし、それでもHumanのfemaleが受け止めるには強すぎる事に変わりは無い。

　気が優しい者も多いが、情事の際興奮に負けず自制心を保ち続けられる程ではないからだ。

　そこで十万年前からMububujengeによってOrc達に支給されたのが、肉婦と言う訳だ。

「Orcの女、妻やloverとして与えられるそうよ。何でもRankでは精々１か２程度だけどOrcを相手にしても耐えられるほど頑丈でタフ。そして夫であるOrcに合わせて肉婦の性能は自然と上がり、Orc Workerの肉婦はchildも作れるそうよ」

　そしてRank５以上のOrcの肉婦は、Humanの良妻並にHouseworkをこなすそうだ。certainly、Rank up以外でもachievementを上げた場合もMububujengeの祝福により肉婦の性能は上がって行く。

　こうしてOrc達のlibidoは肉婦によって解消され、さらに向上心も刺激されるのだ。そして肉婦に入れ込む事で、民のfemaleへの性犯罪を抑止する効果もある。

　十万年経った今では、肉婦以外には欲情しなくなったOrcも少なくないそうだ。前線基地でBudarion皇子の側に戻ったOrc Worker達もその一部である。

「今はMububujengeのtempleで隔離されているそうだけど。姿は……分離した時のあなた達と似てるみたいね」

『う、嬉しくなィ……！』

『でも、Vandalieuの肉婦と呼ばれるのは悪い気分じゃないのでしょう？』

『身に余る光栄だけれど、まだ私達には過ぎた尊称だわ』

『どおりで誰も僕達を見ても怖がらない訳だ。……彼等から見ると肉婦の集合体に見えるのか。だけどPluto、尊称なのか？』

　Legionが姿を現しても、Noble Orcはcertainly ArachneやEmpusa達は驚いてはいたが、怖がる-sama子は無かった。Noble Orc Empireと交流が在った彼女達には、Legionは肉婦たちが集団でお互いの手足を絡めあっているように見えるらしい。

　直径三meterのGiantさと、何故そんな事をしているのかという異-samaさに驚いても、怖がることは無いらしい。

「Eleonora -donoの説明を補足すると、余たちNoble Orcにも肉婦は授けられる。ただNoble Orc三百家の家督を継げない者の中でも、力に劣る者が受け取る神の情けという扱いだが。肉婦達との間に出来る子は、ほぼ全てOrcだからだ。

　余たちNoble Orc全員が民から妻を取っては民が子を残せず、他の国に大勢の嫁をdemandするような真似が出来る訳がないので、仕方のない事だ」

　Noble Orc Empireは、「Empire」と名乗っていてもHumanと同じRoyal Nobility制度を採用してはいない。十万年前、まだHuman達にもNoble制度が無かった時代から別れたので、当然だが。

　三百の『家』と呼ばれるfamilyで構成された中小の集団があり、その家長がそれぞれのAbilityによって『位』と呼ばれる役職を割り振られる。

　そして『位』を得た家長は、自身が長である『家』の者達をCommandingして役職を全うするのだ。

　あの前線基地を例にすると、ブブーリンとNoble Orc Generalの二家が「前線基地建設係」の位を与えられたという事に成る。

　実際にはまだ『位』は仮のものだったらしいが。

「そして『位』を得た家長と、家長の補佐をする家の幹部数名が本物の人の妻を娶る事が出来ると。

　ところで、腕の調子はどうですか？　以前と同じように剣を振る事が出来そうですか？」

「そうだな……日常生活に支障は無いだろう。しかし、剣を以前と同じように振るう事は出来そうにない」

　元はNoble Orc Generalの物だった腕を摩るようにして感触を確かめながら、Budarion皇子は答えた。

　自分の腕をmagicで再生させたわけでは無く、他人の腕を移植したのだ。Sizeはほぼ同じだがmuscleの量が異なるし、自分の剣の技を他人の腕でも同じように再現できるのか、自信は無かった。

「そうですか。じゃあ、これからの実戦で勘を取り戻してもらうしかないですね。

　Budarion皇子、できれば貴方の手でBugitasを倒してもらいたいのです。俺達も全力で援護しますが、最低限以前と同じ強さを取り戻してもらわないといけません」

