whole bodyを返りbloodと自分のbloodで染めた大Yomotsuikusaは、blood走った目を炯々と輝かせ、fangsを剥いて咆哮を上げながら、新たな獲物に向かって疾駆した。
目の前で同類であるYomotsushikomeやYomotsuikusaが、強力な再生Abilityを発揮する間も無く倒されていくが、そんな事はどうでもよかった。
「ただ強い殺人衝動にthrust動かされるだけのMonster、か。人の心は残っていない」
Amemiya Hirotoは向かってくる大Yomotsuikusaに、Light Attributeの攻撃magicを同時に十発放つ。
「GOGYAAAAA!」
大Yomotsuikusaは、放たれた蛍の光のように小さい攻撃magicを無視して、そのままHirotoに向かって突進した。
appetiteすら持たない代わりに肥大した闘争Instinctが、「回避する意味は無い」と判断したからだ。
大Yomotsuikusaにはscaleもskinも無いが、強靭なmuscle繊維の鎧と高い再生Abilityがある。表面のmuscleが多少傷ついても、数秒後には元通りだ。
だが、表面で弾けるはずのweak攻撃magicは大Yomotsuikusaのmuscle繊維の鎧を貫通した。
「GYO!?」
まるで豆腐か何かのように、大Yomotsuikusaのmuscle繊維やboneが貫かれる。すぐに再生が始まるが、体勢を崩して転倒するには十分なDamageだった。
そして転倒した先の地面から鋭い金属のneedleがcountlessに伸び、やはり大YomotsuikusaのBodyを易々と貫いた。
「-kunには急所は無いようだから、悪いがwhole bodyを穴だらけにさせてもらった。痛覚が無い事を祈らせてもらうよ」
小刻みに痙攣するだけに成った大Yomotsuikusaにそう告げながら、HirotoはAbilityを解除した。
「相変わらず無敵だな、-kunは」
「使い勝手が悪いだけさ」
そう言う【Avalon】のRokudou HijiriにHirotoは自身のAbilityの一つに付いて、そう言い捨てた。
Amemiya Hirotoは七つのattribute全てに適性を持つ以外に、七つの特殊Abilityを持っている。【Chant Revocation】や【Multi-Cast】はその中でも使い勝手が良いが、今大Yomotsuikusaに使用した【Ignore Defense】は逆に使い勝手の悪い Abilityだ。
Hirotoが放つ攻撃に対して、あらゆるものはDefense Powerを発揮できないと言う、simpleで強力なAbilityなのだが、simple故に一歩間違えると大参事になる。
例えば、【Ignore Defense】を使用しながらRifle銃を撃つと、targetが何を盾にしていようが銃弾は盾を貫通して命中する。しかも銃弾はそこで止らず、自然に止るまでtargetの向こうにいる人や建造物を貫通し続けるのだ。
更に爆発する【爆裂火Flame Bullet】等のmagicと併用して使うと、災害としか言いようがない被害を出してしまう。爆発範囲内に存在する物は、鉄筋コンクリートだろうが地面だろうが、発泡スチロールの-samaに砕いてしまうからだ。
迂闊に使えば、Hiroto自身も無事では済まない。
gameの中で使われる敵のDefense Powerだけを無視する攻撃のように、便利な代物ではない。
その癖、無視できるのはDefense Powerだけなので、攻撃こそ最大の防御とばかりに相手がmagicを撃ち返そうとした場合はAbilityが発揮されないという弱点まであった。
「謙遜するなよ、【Braver】。このまま皆の仇を取ってやろうぜ」
【Braver】、『Bravers』をorganizationしてからは逆に呼ばれなくなったHirotoのCodenameである。仲間の一人にそう呼ばれたからではないが、Hirotoは眉間に皺を作った。
「仇か……」
「Hiroto、まさかまだ奴らを保護するべきだと思ってるのか!? あいつらは天道を殺したんだぞ!」
Ghostに首を刎ねられた後、死ぬ数秒の間に【Clairvoyance】で見た情報をNarumiのTelepathy Ability【Angel】で仲間達に伝えた天道の死は、全員に大きな衝撃を与えた。
そしてその衝撃は、多くのReincarnatorの中で悔しさと怒りに変化した。【Noah】のMaoを殺された時点でもそうだったが、改めて『The 8th Guidance』は被害者では無く、Murakami達と同じ『加害者』であると強く認識したのだ。
「Hiroto、私も彼女達には手加減できない、そしてするべきじゃないと思う」
