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Chapter 114: トロイの木馬tacticsLeft Wrist-kun

 太い柱が幾本も並ぶ、広大な地下temple。そこでは異-samaな光景が広がっていた。


「くっ、殺せ! それが貴-samaの目的だろう!」

 Vandalieuが見たらSurgery着を連想するだろう、薄布だけを着せられたIris Bearheartは、目の前の老人に対して吐き捨てる-samaに言った。


「ふん……『Sauron Liberation Front』のleader、『Liberating Princess Knight』と呼ばれた女が言うには、随分と安っぽい強がりじゃのぅ」

 それに対して枯れ木のように細く痩せているくせに、紅い目ばかりぎょろぎょろと大きい老人、『Evil God of Joyful Life』を奉じるPure-breed Vampireの一人、Gubamonはそう言うだけだった。


 その態度に、Irisは反射的に激高して叫んでいた。

「私は、死ぬ事など恐れてはいない! 私が死んでも、仲間達がSauron Duchyの解放を必ず成し遂げてくれる!」

 彼女はSauron DuchyAmid Empireに占領されていなければ、今頃とっくにKnight叙勲を受けていたはずのShoujoだ。


 Bearheart 家柄から考えると、煌びやかな御前試合や高貴なfemaleの護衛ではなく、まずは兵をCommandingしてmountain banditmonstersからや村を守る、前線CommanderのようなKnightに成る筈だった。

 そのための訓練や教育は、幼少の頃から今は亡き父から受けていた。


 そしてResistance活動ではleaderと言えど、彼女は常に前線で戦っている。これまで占領軍の兵やmountain banditSlash合った事は数知れず、body partには刀傷や矢傷が幾つも出来ている。死ぬような目にも遭って来たし、修羅場を幾つも潜り抜けて来た。中には、実際に生死の境を彷徨った事もある。


 その胆力はまだ二十ageに届かないShoujoとは思えない程ずば抜けている。


 しかし彼女の首筋や腕を撫で回すGubamonは見抜いていた。

「その割には、随分四肢のmuscleが緊張しているようじゃのぅ。この反応は、horrorに戦くchildと同じじゃぞぉ?」

「……くぅっ」

 図星を突かれ、Irisは思わず呻き声を上げた。彼女も自分がGubamonに、そしてこれからされるだろう冒涜的な行為に怯えている事を自覚していたからだ。


 certainly傷付くのも死ぬのも怖くはない。志半ばで倒れるのは悔しいが、全て覚悟の上で『Liberating Princess Knight』に成ったのだ。今更恐れはしない。占領軍の手の者に捕えられればTortureを受け、捕まった相手によって貞操も奪われるかもしれない。


 それ等も全て覚悟の上だったが、GubamonIrisにしようとしているのはそれらの行為とは全くdimensionが異なる事だった。

 胸が悪くなる濃厚なbloodの臭いと、その元に成った者達の末路を見れば嫌でもそれが分かる。


『うごぼあ゛ぁぁ……』

 大柄なGiant raceよりも更に二回りは大きい、Zombie GIANT共が何十体と周りを見張っている。

『あ゛あ゛あ゛……』

 そしてfangsを剥き出しにしたVampire Zombieが、まるで蝙蝠のように地下templeの柱や天井に張り付いている。


 彼らの中には、Irisを連れてきたVampire達が含まれている。Vampire達に彼女を拉致させたGubamonは、Space-Attribute Magicで彼らをこの地下templeに連れて来ると、彼らの労を労い、直後に彼らを皆殺しにしてしまった。

「よくやった。褒美に、儂のcollectionの末席に加えてやろう」

 それはIrisにとって信じられない光景だった。Subordinate Vampireはまだしも、彼女や仲間達では歯が立たなかったNoble-born Vampire達が、成す術も無く一方的に殺されていったのだ。


 そしてGubamonは死体を慣れた手つきで……本当に慣れた手つきでUndeadにした。

 バラバラになったweak Subordinate Vampireの死体は数人から十人単位で纏めてZombie GIANTに、Noble-born Vampireの死体は、そのままVampire Zombieに。


