「こんなもんかい？」
逃げようとした二人目の獲物を焼き殺した『Baba Yaga』は、炭化して黒くなった焼死体を踏み躙った。
【Odin】と名乗って、数秒先の未来が視えるだのなんだの言っていた奴だが、目に見えない熱の攻撃には無防備だった。相方だった【Sylphid】の次に簡単に始末出来た。
勇ましい北欧の主神を名乗っていた奴が、Witchに焼き殺されるなんて滑稽だ。
Witchを名乗るには可憐な容姿を皮肉気な笑みで歪めたBaba Yagaは、通信機に向かって言った。
「【Sylphid】と【Odin】、後その他の兵隊を……maybe十人ぐらい始末した」
『確認した。『Ghost』が【Super Sense】を始末した。後、【Marionette】と【Death Scythe】も死んだ』
すぐに『Enma』から応答があり、仲間の戦果が報告される。
『他のSoldierはもう相手にしなくて良い。Valkyrieの勇士とIzanamiの置き土産が追い詰めているから』
「Murakami達はどうした？」
『Murakamiも含めて残り四人。ただ【Venus】のTsuchiya Kanako以外は監視cameraでも場所が分からない。Mana sensorにも反応が無いから、maybe誰かのAbilityで隠れているのだと思う。恐らく【Aegis】だ』
「チッ、逃げられたか」
残っているのは【Chronos】のMurakami Junpei、【Venus】のTsuchiya Kanako、【Aegis】のMelissa・Ｊ・Saotome、【Hecatoncheir】のDoug Atlasの四人。
『Bravers』のmemberはどんなAbilityを持っているのか情報をオープンにしている。その情報を基に考えれば、隠れられるAbilityは四人の内誰も持っていないはずだ。
しかしその『Bravers』から離反して、求められるままに元仲間を殺すような連中だ。隠し玉の一つや二つは持っているだろう。
連中が殺した元仲間には、あらゆる偽りを看破する【Inspector】のAbilityを持っている女がいたが、それをやり過ごす方法があったのだろう。
実際、Kaidou Kanataは【Inspector】の目から悪事を隠し続けていた。
「それでどうする？ 【Venus】をやるかい？ それともMurakami達がhideoutの何処かに居るんだったら、今の内にhideoutごと自爆するか？」
このhideoutは地下鉄網を利用した出入り口以外全て地下施設。そして『The 8th Guidance』の最終目標は死だ。
当然、このhideoutには自爆装置が用意されている。
今まで使わなかったのは、その自爆装置でもMurakami達を含めたAbility者を取り逃がす可能性があるからだ。
『いいえ。地上に『Bravers』が来ているようだから、自爆するとしたら奴らが中に入って来てから。もうそれ以外どうしようもなく成った後にしましょう』
聞こえてきた『Pluto』の言葉に、Baba Yagaは胸を高鳴らせた。
「へぇっ！ Amemiya Hirotoとその女も来たのか！ なら、歓迎しない訳にはいかないねぇっ！」
『そう言う事。じゃあ、これからジャミング装置を全部起動するから、これで言葉を交わすのは最後になるわ。何か言っておきたい事は在る？』
「特に無いね。じゃあ、死にそびれないよう気をつけな。愛してるよ」
『私達も愛しているわ、あなたも気を付けて』
プツリと通信が切れ、その後はノイズしか聞こえなくなった。今まで『The 8th Guidance』が襲撃し潰してきた各国の研究所から奪取した、複数のジャミング装置を起動したのだろう。
これでmagicだろうがSatellite回線だろうが、有線通信以外のほぼ全ての通信が遮断された。離れた所に音を運ぶWind-Attribute Magicさえ、十meterも届かなくなる。
「これであたしは孤立無援。前線に居るのはあたし以外にはGhostと、仲間の成れの果てだけ。敵はまだまだいっぱい。
なあに、たった一人で戦った『Undead』よりはずっとマシさ」
用済みの通信機を捨てて、Baba Yagaは歩き出した。
「やはり僕達を待たずに、勝手に動き出したのか」
