出したくない。
彼女はInstinct的な衝動に対して、reasonをWeapon Equipmentに強固な抵抗を示した。
出す事自体はとても自然な事であり、恥じるべき事ではない。寧ろ、成長するためには不可欠なプロセスの一つであり、それを迎えるのは寧ろ喜ぶべき事の筈だ。
実際仲間達や後輩のPeteやPainも、彼女の世話をする者達も、Vandalieuももうすぐ出そうだと伝えると喜んで祝ってくれた。
だが、あまりにもtimingが悪い。一度出すと暫く、最低でも数か月は動けなくなってしまう。今のconditionでも「動ける」とは言い難いが、完全に動けなくなってしまうのだ。
だから、せめて大問題らしい「Reincarnator」の件や、Noble Orc Empireとの件が落ち着くまではこの段階には進みたくなかったのだ。
「ピギィ~っ」
QuinnはCemetery Beeの巣の、通常の幼虫の数倍の巨体を持つ彼女用にあつらえたroomの中で、悔しげに鳴いた。
「まあまあ、Noble Orcの件はin any case Reincarnatorの件は片が付くまで長くて十数……いや、Reincarnator達によっては、数十年かかりますから、きっと間に合いますよ」
ペロペロと伸ばしたtongueでQuinnを舐めて刺激し、成長を促しながらVandalieuが言う。
そう、Quinnは遂に蛹に成ろうとしているのだ。
蜂は繭を作らないが糸状の繊維を吐いてroomに蓋をし、内部で蛹に成る生き物である。これは蜂のmonstersであるCemetery Beeも変わらない。
そして、Cemetery BeeのQueen蜂がdeath attributeのManaを浴びた卵にPseudo- reincarnationしたQuinnも同じだったようだ。
「ピギッ、ピギピギッピギ」
「蛹で居る期間が心配ですか。普通の蜂よりは長くかかりそうですからね」
普通のCemetery Beeなら、蛹がgrown wingsするまでの期間は一か月くらいだ。Queen蜂に成る幼虫が成った蛹でも、半年ほどでgrown wingsするらしい。
しかし、Pseudo- reincarnationしたQuinnはCemetery Beeとは既に別の種類のmonstersだ。生態は似ているが、全て同じとは限らない。
もしかしたら、一年以上蛹のままと言う事も考えられる。
「だからって、蛹のまま俺が【Insect Binding Technique】で装備する訳にもいきませんし」
「ピギィ……」
蛹の内部は、nerve細胞以外液体状に成っている。そのため、過度な振動に晒されるとそれだけで蛹は死んでしまう。
【Insect Binding Technique】でVandalieuの体内に装備されている間外部から受ける振動は遮断されるが、何かの拍子に体外に出てしまう可能性があった。
それが分っているため、Quinnも渋々だが引き下がる。
そして、意を決したように糸を吐き始めた。
「ピギィ……」
自分で作った糸の蓋に遮られてVandalieuが見えなくなるまで、Quinnの綺麗なcompound eyesには彼が映っていた。
「来られる時は毎日来ますからね」
VandalieuもQuinnのcompound eyesを見つめて、安心させるように言った。完全に蓋で覆われた後、ふと横を見る。
ヴヴヴヴヴヴヴ。
そこではCemetery Bee達がGiantな青虫に似た芋虫をchinで咀嚼し、ミンチに成った肉を丸めて団子を作っている最中だった。どうやら、Vandalieuに出すお茶菓子の代わりを作っているようだ。
「ここで火を使う訳には行きませんよね……」
『新生Sauron Duke軍』肉の団子を出すよりは、Cemetery Bee達も考慮しているのだろうか。単に、Quinnが既に食べきったので無くなっただけかもしれないが。
翌日にSauron領行きを控えたその日のnight、Vandalieuは工房にZadiris、Tarea、Datara、Luciliano、そしてChurch of VidaのTemple Head、LichのNuazaに集まってもらっていた。
「それで、Legionがchunk of meat -chanから変化した要因と、life goldと消える銀の検証を始めます」
議題はこれである。
Legion本人も何故自分達がchunk of meat -chanをBodyとして、それも一つの生命体としてanother worldからreincarnationしたのかaccurateには覚えていなかった。
