死してBodyを失った生命体は、多くの場合時間の感覚が鈍る。
鼓動を刻むheartも、呼吸するlungも無い。食事や睡眠もBody的な意味では必要無い。地上を彷徨う霊なら空を見れば大まかな時間の流れぐらいは意識するだろうが、屋内に留まっている場合など年単位の時間が過ぎている事にも気がつかない場合がある。
そのためRodcorteはReincarnator達の為、自身のDivine Realmに『時計』を設置した。
Originで死亡した『Bravers』とそれから離反したMurakami Junpei達のgroupに、Lambdaへのreincarnation後どうするのかの選択をする期限を、一ヶ月とした。その期限を守ってもらうためだ。
最近は魂を砕かれた時に発生するCircle of Reincarnation systemの対処にも、若干の余裕がある。
『十万年以上前Demon King GuduranisがLambdaを蹂躙していた頃の勘を取り戻してしまったか』
今なら一度に一人二人程度魂を砕かれた程度なら、平常よりもやや忙しくなる程度で対処できるだろう。
Raymond ParisやRick Paris、更に『新生Sauron Duke軍』の内Scylla連続猟奇殺人を行った共犯のmember十数人の魂を一度に砕かれた時は、流石にかかりきりに成ったが。
『VidaのCircle of Reincarnation system内の魂を私のsystemで運用する事を考慮するより、魂を砕かれた際の対応を効率的に行うためのsystemのバージョンupに着手するべきか?』
そう思うが、そもそも魂を砕く事が出来る唯一の存在であるVandalieuを抹殺すれば済む問題であるため着手には躊躇を覚える。
Demon King Guduranisのように魂を砕く事が可能な存在が再び何処かのworldに侵略を開始するような事は、そうそう起きないであろうし。
それにもしVandalieuが短期間に数十万、数百万の魂を砕くような暴挙に出れば、幾らRodcorteがsystemをバージョンupしようと追いつかない。Rodcorteが出来るのは、system全体のDecayを避けるために幾つかのworldごとLambdaのCircle of Reincarnationを司っている部分を切り離す事ぐらいだろう。
Demon King Guduranisすら結果的にはやらなかった(恐らくRodcorteのsystem破壊後、Lambdaに何が起こるか不明だったため)暴挙だが、Vandalieuがやらない保証は無い。
『なら、せめてsystemの内Lambdaの部分だけ切り離せるようにしたら良いんじゃないの?』
Rodcorteの独り言を聞いていたAranがそう提案するが、彼は「それは難しい」と答えた。
『originally、私のCircle of Reincarnation systemはworldごとで完全に区切られている訳ではない。普段は魂を一つのworld内でCircle of Reincarnationさせているが、不測の事態に対応するために幾つかのworldは非常時のみ魂を融通できるように設計している』
worldAで人口爆発が起こってreincarnationさせる魂が不足した場合、BやCのworldのreincarnation待ちの魂を融通するといった事態を想定しての仕組みだった。
そして、その設計故にAからCまでのworldはsystemから個別に切り離せない状況に在るらしい。
それを聞いて、なるほどとAranは息を吐いた。
『つまり、この場合その幾つかのworldがEarthやOrigin、Lambdaって事か』
Rodcorteは『Lambda』とsystem的には近い『Earth』からAran達を、同じく『Lambda』から近い『Origin』へreincarnationさせた。そして今またReincarnatorを『Origin』から近い『Lambda』へreincarnationさせようとしている。
そして同時に、Rodcorteがいざという時は、system全体を保護する為なら『Lambda』を『Earth』や『Origin』ごと見捨てるしかないと考えている事も理解した。
systemの管理者としては、正しい態度なのだろうが……。
『その通りだ。ただ、私も好き好んでLambdaを含めるworldを切り捨てたい訳ではない。そのために-kun達をEarthからreincarnationさせたのだし、Vandalieuの抹殺を依頼していると言う事を理解して欲しい』
『……いや、後者は違うんじゃないか? 危険なのは分かったけど、別にあいつは魂を砕かないと生きていけない訳じゃないし、頼めば止めてくれるんじゃないかな?』
頬を引き攣らせるAran。何も執拗に殺そうとしなくても良いじゃないかと彼は思うのだが、Rodcorteの意見は異なるらしい。
『もしOriginで人類の制御を受け付けない、高度な知能と自由意思を持った危険な生物兵器が野放しに成っていたら、人類の為政者達はどんな判断を下すのかね?』
Rodcorteの【Calculation】を使うまでも無く答えが出る問いに、Aranは肩を落とした。
『人類を害しない可能性を信じるより、消して人類を害する可能性を零にしてしまった方が確実って事ね。へいへい、分かってますよ』
そう言うと、彼はRodcorteから離れて行った。