「余が、か？　だが、余の力が無くてもShrine Maiden -donoならBugitasを倒せるのではないだろうか？　例えば、Borkus -donoは余より確実に強い。Eleonora -donoやVigaro -dono、Basdia -donoにBone Man -donoも中々の強者である事が窺え、Zadiris -donoのmagicも中々だ。Legion -donoにも得体の知れない何かがある。彼等ならBugitasとも互角以上に戦えるはず。

　Shrine Maiden -donoも……正直に言えば【Demon King Fragment】を手足の-samaに操っている事には仰天したが、それを使えばBugitasを倒す事は難しくないはずだ」

　不思議そうに聞き返すBudarion皇子。実際、Vandalieu達は今の時点でBugitasを殺すだけなら戦力過剰気味だ。

　もちろん、Bugitas側に寝返り、Ravovifardを奉じる-samaになったNoble OrcやOrcの数は多い。更に、最悪の場合Ravovifard main bodyをどうにかしなければならない。それを考えれば幾ら戦力があっても足らないが。

　しかし、Zanalpadnaの戦力に傷が完治したBudarionの忠臣達、そしてこれから集める他の国家の兵力まで揃えれば、数的優位もひっくり返るはずだ。

　だから本調子では無いBudarion皇子にBugitasを倒させる事に拘る必要はない。そう皇子本人は考えていた。

「余の心情を慮っての事なら、気持ちだけ有りがたくいただこう。しかし、優先すべきは余の心情では無い。一刻も早くこの地の全ての国々に安寧を取り戻す事だ。

　力及ばずこの地に初めて戦乱を起こしてしまった余等に構わず、遠慮無く武功を立てて欲しい」

「いえ、その安寧の為に貴方がBugitasを倒す必要があります」

　自らのfeeling of revengeを抑えて頭を下げるBudarion皇子に、しかし Vandalieuは頷かずそう答えた。

「何と。それは一体何故？」

「Noble Orc Empireが人徳もそうですが、強者をEmperorと認める国だからです。もし俺達の誰かがBugitasを倒したら、俺達がEmpireを治める、少なくとも運営に関わる事に成るでしょう？」

「それは、その通りだと思うが……」

　何せ簒奪者を倒したHeroである。Noble Orc達は、当然の-samaにHeroが上に立つ事を望み、歓迎するだろう。

「でも俺は、俺達の誰もEmpireを治められる自信がありません。Orc語は通訳して貰えば良いとしても、Empireの独特の政治formや文化、価値観を上手く扱えるとは思えないのです」

　EarthにVandalieuが居た頃にnewsや新聞で知ったのだが、先進国が独裁者を倒しその途上国を支援する形で国家運営に関わった事が幾度かあった。だが、それらはあまり成功しているという印象が無かった。

　失敗という程ではないが、先進国が当初思い描いていた成功には程遠い。そのように思えた。

　もしかしたらVandalieuがEarthで死んだ後成功した可能性もあるが、それでも何年、十何年かけての成功である。それまでの長い苦節を補って余りある成果とは思えない。

　Earthでの出来事を同じだとはVandalieuも思っていないが、【Demon Path Enticement】や【Guidance: Demon Path】が有効かどうかわからない人々の国を上手く運営できるかどうか賭けをする気はない。

　まさかOrcの胎児をOrcusに変えた-samaに、Noble Orcの胎児をdeath attributeのManaで変異させ世代交代が完了するまで待つ気にもなれない。

　因みに、Budarion皇子や彼の配下のNoble Orc、Orc達には【Demon Path Enticement】や【Guidance: Demon Path】が効いている-sama子がまだ無い。『Vida's Miko』のsecondary name効果は効いているようだが。