だが、一体何故DarciaのBodyの失敗作である生きるchunk of meatにreincarnationしたのかを解き明かせば、Vandalieuの悲願である彼女のrevivalに繋がるかもしれない。
「まあ、そこまでの成果は期待していませんけど」
「確かに……もし可能だったとしても、Legionが増えるだけの可能性もあるしの」
『それより、肝心の「れぎおん」っちゅう新入りは何処なんじゃ? 謎の銀を食った時の話を聞きたかったんじゃが』
広い地下工房にLegionの姿は無かった。今は、彼女(?)がchunk of meat -chanだった時に入っていた空のプールがあるだけだ。
「Legionは初めてのlevellingで疲れている-samaでね、同じくlevelling帰りのPauvinaとPrivelと寝ているよ」
Lucilianoが遠い目をして答える。
『初めて? おりじんっちゅうanother worldじゃ、派手に暴れまわって精鋭のSoldierを百人以上blood祭りにあげ、another worldのChampionを何人も殺した猛者達じゃと聞いとるが……儂のMemory違いじゃったか?』
そう不可解そうに頭を掻くDataraに、今度はZadirisが答える。
「何でも、Originと言うworldにもlevelやJob、Rankやskill、そしてExperience Pointが無いらしいのじゃよ。じゃから、幾ら敵を殺してもExperience Pointも手に入らんし、当然levelも上がらないそうじゃ」
『なんじゃとっ!? そんな面妖な場所が『Earth』以外にもあるとは意外じゃのう』
Lambdaでは物心つく頃には、誰もがlevelやJob、skill、そしてExperience Pointの概念を知っている。文字を読めない未就学の者や、愚かなGoblinやOrcですらだ。
あらゆる存在が唱える事が出来るNo-Attribute Magicの【Status】によって視る事が出来る自身のStatusは、Vandalieuの-samaに漢字や数字が読める者にはそのまま表示される。平仮名と片仮名しか読めない者には、自動的に漢字では無く平仮名や片仮名だけで表示される。
文字が読めない者には音声で説明されるし、言葉を知らない若しくは語彙が非常に少ない者も「何となく分かる」というとてもあやふやな感覚で何故か理解できるらしい。
流石に知能が動物並やそれ以下のmonstersまで行くと、Instinct的に他者を喰らう事で強く成れる事を理解しているだけに留まるが。
逆に、獣や蟲のmonstersですらInstinct的にRank、levelやExperience Pointの概念を理解している。
それ程までにLambdaでは一般的な概念なのだ。
それが無いworldと言うと、Datara達には想像がしにくいらしい。
「まあ、俺はlevelやExperience Pointが存在するworldとしないworld、どちらが多いのか分かりませんが、少なくともEarthとOriginは無い方のworldでした。
それで、LegionはExperience Pointを得る感覚やskillを獲得した事を告げるアナウンスを初めて、そして立て続けに経験して疲れてしまったそうです」
『Experience Point酔いですね。私も、生きていた時はそれで恥ずかしい思いをした事があります』
「ああ、戦闘系Jobに就く者なら、誰もが一度は経験する事じゃ」
Experience Pointは獲得すると、ある種の快感を覚える。Vandalieuの感覚では、充実感や達成感に近いと覚えていた。
そしてその快感は、あまりに大量のExperience Pointを得ると高揚感へと変化する。ランナーズハイや、徹night明けの妙に高いtension等のconditionに成ってしまうのだ。
それでNuazaやZadirisは若い頃に苦労したらしい。
『初めての実戦でExperience Point酔いになり、Fatigue感が飛んでそのままweak monsters相手に暴れまわったのですが……Experience Point酔いが覚めると今度は飛んで行ったFatigue感が戻ってきて、へばってしまいました。同年代のCleric-warriorの前で、随分恥をかきました』