どうにも独りで在る時間が殆どだったので、意識せず独り言を口にする癖があるようだと、Rodcorteはやっと自覚した。
仮にでもFamiliar Spiritを創った以上、今後は注意するべきだろう。
『あの~、Kami-sama、ちょっと良いかな?』
次に話しかけて来たのは、【Marionette】のInui Hajimeだ。他の仲間は連れず――彼にとってReincarnatorの中に『仲間』がまだいるのかは不明だが――に一人でやってきたようだ。
青ざめた顔に泳いでいる視線、小刻みに震える手や膝と、よくも魂だけのconditionでここまでemotionsを露わに出来るものだと、人の心理conditionを軽視する傾向が強いRodcorteですら感心する程の動揺っぷりだ。思考もやや乱れがちである。
『選択は決まったかね?』
なのでゆっくりとした口調で聞き返した。しかし、あまり効果は無かったらしい。
『そっ! その選択の事なんだけど! き、Memoryと人格を消して何処かの赤ん坊からreincarnationするってのは有りかな!? 出来ればDestinyも、力もnoneで!』
『……ふむ』
Inui Hajimeが言い出した意外な申し出に、彼の思考が読めるRodcorteも思わず黙り込んだ。
(Humanとは、基本的に一度手に入れた力や特権、propertyに固執し、それを守るためなら殺人も厭わない傾向が強い生物だと思っていたのだが……)
人類をそう認識していたRodcorteにとって、Inui Hajimeの提案は意外なものだった。
特に『Lambda』は『Earth』や『Origin』と違い、全体的に命の価値が安いworldだ。Royal Nobilityや裕福な者の元に生まれた者は例外として、人々の人権意識は低く、野外には危険なmonstersが存在し、多くの戦乱で非戦闘員からの命を含めた略奪が行われ、それが常だと認識されている。
現在の『Earth』や『Origin』でもそのような地域が無いとは言わないが、『Lambda』はworld全体でそうなのだ。
そんなworldにreincarnationするのにCheat Abilityや今まで培ってきたMemoryや知識も無く、赤ん坊からやり直すとは……。
『危険性は分かっているのかね?』
『もっ、certainlyです! なんなら、産まれてすぐ死んでも良い!』
Inui Hajimeは、Rodcorteや周りの誰もが予想していた以上に心が折れていた。
もうreincarnationしてもVandalieuやMurakami達他のReincarnator、『Lambda』の住人に殺されるだけなのではないかと、追い詰められていたのである。
彼は以下のように思い込んでいた。
Vandalieuを殺す刺客に成っても、『The 8th Guidance』から自分の情報はVandalieuに伝わっている筈。だとするとKaidou Kanata同-samaに返り討ちだ。【Marionette】でnerveの無いGolemやGhostは操れないし、Vandalieu本人はBodyから【Out-of-body Experience】されたら、やはり操れない。そして負けた後は、命乞いをしても温情は期待できない。
刺客に成らなかった場合は、口封じのためMurakami Junpei達に殺される。既に情報は『The 8th Guidance』達によってVandalieuに伝わっているとしても、reincarnationしたらしい『The 8th Guidance』のcondition次第では不完全かも知れない。それに、自分が他の『Lambda』の現地人に自分達がReincarnatorである事を漏らす可能性を考えれば、生かしておくはずがない。
Murakami達以外のReincarnatorの助けも期待できない。自分は直接殺してはいないが、『Bravers』の裏切り者である事に変わりは無いからだ。
彼がMurakamiに殺されても、「仲間割れ」としか見てくれないだろう。
certainly、殺すと言っても文字通りの意味では無い。殺すだけではまたRodcorteの元に魂が戻るだけだと、今のMurakami達は知っている。
だから脳の一部、生存に問題無い部分だけ破壊して意味のある言葉を話せないようにしたまま暫く生かしておくような、生殺しの方法を取るはずだ。
そんな事をされたら、死んで魂が此処に戻って来た時正気を保っていられる自信が無い。
そしてVandalieuに殺される場合は、あのBAKANA Kaidou Kanataのせいでほぼ確実に魂を砕かれる。その際の激痛とLost感、despairは霊に成った今だからこそ想像できる。
『だ、だからさっ、どうせなら僕、居なくなっちゃった方が楽なんじゃないかなって、思うんだよね! Memoryも人格も力も無いただの赤-chanならさっ、誰も態々探して殺そうとは思わないだろ!?』
そしてこの結論に至ったのだった。力を無くし、Memoryも人格も消してまっさらなconditionからやり直す。通常のCircle of Reincarnationで在る以上それはInui HajimeというHumanの消滅と同じ意味だと分かっていた。しかし、それこそ彼が望む事だった。
そのInui Hajimeの思考を一通り読んだRodcorteは、自らが犯した失敗の一つに気がついた。
(Memoryと人格を保ったまま、集団でreincarnationを繰り返す状況とstressを考慮するべきだったか)