 見回しただけでは数え切れないZombie GIANTVampire Zombieの数に、一体何度同じ事をこの狂人は繰り返したのか想像すると、Irisでも寒気がした。


 だが何よりも悍ましいのは、狂人が誇らしげに並べている『collection』と評するUndead達だ。

 Irisは、もう一度会いたいと願っていた存在と最も会いたくない形で再会してしまったのだ。

『『『え゛ぁ……ぁ……ぽぁ』』』

 Amid Empireとの戦争で戦死し、死体も回収できなかった彼女の父、Bearheart卿。三つの頭と三対の腕と脚を持つ巨漢のZombieの一部に、その姿を見てしまったのだ。


「死者の尊厳を、国を守るために命懸けで戦った父の誇りを踏み躙るとは、この外道めっ! 私も殺して、死体を父のように弄ぶのだろう! さっさとしたらどうだ!?」

 光の無いどろりとした瞳と土気色をした顔のまま、呻き声とも鳴き声ともつかない声を垂れ流す父の姿を見続ける事に耐えきれず、再度Gubamonを怒鳴った。


 しかし、彼女にとって意外な事に怒鳴られたGubamonの表情が、初めて動いた。

 過ちを悔いる悔悟の形に。

「貴-samaの父親については、儂も反省しているのじゃ。あれは、過ちじゃったとなぁ」

 Irisbody partを撫で回すのを止めて、懊悩するように頭を抱える。


 自分のbloodを分けた手下を殺す時も、殺した手下達をUndeadにする時も、罪悪感を微塵も宿らせなかったGubamonの目に、深い後悔の念が映っている。

 驚いて言葉を無くすIrisが何か言う前に、Gubamonは続けた。


「あのAmid EmpireOrbaum Elective Kingdomの戦争の時、貴-samaの父親以外にも名のあるKnightの死体が二つ手に入ってのぉ。つい悪戯心を起こして、三つの死体を組み合わせてZombieを作ってしもうた。

 お蔭で力は出る-samaになったが、動きは鈍重になり、俊敏さと華麗な剣技で名を馳せたBearheart卿を台noneにしてしまったわい」


「なっ!?」

 驚きから徐々に怒りに表情が変わっていくIrisに気が付かず、Gubamonは続ける。


「人格や知性が大きく損なわれるのは仕方がない。儂の手で生前は名を馳せたHeroを木偶人形同然のconditionで蘇らせるのも、collectionの醍醐味じゃからな。

 じゃが、Heroの特徴を不意にしてしまっては意味が無い。こうした複合系Zombieは、同じTypeの素材を集めてやるか、主たる素材を決めそこに主を活かす素材を追加するのがtheoryじゃと言うのに」


 Gubamonが嘆いているのは、Bearheartの死体をUndeadにした事自体ではなく、その出来が気に喰わなかったかららしい。

 どうやらGubamonUndeadを芸術作品感覚で制作していたTerneciaとは違い、素材だけではなくUndead Transformationした後の実用性にも拘りを持っているらしい。


 滔々と自らの拘りを語るGubamonに、Irisは再び怒りをあらわにした。


「貴-samaっ、ふざけるな! 何処まで父を弄べば気が済むのだ!」

「ふむ……じゃから素材を活かせなかった事は謝っているじゃろう。最近の若者は何を考えているのか分からん」

 世の中に居る大勢の高齢者が一度は考える事を、あり得ない度で考えながらGubamonは息を吐いた。


「まあ、良い。虚ろな瞳をして儂の命令に従うだけの屍人形に成った貴-samaを見ながら、ギャンギャン喚く元気な姿を思い出すのも一興じゃからな。

 しかし、貴-samaをどんなUndeadにするかは残りの連中の首尾を見てからにせねばな」


「私以外にも誰かを攫わせる気なのか? まさか――」

「ほう、察しが良いな。貴-samaと同じResistanceの、『新生Sauron Duke軍』のDelegation Leaderと副Delegation Leaderの異父brothersじゃ」

Raymond -donoと、Rick -donoを……!」


 怒りで熱くなったIrisの頭が、すっと冷めた。『Liberating Princess Knight』はIris以外に代わる者が居る。仲間が上手くやってくれるはずだ。

