Kurnelia姫が落ち着くまで、十分程かかった。
「御客人の前で取り乱してしまい、失礼いたしました。妾がZanalpadnaのQueen Donanerisの第九子、First PrincessのKurneliaです。以後、良しなに……」
Nobleの令嬢のEtiquetteと細かい点は異なるが、優雅な仕草で八本の脚を曲げて一礼するKurnelia姫。その仕草には、確かに気品があった。
「姫-sama、取り繕うのは無理かと」
「……やっぱり~?」
しかし Myuzeにそう言われると、情けない声を出してヘナヘナと座り込んでしまった。
確かに、自分達を逃がすためにNoble Orc達の囮になった後は生死不明だった実のImoutoが帰って来たとはいえ、そのImoutoにlower body込みで百キロ越えの体重でFlying bodyアタックをかまし、人が巻き込まれたら重傷を負うだろう激しい抱擁を目の前でされたのだ。
今更取り繕おうとされても、無理がある。
流石にVandalieu以下誰も口に出しては言わなかったが。
「姫-sama……戦時で延期になったとはいえ、本来ならもうすぐ輿入れなのですから、もっと落ち着いていただけなければ」
「だって、母-samaがLizardmanとの交渉が妨害された以上、交渉を続けるかZanalpadna -samaのAdventを願うしかないって……それで今母-samaを失う訳にはいかないとダーリンと説得していたら、Gizania -chanが帰って来たって聞いて、つい……でも無事で良かったわっ! 腕も足もcompound eyesも欠けてないものね!」
「姫-samaっ、止めてくださいっ!」
ペタペタとGizaniaにあちこち触れて、彼女がinjureをしていないか確かめるKurnelia姫。
Gizaniaは恥ずかしそうに、しかし結局はされるがままになっていた。
「どうやら、Kurnelia姫とGizaniaの仲は良いようだな」
「良すぎる気もするけど……ここの常識と私の知っている常識は違う事は分かったつもりでいたけどね」
sisters仲が良くて何よりだとnod Basdiaと、眉間を抑えて呻くように言うEleonora。
EleonoraはHuman社会の常識的な「姫」と「継承権の無いそのImouto」の関係を思い浮かべてしまい、違和感が拭えないようだ。
Human社会のそれなら客人の前でこれ程本心を露わにしないし、そもそもそんな関係のsistersの仲が良い筈が無いと誰もが考えるだろう。
大事な同盟国の次期王となるはずだったFirst皇子と結婚する姫と、産まれのせいで誰にも姫と呼ばれる事の無いそのImoutoなのだから。
「maybe、ここでは俺やEleonoraの考える外交や戦争が無かったからでしょう。最近起きたNoble Orc EmpireのCoup d'état以外で」
originally同じVidaを奉じるraceで、賢帝ブーギ以後は仲間意識と連帯感が更に高まったconditionが長く続いていたのだ。
Human社会にあるような、陰惨で複雑怪奇な外交闘争や権力争いとは無縁だったのだろう。
存在する都市国家群の支配者層が、Noble Orcのようなmonstersや、Vida's New Racesだった事も要因の一つだ。
monstersは幾ら知能が高くても、強さがSelfや他者に対する重要な評価基準になる。そして強さによる序列は常に既存の支配者のblood統に受け継がれるとは限らない。
そのためHumanのRoyal Nobilityのようなbloodlineによる権威主義は強くならなかったのだろう。certainly、親が強ければ素質を受け継いだ強い子が生まれる可能性が高くなるので、多少は尊敬されるが。
しかし、それでも「高貴な青いblood」のような発想は無い。
「それに、さっきMyuzeが『政治と祭祀』と言っていましたから、ZanalpadnaやNoble Orc Empireの王族は政治的な役割以外にも信仰を司る役割もしているのかと」
「その通りでござるが、王とはそういう者でござろう? Shrine Maiden -donoもShrine Maidenであると同時に王ではござらんか」
MyuzeはVandalieuの言葉に、当たり前のように同意した。やはりZanalpadnaを含めた都市国家群の王は、支配者であると同時に祭司長でもあるようだ。
政教分離しなくて良いのかと思わなくもないVandalieuだが、Kami-samaが実在していてBAKANA事をするとOracleなどで叱責され、あまりに酷いと判断されるとblessingsを取り上げられ王座から追われる等の措置が取られるため、問題無いのだろう。
