『故に我は――』
『この事態に際して――』
『ガルルルルッ!――』
『前例に倣って――』
四つの頭を持つ異形の獅子の姿を持つ神、『God of Space and Creation』Zuruwarnは今、another worldの神との交渉に勤しんでいた。
……交渉の筈なのだが、途中からZuruwarn本人もこれが交渉なのか分からなくなってきたのだが。
説得と懇願と取引とProvocationと言葉の暴力の応酬を繰り返す事が、果たして交渉と言えるのか否か。
(全体的に交渉を目的とする行動なら、過程で用いた話術に関わらず交渉と言える、か?)
そんな事を考えながらZuruwarnが交渉する相手、それはLambda worldのVandalieuやOrigin worldにいるBravers達がoriginally一度目の人生を生きていたworld、『Earth』の神だ。
その姿はZuruwarnから見ても異形であると同時に偉大なものだった。
一見すると、あらゆる宗教、あらゆるMyth legend、それに登場する全てのGodsとHero、神のFollowers、妖精妖怪、Divinity化された歴史上の人物までもが一堂に会しているように見える。
しかし、実際には全てで一柱の神だ。
another worldがcountlessに存在する-samaに、worldと神の成り立ちにもいくつかの場合がある。
その中で一番多いのがまず神が存在し、神がworldを作るpatternだ。Zuruwarnが本来存在するworld、『Lambda』もこれに当て嵌まる。
二番目に多いのは、既に存在しているworldに他のworldの神が自身のbelieverをGuidance、移住する場合。Lambda worldにEvil God (M) Evil God (P)を率いて侵略戦争を仕掛けたDemon King Guduranisの企みは、彼が勝利してればこれに当て嵌まっただろう。
そして最も少ないのがこの『Earth』の場合。
最初にworldが既にあり、生物が自然発生して更に進化し、進化した生物の信仰によって神が最後に創られる。
ある意味、最も純粋な信仰の形だ。
『であるからして――』
『我々にも立場と言う物が――』
『喧しい! Shut Up!』
『そこを何とかお願いしたい、この通り、頼む』
だからこそ色々と面倒で複雑だ。
何せ、身も蓋も無く言えば『Earthの神』は常に全ての人格が表に出ている多重人格者の-samaな存在だ。しかも Divinityは、Earthの人々が新たな神に祈れば祈る程増えて行く。
そして数が多いからLambdaのように神が直接地上にimpactを与える事が少なくなる。何せ異なるDivinityの神や悪魔が常に真横に居るようなconditionだ。Divinity同士で妨害しあい、結局小さな奇跡が時折起こせる程度に落ち着く。
believerを失いlegendすら殆ど摩耗したMythのGodsは、ゆっくりと溶ける-samaに消えるか他のGodsとFusionするが、有象無象の神が誕生するpaceの方が消えるよりも最近は早いようだ。
都市legendで恐れられる存在や、アニメやコミック、gameのCharacterまで神の一部に加わっているのを見ると、そのCreation性をLambdaの人々に少し分けて欲しくなるが、少しは抑えてくれないだろうか?
