Plutoの瞳から輝きが消えた後、Amemiya Hirotoは拭いがたい虚脱感を覚えた。
『Undead』が、自分達の百一人目の仲間だった存在を気がつかずに滅ぼしてしまったせめてもの償いに、彼が助けた『The 8th Guidance』のmemberを助けようとしながら、最後は妻であるNarumiを助けるためとはいえ自分自身の手で殺してしまった。
それも、PlutoがNarumiの中に宿った小さな命に気がつき、それを守るために自分の身を犠牲にしようとしたtimingで。
(僕は、『Undead』の時と同じ過ちを繰り返しただけなのか……っ)
何かを決定的に間違えた。そうとしか思えないこの結果を理不尽に否定し、喚き散らしたい衝動を覚える。
「……せめて遺体を焼こう。彼女達もそれを望んでいるはずだ」
だが、何をしたところで時間は戻らない。
「そうね……ごめんなさい。貴女達の大切な人を助けられなかったのに、こんな事しか出来なくて……」
NarumiもPlutoの瞼を閉じてやりながら、Hirotoの意見に賛同した。
「忘れているかもしれないが、遺体を収容する-samaにと要請が国連から……分かったよ。思わぬ抵抗に遭い、遺体は収容できなかった事にすればいいのだろう?」
【Avalon】のRokudou Hijiriは苦笑いを浮かべて肩を竦めてそう言った。
「ただ、そうとう煩く言われる事は覚悟するべきだ。今【Angel】を通して見ている皆も、共犯だぞ」
今回は『Bravers』が呼びかけたtacticsだ。その結果『The 8th Guidance』を壊滅させる事には成功したが、勝手に動いたとはいえ派遣された各国の部隊はほぼ全滅。
そして各国の首脳陣や高官が期待しているDeath-Attribute Magicの手がかり、『The 8th Guidance』の遺体を収容できないと成れば、Amemiya Hirotoへの責任の追及は激しくなるだろう。
「それぐらいなら構わないさ」
だがHirotoにとってそれは覚悟済みだった。彼の手に、magicの輝きが宿る。だがそれが放たれる前に通路で警戒しているIwao達から、【Angel】を通じて状況が変化した事を知らされた。
『Hiroto、Murakami達だ! あいつ等、ふざけた事を言ってやがる!』
『自分達は潜入捜査官だとか、出鱈目を!』
「潜入捜査官っ? Murakamiが!?」
Tsuchiya Kanakoを含めた三人の仲間を引き連れ、今更姿を現したMurakamiがUnited Statesの身分証を手にしているのを、Hirotoは【Angel】を通して見た。
信じがたいが、見えた身分証は本物のように思える。
(拙いっ)
Murakami達がどうやってUnited Statesの潜入捜査官に成ったのか知らないが、奴らのdemandは分っている。Pluto達の遺体を引き渡せと言うに決まっている。
それをみすみす許せば、Pluto達の尊厳は失われる。それだけでは無く、death attributeの研究の為と言う理由で『Undead』や『The 8th Guidance』のような悲劇的な存在が再び創り出されてしまう。
驚愕で中断してしまったmagicの行使を、急いで再開する。
「聖っ、-kunはそっちの少年の遺体を――」
『はい、stop! PlutoとEnmaの死体をそれ以上損壊したら、あたし達の捜査を妨害したって事で逮捕しちゃいますからね~』
その時、【Angel】と繋がっているはずがない【Venus】のTsuchiya Kanakoの声が響いた。
「なっ!? 何故-kunが【Angel】に繋がっている!?」
驚いてNaruseを見ると、彼女も驚いた顔をしている。ただその驚きはHirotoのものとは意味が異なっていた。
「あ、あれ? なんで私、彼女を【Angel】に繋いだままにしたの? なんで彼女をallyだと……?」
呆然とした-sama子の彼女に、Kanakoが何をしたのかHirotoはIntuition的に理解する。
「くっ、Abilityを使ったのか!」
自分達が把握していなかったAbilityをKanakoが持っていた事、そしてそれを見抜けなかった自分の不甲斐無さに唸りながら、それでもHirotoはPluto達の遺体を焼こうとする。しかし、その手を聖が止めた。
「聖っ、何故止める!?」
「Hiroto、もう遅い。Tsuchiyaに見られた以上、言い訳は効かない。それとも、捜査妨害で逮捕されるつもりか?」
「ここはUnited Statesじゃないっ!」
「そうだ、Northern Europe Federationの国内だ。だが、Northern Europe Federationが-kunを庇うと思うか? もし-kunが犯罪者に成れば、『Bravers』は最悪Dismantling。良くても、国連から-kunの代わりに新しい責任者が派遣される事になるだろう。
私は、それを望まない」
「それは……くっ!」
あらゆるAbility、magic、知識、connectionを使ってPluto達の遺体を渡さずに、『Bravers』の仲間達を守る方法をHirotoは考えた。
Murakami達を潜入捜査官にしたUnited StatesとNorthern Europe Federationが牛耳っている現在の国連は信用できない。
既にPluto達が死んでいる事を、Kanakoに見られている。
そしてdeath attributeのManaが残留しているPluto達の死体をworld中の政府高官や大富豪が欲しがっている。
「……くそっ」
両方の望みを叶える方法をHirotoは見つける事は出来ず、生きている仲間と『Bravers』のorganizationを守る事を選んだ。
そこに得意気……と評すには、苦い顔つきのMurakami JunpeiがKanakoを連れて入ってくる。
「どうした、僕達を出し抜いたのに顔色が悪いじゃないか」
「別にこっちも完全勝利って訳じゃない。想定外な事態が続いて、なんとか辛勝ってところだ」
Murakamiも好き好んで潜入捜査官の身分をHiroto達に明かした訳ではない。仕方が無く、最後の手段として出したに過ぎないのだ。
(最上なのはこいつ等に気がつかれずにPlutoを殺してその死体を奪取するか、こいつ等が殺した死体をかすめ取る事だったが……まさか同情して死体を焼こうとするとはな。
正気かよ、奴の死体にどれだけの価値があるのか分からないのか?)