「確かに俺も『Vida's Miko』ですね」
そしてVandalieu本人もそうだった。secondary name効果が美味しいので、「政教分離しなさい」と言われても断る選択肢しかない。
「ところで、そろそろVandalieu -samaを離してくれても良いのよ?」
「おお、これは失礼! つい妙に心地良かったので忘れていたでござる」
はっとしてVandalieuをEleonoraに渡すMyuze。受け取ったEleonoraは、流石に抱き上げる事はせずにすぐに降ろした。
(Vandalieu -samaって、誰かに持たれている時ほとんど動かないから、話してないと人形っぽく見えるのよね)
表情が乏しく存在感も希薄なVandalieuは、自分で動いていないと余計に人形染みた印象が強くなる。
そしてTalosheimの代表者が、まだ同盟も何も結んでいないZanalpadnaの民や王族に気軽に持ち運びされるのは、とても体裁が悪い。
友好的でもここはまだ国交のない他国であるのだから。
そこに、門の内側からMage姿をしたHumanの老人が現れる。
「皆-sama、姫が大変見苦しい姿をお見せしました。それにGizania -samaを助けて頂き感謝申し上げます。私はDonaneris Queenにお仕えするMage長のバコタと申します。
え~、Donaneris QueenからTalosheimからの御客人を城まで来ていただくようにと……後、Myuze -donoはバカ娘を連行してくるようにと」
「連行って、そんな~っ!」
「姫、これもご下命。キリキリ歩くでござる」
Mage長……恐らくHumanの国の宮廷Mageに当たる人物の伝言に拠り、一国の姫が情けない声を上げMyuzeに連行されていく。他国からの客人の前で。
「……そんなに気にする事無いのかしら」
「頼むから気にしてくれ。俺一人じゃどうにもならん」
今回のmemberの中では常識人枠のEleonoraがそう漏らし、間違いなく常識人のKurtが頼み込んでいた。
「普通のHumanのRoyal Nobilityと交渉するよりは、肩がこらなくて良い気がしますけど」
二人にそう言うVandalieuだった。
因みに、今回はEleonoraがVandalieuの母親だと誰も勘違いしなかったようだ。
それは平気な顔でSunlightを浴びている彼女をVampireだと気がついた者が居なかった事と、気がついた後も母子なら彼女がVandalieuを-sama付で呼ぶのはおかしいと察したからだった。
Zanalpadnaの総人口は約十万人。その内訳はArachneが約一万人、Empusaが約七千人、そして他の都市国家から婿入りしてきたNoble OrcやHigh Goblin、High Kobold、Ghoul等が約千人。残りの約八万二千人が『民』と呼称される人々だ。
そして城壁内部は、普通の都市と比べると奇怪な建造物が多かった。
大きな塔が数えきれない程立ち並んでいて、それが民家なのだという。【Samurai】や【Kunoichi】がいるのだから、Japan 家屋に似た建物が並んでいるのではないかと思っていたVandalieuは逆に驚いた。
塔の中では人よりも体が大きいArachneやEmpusa、そしてHumanやDwarf、Beastmen、Giant race、他の国から婿入りして来た異raceが共同生活を送っているそうだ。
因みにElfは殆ど居ない。代わりに、他の都市国家に多く住んでいるらしい。
『なるほど。ArachneやEmpusaは女しかいないraceだから、そうやって普段から他raceと共同生活をしてraceを維持しているのですな』
Bone Manが大通りを行きかうHumanやDwarfの姿を見つけて、そう納得する。因みに、彼は当然兜を深くかぶったままだ。
人々の中にはBudarion皇子と共に逃げ延びてきたNoble Orcの姿が幾つかあり、Gorba以下黒fangs Knight団のOrcus達も、GizaniaやMyuze、Kurnelia姫と一緒に居れば問題無い。彼等がTamerしたディアトリマ等のmonstersも、珍しそうにやや遠くから見られているが、怯えられてはいない。
だがUndeadはそうはいかないだろうと、Bone Manは鎧兜を着たHumanの振りを続けているのだ。彼と、同じくfull faceの兜を被っているBorkusがUndeadである事を知っているのは、まだGizaniaだけだ。
