『Evil god of Carapaces and Compound Eyes』Zanalpadnaを奉じる、ArachneとEmpusaの都市国家を治めるDonaneris Queenの口から発せられた、身に覚えのない呼び方にVandalieuは目を瞬かせた。
「偉大なる試練に挑むMiko、ですか?」
「うむ、詳しくは客人が揃ってから――」
「ダーリンっ! まだ傷が治りきっていないのに起きちゃダメじゃない!」
思わず聞き返すVandalieuの横を、Kurnelia姫が風のような速さで駆け抜けて、Noble Orcに駆け寄る。
「く、Kurnelia、余は大丈夫だ。問題無い、もう起きられるよ」
Noble Orcは、やや声が低いが穏やかな好青年と言った印象の口調で話しだした。やはり彼がKurnelia姫の婚約者にして、弟に帝位を奪われたBudarion皇子のようだ。
「嘘よっ! 声が苦しそうだわ……顔色も悪いし……」
そうなのかと、VandalieuはBudarion皇子を見上げる。Noble Orcらしく背が三meter前後あるBudarion皇子の顔色は……maybe、悪いのだろう。
包帯から若干だがbloodの匂いがするような気がするし。
「ぶふぅ。姫、-kunには嘘はつけないな……」
(あ、少しOrcっぽい)
maybe、「ふぅ」とため息をついたのだろう。Humanの言葉を話せるとは言え、流石に鼻の構造が違うため完全には上手く行かないようだ。
Budarion皇子は隻眼で優しげな光を湛えて、Kurnelia姫のpinkブロンドを撫でる。
「でも、これから行われる話し合いはこの地に生きる全てのraceの未来を分ける、重要なものだとお義母上から言われてね。
なら、余が同席しない訳にはいかない。全ては、余の至らなさが招いた事なのだから」
「ダーリン、そんな事無い! 全てはBugitasと奴に力を貸す謎の神のせいだわ! それに、ダーリンは誰よりもBugitasを止めるために戦ったじゃない!」
「いや、全ては弟の愚かさを見抜けなかった余の甘さが招いた事。そのせいで我が家臣達やEmpireの民ばかりでは無く、このZanalpadnaを含めた幾つもの国を争いに巻き込んでしまった」
「ダーリン……」
「Kurnelia……Budarion -dono……そう言う事は二人きりの時にしてくれぬか?」
Donaneris Queenが口を挟むと、二人ははっとした-sama子で我に返った。そしてEmotionalに疲れた雰囲気を漂わせるArachneやEmpusa達、そしてVandalieuに「申し訳ない!」と謝罪した。
「Kasimを連れて来なくて良かった」
「う~む、穏やかで紳士的なNoble Orc、か……」
「実は中にHumanが入っていると言われたら、信じてしまいそうだな」
「いや、我には分かるぞ。あの皇子、かなりの腕だ。五体満足なら、我と互角かそれ以上かもしれん」
『確かにな、ちょっとした佇まいや、あの優男……優男っぽい顔の割に放っている存在感の大きさは只者じゃねぇ。恐らく、Rank10以上だな』
自力で飛んで来るか、Arachne達に運んでもらったZadiris達が続々とQueenの間に到着し、Budarion皇子とKurnelia姫の仲睦まじい-sama子を見てそれぞれ感想を口にする。
やはりBugoganの印象が強いのか、ZadirisやBasdiaにはBudarion皇子が同じNoble Orcだと信じ難いようだ。
「Budarion皇子は先帝のフゴフ-samaにはまだ及ばないが、Rank10のNoble OrcハイKingに至っている。拙者など足元にも及ばない【Sword Technique】の達人だ」
そしてVigaroやBorkusが感心したのが誇らしいのか、義兄になる男(雄?)について説明するGizania。
「姫の連行を申し付けられておきながら、申し訳ござりませぬ!」
そしてMyuzeが慌てて膝を突く。因みに、Mage長のバコタは何時の間にかQueenの傍に控えていた。流石Mage長、素早い。
「良い。それよりもMyuze、お前もこのまま同席するのじゃ」