人は本来まっさらなconditionで生まれて来るが、Reincarnatorの場合五年から六年で前世のMemoryと人格を取り戻してしまう。
つまり、Human性がその瞬間形作られてしまう。
それでは来世では生まれ変わって頑張ろうと思っても、難しくなる。既に経験と共に形作られた人格を変える事が難しいのは、考えるまでも無い事だ。
しかも、前世の自分を知っている者達が自分と同じようにreincarnationしていたらどうなるか。
やり直すのは、更に難しくなる。
その上死の際のMemoryも鮮明に残っているので、Inui Hajimeの-samaに仲間だと思っていた者に裏切られたtraumaまでそのまま受け継がれる。
Kaidou Kanataの場合は「死んでもどうせまた生まれ変われる」と考え、何とも思っていなかったようだが。しかし、それはKanataが異常なのであって、Inui Hajimeの反応の方が正常なのだ。
Human性、他のReincarnatorとの関係、そして死のhorror。全てを軽く考えていたRodcorteのmissだった。
(知識と技術、経験を積ませるために『Origin』へのreincarnationを間に挟んだのは、失敗だったか)
そう思うが、今更時間を巻き戻す事は出来ない。
今はInui Hajimeの希望に返答するのが先だ。この分ではVandalieuへの刺客としても、Lambda worldにanother worldの知識や技術を伝えてdevelopmentを促す事にも、彼は使えないだろう。
『残念だが、それは出来ない』
だからといって、彼の希望を叶えたら折角力を使って与えたCheat Abilityやこれまでの時間が無駄に成ってしまう。使えない捨て駒は捨て駒なりに、せめて捨て石として最後まで役立ってから消えて欲しい。
『な、何でっ!?』
『出来ないからだ』
そう思うRodcorteだが、流石にそれを正直に口に出して教える事は無かった。
『Lambda』をdevelopmentさせる計画が上手く進んでいるのならInui Hajime一人諦めても問題無かったのだが、今は非常時なのだ。使える者は、猫の手未満でも使い潰すべきだ。
『じゃ、じゃあ、僕は一体どうすれば……?』
だがこのままだとCircle of Reincarnationした途端、自ら安楽死を選びかねないので多少力を貸す事にする。
『-kunが恐れている生殺し、植物HumanやStatus Effectによる石化等に陥り、その回復が望めないなら【Marionette】が自動的にActivateし、-kun自身を殺す-sama予め仕掛けを施しておこう。それで良いかね?』
reincarnationする前のconditionなら、Cheat Abilityを受け取っていないVandalieuには出来ない事だが、Inui Hajime達他のReincarnatorにならこれぐらいの細工を行う事は可能だ。
『そ、それなら……まぁ……何とか……』
あまりにも小さなRodcorteのfollowに、肩を落としながら『もう少し考えさせてほしい』と言って離れていくInui Hajime。
彼がもし再び戻って来たら、その時彼をどう使うか、それとももう役立たないとReincarnationの環に還すかを決めるとしよう。
そう思うRodcorteの元に、再びReincarnatorがやって来た。
『提案がある。情報収集をさせて欲しい』
それは、【Clairvoyance】の天道達也だった。
『情報収集、とは?』
『このDivine Realmって場所からは、貴方がCircle of Reincarnationを司るworldを見る事が出来る。そうだな?』
『それはそうだが……眺めたところであまり意味は無いと思うが』
RodcorteのDivine Realmからは、各worldを眺める事が出来る。ただその精度はouter spaceから、握りこぶし程度の大きさに見えるEarthを眺めるのと同じか、それ以下だ。
Continentの形や位置は分かるし、Continent規模以上の異変なら気がつく事が出来る。だが島は見逃しかねない。人の営みを知る事なんて、まず不可能だ。
『Lambdaの大まかな地理を知りたいなら構わないが……』
そう言いながら、Rodcorteは『Lambda』の映像を天道の前に表示する。
赤ん坊の頭程の大きさの球形の形で、『Lambda』worldが明らかに成った。人々がまだ誰も知らないworldの形を、神ならぬ身で見る事が出来るのは確かに特権かもしれない。
因みに、これほど遠くからしかworldを見られないのはRodcorteがLambdaに認知されていない神だからだ。God of Law and Life Aldaの-samaに多くの人々に信仰されている神なら、見ようと思えばbelieverが多く存在する地域を、もっと詳細に視る事が出来る。
だがLambdaの誰にも存在すら知られていないRodcorteでは、この程度が限界である。
『ん?』
そのはずだったのだが、何故か『Lambda』worldの一部だけが他よりも若干見やすくなっている。
(気のせいか? これは Bahn Gaia continentの南部……Vandalieuが治める国ではないか! なるほど、ReincarnatorであるVandalieuは私の存在を知っている。そのせいか? だが、これはManaに関係無く私を認知している人数の問題だ。たった一人でここまでimpactが出るものなのか?)