【Noah】のMao Smithの命を捨てた献身によってAmemiya Hiroto達『Bravers』teamは、全員が無傷で地上に降りる事が出来た。
原形を止めていないMaoの遺体を一先ず氷の棺で包み獣に食い荒らされない-samaにしたAmemiya Hirotoは、彼女の死を悼む仲間と共にmagicやAbilityを駆使して『The 8th Guidance』のhideoutへとたどり着いた。
それまでにかかった時間は、たった三十分。驚異的な早さだ。
しかし、その三十分でhideoutを包囲しているはずの特殊部隊は各々勝手に動き、地上から姿を消していた。
「クソっ！ どうなってんだっ、何処の国の部隊も残ってないなんて！ 国際協調って言葉は何処に行った！？」
「Minami -kun、皆Death-Attribute Magicが欲しいのよ。それだけの力がdeath attributeにはあるから……それが、どんな犠牲を伴うものであったとしても」
激高するMinami Asagiを、Narumiが宥める。他の仲間達も勝手に動いた特殊部隊の軍人達と、彼等に密命を下した各国の上層部に失望を隠せないでいた。
(Kouya、これがお前の出した最も犠牲が少なくて済む方法なのか？)
Hirotoは口に出さず親友に問いかけるが、この時KouyaはBodyを乗っ取ったShadeによって殺されていた。
だがまだ情報が錯綜しており、Kouyaが自殺した事はまだHiroto達には伝えられていなかった。
「天道、【Clairvoyance】で状況を確認してくれ」
Hirotoに指示された天道達也は【Clairvoyance】……accurateにはRodcorteから与えられた二つのCheat Ability、透視Abilityと霊視Abilityを同時にActivateさせて、地下hideoutの全貌を見回した。
そして眉間に深い皺を刻み、「HELL絵図だ」と呟く。
「特殊部隊の連中は逃げたんじゃなきゃ、殆どやられたようだ。戦力として期待は出来ない。それどころかrescueを求められそうだ。
敵は武装したZombieが十二体に、それをCommandingしているらしい女のZombieが一体。後、skinの無い類人猿に似たMonstrosityが暴れまわっている。それに……Baba Yagaを確認。
後、奥にPlutoが居る。周りに女が一人と、男……少年が一人。maybe、『The 8th Guidance』のmemberだ」
惨憺たる状況に幾人かの顔が顰められる。Asagiは、天道に続けて質問した。
「Murakami達はどうした？ 死んだのか？」
「……【Venus】のTsuchiya Kanakoの姿以外、確認できない」
「確認できない！？ お前の【Clairvoyance】なら最新の光学迷彩でも見つけられるはずだろっ！？ じゃあ、逃げたのか！？」
「いや、確認できないだけだ。Murakamiを含めたTsuchiya以外の五人の姿が、hideoutの中だけじゃなくて周辺にも見えない。
【Death Scythe】と【Marionette】、【Sylphid】に【Super Sense】の死体は確認した。だから、逃げた訳じゃないと思う。恐らく、何らかの方法で俺の【Clairvoyance】から隠れているんだ」
そうconjectureする天道。彼のconjecture通り、Murakami達はMelissaの【Aegis】のShieldによって天道の【Clairvoyance】を遮断して隠れていた。
【Aegis】に攻撃だけでは無く探知系のAbilityも防ぐ力がある事は天道やHirotoも知らないが、Murakami達が逃げたとは思えなかった。
Murakami達が何を目的に『The 8th Guidance』と行動を共にしているのか、『Bravers』はまだ確信を持っていない。ただMurakami達に宗教的、政治的な思想は無く、恐らく何らかのビジネスとして行動をしているはずだとは、分析していた。
だとすると、目的は恐らく現在確認されている中で唯一death attributeのManaを持つ『The 8th Guidance』のmemberを拉致、若しくは確保する事だろう。既に何処かの国かorganizationに雇われているのか、目的を遂げた後に売り込むつもりなのかまでは分らないが。
