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Chapter 14: 師Artisanにアンチエイジングする修行

 突然二人きりになりたいと言われたZadirisは、きょとんと目を丸くした。

「二人っきりじゃと?」

「はい、とても大事な事です」

 きっぱりと何時になく強い口調で言われたZadirisは、Vandalieuが修業を切り上げて旅立つつもりかと思った。


 originally彼らが、このDevil Nestsから東に行ったMountain Rangeを越えた所にあるOrbaumという国を目指している事は聞いていた。しかし、まだNo-Attribute MagicMana Controlも、Alchemyも教えきれていない。この集落にboneを埋めろと言うつもりはないが、まだ留まって欲しいというのが、Zadirisの気持ちだ。


「わかった。儂ので話そう」

 何とか説得できないかと考えながら、Vandalieuを抱き上げて自分のに向かおうとする。

「……俺、自分で歩けますよ。もうすぐ二ageになるんですから」

「まだ二ageにもなっていないの間違いじゃ、坊や。そう言ってこの前も石に躓いて転んでいたろうに」


 二年近く生きて大人に近づいたつもりのVandalieuだったが、周りから見ると赤ん坊が少年にちょっと近づいただけだった。


 普段magicの手解きや修業を受けるZadirisの竪穴式住居に入ると、中には彼女自身が工夫して作ったAlchemyの道具や何かに使うらしい水晶球が目立つ位置に置かれている。

 これで大きな鍋でもあればおとぎ話のWitchroomだが、流石にそれは無かった。


「のう、坊や。儂は出来たら坊やに儂の全ての術を教えたいと思う」

 定位置の敷物の上に座り込むと、Zadirisは真剣な顔でそう言った。恩人に対する恩返しや単純な好意、集落に貢献してくれている謝礼として等ではなく、真にVandalieuを見込んでの言葉だった。


「坊や、坊やには普通の意味でのaptitudeは無い。覚えが早くないのは、自分でも解っているじゃろう。

 しかし、坊やにはそれを補って余りある閃きとセンスがある」

 彼女の言う閃きとセンスとは、Earthで見聞きしたサブカルチャーの知識とOriginで霊からAbsorptionした知識と、そこから派生する想像力の事で、それを自覚しているVandalieuからすると閃きとセンスとは言えず、「褒められるような物でも……」といった感想だった。


「何よりその常識外れなManaがある。坊やが研鑽を積むなら、百年もせずに儂など足元にも及ばぬGreat Mageになるじゃろう」

 単純にManaが多ければ強力なMageだという訳ではないが、Manaの量は無視できない要素だ。このworldskilllevelは、使えば使う程increaseしていく。なので、magicを繰り返し何度も行使できるManaの量はmagicskillincreaseに必要不可欠。


 Humanの場合Mage系のJobに就いてskill補正を得るのも重要だが、そのJobにもskilllevelが条件に達していなければそもそもJob change出来ない。

 そのためHumanでもmonstersでもMageを目指す者は、まず基礎的なmagicを覚えてManaを必死に増やすのだ。monstersの場合は努力する前に諦めるか、途中で死ぬ可能性が高いので生まれつきのaptitudeに頼る部分が多いのだが。


 その点ではVandalieuは恵まれていた。普通なら必要なMana量を増やす修業をしなくていいのだから。いや、修業しなくても自然と増えていくだろう。何せまだ二ageになっていない段階で一億を超えている。これから成長すれば、後数千万……もしかしたら更に一億以上増えるのではないだろうか。


 なので覚えは凡人でもそんな事は問題にならない程のaptitudeVandalieuにはある。

 それをZadirisは見込んでいた。自分の跡継ぎなどではなく、それを超えて行く器の持ち主として。

「じゃからもっと時間が欲しい。目的のある旅だというのは知っておるが、儂に時間をくれんか?」


「はい、任せてください」

 Vandalieuはそう即答した。

「おお、その気になってくれたかっ!」

 Slightly言い回しが妙な気がしたが、Vandalieuの返答に喜ぶZadirisしかし彼が続けた言葉で、何か誤解が生まれている事に気が付いた。


「じゃあ、早速施術するので横になって楽にしてください」

「せ、施術?」

「はい。俺に任せてください」


 一方Vandalieuはやる気に満ちていた。彼はZadirisの顔に浮かんでいた死相……Death-Attribute Magicに適性があるが故に死のsignに気が付いた。だから、彼女の寿命を延ばそうと思った。

