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Side Chapter 17: 連鎖(Origin)

 『Bravers』の【Noah】が操縦するステルス戦闘機の反応が消えた。戦闘機を貸し出した軍からもたらされた情報は『The 8th Guidance』のhideoutを包囲したまま待機している各国の特殊部隊員達にとって、衝撃的だった。


 一般の人々にとって『Bravers』はheroだが、彼等軍属にとってはそれだけでは無い。彼等にとってAmemiya Hirotoたちは、Cheat……『ずるい』存在なのだ。

 滅多に表れないGeniusが百人も同世代に出現し、その殆どが極東の島国出身。しかもmagicとは異なる原理不明の『Ability』を最低でも一つ以上所有している。


 その『Ability』にもよるが、彼等は一人一人が一国を揺るがす力を持つ。

 『Fallen Champion』のKanataは、【Gungnir】でどんな障壁も擦り抜けて遠距離からの狙撃で命を狙う。

 Kanataを殺した【Metamorph】のShihouin Mariは、spy映画も超える変装のAdeptHumanも体格も瞬時に変えて、指紋やretina、声紋はcertainlyManaの波長で個人を特定するsensorすらNullificationにできる可能性が高い。


 【Oracle】のEndou Kouya、【Calculation】のMachida Aran、【Inspector】のShimada Izumi。どれもこれも反則だ。


 特に恐ろしいのが【Braver】のAmemiya Hirotoだ。もし彼がworld大戦前に生まれていれば、worldの覇権を握ったのはUnited StatesNorthern Europe Federationでは無く極東の島国に成っていただろう。


「それで、ステルス戦闘機の反応から消えたのは、『The 8th Guidance』の攻撃によるものか? 『Bravers』の連中は生きているのか?」

 ある国の特殊部の隊長は、部下に確認を取ると直ぐ答えがあった。

「不明です。ですが、【Noah】のMao Smithの生命反応は途絶えました」


「なるほど、あの厄介な女が消えたか」

 Maoは、『Bravers』の中でもかなりの要注意人物としてmarkされていた。それは問題になる言動が多かったからでは無く、彼女が持つ【Noah】のAbilityが厄介だったからだ。


 【Noah】の中に収納された存在は、外からは絶対に探知できない。貴金属、銃火器類、麻薬、何でも好きに運ぶ事が出来る。certainly、人もだ。

 もしMaoが【Noah】の中に危険な生物兵器を入れて運んだら? その想像は各国高官の胆を冷やすには十分すぎる。


 今までは『Bravers』には社会的信用があったが、進んで『The 8th Guidance』に協力しているMurakami Junpei達の存在がある。

 どんな高潔な人物も、犯罪に手を染めないとは言い切れない。


 だから死んでくれたのは悪くない。最高なのは自分達の国に鞍替えして永久就職してくれる事だが、他国や犯罪organizationに鞍替えされるよりはずっと良い。


「まずは『Bravers』の被害状況を確認し、tacticsに参加できるconditionかどうか連絡を待つ。それがtheoryだ。

 しかし、既に『The 8th Guidance』にこのtacticsが露見している可能性が高い」

 そうでなければ最新のステルス戦闘機が行方不明に成り、若く健康なpilotが死亡するはずがない。


 何故Radar設備を所有していないはずの『The 8th Guidance』が、ステルス戦闘機の接近に気がついたのか。Abilityを持つMurakami Junpei達の仕業という可能性もあるが、『The 8th Guidance』のmemberは全員が通常のattribute magicが使えない代わりに、それぞれ一つだけDeath-Attribute Magicを使う事が出来る事が分っている。


 どちらの可能性もある。


「隊長、Murakami Junpei達の中に該当するAbilityの所有者はいないはず。やはり、『The 8th Guidance』では?」

 既にMurakami Junpei達のAbilityは、知れ渡っている。

 Murakamiは、他のBraversAbilityや自分や近くの他人が唱えたmagicActivate timingを遅らせる事が出来る、【Chronos】。そして常にActivateしているManaSuper Healing


 仲間のTsuchiya Kanakoは他者を魅了する【Venus】。ただ、同じ『Bravers』のAbility者には効かない。

 他にも肉眼で顔を見た相手を即死させる【Death Scythe】、five sensesEnhanced (1)する【Super Sense】、Bodyを気体に変える【Sylphid】、一度触れた他人を操れる【Marionette】、Mental Power者の【Hecatoncheir】……-sama々なAbility者がいる。


 特に厄介なのが未来を見る事が出来る【Gazer】だが、Murakamiに拉致された時はほぼ廃人同然だったらしいので、まだAbilityを使えるかは不明だ。


 しかし、隊長はその情報を信用してはいなかった。所詮は、『Bravers』からの情報だからだ。自国の情報部の情報も間違っている事があるのに、余所の情報を鵜呑みにできる訳がない。

Ability者同士が協力すれば、情報に無いAbilityの使い方が出来るかもしれん。それにだ、切り札を隠し持っていないとも限らない。油断するな。

 我々には極秘命令が下っている。命令通り、これよりtacticsを開始する!」


 そして部隊は『Bravers』の安否不明のまま、他の部隊に呼びかけもせず動き出した。

death attributeManaをその身に宿す『The 8th Guidance』のmemberは、必ず我が国が手に入れる! 死体で構わん、殺して奪取するぞ!」

「「「はっ!」」」


 death attributeを発見した軍事国がその後どれ程の利益を手に入れたか知っている各国の高官は、自国がその栄華を手に入れる事を望まずにはいられなかった。

 何より、あのmagicには人類の夢であるUnaging不死を実現できるのではないか。そう考えたら、そして他国がそう考えるのではないかと思ったら、もう止まれない。


 たった一種類使えるだけの『The 8th Guidance』がこれだけの猛威を振るって来たのだ、一国がdeath attributeの全てを独占したら、どれ程の脅威になるか。なら、自国が『管理』する事が正義だ。