見えると言っても、他の地域と比べると多少はマシ程度で、役に立つ程ではない。やはり気のせいかとRodcorteが考え直した頃に、『Lambda』worldをじっと見つめていた天道がにっと笑った。
『よし、これなら行ける! Kami-sama、【Clairvoyance】を使えるようにしてくれ。それでBoundary Mountain Rangeの内側、Amamiyaが作った国を見てみたい』
天道達也がRodcorteから受け取ったAbility、【Clairvoyance】は複数の視覚に関するAbilityだ。その中には【望遠視覚】も含まれる。
しかし、その力は本来大した事無い力だ。双眼鏡や望遠レンズがあれば足りるため、天道自身あまり高めようとはしてこなかった。拡大できるのは、精々数倍程度だ。
それでもTalosheimの地理や街、そして城や城壁の形くらいは分かるだろう。そして、それだけでもAsagi達仲間の判断材料に成る筈だ。そう天道は思ったのだが、Rodcorteはなるほどと呟いた。
『確かに、今の魂とSpirit FormだけのconditionならBody的な限界が存在しない。問題はManaだが、私が少々融通すれば事足りる。
良いだろう、天道達也。-kunの力を媒体に、今のVandalieuを見る事を試みてみよう』
しかし、それを聞いたRodcorteは天道を利用して情報を収集する方法を思いついた。
天道の【Clairvoyance】はoriginally Rodcorteが持つ神の力を加工したものだが、加工する前の神の力は持ち主のRodcorte以外使えない、ただのenergy。しかも、Rodcorte自身が神である事の制限を受ける為、出来ない事が多い。
だが、神の力を加工してHumanにも使えるようにして授ける事で、Humanは神の制限を受けずに使う事が出来る。
なるほど。やはりHumanを使う事は有用だと、Rodcorteは実感した。
『では、全員が-kunの視たものを見られる-samaにしよう』
『そんな事が出来るのか!?』
『可能だ。-kun達は良くも悪くも、Bodyの楔から解放されたconditionにある』
実際には手足も目鼻も無いのだ。情報を共有する事ぐらい、Rodcorteが手を貸せば容易い事だ。
そしてRodcorteはReincarnator達とAran達Familiar Spiritを全て集めた。そして今から天道の【Clairvoyance】を使い、Vandalieuの情報を収集する旨を伝える。
異議は誰からも出なかった。Rodcorteが提示した選択肢のどれを選ぶにしても、『Lambda』にreincarnationしてから何をするにしても、Vandalieuの情報は得て置いて損は無いからだ。
Aran達からしても情報が限られるVandalieuとTalosheimの情報は、喉から手が出るほど欲しい。
それに、ここはDivine Realm。space的に『Lambda』からは隔絶されている。
このDivine Realmから【Clairvoyance】でVandalieuを見ても、Vandalieuに気がつかれる事は絶対にない。そして万一気がつかれたとしても、彼からは何もできない。
『本当に大丈夫なのか? 奴の力には正体不明な部分も多いって言ったのは、あんた達自身だぞ!』
まだ不安げなInui Hajimeがそう保証を求める。確かに、Rodcorte自身もbelieverでは無いVandalieuのStatusは見られない。情報も、彼を見たHuman達の目や耳から集めた物ばかりだ。
だから、Vandalieuを見たHuman達が知らない、分からない事は、Rodcorteもconjectureする事しか出来ない。
『大丈夫だ』
しかし、Rodcorteは当然だという態度でInui Hajimeに応えた。
泉やAranも保証した。
『疑う気持ちも分かるけど、こいつの言う通りよ。space的には繋がってないから、幾らDeath-Attribute Magicでも何もできないわ』
『Manaが十億あっても、Demon King Fragmentを持っていても、ここまでは届かないよ。そもそも気がつかれないって』
『だったら、良いけど――』とInui Hajimeが納得すると、早速天道は【Clairvoyance】をActivateした。
『これはっ、凄いな。Manaが無尽蔵に供給される感覚と言うのは……っ』
天道が見ている映像が、Rodcorteを経由してReincarnatorとFamiliar Spirit達全員に共有される。それは最初人工Satelliteから見るEarthの天体画像のようだったが、すぐに拡大され地表の-sama子が明確に見えるようになった。
それはReincarnator達や、既にある程度Vandalieuについて調べてある泉やAranにとっても驚くべき光景だった。
『これは……とんでもないな。前見た時より城壁の数が増えてる』
『ええ、幾つ城壁を建てれば気がすむのよ。それにあれは投石機? それに、壁の隙間にはcrossbowが……なにこれっ!?全部Undeadじゃないっ!』
『待てっ、外側の城壁はただの壁じゃないっ! 全部Golemだ! 他にも……建物や壁の模-samaや飾りに見えるのも全てGolemだっ! 監視用か!?』
『いや、Golemだけじゃない! それに飛んでるのは何だっ!? ほぼ透明な髑髏に、その下にはPteranodonのZombie!?』
空から見たTalosheimの威容……いや、いっそ異-samaと言うべきかもしれない。その防衛体制はReincarnator達の目には恐ろしい程偏執的に見えた。
城壁の形のGolemも含めると、八重の高く分厚い壁。数えるのがバカバカしくなるほど揃えられた、crossbowのCursed Weapons。設置された投石機の数。そして、張り巡らされた監視網に、防空網。
『どれもこれも滅茶苦茶だ。攻城戦や軍略の素人が、建造費も維持costも考えず作った模型か何かよ』
『Murakami sensei、でもさ、あの、出鱈目なの、全部模型じゃないのよね?』
『話じゃ聞いてたが……実際に全体図を見ると……言葉を失うぜ』
Murakami Junpeiが言う-samaに、Vandalieuは攻城戦や軍略に関してほぼ無知だ。もし多少なりとも知識があれば、Japanの城を参考に、もっと城壁の形を工夫しただろう。
しかし無知な彼はひたすら城壁を高く厚く、重ねていく。crossbowの数を増やし、投石機を次々に設置して、監視用GolemやLemure、翼竜Zombieを創り出していく。
普通ならこんな非効率的な防衛計画はとても実現できるものでは無い。設計段階で机上の空論と嗤われるだけだ。
だがVandalieuには億単位のManaと、【Golem Transmutation】skill、そして【Death-Attribute Magic】がある。