 しかしSauron Dukeの遺児であるRaymondの代わりは居ない。彼はoriginally Duchyではそれなりに顔が知られているし、継承権を放棄したとはいえSauron Duke 家の存続が危ぶまれている今、そのbloodinfluenceは大きい。


 そしてRaymondは自分のaccurateな正体を仲間以外には出来るだけ隠してきたIrisとは違い、自分の容姿やcharisma性、dialectの上手さ、そして自分の生まれ、それら全てをWeapon Equipmentにして『新生Sauron Duke軍』を纏めていた。

 それにはSauron Duchyを取り戻した後の自身の栄達も見据えた戦略があったのだろうが、それ故にRaymondorganizationResistanceの中で最も大きくなった。


 だがそのRaymondと、彼を補佐してきたRickまでもが同時に居なくなれば『新生Sauron Duke軍』は良くて分裂、最悪烏合の衆と化して瓦解してしまうだろう。


 そうなれば反抗運動は一気に後退する。

「貴-samaは、何処まで我がSauron Duchyを……!」

「貴-sama等のかは知らんが、Sauron Duchyがどうなろうが知らんわ。所詮、貴-sama等数百年程度も生きられん者共の世など、現の夢よ。国なぞ儂がcollectionを愛でている間に出来ては崩れを繰り返す、波打ち際の砂の城ではないか」


 Age of Gods Eraから十万年の年月を生きるGubamonにとって、千年も持たない人の国など言葉通り夢や砂の城同然なのだ。


「お、おのれっ!」

「さて、時間じゃわい。お前-sanが単体でUndeadに成るか、それともResistance Trio Undeadに成るか、楽しみじゃのう」




 捕まったRickは縛られ目隠しと猿轡をされたまま、Vampire達に最低限の世話をされていた。

「流石に一日や二日で死ぬ事は無いでしょうけど、Gubamon -samaの所に連れて行った時に衰弱していたら困るからね」

 Miles RougeがそうSubordinate Vampireに指示したからだ。


 かなり杜撰ではあったが、お蔭で脱水症状を起こすような事は無かった。刻んだ干し肉と干し野菜をドロドロに煮込んだ流動食で、味は最悪に近かったが。


 そして暫く経つと、何かVampire達が激しく揉めているのに気が付いた。

「どうしてこうなるのよっ!? なんで!? どうしてこのtimingで!?」

Milesっ、どうするのっ、私達どうすれば良いの!? 私まだ二百年しか生きてないのに死にたくない!」

「どうするって決まってるでしょ! あのtacticsよっ、あのtacticsを実行するのよ! それしかないわ!」


「な、何だと!? 俺は嫌だぞっ、Vampireの誇りを捨てるなんて!?」

「じゃああんた死ぬの!? 死ぬのね!? Gubamon -samaに殺されるかDhampirに殺されるか、私に殺されるか今すぐ選びなこのワガMamaボーイがぁ!!」


 今にも仲間割れにdevelopmentしそうな混乱ぶりが、Rickの耳にまで届いて来た。あまりにあからさまだったので何かのTrapではないかと思ったが、その後Vampire達は彼を見張る数人を残して全員何処かへ行ったようだった。

(上手くやったようだな、流石兄上だ。後はVampire共の『tactics』から、逃げ切ってくれれば……)

 そう期待するRickだったが、半日後それは裏切られる事になった。


「もうすぐ時間よ。そこの弟-kunを連れてきなさい」

 目隠しだけ解かれたRickが連れて行かれた場所で、Vampire達と自分と同じように縛られている兄の姿を見つけてしまったのだ。


(そんな、兄上! 偽者では、ない。本物か……っ!)