 その為の一番の障害が、Zadiris自身の意思だとVandalieuは思っていたのだ。


 Zadirisは以前から「老い先短い」とか「跡継ぎはいる」とか口にしており、生きる事に未練が無いかのような言動をしていた。なので、もしかしたらmagicによる延命を拒否されるかもしれないと不安だったのだ。

 だが、彼女の方から「時間をくれ」なんて頼まれるとは。


 もし「寿命に任せる」とか「自然に逝くのが一番」とか言われたら、それどころか死期が近いという自分の言葉を信じてくれなかったらどうしようかと思っていた。だと言うのに、まさかZadirisも自分の死期を悟っており、しかも寿命を延ばしてくれと頼むほど自分を信頼してくれているなんて。Vandalieuは感動していた。

 人に信じられる事が、こんなに嬉しいなんてと、ちょっと泣きそうになった。


 まあ、実際はただの誤解なのだが。


「それは、儂から術を学ぶためには必要な事なのじゃな?」

「はい。避けて通れません」

 後早くて数日、遅くとも一月で老衰のため逝ってしまっては学べないので、寿命を延ばすのは避けて通れない。


「分かった。しかし何をするのじゃ?」

 仰向けに横になるZadiris。初めて会った時の姿を思い出す。あの時も彼女を助けようとしていたなと思いながら、Vandalieuは答えた。

「ちょっと若返らせます」


「えっ!? 若返らせる? そんな事出来るはずが……っ!」

 ずずっ!

 奇妙な感覚がすると同時に、Zadirisの腹にVandalieuの両腕が二の腕まで減り込んでいた。


「か……っ! はっ!?」

 驚きに目を見開き、内臓を冷たい手で直接撫でられているような強烈な異物感に息が出来なくなる。

「今、俺の腕を【Spirit Form Transformation】させてZadirisbody partconditionを直接調べています。ちょっと苦しいですけど、enduranceしてください」


 冷や汗の浮かんだ顔のZadirisが「無茶を言うな」と目で訴えるが、Vandalieuは術に集中していて気がつかない。実は、自分の意思で他人のbody partを【Spirit Form Transformation】で調べるのは初めてなので、どれくらい苦しいか彼は知らないのだ。

 しかし、やり方だけはよく知っている。それこそ経験豊かな外科医のように。


 Originで研究者達に操られていた時、この【Spirit Form Transformation】で-sama々な物を調べさせられていたのだ。自分と同じ実験動物や、鉛のケースに入った核廃棄物まで何度も何度も。その後Vandalieuから抽出したManaで作られた【Spirit Form Transformation】のmagic itemで、Originの医学や科学は大きく前進したらしい。


 それはin any case、今はZadirisbody partだ。Vandalieuは【Spirit Form Transformation】で物理的には存在しなくなった腕を彼女の腹部にthrust刺したまま、腕が溶けて液体に成りblood流に乗ってbody partの隅々まで流れて行く-sama子をimageする。

 すると、Vandalieuの腕はimage通りにさらりと崩れる。Spirit FormMentalに直結するので、この【Spirit Form Transformation】を使っている間はこれぐらい可能だ。


『……Originの時より簡単なような気がするけど、これは俺のMental力が向上したという事かな? それとも単に操られてやらされた事と、自分の意思でやっている事の違いか』