聖もそう言い。Narumiも彼の言葉に続いた。
「『The 8th Guidance』は宗教的なterroristじゃなくて、思想犯だと思って来た。でも、今は違う。Pluto達は私達を殺す為なら、自爆も厭わない。いえ、まるで自爆するために私達を狙っている-samaにも思える。
保護しようなんて考えていたら、逆に危険だわ」
Narumiから見た昨日までの『The 8th Guidance』は、冷たい思想犯だった。重sick等の命を助ける事で一定数の支持者を確保し、頑なにtarget以外のHumanが直接巻き込まれる事が無い犯行を続けてきた。
今ではPlutoをGoddessのように崇拝するfanも存在する程だ。
しかし、Maoを襲撃して以降『The 8th Guidance』の犯行は滅茶苦茶だ。仲間の犠牲を前提としているようにしか思えない。
hideoutの場所を知られ、Murakami達に裏切られた為追い詰められた結果と解釈する事は出来るが……。
「あの天道-kunを殺した『The 8th Guidance』の人は、天道-kun一人を殺せれば後は死んでも良いと考えていたとしか思えない。隙を見せたら、道連れにされかねない。
そう考えて」
「分かった。from hereは彼女達に対して他のterroristと同-samaに対応する」
『そうだ、Hiroto。Narumiの言う通りだ、それで良い』
【Angel】のnet workを通じて、別れて行動しているMinami Asagiが声をかけてくる。
『お前達はそのままPlutoの所に先に行け。俺達は、この先に居るらしいBaba Yagaを確保してから追いつく』
「お前も油断するなよ」
Hirotoの表情が始終曇っていたのは、このtacticsが【Oracle】のEndou Kouyaが彼に語った、「敵ally共に、最も犠牲が少なくて済む」tacticsの筈だからだ。
だが、既にそれを信じる事は出来ない程の犠牲が敵allyに出ている。
(【Oracle】が外れたのか? それとも、Kouyaが僕に嘘を? そんな事があり得るのか? あり得るなら、一体何故?)
「あ、一番大きなYomotsuikusaがやられた」
「じゃあ、そろそろ行ってくる」
死者のnameや顔、死んだ瞬間が分かる力を持つ少年、『Enma』の言葉を合図に、『Ereshkigal』の名で呼ばれる女が立ち上がった。
適当に奪った軍服を着て、アサルトRifleや手榴弾を装備し、口元を巻いて布で隠している姿は、他のmemberの異-samaと比べると普通の女terroristにしか見えない。
「出来るだけ道連れにするよう頑張るけど、あまり期待はするな」
「ここは皆殺しにしてくる、って強がるところじゃないの?」
「私をプレッシャーで殺したいのか?」
そう苦笑いしながら、Ereshkigalはroomを出て行った。彼女とAmemiya Hiroto達の間には、数匹のYomotsushikomeが蠢いているだけで、障害らしい物は殆ど無い。
後数分でEreshkigalと接触し、長くても一分で彼女を殺し、このroomの中に入って来るだろう。
「じゃあよろしくね、Enma」
「気が進まないな」
Enmaは立ち上がると、boneばった指を曲げて拳を作り、Plutoに近づく。
「最初に言っておくわ。ゴメンね?」
「tacticsだからって殴られる側が言う事じゃないよ、Pluto」
錆びた地下鉄の線路を進むMinami Asagi達は、Baba Yagaが潜んでいた場所に後数十meterと近づいた。その瞬間、破裂音と共に赤い炎が広がった。
「Baba Yagaだっ!」
「あたしに任せなっ!」
しかし、炎は赤城の【Ifritah】によって彼女の手の中に収束し、球体の形に纏まる。
【The 8th Guidance】の中で、Baba Yagaは唯一力がはっきりと知られているmemberだ。
彼女は俗にいう発火Ability者で、触れた相手に人体発火現象を起こさせ、最大で百meterまで離れた場所にある死体を含めた有機物を、急激に熱して燃やす事が出来る。
Baba YagaはそのAbilityを活かして、【The 8th Guidance】の中で唯一の戦闘要員として活動してきたのだ。
だからこそ、潜んでいる場所が分かれば対応は可能だとAsagi達は考えていた。
「そこだっ!」
「動きを止める!」
実際、Asagi達は彼女が隠れている場所にすぐ気がつき、Iwaoが【Titan】の重力操作で通路が崩れない程度に彼女がいる周辺の重力をEnhanced (1)する。
「クソッ! こっちに【Ifritah】を連れて来たのかよ!」
自分の体重が数倍に成ったかのような重圧に逃げるのは不可能だと判断したBaba Yagaは、得意技を封じられたと理解しつつも、隠れ場所から出るしかなかった。