しかし、Donaneris QueenにMyuzeを叱責するつもりはないらしい。だが、続いて下された指示はMyuzeにとって予想外の物だった。
「某が、でございますか?」
Myuzeは百age未満の若いEmpusaの中では高い実力を持つKunoichiだが、高い地位に在る訳では無い。Zanalpadnaを守る城壁の東西南北に在る門の内一つの警備責任者だが、それだけだ。
職業柄Zanalpadnaと他の国を行き来する各国の使節団や、交易を行う武装商隊には顔がきくが、重要人物と言う程では無い。
それに、特別見識が深い訳でも無い。客人であるShrine Maiden達の相手ならGizaniaがいるし、この場に残っても何か役に立てるとは思えないのだが。
「良いから、この場に残るのじゃ。Gizania、certainlyお前もじゃ」
「はっ!」
しかし、重ねて命じられて異を唱える訳にはいかない。ご下命に逆らう事は、Myuzeが憧れるninja道に反するのだ。
しかし Queenの間に控えるMyuzeにとってお歴々であるEmpusa達の端に控えようとすると、「よいからその場で控えるのじゃ!」と言われてしまう。
「か、畏まりました!」
慌ててVandalieuの傍に戻って控えるMyuze。EleonoraやZadiris、そして広間に居るArachneやEmpusa達まで何事かと彼女とQueenへ交互に視線を向けるが、Queenから説明は無かった。
Vandalieuも、Myuzeが控えさせられた位置からして自分と何か関係があるらしい事は察したが、それが何かわからず困惑していた。表情が無い為、泰然としているように見えるが。
「では……バコタを含め一部の者達にしか伝えていなかったが、じつは邪Evil God (P) Zanalpadna -samaからOracleが在った」
しかも、話がMyuzeとは関係の無い話題に飛んだ。だがその話の重大さから皆の関心が彼女からOracleへ移る。
「Oracleの内容は、『北に娘達を遣わせ。そこで試練を求めるMikoに娘は出会うだろう』という意味であろうと、妾は解釈した。
そこで妾はOracleの内容を打ち明けた者達と相談し、KurneliaとGizaniaを含めた妾の娘達を含めた使節団を北のMarshlandsに向けて派遣したのじゃ」
「そうだったのですか!? 確かに、それまで交渉が無かったLizardmanに援軍を求める事に、バコタMage長が反対しなかったのは、おかしいとは思いましたけれど……」
「なるほど。拙者がダメでoriginallyと、護衛の一人として同行したいと願い出た時すぐに許可されたのはそのような訳があったのですね」
Kurnelia姫やGizaniaにもOracleの事は打ち明けていなかったらしい。Budarion皇子を含めたQueenの間に居る殆どの者が驚いていた。
「Donaneris Queenっ、何故Oracleについて教えて頂けなかったのですか!?」
使節団の一人だったらしい大柄なEmpusaが思わずと言った-sama子で質問する。
「教えると先入観が入るからじゃ。それに、妾の解釈が間違っている可能性もある。娘と言うのが『妾の娘』では無くGaol、お前を含めた『若い女子』の方の意味である事も十分考えられるのじゃ。Mikoについても、raceや姿形は何もわかっていなかったからの。Lizardmanである可能性もあった……っと、言うか、妾もバコタもMikoとはLizardmanのHeroかChampionじゃと想定していたのじゃ。
お前達の忠節を疑った訳ではないが、許せ」
そしてDonaneris Queenはすっと目を閉じて頭を下げる。するとGaolと呼ばれたEmpusa以外にも、Oracleを知らされなかった事について面白く無さそうな顔をしていた者が慌ててQueenを止め始める。
「頭をお上げください! Queenのお考えはよく分りましたから!」
その-sama子を瞬きしながら眺めているVandalieuの意識に、Kurnelia姫の声が不意に響いた。
『妾達ArachneやEmpusa、中でも特に戦いを生業にする者達はLoyalty心を疑われる事を不Honoraryに感じるのです。Gizania -chanもそうだから、気を付けてあげてね』