 やけに簡単だったことが引っ掛かったVandalieuだったが、今思考に没頭する余裕は無い。


「ぐっ、あっ……はーっ……はーっ……」

 苦しげに悶えているZadiris-sama子に気が付いたからだ。出来るだけ早く施術を終わらせようと、余計な思考を頭から切り捨てる。


 blood液、blood vessel、脳、heartnervestomachliverkidney、膵臓、小腸、大腸、ovaryuterusbonemuscle、リンパ、skin。位置や形はHumanとほぼ同じ。ただ爪の麻痺毒を分泌する器官があるのが違うくらいか。

 conditionは内臓機能が弱くなっている事以外は良好。詰まり易くなっているblood vesselや、動脈bump、癌と言った死の原因に成りそうな物は見つからず、virusや菌による疾患も無い。


 やはり迫っている死の原因は老衰なのだろう。


 老衰ならする事は難しいが単純だ。まず、三つの方法から一つを選ぶ。一つは細胞が壊れるのをDeath-Attribute Magicで止めている間に、別のMageLife-Attribute Magicで内臓器官を活性化させ、Zadirisの低下しつつある内臓の機能を取り戻す。Originではこの方法が採用されていたが、今はLife-Attribute Mageが居ないため不可能だ。

 Death-Attribute Magicしか使えないVandalieuに出来るのは、細胞の死をAccelerationさせるか停滞させるか。生命を司るLife-Attribute Magicのように、活力を与える事は出来ない。


『ただの致命傷なら、死を停滞させている間にpotionをかけるって方法もあるけど、流石に老衰まではpotionでも治せないだろう。

 じゃあ、二つ目の方法』


 二つ目の方法は、延命措置。死に向かおうとするのを術で止める。これは簡単で、確実な方法だ。少なくともVandalieuが術を定期的にかけていれば、Zadirisは現状維持のまま生き続ける事が出来る。


『でも却下だな』


 逆にいうと、現状維持しか出来ない。これが出blood多量やアレルギー性shockの治療なら、死ぬのを先延ばしにしている間に自然治癒力が働いて峠を乗り越える事が出来るが、老衰の場合は本当にただの時間稼ぎだ。しかも回復はしないので、Zadirisは弱ったbody partのままになる。

 そして維持には定期的に術をかける必要があるため、Vandalieuがこの集落から離れたら遠からずZadirisは死んでしまう。


 それでは意味が無い。この方法でも確かに彼女の技術を学ぶことは出来るが、損得抜きにVandalieuは彼女に死んで欲しくないからだ。


 残るのは最後の方法。Originの研究者達でも失敗した、最も難易度の高い人類の夢「若返り」だ。

 細胞から『老い』を取り除いて『若返り』を行う術。実験では肌ageblood vessel agebone age等体の一部の若返りは成功していたが、whole bodyの細胞を若返らせる実験が成功した事は無い。


 だがそれは他人がVandalieuMentalBodyを操作して行った実験だ。それに、Originで死んでLambdareincarnationしてから、magicの技量は落ちたがManaの量は増えている。

『何時ものゴリ押しでやってみよう』

 まず、Spirit Formの腕をZadiriswhole bodyに行き渡らせる。


「う゛ぅっ……!」

 Zadirisの呻き声に、出来るだけ丁寧にやろうと努力しながら毛細blood vesselskin細胞、nerveの末端に至るまでSpirit Formを行き渡らせていく。

「……【Youth Transformation】」

 そして彼女のbody partから、『死』を抜き取っていく。


「あ゛っ……っ?」

 Fire-Attributeに精通した術者は、炎ではなく熱を直接操る。だから熱を与えて鉄をドロドロに溶かすのも、熱を奪って海を一面氷原にするのも、自由自在。


 だからDeath-Attribute Magicを使うVandalieuは、理論的には死を直接操り、生き物を殺すも生かすも自由に出来るはず。

「くっ……ふっ……っ!」

 時間と共に増えた堆積物をゆっくりと掬い上げるように、Zadirisの中のAgingという死を取り除いていく。


 そして徐々にではあるが、Zadirisは若返り始めた。細胞に活力が戻り、内臓の活動が活発になる。

「流石に、Manaの消費量が、桁違いだ」

 ただManaの消費量は、今まで使って来たmagicとは比べ物にならない程大きかった。一年分Zadirisを若返らせるのに、一千万近くManaが削れていく。


「ぼ、坊や、な、何をっ……何をして……くぅぅぅぅっ」

 幸いなのは、Zadirisが先程までの不快感ではなく、気持ち良さそうにしている事だ。whole bodyを万遍なく若返らせるため、焦らず落ち着いて術を維持する必要があるから、苦しまれるよりずっと冷静さを保てる。