一度Talosheimに戻った時『Evil Dragon God of Five Sins』Fidirgや『Evil God of Slime and Tentacles』Merrebeveilと相談した結果、それはまず『Evil god of Carapaces and Compound Eyes』Zanalpadnaの祭司長でもあるQueenに、直接告白した方が良いだろうと言う結論に至ったからだ。
『maybe、Zanalpadnaは俺と違いVida -samaからのOracleを受け取る事が出来たかと』
『話を聞く限り、十万年前の戦いの直後から活動出来る程度には力が残っていたようですし』
『もしあいつがOracleを受け損ねていても、他の神が何柱もいるならどれか一柱は受け取っているはずっス』
Fidirgの話に、Merrebeveilが続けた。
『ただ、Boundary Mountain Rangeの外での出来事は……少なくとも数万年単位で知らないでしょう。Boundary Mountain Range外のArachneはVida -samaを信仰していても、Zanalpadnaを信仰していないようですから。恐らく、Mountain Range外のArachneやEmpusaを思う-samaに庇護する事が出来なかったため、故意に廃れさせたのでしょう』
『力の無い邪Evil God (P)を信仰するraceなんて、Alda側の連中にとってはいい獲物っスからね』
『Vidaだけなら――』
『-samaをつけろ』
『ひぃっ!? すみませんMerrebeveilの姉御! Vida -samaだけならまだAlda側の害を逃れやすくなると思ったのではないかと!』
『だ、だからZanalpadnaからOracleを受けているだろうQueenからお墨付きを貰えば、それ以外も納得すると思います!』
そんな寝返り組同士の力関係を知りながら相談した結果、今のpolicyとなった。困った時の神頼みである。……Earthのことわざとは意味が異なるが。
それらの事情を知らないKurnelia姫が、Bone Manを含めた一行に説明する。
「コツジン-sanのいうような事情もあるけど、他にも妾達ArachneやEmpusaが民を守るという意味もあるのよ」
十万年前のVidaとAldaの戦いでは、VidaのSubordinate GodやDemon King Armyから寝返ったEvil God (M) Evil God (P)、Evil God (M)とFusionした『War God』Zantark。そしてVida's New Races達がVidaの下戦った。しかし彼等以外にもHumanやDwarf、ElfのVida believerも加わっていたのだ。
そして戦いを生き残った者達は、Vida's New Racesと共にこのBoundary Mountain Rangeの内側に逃げ込んだ。
「その後暫くは、このZanalpadnaがある地域ではHuman達も独立した集落を構えていたそうよ。仲間同士ではあっても生態が違うから、交易はしても住まいは別にした方が良かったのね。
最初はそれで回っていたのだけど……」
そうKurnelia姫から引き継いで説明するバコタ。
「recordによると、急激にBoundary Mountain Rangeの内部にDevil Nestsが広がり強力なmonstersが跋扈する-samaになりました。恐らく、Aldaから子等を守るためにVidaが最後の力でBoundary Mountain Rangeを隆起させた折に濃いManaが充満し、それが複数のDungeonを発生させてしまったのでしょう。
繰り返されるDungeonから溢れるmonstersのrunawayにより、戦う力の無い者は生き残れない修羅のworldへとここは変貌してしまったのです」
Zanalpadnaを含めたGodsも自らを奉じる子等の為にDungeonを発生させるなどしていたが、集落から離れた場所に自然発生したDungeonは管理できずmonstersが増え、そのmonstersによってDevil Nestsが急激に広がったのだと昔の人はconjectureしたそうだ。
「……言われてみると、Shelterの筈なのにmonstersが多すぎますね」
Vandalieuもバコタの説明を聞くまで、外界から内側を遮断する壁であるMountain Rangeやその上空はin any case、内部までmonstersが跋扈するDevil Nestsだらけである事に、疑問を覚え無かった。「これが思考停止か」と呟く。
「うーむ、あまり違和感を覚えなかったのぅ」
「我らはDevil Nestsの外で暮らした事が無いからな。Borkusはどうだ?」
『寧ろ、monstersとDungeonのお蔭で集落から国にまで繁栄したからな、俺ら旧TalosheimのGiant raceは。まあ、最初の頃は大変だったらしいがよ』