「……では、信用の出来るNoble Orcを代理として置いてはどうか？」

「俺が最も信用できるNoble Orcは貴方です、Budarion皇子」

　妥当な案を提案したら、即座にそう言い返されたBudarion皇子は息を飲んだ。

「それは……その気持ちは嬉しいが……余は既にBugitasに一度loseいる。その余が再びEmpireを司る事を認めない者も多いだろう」

「なので、今度は勝ってもらいたいのです」

　そして結局話が戻る。

「ぶむぅ、Shrine Maiden -donoは難しい事をdemandなさるのだな」

　Vandalieuが意見を変えるつもりが無い事にBudarion皇子はプレッシャーと、同時に敗北の屈辱を拭う機会がある事に高揚感を覚えた。

　そして自分の半分程の背しかないVandalieuに、何とも言えない頼もしさを感じ始めていた。

「とりあえず、治療が終わったら下の階層でweak monsters相手にリハビリしましょう。Weapon Equipmentは、Borkusに渡すつもりだった予備のMagic Swordがあるので、快気祝いを兼ねて差し上げます」

「重ね重ね感謝する、Shrine Maiden -dono。どうやって返せば良いのか、悩ましい程恩が積み上がっているな。Talosheimは-kunのような素晴らしいQueenを迎えられてFortuneだ」

「……俺は男ですから、Queenではありません」

「ブ、ブヒ！？」

　今まで自分の性別を勘違いされた事にやっと気がついたVandalieuと、衝撃の真実に思わずOrc語で聞き返したBudarion皇子。

　穏やかな風が流れる草原で顔を見合わせたのだった。

《【Surgery】、【Demon Path Enticement】、【Guidance: Demon Path】、【Materialization】skillのlevelが上がりました！》

　Zanalpadnaの城の地下に存在する通称『Shelter』、その正式名称は『殻要らずの原っぱ』。

　何とDungeonである。

　等ClassこそＥClassと低いが、Dungeonを非常時のShelterとして運用するとは正気を疑うかもしれない。しかし、冷静に考えれば至極合理的な理由がある。

　単純に、低等ClassのDungeon内部の方が町の外より安全なのだ。

　町の外はRank４以上のmonstersが跋扈している。普通ならＣClass adventurerかＤClass adventurerが集団で居なければ討伐できないRank５のmonstersとも遭遇するし、極偶にだがRank７から８のmonstersが出現する事もある。

　対して、Dungeonではrunawayが起きる直前でも無ければ基本的にその等Classで出現するmonstersしか存在しない。ＥClass Dungeonなら浅い階層でRank１……戦闘系skillを持たない一般人でも追い払える程度のmonstersばかりだ。

　Dungeonボスは大体Rank３のmonstersだが、ボスは最深部の通称ボスroomから動く事は無い。

　更に、実は外からmonstersがDungeonに入ってくる可能性も低い。Dungeon外で生まれたmonstersは、目の前で獲物がDungeonに逃げ込んだ等の理由が無い限り、自主的にDungeonに入る事はほぼ無いからだ。

　どうやら、一度Dungeonを出たmonstersはInstinct的にDungeonに入る事を避けるようだ。亜人型のmonstersの場合は当てはまらないし、Tamerされているmonstersは命じられればDungeonに入るが。

　それにDungeonに仕掛けられるTrap等も、ＥClassなら殆ど無い。

　非常事態……自然災害や強力なmonstersの襲撃によって国を守る城壁が機能しなくなった等の状況では、町の中よりも低等ClassのDungeonの方が安全なのだ。

　これはZanalpadnaだけでは無く、他の都市国家でも低等ClassのDungeonはShelterや農場、生活用水の水源として活用されている。

　Budarion皇子と共に落ち延びたNoble Orcや、High GoblinやHigh Koboldの国から逃げてきた者が『殻要らずの原っぱ』に運び込まれたのも、そこなら十分なspaceが用意出来るからだ。

「Miko -dono達は今暫く皇子達の治療にかかりきりであろう。その間に、決めなくてはならぬ」

　Queenの間の上座に座すDonanerisは、困ったような顔つきでそう言った。

「二人とも分かっているじゃろうな？」

　問われた二人、彼女の末娘であるGizaniaと、その知己であるMyuzeはそれぞれ肩や甲殻に覆われた腕や脚の節を振るわせた。

　彼女達は「とんでもない事をしてしまった」と冷や汗を流しながら、顔を青くしていた。

「Gizania、Myuze、確認するが両名が親愛の首飾りをMiko -donoに渡した。しかも、求められたのではなくお前達から差し出した、それは確かであるな？」