だが、思い切り飛び出したはずが、【Titan】の重力によって実際には倒れ込むような鈍い動きだったため、待ち構えていたAsagi達の銃弾が、彼女のBodysuitを貫いた。
「がっ、はっ……!」
blood塗れに成って線路上に転がるBaba Yaga。その彼女に向かってAsagi達は更に銃弾を浴びせようとするが、その前に彼女はbloodの混じった叫び声を上げた。
「待てっ! 分ったっ、降伏するっ! 降伏するから撃たないでくれ!」
「なっ!?」
『The 8th Guidance』を思想犯から狂信的な集団だと認識を改めたばかりのAsagi達は、まさかBaba Yagaが降伏するとは思わなかったため、思わず動揺する。
「ど、どうする?」
「どうするって……確保するしかないだろ」
Asagiは吐き捨てるようにそう言った。
『Bravers』は国際機関から認められたorganizationであり、そして現代は中世のような情報伝達手段が限られたworldでは無い。
Baba Yagaが本当に降伏するとは思えないが、だからと言って無視して止めを刺すような事は出来ない。
もしかしたら、隠しcameraか何かでこの光景が録画されており、「降伏した犯罪者を、独断で私刑にするBravers」の動画がnet上を流れる可能性もある。
それでも普通のterrorist相手ならどうとでも言い訳できるし、世論も納得するだろう。しかし、相手は『The 8th Guidance』である。
各国の報道官やmass mediaがどれ程彼女達を悪者にしようと、実際に彼女達が殺すのはdeath attributeの研究を行う研究者やorganizationのHumanだけで、被害者が限られている。
更に、leaderのPlutoに命を助けられたと証言するHumanは、あらゆる国の富裕層から貧困層まで何人もいる。
そして『Bravers』には敵もいる。彼等のAbilityを利用したいが、彼等にあまり活躍されては困る権力者なんて幾らでも居るのだ。
その二つが組むと厄介な事に成るのは、政治に疎いAsagiにもわかった。
「Iwao、【Titan】を解いてやれ。このままだと失blood死する」
「だ、だが……」
「俺が【Mage Masher】をActivateして確保する。皆は、Back upを頼む。これで良いな、Hiroto?」
『すまん。だが、注意してくれ』
Asagiはあらゆるattributeの働きをNullification化する【Mage Masher】をActivateして、Baba Yagaに近づいた。
「……ひひっ」
Asagiを見上げて小さく笑う彼女は、自分のbody partから流れ出たbloodで真っ赤に染まっていた。頭部は無傷の-samaだが、四肢はcertainly胴体に幾つも弾が穿たれている。
今すぐ最新設備の整ったhospitalに運び込めたとしても、助かる確率は一割もなさそうに見える。
「なんだい……スケベ、が……」
「ボディcheckだ。爆弾でも抱えていたら拙いからな」
だが一切の同情を見せずにAsagiはまずBaba Yagaが、Weapon Equipmentを隠し持っていないかcheckした。
そして、Weapon Equipmentが無い事を確認してからやっと応急手当てに取り掛かる。生命維持のためのmagic itemをBaba Yagaに身に着けさせ、治癒magicの効果を高める薬品が入った注射を太腿に打つ。
だが効果は発揮されず、まるで穴の空いたバケツに水を注いでいるような徒労感を覚えた。
『Asagi -kun、私が行こうか?』
『Space-Attribute Magicで、何処かに運ぶか?』
治癒magicが得意なNarumiや、Space-Attribute Magicが得意な仲間から【Angel】越しに声がかけられるが、Asagiは首を横に振った。
「こいつは俺が確保する。NarumiはHiroto達のfollow、Back up組は周囲の警戒に集中してくれ。天道を殺したknife男みたいな奴がまだ要るかもしれない」
「knife男? ああ、Ghostのひぎぃっ!」
激しい痛みにBaba Yagaが濁ったscreechを上げた。
「黙ってろ、傷に触るぞ」
Asagiはそう言うが、彼女を黙らせるためにわざと痛みを与えたのは明らかだった。
「赤城、お前らは先に行ってHiroto達と合流しろ。ZombieもMonsterももういない、【Venus】も動いていないようだし、俺一人で十分だ」
「前でも後ろでも単独行動は危険だと思うけど……仕方ないね」
「俺は残らせてもらうよ。そのGhost? みたいなのがいるかもしれないって事は、あんたも危ないって事だろ」
赤城がため息をついて離れるが、【Titan】のIwaoはその場に残ろうとした。しかし Asagiは「俺は大丈夫だ」と首を横に振る。