「ははは、確かにDevil NestsやDungeonはmonstersを狩る事が出来る者達にとっては恵みでもありますからな」
通常の獣よりも短期間で成長するmonstersは、食料や衣類、武具の材料、更にMagic Stoneが獲れればmagic itemの材料や燃料になる。植物の生育も早く、一年中Fruitや山菜が手に入る。
更にDungeonでは、Refiningしなくてもそのまま金属製品に加工できる金属資源がMining可能だったり、Treasure Chestの中にはmagic itemやpotionが入っている事もある。
Devil NestsとDungeonに囲まれた環境とは、強者にとってはこれ以上ない恵みだろう。
実際ArachneやEmpusa、Noble Orc等は旧TalosheimのGiant race達同-samaにmonstersを狩り、Dungeonを攻略し-sama々な物資を手に入れた。
しかし、HumanやDwarf達はそうもいかなかった。
「HumanやDwarf、ElfやGiant raceやBeastmenがweakとは誰も思っていない。実際、バコタ-donoのmagicの前には拙者では相手にならないからな。しかし、HumanやDwarfは拙者達よりも非戦闘員の割合が多く、この辺りのmonstersを倒せるようになるまで時間がかかるため、どうしようもなかったらしい」
「そうね、いきなりRank4だものね」
Rank4と言えばDClass adventurerでもveteranなら一人でも倒せる程度のmonstersだ。そしてDClass adventurerは並のaptitudeと努力が有れば、大抵の者が至る事が出来る等Classだ。
しかし、実戦を経験していない若者が短期間でそこまで至れる訳は無い。
Vida's New Racesでありbody part Abilityに優れるGiant raceやBeast raceも、Rank4のmonstersと戦えるようになるには成人後数年の経験を……死傷者を何人も出しながら積まなくてはならない。
「そこで妾達やダーリンの先祖の、monstersと戦う事が出来る力を持ったraceが彼等をそれぞれ受け入れ、守る事にしたの」
「それ以降我々は民と呼ばれ、庇護者であるraceの方々を支える事で共存共栄してきたのです」
つまりArachneやNoble Orc達は貴き者の義務を守り、守られる者達は彼女達をProduction活動などで支える。そんな身分制度が自然と形作られたようだ。
このZanalpadnaでは母系社会で、各塔にArachneとEmpusaのfamilyが一組ずつおり、その下に数familyの民が生活している。
そしてArachneとEmpusaは、民の妻と夫である男達を共有するらしい。
「……ブフ? harem?」
『やべぇ、Kasimが移住すると言い出しかねねぇぞ』
「いや、言う程良いものでは無いと思うぞ、我は」
「何となく言いたい事は分かるのでござるが、Vigaro -donoの言う通りで、外の方が羨むようなものでは無いと思うでござるよ。婿入りした-dono方の仕事は、まず女達との子作り。後は民の女達と同じでござる。多少、力仕事の割合が多いくらいで」
Zanalpadnaでは、主導的な職に就くのは基本的にArachneとEmpusaの仕事だ。HumanやDwarfがmonstersを狩るWarriorや、国を守るSoldierになろうとしても、最低でも中堅adventurer相当にならないと使い物にならないためだ。
それに信仰でも神であるZanalpadna’s Divine Blessingを得やすいArachneやEmpusa達が優先される。
そのため男達はHouseworkやProduction relatedの仕事に従事する事が求められる。
「婿入り先の女の数が多い場合は、外で働けない事もある。産まれたchild達の養育で大変だからな」
いわゆる、専業主夫だ。
「それはまた……普通だったら喜ばれそうだが、あのKasimやZenoだったら嫌がりそうな環境だな」
働かずに女達に囲われて子育てをしていればよい。ある意味理想的な生き方だ。しかし、adventurerとしてまだまだ高みに登るつもりのKasimやZenoにとって歓迎できる環境では無いだろう。
「私のようなMageなら男でも重宝され、有事の際には戦列に加わる事が出来ます。Empusaや、ArachneでもLarge-buildや小型種の方々はmagicがあまり得意ではありませんから。中型種の方も、適性はHumanと同じ程度ですので」
