『それ』は意識が芽生えたと同時に、panicに陥った。
自分のconditionも、ここが何処かも、そもそも『自分』とは何なのかも分からなかった。
(私は、私、俺、あたし、Jack……わたおあわジャはどれ!?)
混乱したまま動き出そうとすると、思った通りにbody partを動かせない。
(何だ? なんだ? どうした? 何故?)
混乱から錯乱に悪化しかけた「それ」が、滅茶苦茶にbody partを動かし始める。その一つが、何時の間にか銀色の何かに触れていた。
その何かに触れていると、不思議と「それ」は安らぎと充足、そして幸福感を覚えた。
(そうだ、私は、俺は、あたしは、グルゥ……どうでも良い)
その幸福感の中で、「それ」はSelfに関する分析を放棄した。integrationも、分離も、放棄する。
今のconditionが「それ」にとって通常であると、認識する。
そんな事より、「それ」は速く動きたかった。
『『『オォォォ……』』』
何故なら、ここは「それ」が夢見た場所だから。どんな楽園よりも行きたいと、あの夢で欲した場所だからだ。
(早く、あの方の元に!)
狂おしい衝動にthrust動かされるまま、chunk of meat -chanと呼ばれていた「それ」はmidairに浮かびあがると、次の瞬間消えてしまった。
『Vandalieu、起きて。まだnightだけど、お客-sanよ』
小さなboneのfragmentに宿る母、Darciaの霊に起こされたVandalieuは目を覚ました。
「お客-san、ですか?」
普通の少年とは言い難いVandalieuだが、それでもBody的には九ageのchildだ。そのため平時では睡眠時間を多めに確保している。
皆それを知っているので緊急事態でもなければ真night中に訪ねてくる相手はいないはずだがと、首を傾げながら周囲を見回すと、Darciaの言う「お客-san」に気がつき、思わず硬直した。
何故なら、「それ」はVandalieuの今までの人生の中で、最も奇妙な姿をしていたからだ。
「それ」はmidairに浮かんでいて、全体的には球体の形状をしていた。
ただcountlessの人の四肢や胴体、頭部、獣の頭が混じっていて、それが球体に近い形状を絡まり合って成しているという、尋常ではない姿だった。
色はpinkと言うよりも肉色で、skinもfurもeyeballすら無いように見える。
全体的にはfemale的な部位が多いが、幾つかmale的な部位もあり、数カ所だが動物的な部分もある。
形容するなら、「Insanityの芸術家が、肉色の粘土で作った幾つもの人形を捏ね合わせて作った直径三meter程の球体」といったところか。
この王城が元は大柄なmaleなら三meterに達するGiant raceの国の物でなければ、天井につっかえていた事だろう。
「それ」の幾つもあるeyeballの無い輪郭だけの顔に、Vandalieuは尋ねた。
「初めまして。すみませんが、どちら-samaでしょうか?」
最初は驚いたが、彼はすぐ「それ」に慣れた。自分でも頭や手足を増やしたりするし、複数の死体を組み合わせて作ったZombie GIANTとも似ている。tentacleが束に成ってScyllaの形を模している『Evil God of Slime and Tentacles』Merrebeveilと比べれば、驚くほどではないと思ったからだ。
『『『お゛ぉぉぉ……!』』』
しかし、そう尋ねたら「それ」はmidairに浮かんだまま暫し硬直した後、輪郭だけの顔に裂け目のような口を作って嘆きの表情を器用に作って見せる。
そして幾つもある腕で頭を抱えたり、脚をばたばたと振り回したり、胴体をよじったりしてemotionsを表現する。
どうやら傷つけてしまったらしい。
『Vandalieu、あの子と言うかあの子達と言うか迷うけど、あの子達、貴方の事が大好きみたいなのよ。さっき、やっと逢えたって……』
「言っていたのですか?」
『ううん、オォォって言うだけだったけど、そんな雰囲気だったわ』
「なるほど」
根拠がフィーリングだけという、何とも頼りないDarciaの通訳をVandalieuは信じた。何故ならkaa-sanの言う事だからである。
それに、「それ」が元は何であるかも気がついたためDarciaと気持ちが通じ合ってもおかしくないと思ったからだ。
「体はchunk of meat -chanの-samaですが、中に宿った? 生じた? うーん、分からない。すっかり魂が定着しているようですけど」
originallyはVidaの遺産であるResurrection DeviceでDarciaのBodyを作ろうとしてできた、失敗作であるchunk of meat -chan。それに何かが宿ったのが、目の前にいる「それ」だろう。
そう考えると、Darciaと「それ」は一卵性の双子のような存在と言えるかもしれない。
しかし、問題は宿ったのが何かという点だ。
『『『おぉぉぉ……あ゛ぁぁぁ……』』』
嘆き震えている「それ」に宿っている魂。chunk of meat -chanは魂の無い生命体だったため、自然発生したとは考えにくい。
そうなるとVandalieuの周囲に漂う霊が勝手に入った可能性が考えられるが、その-sama子は無い。霊の数は減っていないし、そんな事が可能ならもっと早く起きているはずだ。chunk of meat -chanは一年以上前からあったのだから。
では一体何者なのか?