石材すらDungeonでMiningして建造費をManaだけで補い、Mana以外の維持costがほぼかからない防衛網を作り上げたのだ。
『……町の中を見るぞ』
驚きから立ち直った天道は、そう告げてTalosheimのもっと中を見る。時間帯はmidnightの-samaだったが、町には人々が活発に行きかっていた。
その光景を実際に見たReincarnator達は、城壁などの防衛設備と同じ衝撃を覚えた。
『人型のmonsters、あれがBlack GoblinやAnubisか。他にも水路にはlower bodyが魚の山羊が泳いでやがる』
『Undeadが、まるで人みたいに会話しているのか。あれ、特殊メイクしたHumanじゃないんだよな?』
『Origin』では、monstersとはManaによって変容したMonster、危険な害獣であり討伐した後剥製にする等死体を利用する事は在っても、飼いならす事が出来る存在では無い。
同じくUndeadも、ただ死体が動き出しただけのmonstersとして処理される。
その害獣が言葉を話し道具を使い、文化的な生活を営んでいる。やはり情報として知っているのと実際に見るのとでは違うようだ。
『向こうにreincarnationしたら、迂闊にmonsters退治は出来ないな』
Asagiがそう言うのも無理は無い。しかし、Aranは苦笑いを浮かべてその意見を否定した。
『全てのmonstersがこんな風に文明的な訳じゃない。Talosheimが特別なんだよ。後、GhoulやScyllaは向こうじゃElfやDwarfと同じ人だから』
全てのmonstersやUndeadがTalosheimの住人と同じだと勘違いすると、『Lambda』では確実に早死にする。そして、逆にTalosheim以外のGhoulやScylla等のVida's New RacesをHumanだと認識しないと危険だ。
『あれが人? エキゾチックにも限度があるぜ、ほぼMonsterじゃねぇか』
『まあ、そう考える人達も多いけど……それ、ほぼVandalieuの敵に成る人達の価値観よ。自分でも気がつかない内に彼の敵側で出世して目立っても知らないからね』
『っ! チッ』
Dougが泉の言葉にclicking tongueをして黙り込む。
Vandalieuが厄介な点は、個人として関わらないようにしていても、何時の間にか自分が属している社会が彼に敵対してしまう場合が考えられる事だ。
『Lambda』での両親がAlda過激派やHuman中心主義に傾倒したり、産まれた町でVida's New Racesの排斥運動が始まったり、国がVidaを邪悪な神の一柱に指定したりした場合、Vandalieuとの衝突が考えられる。
Vandalieuがただの個人ならそこまで恐れる必要はないだろう。だが彼は国家の為政者であり、しかも Talosheimの外にも平気で足を延ばすfoot workの軽さがある。
しかも裏路地で一般人に絡むゴロツキを退治する感覚で、他国のNobleや重要人物を屠る事が出来る力と狂った人格の持ち主だ。少なくとも、泉達からはそう見える。
将来彼が通りがかった国で可哀そうなVida's New RacesやVida believerを見かけたら、彼はそれを助けるためにそれ以外の大勢の人々を災禍の炎で焼きかねない。命は獲られないにしても、無関係でいられる保証は無い。
『だから、関わらない事を選ぶにしても出来るだけ敵側じゃない方に居て欲しいのよ。巻き添えで被害を受けるのは嫌でしょう?』
『……覚えとくよ』
それから天道はTalosheimの幾つかの施設を【Clairvoyance】で映した。BorkusがMikhailに愚痴を言っていた訓練場、-sama々な神の像が祭られるChurch of Vida、Golem工場、cassino、整備中のtheater。Public bathhouseは、建物の入り口までしか見なかったが。
『音は無いの? 何を話してるか知りたいんだけど』
『赤城、俺のAbilityは【Clairvoyance】だ。目に耳は付いて無い。話しているのはJapan語に近い言葉だから、読lips術でどうにかしてくれ』
『……chinの形が違い過ぎる奴らが多いんだけど』
当たり前だが、映像はあくまでも『Clairvoyance』の力だ。そのため、音声は一切無い。
Reincarnator達の中にはある程度読lips術の心得がある者もいたが……流石にGhoulの男の獅子頭やOrcus、Anubis、そして顔に肉の無いSkeletonの話している言葉を読める者は居なかった。
『そろそろ肝心のVandalieuを映してくれよ。後、reincarnationしているはずの『The 8th Guidance』や【Gazer】の姿も確認しておきたい』
『Murakami、俺の【Clairvoyance】は個人を指定して視る事が出来るAbilityじゃないんだ。城の何処かに居なかったら、今日は諦めてくれ』
最後に残した王城に視線を向け、内部を映していく。このGiantな王城の内部も、異常な警備体勢だった。
立ち並ぶ恐竜Zombieや恐竜Skeleton、警備についているらしいGiant raceのGhost。情報に在ったGiantなShoujoと異-samaなZombie達が寝ているroom。
そのroomの中にLegionの姿があったのだが……Rodcorteにすら「情報に無いが、Vandalieuが新しく作ったUndeadか」と思われ、見逃された。
『何だあの肉の塊? それにしても赤ん坊や妊婦が居ないな。Valkyrie共は何処にいるんだ?』
『待て、地下にroomがあるみたいだ』
映像は一階の床を抜け、そのまま地下にあるVandalieuの工房を映した。
そこにはVandalieuが、十代前半と後半に見える二人のGhoulの美女と、カイゼル髭を生やした痩せ形の男、二体のUndead Giantと一緒に居た。
情報に合った通りの、白い髪にbloodの気のない屍蠟のような肌、死んだ魚のような瞳が映像に映し出される。
『おい、こいつこっちを見てるぞ!?』
『いや、偶然視線が合っているだけだ。そのはず、だ』
『あれ? いや、こいつ、もしかして今俺達を見てない?』
他のReincarnatorやAran達が困惑している状況で、一人だけ違う事を考えている者が居た。
(おい、Kami-sama -sanよ。そのまま黙って聞いてくれ)
【Death Scythe】のKonoe Miyajiだ。
彼は自分達の思考をRodcorteが読める事に気がつき、それを利用して他のReincarnator達に気がつかれないように呼びかけた。
(俺の【Death Scythe】を使える-samaにしてくれ! 後、天道みたいにManaも貸してくれ! そうすれば、from here一方的にVandalieuを攻撃できるだろ!?)