そう男でありながらMage長にまで上り詰めたバコタは、自分のような者は例外だという。
「ただ、Noble Orc Empireよりも男の立場がweakのは確かですが、本当に大切にされているのですよ。そうでなければ他の国から婿入りしようとする者が居なくなり、国が維持できませんからね」
因みに、このZanalpadnaではArachneやEmpusaと夫である他raceが交わって生まれるchild達は、ほぼ全て母親のraceで生まれてくる。
本来はVida's New Racesが片親でも半々の確率で母親と父親のraceのchildが生まれて来るし、Noble Orcの場合はほぼ確実にchildはNoble Orcとして生まれてくる。
しかし Marshlandsより南のZanalpadnaを含めた都市国家群では、childは百percentそれぞれの国で奉じられている神にrootsを持つraceで生まれてくる。
同じArachneとNoble Orcの夫婦でも、このZanalpadnaでchildを作ればArachneの、Noble Orc EmpireならNoble Orcのchildしか生まれないのだ。
「そのKasim -donoという方がお相手を探しているのなら、婿入りするのではなく嫁入りするfemaleを探した方がいいかと思いますよ」
「そうですね。帰ったら当人に聞いてみます。ところで、話は変わりますが――」
本人不在のまま婚活話が進んでいるためVandalieuは強引に話題を変える事にした。Kasim本人の意思が不明であるし(お見合いのようなものが決まった後に、Kasimが八本脚や四本腕のfemaleが苦手だと判明したら事だ)、頼まれた訳でもないのにそこまで世話を焼いていいのかと言う迷いもあるからだ。
「話は変わりますが、町の人達の-sama子があまり暗くないし、寧ろ活気がありますね。戦時で、確か旗色は悪いはずなのに」
Vandalieuが言う-samaに、人々の顔はraceを問わずあまり暗くない。多少は緊張感や焦燥、疲れを滲ませているが、中には何かに期待するような顔つきでVandalieu達を見つめ、歓声や拍手で歓迎の意思を表す者も少なからずいる。
援軍を求めるために、それまで没交渉だったLizardmanに使者を送る程追い詰められている筈なのに。
しかし質問されたバコタだけでは無く、Myuzeも「それはShrine Maiden -dono達のお蔭です(ござる)」と答えた。
「俺達の?」
「そうでござるよ。despair視されていたGizania -donoの生還、そして頼みの綱の援軍が得られたらしい事は、Shrine Maiden -dono達を見れば明らかでござる」
Vandalieu達の中にLizardmanはいない。しかし、Zanalpadnaや他の都市国家出身者とは思えない、奇妙な者達ばかりだ。
そしてZanalpadnaでは特定の都市国家間でしか行き来が無いので、「奇妙な者達」はそのまま「未知の援軍」と解釈されたのだろう。
「それに活気があるのは……恐らく、姫が拙者のnameを叫びながら城から門まで全力疾走したからか注目が集まっているのかと」
「あー……それは何事かと集まりますね」
「ご、ごめんなさい? でも、誰も轢いてないのよ! 糸を使って塔から塔へ駆け抜けたから!」
「姫、それは当たり前でござる」
Zanalpadnaの城は、複数の塔を寄せ集めたような外観をしていた。ただ壁を幾人ものArachneやEmpusaが上り下りしているのを見ると、塔よりもアリ塚に近いようにも見える。
「もしかして、この城は壁を歩くか空が飛べないと移動できないのか?」
『表で待つしかねぇか?』
VigaroやBorkusは、独特のZanalpadnaのArchitecture -sama式に嫌な予感を覚えたらしい。
「そう言えば……もしかして、どちらも出来ませんか?」
そしてそれは的中していたりする。通常の民家である塔はHumanやDwarf等の民も生活しているので、階段やslowプもある。
しかし城にはその配慮は無かった。働いている者は殆どArachneとEmpusa、若しくはバコタの-samaにmagicが使える者だからだ。
「黒fangs Knight団の方々はお待ちいただいても構いませんか? Borkus -dono達は城の者が運びますので」
「フゴ、分かった」
Gorba達はTamerしているmonstersと一緒に城の近くで待つ事になった。Zanalpadnaでは見ないmonstersばかりなので、Tamer本人が近くに居ないとどう扱っていいのか分からないからだ。