「とりあえず若返らせているところです」

「若返らせるっ!? そんな事がかのっ、あっ、うひっ、あああっ」

accurateには、body partから老いを抜いているだけなのでchildに戻ったりはしませんけどね」


 時間を巻き戻している訳ではないので、age以上に若返らせたとしても胎児に戻ったりはしない。死を取り除いているのに、それでは逆に死に近づいているような物だから。

 Humanの老婆に同じ事をすれば、maybe十代半ばぐらいで止まるのではないだろうか? 研鑽を積み、工夫を重ねればHumanを受精卵まで戻すような事も出来るかもしれないが。


「くあぁぁぁぁぁぁーっ!」

 Zadirisが堪らず甲高い声を上げた。

 微妙な痛みと、凝っていたmuscleを揉み解されるような快感がwhole bodyに、それこそ手足や胴体、頭の中にまで走るのだ。腕の良いmassage師に寄ってたかって揉まれるよりも激しい快感に口を閉じる事が出来ない。そして、lungの中の空気を全て使い果たしたと同時に、その快感は嘘のように途切れた。


「はぁ……はぁ……はぁ……坊や?」

 息を整えながらZadirisVandalieuを見てみると、こてんと倒れて横になっていた。Spirit Formとなって彼女の腹にthrust刺さっていた両腕は、何時の間にか元の物理的な存在に戻って抜けていた。

「……久々にManaを限界まで使いました。少し寝ます」


 Zadirisを十age程若返らせたところでManaが尽きかけたので、急いでSpirit Form Transformationしていた腕を元の形に戻して引き抜いたVandalieuは、そのまま倒れて寝息を立てはじめた。

「……もう少し説明してくれてもいいと思うのじゃが」


 そう呟くZadirisも、瞼が重いのを感じていた。ここ数日感じていた倦怠感は消えたのに、まるで激しくbody partを動かした後の-samaFatigue感がwhole bodyに残っている。だというのに一方では元気が有り余っているような気がする。

 何とも妙な気分だった。


 それはwhole bodyの細胞が若返ったからで、Fatigue感の正体は短時間でBodyが変化した副作用だ。ただ初妊娠時にappearance ageが止まるGhoulだからそれで済んでいるのであって、もしZadirisHumanだったら既に失神していたかもしれない。


「まあ、良い。儂のために何かしてくれたようじゃし、悪い事は起こらんじゃろう。どれ、儂も寝させてもらうかの」

 既に眠っているVandalieuを抱き寄せると、敷物の上で眠りについた。


 そして宴の途中から最Elderと既に半ば集落の一員と化している客人の姿が見えない事に気が付いた、若いGhoulWarriorBanadoZadirisの前でゴクリと唾を飲み込んでいた。

 彼が見たのは竪穴式住居に入って行くZadirisVandalieuの姿。そして壁越しに聞いたのはZadirisの呻き声や快感のscreech


「まさか、最ElderVandalieuが……あのageで出来るなんて、Dhampirってすげぇ」

 獅子の顔に畏怖を滲ませて、Banadoは思った。これからあいつをchild扱いするのは止めよう。奴は、既に一人前の大人……いや、Kingなのだと。




 次の日、元気でappetite旺盛なZadirisに自分がした事を詳しく話すと、「Death-Attribute Magicがそんな事までできるとは、驚きじゃ」と賞賛し、「しかしそういう事は最初に言わんか」とお叱りを同時に頂いた。

「じゃが、命を二度も助けてもらった事に変わりはない。心から礼を言おう。もし坊やがTamerなら、儂をTamerし、僕としても構わん程の恩じゃ。さて、どうやって返したものか」