 そう考えた上層部から極秘missionを下された特殊部隊は、この部隊だけでは無かった。




 特殊部隊の軍人達は鍛え抜かれたBodyに、研鑽を積んだ高度なmagicの使い手。そして、最新の装備を身につけていた。

 Light-Attribute Magicを応用した光学迷彩のmagic itemcertainly Fire-Attribute Magicを使った対熱源sensorや対赤外線のmagic itemも万全。

 そして銃火器類にknife、各種薬品、最新鋭グローブ内蔵型『杖』、機械式とmagic式どちらでも通信可能な通信機器。


 一人一人が戦車を上回る戦闘Abilityを持つ、超人兵だ。それが十数名から三十名程の部隊で、十国から送り込まれている。


 彼等にはmissionをやり遂げる自信があった。そして、自分達が鍛え抜かれた軍人であると言う自負があった。

 正体不明の力に頼ったアマチュア……民間人気分の抜けない『Bravers』や、訓練も受けていないモルモットに、状況さえ整えれば決して負けない。loseはいけない。

 そんな思いがあった。


 Amemiya HirotoReincarnator以外のHumanに迫害されないために、あえて自分達が特殊なAbilityを持っている事をオープンにした。しかし、何をしても反発するHumanを零には出来ないのだった。


(対人地雷にブービーtrap。やはりアマチュアの仕事だな)

 そして特殊部隊の軍人たちは、『The 8th Guidance』のhideoutである地下鉄網に仕掛けられたTrapを次々に攻略して進んだ。普通の警官や通常missionの軍人ならin any case、彼等にとっては散歩courseを歩くのと変わらない。


(これが『The 8th Guidance』か? 随分と――)

 タタタと、連続した乾いた音を聞いたと同時に彼の思考は永遠に止った。


 突然何も無いspaceから銃口が十何本もthrust出て来て、特殊部隊を銃撃し始めたのだ。

「敵襲っ!?」

「【Stone Wallよ、在れ】!」

 咄嗟に放ったEarth-Attribute Magicで石の壁を築き、銃弾から身を隠す。


 その一隊をCommandingする隊長は、他の国の特殊部隊が競争相手を始末しようと不意打ちを仕掛けて来たのだと考えた。

 そうでなければ最新の光学迷彩を使う敵なんてありえない。

「エイザムっ、ナパームだっ! ベックっ、タイラーっ、酸素っ!」

 このまま籠っていても、十秒と持たずmagicStone Wallは崩される。そう判断した隊長は、他国の特殊部隊員達を始末する事を決断した。


 指示を受けた部下が上Class Fire-Attribute Magicを、そして仲間を守る呼吸可能な空気の膜を作るWind-Attribute Magicを唱える。


delivery!」

 合図で石の壁の一部に穴が空き、その穴目がけてFire-Attribute Magicが発射される。同時に、空気の防御膜が仲間全員を包む。


 轟音と衝撃。今頃壁の向こうでは酸素が全て燃焼され、敵が呼吸できずに灼熱の空気の中もだえ苦しんでいる事だろう。

「生命反応は?」

「ありません。死亡を確認」

 生命attributemagic itemを仕込んだsensorで敵の殲滅を確認。


 そして仲間の存在を確認し、手早く応急手当てを行おうとした時……石の壁が砕け散った。


BAKANAっ!? 敵は死んだはずっ!?」

 再び降る銃弾の雨の中、隊長は敵が何者なのかを知った。

『う゛あああああああああ!』

 焼けただれた顔で呻き声を上げる、武装したUndead兵。酸素を必要としない、生命亡き兵団が彼等の敵だった。




「はっはっはっはっはっ! 圧倒的ではないかっ、我が勇士達は!」

 古風な旗を携えた、シルバーブロンドを腰まで伸ばした長身の美女、『Valkyrie』は自らがCommandingするUndead達の攻勢に次々に倒れる特殊部隊員達の姿を見て、高笑いを上げた。


 それを見ながら、【Death Scythe】のKonoe Miyajiは「全くだ」と言った。

「普通、Zombieは雑魚じゃないのかよ」

「雑魚とは失礼だな!? 我が勇士達は死をも恐れず戦い続ける、真のChampionだぞ!」

「そりゃあ、もう死んでるんだから、今更怖がる訳がないでしょーね」


 OriginではUndeadは存在するが、それは死体に何らかの理由でManaが残留して自ら動き出すmonstersの一種とされる。多くの場合は獣同然に暴れまわるだけで、生前の知識や技術は失われている。magicを使うなんて例外は、『Undead』ぐらいだ。

 だから、普通なら幾らZombieが群れで襲い掛かっても、特殊部隊の軍人を倒す事は出来ない。多少の時間稼ぎが精一杯だろう。


 しかしValkyrieCommandingするZombie勇士達は生前と同じように銃火器を扱い、簡単な物ならmagicを唱える事さえ出来た。


「尤も、全ては死体を集めてくれた同志達、そして『Isis』の力のお蔭だ。私はそれをCommandingしているだけに過ぎない」

 Zombie勇士達が生前と同じAbilityを発揮しているのは、dreadlock hairの黒人系のfemale、『Isis』の力によるものだった。


 かつてバラバラにされた夫の遺骸を繋ぎ合わせてrevivalさせたGoddessのように、Isisは死体を生前と同じ力を持つUndeadに変える事が出来た。一体作るのに一時間から半日の時間が必要なので、今死につつある特殊部隊の者達を新たに加える事は出来ないが。


 そしてValkyrieの力は、本来ならcontrol不能なUndeadを操る事。それだけである。

「故に、我はこうして勇士共々矢面に立たん! 今まで-sama々な研究所や犯罪organizationから鹵獲してきた装備も、存分に使わせてもらおう!」

「俺は付き合いたくないんだが……」


Konoe、お前から見て右に高性能爆薬で地下通路を吹き飛ばそうとしている奴が居る。殺せ』

「はいよ、Murakamiの旦那」

 通信機から受け取った命令に従って、KonoeWind-Attribute Magicで特殊な超音波を放った。そして、それを拾ったsensorが彼の意識にtargetの顔を映し出す。