「は、はい、母上」

「そっ、某も同-samaでござる」

「Gizaniaは親しき友の証しであると、Myuzeは約束の証しと説明して渡した。そうであるな？」

「「はい」」

　Donaneris Queenに確認されるたびに、二人の顔色が悪くなる。しかし、Donaneris Queenの憂鬱と彼女の横に控えるバコタの頭痛も悪くなっていく。

「つまり、Miko -donoはそれがArachneとEmpusaからの求愛を受け入れた証しである事を知らずに首から下げている、と。これは当初思ったよりも拙い事態じゃな」

　ArachneやEmpusaが脱皮した時に出る抜け殻を研磨して作る親愛の首飾り。それを同性に贈る事は、親友の証しとされる。

　しかし、異性に贈る場合は意味が変わる。異性に親愛の首飾りを贈る行為はプロポーズと同じであり、受けとる事はプロポーズを受け入れるという事。そして首から下げる事は、結婚指輪を嵌めるのと同じ意味があるのだ。

「Miko -donoがお前達の親愛の首飾りを下げているのを見た時は妾も驚いたが、同時に嬉しくもあったのじゃぞ」

　Donaneris Queenからしてみれば、GizaniaとMyuzeがVandalieuにプロポーズした事も、それが受け入れられている事も、喜びこそすれ困る事等何も無い。

　Humanの国ならQueenの、姫と呼ばれない娘であっても勝手に婚姻を決めれば大問題だろう。しかし ZanalpadnaのQueenはbloodlineだけで決まるものでは無い。実際、Donaneris Queenの先代はあるEmpusaがQueenを務めていた。

　だからGizaniaに関して言えば、成人した娘が勝手に結婚を決めただけで、「喜ばしいが、親としては事前に一度introductionして欲しかった」程度の問題だ。

　Myuzeに関しては、本来なら本当に問題が無い。

　そして二人の相手がVandalieuである事は、Donaneris Queenにとっては本当に喜ばしく、同時に都合が良いものだった。

　現れたOracleのMikoと、Zanalpadnaの絆が強まるのだから。Gizaniaは自分の娘で、Myuzeも実は先代のQueenの姪の一人だ。縁を感じるには十分すぎる。

　しかし、二人が親愛の首飾りの正しい意味を説明しないままVandalieuに渡している事は大問題だ。

　Earthで例えるなら、騙して書かせた婚姻届を勝手に役所に提出してしまうようなものなのだから。

「何と言うか……Shoujoでは無く少年だと気がつかなかったのか？」

「申し訳ない、母上。全く気がつかなかった」

「面目次第も無いでござる」

　Vandalieuが聞いたらshockを受けるだろうが、GizaniaとMyuzeは彼の正しい性別に全く気がついていなかった。

　まだ九ageのVandalieuは声変わりもしておらず、服の上から性別を判別する事が難しい。それに髪型も服装も、男は全員豊かな鬣を生やすGhoul以外では、長髪に簡素な服装と性別を感じさせる特徴の無い物だ。

　そして肌は屍蠟の-samaに白く、容姿も整っている。表情が無く瞳が虚ろなのでどうしても人形染みて見えるが、その分整った作りがよく解る。

　一人称は「俺」だが、VandalieuはGizania達にとって未知の国から来た外国人だ。そう言う事もあるだろうとあまり気にしなかったのだ。

　それにGizaniaの一人称は「拙者」、Myuzeは「某」である。他人の事は言えない。

　しかし GizaniaはVandalieuに助けられてからZanalpadnaに帰還するまでの数日一緒に行動していたし、Borkusが坊主、Zadirisが坊やと彼を呼ぶところを何度も見ている筈なのだが……。

　これはうっかりしていたとしか言えない、やはり彼女は思い込みが激しいようだ。

　Myuzeの場合はVandalieuのappearanceと、Gizaniaが親愛の首飾りを贈っていた事が勘違いの理由だ。Vandalieuが少年なら、Gizaniaから何か一言くらいそれらしい話や、仕草があるだろう。それが無いのだから、Basdia同-samaに同性の友人だと、考えるまでも無く思ったようだ。