そう思考していたVandalieuだが、Darciaの声でそれを中断した。
『コラっ、ダメでしょ! 女の子を泣かしたまま放っておくなんて!』
嘆き続けているchunk of meat -chanを放置している事について、叱られてしまった。
chunk of meat -chanを女の子に分類していいのかどうか、疑問を覚え無い訳では無かった。しかし、自分に好意を持っている相手を傷つけ放置しているのは事実である。
(分析は後回しで良いか)
Vandalieuはベッドから降りて「それ」に話しかけた。
「冷たい事を言ってしまい、すみません。悲しませるつもりはありませんでした。
もし良ければ、俺と友達に成ってくれませんか?」
素直に謝って、手を差し出す。すると、「それ」は宙に浮いたまま動きを一旦止めて硬直した。そして次の瞬間、何本もの腕や脚が伸びて来て、手を素通りしてVandalieuは絡め取られる-samaに「それ」に抱き寄せられた。
見ようによっては、eating preyされそうになっていると思うかもしれない。
『『『あああっ、うああああっ』』』
『仲直り出来て良かったわね』
しかし『それ』に敵意が無い事は分かりきっている。抱き寄せられたVandalieuも、苦しさは覚え無かった。
(全体的にプニムチっとして、後場所によってはムキっとした抱かれ心地で、体温はちょっと低め?)
Rodcorteは掠り傷を負った手を、信じられないと言う気持ちで見つめていた。
その手の中にはReincarnatorである【Gazer】Minuma Hitomiと、Vandalieuに対する人質等にして役立てるつもりだった『The 8th Guidance』のmemberの魂があるはずだった。
それをGod of Originと、Lambdaの『God of Space and Creation』Zuruwarn、『Magic God of Time and Arts』Ricklentによって邪魔されてしまった。
RodcorteがZuruwarnから受けた傷は、ただの掠り傷だ。こうしている間にも治ってしまう程小さな傷である。
しかし、Rodcorteは今まで他のDivinityから攻撃を受けた事が無かった。各worldから離れてCircle of Reincarnationのみを司る彼は、各worldのHuman達だけでは無くGodsやそれと敵対する存在とも関わらずに来た。
そのため、Rodcorteには痛みや暴力に対する免疫が無い。だから思わず怯んで【Gazer】達の魂を奪われてしまったのだが、今Rodcorteを動揺させているのはその衝撃では無かった。
『何故God of Originに、ZuruwarnとRicklentが私の邪魔を……いや、Vandalieuのallyをするのだ?』
Zuruwarn達が聞いたら「自覚が無いのか!?」と驚愕するだろうが、Rodcorteは本当に驚いていた。
彼自身は、昔も今もただ自分の領分で自分の仕事をFirstに行動してきただけのつもりだったからだ。
例外はanother worldからのReincarnatorを送り込んだ事だが、それを言うならVandalieu本人もReincarnatorの一人だ。Zuruwarn達がallyする理由は無いと、Rodcorteは考えていた。
『だというのに、先程のZuruwarn達の妨害は何だ? 恐らくGod of Originを動かしたのも、奴だ。God of OriginはEarthの神と同じようにcountlessのDivinityに枝分かれしている群神。自らたった一つの目的の為に動く事は、それこそworldの存続がかかった時以外あり得ない』
かつてanother world『EARTH』からChampionを召喚する際も、まずZuruwarnがEARTHの神と交渉を纏めていた。間違いない。
だが経験があっても、Demon Kingとの戦いで負ったDamageから回復しきっていないconditionで交渉を纏めるのは、簡単では無かったはずだ。
すると相当以前からZuruwarnは動いていたという事に成る。少なくとも、年単位で以前から交渉に当たっていたはずだ。
『Zuruwarnは、LambdaのGodsは一体何時Vandalieuの存在に気がついたのだ? いや、それよりも何故彼等は私の妨害を……敵対しようとするのだ?』