「儂も似たようなものじゃな。初めて実戦を経験する頃は、何を倒しても大量のExperience Pointが入るからの」
「私も覚えがありますね。はしゃぎ回る程ではありませんでしたけど」
「おや? -kunは戦闘系Jobには就いていないのに、Experience Point酔いの経験があるのかね?」
Nuazaの思い出話にnod Zadirisに続いて口を開くTarea。彼女はProduction related Jobにしか就いていないはずだがと、聞き返すLuciliano。だが、疑問はすぐ解けた。
「Van -samaがlevellingに連れて行ってくださいましたもの。その時に経験しましたわ」
RitaやSalire、元Red Wolf Knight団のLiving Armorを着て行ったTalosheimの非戦闘員を対象にしたlevellingで、TareaはRank5のGhoul High ArtisanにRank upした。その際、Experience Point酔いも地味に経験していたらしい。
「ああ、あの時。じゃあ、Talosheimの国民は皆Experience Point酔いを経験している訳ですね」
『いや、儂は経験ないがの』
各種職人やFarmerなどのProduction relatedとされるJobは、Experience Pointを獲得するpaceが緩やかに成る。Production related JobはそのJobに関連する作業を行う事でExperience Pointを稼ぐ。そのため、levelやskillが低い時期に大量のExperience Pointが稼げる高度な作業を行う事は出来ないからだ。
そのため本来はExperience Point酔いを体験しない。Talosheimの国民はVandalieuが通常なら行わない、高度なlevellingを行った為希少な例外なのである。
しかし Dataraのような職人のUndead Giantは、既に鎚を振るえば並のSoldierよりもずっと強いので、levellingの対象外だったのだ。
『まあ、経験したい訳ではないが。それより本題は検証じゃろう? 話題を逸らして済まなんだの』
Vandalieuが「じゃあ、Noble Orc Empireの件が落ち着いたらやります?」と言い出しそうなsignを察したのか、Dataraはそう言って自ら逸らした話題を修正しようとした。
彼としてはlevelやRankを上げるよりも、femaleだけで構成されたGhoulの職能班と工房で仕事をしていたいのである。
「あ、はい。まずchunk of meat -chanがLegionに成った原因ですが、maybe神の御業です。以上」
「師Artisan、ざっくりとし過ぎだろう。まあ、複数のGodsが動いた結果らしいが」
LegionのStatusには、三柱の神's Divine Protectionが表記されていた。
VidaやAldaと同じく、Lambdaの始まりの十一神。『God of Space and Creation』Zuruwarn、『Magic God of Time and Arts』Ricklent、そして『God of Origin』's Divine Protectionだ。
ZuruwarnとRicklentはDemon King Guduranis率いるDemon King Armyとの戦い以降、力を取り戻す為眠りについていると言うのが一般的な認識だったが、意外な事に活発に活動しているらしい。
Zuruwarnはlegendによるとanother world『EARTH』からZakkartやBellwood達Championを召喚する際、spaceを操ってworldを繋ぐ門を開いたとされている。その彼が動いたのなら、another world『Origin』に存在していたLegionの前世である『The 8th Guidance』と【Gazer】の魂をこのLambdaに連れて来る事も可能だろう。
Ricklentもtime attributeと並んで術を司る神で、全てのMage guildにIdol Statueやreliefが祭られている。きっと何らかの術を用いてZuruwarnを援護したのだろう。
だが、「God of Origin」が謎である。
「師Artisan、God of Originとはどんな存在なのかね? これまでの師Artisanの話では、全く聞かなかったのだが」