そう苦々しく思いながら、Hiroto達に向かってchinで扉を指す。
「それじゃあ、こいつ等の回収は俺達がやる。お前等は他の後始末でもしていろ」
「邪魔されたら面倒ですしね~」
お互い顔を合わせたくない仲だ。何もできない以上、roomから出る事に異論は無い。
「……その前に教えて欲しい。『Bravers』の本部を爆破して、泉とAranを殺したのは-kunか?」
だが、最後にそう尋ねた。以前、【Oracle】でKouyaが調べた時は「Murakami達十人のAbilityでは犯行は不可能」と答えは出ていたのだが。
「ああ、あの事件か」
Murakamiはそうnodと、Memoryを探るように瞼を閉じた。
真実は、Murakami Junpeiの犯行だ。
彼は透過Abilityを持つ【Gungnir】のKaidou Kanataから、ある人物を通して預かっていた手榴弾を、【Chronos】でAbilityのActivateを長期間遅延させたまま保存しておいた。
それを使用して、Bravers本部の壁等を透過させて二人を爆殺したのだ。
「予想を外して悪いが、俺達じゃない。『The 8th Guidance』の奴らの仕業だ。
どんな方法を使ったのかまでは知らないけどな」
だが、それを正直に教える理由は無い。
「それは、本当か?」
当然HirotoはMurakamiの言葉を簡単には信じず、そう聞き返してくる。しかし、彼の代わりにKanakoは意地の悪い笑みを浮かべて聞き返す。
「何か証拠とか、疑う根拠でもあるんですかぁ?」
「……くっ」
こういった事件で力を発揮してきた、あらゆる偽りを看破する【Inspector】のShimada Izumi、高度な【Calculation】を持つ【Laplaceの魔】のMachida Aran、二人共が被害者だ。
「まあ、帰ったら【Oracle】にでも聞いてみれば良いんじゃないですかね?」
そして【Oracle】のEndou KouyaもまだHiroto達は知らないが、殺されている。
「僕達がいる限り、好きにはさせないぞ」
悔しげな顔で睨み、そんな捨て台詞を残して退室するHiroto。MurakamiとKanakoはその姿が見えなくなってから、盛大にため息をついた。
「あたし達が好きにやれていると思ってんですかね、あの人」
「こっちはこれから大変だってのにな。悪党には悪党の苦労があるんだよ、糞が」
そう愚痴を零すと、二人は早速Plutoの死体を確保する事から始めた。これを持ち帰らないと潜入捜査官の身分を失うので、彼等も必死なのである。
その日の内にMurakamiやKanako、そして生き残った【Aegis】のMelissaと【Hecatoncheir】のDougの姿はUnited StatesのDepartment of Defense……六角形に似た形である事から、通称Hexagonと呼ばれる建物にあった。
彼等が再就職した諜報organizationの本部は別の建物にあるのだが、Hexagonの地下にはdeath attributeを発見した秘密研究所の数少ない生き残りの研究者達が匿われた、極秘の研究施設がある。
そのため彼等が確保したPluto達の死体はここに運び込まれ、彼等もここに呼びつけられたのだ。
「はぁ……堅苦しいな」
「堅苦しい所に再就職したんだよ、俺達は」
「ついでに、気が重いわ」
「失敗スレスレでしたからねー。報酬、減らされないと良いんですけど」
気が進まない-sama子のDougとMelissaを連れて、MurakamiとKanakoは職員に案内されるまま待合室のような場所に向かった。
このHexagonの地下でPluto達の死体は徹底的に調査され、death attributeの研究に活かされる。
Shade、IzanamiやIsis。Baba Yaga、Ereshkigalの死体は回収できなかったが、他にもEnmaや苦労して回収したJack-o'-lantern、Ghostの死体、Valkyrieのblood液にBerserkの断片等も運び込まれている。
それらを解析して、これからHiroto達が目を背けたくなるような非人道的な研究や実験が行われるのだろう。
全人類の為と言う免罪符の元で。
Murakami達は生きている『The 8th Guidance』のmemberと長く接していた経験を、その研究に活かすための聞き取り調査の為に呼ばれたのだ。
「邪魔しに来ると思うか? だったら、喜んで戦ってやるけどな。この前は暴れたりなかったし」
「Doug、Braversの事を言っているなら来る訳ないだろう。ここはDepartment of Defenseだぞ。邪魔しに来たら戦争勃発だ。良い子でいたいAmemiyaが許す訳がない」