RodcorteにとってLambdaのGodsは、『God of Law and Life』Alda以外眠りについているはずだった。それが二柱とはいえ、活発に動いていた事も意外だったが、敵対されるのは更に意外だった。
何故ならRodcorteと敵対しても、得る物は何も無い筈だからだ。
彼はDemon Kingと違ってLambdaを侵略しようとは考えないし、破滅も望んでいない。逆にdevelopmentを望んでいる。そう言う点では、広義の意味ではallyと言えるはずだ。
実際、今もこうしてReincarnator達を送り込み、developmentを促そうとしているのだから。
それにRodcorteを打倒したところで、得られるのはLambdaのHuman達の魂の運行を司るCircle of Reincarnation systemの停止だけだ。
そうなれば何れLambdaはmonstersが跋扈するなか、Vida's New Racesだけが生き残るworldに成るだろう。
まさか、それが狙いなのか?
『そうか、Zuruwarn達は私のCircle of Reincarnation systemよりも、Vidaが作り上げた彼女のCircle of Reincarnation systemを選んだのか。だからHumanやElf、DwarfであってもVida式Circle of Reincarnation systemにGuiding Vandalieuのallyをしているのか!』
まさかVidaにallyをする大物の神が、Evil God (M)とFusionして狂ったZantark以外に存在するとは思わなかったRodcorteは、自らのconjectureに驚きつつも納得した。それならばあり得ると。
そして強い危機感を覚えた。もしLambda全体でVida式Circle of Reincarnation systemが選ばれ、彼のsystemが基盤を失えば、Rodcorteは力の供給源を一つ失う。
問題はそれだけに留まらない。VidaがrevivalしてVida式Circle of Reincarnation systemの完成度の向上に成功したとしたら、Zuruwarnはsystemの模倣法をGod of Originにも教えるかもしれない。
Zuruwarnがどうやって交渉を纏めたかは知らないが、協力した以上God of OriginがRodcorteに隔意を持っている事は確実だ。その隔意が大きければ、Circle of Reincarnation systemを替えるだろう。
その動きはLambdaやOrigin以外にも広がってしまうかもしれない。
believerのいない、各worldのHuman達に認知されてもいないRodcorteにとってCircle of Reincarnationを司るworldが減る事は死活問題だ。
Vida式Circle of Reincarnation systemを選ぶworldが増えれば、最悪Rodcorteは他の零落したGodsのように妖怪や妖精、悪魔に堕ちる事も出来ず、霞の如く消え去ってしまう。
一つや二つなら問題無い。誕生したばかりのworldを探し、そのworldのCircle of Reincarnationを司る権利を手に入れれば良いだけだ。だがworldとはそう頻繁に誕生する物ではないし、確実にCircle of Reincarnationを司る権利を手に入れられる訳ではない。
『そうなるまえに、やはり何としてもVandalieuを亡き者にしなければ!』
『……いや、だから何故その結論しかないんだよ。この上司、思考が硬直しすぎ』
『私なら謝罪して他のworldにVida式Circle of Reincarnation systemを広めない-samaにしてくださいとお願いして、OriginとLambdaはきっぱり諦めるけどね』
『何事も損切り出来ないと、取り返しがつかない所まで行っちゃうしね。あたしも二人に賛成』
結論を出したRodcorteが視線を下げると、そこには自らのFamiliar Spiritに昇華した【Calculation】のMachida Aranと【Inspector】のShimada Izumi。そして二人の近くにいた【Noah】のMao Smith。
他につい先ほど死んだ十数人のReincarnator達がいた。彼等には既に、三度目の人生が待っている事を「情報を一瞬で伝達する」方法で教えてある。