その思念を読み取ったRodcorteは、Miyajiのideaを検討し、すぐさま答えた。
(良いだろう)
MiyajiがSpirit Formのまま【Death Scythe】の力を使えるようにして、更に天道同-samaにManaのBack upを行う。
『はぁっ! 奴を殺したら褒美をたんまりくれよな!』
そしてMiyajiは躊躇わずにVandalieuのheartとlungの運動を【Death Scythe】で止めた。
呼吸が出来ず、heartに痛みを伴う苦しさを感じたVandalieuは、自分が攻撃を受けた事をIntuitionした。
そして細かい事を考える前に、【Death Bullet】を天井に見えるRodcorteやReincarnator達が映る穴に向かって撃つ。
「Van -samaっ!?」
『Mikoよっ、如何なされました!?』
驚くTarea達の声が聞こえるが、Vandalieuに答える余裕はない。いつも通り【Chant Revocation】でActivateさせた【Death Bullet】は、映像を素通りして天井に当たって消えた。
映像の中のReincarnator達は驚いているようだが、何のimpactもなさそうだ。
次に、【Demon King Fragment】をActivateさせて角を一本だけ生やして、それを【Telekinesis】で撃ち出す。
「何者かの攻撃じゃっ!」
Zadirisがそう叫ぶのとほぼ同時に、撃ちだした【Demon King's Horn】も【Death Bullet】と同じように映像を素通りして天井にthrust刺さった。
「一体何処から、どんな攻撃を受けているのだ!?」
『おのれっ! 姿も見せないとは卑劣な!』
次にVandalieuは【Magic Absorption Barrier】を映像と自分の間に張り、更に床をGolem Transformationして遮蔽物を作った。
しかし、効果は無い。Reincarnatorの一人、Legionの情報によると【Clairvoyance】の天道達也らしい霊が見るからに狼狽えた後、不自然に仰け反ったまま硬直したのが変化と言えば変化だが、事態が好転する類の物には思えない。
呼吸できず、鼓動も止まったままだ。【-Surpass Limits-】skillをActivateした事でまだ意識を保っていられるが……。
仕方ないので、Vandalieuは【Out-of-body Experience】で抜け出した。
『ああ苦しかった。いや、まだ苦しいのですけど』
これで、脳の酸素不足で意識を失う事は無い。思考を脳では無く霊が行うため、脳で消費する酸素も抑えられる。
「坊やっ、何が起こっておる!?」
『Divine Realmからの攻撃です。maybe【Death Scythe】のAbilityで、俺のheartとlungが止められました』
『何じゃと!? 例のReincarnation神か!』
「反撃はできぬのか!?」
憎々しげにRodcorteを罵るDataraと、杖を構えたまま焦燥を滲ませるZadiris。
どうやら、あの映像が見えているのは自分一人であるらしいと、Vandalieuは理解する。
次に、あれはspaceに穴が空いている訳では無く本当に『見える』だけで、物理的に繋がっている訳ではないとIntuition的に分かった。
maybe、【Clairvoyance】のAbilityを【Abyss】skillで跳ね返して、見つめ返しているだけなのだろう。
だから【Death Bullet】を含めたmagicも、【Demon King Fragment】も届かない。【Clairvoyance】が透視してしまうため、遮蔽物は意味が無い。
普通なら、かなり詰んでいる。鼓動と呼吸を止められて、逃げる事も出来ない。
Zadiris達に至っては、敵の姿すら見えない。彼女達に逃げるよう言いかけたVandalieuだが、すぐに意味が無い事に気がつく。
【Clairvoyance】が敵に在る以上、何処へ逃げても敵がその気ならすぐ見つけられてしまう。
『一応反撃はしている筈なのですけど……あまり効いていないみたいですね』
Reincarnator達の一人、【Death Scythe】のKonoe Miyajiが若干苦しそうにしているが、それだけだ。