『それどころか、Mikoは『Earth』と『Origin』には神は存在しないかも知れないと、以前私に語っておられました』
好奇心と困惑が混じった顔つきのLucilianoとNuazaが尋ねるが、Vandalieuも首を傾げるばかりだ。
「俺も知りません。俺自身はNuazaに言った通り実在しない、少なくともこのworldのGodsの-samaに人格や独自の意思を持つ神は居ないと思っていましたから」
VandalieuはEarthに居た頃は、あまり信心深い方では無かった。だが、無神論者でも無かった。
何となく、超自然的だったり超越的だったりする、Humanのwisdomや認識の及ばない神的な存在が何処かに居るのだろうと、漠然と考えていただけだ。
その後Earthで死に、Rodcorteの存在を知り「神は存在する」と分かった訳だが。だが、それで逆にEarthやOriginに独自の神が存在するのか疑わしくなった。
Rodcorteの-samaに人格を持つ神がEarthやOriginに存在するなら、もっと奇跡やら悲劇やらが起こっているはずだと思ったからだ。
特にOriginには科学だけではなくmagicが実在する。霊魂の存在も、VandalieuがDeath-Attribute Magicに目覚める以前から、利用するという事は不可能でも実在する事だけは分っていた。
しかし、Originでも神の存在だけは実在する根拠を発見できなかったらしい。
宗教的な存在の有無はさて置き、magic的には存在しているとした方が-sama々な事象の説明が可能であるため、存在していると思われると、専門書に小さく記載されているだけだった。
「だからもしかしたら居ないのかと。霊魂のCircle of ReincarnationはRodcorteが司っている筈でしたし。しかし、今回実在する事がはっきりした訳ですね」
world的な大発見である。Originの人々にそれを知らせる手段が無いけれど。
「それも、どうやら坊やに関心を持っている-samaじゃな」
「ありがたい事です」
LegionはZuruwarnとRicklentから何のmessageも受け取っていないし、そもそも助けられたMemoryも無い。各々死んだ直後、次に目覚めたらあのconditionに成っていた。
だが、ZuruwarnとRicklentがLegionをVandalieuの元に態々reincarnationさせた理由は他に思い浮かばない。
何故allyしてくれるのかaccurateな意図は不明だが……Mythで語られているよりも二柱の神はVidaに対して友好的だったのか、自分達はAldaでは無くVida側を支持するとの意思表示なのか。
そしてLambdaのGodsにGod of Originが協力し、Legionにblessingsまで与えた理由は更に不可解だ。
何せどんな存在なのかもVandalieuの知識に無い神だ。もし何かの奇跡でVandalieuを気に入ったのなら、彼がOriginで存命中に、若しくはUndead Transformationした後でも何かあっても良い気がする。
そこまでconjectureして、Vandalieuは首を横に振った。
「まあ、Kami-samaにはKami-samaの都合があるのでしょうし、God of Originに関しては検証する材料が足りないので一先ず置いて置きましょう」
「確かに、どんなDivinityの神か分からんのではしかたないの。Legionが受けたblessingsの効果が分かれば、多少は手がかりに成るのじゃろうが」
そう言って、God of Originについては暫く放置する事にした。かの神が何故手を貸してくれたのかは謎だ。Zuruwarnが交渉か何かしてくれたのかもしれないし、単にRodcorteが嫌いなだけかもしれない。
Rodcorteは各worldのMythやlegendに登場しない、Circle of Reincarnationを司るだけの神だ。そのため、各worldのGodsとの関係性が分からないのだ。
少なくとも、FidirgやMerrebeveilから話を聞く限り、LambdaのGods……Vida側ではあまり歓迎されていないらしいが。
『詳しくは言えませんが、糞です』
『屑です』
『ゲロ以下ッス』
『詳しくは語れませんが、私のtentacleが届く所に存在するなら絞め殺したい。そんな神です』
それぞれFidirgとMerrebeveilにRodcorteについてVandalieuが質問した時の答えである。どうやら、昔にも何かやらかしたらしい。