『お前達……私のFamiliar Spiritである以上、私の零落は-kun達の零落なのだが』
少しは危機感を持ってほしいとRodcorteがそう言うと、泉とAranは半眼で見つめ返すだけだ。
仕方ないので、RodcorteはMaoも含めたReincarnator達を見回す。
『……随分と一度に死んだものだ』
発せられた感想に、Reincarnator達は天道やKouyaのように顔を顰めるか、Murakami達のように気まずそうに目を逸らすかに分かれた。
死にたくて死んだわけではないが、自分達に命と力を与えたRodcorteにそう言われると強く出難いようだ。
『それに、思いの外根の深い対立をしたようだな。まだ本番前、チュートリアルのようなものだと言うのに……』
だが、流石にその言葉はReincarnator達も聞き捨てならなかったらしい。
『だったら最初から教えてくれ!』
『そうですよーっ! 次があるって知っていれば、あたし達だってあんな無茶しませんでした!』
【Chronos】Murakami Junpeiと【Venus】Tsuchiya Kanakoが抗議する。何人かのReincarnatorが「どうだかな」と胡乱気な視線で二人を見るが、彼等に動じた-sama子は無い。
二人共、Emotionalにはタフなようだ。
『俺も同意見だ』
そう言ったのは、先程までMurakami Junpeiと口論をしていた【Mage Masher】Minami Asagiだ。Bodyが無いので幾ら殴り合っても、「痛い気がする」以上の効果は無いのだがよっぽど腹に据えかねていたらしい。
……Murakami達が死んでRodcorteのDivine Realmに来るまでは、仲間同士改めて団結しようと演説していたはずなのだが。
『生き死にはHumanにとって大事だ。それに、一度reincarnation出来たから次もって考えられるほど能天気じゃない。
自分の命を、たった一度の人生だと必死に生きるのは正しい事だろ。……こいつ等は目指す方向が間違っていたけどな』
MurakamiやKanakoの方を一瞥して、そう付け加える。
【Oracle】のEndou Kouyaも、彼に続いた。
『来世の準備の為に今生で経験を積む。それを目的に生きる人が全くいないとは言わない。だが、私達はそうじゃない。二度目の人生で実現したい夢、目標、その為に必死に成る。そのためには意見も対立するし、時にはそのまま道が分かれる事もあるだろう。
二度目が終わってから、気がついた事だが』
つまり、チュートリアルだと言わなかったから、二度目のchanceを活かすために必死に成ったといいたいようだ。
『ふむ……』
そう言われると、三度目の人生がある事を黙っていたのは失敗だったかもしれない。
実際、前世のMemoryと人格を保ったままのCircle of Reincarnationなどそうあるものではない。少なくともRodcorteが行ったのは今回だけだ。
Circle of Reincarnation systemにerrorが起こった結果、Bugが発生して偶然前世のMemoryと人格を保ったままreincarnationしてしまう場合は在るだろうが、管理が行き届いたRodcorteのsystemではありえない事であるし。……Vandalieuが重大なsystem妨害を仕掛けて来ているが、今のところは起きていない。
そうなると、二度目の人生を必死に生きると言うのも無理は無いか。
それにしても共通の背景を持つ、多くは同じ学校で生活していた知り合い同士だろうにと思うが、それを口にする事は流石にRodcorteでも無かった。
彼はCircle of Reincarnationを司る神である。Humanは驚くほど強固な絆で他者と結ばれる事がある一方で、驚くほど下らない理由で他者を裏切り殺し合う生き物である事を良く知っているからだ。
それに態々百一人もreincarnationさせた理由の一つに、一割から二割は同士討ちで命を落とすか、力に溺れて堕落したKaidou Kanataの-samaに同じReincarnatorや現地のHumanに処分されても問題無いようにという理由があった。
しかし、既に三度目がある事をReincarnatorに明かせる段階では無い。