……【Calculation】のAranと【Inspector】の泉がいないのが惜しまれる。
だがこのconjectureが間違っていなければ、今の状況でMurakami達が逃げたとも、逃げられたとも考え辛い。
目的を遂げずに逃げてMurakamiに先があるか不明だし、そもそも三十分前までhideoutは各国の特殊部隊に包囲されていたのだ。その特殊部隊のSoldierとMurakami達の仲間の死体がhideoutの中に転がっている以上、まだ中にいると見て良い。
「では、何故Tsuchiyaだけ姿を見せている？ 隠れ損ねたのか？ 天道、彼女はどんな-sama子だ？」
【Avalon】のRokudou Hijiriに尋ねられた天道は、Tsuchiya Kanakoの-sama子を詳細に観察する。しかし、不自然さは見つけられなかった。
「Murakami達と合流出来なかったのかもしれない。光学迷彩でUndeadやmonsterからは隠れようとしているらしいが……」
「事情は、彼女に話す気があれば分かるだろう。だが、今は彼女も確保する敵の一人だ。Murakami達は彼女も入れて残り六人と【The 8th Guidance】が四人」
実際にはMurakami達の内、【Gazer】のMinuma HitomiはJackと共に離れた場所で落下死、そして【Odin】は焼死している。だが、流石の【Clairvoyance】の天道でも視覚を使うAbilityである以上遥か後方のMinuma Hitomiの死体を見つける事は出来ない。それに砕けた炭が【Odin】の死体だと気がつくのも無理だった。
だがそれを数えても敵は十人と、Undeadとmonster。状況は悪いが、自分達なら何とかできなくはない。
「Hiroto、悪いが捕まえるなんて甘い事は言うなよ」
しかし Asagiが厳しい顔つきでそう言った。
「『The 8th Guidance』もMurakami達も、俺達を殺す気だ。特に『The 8th Guidance』は、自爆も厭わないぞ。そんな相手を生きたまま捕まえるなんて、危険すぎる。
俺も奴らの身の上を知らない訳じゃないが、な」
「すまないが、私も同意見だ」
「私も。同情しない訳じゃないけど、ね」
「可哀そうだと思わなくもないけど、その前にあいつ等は仲間を殺した。そうだろう、leader」
Asagiの言葉に、口々に仲間達が賛同する。【Noah】の中ではAsagiの演説に賛同的では無かった聖達も、Maoが殺された事で考え方を変えたようだ。
「私も、あなたが彼女達に同情しているのは分っているけど……あなたにも危険な事はして欲しくないの。彼女達には、悪いけど」
Narumiも特殊部隊の軍人やMurakamiの仲間達、特に【Death Scythe】や【Sylphid】を殺したらしい『The 8th Guidance』を生きたまま捕まえる際の危険性を、大幅に修正したようだ。
「……分かった。確保は、出来たらで構わない。Murakami達も、『The 8th Guidance』も」
Hirotoはこう言うしかなかった。この状況はKouyaの【Oracle】が出した予言に従ったからだが、この「最も犠牲の少ないtactics」の筈が、多くの犠牲が出ている。
それにtacticsが始まった後の具体的な指示が無い以上、厳しい判断を下さなければならなかった。
「Baker、【ヘルメス】で天道が見たhideoutのmapを。Narumi、【Angel】でTelepathyを繋いでくれ。一度降伏を呼びかけて、答えが無ければ俺達と特殊部隊の奴等以外は遮断だ。その後、特殊部隊の生き残りを誘導してくれ。
天道はここに残って僕達をSuport。Baker達五人は天道を護衛してくれ。
後は二班に分かれる。Asagi達は特殊部隊の生き残りのrescueを先にしてくれ。僕達は『The 8th Guidance』に対処する」
Narumiの【Angel】は、確認した存在と意識を繋ぐ事が出来るTelepathyに近いAbilityだ。感覚で言えば、ビデオチャットに近い。距離が離れていても、どんな妨害装置が使われても、念じるだけでリアルタイムに通信する事が出来る。また【感覚共有】のAbilityも持っており、通信を繋いだ者同士なら視覚や聴覚を共有する事も可能だ。