魂やCircle of Reincarnationの事を神としての立場からVandalieuに過去の出来事を詳しく語れないFidirgとMerrebeveilだったが、その印象は十分伝わっていた。
「とりあえず、Church of VidaにZuruwarnとRicklentのIdol Statueはありますよね?」
『certainlyです、Mikoよ』
現在Nuazaが取り仕切っているChurch of Vidaでは、Vida以外の神も祭られている。Vidaに重傷を負わせたGod of Law and Life AldaやそのSubordinate God、Alda側に着いたとされる他の神のSubordinate GodのIdol Statueは撤去されたが、それ以外の神のIdol Statueはそのまま祭られている。
ZuruwarnとRicklentのIdol Statueもcertainly祭られていた。
「じゃあ、これからはtempleに行く時は拝むようにしましょう。Lambdaでは祈りは届くらしいですし」
流石に神が全て把握しているとは思えないが。いつかOracleっぽい物が送られてくるかもしれない。
「では、次はLegionの元に成ったchunk of meat -chanと、life gold、そして消える銀だな。
とりあえず、現時点でわかっている事だが――」
Lucilianoがそれぞれについて分っている事を発表する。
「まずchunk of meat -chanに関してだが、恐らくalchemistが創り出そうとする三大奥義の内一つ。『base form of life』で在ると思われる」
「……それは何でしょうか?」
「……創り出した本人が理解していないとは嘆かわしいぞ、師Artisan」
Goddess謹製のResurrection Deviceを直せないかと魔改造して動かしたら、出来た。そんな感覚であるVandalieuに、Lucilianoは残念なものを見る眼差しを向ける。
「三大奥義とは、神に至らなければ不可能とされるAlchemyの至高の技だな。Godsが生命を新たに創り出す時に使った物らしい。別名、『魂無き生命』だ」
「Van -samaがDarciaお義母-samaのBodyにと、創り出そうとしているHomunculusより凄いのですの?」
勝手にDarciaを義母と呼ぶTareaの言葉に、Lucilianoはうむとnod。
「Homunculusは『人造の生命』。本来なら、『base form of life』を創り出すための前の段階に位置付けられている。
Homunculusも『魂無き生命』である事は同じだが、作成後の汎用性が異なる。Homunculusは精々人造Humanにしかならないが、『base form of life』は原理上ありとあらゆる生命体に変化させる事が可能とされているのだよ。
鼠から、True Dragon Godやgiantまで、思いのままらしい」
『なんと龍までかっ! Borkusも倒せるのは精々竜止まりだというのに……Mikoよ、お前-sanエライもんを作りだしたもんじゃ。って、何で寝ておる?』
「いや、shockのあまり朽木の-samaにぶっ倒れかけただけじゃ」
Darcia revivalの為にHomunculusの作成も視野に入れていたVandalieuとしては、Homunculusの一段上の存在を自分が創り出していた事がshockだったらしい。ふらりと倒れかけたところを、Zadirisが抱きとめた。
何故奥義が出来て奥義の一歩手前のHomunculusが出来ないのか。Vandalieuにとっては不条理極まりない。
VandalieuはZadirisに抱き止められた姿勢のままLucilianoに質問した。
「新しくchunk of meat -chanを作ったとして、それにkaa-sanの霊を入れてrevivalさせる事は可能でしょうか?」
LucilianoはVandalieuでは無くZadirisに視線を向けた。
「Zadiris、師Artisanをしっかり抱き止めておいてくれたまえ。
師Artisan、原理的には可能だ。可能だが、今の師Artisanでは不可能だろう。あのchunk of meat -chan……『base form of life』は完成した後も、周囲の魂を全く受け入れなかった。師Artisanも、何回か霊を入れてみようと試した事があるのだろう?