『では、今からでも三度目があると教えた方が良いと思うかね?』
答えを分っていながらそう質問すると、答えたのは【Chronos】のMurakami Junpeiだった。
『いや、今更だろ。もし教えたらもっと酷くなると思うぜ』
『どう言う意味だ、クソInstructor? 皆、三度目がある事を知らないからこんな事に成っているんだぞ』
『クソは別にいいがInstructorは止めろ、脳筋Asagi。確かにお前の言う通りだ、俺だって三度目もあるって知っていたら、裏切って次の人生で敵を増やすような事はしなかったさ。
ただ、それは最初から知っていればの話だ』
『ああぁ? はっきり言えよ』
『……手遅れだって言いたいんだよ、senseiは』
まだ三角座りの姿勢のままの【Marionette】、Inui Hajimeが答えた。
『確かに『Bravers』の方は三度目があると知れば、これからはもっと品行方正に生きようとするんじゃないか? 僕やKanataみたいな真似をする奴も出なくなるだろう。もう一度reincarnation出来て、【Inspector】-samaが天使をやっていて死んだ後査問されるなんて知ったら、余程自棄に成らない限り悪い事なんて出来ないさ』
生前悪い事をしたらKami-samaにHELLに落されるどころか、最悪生まれ変わった瞬間待ち受けていた他のReincarnatorに殺されかねないのだ。いや、もしかしたら罰としてMemoryと人格を保ったままeating meat用の家畜や馬車馬にreincarnationさせられるかもしれない。
Humanの感覚のまま家畜にreincarnationなんて、HELLに落ちるよりも恐ろしい罰だ。
実際、在るReincarnatorのEarthでの母親は陸ガメにreincarnationしたらしいので、罰としては十分考えられる。
『でもさ、Rokudou Hijiriやそれに協力している連中に教えても、今更止まると思う? 裏で糸を引いて【Metamorph】を洗脳して、僕やsenseiたち、United Statesの防衛総省ごとdeath attributeの研究者を始末して、現在進行形でAmemiya達を裏切っている奴がさ』
『そりゃあ……改心は無理そうだな』
自分が今までやった事が、全て始末したはずの連中が知っている。それを聞いたら、Rokudou Hijiri達が諦めて行いを改める……なんて事は無いだろう。
それに聖の協力者にはOriginの政財界の大物も含まれている。彼等にreincarnationがどうのと説明する事は出来ないだろう。
三度目がある事を教えたら、寧ろ彼の行動が今までより先鋭化してしまう可能性が高かった。
『そう言う訳だ。故に、今からOriginの残りのReincarnatorにLambdaへのreincarnationに付いて教える事は出来ない。
尤も、Rokudou Hijiriが目標にするUnaging不死等は私にとっても都合が悪い。幾つか手を講じるのでお前達はLambdaへのreincarnationに意識を切り替えて欲しい』
『分かったよ、Kami-sama。それで、俺達はどんな罰が待ってるんだ?』
もう覚悟は出来ている-sama子のMurakamiが訪ねるが、Rodcorteはそれに質問で返した。
『……罰? 何の事だ?』
何故そんな事を尋ねられるのか分からない。そんな-sama子のRodcorteの反応に、泉やAranは「やっぱりか」と呟き、Murakamiや彼と激しい口論をしていたAsagiも困惑を浮かべた。
『いや、見てたよな? 俺達がやった事は。それにあんたのFamiliar Spiritに成った二人を直接殺したのも、俺なんだが?』
Amemiya Hiroto相手には恍けていたMurakamiだが、全てを知っている相手には隠す必要はないと自分から真実を口にする。殺した被害者本人もいるのだが、無視だ。
『それがどうかしたのか?』
『いや、どうかって……』
自分が犯した悪事を咎めるどころか全く頓着していない-sama子のRodcorteに、Murakamiの困惑が濃くなる。
彼が何を考えているかこのDivine Realmの主故に分かるRodcorteは、やや言葉を選びながら説明を始めた。
『私はOriginの司法関係者では無い。故に、-kun達がOriginで犯した犯罪を咎めるつもりは無い。そもそも法とはHumanがHumanを律するために定める物だ。神である私には、関係が無い。