『やはり、Bodyの無いconditionの人に【Abyss】で心lung停止のDamageを返しても、効果が薄いのか』
「師Artisanっ! 落ち着いているところ悪いのだが、そろそろbody partの方が拙そうに見えるのだが!?」
「いつもより若干lipsの色が青ざめているように見えますわ!」
どうやらBodyの方もそろそろ何とかした方が良いようだ。
『では、まず【Demon King's Blood】をActivate』
RodcorteのDivine Realmでは、Reincarnator達は狼狽えていた。
『テメェっ! 抜け駆けするつもりか!』
『へっ! 俺の【Death Scythe】は相手の顔が見えればActivateできるんでな! Kami-samaの許可と協力があれば楽勝だぜ!』
悔しげに唸るMurakamiに、Miyajiは勝ち誇って顔を醜く歪める。
『お、おい止めろっ! 何を考えてんだ!』
MiyajiがVandalieuを殺そうとしている事に気がついたAsagiや赤城が彼に掴みかかって止めようとするが、触れる事も出来ない。
『霊同士なら触れられるってお約束はnoneか!?』
『それはお互いに敵意が無い場合だけだ。少なくとも、私のDivine Realmでは。-kun達が勝手に揉めて数を減らす事の無いように調整してある』
『っ! おいKami-sama! 今すぐ止めさせろ!』
『……何故Vandalieuを殺す事を依頼しようとする私が、止めると思うのだ?』
自分ではMiyajiを止められないと悟ったAsagiがRodcorteに叫ぶが、彼はAsagiに視線を向けようともしなかった。
当然だ、RodcorteはVandalieuの死を願っている。そのための手段に拘るつもりは無い。
『くっ、糞っ!』
『Aranっ、泉っ、-kun達で止めてくれ! Familiar Spiritの-kun達なら、Konoeを止められるはずだ!』
EndouがはっとしてAran達を振り返るが、視線の先に在ったのは苦々しく顔を歪めた二人だった。
『止めたいけど出来ないのよ。今、KonoeはRodcorteのManaで力を行使している。つまり、Rodcorteの道具も同然なの』
『そして、俺達Familiar Spiritは上司の行動に苦情を言う事は出来ても、妨害する事は出来ない! 畜生っ、ここまで汚い手段を使うとは思わなかった!』
『ひっ、ひいっ!?』
二人が嘆く間に、映像に移るVandalieuが攻撃を仕掛けてきた。思わず引き攣ったscreechを上げるMiyajiだったが、Vandalieuのmagicも【Demon King's Horn】も映像から飛び出る事無く消えていく。
『お、脅かしやがって!』
『ちょっとっ、彼完全にこっちに気がついてんじゃないの!? あ、あたしは関係無いからね~っ!』
『ケッ、関係無いねっ! こっちに気がついていようが無かろうが、このまま殺す! おい天道っ、【Clairvoyance】を止めるんじゃねぇぞっ! お前にも報酬は分けてやるからよ!』
『天道っ! 今すぐ止めろ!』
MiyajiとKouyaから正反対の事を言われた天道だったが、彼は返事をする事が出来なかった。Rodcorteから無理矢理Manaを注入され、【Clairvoyance】を閉じる事が出来なくなっていたからだ。
『そんなっ、私達には何もできないのかっ!?』
『おいおい、落ち着けよ』
若干まだ悔しそうだが、すっかり落ち着いた-sama子のMurakamiがKouyaやAsagi、泉やAranに声をかける。
『別にそんなに悪い事じゃないだろ。誰も死なずにあいつを殺すだけだぜ。お前等だって、あいつが善良な聖人-kun子だと思ってるわけじゃないだろ? それに泉、Aran、お前らはAsagi達があいつと敵対して、返り討ちにされるのが嫌だから俺達を止めたいだけで、あいつ自身を助けたい訳じゃないだろうが。
だったら、このまま殺せるなら殺せるで、良いだろうが』
『そ、それは……!』
Murakamiの言葉は、泉達の図星を突いていた。二人はAmamiya HirotoだったVandalieuに、同情している。しかし二人が優先するのは、仲間と故郷であるEarth、そして第二の故郷であるOriginだ。
もしVandalieu一人の犠牲でそれら全ての危険性が減るなら、それは止めるべきか?