 偽者であってくれと願ったRickだったが、彼が敬愛する兄を見間違う筈はない。普段身につけているmonstersの皮を使った鎧は脱がされていなかったが、Weapon Equipmentを奪われ縄で縛られ俯いているのは、間違いなくRaymondだった。


 見て分かる傷は無く、顔色も良いように見えるがFatigueしているのか、それとも傷を回復magicpotionで治したばかりなのか、Raymondはぐったりとした-sama子だ。

(何とか、兄上だけでも逃がさなければ)

 そう覚悟を決めるRickだったが、硬質な物が軋むような耳障りな音と共に現れた老人の姿を認めると、その覚悟も揺らぎそうになる。


「おおっ、まさか二人とも揃っているとは! しかも生きておる!」

 eyeballが零れ落ちそうな程大きく見開いて狂喜するGubamonの禍々しさに、優秀ではあってもAClassやSClassのような超人ではない彼は膝を折りそうになる。


「良くやったぞ、Milesっ! 貴-samaは儂の自慢の部下じゃ」

「は、ははっ! お褒めに預かり光栄ですわ!」

しかし……ふむ、Raymondの方からはいささかbloodの臭いがするの。Vitalityもやや消耗しているようじゃ」


「そ、それはっ……申し訳ございません! 捕える際思いの外抵抗されましたのでっ、しかし傷は全て治療してありますわっ」

 強張った顔のまままくし立てるMilesに、Gubamonは「まあ、良い」と言った。


「目に見えて大きな損壊は無いしの、流石に無傷で捕えられるとまでは思っておらん」

 ここで不手際を理由にMiles達を罰すると、何人かに逃げられる可能性がある。素材にするのは地下templeに連れて行ってからだ。


「では、Teleportationするでな。じっとしておれよ」

 Gubamonが呪文を唱え、再び耳障りな音が響いたと思うとそこはcountlessUndeadと拘束されたIrisが待つ地下templeだった。


Rick -donoっ、それにRaymond -donoまで……」

 Irisが拘束されたまま振り返り、二人の姿を見て諦めて項垂れた。逆にRickIrisが先に捕まっていた事に、「やはり彼女も」と首を横に振る。


 そしてRaymondは特に反応らしい反応を見せないまま、項垂れ続けている。


「さて、まずは素材を鎖に繋ぐとするかの。殺す前にどんなUndeadにするべきか調べなくてはな」

 そう言いながら、GubamonはまずRaymondに近付いて行く。

「キヒヒ、これは誰にも任せられん。この瞬間が、Heroをこの手に収めたと言う達成感を最初に味わう瞬間じゃから……のおっ?」


 衝撃を感じたGubamonが自分の腹を見ると、信じがたい事に黒い-samaな物がthrust刺さり、背中まで貫通していた。

 何より信じがたいのは、そのRaymondの腹から生えている事だ。


「ばっ、ばがばはぁ!?」

 口からbloodを吐きながら、Gubamonが絶叫する。彼は久々に聞いた生存InstinctWarningに従って、反射的に後ろへ下がろうとする。

 しかし、腹を串刺しにしたが抜けず、その場を動けない。


 その彼に向かって、更にRaymondの胴体の内側から生えた幾本もの黒いが迫る。

「ぎっ、【Iron Slash】ぃっ!」

 【Unarmed Fighting Technique】のMartial Artsと自身のclawsを切断し、体中に切り傷を作りながらもなんとか後退して、逃げる。


「れ、Raymond-dono?」

 Irisと猿轡をされたままのRickが驚愕に目を見張る先には、自分が生やしたはずのによってbloodだらけに成ったRaymondの、異-samaな姿があった。

 かくんと不気味に上を向いたその顔は、まるで虚ろな人形だ。


「貴-samaっ、何故っ、何故【Demon King's Horn】をっ!」

 異-samaな姿に成ったRaymondに対してbloodの唾を飛ばすGubamon。それに応える-samaに、Raymondが不気味に痙攣すると、腹が割けた。


「ああ、狭かった」

 Raymondの腹の中からそう言いながら這い出て来た白いDhampirVandalieuの姿に複数の絶叫が上がった。




 Raymondを人質にOrbiaを騙して殺害した実行犯のRickを呼び出そうとしたVandalieuは、彼がVampireによって囚われの身に成っている事を知り、tacticsを変更しようと皆と相談していた。