人を殺したくらいでいちいち罰を下していたら、EarthやOriginで戦争が起こる度に出る大量の殺人者をどうすればいいのだね?』
RodcorteはCircle of Reincarnationを……Circle of Reincarnationだけを司る神だ。通常どんな善人にも褒賞は与えないし、どんな悪人も罰しない。ただ淡々と死者の魂を迎え、即座にsystemに乗せ、生まれ変わらせるだけだ。
『それに人殺しと言う点では、-kun達以外のReincarnatorも似たような物だ。特にMinami Asagiは多い』
いきなりnameを出されたAsagiは驚いて反論する。
『ちょっ、ちょっと待て! 俺はterroristや危険な犯罪者以外、殺した覚えは無いぞ! それに狙って殺した訳じゃない!』
『terroristや危険な犯罪者も、私にとってはただの人だ』
そう応えられ、Asagiは顔を引き攣らせたまま押し黙った。彼を含めた仲間達に、Aranが更に説明する。
『皆、Rodcorte……このKami-samaにとっては善人も悪人もただのHumanなんだよ。どんな動機と背景があっても、殺しは殺しでしかない。俺達が大勢を守るためにterroristを殺すのも、連続猟奇殺人鬼の犯行も、国を守るためにとSoldierが敵国のSoldierを殺すのも、同じ殺人でしかない訳』
Aranは、殺人は場合によって善行に成りうると考えている。その彼の考えに対して、「命に貴賎は無いので命を奪う行為は動機に関わらず、ただの人殺しである」とのRodcorteの価値観は一見命を大切にしているように聞こえるが、実際にはHumanにとって最悪の価値観だ。
何故なら、Rodcorteの場合等しくHumanの善性も悪性も無関心で、命そのものに価値を感じてもいない。ただ沢山産まれて、生きて、死ねばそれで良い。そう考えているからだ。
『流石にあらゆる生命を絶滅させる事を企んだりしたら、問題視すると思うけどね。その程度よ。
私達Reincarnatorを殺した事も、咎めるつもりは無いみたい。……certainly、個人的には許さないけど』
そしてAranの説明を補足した泉の言葉で、Rodcorteが本当に自分達を罰するつもりが無いと分かったMurakamiは、「そうかい、そりゃあ良かった」と息を吐いた。
泉に睨まれAranから冷たい目を向けられているのに気にした素振りが無いのは、罪悪感を元から覚えていないのかもしれない。
『それじゃあ、問題は生まれ変わった後か。Asagi、Konoe、俺が気に入らないなら、生まれ変わった後に殺し合うか?』
『あんたがまた碌でもない事をやるならな』
『当たり前だ! 来世で見かけたら即俺の【Death Scythe】でぶっ殺してやる!』
『いや、それは困る』
早速来世に意識を向けたMurakamiやAsagi達だったが、Originでは無関心だったRodcorteが止めに入った。
『Originとは違い、-kun達をLambdaにreincarnationさせLambdaをdevelopmentさせる事こそが私の目的なのだ。同士討ちで数を減らされるのは困る。
それに、-kun達には頼みたい事がある』
『さっき言っていた、Vandalieuって奴を殺す事か? 俺達は殺し屋じゃないんだぞ』
『生きとし生ける存在全てを絶滅しようとしない限り気にも留めそうにないあんたが、『始末しなければ』何て言う奴を殺せとか、ゾッとしない話だね』
『どんな奴かいってくれれば、俺の【Death Scythe】で即死させてやる。だから、このクソInstructorを殺すのを邪魔すんじゃねぇっ!』
あまり乗り気ではない雰囲気のReincarnator達に、泉とAranが簡単に説明する。
『私達と同じReincarnatorで、最初に死んだ人よ。Murakami senseiのclassで、私やMinamiのclassmate。
ferryが沈む時、Narumiを助けて代わりに海に落ちたAmamiya Hiroto』
『Originでのnameは、『Undead』。Hiroto達が対峙して、お前等がついさっきまで殺し合いをしていた『The 8th Guidance』を助けて力を与えた奴だよ』
二人の説明にReincarnator達は一-samaに硬直し、その意味を理解して顔を引き攣らせた。