あまり大量のHumanを繋いだ場合、一度に感覚を共有するとHumanの脳の処理Abilityの限界を超えてしまうが。
繋ぐときに対象が何処にいるのか分からなければならないという制限はあるが、通信機器が発達したOriginでも有効なAbilityだ。
実際、このAbilityが無ければhideoutに入った途端ジャミング装置で通信は不可能に成っていただろう。
その【Angel】でNarumiはまず天道の【Clairvoyance】の視界と繋ぎ、居場所の分かった相手を全てTelepathyで繋ぐ。
このAbilityはHumanにしか使えないため、ZombieやIzanamiのBodyから発生したYomotsushikomeやYomotsuikusaには届かない。
そして行われた降伏勧告に、生き残っていた軍人達は自分達が三十分前まで『Bravers』を出し抜こうとした事を忘れて、生還出来る希望を見つけたと安堵した。
『The 8th Guidance』ではPlutoは只管心を無にして沈黙を、EnmaとEreshkigalは冷笑を、Baba Yagaは嘲笑を返した。
「今更降伏なんてする訳ないじゃない」
そしてTsuchiya Kanakoもそう返事をしながら、【Venus】をActivateした。
このAbilityを『Bravers』に所属していた時はただの魅了の力だと彼女はHirotoやNarumi達に語っていた。そのAbilityでfanを魅了し、Idolとして成功したのだと。
だが、実際は違う。
「Copy、そして貼り付けて……」
【Venus】の本来の力は、自分と双方向のcommunicationが可能なconditionの対象に、Memoryや経験、emotionsのCopyや張り付けが出来る洗脳Abilityだ。
KanakoはこのAbilityを使ってIdolとして成功していたのだ。自分より歌やdanceの上手いライバルの経験を自分にCopyし、好意的なemotionsをAuditionの審査員やtelevision局のProducerーに張り付けてchanceを手に入れて来た。
fanも一人出来れば、その好意と熱狂を地道に貼り付け続けて増やした。
結果は単純な魅了と同じだが、双方向では無いconditionの相手には使えないAbilityなので、画面越しに見ている人達にも売れるよう、Copyした経験を物にできる-samaに努力はしてきた。
ズルをしたとはKanakoは思わない。EarthでもOriginでもEntertainment業界ではコネや所属事務所の力が大きい魔界だ。その魔界で、自分は与えられたaptitudeを最大限活かした。それだけなのだ。
「それをHirotoに台noneにされたんだから、あんた達も台noneにされても文句は言えないよねぇ？」
Abilityを偽装するのは簡単だ。Shimada Izumiの【Inspector】を潜り抜けるには、偽らなければ良いのだ。「貴女のAbilityは？」と言う質問に、「このAbilityを使ってfanを夢中にさせたの」と答えれば良い。
説明不足や言葉不足も少しだけなら、【Inspector】は見抜かない。【Death Scythe】も同-samaの手段を使って、自分のAbilityを大きく見せていたようだ。
長く付き合えば露見していたかもしれないが、『Bravers』に一度詰問を行った後は、泉は仲間に他愛も無い質問以外は殆ど尋ねなかった。恐らく、familyや友人の嘘を見抜いて傷ついた経験でもあったのだろう。
(じゃあ、KanakoだけはTelepathyを繋いだままにするから。でも何か言ったら皆にばれちゃうから、気を付けて)
(ありがとう、Narumi)
そう応えながら、Narumiの洗脳が上手くいった事にKanakoは口角を釣り上げた。
【Angel】は今まで何度も経験している。Telepathyで伝える事と伝えない事をcontrolする訓練も受けているので、問題無い。
Kanakoは【Angel】で交わされるHiroto達の会話を聞きながら、前もって隠しておいた有線通信機の場所に向かった。