(十万年前のEARTHのGodsや、God of Originとの交渉はスムーズに進んだのだが……これ程複雑な交渉を経験できる機会はそうないのだから、楽しむべきであるかな)
どんな時にも楽しみを見出す事が出来るZuruwarnは、『Earthの神』との交渉を続けるのだった。
Food Stallに置かれたradioから流れるnewsを聞きながら、Murakami Junpeiはベンチに座り、購入したsandwichを齧っていた。
「sensei、何で未だにradioなんですか?」
向かいに座っているTsuchiya Kanakoに問われた彼は、つまらなそうに答えた。
「前にも言っただろ。netだとハッKingされる可能性があるが、radioならハッKingされないからだ。後、senseiは止めろ」
「えー、でもsenseiはsenseiじゃないですか?」
MurakamiはEarthでは修学旅行を引率していたInstructorで、後のVandalieuであるAmamiya HirotoやNaruse Narumi、Minami Asagi、そしてTsuchiya Kanakoの在籍していたclassの担任Instructorだった。
だからOriginにreincarnationした後でも彼女を含めた当時の生徒がMurakamiの事をsenseiと呼ぶのも間違いではないのだが、Murakami自身はそれが気に入らない。
「俺は今生でお前達に何か教えた事は無い。ageもほぼ同じだろうが。
今は時間があるから言っておくが、前世でInstructorだったからって今もそれを押し付けるんじゃない」
「あー、そう言えば前世の頃から本当はInstructorじゃなくて、プロスポーツ選手に成りたかったんでしたっけ」
「そうだ。プロのテニス選手に成ってworldで活躍するのが夢だった。ただ親の反対を押し切れるほどaptitudeは無かったけどな」
Murakamiの言葉をFood Stallの店員や他の客が聞いたら、首を傾げたかもしれない。何故なら、Originには「テニス」と言う名称のスポーツが存在していないからだ。
ただ、ラケットでBallを打ち合うworld的なスポーツは存在する。数種類のmagicの使用が許可されている、Bodyとmagicを駆使して闘うEarthのテニスとはかなり異なるruleのスポーツだが。
MurakamiはOriginにreincarnationした二度目の青春で、そのスポーツでプロを目指した。Rodcorteに与えられたmagicの適性やaptitude、Earthに居た時より恵まれていたbody part Abilityと反射nerve、動体eyesight。そしてCheat Abilityも隠れて使う事で、Earthでの学生時代凡百な選手でしかなかった彼は、Originでは学生ながらプロから声がかかる程の注目選手に成長した。
……今となっては過去の事だが。
「そう言うお前だって、元Idolだろうが」
「うわ~、それを言いますかセンセー」
「senseiじゃない。後口調を作るな、アラサーが」
Tsuchiya KanakoはEarthでは平凡な女子高生だったが、Originでは注目のIdolだった。Earthに居た時より容姿が優れているとか、歌やdance、演技力がずば抜けているとか、productionからの強力な売り込みがあった等の理由では無く、完全にCheat Abilityのお蔭だったが。
そして、Murakamiと同じく彼女にとってもそれは過去の話だ。
何故二人が夢を断たれたか、それはAmemiya Hirotoの活動が原因だった。彼はReincarnatorの非営利organization『Bravers』を立ち上げ、そこで自分達が特殊なAbilityを持っている事をworldに向けてオープンにした。そのためMurakamiやTsuchiyaがCheat Abilityを、Origin worldでは原理を解析不能なmagicとは全く別の力を持っている事が明らかに成ってしまったのだ。
試合やAudition等で二人がそのAbilityを使っていたかは検証できないが、広く知られた以上その業界で活動する事は出来なくなってしまった。
当時はAmemiya Hirotoの「このworldで生きるためにはAbilityを悪用するばかりでは、それが明らかに成った時敵を作りすぎる」と言う説得に、渋々だが納得した。実際、Murakami達の近辺には彼らが活躍できる秘密を探ろうとする動きがあったのは事実だ。特にMurakamiは、他の選手が知らない特殊なmagicを使っているのではないかとconjectureされていた。