「それに、今頃Shadeのお蔭でそれどころじゃないですしね」
『Bravers』は今、world中から非難を浴びていた。ShadeにBodyを乗っ取られた【Oracle】のEndou Kouyaがnetに配信した偽情報のお蔭で、彼が悪魔崇拝者で彼を含めた『Bravers』の力は悪魔との契約によって手に入れたのだと騒がれている。
残念な事に悪魔の存在は確認されていないので、Amemiya Hiroto達は違うと証明できない。
存在が確認されていない存在と契約して力を手に入れていないなんて、どうやっても証明できないからだ。
正に「悪魔の証明」である。
他にも「各国の特殊部隊を見殺しにした」とか「Kaidou Kanataの悪事は全てAmemiya Hirotoの指示だった」、「それに気がついた【Metamorph】のShihouin Mariを殺すよう指示を出したのも彼だ」と数々の疑惑に晒されている。
「まあ、全部証拠も無い出まかせだ。暫くすれば頭がcrazyた【Oracle】の狂言か、若しくは『Shade』が流した偽装情報だという事になるだろう。
『Bravers』の疑惑は晴れるが、信用しないHumanも増える。程よい結果に落ち着くのではないかな」
「なるほど、そんなもんか……って、突然現れてsenseiを驚かさないでくれるか? Rokudou」
DougやMelissaが何時の間にかroomの中に居た第五の人物、【Avalon】のRokudou Hijiriに驚いて視線を向ける。
しかし聖は注目されても動じず、Murakamiに「やあ」と会釈して紳士的な微笑を浮かべたまま言った。
「最低限のdemandには応えてくれたようだが、随分とお粗末な仕事だったじゃないか」
そう、『Bravers』に今も所属する【Avalon】のRokudou Hijiri。彼がMurakami達の黒幕だった。
燻っているMurakami JunpeiやTsuchiya Kanakoに裏切るよう促し、Kaidou Kanataの手榴弾をMurakamiが手に入れられるよう画策し、秘密裏に洗脳したUnited Statesの諜報機関の幹部と会わせ、施設に収容され治療を受けていた【Gazer】Minuma Hitomiの拉致にも裏で手を貸していた。
そして『Bravers』内でEndou Kouyaを殺すよう、実行犯のShadeにも気がつかれないまま手を貸していたのも、彼だ。
「何分、初仕事なもんでね」
「誰にでも初仕事は在るさ。でも、プロフェッショナルは初仕事でも結果が求められる。そうじゃないか?」
「……そりゃあ、そうだが」
元生徒の聖に対して、言葉を濁して黙り込むMurakami。既に彼等の間では、Earthでの関係は通用しない。
Murakamiは聖から「Plutoの死体を確保し、United Statesに引き渡す事」、「missionが終わる前に【Gazer】、【Marionette】、【Death Scythe】は始末する事」「他にも『The 8th Guidance』のmemberの死体やその一部を手に入れたら、全て同-samaに引き渡す事」「回収でき無い物は、痕跡も残さず処分する事」の四つを聖からdemandされた。
最後の処分こそ『Bravers』が勝手にやってくれたが、demandは全てclearした。
しかし仲間を三人失うわ、自分達がUnited Statesに再就職した事をHirotoに知られるわ、点数をつけるならbarely赤点を免れた程度だろう。
「だが聖、お前だってあの場にいたんだ! 少しぐらい手を貸してくれてもいいんじゃないか? 大物ぶりやがって!」
「Dougっ、BAKANA事言わないで!」
聖に食ってかかるDougを、慌ててMelissaとKanakoが止めようとするが、聖は微笑を崩さないまま「いいんだ」と言った。
「彼は勘違いしているだけだからね。私は……Rokudou Hijiriはあの場所には居なかった。居たのは彼女だよ」
「えぇ? 何言ってるんですか、Rokudou -kunはずっとBraversと一緒に――!?」
小首を傾げるKanakoの視ている前で、聖の姿が女のものに変わった。その女を、KanakoやMurakamiは良く知っている。
「【Metamorph】のShihouin Mari……!?」
「ああ、nameはあまり呼ばない-samaに」
収容された独房内で爆殺されたはずのShihouin Mariは、まるでRokudou Hijiriに乗り移られているかのように今までと同じ表情と口調で言った。