だがそれが不可能だったと言う事は、恐らく創り出すのも利用するのにも、神に至るか至高のAlchemyの技を身に付けなければ不可能だろう」
因みに、既にVandalieuにとって「会いに行けるKami-sama」であるFidirgやMerrebeveilに協力を仰ぐと言う手は、後日確認したら予想通り無理だった。それぞれLizardman、tentacleの集合体、に成っても良いなら可能らしいが。
「Van -sama、御労しいっ……」
「……のう、Tareaよ。坊やを儂ごと抱きしめるのは止めい」
たとえると、蒸気機関を作ろうとして何故か核Fusion炉を作ってしまったようなconditionらしい。
成果としては凄いのだが、オーバーテクノロジー過ぎて作っても利用ができない。
「まあ、今回の-samaに位の高い神が動かない限り勝手に生物に成る事は無いだろうから、危険性は無いだろう」
現状、毒にも薬にもならないようだ。
『……では、気を取り直してlife goldと消える銀について』
『【Out-of-body Experience】しておる時点で、あまり気を取り直せてはおらんようじゃが……とりあえず、Blacksmith師として儂が言えるのは、あれはどちらも金属であって金属では無い何かと言う事だけじゃ』
ゆらりとbody partから出てきたVandalieuのSpirit Formに、Dataraが報告する。
『life goldの方は形を変えるだけなら簡単じゃ。粘土のように柔らかいからの。じゃが、熱しようが冷やそうが柔らかいままで、しかも動き回って形も常に変わりおる。鎚で打とうとすると逃げる始末じゃ』
以前Vandalieuが鉄と銅から作りだした、熱する程硬くなる液体金属Death IronとHell Copperと違い、life goldの加工方法にDataraは苦戦していた。
温度のimpactを全く受けない、粘菌のようなlife goldは型に嵌めても意味が無く、鎚で打っても鍛造出来ない。
Tareaもlife goldを加工しようと奮闘していた。
「他のmonstersの素材と混ぜて塗料や接着剤にしようとしたのですけど、全く駄目でしたわ。何と混ぜても動き回るのを止めようとしないのですもの。
ただ、Dataraがlife goldを食べた時に面白い事が分りましたわ」
『これを加工法と言っていいかは、分からんがのう』
Tareaに指されたDataraが、微妙な顔つきで口を大きく開いて歯を剥き出しにする。そこには、太く白い歯に混じって数本の金歯が混じっていた。
「もしかしてその金歯は、life goldですか?」
『おお、元気に成ったな。うむ、口に入れたら勝手に儂の歯に成っての。その後は勝手に動かず、固まったままじゃ』
気力を取り戻したVandalieuが見てみると、Dataraの金歯は本人が言ったように動かず歯の形に固まったままだった。
『この金歯が出来てからbody partの調子が良くての。Vitalityが伸びて、まるで若返った-samaな気分じゃよ』
「この事からlife goldは通常の金属と同じ用途では使えず、Undeadに直接使う事が食べる以外の用途だと思われますわ」
生きている金属『life gold』は、Undeadなど生きていない存在の欠けている部分を補う事が出来る金属であるようだ。しかも、Vitalityを伸ばしUndeadの健康conditionも向上するらしい。
「Undeadに使えるなら、Living ArmorやCursed Weaponsになら使えるのではないかの。RitaやSalireに試してやったらどうじゃ? accessoryにもなって一石二鳥じゃろう」
「確かに。今度試してみましょう。ところでLuciliano、このlife goldもAlchemyの奥義か何かでしょうか?」
まだZadirisの腕の中のVandalieuに問われたLucilianoは、「さぁ、分からんよ」と首を横に振った。
「魂を宿していない生命体であるため、『base form of life』に近い存在ではあるのだろうが、私もAlchemyが専門では無いからね。……仮に専門家に聞いても、師Artisanが創り出す謎物質について知っているとも思えないが。
尤も、消える銀の方は奥義の一つ『霊の原形』だろう」
Legionだけがその存在に気がつき、Absorptionする事が出来た消える銀。その結果から、Lucilianoは『霊の原形』であるとconjectureしていた。
Age of Gods Era、Godsは『霊の原形』を使い自らのSpirit CloneやFamiliar SpiritをCreationし、HumanやElf、Dwarfを産みだす時にも『base form of life』でBodyを、『霊の原形』でMentalを創りだしたとMythには記されている。
「ただ、Alchemyの三大奥義で最も謎に包まれているのが『霊の原形』だ。殆どのMageは、概念上の存在で実在はしないと考えている程で、Mythにもlegendにも具体的な記述は一切無い。