AmemiyaがBraversを設立しなくても、彼のrule違反が判明するのは時間の問題だったかもしれない。
それから暫くは、二人はBraversでの活動で己の虚栄心を誤魔化した。災害rescue等で注目を浴び、Cheat Abilityを一部披露するshowは、ある意味プロスポーツ選手やIdolが浴びる注目や喝采と同じだったからだ。
だが、worldを震撼させた二つの事件で事情が変わった。
最初の事件、worldに-sama々な製品を輸出していた、今はnameが変わっている軍事国家の秘密研究所で発生したUndeadを退治した、death attribute消滅事件。この事件を機に、Braversの活動とorganizationの性質が変化した。
単純に人々を災害から救うheroから、関わりたくも無い軍事活動やしたくも無いHuman同士の殺し合いをするようになった。人道上の問題、テロとの戦争、そんなお題目を掲げても、blood生臭い殺し合いには変わりない。
そして二度目の事件は、『Fallen Champion事件』と呼ばれworld中のmedia、タブロイド紙やワイドshowでも取り上げられたKaidou KanataがShihouin Mariに殺害された事件だ。
Kanataが今まで犯してきた犯罪は、Dark hero等と見方によっては擁護できるような甘い物では無く、酷く生臭い下衆の所業ばかりだった。
幸い、明らかに成った原因は同じBraversのShihouin Mariが彼を殺害したからだった。なので彼女を悲劇のheroineとして印象操作する事で、世間一般からのimage悪化はある程度抑えられた。だがleaderであるAmemiya Hirotoの管理Abilityに大きな疑問符が付けられ、社会にとって彼らは以前の-samaな完璧なheroでは無くなってしまった。
そして、程なくMurakamiは十人程のmemberを連れてBraversから離反した。
既にorganizationが清廉でも潔白でも無いのに、heroの真似事をして自分達がLichに成るのをenduranceする理由があるのかと、Earthでの生徒たちを誘って。
その時、radioではBravers本部での爆弾テロ事件についてのnewsが流れた。
「ところで、アランと泉-sanは殺せたんですか? まだ『負傷者多数』としか発表がありませんけど」
この事件はアラン達が死後conjectureした通り、terrorist organization『The 8th Guidance』に合流したMurakami達の犯行だった。
「そのはずだ。【Gazer】も言ってただろ、二人はあの日俺に殺されるって。それに『Enma』の奴が保証しただろ」
【Gazer】とはMurakamiと共に離反した……accurateには、拉致されたBraversの元memberだ。【Oracle】や【Calculation】とは違い、制御は出来ないがほぼ完全な【Future Sight】Abilityを持つ彼女は、突発的に自分が関わる重大事件を予知する。
ただ本人がそのプレッシャーと予知の際見えるグロテスクな映像に耐えきれず薬物に手を出し、実はKanataの悪事が明らかに成るずっと前に薬物依存症で廃人同然に成ってしまったが。
収容されていた医療施設からMurakami達によって拉致され、現在は『Pluto』の操り人形……洗脳でもされたのか、敬虔なfanaticと化している。
そして『Enma』は『The 8th Guidance』のmemberだ。何故か過去に死んだHumanの顔とnameが分かるらしい。Reincarnatorでも無い以上、恐らく何らかのmagicの効果なのだろうが、詳しい事はMurakami達も知らない。
「GazerとEnmaが嘘を言う意味も無い。それに、苦労して保存していたKanataの形見まで使ったんだ。殺し損ねていたら大赤字だ」
「ですよねー。
それにしても、Pluto -san達って何がしたいんですかね? 最初は復讐かと思ってたけど、それにしては淡々としてるし、かと言って変な正義感にかぶれている-sama子はないし。目的不明の殺しをしたかと思えば、慈善事業もするし」
「さあな。fanaticが考える事は分らん。まあ、仕事が終わるまでは利用させてもらえればそれで良いさ」