「【Death Scythe】」

 それだけでtargetの軍人は心停止を起こして、数度の痙攣だけを残し死亡する。

Helmetさえしていたら、安心だと思ったか?」

 【Death Scythe】は肉眼で顔を確認した相手しか即死……heartを止める事が出来ないのは、本当だ。だが、肉眼にsensorを埋め込み、Helmetや仮面を通り抜ける特殊超音波による反響で顔を確認する方法でも、【Death Scythe】で殺せる。


 Murakamiの誘いに乗った後開発した方法なので、『Bravers』もそこから情報を得た特殊部隊もこの奥の手を知らない。


「済んだか? ならば進軍するぞ! 偽Champion共が到着する前に、前菜はこのValkyrieIzanami、そしてBerserkflatげる!」

 凛々しい美貌で男前に宣言するValkyrieに、Konoeは嫌そうな顔をした。


「なんで態々前に出るかな。Commanderってのは、普通後ろにいるもんだろ」

「私の力は、私を中心に一キロまでしか効果が無いからだ! 勇士達だけ前進させると、範囲外に出た勇士がCommandingを聞いてくれなくなる。

 お前は私の後ろにでも隠れているがいい!」

「へいへい」


 そしてValkyrieKonoeとは別の場所で、『Izanami』の猛威がElite軍人達を襲っていた。

「ぎゃああああっ!?」

「ば、monsterっ! monsterだっ! なんで光magicがきかねぇっ!?」

「銀の弾丸も聖水も塩も、対Undead装備が効かない! 聞いてないぞ、こんな話はっ!」


 その特殊部隊を派遣した国は、極秘のdeath attribute研究所を何度か『The 8th Guidance』の襲撃で潰されており、その際警備に付いていた死体を彼等が持ち帰るのを知っていた。

 だから死体をUndeadにしてhideoutを守っているのではないかとconjectureし、対Undead装備を大量に支給したのだ。


 しかし、そこに配置されていたのはUndeadCommandingするValkyrieでは無く、Izanamiだった。

「ギギギ!」

「ギハァァっ!」

「GYAOOOOOO!」


 中型犬程の大きさのchunk of meatに鋭いclawsが生えた短い四肢とfangsが並んだ口を張り付けたような、monster。『Yomotsushikome』、そしてmuscle繊維が剥き出しに成った類人猿のようなappearanceをした『Yomotsuikusa』。

 この二種類のappetiteしか頭にないmonsterを産みだす事が、IzanamiAbilityだ。


「う゛ぐふっ! ……お行き、行って喰って来い」

 体中を覆うbumpknifeで根元から削ぎ落とし、地面に放るIzanami。すると、bumpが「メ゛リ゛メ゛リ゛」と生々しい音を立ててmonsterに変化して行く。

 それと同時に、Izanamiの傷口は見る見るうちに塞がって行く。

 

「くふぅっ、さあ、殺しておやり。この醜い姿のmonsterに、意味をくれた『Undead』を滅ぼした奴等じゃないが、その同類共だ。さあ、たんとお上がり」

 IzanamiBodyは、bumpだけでは無く内臓まで全て癌細胞に似た無限に細胞分裂を繰り返す細胞に変質している。そのため、脳を七割以上破壊されなければ死なないとconjectureされる程の不死性を持つ。


 しかし、軍事国の研究所に居た時は死なないだけで何の役にも立たないモルモットだった。だが、Undeadに助けられた時に宿ったdeath attributeManaによって、body partから切り離したbumpを大きさによって二種類のMonsterを作り出す事が出来る-samaになった。


 その二種類のMonsterYomotsushikomeYomotsuikusaによって、精鋭揃いの筈の特殊部隊は見る見るうちに劣勢を強いられていく。


 だが、その代償にIzanamibumpが見る見るうちに膨張して行く。短時間で繰り返される損傷から回復しようと、細胞がrunawayしているのだ。

「くくっ、このままだとbumpに圧迫されて、内臓が……脳が潰れるねぇ」

 Growしたbumpの重さで歩く事も不自由に成ったIzanamiは、ゴールラインが見えてきたことを認めると、通信機に向かって囁いた。


「私は、そろそろ身軽に成るとするよ」

『もう少し持たないのかい?』

 出番を待っている『Baba Yaga』の声に、Izanamiは苦笑いを浮かべた。


「後数分なら持つだろうけど、もう少しで声が出せなくなりそうなんでね」

『そう……じゃあ、後は任せて。お休み、Izanami

『また会おう、同志よ!』

『俺もすぐ逝く、待ってろ』


 PlutoValkyrie達からの挨拶に「ああ、あっちで待ってるよ」とIzanamiは答えると、Isisから受け取ったswitchを取り出した。

 そう言えば、そのIsisの挨拶が無かったが……maybe Murakami達のせいだろうから、別に良いか。


「私のbody part全てよ、奴らを一人でも多く食い殺すんだよ」

 カチリとswitchを押し、頭蓋boneの内側に仕込んだ爆発のmagic itemを起動させる。その爆発自体は小規模だったが、Izanamiの脳髄を破壊するのには十分だった。


 paceト状に成った脳やbloodの混じった液体を顔中の穴から垂れ流しながら、Izanamiは倒れた。

「GURUuuuu……」

 そして、肉が軋む音をさせながら立ち上がった時には、GiantYomotsuikusaと化していた。


 野獣の咆哮を地下鉄に響かせたGiant Yomotsuikusaは、獲物を求めてまだ抵抗を続けている特殊部隊に向かって突進した。




「グルオオオオオ!」

 他の通路でも、獣が咆哮を上げていた。

「リー! 正気に返ってくれっ、リー!」

 だが獣は、つい先ほどまで『The 8th Guidance』と戦っていたAsia圏から派遣された特殊部隊所属のリー・ジャン軍曹だった。


 その『The 8th Guidance』のmemberは熊から剥いだfurを纏った太った大男で、しかし猫科の大型肉食獣のような俊敏さと熊のMysterious Strengthを併せ持つ、恐ろしいFighterだった。