「magicと薬物で念入りに洗脳してあるが、何分Abilityでは無いので完璧とは言えない。ふとした拍子にノイズが走る事もあるから、念のためにね」
そして再び、【Avalon】のRokudou Hijiriの姿に成った。
あの時、『Bravers』と一緒にいたのはRokudou Hijiri本人ではなく、彼に【Metamorph】でTransformしたShihouin Mariだったのだ。
その事実に、Murakamiは驚愕と戦慄を覚えつつも納得した。
(黒幕本人が出張って来て危険を冒すとはおかしいと思っていたが、最初から替え玉だったとはな)
Shihouin Mariが爆殺されたとする事件も、聖が裏で糸を引いていたのだろう。そして別の死体とMariをすり替え、その後洗脳してminionsに加えた。『The 8th Guidance』の犯行という事にするのも、真犯人がBraversの内部にいて、しかも Shimada Izumi達も殺された後だ。
Amemiya Hirotoからも厚い信頼を寄せられている彼なら、簡単だっただろう。
その周到な黒幕は、Murakamiの視線を受けて苦笑いを浮かべた。
「……ああ、勘違いしないでくれ。別に-kun達を責めている訳じゃないし、報酬を値切ろうと思っている訳でも無い。これはちょっとした雑談みたいなものだよ」
人型端末と化しているらしいMariを通じて、Murakami以上の悪党である聖はそう言って手を振った。
「な、何?」
「最低限求めた仕事を熟してくれれば、それで文句は無い。そう言う事さ。
報酬は約束した通り支払うし、約束した待遇で諜報organizationには雇わせる。いきなり幹部待遇は難しいが、手柄を立てられる仕事を斡旋させるよ」
戸惑うDougに、聖は好条件を次から次に並べて行く。
「そんな事、約束して良いのか?」
「certainly。私はこう見えても、超大国の諜報organizationを裏から-kun達以外の誰にも知られずに牛耳っているのだよ? 簡単さ」
「それなら、ありがたい話だが……」
その時、Murakami達を呼ぶアナウンスがroomのスピーカーから流れた。
「時間の-samaだ。では、私はこれで失礼させてもらうよ」
そう言いながら、今度はHexagonの職員の姿にTransformして、聖はMurakami達の前から姿を消した。
地下にある実験室をEnhanced (1) glass越しに見下ろす事が出来るオペレーターspaceで、Murakami達は白衣を着た職員から聞き取り調査を受けていた。
DougやMelissa、KanakoはRokudou Hijiriから将来を保証されたため、憂いも何も無い-sama子で調査に協力している。
(何かがおかしい)
だが、MurakamiはRokudou Hijiriの態度に妙な引っ掛かりを覚えていた。
どうしようも無く不吉で、不愉快な予感がしてならないのだ。
彼の何処がそんなに引っかかるのか。態度か? 大物ぶった物言いか? ……いや違う!
(あいつの言った耳触りの良い言葉だ! 俺も【Death Scythe】や【Marionette】に同じような事を言った事がある! どうせ殺すつもりだったから、何を言っても空手形ですむからな!
じゃあまさかあいつはっ、あいつが拘っていた、Plutoの死体をここに引き渡すって事は!)
はっと思い立ったMurakamiは恐ろしい予感にthrust動かされる-samaに席から立ち上がり、調査中のPlutoの死体を見るためにEnhanced (1) glassの窓に駆け寄った。
「ど、どうしたんですか、Murakami senseiっ?」
驚く他のHumanに構わずMurakamiがPlutoの死体を見ると、丁度職員が解剖の為にメスで死体に触れる瞬間だった。
「や、止めろぉぉぉっ!」
絶叫するMurakami。だがメスは止らずPlutoの肌を斬った。そしてそこから、猛烈な勢いで黒い気体のような物が噴き出した。
「なっ、何だ!?」
「death attributeのManaを検出! これは……既に危険領域を超えています!」
実験室ではmagic的な防護も施された防護服を着ているはずの研究者が、バタバタと倒れて行く。警報が鳴り響き、オペレーターのscreechが飛び交う。
誰も何が起こったのかaccurateには知らなかったが、MurakamiだけはIntuition的に気がついていた。
Plutoが十年近く集め続けていた『死』だ。本来ならNarumiに注ぎ込むはずだった大量の『死』が、Pluto本人の死によって制御と行き場を失って溢れだしたのだ!