気が付くと細い透明な糸がVandalieuの首筋にくっついていた。態々【糸Telepathy】で教えてくれたらしい。
尤も、そのGizaniaはQueenに隠し事をされた事に不満は感じていない-sama子だが。これはDonanerisがただの上位者では無く、実の母親である事が関係しているのだろう。
「ところで、Oracleがあったのは分かりましたが……それで俺達は何を求められているのでしょうか?」
Empusa達が落ち着いたのを見計らって、Vandalieuはそう尋ねた。
「俺達の当初の目的はNoble Orc Empireへの対処……和平交渉から戦争を含めての対処です。
Gizaniaから事情を聞いた後は、このZanalpadnaを含めたVida's FactionのGodsを奉じる各raceと友好的な関係を構築し、Demon King Army Remnantsっぽい神を奉じるBugitasとその配下を倒す事に代わりました」
Bugitasを倒すのは何もArachne達に同情したとか、GizaniaのBody美が素晴らしいからとか、それだけの理由では無い。
簒奪者Bugitasと、彼が奉じる神Ravovifardは、Gizaniaを襲っていたNoble Orcが口にした言葉から、VidaとVidaをworshiper達に対して良いemotionsを持っていない事がconjectureできる。
そんな奴がこのMarshlandsから南の地を支配して力を蓄えたら、将来何をされるか分からないからだ。
Noble Orcは産まれてから成人するまで十年程かかるため、短期間ではそれほど増えない。しかし、Empireで労働若しくはSlave階Classに置かれているOrcやKobold、Goblinは短期間で恐ろしく増殖する。
そうして増えた数を頼みにMarshlandsに迫られたら、Talosheimが勝てないとは思わないが犠牲者は出るだろう。
攻めて来なくても、Vidaが眠っている聖域に何かされたら『Vida's Miko』として困る。
だから対処できる内に対処するのだ。それに、今動けば将来友好国が幾つも出来る。GeneralのChezareも、『陛下! ここは陛下自ら戦争に参戦するしかありません!』と力説していた。
後、Experience Pointとお肉的にも美味しいし。
「しかし、試練に関しては全く心当たりが無いのです」
Noble Orc Empireとの戦いは、試練では無い気がしていた。Rank10のBudarion皇子を退けたBugitasは、推定Rank11以上。確かに強敵ではあるだろうが、去年Vandalieuが倒した推定Rank13以上、力量がMythに登場できる域に達していたPure-breed Vampire Gubamonを上回る敵とも思えない。
maybe、Vandalieuが相手をすれば勝てるだろう。
certainly Bugitas以外にも高RankのNoble Orc等の配下が複数存在するだろうが、それを含めてもBorkusやVigaro、ZadirisやBasdia、Eleonora、Bone Man達がいればまず負けない。
それに戦力が足りなければTalosheimから呼ぶ事も出来る。
だから試練と呼ぶにはweak気がする。
「だから何か心当たりがあるのなら聞いておきたいのですが」
もし、その試練が「Zanalpadnaに正しい武士とNinjaについての知識を伝える」事だったら、さっさと降参するので。
しかし、Donaneris Queenにそう尋ねると嬉しそうな、困ったような顔をされた。
「いや……妾はてっきりMikoは試練を受けるのが主目的だから、Bugitasと奴が奉じるRavovifardからEmpireを取り戻すために、どうにか参戦して貰おうと頼み込むつもりだったのじゃが」
「……当てが、いい意味で外れましたな、Queen」
「あー……どうすりゃいいんだ、この空気?」
バコタとKurtも、微妙な顔つきである。
「では、試練と言うのはZanalpadnaの勘違いではないのか?」
「Basdia、神が勘違いと言うのは、あり得ないのではないのか?」