「まあ、私達もVanが男だと言わなかったからな」

「勘違いをして、『Miko』ではなく『Shrine Maiden』と呼んでいたとは思わなかったのじゃよ。すまぬ」

　Gizaniaの親友とその母親で、Vandalieuを良く知る者代表としてBasdiaとZadirisがこの場に同席していた。

　相談を受ける立場で。

「ええっと、無かった事にしてもらうと言うのは、無理なのかしら？　Gizania -chanとMyuzeと皆で謝れば分かってもらえるのではなくて？」

「難しいでしょう。親愛の首飾りを下げて町を歩かせてしまいましたからな。今はまだ皆もMiko -donoの性別を勘違いしているようですが」

　Kurnelia姫の発言に、バコタが渋面で首を横に振る。

　親愛の首飾りは、抜け殻の主をよく知るArachneやEmpusaなら誰が贈った物なのか見分ける事が出来る。だからこそ親愛の首飾りと呼ばれ、親友や結婚の証しに使われるのだ。

　Gizaniaは姫とは呼ばれないが、Queenの娘である事を否定される立場では無い。そのため、知己の同族やEmpusaは多い。Myuzeも役職上顔が広い。

　そしてVandalieu達は既に町では有Adeptだ。既に彼がしていた首飾りの贈り主が誰なのか、Zanalpadnaでは知れ渡っているだろう。

「……坊やが知ったら、衝撃のあまり奇行に走りかねんな。大きく『男』と書いたマントをHaoriるとか。

　だが、あまり深刻に考えなくても大丈夫じゃ。それぐらいでは坊やは気を悪くもしないじゃろう」

　Zadirisが確信を込めて言う。この一件で恥をかかされたと怒るVandalieuを、彼女は想像する事も出来ない。……性別を間違えられた事には落ち込むだろうが、それは自分達で慰めれば良いだけだ。

「race的な文化の違いで間違いが起こる事は、前にも経験しているから大丈夫だろう。その事に関しては、詳しくは言えないが」

　Basdiaも、約一年前Sauron領のScylla Autonomous TerritoryでVandalieuが間違えて、ScyllaのPrivelにプロポーズを受け入れる事に相当する行為をしてしまった事を思い出してそう言う。流石に詳細は言わなかったが。

「そうか、そう言って貰えると実にありがたい」

　Donaneris Queenはそう息を吐くと、二人が謝罪する際にもfollowしてくれるようZadirisとBasdiaに頼もうとした。

　これで末娘の結婚話が無くなるのは残念だが、問題も解決だ。Miko -donoには機会を見て、他の娘を合わせてみよう。

「母上、待ってほしい。拙者は、やはりMiko -donoについて行きたい」

　しかし、何とGizaniaが異を唱えた。

・Name: Eleonora

・Rank: １０

・Race: Vampire Count　(Abyssal Vampire Count)

・Level: １

・Job: Magic Swordsman

・Job Level: ５８

・Job History: Slave、Servant、Apprentice Mage、Apprentice Warrior、Mage、Demon Eye User、Subordinate Warrior、Vassal War Princess、Time-Attribute Mage

・Age: １２age(Vampire化当時のage　２０age　合計３２age)

・Passive skills

Dark Vision

Self-enhancement: Subordination：８Ｌｖ(ＵＰ！)

Mysterious Strength：７Ｌｖ(ＵＰ！)

Rapid Regeneration：５Ｌｖ(ＵＰ！)

Abnormal Condition Resistance：７Ｌｖ(ＵＰ！)

Intuition：５Ｌｖ(ＵＰ！)

Mental Corruption：３Ｌｖ

Automatic Mana Recovery：７Ｌｖ(ＵＰ！)

Detect Presence：５Ｌｖ(ＵＰ！)

Sunlight Resistance：４Ｌｖ

Allure：２Ｌｖ(ＵＰ！)

Mana Enlargement：１Ｌｖ(ＵＰ！)

・Active skills

Bloodwork：１Ｌｖ(Bloodsucking awakened into！)

Mining：１Ｌｖ

Time-Attribute Magic：７Ｌｖ(ＵＰ！)