「せ、senseiっ! 何が起きたんだ!?」
「構うな、逃げるぞっ! 邪魔だ退けぇ!」
Murakamiはexpressionを変えてDougに叫び返すと、出口に殺到しようとするHexagonの職員を、何とmagicを放って扉ごと吹き飛ばしてしまった。
響く絶叫と飛び散るbloodとbone肉のfragment。
「な、何て事をするんですかっ! Department of Defenseの職員を虐殺なんて、国家反逆罪に問われますよ!?」
「知るかっ! さっさと走れ!」
錯乱したとしか思えないMurakamiの行動に、Melissaが叫びDougやKanakoも唖然とするが、Murakamiはさっさと走りだしてしまう。
だが、彼女達が振り返ると黒い霧は何とEnhanced (1) glassを透過して迫りつつあった。
「あがががががぁ……」
その煙に触れたまだ若いfemaleオペレーターが、奇声を上げながら数秒でミイラと化して倒れる-sama子を見た三人は、expressionを変えてMurakamiを追って走り出した。
だが、すぐに追いついてしまった。
「だ、ダメだっ、囲まれている!」
Murakamiの前に伸びる通路……地上へつながるエレベーターに繋がる通路は、黒い霧で満ちていた。
彼等が考えるよりも黒い霧のSpeedは速かったのだ。
「め、Melissaっ、【Aegis】だっ、【Aegis】で俺達を守れ!」
「は、はいっ!」
「Doug、お前は【Hecatoncheir】で天井を壊せっ! そこから脱出する!」
「おうっ!」
すぐに【Aegis】の盾の内側に逃げ込む四人。そしてDougがMental Powerで天井に穴を空ける。瓦礫が降って来るが、それもMental Powerで跳ね飛ばして掘り進もうとする。
このまま地上まで脱出口を掘り進めば助かる。そう思ったMurakami達だが、しかし Dougが不意に痙攣を始めた。
「だ、Dougっ!?」
「な、何だこの霧、瓦礫に混じってやが……Ability越しでも、触れるとやば……!」
「ひぃっ!?」
Kanakoたちが見ている前で、Dougから水分が奪われboneと皮だけに成って行く。カサリと、人が倒れる音とは思えない音を立てて、Dougは倒れた。
「Ability越しでも触れたら拙いのかっ!? Melissa、お前は……!」
Murakamiが振り返った先では、既にMelissaが立ったままミイラ化して事切れていた。
「あ、【Aegis】でもダメなのか!?」
「【水壁】も【氷壁】もすぐきえちゃうっ! この霧がManaをAbsorptionしている!? ああっ!」
Kanakoがmagicで壁を作ろうとするが、黒い霧はVitalityだけでは無くManaを吸う性質を持つのか、彼女の唱えたmagicはすぐに霞のように消えてしまう。
そしてMelissaが死んだ事で、【Aegis】の盾が解除された。二人に黒い霧が猛然と迫る。
「くっ、【Chronos】!」
Murakamiは自分とKanakoに【Chronos】を使い、黒い霧の効果が現れるのを遅らせようとするが、それは数秒が数十秒に伸びただけだった。
Murakamiが持つ二つ目のAbilityである【Super Mana Regeneration】でも追いつかない勢いで、ManaがAbsorptionされる。
「うああああああああっ! いやぁぁぁっ! こんなっ、こんな死に方っ、こんなっ、何でっ!? なんでよぉ!?」
「クソオオオ! こうなるとっ、こうなると知っていて俺達を嵌めたなRokudouォ! 畜生っ! 呪ってやるぅぅぅ!」
二人はお互いがミイラに成る-sama子を見てdespairとCurseの叫び声を上げながら果てて逝った。
United StatesのHexagonが研究中だったdeath attributeをrunawayさせ、当時建物内に居たHexagonの全職員、及びMurakami Junpeiら元『Bravers』の四名が死亡した。
Hexagonから噴き出た黒い霧は防衛総省の敷地を飲み込み、更に外部へと延びようとしていた。
緊急招集された軍が対応するが、霧が広がる勢いを緩める事すらできなかった。
取り乱した閣僚が大統領にHexagonを核攻撃するべきだと訴え始めた時、到着したのがworld中から疑惑の目を向けられている『Bravers』だった。
『Bravers』は【Avalon】のRokudou Hijiriが提案したLight Attributeと生命attributeのmagicを主に使ったtacticsと、Amemiya Hirotoの力によって、Hexagonを覆うdeath attributeの黒い霧を僅か一時間で晴らしたのだった。
協力者の中でも主要なmemberを集めた会合で、Rokudou Hijiriは落ち着かない-sama子で両手の指を何度も組み直していた。
「どうしました、Rokudou。珍しく落ち着かない-sama子ですね?」
協力者の一人に声をかけられた彼は、苦笑いを浮かべて答えた。