「同じAbility者相手の洗脳はあまり効かないけど、全く効かない『The 8th Guidance』の奴等とは違って、三十分から一時間は保つ。これで向こうの状況は丸わかり♪
あいつ等がPluto達を確保するか殺すかしたら、それを横から横取りってね」
「哀れだな」
特殊部隊の生き残りのrescueを行っていたAsagiは、まるで生きているかのように素早く滑らかに動き、銃火器はcertainly、magic媒体を起動する事で数種類だけだがmagicも使いこなすZombieの向こうを見ながら言った。
そこにいるのは、旗を引きずりながらよろよろと無-samaに歩くプラチナブロンドの女のZombie。
Valkyrieの成れの果てだ。死んだChampionをGuiding戦乙女のCodenameを名乗る女が、Undeadに成って動き回っている姿は、滑稽と言うには無残過ぎる-samaにAsagiには見えた。
「どうすんの？ あたしの【Ifritah】で他のZombieごと火葬する？」
「止めてくれ、燃やす範囲が広すぎだ。ここは地下だぞ、俺達も酸欠で倒れる。だったら俺の【Titan】で――」
『その通路が崩落すると、Hiroto達と合流するのに時間がかかるよ』
一流のFire-Attribute Mage以上に炎を自在に操る【Ifritah】の赤城と、重力を操る【Titan】のIwaoがそれぞれclicking tongueして引き下がる。しかし、正攻法で突破するにはZombie勇士は手強い相手だ。
そこでAsagiは憐れみを浮かべたままの表情で、盾にしている壁から姿を晒した。
「ここは俺の【Mage Masher】に任せろ」
「お、おいAsagiっ！」
反射的に止めようとする仲間を無視して、AsagiはZombie勇士の向こうにいるValkyrieに向かって走り出す。
当然Zombie勇士達はAsagiに銃口を向け、magicを放とうとする。
「【Mage Masher】っ！」
その刹那、AsagiがAbilityをActivateした。彼のAbilityは、彼を中心とした一定範囲内でmagicの効果を消し、magicのActivateを不可能にする。
そのためZombie勇士達はmagic媒体を使用しても、magicが使えなくなる。だがしかし、magic itemでは無い通常の銃火器を停める事は出来ない。
しかし Zombie勇士達は向かってくるAsagiを蜂の巣に出来なかった。まるで時間が止ったかのように動きを止めていた。
AsagiはそのZombie勇士達の間を走り抜け、緩慢な歩みを続けるValkyrieに肉薄すると、愛用のハンドガンの銃口をその額に押し付けた。
「悪いな」
引き金を引き、Valkyrieの頭に二つ目の風穴を空ける。頭部を破壊すれば活動を停止するのはEarthのZombie作品のtheoryだが、OriginのUndeadも頭部を破壊すればほぼ退治する事が可能だ。
Valkyrieが倒れて動かなくなったのを確認するとAsagiは振り返り、既に彼の仲間に倒されただの死体に戻ったZombie勇士達の姿と――
「悪いな、じゃないわ」
「Asagi -san、今のあんたが突っ込む理由ありました？ 無いですよね？」
こちらを睨みつけて来る仲間達に、頬を引き攣らせた。
「いや、俺の【Mage Masher】を使うのが、tactics上一番効率的だろ？」
AsagiのCheat Ability【Mage Masher】は、自分を中心とした一定範囲内の全てのattributeの働きをNullificationにするAbilityだ。
山火事や洪水などの自然現象、機械式の銃などに対しては無力だが、magicを相手にする時は圧倒的に有利なAbilityだ。特にOriginでは余程旧式でなければ軍事兵器、戦車や戦闘ヘリ、高性能爆薬には必ずmagic itemが組み込まれている。そのため【Mage Masher】と呼ばれているが、同時に兵器殺しでもある。
「奴らがDeath-Attribute Magicを使っている事は分っていただろ？ death attributeでもattribute magicには変わりない。俺の【Mage Masher】ならNullification化できる。