Life-Attribute Magic：５Ｌｖ

No-Attribute Magic：３Ｌｖ(ＵＰ！)

Mana Control：４Ｌｖ(ＵＰ！)

Sword Technique：８Ｌｖ(ＵＰ！)

Unarmed Fighting Technique：４Ｌｖ(ＵＰ！)

Silent Steps：４Ｌｖ

Steal：１Ｌｖ

Housework：３Ｌｖ

Shield Technique：４Ｌｖ(ＵＰ！)

Armor Technique：５Ｌｖ(ＵＰ！)

-Surpass Limits-：５Ｌｖ(ＵＰ！)

Chant Revocation：３Ｌｖ(ＵＰ！)

Magic Fighting Technique：３Ｌｖ(ＮＥＷ！)

・Unique skill

Charming Magic Eyes：７Ｌｖ

・Skill explanation:：Magic Fighting Technique

　magicをWeapon Equipmentや自身のBodyに宿らせてActivateさせたり、Manaで直接body part Abilityをincreaseさせるskill。炎や雷をWeapon Equipmentに纏わせAttack Powerをincreaseさせる付与magicやNo-Attribute Magicの【Physical Ability Enhancement】とは異なり、より応用力のある効果を発揮する。

　ただWeapon Equipmentに宿らせる場合はmagic itemでない限り消耗が激しく、更にWeapon Equipmentの材質や込められたmagicによってはskillが使えない場合がある。　親魔性が低いAdamantite製のWeapon Equipmentではあまり効果を発揮できず、逆にMythrilならより効果的に成る等、Bodyに宿らせたり直接body part Abilityを上げる場合も、対策を講じない限り大きな負荷がかかる。その負荷の大きさは【-Surpass Limits-】skillよりも大きく、対策を講じずに使えばFire-Attribute Magicのimpactで重度の火傷を負ったり、Water-Attribute Magicのせいで凍傷になったりする。

　それらの問題があるため、稼げないadventurerには人気の無いskillである。

・Monster explanation:：High Goblin

　legendによると、Demon Kingが健在だった頃、すぐに増え多彩なRank upを遂げるが、愚かでcowardで何よりweak個体が多すぎるGoblinに邪悪なGodsは手を焼いていたらしい。

　Goblin Kingが誕生すれば弱卒Goblinも勇猛なWarriorに成るが、大半がKingに成る前に死んでしまう。

　そこでGoblinを統率するためにGoblinをEnhanced (1)して作りだされたのが、上位種であるHigh Goblinである。

　尖った耳と鼻に暗緑色の肌とGoblinと同じ特徴を持つが、素のGoblinが大人の胸より低い小柄な個体が多い事に対して、High GoblinはRank upを経ていなくても中背の大人と同じ程度の体格をしている。

　また、容姿そのものも肌の色を無視すればHumanにやや近い。

　素のRankは４で、細身のappearance通り力よりも素早さや器用さに優れている。だが最も恐ろしい特徴はその頭脳だ。

　下位raceのGoblinがMageであっても成人より数年前のchildの域を出ない知能しか持たないのに対して、High GoblinはHumanと同じ程度に賢く、狡猾である。

　そして下位race同-samaに多彩なRank upを遂げる可能性を持つmonstersである。

　唯一の救いは上位raceであるためか生殖Abilityが低く、数がGoblinに比べて圧倒的に少ない事だ。寿命は約五十年。一度に産まれるchildは、一人から二人。産まれたchildは三年程で大人に成るようだ。

　Goblinとも交配が可能だが、その場合childはほぼGoblinとして生まれてくる。

　HumanやVida's New Racesとの交配の場合は、childがHigh GoblinかGoblinかは半々の確率である。

　一度に三匹から五匹ほどの仔を産み、僅か数か月で大人に成るGoblinよりもBreeding力で劣るが……上位種であるHigh GoblinはGoblinを無条件で服従させる為、油断してはならない。Adventurer’s Guildでは災害指定種に認定されている。

　ただ、High GoblinをGoblinと誤認して返り討ちに遭うadventurerやKnightが後を絶たない。

　因みに、Goblin同-sama肉は臭みが強く食べられたものでは無い。