「昔からの悪い癖でね。物事が上手く行きすぎると不安に成るのだよ。七割達成できれば上出来だと思っていたtacticsが、まさか九割九分思い通りに成るなんて、私じゃなくても信じられないだろう?」
Rokudou Hijiriが糸を引いていた一連の事件。それで彼にとって邪魔な者、危険な者は一人を除いて居なくなった。
彼が策を巡らせるうえで邪魔だった、【Oracle】のEndou Kouyaや【Calculation】、【Inspector】、【Gazer】、そしてあと一人。
彼にとって危険なAbilityを持っていた【Death Scythe】、【Marionette】、【Mage Masher】。
上記の邪魔者を消すのに利用した、彼が黒幕だと知っていた、下らない欲望で仲間を裏切るため信用できない俗物。【Chronos】のMurakami Junpei以下七名。
そして彼等がdeath attributeを独占するのに邪魔な、death attributeのManaを宿す『The 8th Guidance』とHexagonに匿われていたDeath-Attribute Magicの研究を行っていた軍事国家の秘密研究所の生き残り。
一人を除いて全て直接自分の手を使わずに死なせる事に成功した。
「残りの一人がAmemiya Hiroto、か」
「やはり【Braver】……Championはしぶとい」
「いや、逆だ。彼は生きていてもらわないと困る。leaderである彼がいなくなったら、『Bravers』からAbility者が離散してしまう可能性がある。
一つに纏まっていてもらった方が便利だからね。利用するにも、始末するにも」
勘違いしている協力者達に、聖はそう説明した。実際、彼はAmemiya HirotoがPlutoに殺されない-samaに配慮していた。邪魔だったのは、彼ではない。
「Naruse Narumi……いや、Amemiya Narumi。まさかPlutoが彼女を殺すのを止めるとはね」
【Angel】のNaruse Narumiの死。それが一連の事件で実現しなかった唯一の目的だった。
「彼女が妊娠初期の段階に在ったのも予想外だが……最大の予想外はPlutoが私の想定を超えたロマンチストだった事か」
「あの状況で完全に望んだ結果を引き寄せる事が出来るのは、それこそDestinyのGoddessを侍らせなければ不可能でしょう。それとも、そんなAbilityをお持ちで?」
「いいや。私が持っているAbilityは-kun達にも説明した通り、【Increased Learning Speed】と【Unlimited Development】だけだよ」
【Avalon】のRokudou Hijiri。彼は『Bravers』の中で最も地味なCheat AbilityをRodcorteから与えられたReincarnatorだった。何せ、他人より早く知識や技術が身につく力と、限界を超えて成長する事が出来るだけで、「これが自分の力だ!」と見せる事が出来ないのだから。
【Oracle】のEndou Kouyaの-samaにtactics立案の中心に成る事も、【Noah】のMaoの-samaに利便性で注目される事も無ければ、【Death Scythe】や【Hecatoncheir】、【Gungnir】の-samaにAbilityだけを使って活躍する事も出来ない。
だが彼はそのAbilityを活かして研鑽を積み、『Bravers』一の技巧派……magicのスペシャlistに成りあがった。他のReincarnatorがAbilityの扱いに苦心する中、magicの技量を上げる事のみに集中できた結果である。
そんな聖だからこそ、ある野望を描いていた。それを実現させるために集った者達が集まったのが、この会合である。
聖と同じ『Bravers』、宗教関係者、政財界に身を置く者、軍関係者。-sama々な経歴を持つ協力者が映るモニターに向かって組んでいた指を開いた聖は宣言した。
「さて、反省はこの辺りにしよう。今日は記念すべき決起集会だ。
この時より我々は人類を苗床に、Body的にも、そして霊的にも進化した新人類への道を歩む。まずは、『Undead』……百一人目の『Bravers』に成る筈だった人物の力を手に入れる!」
Rokudou Hijiriは、独力でかなり早い段階から『Undead』が自分達と同じReincarnator……恐らくNaruse NarumiがAmemiya Hirotoと間違えた、Amamiya Hirotoであるとの真実に辿り着いていた。
その根拠は、『Undead』が研究所で飼育されていた時に米の食事を希望した事だ。
『Undead』は肉や魚でも甘い菓子でも無く、米の食事を希望した。Asia系のHumanだったが、Europeの文化圏で生まれ、研究所内で出されていた食事しか知らないはずの『Undead』が米を希望する。
普通なら職員の誰かが米について話しているのを聞いたのだろうと考えるだろうが、聖は違った。
(生まれた頃も我々とほぼ同じ。彼も、EarthのJapanからreincarnationしたReincarnatorではないのか?)