だからaccurateなconjectureは出来ないが、Legionは『base form of life』であるchunk of meat -chanと『霊の原形』である消える銀が合わさった物に、ZuruwarnとRicklentがanother world Originから連れて来た魂達をブチ込んだ結果誕生した生命体なのだろう」
っと、言う事らしい。Lucilianoにとってもオーバーテクノロジー過ぎて、そんなconjectureしか出来なかったらしい。
「Kami-samaのやる事にしては、雑な気がしますわね。どうせなら、一人一人別れたconditionでHumanか何かとしてreincarnationさせれば良かったでしょうに」
『まあまあ、そう言わずに。何か事情か、出来ない訳があったのでしょう。それにもしかしたら、あの異形の姿でなければ成しえない、何かがあるのかもしれません』
もしZuruwarnやRicklentが聞いていたらTareaの言葉にいじけ、Nuazaのfollowにthumb's upで返した事だろう。
「そうなると、銀の使い方が分りませんね。とりあえず、life goldと同じようにUndeadに使ってみましょう。Legionに持ってもらわないと見失うので、試すのは後に成りますけど」
『それでMikoよ、名称はどうするのですか?』
「では、『spirit silver』と命名しましょう」
消える銀や謎の銀改め、『spirit silver』。Alchemyの三大奥義の一つらしいが、銀から変化させるとVandalieuやUndeadも見失うので、利用法を見つけるにもLegionの協力が必要な、やや面倒な金属である。
「ところで、Alchemyの奥義の残り一つは何ですか?」
「神の金属、OrichalcumのCreationだよ。Talosheimでは師Artisan達のお蔭で、ややありがたみが薄いがね」
「Dragon型のOrichalcum Golem一体分あるからのぉ。儂の杖に使われておるし」
『それに、MikoがDemon King Fragmentで、Orichalcumに匹敵する癖に加工しやすい素材を幾らでも生やせるんじゃ。ありがたみが薄くて当然じゃろう』
「改めて考えると、私達本当に恵まれていますわね」
検証も、これ以上は詳しくは出来ないという意味で終わり、話題が雑談へと移り始める。
このまま暫く雑談に興じたら、「また明日」と解散するのだろう。
そんな時に、Vandalieuはふと頭上から視線を感じて天井を仰ぎ見た。
この地下工房の天井は、建造物としては格別に高い。だが、その天井より低い位置に、不自然に歪んだ『穴』が開いているようにVandalieuには見えた。
「あれは……」
『穴』から見えたのは、見覚えがある光るGiantな人型と、その前に並んでいる見覚えがあるような、無いような人shadowが十数人。
Legionから聞いた『Bravers』の死んだmemberと特徴が一致する。……死んで無い筈の連中も何故か混じっているが。
それはin any case、緊急事態である。
「坊や、誰かの霊でもそこに居るのかの?」
Rodcorteとreincarnation前のReincarnator達が何をするつもりなのか、何が出来るのか分からないし【Danger Sense: Death】にも反応は無いが、とりあえず皆を下げるべきだろうか。
「皆、下がって――」
heartを鷲掴みにされるような苦しさと急激な【Danger Sense: Death】の反応を覚えたと同時に、Vandalieuは彼等が何をするつもりなのか理解した。
宣戦布告や話し合いの呼びかけ、偵察の為では無い。
攻撃だ。
・素材解説:life gold
death attributeのManaを浴びて黄金から変化した、生きている金属。Alchemyの三大奥義の一つ、『base form of life』に近い存在。
life gold単体では黄金と同じ重さの粘菌のような存在でしか無く、生きてはいるが戦闘Abilityも増殖もしない。黄金が蒸発するような高温や、絶対零度に晒されなければ活動を続けるが、活動しているだけで何が出来る訳でも無い。
また、意思もegoも何も無い。霊を宿らせる事も不可能である。
まず、用途は食べる事。食べる事で僅かながらExperience Pointが得られる。また、Ability Valuesの内Vitalityを若干成長させる。
更にVitalityを補う力を持っており、健康なchildや若者には効果は表れないが、不健康な生物や不完全なUndeadのconditionを改善してくれる。
欠けて、若しくは根元から無い歯、損傷が激しい臓器、bone等を十分な量を摂取すれば補う事が出来る。又、Vigor剤としての効果もある。
monstersがこの金属を摂取するとRank up時に特殊な進化を遂げる場合がある。
口の無いmonsters(Cursed Weapons、Living Armor)の場合、body partに直接触れるだけでも効果が表れる場合がある。