蜘蛛や蟷螂のmonstersだったら、厩舎に専属のTamerが居るらしいのだが。
「では、Shrine Maiden -samaは――」
magicが使え、使わなくても壁や天井を這い回れるVandalieuはそれを告げようとした。
「では、某が」
しかし、何故かMyuzeに運ばれる事になった。
「いや、Vanは自力で移動できると思うし、何なら私達が運んでも……」
「Basdia、ここはMyuze -donoに任せてくれ。頼みたい事があるらしい」
「そうなのか? そう言う事なら分かった」
「何故分かっちゃうのよ……私が抱えて飛んでも良いのに」
そんな声を後ろに聞きながらMyuzeに運ばれていくVandalieu。
「Shrine Maiden -dono、実は折り入って相談が……」
「ninjaについてですか?」
「な、何故それが分かったのでござるか!?」
鎌腕と足を器用に使って壁を登りながら、小さな声で器用に驚くMyuze。
「だが、分っているなら話は早い! どうか某にTalosheimに居ると言うninjaの方々について教えて欲しいのでござるよ! できれば、修行法なども教えて頂けると……」
Myuzeだけでは無く、【Kunoichi】のJobについている者にとって、いつかninjaに至るのは目標であり、夢だ。その手がかりに飛び付かずにはいられなかったらしい。
「Jobじゃなくてrace名ですし、大蛙にはTransformできませんけど、それで良いなら修行法もお話します。ただ、あまり大した事は無いかもしれませんよ?」
「それで十分でござる! では、これを。約束の印でござる」
満面の笑みを浮かべて、Myuzeは懐から見覚えのある首飾りを出し、Vandalieuに持たせた。
「『親愛の首飾り』?」
「それのEmpusaバージョンでござる。compound eyesでは無く鎌の部分を研磨して、糸は某と同じ塔で暮らすArachneから貰った物でござるが」
やはりEmpusaも脱皮するらしい。
「ではありがたくいただきます」
コネ、二つ目ゲット。実は姫のImoutoだったGizaniaと違い、門の警備兵の隊長でしかないMyuzeのコネがどれくらい役立つのかは不明だが。
そうした打算を抜きにしても親愛の情を示されるのは嬉しいので、実はコネ的に役に立たなくても気にならないけれど。
「では、ここがQueenの間でござる。某はKurnelia姫をDonaneris Queenに引き渡したら門に戻る事になると思うので、どうか約束を忘れないよう、頼むでござるよ」
「分りました」
そうしてMyuzeに運ばれて入ったQueenの間は、妙な所が和風だった。床が畳っぽかったのである。
一瞬本物の畳かと思って懐かしさを覚えたVandalieuだが、すぐ違う事に気がついた。Arachneの糸を畳っぽく編んで、植物から作った染料で染めてあるものだ。
内心で「糸畳」と命名したVandalieuは、Queenの間に並ぶArachneやEmpusa達の中でも目立つ二人、玉座……は体形的に無いが、一番偉そうな中型種のArachneと、包帯だらけで片目片腕を失っているが威厳を保ち何処か優しげなNoble Orcに視線を向けた。
他にも初めて見るraceの者が何人かいるが、この場で最も重要な人物はこの二人だろう。
二人もVandalieuに視線を、特にArachneのQueenだろう人物が彼が首から下げている二つの親愛の首飾りに驚き、凝視している。connection効果は抜群の-samaだ。
そして、挨拶をするために膝を糸畳に突く。
「Marshlandsを含めた北の地を治めるTalosheimの王、『Eclipse King』にして『Vida's Miko』のVandalieuと申します。この度は御目通りが叶い――」
「ま、待たれよ!」
突然挨拶を、それもDonaneris Queenらしい人に遮られて驚いたVandalieuは、反射的に顔を上げた。
「……あ、正座ですよね。畳ですし」
「いやそうでは無くてっ! 御身に、娘の命の恩人にしかも一国の王である御身にそこまで礼を尽くされたら妾の立場が! 御身より頭を高くする訳にもいかぬとは言え、流石に皆の前で額を畳に擦りつけるのは勘弁願いたいのじゃ!」
初めての外交なので礼を尽くそうと思ったら、尽くし過ぎたらしい。見ると、他のArachne達やNoble Orcも慌てている。
「陛下、国王同士で簡単に頭下げちゃダメだろ」
「そう言う事は初めに言ってください。俺、王になる前は王じゃなかったんですよ」
「……言いたい事は分かるが、何処の王-samaでも戴冠式の前はそうだぞ」
Arachneに乗って登って来たKurtにダメだしされたVandalieuが佇まいを直すと、見るからにほっとした-sama子でDonaneris Queenは息を吐き、改めて口を開いた。