「いや、maybeあり得る話だと思うぞ。以前、別の神だが一度見た事があるのだが、勘違いぐらい普通にしそうだった」
「神を見た事があるのか!?」
「そんなKami-samaがいるの!?」
「そんなBAKANAっ! いや、しかし、Oracleで予言された人物の仲間なら、もしかしたら……?」
Basdiaの『Kami-samaの勘違い説』にGizaniaが異を唱えるが、神と会った事があるという彼女の話にGizaniaだけでは無くKurnelia姫や、バコタまでが驚きを露わにする。
因みに、Basdiaが見た事がある神とは『Evil Dragon God of Five Sins』のFidirgである。出現して早々にVandalieuに土下座して命乞いをした彼なら、確かに勘違いぐらいしそうだ。
「いや、勘違いとは限らないじゃろう。Zanalpadnaからみて、Noble Orc Empireとの戦いは試練と評するに十分じゃったという事かもしれん」
「神は万能じゃ無いものね。それに、Vandalieu -samaは色々深いから」
ZadirisとEleonoraの言葉になるほどと、Vandalieuは納得しかけた。
「そうか……まあ、そうじゃろう。妾がOracleの解釈を間違えたのかもしれん。心当たりと言えば、『Trial of Zakkart』ぐらいじゃが、それを求めている訳では無さそうじゃし」
しかし Donaneris Queenが漏らした、legend的なDungeonの名にVandalieuは思わず聞き返した。
「『Trial of Zakkart』、ですか? あのDungeonは大体一月ごとに出現する場所が変わるのでは?」
「ん? 『Trial of Zakkart』は確かに中に挑戦者がいなければ一月程でいずこかへ消えてしまうが、一年に一度必ずGoddessがsleeps聖域に出現するはずじゃ」
どうやら、彷徨うはずの謎のDungeonは、Continent南部の聖域にだけは定期的に出現するらしい。
「『Trial of Zakkart』……」
それはVandalieuにとって、残った母Darciaの仇で、Orbaum Elective Kingdomで今頃Heroとしての立場を確かなものにしているだろう、SClass adventurer Heinz率いる『Five-colored blades』達が挑戦するも、party memberを一人喪い撤退した超高難易度のDungeonだ。
別にそのDungeonを攻略する事自体に関心は無い。無いが……もしDungeonの中にHeinz達の仲間の死体がまだ残っていたら? 頭蓋boneだけでも構わないからそれを手に入れ、修復後適当な魂を入れてUndeadにしHeinzの前で連れ歩いて見せれば、奴はどんな顔をするだろうか?
それはDarciaを捕まえ、fanaticにはした金と引き換えに差し出した癖に、善人として社会的立場を構築して手出しがしにくいあの三人に対して、少しは意趣返しに成るのではないだろうか?
奴らが激高して襲い掛かって来たら、最高だ。正当防衛で殺す事が出来る。
certainly Vandalieuもadventurer登録をしてしっかりとした身分を手に入れ、そのUndeadもTamed Monsterとして登録して、何よりもHeinz達を返り討ちに出来る力を手に入れてからになるが。
「……『Trial of Zakkart』が出現するのは、何時ですか?」
「何時とまでは分らん。年に一回必ず出現するのは確かじゃが、一月から十二月までの何時出現するかその度に変わるのじゃ。
だが、今年はまだ出現していないはずじゃ。出現すれば、Dark Elf nationから使いが各国に遣わされる事に成っておる。……今の状況ではそれどころでは無いかもしれんが」
「なるほど。とりあえず、Bugitasを倒したら挑戦してみましょう」
流石に何時実行できるか、必須である死体が残っているか分からない嫌がらせを、戦争より優先する訳にはいかない。やはり試練は後回しだ。
しかし『Trial of Zakkart』に挑戦すると宣言したVandalieuを、Donaneris QueenやKurnelia、BudarionまでChampionを見るような眼差しを向ける。