 出来ればOrbia本人に決着をつけて貰いたいし、Vampireからは情報を手に入れたい。


 そのためにはどうすれば良いかと皆でwisdomを絞っていると、Vandalieu達が取引に指定した場所、キャンプ地の前に造ったOpen PlazaにぞろぞろとVampire達が集まって来たのだ。


 ……白旗を振りながら。


「降参、降参するわっ! どうか話を聞いて頂戴!」

 Vampire達の先頭で即席の白旗を振り回しながら懇願する、おネェ口調で喋る野生的な美形の姿に数秒思考が止まった。


『あの人、男の人、よね?』

「ボクにも男の人にしか見えないけど、違うの?」

「……何分、Vampireでも長い年月を生きているとMentalに変調を来す者の割合が多くなるもので。お恥ずかしい限りです」

 自分自身も『変な人』だという自覚があるBellmondが、戸惑うDarciaPrivelにそう説明する。


Bocchan、どうします?』

「とりあえず、話を聞いてみましょうか。周りに伏兵が潜んでいるsignも無いし、何か企んでいても彼ら程度なら何時でも皆殺しに出来ますし」


 こちらにはRank10のBellmondに、Rank9のKnochen。そしてVandalieuが居る。

 向こうは十数人のVampireでも、敵ではない。

 certainly話を聞かずに殺してその後彼らの霊から情報を引き出しても構わないのだが、この場にRickが居ない以上一先ず穏便に対応するべきだろう。


 そう考えてBellmondと一緒に話を聞きにKnochenの外に出たVandalieuに、Vampire――Miles達は口々に命乞いを始め、自分達の事情を話し始めた。


「どうか助けてくださいっ、ワタシ達このままだとGubamoncrazy bastardに殺されるわ! あなたのお父-samaが殺された件には、ワタシ達誰も関わっていないのっ、本当なのよっ!」

「生け捕りにしたRick Parisは差し上げます! Gubamonの情報も何もかも喋りますっ! だからどうか命だけは!」

「差し出せるものは何でも差し出すわっ、手下でも僕でも何にでもなるから、私達死にたくないのっ!」


 Milesの言ったtacticsとは、端的に言えば「全てを差し出して命乞いする」事だった。nightNobleの誇りを自ら踏み躙る、酷いtacticsだ。他のVampireが抵抗を覚えるのも無理は無い。

 しかし、こうでもしなければ生き残れない局面だったのは事実だ。


 VandalieuRaymondを既に確保している以上、Miles達は奇跡を幾つか起こさなければ彼の身柄を奪えない。まず返り討ちにされてしまう。

 それどころかVandalieu達が狙っているRickを監禁している為、逃げないと襲われて殺される可能性も高い。


 だがRaymondを手に入れる事を諦めれば、mission失敗と見なされてGubamonに殺される。

 他のGubamon派のVampireの助力はfragmentも期待できないし、Birkyne派に助けを求めるのは愚策だ。同じEvil God (M)を奉じるVampireだが、派閥が異なる以上ただの競争相手だ。温情が期待できる関係ではない。


 だからと言って全てを投げだして逃走するのも、危険だ。暫くは隠れられるだろうが、今まで利用してきた裏社会のconnectionが使えなくなるため、長期間生き延びるのは難しくなる。

 運良く落ち着く場所を確保できても、将来BirkyneGubamonの手の者に居場所を知られれば、やはり裏切り者として殺される。


 ならいっそ Bahn Gaia continentから出て他のContinentまで逃げれば良いかと言うと、それも無謀だ。

 他のContinentには他のEvil God (M)を奉じるVampire等のorganizationが縄張りを築いている。そこに異物であるMiles達が生き延びる隙間があるかは、分の悪い賭けに成るだろう。


 だからMiles達にとって最も望みがありそうな選択肢は、普通なら最もあり得ないだろうVandalieuへの降伏と命乞いになるのだ。


「なるほど、事情は分かりました。貴方達のこれからの協力と働き如何によっては、貴方方を受け入れましょう」

 そして実際、Vandalieuに対してその選択はかなり有効だった。


 Miles達が差し出すと言うRickの身柄やGubamonに関する情報は殺しても手に入るが、Vandalieuが今思いついたtacticsは、Miles達が自分から協力してくれなければ失敗する可能性が高い。