 接近を許せば一撃で手足か頭、内臓のどれかを持って行かれる。


 本来ならそもそも接近を許さないのだが、敵の後方で援護している『Bravers』の裏切り者、【Hecatoncheir】のDoug Atlasと【Aegis】のMelissa・J・Saotomeのせいで上手く防げない。

 そうして三十名の部隊の内十名を犠牲にして、ようやく獣を倒したのだが、何故か獣に止めを刺したはずのリー軍曹が新しい獣として仲間を殺しまくっていた。


「グオゥ!」

「リーっ、俺だっ、チェンだっ! ぎゃっ!?」

 knifeによる接近戦のスペシャlistだったリーは、獣と化してもその腕を存分に振るい、悲痛な声で自分の名を呼ぶ同僚の首を斬る。

「あれはもうリー軍曹ではない! 敵諸共殲滅せよ!」

 その光景に特殊部隊の軍人達は遅ればせながら認識を切り替えると、リー軍曹に向かって本格的な攻撃を開始した。


 銃での射撃、携帯性magic媒体を使用して詠唱時間を短縮したmagic-sama々な攻撃がリー軍曹に殺到する。

「攻撃の手を緩めるな! 敵は手足を完全に破壊するまで動き続けるmonsterだと思え!」

 だが逆を言えば手足を完全に破壊……whole bodyを挽肉にしてやれば動きを止める程度のmonsterだ。そして特殊部隊の生き残りたちは、それが十分可能な技術と装備を所有している。


 しかし、それも当てられればだ。

「グオオオオオン!」

 霞のような白い盾がリー軍曹の前に出現し、何と銃弾もmagicも全て弾いてしまった。それを認めて軍人達は顔を青くする。


「【Aegis】め! パクとシャオリーは何をしてる!?」

 そう叫ぶCommanderらしい男の言葉に、リー軍曹の後方にいる二人の内一人、アフロヘアの男が答えた。

「それって、ついさっきオレが握り潰しちゃったこの二人の事かな?」

 giantに握りしめられたようにwhole bodyboneを砕かれて細くなった死体と、頭を握り潰された死体を指差して聞き返すが、答えは無い。


「普通の声じゃ届く訳ないでしょ、Atlas

「おい、俺を阿斗羅須って呼ぶな!」

「あー、はいはい。Dougね、Dougって呼べば良いのね。……ああ、面倒臭い」

Melissa、人が守ってやっているのにその言い方は、おっと!」

 白人とAsia系のハーフの女、Melissaの後ろで銃弾が弾かれる硬質な音が響く。


「鼠がもう一匹!」

 続いて、何も無い筈の虚空からboneが砕け肉が潰れる酷い音が響いたかと思うと、光学迷彩のローブで身を包んだ軍人一人分の挽肉が出現した。


「お仕事ご苦労-sama

「うわ、色気の無い労いだな、おい」

「こっちはあの獣……Berserkの面倒を見るので手一杯なのよ」

 女の名はMelissa・J・Saotome。絶対防御のShieldAegis】を張るAbilityを持つReincarnatorだ。彼女の【Aegis】はあらゆる物理的magic的な攻撃を防ぐ事が出来る。しかし自分を中心に張るか、自分からある程度離れた場所に出すかの、どちらか片方しか出来ない。


 今のように獣……『The 8th Guidance』のBerserkを守るために【Aegis】を出現させると、彼女自身は無防備に成ってしまう。


 それをfollowするのが【Hecatoncheir】のDoug AtlasEarthでは「worldを支える男に成れ」と言う両親の願いを込めてShirai Atorasu(しらい・あとらす)と名付けられた少年だった男の役割だ。

 彼は強力な【Mental Power】と、【Omni-directional perception】、そして赤外線や紫外線、Mana等視覚を切り替える事が出来る【Force Vision】の三つのAbilityを所有するAbility者だ。


 それから百の腕と複数の頭を持つgiant、【Hecatoncheir】のCodenameを名づけられた彼は、光学迷彩等を駆使してBerserkより先にMelissaを始末しようとする軍人を次々に挽肉にしていく。


しかしBerserkの奴も気持ち良く暴れてんなぁ。あの失敗作、調子に乗ってんじゃないか?」

「調子に乗るも無いでしょう、獣並の知能しかないんだから」

 次々にSoldier達を殺していくBerserkの後ろ姿にそう言う二人の耳に、Murakamiからの通信が響いた。


Izanamiが死んだ。そろそろだ』

「OK」

 短く返事をすると、Melissaは最後のSoldierを殺したBerserkから【Aegis】を解除。

「じゃあな、クマ公」

 そしてDougMental Powerを放つ。


 しかし突然の裏切りの筈の、しかも不可視のMental Powerによる攻撃をBerserkは横に飛んで回避した。

「グオウ!」

 そして驚くべき運動Abilityを発揮して、壁を蹴ってAccelerationしながらDoug達に襲い掛かろうとする。


「ありゃっ、久しぶりに避けられた。だけどな――」

 獣の腕力とHumanのテクニックで振るわれたknifeの一撃が、Melissaが大きく展開した【Aegis】によって弾かれる。


「ギオオオオオ!」

「そして、【Hecatoncheir】のCodenameは伊達じゃないんだわ」

 そして一瞬だが動きが止った隙を逃さずに、DougBerserkwhole bodyを丹念にMental Powerで握り潰す。


「はい、終わり……じゃないのかよ、しぶといクマ公だな」

 ミンチに成ったリー軍曹から、ズタズタに裂けた熊のfurが離れる。そのまま、比較的原形が残っている死体に向かって、這いずって行く。


 この熊のfurこそが、Berserkmain bodyだ。

 Death-Attribute Magicの研究の為に行われた数々の動物実験で生み出された、副産物。死体や生きているHumanInfestして、戦闘に関するテクニックはそのままに獣の力を与える。