「俺の【Mage Masher】ならDeath-Attribute Magicも消せる。安心しろ」
「分かったよ、楽天家なのか心配性なのかどっちだ」
肩を竦めてIwaoが離れ、仲間達と声が届かない程度に離れた事を確認し、Asagiは意識して【Angel】との間に壁を作った。
伝えたくない思考を【Angel】に流さない訓練は、Tsuchiyaだけでは無くAsagiも受けていた。
「おい、質問がある」
そしてBaba Yagaに問いかける。
「……なんだい?」
意外な事にBaba Yagaは素直に答えるつもりのようだ。逆に怪しいと思わなくも無かったが、Asagiはずっと気に成っている事を質問した。
「お前等は、何でこんな事が出来る?」
「はぁ? そりゃあ、お偉いDoctor連中がbody partを弄って、UndeadからManaを――」
「違う、そうじゃないっ。俺達が憎いのは分からなくもない。だからって、何で仲間や自分を犠牲にしてまで……いやっ、犠牲にする事が前提の戦い方が出来るんだ!?」
Baba Yagaが見上げるAsagiの瞳には、大きな困惑と理解できない存在に対する苛立ち、歯痒さがあった。
「お前等がそこかしこでsickやinjure人を助けているのは知ってる! それに、これまで殺してきたのは俺達か、death attributeの研究者やその関係者だけだ! しかも、お前は警備員を何人か見逃してるよな? 婚約者が身籠っていると命乞いした奴と、familyの写真が入ったrocketを首から下げてる奴だ!」
「……よく調べてるじゃないか。どうせ雇われ警備員だし、見逃しても別に良いだろう? 情に流されるも流されないも、あたしの勝手さ。それとも殺しておいた方が良かったってのかい?」
「そんな事は言ってない。俺は、流されるだけの情があるのに、何でこんな真似が出来るのか聞きたいだけだ!」
唾を飛ばして怒鳴るAsagiに、Baba Yagaはlipsが震えるのが分かった。
「body partに穴が空いてるってのに、笑わせるんじゃないよ。情があるから、こんな事やってるんじゃないのさ。
皆でHELLに戻る前に、worldで何よりも憎い連中を道連れに死のうって頑張るなんて、情がなきゃとても出来ないだろ?」
「だからっ、なんでそうなるんだよっ!?」
話を打ち切る寸前にまで苛立ちが大きくなった-sama子のAsagiに、Baba Yagaは聞き返した。
「あんた、もしかして生きてさえいれば良い事が必ずあるって考えてる系?」
「違うって言いたいわけか?」
「いいや、間違っちゃいないさ。あたし等も、研究所から逃げ出して以来良い事は数え切れないくらいあったからね」
意外な返事が返って来たことに沈黙するAsagi。彼に青ざめた顔に笑みを浮かべて、Baba Yagaは続けた。
「朝食べたbreadが美味かった、風が気持ち良かった、一仕事した後に呑んだ酒が美味かった、その酒をPlutoに飲ませたら一口でヘベレケに成るもんだから、腹を抱えて笑った。一月前、Enmaにやっとトランプで勝った、瞳と話して見たら思ったより良い奴だった、襲った研究所で拾ったコミックで爆笑した、radioで好きな曲が流れた、最後に食べたオニギリの具があたしの好きなサーモンだった……ほら、ちょっと思い出しただけでこんなに良い事があった」
どれもこれも小さな出来事だ。思い出と呼ぶにも小さすぎるような。しかし、どれも良い事であるのに違いは無い。
「だったら――」
「だったらテロなんて……復讐なんてせずに静かに隠れて平穏に暮らせば良かったって? でもさぁ、あたし等には先が無い。小さな良い事を頼りに生き長らえようとしたら、待っているのはそれを全部塗りつぶす苦しみとdespairだけ。
実際、あたし達が研究所から自力で逃げ出したら、world中の連中がblood眼に成って探しているじゃないか」
Asagiは、はっとした。Baba Yagaの瞳に深い虚無感がある事に、初めて気がついたからだ。
彼女を含めた『The 8th Guidance』のmemberは、全員がdeath attributeのManaを持っている。今、world中で求められているdeath attributeのManaを。
約十年前まで、world中に大量に供給されていたmagic item。毛生え薬から、治療不可能と言われた難Diseaseを癒す万能薬まで、多種多-samaなdeath attributeのitem。
それが今では新しく作られず、本格的な修復も出来ない。
そして人類の夢であるUnaging不死にdeath attributeが届きかけていた事実に気がついたworld中の政治家や高官、大富豪がdeath attributeのManaを手に入れようと躍起に成っている。
そんなconditionでBaba Yaga達が静かに暮らそうとしても、無理な話だ。