 逆に、協力してくれれば高い確率で成功が期待できる。


 それに殺す理由が無ければ殺すべきでないと考えるVandalieuにとって、全力で命乞いをするMiles達は殺すべきではない人達だ。父であるValenの処刑に関わっていないそうだし。

 処刑した実行犯のVampireの霊から砕く前に話を聞いているが、その中にオネエ口調のVampire達が居なかったのは確かだ。

 協力と引き換えに命乞いを受け入れるべきだろう。


「ほ、本当!? 任せて、どんな事でも協力するわっ」

「じゃあ、これからRick ParisGubamonを抹殺して、Gubamonに奪われたTalosheimHero ZandiaJeenaを取り返す為のtacticsの原案を発表します」

「「「「ぶっ!?」」」」

 思わず吹き出すMiles達とBellmond


 Vandalieuが既にGubamonと同格のTerneciaを倒している事を知っているMiles達、そして現場にいたBellmond。彼等にしてもVandalieuの宣言は驚きに値するものだ。

 Terneciaを殺した時はそれなりの時間をかけてAClass adventurer partyFive-colored blades】を利用する等、手の込んだ策を巡らせた結果だ。


 それを即興でRickにやり返す為だけの策にアレンジを加えて、Age of Gods Eraから生きるPure-breed Vampireを抹殺すると言うのだから、噴き出すのも当然だろう。

 特にMilesの部下達の中にはBellmondまで噴いた事に不安を浮かべる者が居る。


「旦那-samaがやりたいと仰るなら、従うのが私の務め。異論は有りませんが、どのようなtacticsなのかお教えください」

 しかしすぐに何時もの慇懃な仮面を被る。それを見たMiles達も、動揺を抑える事にしたようだ。

「こうなったらとことん付き合うわよ。良いわね、あんた達!?」

 こうしてGubamon抹殺tacticsは始まった。


「とは言っても、一番苦労するのは私かね、師Artisan?」

「良いじゃないですか。Gubamonを殺したら奴が作ったUndeadを沢持って帰りますから」

「それならば仕方ないか。前のように着いていくのも良いが、今回は師Artisanが守る対象が多い。遠慮しておこう」


 最も苦労したのは彼自身が言った通り、Lucilianoだったが。

 VandalieuはテキパキとLucilianoの施術を【Surgeryskillで手伝って、後はMiles達と簡単な打ち合わせをしただけだ。




 そして現在に至る。

「ふぅ」

 ずるりとblood塗れのまま、VandalieuRaymondの……LucilianoSurgeryを施した特殊Life-deadの内部から這い出た。


 幾ら同じ年頃の少年と比べると小柄とは言え、特別大柄ではないRaymondの内部に潜むのは苦労した。皮鎧を着ているように見せかけて幅を少しでも増やし、heartlungをコンパクトSizeにして消化器官系の内臓を全て取り出し、blood vesselの配置も変えて最低限のspaceを確保し、そこに関節を外し一部【Spirit Form Transformation】して無理矢理潜んでいたのだ。


 magicExtreme Strength使わず、Gubamonbarelyまで気が付かれないために。


 その努力の成果が、Vandalieuの目の前でbloodを吐きながら青筋を立てて怒り狂っている。

「お、お゛のれえ゛ぇっ! よぐもっ、儂のっ、素材を台noneにぃぃっ!」

 腹から【Demon King's Horn】を生やしたままのGubamonが、それを抜こうと膝を突いたまま悪戦苦闘している。生首だけになっても内臓や脊椎を再生して見せたTerneciaと同じPure-breed Vampireである彼は、通常なら腹に大穴があいても致命傷にはならない。


 恐らく、長くても数分で完治してしまうだろう。しかしDemon King's Horn】の一刺しは、GubamonVitalityを大きく抉り取っていた。

「がはっ! ぬ、抜けんっ!?」

 しかも、【Demon King's Horn】はGubamonの枯れ木の-samaな腕に不似合いなMysterious Strengthでも抜けなかった。実は、の側面に【Demon King's Suckers】が幾つも生えていたのだ。


 suction cupsGubamonの肉や内臓、boneに吸着し、を彼の体内にガッチリと固定していた。不死身に限りなく近いPure-breed Vampireでも、簡単に内臓や脊椎を自ら引き千切れるものではない。