sandwichを食べ終えたMurakamiは、包み紙を丸めると適当に投げ捨てた。
「【Oracle】避けのmanner違反ですか? この辺りでポイ捨てって犯罪でしたっけ?」
「ああ、罰金だな。取り締まる奴が居ればだが」
【Oracle】は所有者のEndou Kouyaが行う質問に答えるが、その答え方がとても杓子定規である事をMurakamiは知っていた。
だからこそShimada達を殺した時も、軽犯罪を犯した直後にShimadaとAranを爆殺し、そしてすぐ軽犯罪を犯してから姿を消している。
そして二人の姿はこの時も雑踏に消えて行った。
国際的なterrorist organization、『The 8th Guidance』は他のterroristとは異質な存在だ。
その行動原理は、徹底的なDeath-Attribute Magicを研究する機関の破壊と研究者の殺害。そして『Bravers』の殺害。これらの犯行を、差別的に行っている。
そう、差別的に。
terroristがどんな政治的、宗教的な目的を掲げても、ある一定以上支持されない理由は、犯行が無差別である事が理由だ。爆弾、生物兵器、毒物、更にOriginではmagic。それらによって巻き起こされる惨劇の被害者は老人やchild、妊婦、そして偶然立ち寄ったterrorist支持者の友人や知人、関係者、が含まれる可能性がある。
場合によっては、支持者本人も被害にあう。だからだ。
しかし、『The 8th Guidance』は対象を過激なまでに差別している。これまで直接殺害したのは研究機関の職員やそれを守る警備員やbody Guard、軍人。BraversのShimada IzumiとAran、Braversで働く職員だけで無関係な者には傷一つつけていない。
そして活動資金を得るためにsponsorとの取引以外にも、一銭にも成らない慈善事業を行う事もある。
何より、彼らは新しいmemberを求めない。
故に『The 8th Guidance』を専門で追う捜査機関のHumanやBraversは、彼らをterroristでは無く極めて特殊なcult集団として認識している。
「奴らによると私達はcultで、私はその女教祖らしいわ。面白い話ね」
白いone pieceを着た黒い髪を長く伸ばしたShoujo、Plutoはプールサイドに置かれたBeachベッドに腰を降ろしたまま、隣のベッドで横に成っている白人の伊達男に語りかける。
眼鏡が知的な雰囲気を、それでいて髭と胸毛がワイルドさを演出している。一見すると、Eliteビジネスマンが若いAsia系のloverを侍らせているようだ。
しかし男のだらりと垂れた右手の指は、銃の引き金に引っかかったままだ。
「ぁ……」
僅かに漏れる男の声を無視して、Plutoは続ける。
「何が面白いのかって? だって私は誰かに何かを説いた事も、戒めた事も、導いた事も無いのよ。誰も啓蒙しない宗教家なんて、あり得ないでしょう?
そもそも私はleaderでも指導者でもなんでもないの。body partがweakから大事にされていて、比較的見た目が良いから、mediaに送りつけたりnetで公開したりする映像に顔を出す機会が多いだけ」
「それで暇だから頭を働かせて色々口を出す。ならもうleaderだよ」
そう言いながら現れたのは、額から後頭部にかけて頭部が肥大した男だ。彼は、両手で意識が無い-sama子の赤ん坊を抱いていた。途中で切れたtubeがプラプラと揺れている。
「Jack、次はその子?」
「ああ、脳性麻痺かな? 詳しくは知らないけれど、Jackと同じ死んでも生きてもいない友達だよ」
「じゃあ、そのお友達にお別れを言いなさい」
Plutoが白い手を赤ん坊に向けると、赤ん坊から黒い煙の-samaな物が浮かび上がり、彼女の手に吸い込まれていく。
「うん、お別れを言うよ。じゃあね」
そしてJackは赤ん坊を抱いたまま音も無く消える。
Plutoはそれに構わず、隣の男の顔に触れる。すると、男は見る見るうちに生気を失った。肌から張りが無くなり、目が落ち窪み、頬がこけていく。
「や、やめてくれ……あんたからは、The 8th Guidanceからはもう手を引く。足も、洗う、もう二度と誰も殺さない、誓うよ、だからもう吸わないで……く……れ」
男はPlutoを殺し、その遺体を回収するために在る金持ちに雇われた殺し屋だった。
腕利きとして知られた男だったが、今はPlutoに命乞いをする弱者の立場に堕ちていた。