 Vida's New Racesの内、monstersrootsを持つraceTamerできる。Human並みのIntelligenceがある事とGoddessrootsを持つために、成功する可能性はかなり低い。しかし、本人がTamerされる事を望むなら話は別だ。

 そんな事をZadirisが言い出したのは、「命を助けられた恩は命で返す」という気持ちもあるがそれ以上にVandalieuについて行くという想像に、心魅かれたからだ。


 年甲斐も無く胸がときめくが、そう簡単に放り出せないのが立場というものだ。

Zadirisが一緒に来てくれるのは嬉しいけど、それをするとこの集落が大変なのでは?」

 そう指摘され、Zadirisは想像から現実に視線を戻した。


「まあ、確かにの。儂が居なくてもそれなりに上手くやるじゃろうが、儂の代わりのMageがまだ育ちきっていないのが不安材料じゃな」

 一度は自分が居なくても大丈夫だと思ったが、いざ生き延びると欲も出て来る。Vandalieu以外にも、若い女衆に術を教えておきたいし、末娘のBasdia-chanchildを産めるかも気がかりだ。


「それに、まだNo-Attribute MagicMana Controlも習得していないので暫くはお世話になりますけど」

「おおっ、そうか。それを聞いて安心したぞ。では早速修業じゃ」

「……Manaが回復しきっていないので、もう少し待ってください」


 その後、朝食にGobu-gobuを食べた後修業を始めるのだった。

 ただこの日から修行の最後にZadirisの若返り処置が加わった。

 Manaというのはlevel upで上がる分とは別に、他のAbility Valuesskillと同じく使えば使う程鍛えられincreaseするという特性がある。


 しかし、これまでVandalieuはあまりにもManaが多かったためその方法でManaを鍛える事は殆ど出来なかった。VandalieuManaは一億以上。そのManaを使い切るには、一回唱えると一万Manaを使うmagicを一万回唱えなければならない。


 一回十秒として、一万回で十万秒。分にすると約千六百六十六分。時間にすると二十七時間。余裕で一日を超えてしまう。

 だがZadirisに【Youth Transformation】を施すのに必要な時間は、Manaを使い切って失神するまで続けても十分とかからない。


 結果、朝にNo-Attribute MagicMana Controlの修行を行い、昼に胡桃のsauce作りやドングリ粉作り。その後幼児らしくお昼寝。夕方に再び朝と同じ修業をして、寝る前にZadirisの住居で彼女に【Youth Transformation】の施術を行い若返らせて失神。そのまま就寝へと移行。そんなサイクルの毎日を過ごす事になった。


 結構なhard scheduleだが、石臼型Stone Golemを作る事を思いついたためそれ程でもない。「回れ」と命令し、荒く砕いて灰汁抜きし乾かしたドングリを入れると自動的に粉にしてくれ、Earthの電動石臼よりもエコな代物である。


 そしてcertainlyYouth Transformation】の術に関しては、秘密にした。集落のGhoul達を信用しない訳ではないし、寿命の長いGhoulに若返りたいという欲求は薄い。他のmonstersに関してもそうだ。何故なら、monstersの殆どが老衰ではなく戦闘で命を落とすのが現実なのだから。Zadirisのように寿命まで生き伸びるのは、本当に稀な例なのだ。


 ただ、adventurerに生け捕りにされて尋問され、その際に【Youth Transformation】の事が明らかになったらと考えると恐ろしい。Vandalieuには莫大な賞金が懸けられ、数多のadventurermercenaryblood眼になって彼を捕まえようとするだろう。そして捕まれば-sama々な方法で自由を奪われ、残りの人生をNobleや王族の寿命を延ばす為に飼われ続ける事になる。


 Vandalieu自身も、その過程で滅ぼされるだろうGhoulの集落も、そんな未来は望まない。なので、遠慮無く秘密を作る事にした。


Manaの伸びはどうじゃ?」

「一日で一percentにも届きません。塵も積もれば何とやら、継続は力なりという感じです」

「……坊やの一percentは、百万じゃろうが。塵と言うにはGiantすぎやせんか?」


 そして日に日にZadirisは若返って行った。見た目が変わらないGhoul族であるため、はっきりとした変化は現れていない。しかし挙動に活力が満ちていき、声には張りが、瞳には輝きが増して行くのが傍目にも分かる。