それにこのOriginは科学がEarth並にdevelopmentしているが、同時にmagicを使う事が当たり前のworldだ。たった一つのDeath-Attribute Magicしか使えない『The 8th Guidance』のmemberが普通に暮らそうとしても、不可能だ。身分証に、自分が持つattributeの適性を記入する欄まであるのだから。
この廃墟の地下鉄のような、誰も知らない場所に怯えながら隠れ住んでも、world中の人々が彼女達を探し出してManaを搾り取るだろう。
最大多数の最大幸福の追求の為に。
「お、俺達は……少なくともAmemiyaはお前達を助けようとしたんだぞ! それにAranや泉、それにMariだって殺す事は無かっただろ!」
Baba Yagaの瞳に宿る虚無から目を逸らそうとAsagiは叫ぶが、彼女はそれをbloodの混じった唾を拭き出しながら笑った。
「あはははは! あたし達を助けてくれたあの人を! 『Undead』を殺したお前等が!? その後あたし達を『保護する』って騙して他の研究所に売り渡したあんた達が、助ける!? 最期に笑わせてくれるじゃないか! ところで、Mariって誰だい? そんなnameの奴、殺した覚えはごぶっ! ……げほっ、そろそろ、おしゃべりも限界か。
まあ、良いさ、十分時間稼ぎに成ったからね、【Mage Masher】」
既に土気色に成りつつある顔に壮絶な笑みを浮かべて、Baba Yagaは動揺しているAsagiの手を掴んだ。
「おまえっ、まさか!?」
Asagiが彼女のbody partが熱すぎる事に気がつき、動揺を強引に意識から除けて【Mage Masher】によりManaを込める。
「自爆するつもりかっ! だが、お前等のDeath-Attribute Magicは――」
「あんたのAbilityは、生き物の体内でActivateしているmagicには効果が無い。ヒヒッ、Murakamiから聞いているよ」
「―っ!?」
発火Ability……accurateには、有機物を強制燃焼させて生物を焼死させるBaba Yagaの力によって、彼女のBodyは瞬時に鉄も溶かす高温を発しながら弾けた。
咄嗟に手を振り払ったAsagiは、【Mage Masher】を解除して防御用のmagicを展開する。しかし、最新のmagic媒体を使用してもこの超高熱を防ぐ高等magicを瞬時にActivateさせる事は出来なかった。
「――っ!?」
boneの一fragment、断末魔の叫びすら残せず、Minami Asagiは焼失した。
PlutoとEnmaが立て籠もるroomに繋がる通路まで進んだHiroto達は、行く手を阻むバリケードとそれを守るEreshkigalに遭遇した。
しかし、Ereshkigalはバリケードに身を隠しながら、こちらに向かってアサルトRifleで射撃してくるだけだった。
通常のterroristが並の警官隊に向かって行うなら十分な反撃だ。だが、『The 8th Guidance』が『Bravers』にするなら、反撃とは言い難い。
「どういう事だ?」
Amemiya Hirotoが不審に思うのも当然だ。彼等なら粗雑なバリケード程度ならmagicで簡単に破壊できる。
「時間稼ぎのつもりじゃないかしら? memberじゃなくて、護衛に残したZombieなのかも」
「いや、magicでVitalityを感知出来た。Undeadじゃない以上、何かのTrapだ。慎重に対策を考えるべきだろうね」
「でも、時間稼ぎだったらPluto達に時間を与えるのは危険なんじゃ――っ!」
その時、Narumiの【Angel】からAsagiの意識が消える。最後に伝わって来たのは、視界いっぱいの炎だった。
「これはっ! Asagiっ……!」
「そんなっ!」
Asagiの死を理解したHiroto達は、驚愕し仲間をまた一人失ったLost感に動きを止めた。例外なのは、【Avalon】のRokudou Hijiriぐらいだ。
「やはり一人にしたのは間違いだったか。せめて近くに赤城がいれば熱を操って助かる事が出来たはずだ。それに、彼は【Mage Masher】に頼りすぎた。最初から防御用のmagicを使っていれば……いや、素直に最初から逃げていれば……重度の火傷程度で済んだ可能性が高い……」
淡々と分析を口にする聖。
「聖! 小難しい事を言ってんじゃないよ!」
それを遮ったのは、【Ifritah】の赤城だった。その後ろを【Titan】のIwao達が追いかけている。
「おいっ、落ち着けってっ!」
「Asagiが死んだんだよ!? なのに落ち着けだってっ!? そんな事がよくも言えるね!」
「いや、それにしても限度ってもんがあるだろう!?」
怒髪天を突くような-sama子の赤城を止めようとするが、逆に彼女を増々激高させただけだった。