男の命乞いに対して、Plutoは面白い冗談を聞いたとばかりに笑い出す。
「フフフ、貴方、私が人殺しに罪悪感は覚えないのって聞いた時、自分は道具だって答えたじゃない。道具だから、罪悪感なんて覚えない。金を払って俺を使う奴が悪いって。
道具で在る事を肯定するあなたが、自分の意思で仕事を止める事なんて出来る訳ないじゃない」
楽しげに笑うPlutoを見上げる男の瞳にdespairが広がり、そして虚ろになった。
「そう、死んだの。おやすみなさい」
「おや、死んじゃったの? でも丁度良かったね、さっきの子で最後だったみたい」
再び現れたJackが、白い歯を見せて笑う。
Jack、『Jack-o'-lantern』と呼ばれる彼は、悪魔相手に詐欺を働き死後天国にもHELLにも迎え入れて貰えず現世を彷徨うJackと同じように、world中を彷徨う……Space-Attribute Magicの【Teleportation】と同じように移動する事が出来た。
ただし、移動先は『The 8th Guidance』のmemberの近くか、意識不明や余命幾ばくもない重体の者の近くだけだ。
ただ患者と一緒に移動して、元居た場所に戻す事は可能だ。
今もそうして重体だった赤ん坊を連れて来て、そして戻した。
「最後だったの。もう少し『死』を集めたかったのに」
Pluto。彼女は他者の『死』や生気を奪う事で、死に瀕した存在を治療し、そのcostを他人の生気で補う事が出来る。
実は『The 8th Guidance』が行う慈善事業やsponsorから活動資金を得る方法である治療は、Plutoのこの力を使ったものが殆どだ。
「しかし酷い。後でこれは使うから、あまり吸わないでくれと言ったのを忘れたの?」
文句を言いながら死んだはずの男が起き上がった。そして具合を確かめるように首や肩を回し、コキコキと音を立てる。
「ああ、body partが硬いなー。この前まで入っていた黒人の元海兵隊員の殺し屋の方が具合良かったのに」
「ごめんなさい、『Shade』。そいつ白人で目が悪いから、どうせ気に入らないだろうと思ったの」
「目? そんな悪いようには思えないけど……この眼鏡、伊達眼鏡だね。変装のための小道具だよ」
眼鏡を外してサイドtableに置く殺し屋……では無く、殺し屋の死体に憑りついたShade。
一度Braversに「保護」された後収容された研究所で、Bodyを持たない霊に近いMental生命体にされたShadeは、死後間もない死体に憑りつき、自分のBodyとして動かす事が出来る。
「ふーん」
「興味無さそうだね。やっぱりさっきのはただの言い訳か」
「それより、ここの他の人達はどうしたの? -chanと殺した? Jack気に成る」
「うん、『Berserk』と『Baba Yaga』が頑張ったからね。『Valkyrie』も喜んでたよ。また暫く『Isis』と一緒に引き籠るんじゃないかな?」
このプール付の豪邸は、実は『The 8th Guidance』の物では無く在る犯罪organizationのボスの所有物件だ。Pluto達は、武闘派で知られるそのorganizationのボスが彼女の力を手に入れようとしたため報復したのだ。
「お金でPlutoにdiseaseを治してもらったんだから、それで満足していれば良かったとJackは思うよ」
「欲深いから犯罪organizationなんてしているのよ」
「それは偏見だよ、Pluto。私達だって犯罪organizationなんだからね」
「それなら偏見じゃなくてMariよ。私達は欲深いもの」
Pluto達『The 8th Guidance』の目的。それは死ぬ事だ。
全てはあの時、研究所でHELLの-samaな人生を生きていた彼女達を助けたCodename『Undead』……後のVandalieuであるAmamiya Hirotoの意思に沿うため。
だが、Pluto達が『Undead』に直に会ったのは数分程の短い時間で、言葉も交わしていない。ただ助けられ、その時負っていた傷や、失っていた四肢、実験の副作用をある程度治され、逃がされた。その際、『Undead』が纏っていたManaが流れ込み、彼女達とFusionしてその一部と成った。それだけだ。
だからPluto達は『Undead』の意思をその短い行動からconjectureし、願望や妄想まで混ぜた物を行動のguidelineとしていた。
Death-Attribute Magicの研究所を襲撃するのは、自分達の-samaな犠牲者をこれ以上出さないため。