だが、同時に【Ifritah】のFire-Attributeと【Titan】の土attributeも消してしまう。Mage Masherなんて呼んでいるが、実際にはattributeに関係しているならAbilityでもかなり阻害するからな。だから俺一人でPierceするのが一番って事さ」
そう説明するAsagiだったが、【Angel】で発せられたNarumiの声にすぐ論破された。
『Asagi -kun、最初から【Mage Masher】の効果範囲内にZombieが全て入っていたのだから、Pierceしないでその場に留まって、皆で銃を撃てば良かったんじゃない？ あなたのteamは、皆機械式の銃を装備しているはずよね』
「……返す言葉もございません」
謝るAsagiに仲間達は苛立ちを呆れに替え、大きなため息を吐いた。
「Asagi、あんたはもうfieldを走る選手じゃないんだ。スタンドプレーは抑えてくれ」
「全くだ。Valkyrieが体内に機械式の爆弾を埋め込んでいたらどうするつもりだ」
「すまん。だが、どうにも慣れなくてな」
Asagiはどうにもorganization的な動きと言うのが苦手なTypeだった。自分が前で動いていない事が、仲間の後ろで待機している事が、まるで悪い事をしているかのように感じてしまう。
普段は抑えているがふとしたきっかけで頭を出して、先ほどのような行動に繋がってしまう。
「それに、こいつが哀れでな。俺が撃つ前から、頭に弾痕があった。maybe、Murakami達の内誰かの仕業だ。仲間の裏切りで殺された後もZombieに成って戦うなんて、Maoの仇の仲間でもちょっと、な。
赤城、焼いてやってくれ」
【Ifritah】の赤城は、「いいの？」とAsagiに聞き返した。
「『The 8th Guidance』の死体は回収する-samaにって、国連から要請されているだろ」
表向きとは言え、非人道的なdeath attributeの研究は禁じられている。しかし、terroristの死体に残留しているManaを解析する事を、非人道的とは誰も言わない。
それでDeadly Diseaseに犯された患者の命が助かるなら、政財界の大物達の寿命が少し伸びるなら、安い代償だ。
「二度も死んだ後、死体も弄られるなんてあんまりだ。死ねば皆仏、だろ？」
「あたしはこのworldの仏教に入信した覚えは無いよ」
そう言いながらも、赤城は【Ifritah】で出した炎でValkyrieの遺体を火葬した。灰になるまで燃やせば、残留していたManaも霧散する。
「止めなくて良いのか、Hiroto？」
【Titan】のIwaoがそう呼びかけると、苦笑いが混じった口調の返事が来た。
『Iwao、どうせ聞くなら赤城が灰にする前に聞いてくれ。……Valkyrieの遺体は、戦闘の結果焼失した。そう報告する』
death attributeの研究を良く思っておらず、『The 8th Guidance』を助けようとしていたHirotoは、Asagi達の行動を止めるつもりは無かった。
death attributeの研究が進むと言う事は、再び『Undead』や『The 8th Guidance』のような存在が創りだされると言う事だ。確かに最大多数の最大幸福は望ましいが、あれはあまりにも惨すぎる。
(それに、death attributeは存在しない方が……存在してはならない力だ。そう感じる)
生物をUndeadにする力もそうだが、Hirotoはdeath attributeにEarthで生きていた頃に聞いた、Humanのクローニングや遺伝子操作、タイムマシーン等、生きているHumanが足を踏み入れてはいけない領域のように感じられているのだ。
人類の手に余る力だと。
それらの考えは個人的なものなので【Angel】には現さずに、Hirotoは思考を切り替えた。
『天道、Baba YagaとMonster、【Venus】の現在位置を教えてくれ。それらに対処し、同時にPlutoを確保する』
『分っ――かっ！？』
だが、天道の思考が不意に乱れる。
『どうした！？』
「天道っ！？」
『敵襲だっ！』
『天道-kunが、ああっ、もう間に合わない！』