 その代わりにInfestされたHumanは生きていれば瞬時に脳の一部を破壊され、死んでいるならそのまま、Berserkに養分を吸われながら暴れる、Berserkerと化す。


 北欧のlegendに在るBerserkerから『Berserk』と名付けられ、生物兵器として使えないかと研究されたが、失敗作の烙印を押されてしまった。

 何故なら偶然の産物だったためどうしても新しいBerserkを創り出す事が出来ず、更に唯一のBerserkfurだけで生きているInfest生命体であるため、脳などを改造してcontrolする事が出来なかったからだ。


 市街地で無差別に暴れさせることは出来るだろうが、訓練されたSoldierの部隊の前ではweak。そう判断された。

 SoldierBerserkが乗っ取ったHumanBodyを破壊するための銃火器を持っているし、何よりEarthSoldierと違ってmagicを使いこなす。

 Berserkが次々とInfestするHumanを変えても、すぐにfurの方がmain bodyだと見抜かれ、Fire-AttributeLight Attributemagicで焼かれるか、Water-Attributeで氷の中に閉じ込められてしまうだろう。


 多額の予算と労力と時間をBerserkの効果的な運用を行うために使うよりも、他の研究に回した方が良い。そう判断されたためだ。


 そのBerserkが一般的なSoldierよりもずっと高度な訓練を受けている特殊部隊相手に活躍できたのは、何故か他の『The 8th Guidance』のmemberには従順で指示を聞いた事と、【Aegis】のfollowがあったからこそである。


「でも、終わりだ。furの一部は貰っとくけどな」

 Berserkの艶やかなfurは、Dougによって動かなくなるまで引き裂かれてしまった。




 何故最新鋭の装備に身を固めた、magicUnarmed Fighting Techniqueも銃火器の扱いも一流の彼等が一方的に追い詰められるのか。彼等も今までの『The 8th Guidance』の犯行から綿密なtacticsを練り、対策を講じてきたはずなのに。

 だと言うのに、何故?


 それには三つの要因がある。まず、『The 8th Guidance』は、これまでIsisValkyrieZombie勇士とIzanamiMonster、そしてBerserkを完全に温存してきた。そのため、誰も彼女達の情報を持っていないので対策の練りようが無かった。


 次に、特殊部隊の目的が『The 8th Guidance』のmemberを生死問わず確保し、持ち帰る事である点だ。

 無理に生け捕りにする必要はないため、各特殊部隊は「殺して死体を収容する」事を目標に行動しているが、それでも死体が残らないような、若しくは回収に時間がかかるような攻撃は出来ない。


 そして『The 8th Guidance』が選んだhideoutは廃墟の地下鉄網。spaceは限定され通路を崩落させるような攻撃は躊躇う。折殺しても死体の回収に時間がかかると他の特殊部隊に妨害や、『Bravers』の横やりが入る可能性が高いからだ。


 中にはValkyrieIzanamiBerserkの回収を諦め、姿を見せないPluto達の確保を優先して通路を故意に崩落させようとする部隊もいるが、その場合障害に成るのが最後の要因だ。

 それが元『Bravers』のMurakami達が持つ『Fortune』である。


 Pluto達は『Bravers』や『Undead』がanother worldからのReincarnatorである事は、知らない。Murakami達もそこまで情報を渡していない。

 しかし、彼女達は『Bravers』を狙う内に、彼等全員が妙に運が良い事に気がついた。


 Fortuneにも銃弾が急所を外れたり、Fortuneにもterroristの情報を偶然掴んだり。まるでコミックやドラマのprotagonistのように運良く命が助かり、-sama々なDestiny的な偶然に助けられて目標を果たしていく。

 それは本当に運が良いだけなのか?


「最初は幾らPlutoの言う事でもあり得ないと思ったけど、やっぱり違うようね」

 適当に作ったSurgery室で、dreadlock hairをした黒人系の美女のIsisは正面に立つ【Marionette】のInui Hajime(いぬい・はじめ)に話しかけた。

「そうかな? ただの偶然じゃないの?」

 粘着質な口調で聞き返す初に、Isisは「いいえ」と応える。


「貴方達と組んだ途端、何もかも上手く行くようになったわ。tacticsに邪魔な【Calculation】に【Inspector】、そして【Oracle】まで始末出来た。【Noah】も始末して、他のBraversの到着を遅れさせることが出来た。

 今も、実戦経験の無いIzanamiValkyrie、それにBerserkが各国の精鋭相手に圧倒している。全て貴方達のお蔭よ」


 Pluto達『The 8th Guidance』がMurakami達を受け入れたのは、『Bravers』と殺し合いをさせる為と言う理由と同時に、そのFortuneDestinyを利用するためでもあった。

 RodcorteからReincarnator達に与えられた『Fortune』と『Destiny』によって、彼等は守られている。だから『運良く』生き残り、活躍する事が出来る。


 だが、Reincarnator同士が敵対するとその『Fortune』や『Destiny』が上手く作用しなくなる。Plutoはそれを知っていた訳ではないが、Kaidou KanataShihouin MariTrapにかかり、その場は辛うじて生き延びたが三日後死亡した事に注目し、そうなのではないかと推理した。