そうIntuitionした彼はUndeadが米を希望したと書き残されていた資料を隠滅した。
そして、『Undead』=Reincarnatorと言う仮説に則って独自にdeath attributeの研究を始めた。
「推論に推論を重ねたが、断言しよう。我々の手はdeath attributeに届くと!
そして、death attributeによって我々は新たなる人類へと進化する!」
協力者たちの間にどよめきと歓声、そして拍手が巻き起こる。
Rokudou Hijiriの野望とは、真に限界を超えて成長する事だった。
【Unlimited Development】の効果によって、彼はHumanの限界を超えてEnduranceやMana、技術を成長させ超人になる事が出来る。
だが、それでも『超人』の枠の内でしかない。
このまま何十年と研鑽を積み続ければ、Rokudou Hijiriは神に等しいmagicの使い手として歴史に名を残すだろう。
だが、神では無い。
極限までmagicを高めても、いつかはAgingで死ぬ。凡人から見れば万能に見えるかもしれないが、実際には細かい制限だらけで、全能には程遠い。
何より、Bodyが脆弱すぎる。
(どんなに成長しても、脳の命令をnerveに伝える時間は短くならない。感覚器官、内臓、muscle、bone格、それ等も弱すぎる。私のAbilityは所詮成長の制限をNullificationにするだけだからだ。Humanから逸脱して進化する事ではない)
だが、death attributeのmagicを極めれば――。
(その時こそ、私はホモサピエンスを越えた新たなる人類……いや、神に成れる!)
超常の存在に成りあがる野望に燃えるGeniusは、あらゆる存在を自らの苗床にしてでもそれを実現させるという決意を、喝采を浴びながら新たにした。
Murakami Junpei、Tsuchiya Kanako、Doug Atlas、Melissa・J・Saotome 死亡。
残りReincarnator、七十九名。
そんな事は関係無く、God of Originは動いていた。
God of OriginはEarthの神と同じく、人類が誕生した後人類のreligionやhorror心、想像力が創り出した存在だ。
Earthよりはずっと少ないが、数多くのMythやlegendの存在を模したDivinityに分裂し、それらが並行して同時に存在している。
天使と悪魔が常に真横に並んでいるようなconditionなので、誕生以来互いを妨害し続けてきた。結果的に大したことが出来なかった存在だ。
そのGod of Originが、another worldであるLambdaの神の一柱、『God of Space and Creation』Zuruwarnとの交渉の結果、一つの目的の為に動いていた。
その目的とは、「『The 8th Guidance』のmemberの魂を、another worldであるLambdaにいるZuruwarnの元に届ける」事だ。
本来なら、魂のReincarnationは全てRodcorteの領分だ。それに手を出す事は、重大なrule違反である。
しかし、God of Originにはそれを侵す十分な理由があった。
何故なら、Rodcorteが事前の連絡も無くanother worldからのReincarnatorを百一人、それも一人を除いて特殊なAbilityまで付けて送り込んできたからだ。
しかも、LambdaにReincarnatorを送り込む前のチュートリアル……練習場にするためという戯けた理由で。
これには神も悪魔も等しく激怒した。
だからこそGod of OriginはZuruwarnに協力したのだ。
ruleに従ってRodcorteの元に逝こうとする『The 8th Guidance』の魂達を、死後のworldやCircle of Reincarnationに関係するDivinityが受け止め、そのままZuruwarnの元に送る。邪魔しようとするRodcorteには、それ以外のDivinity総出で返り討ちにしてやった。
神としての力と歴史ではRodcorteの方が勝っている。しかし、ここはOrigin。Rodcorteの存在を知っているのは、残り約八十人のReincarnatorだけだ。
対して、Originの人類全ての神が負けるはずがない。
一つ違う魂が混じっていた気もするが、愛に関するDivinityを中心に一緒に送るべきだとの意見が多かったし、態々一つだけ分けるのも面倒だと、複数の悪魔やDemon King、Anima妖怪の類が嫌がったので、God of Originはそのまま魂達をZuruwarnの元に送った。
『The 8th Guidance』の魂達を、四つの頭を持つ有翼の獅子の姿を持つ神、Zuruwarnは待っていた。
魂を受け取った後、reincarnationさせる器は既にVandalieuが創っている。
『当初は勝手にVidaの遺産を使って造るつもりだったが……偶然とは言え、魂無きbase form of lifeと生命無き霊の原形をCreationし、二つを合わせるとは。流石あの四人だったVandalieuだ』