「娘を助けて頂き、感謝する。妾はDonaneris、Zanalpadnaを奉じこの国を治める者じゃ。御身の事は神から頂いたOracleによって知っておる、偉大なる試練に挑むMikoとして」
・Name: Myuze
・Age: 70
・Title: none
・Rank: 6
・Race: Empusa Kunoichi
・Level: 59
・Job: Kunoichi
・Job Level: 35
・Job History: Apprentice Thief、Thief、Assassin、Dark Fighter
・Passive skills
Mysterious Strength:3Lv
Night Vision
Enhanced Agility:6Lv
Strengthened Attribute Values: Duty:4Lv
Enhanced Body Part (Carapace, sickles):6Lv
・Active skills
Camouflage:3Lv
Unarmed Fighting Technique:7Lv
Throwing Technique:5Lv
Armor Technique:3Lv
Silent Steps:8Lv
Lockpicking:2Lv
Trap:3Lv
-Surpass Limits-:5Lv
Assassination Technique:3Lv
No-Attribute Magic:1Lv
Mana Control:1Lv
Wind-Attribute Magic:1Lv
Monster explanation::Empusa
以下、Amid Empire Imperial CapitalのMage guildに保管されている、『太古の文献の写本』の写本を補修したMageが纏めた、古の文献の記述。
蟷螂の特徴を持つ雌のみのmonstersで、基本的なRankは4。知能は高いが凶暴であり、昆虫の蟷螂とは違い群れで行動するため、危険度が高い。
通常の腕の他に手首から先が鋭い鎌に変化している一対の鎌腕が生えており、それを【Unarmed Fighting Technique】skillで巧みに操る。
背中にfeatherが生えているが、蟷螂同-samaそのFlight Abilityは低い。殆ど滑空するために使われる。
また、一部の蟷螂同-samaに周囲の風景に溶け込む【Camouflage】を行う事が出来る。
生態としては単性raceであるため交配の為に他raceの雄を必要とするが、EmpusaはHumanやVida's New Racesのmaleしか狙わない。そのため、Orcよりも危険度が高いとされている。
浚われた男は交配後卵を産むための栄養源として食い殺されてしまう。その後Empusaは一つから複数個の卵を産み、卵は約一年後に孵化し、産まれたchildは脱皮を繰り返しながら十年程で大人と同じ姿に成長する。
またmonstersにしては長命で、二百年以上生きた個体も存在する。
卵からは時折male側のraceのchildが生まれるが、女児なら即座に食い殺し、男児なら交配が出来るageまで飼うと思われる。
Empusa BerserkerやEmpusa Slayer、Empusa Assassin等のRank upした上位種の存在が確認されており、危険極まりないmonstersである。
ただmagicを苦手とするmonstersの-samaで、Empusa Mageは滅多に存在しないのは幸いである。
鎌はそのままでもWeapon Equipmentとして使用可能で、強固な甲殻やboneはDefense Equipmentの材料に、featherは粉末にするとAlchemyの素材の一つになる。
また、heartから採れるMagic StoneはWind-Attributeのmagic itemと相性が良い。
ただこの Bahn Gaia continentではここ数百年の間Empusaは一匹も確認されていない。そのためこのContinentではEmpusaの根絶に成功したと思われる。
このような邪悪なmonstersの根絶に成功した事は、真に幸いである。何故かEmpusaはDungeonで生成されないmonstersであるため、今後他のContinentから愚かなTamerが持ち込まなければ、 Bahn Gaia continentでその姿を見る事は無いだろう。
しかし monstersが跋扈するBoundary Mountain Rangeの向こう、Continent南部に生き残っている可能性は否定できない。