 減退していたappetiteも回復し、髪や肌の艶が増したように見えた。


 すると当然他のGhoul達も注目する。

 明らかなのは、nightになるとZadirisVandalieuと住居で二人きりで籠もり、朝まで出てこない事。耳を澄ませると、Zadirisの押し殺したような呻き声や快感の声が聞こえる事。

 そして日に日に艶々して元気になるZadiris


 結果、当然のように誤解された。普通なら一age児がそんな事出来る訳が無いと気がつきそうなものだが、彼らとVandalieuraceが違う。なら、成育についても違うのではないか。Dhampirなら出来るのでは? 普段から見た目からは信じられない程大人びていたし。

 そうGhoul達が考えるまですぐだった。


Dhampirが凄いのか、Vandalieuが凄いのか」

「私も誘っちゃおうかな」

「産まれた子が娘だったらなんて言わずに、自分でどうにかすればよかったかな」

「あの老け込んでいたElderが、まるでage若い娘のようだ。あれが恋をしているという事なのか」


「俺が言うのもなんだが、もうあいつが族長で良いんじゃないか?」

Vigaro、若長のお前が言うなよ」

「……来たばかりの頃にどうにかならないかと聞いた時は、無理だと言っていたのに」


『この妙な噂をBocchanの耳に入れるべきかどうか……しかし、もし本当だとしたら差し出がましい真似をしていいものか』

『それとなく、さりげなく、噂の真偽を聞いてみます? 父-san

『うわぁ、流石将来はNobleに成りたいって言うだけあるよね。じゃあ、もしかしてあたし達にもchanceあり?』


 ついでにSamSalireが悩み、Ritaが気楽に冗談を飛ばしていた。




 二ageの誕生日を迎え、そろそろ本格的な夏を迎える七月にようやくVandalieuは【No-Attribute Magic】と【Mana Controlskillを1levelずつ獲得した。

 数年かかると言われていたところを一年経たずに習得出来たのは嬉しかったが、1LvとはDarciaSamによると社会全体では半人前未満でしかないらしい。


 因みに、Zadirisを襲っていたadventurer達の中にいたMageは、【No-Attribute Magic】を2levelで習得していた。


「先は長いなぁ」

 そう天を仰ぐが、Vandalieuの気分は晴れやかだった。誇らしい気持ちだった。何故ならNo-Attribute MagicOriginには存在しなかった可能性があるmagicだから、もしそうならOriginで二度目の人生を謳歌しているAmemiya Hiroto達よりも一歩先にいる事になる。


 小さな一歩だが、この一歩を続ける事で将来身を守る事に繋がるのだ。


 後、Zadirisの【Youth Transformation】とManaを限界まで消費してMana量を増やす修業は、中止になった。何故なら、Zadirisappearance ageと同じageまで【Youth Transformation】したからだ。

「これ以上はどうなるか分からんし、もう十分じゃ」

「そうですね、次の寿命まで二百年以上ありますから」


 Mana量も随分増えたのでできれば続けたかったが、この集落にはZadiris以外に二百五十年以上生きている老Ghoulは存在しなかった。それに、あまりGhoulに【Youth Transformation】をかけて回っては秘密を守るどころではなくなるので、止めるしかない。

 今度mountain banditを襲う機会があったら、始末する前に【Youth Transformation】をかけるのもいいかもしれない。


 そんな事を思いながらドングリの殻を爪で割り、中の実を荒く砕いて灰汁を抜く準備をしていると、一緒に作業している女Ghoulの事にふと気が付いた。

 いや、彼女の存在を忘れていた訳じゃない。monstersの群れとしては多くても集落の人数としては少ない、百人のGhoulの顔をVandalieuは既に覚えている。