「慎重に何て言っているから奴らのTrapに引っかかるんだ! さっさとぶっ殺していればっ、誰も死ななかったんだっ、こんな風にね!」
「っ! 待てっ!」
咄嗟に制止しようとするHirotoを無視して、赤城が【Ifritah】で超高熱の炎をバリケードに向かって放つ。
「……一人だけか。無念」
それはバリケードごと隠れていたEreshkigalを瞬時に焼いた。人の形の松明に成ってもがくが、すぐに倒れて動かなくなる。
「はっ! Baba Yagaも、こうやって始末しておけば――あっ?」
その結果を見て赤城はそう怒鳴るが、それが終わる前に何と今度は彼女自身が炎に包まれた。
「なっ!? くっ、火を消せ!」
「もうやっているが、無理だよ。これは炎じゃない」
素早くWater-Attribute Magicで炎を消そうとした聖がHiroto達に答えた-samaに、間に合わなかった。赤城は数秒の間助けを求める-samaにもがいたが、すぐに倒れて動かなくなった。
その間聖を含めて仲間達が幾ら赤城を燃やす炎を消そうとしても、全く効果は無かった。なのに、赤城が黒い焼死体に成った途端、炎は幻のように消えてしまった。
「そんな……赤城-san」
「【Ifritah】が、炎に殺されるなんて……」
続けざまに起こった、それも理解を超えた死に方をした仲間の死に、Narumiや【Titan】は呆然と立ち尽くした。
「これは……あの『The 8th Guidance』のmemberの力か」
聖の言葉の通り、赤城が死んだのはEreshkigalの力によるものだった。
太陽の神だったNergalに負けた冥界のQueen Ereshkigalは、冥界の王座と自身の身を差し出し命乞いをし、Nergalが新しい冥界の神と成ったと伝えられている。
そのEreshkigalのCodenameを名乗っていた彼女は、自分が他者に負わされた傷をそのまま相手に負わせる力を持っていた。まるでCurseのような力だが、復讐の対象者を道連れに死ぬのにこれ程便利な力は無い。
だからEreshkigalを燃やした赤城はwhole bodyを焼かれて死んだのだ。そして彼女を焼く炎はどんな方法を使っても消せなかったのも、そのせいだ。
赤城を焼いたのは『Ereshkigalを彼女が焼死させた』事に対してActivateしたCurseだったのだから。
「そうなると、彼女は身を挺して私達を守ってくれたとも言えるな。もしあのバリケードを破壊するために全員でmagicを放っていれば、全滅していたかもしれない」
「聖っ、お前こんな時に何を――!?」
再び冷静に分析する聖に、今度は赤城を止めようとしていたIwaoが食ってかかる。それをHirotoが遮って止めた。
「待て! ……聖の態度に何の問題も無い。赤城をみすみす死なせたのは、leaderである僕の責任だ。
そして、僕達に必要なのは聖のような冷静さだ」
そう言い切るHirotoの言葉に、IwaoやNarumiは反射的に反論しようとする。この場に居ないmemberも【Angel】を通じて同-samaの意見を述べた。
だがHirotoの意見は変わらなかった。
「皆、僕達は仲間が死ぬ事にあまりにもdelicateだった。一人の死で動揺して怒りを抑えられず、冷静さを失ってしまう。
仲間の死を悼む事を悪い事だと言っている訳じゃない。自分と仲間の為に、冷静さを保つ事が必要だ。分ってくれ」
聖以外のBraversの仲間達はHirotoの言葉に納得する部分も大きかったのか、Iwaoも渋々ではあるが納得した。
だが、この手の問題はすぐには解決しないし、仲間が目の前で殺されても冷静さを保つ事がすぐに出来る訳がない。
「Iwao、-kun達はここでまだ動きを見せないTsuchiyaやMurakami達が来ないか警戒してくれ。Pluto達には、僕と聖、Narumiで対応する」
この場に残った中で最も信頼できる二人を連れて、Hirotoは残るPlutoとEnmaを確保するために向かった。
(Kouya、この件が終わったらどう言うつもりか答えて貰うぞ)
既にこのtacticsで死んだ仲間は四人。『The 8th Guidance』のmemberは残り二人以外死亡。各国から派遣された軍人達を加えると、死者は数え切れない。
このtacticsが最も犠牲が少ないと指示を出したKouyaへの疑念は、Hirotoの中で決定的なものに成っていた。
扉を蹴破るように開き、複数のmagicや銃をすぐに使えるconditionでHirotoを先頭にOrder室に突入した。
どんなTrapが待ち受けていようと、Pluto達がどんな切り札を持っていようと、動じずに彼女達を制圧する覚悟があった。
「っ!?」
しかし、飛び込んできた光景はHiroto達の予想から大きく外れていた。