Zakkart、Ark、Solder、Hillwillow。四人のsoul fragmentから誕生した魂を持つだけはあるという事か。
『後は受け取った魂を順番に器に入れて、新たな生命が誕生するのを待つだけだ。楽しみだの~』
originallyトRickスター的な性格を持つZuruwarnにとっては、God of Law and Life Aldaが聞いたら激怒するだろう試みも、楽しみの一つである。
本来の目的はVandalieuにallyを届け、自分が敵ではないと証明するためだったのだが。
『Earthの神は反応が鈍い、新しいbrothersは未だに彷徨っている。Ricklentは力の使い過ぎでグロッキー……こんなconditionで働いている我、凄くないか?』
普段の砕けた口調で独り言を言いながら待っていると、『The 8th Guidance』の魂達が送られてきた。
『よしっ! ……んん? なんだか一つ余計な者が混じっている-samaな? ……ふむふむ、そういう事情か』
なら良いかと、【Gazer】Minuma Hitomiの魂が混じったまま、Vandalieuが創り出した器の中にそれを入れようとする。
『その魂を渡せ!』
だが、その時RodcorteのGiantな手が伸びて来た。
『Zuruwarnっ! 一旦その魂達を持って引け!』
そのGiantな手を『Magic God of Time and Arts』Ricklentが懸命に止めようとしているが、時間稼ぎにも成っていない。
『Lambdaまで追って来るとは、なんと執拗な!』
Ricklentを跳ね飛ばしたRodcorteの手は、Zuruwarnが抱える魂達を奪おうと彼に掴みかかった。
ここは既にZuruwarnやRicklentが信仰されるworld、Lambda。本来ならGod of Originと同じ-samaにRodcorteを弾く事が出来るはずだ。
しかし、God of Originと違ってZuruwarnとRicklentはDemon Kingとの戦いで負った傷が完全に回復していないまま、力を使い続けているconditionだ。
Rodcorteの前には、容易く捻れる赤子の手でしかない。
しかし、そう易々と捻られてたまるかと、ZuruwarnはRodcorteの腕にfangsを立てた。それはほとんど意味の無い、細やかな抵抗だった。Rodcorteからしてみれば、腕に蚯蚓腫れが出来た程度のDamageだっただろう。
『っ!!??』
しかし、そのDamageにRodcorteの腕が止った。
『今だ! 行けっ、魂達よ!』
一瞬の隙を突いて、Zuruwarnは抱えた魂を全て、器に向かって叩き込んだ。
『最早reincarnationは成った! 去れっ!』
Ricklentがそう怒鳴りつけると悔しげな唸り声を残し、Rodcorteの腕は消えた。既に、自分が出来る事は無いと認めたからだろう。
どんなに強大な力を持っていても、領分の外にはみ出る事が出来ない。単一の権能しか持たないRodcorteの弱点だ。
四つの頭全てで安堵の息を吐いて、ZuruwarnはRicklentに『無事か?』と尋ねた。
『大した事は無い。しかし……』
『分っている。厄介な事態に成った』
渋面を浮かべてこちらを見つめるRicklentに、Zuruwarnはnod。
『Rodcorteに我々がVandalieuのallyをしていると知られてしまった』
今までRodcorteはLambdaのGodsはVandalieuのallyをしてない、少なくとも活動しているDivinityにallyは存在しないと考えていたはずだ。
しかし ZuruwarnとRicklentがallyをしている……直接自分の妨害を始めたと知ったら、どう出て来るか。
『否、そうではない』
しかし、Ricklentは渋面を浮かべたまま首を横に振ると、半眼でbrothersであるZuruwarnを見つめた。
『brothersよ、術の神である我が定めた手順を全て無視したな?』
本来なら、『The 8th Guidance』の魂は一つ一つ、数分ずつ順番に器に入れてreincarnationを促す筈だった。しかも、Ricklentが術を幾つもかけながら。
だというのに、Zuruwarnは全ての魂を一度に器に、それも叩き込むように突っ込んでしまった。
『……あっ』
『あっ、では無い』
『しかし、緊急事態であったし……ほら、器に魂も宿ったようだからreincarnationは成功しただろう?』
『確かに、reincarnationは成ったが』
二柱が見つめる先では、器……VandalieuがVidaの遺産で創りだしたbase form of lifeが、ボコボコと猛烈な勢いで蠢いていた。
『……どんなconditionでreincarnationするのか、我にも予想がつかない』
『まあ、何とかなるだろう。それに、悪いのはRodcorteだ』
久しぶりにやっちまったか? そう思うZuruwarnだったが、全てをRodcorteの責任にすると『では、我はEarthの神との交渉に戻るので、後は頼む』と行ってしまった。
『逃げたか……』
Ricklentは深く息を吐くと、とりあえず『The 8th Guidance』のmember全員と【Gazer】のMinuma Hitomiの魂を持つ存在を、暫く見守る事にした。