まあ、当時でもAClass adventurerだったHeinz達が敗退したDungeonなのだから、挑戦するだけでも尊敬に値するのかもしれない。
「な、何と。Shrine Maiden -donoはZakkartに挑戦するのでござるか」
「拙者は、とんでもない大人物に助けられたのかもしれない。……Queenっ! いや、母上! もしBugitas達との戦いが終わったら、某はShrine Maiden -donoに刀とこの命を捧げたい! どうかお許しを!」
Myuzeは戦き、Gizaniaは頬を紅潮させてとんでもない事を言いだす。
「Gizania、転職なら受け付けますが命は大事にしてください」
『うおっしゃ~! 行こうぜっ、坊主っ! 誰も攻略してねぇDungeon、燃えて来るぜ!』
「Borkus、落ち着いて。行くのはBugitasを倒してからです」
「では、援軍を出す条件を決めておきたい!」
騒ぎ出す一同を元砦のCommanderらしい大声で、Kurtは制した。
自分に注目が集まるのを確認して、事前にChezare達と会議の結果決めて置いた参戦する条件をそのまま提示していく。
「まず『Eclipse King』Vandalieu旗下の者は何者でもallyとして扱い、危害を加えない事。
次に、戦いの結果我が軍が鹵獲した物は、それが死体であっても当方の所有権を認める事。
以上を認めて貰いたい」
二つの条件を身構えて聞いていたDonaneris Queenとバコタは、目を瞬かせた後首を傾げた。
「……いや、それは普通なのではないかの?」
援軍をallyとして扱い、危害を加えないのは常識だ。次の条件、死体を含め鹵獲した物の所有権を認めるという条件はAmid EmpireやOrbaum Elective Kingdomでは一般的ではないが、Continent南部では一般的であるらしい。
「Bugitas配下のNoble OrcやOrcを倒した場合、死体から素材や食料を剥ぎ取る事を言っているのなら、構わない。それは勝者の権利だ。certainly、Bugitas本人でも」
Budarion皇子本人がそう保証した。
「我々EmpireのNoble OrcやOrcは同族の肉を食さないが、死者の素材を使用して物品を作り葬儀とし、罪人の死体を民の食料として罰とする。Bugitasはbloodを分けた弟だが、気にする必要はない。
ただ、Empireにとって重大な品を鹵獲した場合は交渉に応じて貰えると助かるのだが」
Budarion皇子を含め、Queenの間に居る誰も嫌悪感や反感を持った-sama子の者は誰も居ないので、本当にそれが常識なのだろう。
MarshlandsのLizardmanも死んだ同族の死体から素材を取ってleather Armorに加工する等していたので、monstersにとって故人から武具等を作って使用する事は供養に当たるのだろう。
「certainly交渉には応じます。でも重要なのは最初の条件です。この条件を飲んでくれたら、Budarion皇子を含めた重傷者を元の五体揃った健康体に戻してみせましょう」
Vandalieuがそう言うと、『Trial of Zakkart』に挑戦すると宣言した時とは違うざわめきがQueenの間に広まった。
「治るのか、余の眼と腕が! 隻眼隻腕でもBugitasに一矢報いんと覚悟を固めていたが、もし元通り治るならば、必ずや余が奴の暴挙を止めて見せよう!」
「皇子、お待ちください。Shrine Maiden -dono、Budarion皇子の傷はBugitasが所持しているDeath Scytheかそれともmagicの力か、Ravovifard 's Divine Protectionかは分かりませんが、私を含めた何人ものMageが総出で施術しても傷口を塞ぐどころかbloodを止めるのが精一杯なのです。
本当に治せるのですか?」
バコタのような優秀なMageが居ながらBudarion皇子の傷が塞がっていないのには、そんな理由があったらしい。