殴られたのか鼻bloodを垂らしながら顔を抑えて蹲っているShoujoと、紅くなった拳を振るわせもう片方の手に銃の引き金に指を掛けた少年。
Shoujo、PlutoがHiroto達に向かって叫んだ。
「助けてっ! お願いっ!」
まさか自分達を殺したくて仕方が無い筈のPlutoから助けを求められるとは思わなかったHiroto達の動きが、思わず止る。
「Braversに命乞いをするなんて、この恥知らずめっ!」
「私を脅迫して言う事を聞かせておいて、何が恥知らずよっ! 私は復讐なんてしたくなかったっ、ただ静かに生きていたかっただけなのに!」
「こいつっ、殺し――」
怒鳴り合うPlutoと少年……Enma。激高した-sama子で銃口を彼女に向けるが、引き金を引く前にその頭に穴が空いた。
聖のEarth-Attribute Magicで作りだされた鋭利なneedleが一撃で彼の眉間を貫いたのだ。
「聖っ!」
「殺さなくても無力化はできたかもしれない。しかし彼の力が何なのか分からなかったので、しかたありませんでした。それよりもNarumi、彼女の保護を」
仰向けに倒れたEnmaを、それでも油断無く意識を向ける聖。Enmaの指は既に引き金にかかっていた。確実にPlutoを保護するためには、一撃で脳幹を貫き指が引き金を引かないようにするしかなかった。
「……済まない、お前の言う通りだ」
聖がとった行動は非情だが正しい。それを認めたHirotoは、振り返ってPlutoの-sama子を見ようとした。だが、その時には既にNarumiがPlutoに声をかけ、殴られた傷を癒そうとしていた。
こういう時は、同性の方が落ち着かせやすいかもしれない。出来れば速く訳を聞きたいが――。
「っ! しまった!」
Narumiの【Angel】を通して見たPlutoがにぃっと嗤っている事と、Narumiが声も出せずに硬直している事に気がついて、Hirotoはとっさに攻撃magicをActivateさせていた。
自分に近づき、ハンカチで鼻bloodを拭き治癒magicをかけようとするNarumiに触れた時、Plutoは勝利を確信した。
Enmaと下手な芝居を打った甲斐があった。
失笑でも嘲りでも何でもいいから油断させて、一瞬でもBraversの誰かに触れられれば良かったが、まさか二番目に殺したかった【Angel】のNaruse……Amemiya Narumiに触れられるなんて、僥倖以外の何物でもない。
(さあ、死ぬがいい!)
今まで数多くのsickやinjure人から集め貯め込んできた『死』を、Narumiに流し込む。それは黒い絵の具が他の全ての色を飲み込むように、NarumiのVitalityを侵す。
理想を言えばAmemiya Hirotoの方が良かったが、『Bravers』のleaderの妻を殺すのだ。十分だろう。
(気がつくのが遅かったわね)
脳内麻薬が分泌されているせいか、worldの全てがslowモーションに感じる。【Chant Revocation】のAbilityを持っているHirotoが、自分に向かってmagicをActivateさせるのがPlutoには見えた。
余程妻を殺されたくないのか、【Multi-Cast】まで使って複数のmagicを放っている。あれのどれが当たっても、自分は致命傷を受けるだろうと思った。
(でも構わないわ。大切な存在を奪われる苦しみを、これから先ずっと味わいなさい!)
深い満足感と共に、Narumiの生命を『死』で完全に塗りつぶそうとするPlutoだったが、異常事態に気がついた。
Narumiの中に、彼女以外の生命が存在する。
(これは……こいつ妊娠しているの!?)
Narumiの胎内には、新たな生命が宿っていた。ただ、それは胎児と呼ぶにも小さすぎる、uterusに定着する前の受精卵のconditionだった。
妊娠検査薬でも、Life-Attribute Magicの【探査】でも、気がつかない程小さく儚い存在だ。
(悔しいっ……こいつを殺せなくなった!)
PlutoはNaruseに流し込んだ『死』を、自分自身のVitalityをcostに猛然と吸い込み始めた。
「かはっ」
蒼白を通り越して土気色に近くなっていたNarumiの顔色が、瞬間的にbloodの気を取り戻す。逆に、Plutoからは恐ろしい勢いでVitalityが失われていく。
「ぐっ!?」
そのNaruseに触れる腕を、Vacuumの刃が切断した。Hirotoのmagicだ。痛みよりも溶けた鉄を当てられたような熱さがPlutoを襲った。
(悔しいっ! どうしてこの女を!)
Plutoは、反射的にまだNarumiを掴んでいる切断された手に向かってもう片方の手を伸ばした。
そして再び力を使う。その腕に、氷の槍がthrust刺さった。それでも力を使い続けた。
(どうしてこいつを、私がっ、こんなに必死に成って助けないといけないのよ!?)