『思ったより粘る……くっ、さっさと死ねよ! 鼓動と呼吸が止まってんだっ、どうしたって死ぬしかないんだよ、お前は!』
思わず動きを止めたAsagiや赤城、泉とAranに構わず、Miyajiは【Death Scythe】を全力で行使していた。どう言う訳か胸が苦しい気がするが、Vandalieuが予想外にしぶといので力を緩める余裕が無いのだ。
【Out-of-body Experience】してBodyが死ぬのを先延ばしにし、更に他の仲間に状況を説明しているらしいVandalieuに焦りを覚える。
今まで【Death Scythe】を使った時は長くても一分で意識不明に出来たため、今はこれ以外の攻撃手段を持たないMiyajiの焦りは大きかった。
その自分とVandalieuの-sama子を静かに観察するRodcorteの視線にも気がつかない程。
だが、このまま後数分もすれば流石に殺せるはずだ。そのはずだったが、突然Vandalieuから黒いbloodが噴き出した。
『なんだ!?』
『苦しさに耐えきれず自殺……違うっ! あいつっ、blood液その物を動かして、heartの代わりを!?』
【Demon King's Blood】をActivateさせたVandalieuは、噴きだしたblood液を別の場所に開けた傷口から体内に戻して、体内にblood液を循環させる事にした。
『【Death Scythe】の事を聞いてから考えていた対抗策ですけど、まさかこんなに早く使う事に成るとは』
【Death Scythe】は、heartとlungの運動を止めているだけだ。物理的に潰された訳ではないし、blood vesselを詰まらされてもいない。だから、blood液その物を動かせれば問題無い。
流石に完全なcontrolは不可能なのでblood vesselに圧力がかかり毛細blood vesselがscreechを上げ、目や鼻の粘膜からbloodが流れるが、死ぬよりはずっとマシだ。……この姿を見せるZadiris達には悪いが。
後は呼吸だが、これも解決策がある。
工房に置かれていたDeath Ironにする前のインゴットから【Golem Transmutation】で細い筒を二本造る。
その筒を【Telekinesis】で動かし、自分の胸に適度な深さの穴を空ける。
「坊やっ!?」
「Van -samaぁぁっ!?」
『大丈夫です、lungに穴を空けて呼吸するための空気の出入り口を作るだけですから』
鈍い音とbloodが流れる。肋boneの間を貫くのは、中々の激痛である。
後は、残りの鉄や他の金属でポンプ代わりのGolemを作り空気をlungの中に循環させれば、【Death Scythe】でheartとlungを止められていても、生命を維持できる。……問題は、維持できるだけで結局反撃の方法が思いつかない事だが。
それはどうしよう? Konoe Miyajiが自力では無くRodcorteのManaで力を行使していたら、持久戦に持ち込んでも意味は無い気がするのだが。
そう思案していると、何とZadirisが鉄の筒を咥えた。
「空気を送り込めばよいのじゃなっ、任せよっ」
そして彼女は息を慎重に吹き込む。
『ちょっと待ってください、Golemを作るので――』
「そのGolemで力加減を間違えてlungが破裂したらどうするつもりですの!?」
『……その危険性は否定できませんが、何もせず死ぬよりマシかなと』
Tareaの指摘に目線を逸らすVandalieu。実際、Golem人工呼吸装置なんて試した事が無い為、圧力を誤ってlungが破裂する可能性があった。
しかし、それをVandalieuは頼みたくない理由があった。
Vandalieuが見ているDivine Realmの映像の中で、【Death Scythe】のKonoe Miyajiが何か喚いている。その目は、Zadirisを睨みつけていた。
【Danger Sense: Death】にゾッとする反応。
「うぐっ!?」
「あぁっ!」
「っ!」
Zadirisに、Tarea、そしてLucilianoまでが胸を抑えてよろめく。
『これはっ? 我々のlungも止められているとは!』
『いかんっ、敵は全員のlungを止めてMikoの息を断つつもりじゃっ! 儂らはUndeadじゃから死なんが、嬢-chan達は危ない!』
どうやら、Konoe Miyajiは諦める事では無くあくまでもVandalieuを殺す事を選んだようだ。
そのためには、Vandalieu以外の者も殺すつもりらしい。
『手段は選ばずですか』
脂汗を浮かべて苦しむZadiris達に、VandalieuはSpirit Formを伸ばして彼女達と同化する。
『では、こちらも選ばない』
そう言い終わる前に、Killing Intentに歪んだKonoe Miyajiの形相が砕け散った。まるで粉微塵にされたように破片が飛び散り、光の粒子に成って消えていく。
他のReincarnator達が動きを止め、そして映像は消えた。
『Zadiris達に同化して、皆の分も【Abyss】skillでDamageを返したら相手の限界値を超える事が出来たみたいですね』
「かはぁーっ!」
「はひゅ、し、死ぬかと思いましたわっ」
「し、師Artisanっ、一段落ついたのかね? だ、だったらDivine Realmの、Divine Realmの-sama子を教えて……」
『お前-sanは少しは休め!』
『後、Mikoが回復するまで待ちなさい!』
割と容赦無いDataraとNuazaのfistを喰らって、Lucilianoがダウンする。
その-sama子をlungに穴が二つ空き、顔中の粘膜からbloodを垂らしたBodyの回復を促しながら見ていたVandalieuは満足げに頷いた。
これで一人敵を滅ぼした。
他のReincarnatorの-sama子も分かった。まだreincarnationしておらず、殆どは敵。
【Clairvoyance】の天道達也は微妙。自由意思を奪われていたっぽく見えたので、危険だが保留。次何かあったら最優先で殺す。
【Oracle】のEndou Kouyaは何か言っていたが、何を言っていたのか分からないから保留。
Minami Asagiともう一人、maybe【Ifritah】の赤城は【Death Scythe】を止めようとしていた-samaに見えたが、途中でやめたようなので、やはり保留。
『最初から動かなかった人と、ずっと首を横に振ったり両腕で×を作っていた人がいたけど、あれは俺のallyをするつもりなのかな? まあ、ならやや好意的な保留で』
そこまで考えて、ふと気がついた事実があった。
「そう言えば、げほっ! ……classmateを殺すのは初めてでしたね」
【Death Scythe】のKonoe Miyaji。彼は【Gungnir】のKaidou Kanataと違い、同じ学校の顔を知っているclassmateだった。
lungに溜まったbloodを吐き、Vandalieuは大して苦くも無い味と一緒にその事実をtongueの上で転がした。
「あ、【Mind Encroachment】skillで攻撃する手段もありましたね」
《【Abyss】、【God Slayer】、【Rapid Healing】、【-Surpass Limits-】、【Soul Break】、【Grotesque Mind】skillのlevelが上がりました!》