徹底して差別的に目標を殺すのは、『Undead』が殺した対象を復讐すべき人物に限っていたから。
Braversを狙うのは、『Undead』を一方的に、ただのMonstrosityとして処理したから。
そして最終的には死ぬ。
死んで『Undead』と同じ所に行く事。それが彼女達の望みだ。
『Undead』がどう言うつもりで自分達を助けたのか、Pluto達は何も知らない。自分自身を重ね合わせて同情したからか、正義感か、minionsとして後で使うためだったのか、何もわからない。
それなのにPluto達が既に滅びた『Undead』に全てを捧げようとするのは、彼女達にとって『Undead』以上の存在が何も無いからだ。
『The 8th Guidance』のmemberの全員が、bloodの繋がったfamilyを持たない。Death-Attribute Magicの研究の為に何処からか集められてきた孤児や売られたchildだ。
モルモットとして過酷な実験を課され、番号とケージの-samaなroomで隔離され、変質していく自身のbody partを嘆き、恐れても乞うても同じpaceで聞こえてくる破滅の足音に耳を傾ける事しか出来なかった。
『Undead』の消滅後、何もできなかった彼女達はBraversによって国際機関に保護された。そう、保護だ。
番号で管理され、自分以外にも居ると分かった仲間と再び離れ離れにされ、ケージの-samaなroomに閉じ込められ、「これも-kun達を治すためだ」と呪文のように唱える研究者にbody partを弄り回される。
その新しいHELLから逃げ出せたのも、あの『Undead』が与えてくれたManaのお蔭だ。
どんな正義もPluto達とは関係の無い所で振るわれ、関係の無い者が罰せられ、関係の無い者が救われる。
どんな愛情も余所で注がれ、どんな希望も彼女達の先では輝かない。だと言うのに、despairだけは等しく蟠る。
これも人類の為だと搾取されるのに、その人類に自分達が含まれていない。
まるで自分達はこのworldにとって異物の-samaではないか。
その唯一の例外が『Undead』だった。彼がPluto達を助けたのが、文字通り他愛も無い行為だったとしても、Pluto達にとってそれは今まで受けた中で最高の愛情だったのだ。
そんな存在の近くに行けるのなら、死すら幸い…いや、死こそが幸いだ。
「でもただ死ぬ事は出来ない。あの人がくれた命を自分で捨てる事になるから。
だから精一杯戦って、あの人を殺したBraversを殺しましょう」
「そのためにMurakami達を迎え入れたんだもんね。Jack、Gazer以外は嫌いだな」
Jackが言う-samaに、元BraversであるMurakami達を『The 8th Guidance』に迎え入れたのは、Amemiya Hiroto達Braversとの対立を煽るためにだ。
何か裏があるとか、複雑で大掛かりな陰謀だとか、そんな物は何も無い。
ただ一人でも多く道連れを増やす為のtacticsだった。
「JackはGazerと仲良しだもんな。どうする? あいつは見逃す?」
『Undead』に直接手を下していない、Plutoが死んだ脳細胞を再生させるまで半死人だった女一人見逃したところで構わないのではないかと、Shadeは思っていた。
どうせ放っておいたところで、あの自殺願望ぶりを考えると勝手に首を括るなり手首を切るなりするだろうし。
しかし Jackは首を横に振った。
「Jackはヤダよ。Gazerも連れて逝きたい、きっとあの人も気に入るよ。許してくれる」
だがJackはGazerと仲良しなので、彼女も連れて逝きたいらしい。
「そう、なら連れて逝きましょう。でも、それまで自殺しない-samaに-chanと言い聞かせるのよ」
「うんっ、分った! もう手首を切らない-samaに-chanと言うよ!」
前もJackはそう言ったのだが……因みにGazerが自殺を試みたのは昨日で十回目だ。よく本当に死なない物だと、逆にPluto達は感心している。
「死んだのは替え玉じゃなくてボス本人だって、『Enma』に確認した?」
「した。本人だって。替え玉は三か月前に抗争で死んでるからね」
「そう、じゃあ帰りましょうか。留守番をしている『Ereshkigal』にお土産を見繕ってね」
「冷蔵庫にあった生ハムで良いんじゃないかな?」
『The 8th Guidance』が願う最後の日は、近づきつつあった。
「その時に成れば、あの夢がただの夢なのか、正夢なのかきっと分かる。ああ、楽しみね」