 そしてそれは正解だった。


「だから、貴方達には感謝しているわ。私もBerserkを最後に思いっきり運動させる事が出来たし。特にJackね。お蔭で瞳と一緒に逝く理由が出来たのだし」

 そして、そう言い終えると言葉を切った。礼を言われた初は、ニタリとSmiling Faceを大きくする。


「……訳は聞かないのかい? 『それなのに何故自分達を裏切るのか』って」

 初は自分の【Marionette】のAbilityで指一本動かせないIsisにそう聞いた。聞いておきながら、彼女の答えは求めていないらしく、すぐに口を開いたが。


「まあ、-kun達は僕達が裏切る事を最初から予想していたみたいだね。その通り、僕達はMurakami senseiに誘われて良い子-chan集団の『Bravers』から抜けた時から、-kun達を裏切るつもりだった。

 accurateには、その時からUnited Statesの諜報organizationに再就職していたのさ。-kun達に合流したのも、そのorganizationのお仕事でね」


 ニヤニヤと得意気に事情を語る初。まるでコミックのBAKANA悪役の-samaだが、相手はIsis一人。全てのUndeadValkyrieに預け、飼っていたBerserkも手放した、attribute magicも使えず銃も使えない女だ。

 しかも、既に首から下は【Marionette】で初がcontrolを握っているため、指一本動かせない。


 初の【Marionette】は、触れた相手のnerveを乗っ取る事で操るAbilityだ。ただ、直接肌と肌で触れあう必要はない。

 Wind-Attributemagicで起こした微弱な電撃で対象と一瞬でも『繋がれ』ば、それで条件は整う。


(こっちは一年以上潜入missionなんて泥臭い事をしてきたんだ、ちょっとは役得があっても良いよね)

 抵抗できない相手を嬲るのは、堪らない快感だ。それが良い女なら、尚更。


 しかし body partの自由を奪われたIsisは初の告白を聞かされても、穏やかなSmiling Faceを崩そうとしない。

「余裕じゃないか……良い事を教えてあげるよ。-kunの仲間は、Murakami sensei達に遺体を回収される。生け捕りじゃないよ、-kun以外は色々生け捕りにするのが難しいからね。

 もう死んだ連中は良いのかって? あいつ等の回収は良いんだ。Izanamiは死んだ後自分の死体をMonsterに変えるだろうし、Shadeはそもそも体が無い。Jack-kun達を逃がしかねないから、先に死んでもらった方が良い」


 全てこちらの掌の上だったさ。そう得意げに語るが、IsisSmiling Faceには変化が無い。

 それに苛立ちを覚えた初は、声をさらに大きくして彼女の仲間を嘲る。

「【Gazer】の事は良いのかって? 良いとも、あいつは元から仲間じゃない、Murakami senseiの指示で今回のmissionで役立てるために攫って来た、使い捨ての道具さ。でも-kun達と仲良くなるなんて思わなかったよ、あの不気味なpumpkin頭と仲良くなってさぁっ、意外とやるもんだよね、あの売女も!」


 そう吐き捨てた時、やっとIsisは顔を顰めた。

「もう少し声を抑えてくれない? 貴方の声って、ねちゃって感じで耳障りなのよね」

「そんな事はどうでも良いんだよ、クソ女っ! 余裕かましやがって!」

 望んでいた反応とは完全に違う言葉を返され、初は激高した。


「自分の立場が分っているのかっ!? 僕がその気に成ればその場でストリップや犬の真似をさせる事も出来るんだぞ! お前はこのまま僕に生け捕りにされて、モルモットに逆戻りだ! 嫌だったら泣いて僕に媚びて見せたらどうだ!?」

 喚き散らす初。Isisは顰めていた顔を微笑に戻すと、哀れむようにして言った。


body partの自由を奪った女を更に脅迫しないと何も出来ないなんて貴方、もしかして女の子と手を握った事もないんじゃない?」


 初は、ざぁっと自分のbloodの気が音を立てて引くのが分かった。

「もういいっ、Shut Up

 完全にキレた初は、Isisの脳にまで【Marionette】の効果を広げた。そうするとただの木偶人形同然に成ってしまい反応が楽しめないが、既に彼にとってIsisは愉しむ対象ではなくなっていた。


「ふんっ、お前をUnited Statesに売って手に入れた報酬で、もっといい女と……何で、まだ笑っていられる!?」

 脳まで支配したHumanは、表情やeyeballすら初の支配下になる。しかし、初の意思に反してIsisは微笑み続けていた。


 そんなBAKANAと驚愕する初に、Isisは微笑を深くして応えた。

「貴方の【Marionette】は、人のnerve細胞を乗っ取るAbilityなのよね。なら簡単よ。私、医学的には脳死conditionなのよ。

 研究者共に脳死conditionにされたまま活かされていた私を、『Undead』が魂で直接Bodyを動かせるようにしてくれたの」


 それは当時の『Undead』、Vandalieuにとって「自力で動いてくれないと面倒だから」程度の理由で起こされた奇跡だった。


「脳死conditionだと!? そんなBAKANAっ、脳が機能しないで生きていられるHumanなんて……っ!?」

「驚くより先に考えて。その機能していない脳の替わりに、今私の頭蓋boneの中に何が入っているのか。Izanamiに渡したのは、なんだったかしら?」

「えっ? ……ひいぃっ!?」


 引き攣ったscreechを上げて身を翻そうとする初。彼の背中を見つめながらIsisは口の中に仕込んであるswitchを押した。

「感謝しているのは本当よ。だから、道連れに成ってあげる。良い女と一緒に死ねて、貴方幸せよ」




 轟音と衝撃を受けて吹っ飛んだSurgery室の扉の破片と一緒に、Inui Hajimeは地下鉄の線路の上に落下した。何度もバウンドを繰り返して転がる。

「がはっ! ぎぎっ……」

 初は辛うじて生きていた。Isisが頭蓋の中に仕込んだ爆弾の作りが甘かったのか、若干だが距離を取る事が出来たからか、barelyで扉を盾にする事が出来た。


 更に、身につけていた携帯杖……携帯端末に内蔵された極小のmagic媒体のお蔭で呪文の詠唱を縮める事が出来、初歩の防御用magicが間に合った。

 それら全ての要因によって『運良く』、初は生きていた。


 しかし、このままでは十分と持たず死ぬ。それを体中の痛みと、服を濡らす自分のbloodでそう自覚せずにはいられなかった。

「助け……っ!?」

 助けを求めて這いずろうとした初の視界に、銃を持った女の姿が映った。一瞬息を飲んだが、すぐにそれがallyである事に気がつき、安堵の息をつく。


「加奈……子っ、助け……」

 Tsuchiya Kanako。彼女はWind-Attributeしか使えない自分と違って、Water-Attributeの回復magicを使う事が出来る。それで応急処置をしてもらえば、助かる。