幾度かの衝撃を感じた後、Plutoの意識は一瞬暗転して、すぐ戻った。
「な、なんで……?」
最初に確認したのは、Narumiのcondition。冷や汗を浮かべて尻餅を付いているが、『死』は全て吸い出せたようだ。
「くっ、治療を……!」
次にAmemiya Hiroto。途中でPlutoがNarumiを助けようとしている事には気がついた彼だったが、流石に既にActivateし放ったmagicを止める事は出来なかった。
顔に後悔を滲ませてPlutoに歩み寄ろうとするが、それをRokudou Hijiriが止めた。
「待て、Hiroto。彼女は触れた相手を殺せるらしい。近づくな」
「だがっ!」
「それに、もう手遅れだ。私達の中に死者を生き返すAbilityを持っている者は、いない」
どうやら、自分のconditionは非常に悪いらしいと、Plutoは安堵した。Amemiya Hirotoが近づいて来るのを止められたのは残念だが、死ぬ事は出来そうだ。
惜しむらくは、最後の手段であるhideoutの自爆も出来ない事だ。折角助けたNarumiの中の命も奪ってしまうかもしれない手段は、取れない。
「何で、私を殺さなかったの?」
「わたし……たち……殺す……の…………子……は……か……」
途切れ途切れに震えるlipsでそう言うと、Narumiは驚いた顔で手を自分の下腹部に当てていた。受精卵のconditionでは、気がついて居なくても仕方ないとはいえ、正直怒りが湧いて来る。
だが、それよりもPlutoには気がかりな事があった。
嫌な役回りをさせたEnmaになんて言って詫びるか。そしてleaderなのに誰も殺せなかった事を、皆に散々弄られるだろうと言う予感。
(仕方ないか……死にたかったのだからこそ、終わり方を選びたかったのだもの)
【Gazer】の予言通り、Plutoは二人見逃した。
『The 8th Guidance』 Baba Yaga、Ereshkigal、Enma、Pluto 死亡 member全滅
Murakami達 四人生存
『Bravers』 【Mage Masher】Minami Asagi、【Ifritah】赤城、二名死亡
Reincarnator 百一人中残り八十三人。
『死んで人生を終えた今こそっ、俺達は志を新たに団結するべきなんじゃないのか!? 思い出してくれっ、俺達はoriginally一つの学校で学んだ仲間だったはずだ!
生前の諍いを責め合うのは止めてっ、未来を見つめよう!』
Minami Asagiが、とても前向きで建設的な演説を行っていた。確かに、前世の恨みを死んだ後も引きずって、罵り合いを延々続けるのは不毛な行為でしかない。
『いっそ責めてくれっ! お前の怒鳴り声を聞いていたら耳が死ぬ!』
『死んだ後団結してどうするのよ』
『いいから、少し黙ってくれない? 死んでも煩いってどういう事よ』
『ああああ……あたしのidiot。頭にbloodを登らせるにしても、限度があるじゃないか』
呼びかけている仲間からのreputationは悪かった。
【Death Scythe】のKonoe Miyajiや【Super Sense】のGotoudaの二人のような元離反者だけでは無く、【Noah】のMaoはうんざりとした顔つきで耳を抑えている。Asagiの死に激高して死んだ【Ifritah】の赤城は、演説を殆ど聞いていない。
『何を言ってるんだ、お前等! そんな事じゃ、これから始まる三度目の人生も二度目と同じようにバラバラに成って仲間同士で殺し合う事に成りかねないぞ!』
そう主張するAsagiだったが、やはり支持は得られなかった。
『いや、今更無理だって。俺の【Calculation】でも、俺達全員……accurateには、九十九人が心を一つに出来る可能性は零に等しいって出たから』
『私の【Inspector】で、あなたが本気でそう主張している事は分かるけど、ね』
泉とAranも、それぞれのAbilityまで使って検討したが、九十九人の……Vandalieuと彼に魂を砕かれ消滅したKaidou Kanata以外のReincarnatorが、心を一つに出来る可能性は、ほぼ無い。
Asagiが言う-samaにReincarnator達の多くは同じ学校の、同じ学年の生徒だが、全員が友人だった訳ではない。それにAmemiya Hirotoのように偶然ferryに乗っていた乗客や、Maoのような職員もいる。
Earthで生きていた頃から一つに纏まっていた訳ではないのだ。
寧ろ、Originで『Bravers』という一つのorganizationに纏まっていたのが、不自然だった。another worldからのReincarnatorと言う共通する境遇と、Rodcorteが与えた「Reincarnator同士再会する」Destiny、そしてAmemiya Hirotoの圧倒的な力と、charisma性。それらが揃っていて初めて可能な事だった。
同じ事が三度目の人生で可能かと言えば、確実に不可能だろう。
『とりあえず、もう少し-sama子を見よう。場合によっては、まだ死人が出かねない。【Gazer】もまだ来ていないし、Kami-samaもまだ手が空かないようだ。
Rokudouが大人しくしてくれればいいが』
いいのだが無理だろうなと、【Clairvoyance】の天道は思った。