Vandalieu達は皇子が重症を負って十全に戦えないconditionにある事はGizaniaから事前に聞いていた。しかし何日も経っているはずなのに、欠損した部位はまだしも微かだがbloodの匂いがするのは何故だろうと疑問には思っていたのだが。
恐らく、治癒magicやpotionの効果を阻害するCurseか特殊な毒、若しくはUnique skillだろう。
「そんな事が出来るのか、Shrine Maiden -dono? 拙者の時は斬られた脚が在ったが、Budarion皇子の腕と目は無いぞ」
反射的に「何でも飲みます!」と叫びかけたKurnelia姫をMyuzeと協力して抑え込んだGizaniaが尋ねる。
「出来ると思います。ただ、そのためにはまず条件を飲んで貰わないといけません。皆-sanが俺のUndeadの仲間の存在を認めるのなら、今すぐにでも治療に必要な物を獲りに行きましょう」
Vandalieuの言葉に合わせて、Bone ManとBorkusが兜を脱ぎ、Princess LeviaやOrbia達Ghostが姿を現した。
Noble Orc Mageのブブーリンは、仮設砦の建設をCommandingしながら兵が怠けてはいないか目を光らせていた。
「ブクククッ」
だがその勤務態度は油断なくとは評せない。彼は、この戦争は既にBugitas皇子……Bugitas新Emperorの勝利だと確信していたからだ。
既にHigh GoblinとHigh Koboldの国ではBugitas新EmperorにLoyaltyを誓った者達が起こしたCoup d'étatが上手く行き、彼等が牛耳っている。
Majin nationとKijin nationは強敵だが、Ravovifardの御業により今しばらく動きが取れないだろう。
この隙に他の国を蹂躙し、負け犬のBudarionを匿うZanalpadnaを攻略する。
「そしてこの地を平定すれば、我々の天下だ……ブクク」
「ブブーリン-dono、独り言にしては声が大きいですぞ」
ノーブルと名につくraceとしては下卑ている含み笑いを漏らすブブーリンに、同格のCommanderであるNoble Orc Generalが話しかけてきた。
この仮設砦はEmpireとZanalpadnaの間に位置しており、Zanalpadna攻略のための拠点である。そのため、周辺の野良monstersの襲撃を撃退できるよう、またZanalpadnaから攻撃されてもある程度持ち堪えられるように、十分な戦力が配置されていた。
ブブーリンとNoble Orc GeneralはRank8。他にNoble OrcはRank7が数人と、Rank6が十人。High Goblin、High Koboldがそれぞれ五人。兵隊兼労働者のOrcが三十匹。
そして戦力では無いが、非常食にもなるSlaveが五十匹。
「しかも人の言葉で独り言とは。Slave共に聞こえますぞ」
「certainly聞かせているのだ。つまらぬ希望など抱かぬようにな。Slave共、貴-sama等の妻や娘の命が惜しければ手を休めるなよ!」
ブブーリンはSlave達、Empireの民であったHumanやBeastmenの男達に向かってそう怒鳴りつけ、手に持った杖で適当に選んだ一人の背を殴りつけた。
certainly本気では無い。寧ろ、注意して手加減した一撃だ。
「うぐぁっ!」
しかし、Mageであっても常人とは比べ物に成らないNoble Orcの力で振るった杖だ。殴られた男は受けた衝撃にscreechを上げて倒れ込んでしまった。
「う゛ぅっ……」
そして呻きながらブブーリンを怒りが滲んだ目で見上げる。Slaveには似つかわしくない目つきだが、それも無理も無い。彼は半年前までSlaveではなく民だった。
Noble Orc EmpireではZanalpadna同-samaに民を保護する共生関係が維持されていた。しかし Bugitasはそれを踏み躙り、真の弱肉強食の社会へと変えようとしたのだ。
その一環が、民のSlave化である。ただBoundary Mountain Range外の世間で出回っているSlaveの首輪のような、便利なmagic itemは無いのでSlave達を従わせるために、familyを人質に取っている。