【Angel】のnet work中に、screechと怒号が満ちた。
漆黒の肌をしたスキンHeadの、引き締まった体つきの長身の男。それが『The 8th Guidance』のmemberの一人、『Ghost』だった。
この寡黙な青年が得た力は、誰の目にも止まらない事だった。IzanamiとIsisのようにMonsterやUndeadを作りだしたり、ValkyrieのようにZombieを操ったり、Jackのような瞬間TeleportationやShadeのようなPossessionも出来ない。
ただ、路傍の石のように他者に察知されない。それだけだ。
瞼を閉じて暗がりに佇めば、仲間すら彼の姿を見失う。監視cameraやsensorにも、反応しない。軍事基地を警備する歩哨の目の前で一分間ずっと反復横跳びをした事があるが、それでも気がつかれなかった。
その驚異的な隠形Abilityを活かして、Ghostは特殊部隊の軍人達を暗殺し、【Super Sense】を始末し、そして地上に出て『Bravers』を待ち伏せていた。
hideoutに入らず地上に残って仲間のfollowをするBack up要員を暗殺するために。
驚くべき事に彼はHiroto達が地上で話している間、ずっとすぐ近くに佇んでいたのだ。
(殺せるのは、出来て誰か一人)
幾らGhostでも声をかけるか、攻撃をするなど相手に触れたら気がつかれてしまう。
それにGhostのWeapon Equipmentは、ただのknife。彼の隠形Abilityは他のattributeのmagic itemや機械式の兵器と相性が悪く、持ち歩くと力が発揮できないからだ。
逆に、knifeには自信がある。牛の首も切断できそうな分厚く長い、knifeよりも剣と評した方が良さそうなこの得物を使って、Ghostは一日で最大十人の首を刎ねた事がある。
だが、得意なのは不意を突いて一撃で首を叩き落す事だけで、格闘戦の技術自体はアマチュアだ。
(誰が殺せる？)
Amemiya Hirotoは駄目だ。周りに人が多すぎる。
Amemiya Narumiも、同-sama。
そこで選んだのが、【Clairvoyance】の天道だった。Hiroto達の会話から彼が重要な役割を果たしている事を察したGhostは、timingを見計らって護衛のBraversの横を素通りして近づいた。
「っ！？」
そして後ろから一撃で天道の首を落した。いつもの脛boneを断つ手応えと鈍い音を立てて彼の首が地面に落ち、立ったままの胴体から鮮bloodのshowerが吹き上がる。
「えっ？」
「こいつ……敵襲だ！」
ポカンとした間抜け面を晒し、慌てて身構える残りの『Bravers』にGhostはそこだけは白い歯を見せて晴れやかに笑った。
「勝ったぞ」
そしてknifeを振り上げて残りの『Bravers』達に切りかかった。その動きは遅くは無く、『Bravers』達は彼等にとって前触れも無く突然現れた-samaに見えたGhostに対して、動揺していた。
しかし、次の瞬間にはGhostのbody partを炎の弾丸や風や光の刃、電撃が彼のBodyを引き裂いた。
元からこの結果は分りきっていた。隠形が破れたGhostは、magicも使えないただの青年でしかない。
(勝ったぞ、Izanami、皆)
だがGhostは死ぬその瞬間も、悔しいとは思わなかった。天道の首を落した時点で、彼は勝っていたのだから。
だが、首を切断された天道もただでは死ななかった。
Narumiの【Angel】は言葉では無く、思考を直接他者に伝える事が出来る。天道は「助けてくれ」でも「死にたくない」でも無く、『Clairvoyance』を使って視た情報を驚異的な集中力で【Angel】のnet workに全て流した。
(俺も……負けちゃ……いない)
そして天道の意識は途切れた。
『The 8th Guidance』 Ghost、死亡。 Valkyrie及びZombie勇士、全滅。
Murakami達 【Super Sense】、【Odin】 死亡。残り四名。
『Bravers』 【Clairvoyance】の天道 死亡
残りReincarnator 百一人中八十五人
『俺も、負けちゃいないっ！』
『うん、負けちゃいないな』