 流石に全員と心を通わせた友だと言えるほど仲がいい訳ではないが、普通に挨拶を交わして軽く話す仲ではある。

Bilde -san、ちょっといいですか?」

 彼女はBildeVandalieuがこの集落に来た日に開かれた宴で、物理的に雑な扱いだったがチヤホヤしてくれた女Ghoulの一人だ。


「何? ドングリをもう少し細かく砕いた方が良い?」

 きょとんとする彼女のお腹は、どう見ても膨らんでいない。あの宴の時、彼女は妊娠していると言っていたはずだが。

 あの宴は去年の十月。今は七月。約九か月が経っている。十月時点で妊娠何か月だったのかは分からない。


「いえ、産まれるchildが男の子だったら、俺のnameを付けてくれるという話ですけど……」

 気になったので口に出したが、これは聞いて良い質問だったろうか? そう思って徐々に声が小さくなっていったが、Bildeは「ああ、覚えていてくれたんだ」と特に気にする-sama子も無く答えた。


「ごめーん、あの時お腹にいた子産めなかったんだ。今度産めたらname頂戴ね」

「そうでしたか、じゃあまた今度……はい?」

 えへへと黄色い瞳を細めてtongueをちろっと出して、深刻さのfragmentも無く言ったBildeの言葉を正しく理解して、Vandalieuは思わず聞き返しながら彼女の表情を二度見したが、聞き間違いや見間違いではないようだ。


「残念だったよねー、去年は結局一人も生まれなかったし」

「私は二か月持たなかったな~、Bildeが一番長く持ったんだっけ?」

「うん、もう少しで三か月だったんだけどな~」


 他の女達も、深刻な-sama子も辛いのをenduranceして明るく振る舞っている-sama子も、無い。確かに残念だったと思っているようだが、その度合いはとても軽いように思えた。

 それに何か事情があって仕方なく……っと、いう-sama子も無い。


「あ、もしかしZadiris Elderの次はあたしとか?」

「待てVanっ、なら先に私を――」

Basdia -san、ちょっと聞きたい事があります。こっちへ」

 とんでもない方向に話が転がりかけているので、VandalieuZadirisVigaroを除けば最も仲が良いBasdiaを連れ出す事にした。


 後ろから「Basdiaの次はあたしだよーっ」と言うBildeの声や、「その次は私でどう?」「え~、そこはあたしでしょ」といった、body part的に可能だったら嬉しい声が聞こえるが、不可能なので無視だ。

Van、私を選んでくれて嬉しく思うが、昼間からは――」

Basdia -san、聞かせて欲しい事があります」

 やはり誤解しているBasdiaの言葉を遮って、Vandalieuは質問した。




Bilde達が、childが産まれなかった事を何故そんなに嘆かないのか聞きたいのか。それはなVan、生まれない事の方が多いからだ」

 Basdiaによると、Ghoulrace的に妊娠し難く更に妊娠初期の内に流産しやすいという事だった。

 accurateな妊娠する確率や、妊娠した後産まれるchildの割合等は不明だ。ただ昔からchildが無事生まれるのは五回に一回程度が普通だと言われているらしい。


 どう考えても少子化待ったなしの生態だが、約三百年というGhoulの寿命の長さがそれを補っているのだろう。少なくとも、今までは。

Bilde達があまり嘆かないのも、それが普通だから……ではないだろうか? ああ、我が子が流れた事を嘆いて何日か泣き暮らすGhoulも珍しいが居ないでもない。Vanが不思議に思うのは、Human達はそれが普通だからなんだろうな」


 普通だからあまり悲しくない。慣れているから大丈夫。Earthで聞いたら「我が子が死んだのに、それで良いのか!?」と驚愕や怒りを覚えるような事だが、ここはanother worldで彼女達はGhoulだ。事情が違い過ぎる。

 そもそも、そういう生態のraceとして約十万年前からGhoulは生きて来たし、この集落の環境を思えば分かるが基本的に他raceとの交流が無い生活をしている。


 そのため、自分達の常識に疑問を覚えないのだ。もし他のraceGhoul達が暮らしていたら、何故我々の子は他raceと比べて無事に産まれにくいのだろうかと嘆き、疑問を覚えただろう。しかしGhoulだけだと「昔から我々はそうだったのだから、仕方がない」で済んでしまう。