 希望に瞳を輝かせる初に向かって、Kanakoは握っていた銃をホルスターに収めると、手を向けた。


「今楽にして上げる、【強酸弾】」

 そして全てを溶かす強酸の弾丸を放つmagicActivateさせた。

「なっ!? あ゛ぎゃああああああぁぁぁ!? な、なんぇ……っ」

 初は絶叫を上げたが、それも途中で途切れ、周りの瓦礫や線路と一緒に溶けていく。


 Kanakoはそれを確認すると、漂う刺激臭をmagicで浄化してから通信機で連絡を取った。

Murakami sensei~、予定通り【Marionette】を始末しました~。Isisの奪取は、やっぱり失敗したみたいです。キモイだけで、最後まで役に立たない奴でした」




 【Marionette】のInui Hajimeを、Tsuchiya Kanakoが始末した。その知らせをMurakamiから受けた【Death Scythe】のKonoe Miyajiは内心で笑みを浮かべた。

(あいつは俺達『八人』の仲間のつもりだったかもしれないが、元から途中で始末する手筈だったのさ)


 Inui HajimeIsisに語った事は、ほぼ真実だ。違うのは、United Statesからmission中に【Marionette】は始末する-samaにと、Murakami達に指示が下されていた事だ。

 それをMurakamiから打ち明けられたMiyajiは少なからず動揺したが、Murakamiからの説得を聞いて納得した。

 初は、やりすぎたのだ。


(あいつのAbilityは危険すぎる。なのにAbilityをひけらかせ過ぎた。United Statesのお偉い-san方をビビらせ過ぎた、あいつの自業自得だ!)

 触れただけで相手を操れる【Marionette】のAbilityを進化させ、微弱な電気で一瞬でもつながれば相手のBodyを操作できる力。それを就職先の上層部は危険だと判断したのだ。


 更に性格的にも危険な奴だった。調子に乗りやすいし、欲望をenduranceできない、その上癇癪持ち。とても信頼できる奴じゃない。

 そして【Marionette】を始末した自分達は、就職先にLoyalty心を示す事でより良い待遇を期待できる。

(後は、この目の前で調子に乗ってるデカ女を殺して、死体を回収するだけだ)

 敵である特殊部隊をほぼ全滅させたValkyrieの胸元を、眼光鋭く睨めつけながらMiyajiAbilityActivateさせた。


「これで敵はほぼ全滅か! 我が勇士達も三分の一以下に減ったが……どうした、【Death Scythe】? 勝利を祝ってハグでもして欲しいの……」

 Valkyrieが不自然に声を途切れさせた。目を見開いて豊かな胸を掻き毟るようにして手で押さえながら、背中を丸くする。


(これで俺の勝ちだ!)

 Miyajiの【Death Scythe】は、accurateには生物を即死させる力では無い。対象の『運動』を止める力だ。

 ただ力の大きい『運動』を止めるには長い集中が必要で、消費するManaも大きい。だからMiyajiは止める『運動』をheartの鼓動に限っていた。


 そうすれば、「生物を対象にするには、顔を視認しなければならない」と言う条件を満たせば、一瞬で殺せる。

(即死させる力だって言っておけば、災害や事故のrescue活動ではmagicだけ使っていれば良かったし、terrorist相手には切り札扱いで止めさえ刺していりゃあ良かった。それに仲間に大きな顔出来たし。

 これからはUnited Statesで大きな顔をさせて貰うぜ!)


 後は司令塔を喪って烏合の衆と化したZombieに構わず、Valkyrieの死体を担いでMurakami達の所に持ち帰るだけだ。

「殺すには勿体ない女だったけど、これも大金の為だ。悪く思うなよ」

 膝を突いて俯いたまま動かなくなったValkyrieを肩に担ぎ上げようと、Miyajiは彼女の前にかがみこんだ。


 その瞬間、死んだはずのValkyrieの腕が動いた。

「え……がぁっ!?」

 screechを上げて仰向けにひっくり返ったMiyajiは、スタンガンを片手に持ったValkyrieが立ち上がるのを、信じられない思いで見上げた。


「何故私が生きているのか不思議そうだな、【Death Scythe】。だが、残念な事に私も何故お前の【Death Scythe】が私に効かないのか分からんから説明できない。お前の力がどんな理屈で対象を即死させているのか知らないからな!」

 Valkyrieは元気良くそう言いながら、スタンガンを上着の内ポケットにしまった。


「だが、瞳の【Gazer】で『私が倒れたお前を見下している』ところが見えたそうだから、maybe効かないだろうと思ったのだよ。

 一応理由もconjectureは出来る。maybe、私のheartが既に機能していないからじゃないか?」


「っ!?」

 Valkyrieheartが、【Death Scythe】を使うまでも無く止まっていたと知って、息を飲むMiyaji。その反応を見て、やはりかとValkyrienod


「私のheartは被検体だった時に切除されている。代わりに他の場所に埋め込んだManaで動くポンプでblood液を循環させているわけだ。attributeの素質を消しても、Manaそのものは消えていない事を証明したかったとかなんとか言っていたな。

 まあ、その辺りの事情はどうでも良い」

 そう説明を打ち切ったValkyrieは、別のポケットから小口径の銃を取り出した。


「う゛ぅっ!?」

「確かに私達は最終的には死ぬつもりだ。そして自分達が死んだ後で何が起きようと、どうでも良い。だが、死体でもモルモットにされる事だけは御免なのだよ。

 その-sama子ではmagicも使えないだろう? ご存知の通り私もmagicが使えないのでね。悪いが、この頭蓋boneを貫通できるかどうかも不確かな小口径の銃で死ぬまで何発でも撃たせてもらおう!」


 そして宣言通り、Valkyrieが引き金を何度も引き絞る。

(畜生っ! 最初からheartが止まっているなんてっ、こんなはずじゃなかったのに!)