『自分が不甲斐無く思えるほど、見事だったわよ』
聞き覚えのある声に驚いて顔を上げた天道が見たのは、背中に純白の翼を背負い頭の上に天使の環を乗せたAranだった。
『はぁっ！？ 何だって天使がAranと同じ顔をしているんだ！？』
『驚くのそこかよ！？』
『ぷっ！ あはははは！ 天道っ、良く言った！』
『うわ！？ Maoっ、-kunは死んだはずじゃ……な、何で俺の首が胴体と繋がっているんだ！？』
驚く天道が周りを見回すと、Aranそっくりな天使以外にもMaoやShimada Izumi、他にも見覚えがある者が何人も居た。
『そうか、ここは天国……ではなさそうだな』
胡乱気な顔で天道が見つめたのは、かなり不気味な集団だった。
『……女怖い女怖い女怖い――』
座り込んで、ぶつぶつと同じ事を呟き続ける【Marionette】Inui Hajime。
『てめぇらっ、よくも裏切ったなっ！』
『はいはい、ごめんなさいねー。悪かったわ～、コウカイシテマス～』
『Konoe、今現世が良いところだから黙ってろ』
『クソッ！ Abilityが使えればお前等を殺してやれるのに！』
『いや、使えても無理だからね。heartも無い死人をどうやって殺すのよ』
そして激怒している-sama子の【Death Scythe】Konoe Miyajiと、彼を適当にあしらっている【Sylphid】と【Odin】、そして【Super Sense】。
Humanの善悪を断じるのはarroganceかもしれないが、天道には彼等がいるこの場所が天国だとは考えにくかった。
『ここはあの世の待合室か、何かか？』
『天道、-kunにも本当にすまない事をした。私が不甲斐無いばっかりに、-kun達を死地に導いてしまった。詫びようも無いが、せめて謝らせてくれ！』
『っ！？ Endou……！ なんであんたまでここに居るんだ！？ 謝るのは構わないが、まず事情を説明してくれ！』
『ああ、何言っても無駄だよ。あたしも暫く謝られ通しだったから。いやー、驚いたよ。あたしのすぐ後に死んでこっちに来たんだから』
天道より先にこの場に来ていたMaoは、ある程度事情を理解しているのか、すっかり落ち着いた-sama子だ。pilot姿のまま、何で出来ているか不明な床に寝そべり、スナック菓子を頬張りながらColaを飲んでいる。
『……死人でも飲み食いできるとは驚いた。どうなっているんだ、死後のworldは』
『あなたが比較的冷静で助かるわ、天道。事情を説明したいけど今私とAranの上司のKami-samaが忙しいから、口で説明する事に成るけど』
『Kami-samaが、上司なのか？』
『ええ、色々あってね。一応私もAranも天使の端くれよ』
『……似合わない』
『だろーなぁっ！』
いじけた-sama子のAranの声を無視して天道が周りを見回すと、この場にいない仲間が一人いる事に気がついた。
『特殊部隊のSoldier達や『The 8th Guidance』の連中がいない事からconjectureすると、ここに来るのは俺達一度reincarnationした連中だけか？』
『基本的にはその通りよ。私達EarthからのReincarnatorは、死んだら自動的にここに来るようにEarthで死んでOriginにreincarnationした時から決められているの』
『そうか。あいつ等だけでもどんな顔をすればいいのか分からないのに、Soldier達はまだしも『The 8th Guidance』までいたら落ち着くどころじゃないから助かるな。
ところで、Kami-samaが忙しいというのは、【Metamorph】のShihouin Mariに関する事か？ 姿が見えないが……それとも三カ月以上前に死んでいるから、もう天国かHELLに行ったのか？』
そう質問すると、泉達は一応は押し黙り肩を落とした。
『いや、あいつが忙しいのは【Gazer】のMinuma Hitomiの魂と『The 8th Guidance』の魂をこっちに呼ぼうとしたら邪魔されたからさ』
『【Gazer】も死んでいたのか。じゃあ、【Metamorph】は？』
肩を落として沈痛な表情のまま、Kouyaは天道に答えた。
『【Metamorph】のShihouin Mariは、ここに来てないそうだ。まだ、彼女は生きている』