 それに、流産する時期にも原因がある。妊娠初期の、お腹も膨らまず母乳も出ない時期。このworldEchoや超音波診断等は無いが、あっても胎児の性別すら分からない時期だ。

 それだけにchildを失ったという意識が薄いのだろう。


「まあ、少なくとも明るく話す話題じゃないと思いますよ。maybe

「やはりか」

 BasdiaVandalieuに聞かれて初めてHumanGhoulの違いに気が付いたらしい。


「今まではGoblinKoboldOrcぐらいしか比べる相手が居なかったからな。それにしても私達よりweakくせに、ボコボコ増えるのが気に喰わないと思っていただけだった」

 ……もしやとは思うが。GhoulGoblinKoboldを食用にする方法を発明出来たのは、そのjealousyが原動力だったりするのだろうか?


「なるほど。教えてもらって色々納得しました。前々から不思議だなとは思っていたんです、この集落でchildを見ない事を」

 Vandalieuは、この集落でGhoulchildを見た事が無い。赤ん坊の泣き声を、一度も聞いた事が無い。childだと思ったら、童顔なだけだったりZadirisのように若い頃に妊娠した女Ghoulだったりした。


 百人も大人のGhoulが生活している集落なのに、childがいないのはおかしいと違和感を覚えた。それで、最初はまだ自分達が警戒されていて、赤ん坊やchildを目につかない何処かに隠しているのだと思った。


 しかし magic修業に夢中になって、何時の間にか感じた違和感も疑問も忘れていた。

 だが真実は、単純にchildがいないだけだった。もしVandalieuが積極的にGhoulchildを探そうとすれば、ZadirisVigaroがすぐ教えてくれただろう。彼女達にとっては、大したことない真実だ。


 後、Ghoul達が性に積極的な理由も分かった。

 妊娠し辛く、また妊娠しても五回に一回しか産まれない。なら積極的に励むしかないという訳だ。


「そういう事なら、仕方ないですよね」

 っと、Vandalieuはこの問題はこれで終わらせるつもりだった。

 何故ならこれはGhoulというraceが抱えている、十万年前からの問題だ。それでもGhoulraceを維持し続けているのだから、今自分が思い悩んで頭を捻って解決策を模索する必要は無いように思える。


 実際、差し迫った危機ではない事は集落を見れば分かる。だったら頼まれてもいないのに自分が悩むのは要らぬお節介と言うものだ。

 頼まれれば別だが。


「……確かに仕方ないが、ここ十年集落ではchildが産まれていないんだ。kaa-sanVigaroも悩んでいる。

 kaa-sanmagicでは無理だが、Vanmagicなら何とかならないか?

 certainly、私が妊娠したいというのもあるし、妊娠できるなら無事我が子を産みたいという理由もあるが」


 あ、頼まれた。

「分かりました。考えてみます」

 じゃあ、別だ。




Name: Vandalieu

Race: Dhampir(Dark Elf)

Age: age1か月

Title: none

Job: none

Level: 100

Job History: none

Ability Values

Vitality: 42

Mana: 113,550,000

Strength: 37

Agility :13

Endurance :39

Intelligence :60


Passive skills

Mysterious Strength:1Lv

Rapid Healing:2Lv

Death-Attribute Magic:3Lv

Abnormal Condition Resistance:3Lv

Magic Resistance:1Lv

Dark Vision

Mental Corruption:10Lv

Death-Attribute Charm:3Lv(UP!)

Chant Revocation:1Lv

Strengthen Follower:1Lv(NEW!)


Active skills

Bloodsucking:3Lv

-Surpass Limits-:2Lv

Golem Transmutation:2Lv

No-Attribute Magic:1Lv(NEW!)

Mana Control:1Lv(NEW!)


Curse

 Experience gained in previous life not carried over

 Cannot learn existing jobs

 Unable to gain experience independently


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