働きが悪いとEmpireに戻った時に、familyは死ぬまで犯されるか食われるか、どちらとしても凄惨な末路を遂げる。
「くっ……」
殴られた男も、結局は何も言い返せないまま立ち上がって作業に戻る事しか出来ない。
首輪どころか手枷も嵌められていないが。全員で暴動を起こしても、ブブーリンどころか彼の配下のNoble Orcの内一人にさえ勝てない事が分かっているからだ。
そして自分達が反抗すれば、幼子と年寄りは食料に、子が産める女はNoble Orcの妻ではなく、母体にされてしまう。
男達も、従順に従ってもこの先自分とfamilyが残酷な仕打ちを受けない保証はない事は分かっていた。分かっていたが、従う以外の選択肢が今は無かったのだ。
「見たか、あの目を! 言い返す事も出来ないとは、何と哀れな生き物なのだ。やはり弱さとは罪だな! あのような下等生物がほんの少し前まで『民』だったとは信じられん! Orcにも劣る連中だ!」
ゲラゲラと耳障りな笑い声を、それすらSlave達を嬲るために故意に人の言葉で上げるブブーリン。だが侮蔑を受けてもSlave達は言い返す事も出来ない。
そんな悔しげな-sama子のSlave達を、Orc達の内半数ほどが同情的な視線を向けていた。
「貴-donoも奴らをからかってやったらどうだ?」
そう話しを振られたNoble Orc Generalは穏やかな微笑を浮かべて首を横に振った。
「ブフフ、遠慮しておきましょう。私は嬲るなら女を、それも寝台でするほうが好みでして」
「おお、それも尤も。共にこの戦いで武功を上げ、Bugitas新Emperor陛下から位を頂き、力無き神が寄越す紛い物では無い本当の女を枯れるまで抱きましょうぞ!
……ん? どうした?」
その時見張りのOrcが、monstersが近づいてくるとブブーリンに向かって叫んで知らせた。
Noble OrcはArachneのようなVida's New Racesと違って、純粋なmonstersである。そのため、ブブーリンを含めた高位のNoble Orcが詰めているこの仮設砦がmonstersに襲撃される事はあまりない。
しかし極度に腹を空かせているか、相手の力量を測れない知能の低いmonsters、そしてSlave達の臭いを嗅ぎつけた貪欲なmonstersは襲い掛かって来る事がある。
今回もその類だろう思ったブブーリンだが、「フゴッフギビー!」と言う見張りの報告に首を傾げる。
(Giant raceのZombieだと?)
近づいてくるmonstersについて報告を受けたブブーリンは、胸中で首を傾げた。Devil Nestsで死体からUndeadが発生するのは珍しい事では無い。しかし都市国家から単独では出ないだろうGiant raceが、何故外で死体に成っているのか。
Giant raceのadventurerもSoldierも居ないはずなのに。
「ブグブフフ」
Noble Orc Generalが、ブブーリンの疑問を無視して、弓と矢を配下のNoble Orcに持ってこさせる。
もう少しでlevelが100に到達しRank upが叶うかもしれないらしく、得られるExperience Pointは雀の涙でも欲しいらしい。
弓と矢を配下から受け取ったNoble Orc Generalは、顔の半分が白bone化していて剣を腕にぶら下げ「あ゛~、あ゛~」と呻き声を上げながら近づいてくるZombieに狙いをつけ、矢を放った。
「あ゛~」
だが、偶然よろめいたためかZombieから矢は外れた。
「ッ!? ……ブーゴ!」
まさか外れるとは思わなかったNoble Orc Generalが、明らかに苛立った-sama子で二本目の矢を弓に番える。
今度こそ命中するだろう、そうブブーリンを含めたNoble Orc達は確信した。
しかし放たれた二本目の矢を、何とGiant race Zombieは引きずっていた剣を目にも止まらぬ速さで振るい、打ち払った。
『あ゛~……やっぱり普通のZombieの真似は苦手だぜ』
「まあ、ここまで近づけたのだから良いかと」
『そんじゃ、後は走るか!』
そしてGiant race ZombieのBorkusは、驚愕するブブーリンやGeneralに向かって猛然と走り出した。