 Miyajiは必死にValkyrieの生命を維持しているポンプを停めようと、【Death Scythe】を乱射した。しかし、場所が何処なのか分からなければ、完全に運頼みに成ってしまう。


 幸いな事にValkyrieは射撃も苦手だったようだ。頭を狙って頭皮や耳を削ったり、肩を掠ったり、まだ頭に直撃してはいない。

 だがこのままでは何れ――その時、Valkyrieの足の間から何かが転がって来た。


 次の瞬間、小さな破裂音と同時retinaを焼くような激しいFlashが視界を塗り潰す。

「あぐっ!?」

 そして数度の銃声の後、何かが倒れる音がする。


「油断するなよ。Abilityだけに頼るから、俺の仕事が増えただろうが」

 聞こえてきたMurakamiの声に、Miyajiは内心喝采を上げた。これで自分は助かる、流石senseiだと。だが、ふと違和感を覚えた。


(何でFlashバンなんか使ったんだ? Zombieから離れたValkyrieを殺すなら、銃で撃つだけで十分だし、近くにZombieが居たとしても、ZombieFlashボムなんて無意味……まさかっ!?)

 思い至り、はっとしたMiyajiだったがスタンガンに痺れるbody partでは何もできなかった。


「そんな手間でもなさそうだが」

 Miyajiに拾ったアサルトRifleの銃弾を射ちながら、Murakamiは息を吐いた。本当に不出来な元生徒共だと。


「元からお前も始末する予定だった。Valkyrieを殺して死体を運ぶお前に、さっき使ったFlashボムで視界を潰して【Death Scythe】を封じて、その間にな。

 理由は、【Marionette】と同じだ。顔を見ただけで即死させる事が出来るAbilityなんて持った奴、危なっかしくて生かしておけるわけないだろ?」


 弾を撃ち尽くしたアサルトRifleを捨てると、Murakami Junpeiは穴だらけに成ったKonoe Miyajiでは無く、頭からbloodを流すValkyrieの死体を見ながら通信機に話しかけた。


「こちらMurakamifrom hereが俺達七人の仕事だ。TsuchiyaIsisの肉片を確保。無理なら他に回れ。俺はValkyrieの死体を運ぶ。

 後の五人はBaba YagaIzanamiだったmonsterを避けながら、他の連中を狙え。Ereshkigalには手を出すなよ、最優先はPlutoだ」


 若干予定外の出来事もあったが、概ねMurakamitactics通りに進んでいる。Murakami達が裏切る事を『The 8th Guidance』のmemberは気がついていたようだが、所詮たった一つのDeath-Attribute Magic頼みの連中。警戒する程ではなかったらしい。

 こんな奴に仲間を殺されたAmemiya Hirotoが間抜けすぎる。


 そう思うMurakamiの耳に、通信機から発せられた仲間達の声が響いた。

Murakami sensei、【Sylphid】が『Baba Yaga』にやられた! 俺も逃げているところだっ、誰か援護に寄越してくれ!』

『せ、sensei、こちら、Gotoudaっ! 『The 8th Guidance』に、未知のmemberがっ! 私の【Super Sense】でも捉えられないなんて、まるでゴース……ひぃっ!? た、助けてぇぇぇっ――』


「はぁっ!? 何いきなり減ってやがる!?」

 【Sylphid】が、「お前とは相性が悪いから絶対に近づくな」と厳命していたはずの『Baba Yaga』に殺され、【Super Sense】のGotoudascreechが不自然に途切れた後、応答しない。

 七人の仲間は、本番に成った途端五人に減ってしまった。


 どう言う事だ? 急に運が逆転でもしたのか?

sensei、敵の通信機で聞いたんだけど……今『Bravers』が地上に到着したみたい。あ、Isisの遺体は肉片の回収も無理っぽい』


 Kanakoの報告で、何が起きているのか分かった。

 『The 8th Guidance』を助けたいAmemiya Hirotoや、Murakami達を確保したいMinami Asagi達が来たため、流れが変わったのだ。


「チッ! 本当に厄介な『Fortune』と『Destiny』だぜ。無事な奴らはTsuchiya以外全員【Aegis】と合流! 『Bravers』には【Clairvoyance】の天道がいる! 【Aegis】の効果範囲外に居たら居場所がばれる!

 Tsuchiyaは、手筈通りに動け!」

 Murakamiは前言がブーメランの如く自分にthrust刺さった事を認め、顔を憎々しげに歪めた。そしてValkyrieの死体を回収する余裕はないと判断し、流れ出たbloodを少量だけ採集し、慌ただしく走り出す。




「勇士達を率いて、仲間以外の全てを殺し尽くせ……私よ」

 死んだはずのValkyrieが掠れた声でそう呟き、今度こそ本当に息絶えたのに動き出した事に気がつかないまま。




 特殊部隊、ほぼ全滅


 『The 8th Guidance』、IzanamiBerserkIsisValkyrie、死亡。


 Murakami達、【MarionetteInui Hajime、【Death ScytheKonoe Miyaji、【Sylphid】、死亡 【Super SenseGotouda、生死不明。生存者残り五名。



Bravers』、地上に到着。


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