 だがUndead狂いの老人には自分が受けたDamageよりも、手に入りかけた素材を台noneにされた事の方がずっと不愉快だったようだ。


「貴-samaァっ、よくも儂の死体をっ、Heroを傷物にしたなぁっ!」

「う゛ぅ~っ!! う゛う゛ぅ~っ!!」

 後、猿轡をされたままのRickが何か叫んでいる。blood走った目から涙を流し、くぐもっているが心地良い絶叫を響かせている。中身が無くなって転がる兄の姿が余程shockだったのだろう。……狙い通りだ。


 でも、彼の始末は後だ。


Miles

「は、はいっ! 下がるわよ、あんた達!」

「あ、そっちの女の人もお願いします」

「畏まりましたぁっ!」


 絶対的な強者だったはずのGubamonblood反吐を吐いて苦しむ姿に呆然としていたMiles達は、Vandalieuの言葉に弾かれたように動き出した。

 暴れるRickを持ち上げ、Irisを拘束している鎖を斧やclawsで切断して同じように保護する。


「貴-sama等が裏切り者じゃったかあ! 覚悟しておけ、残らず殺してUndeadにしてくれる!」

「喧しいのよっ、このcrazy爺! あんたの周りのVampire Zombieを一目見れば、裏切っても裏切らなくても同じ末路なのは分かるわよ! バカバカしくてやってられるかぁ!」

 手下の裏切りに気が付いたGubamonが叫ぶが、Milesに尤もな内容の叫びを返される。


 しかし、既にGubamonの頭から論理的な思考は抜け落ちた後らしい。

「おのれっ、屁理屈を捏ねおって!」

 何とも理不尽に毒づくと、彼は周囲の絶対に裏切るはずがない部下達に命令を下した。


Undead共っ、奴らを皆殺しにするのじゃぁ!」

 半ば正気を失っているが、Gubamonも【Demon King Fragment】を使うVandalieuRank5や6程度のUndeadでどうにか出来るとは思っていない。少しの間Vandalieuの動きを止めてくれればそれで良い。

 originally部下をrecycleしただけの作品なので、壊されても惜しくはない。


『あ゛お゛ぉぉ』

 動き出すZombie GIANTVampire Zombie達。動かないVandalieu

 だが、Gubamon手製の即席Undead達はそのままVandalieuの周囲まで近付くと、クルリとその場で身を翻した。


『『『『ぐぉぉぉぉっ!』』』』

 そして、Gubamonに対してfangsを剥き出しにして威嚇を始める。


「なっ!? 何故じゃっ、何故儂の、即席同然とは言え儂が自ら作り上げたUndead達が……!?」

「俺、UndeadTamer出来るもので」

「何じゃとぉっ!?」


 Vandalieuを知る者からしたら常識同然だが、Gubamonからすれば驚天動地の事態である。

 裏切り者を恐れて手下を殆ど殺してUndeadにしたと言うのに、その絶対服従の筈のUndeadが裏切ってしまったのだから。

 これでは自ら進んでVandalieuに戦力を提供したような物だ。


「でも、全てとは限らないようですね。珍しいケースなので、ちょっと驚きました」

 だがGubamonから離れないUndead達も居た。


 magic itemを装備し、Undeadながら只者ではない存在感を放つ者達。

「おお、そうじゃっ! 儂にはbelovedお前達が居るっ! さあ、儂に力を貸しておくれ!」

 Bearheart卿や、槍を振るう美青年、Giant raceGoddess官とShoujo Mage。他にも、幾体ものHero Undead達。


 その力は生前からは大きく落ちるものの、並のNoble-born Vampireでは相手に成らない。Milesですら顔を青くして息を飲んだ。

ZandiaJeena発見」

 しかし Vandalieuにとっては脅威ではなく、本当に保護すべき者達を発見した喜びの方が大きかった。


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