「乾杯！ Elderと恩人に乾杯！」
「うめぇっ、恩人がくれた肉うめぇっ！」
最ElderであるZadirisを助け、Warrior長にして次期族長であるVigaroに認められて迎え入れられたGhoulのcommunityは、Devil Nestsの奥に在った。
Ghoul達の集落はVandalieuが思っていたよりはずっと広く、そして文明的であった。
森というよりは密林といった-sama子のDevil Nestsの木々を切り開いて作ったOpen Plazaに、木の葉を編んで作った屋根の竪穴式住居が立ち並んでいる。
建物の形状上湿気は大丈夫なのかと気になるところだが、ここは本物のAmazonではないし亜熱帯気候でもないため問題無いのだろう。
後は井戸などを掘って水を確保し、原始的で規模も家庭菜園程度だが畑もある。後周囲の密林で手に入れた植物を発酵させて酒を作ったり、狩りで手に入れた獲物を加工して保存したりしている蔵まであるそうだ。
Ghoul達の生活は、VandalieuがEarthのtelevision番組で見た森で暮らす少数民族といった-sama子だ。少なくとも完全な狩猟採集に頼るGoblinやKobold等のmonstersより、余程文化的でProduction的なcommunityと言えるだろう。
『そして、俺の今までの生活よりもずっとHumanらしい生活をしていると思う』
mountain banditからの略奪を含むが狩猟採集に頼る生活を続けているVandalieuは、やっぱりstabilityした生活基盤って重要だなとGhoul達を見て再認識したのだった。衣食住揃って、人は初めて人らしい生活が出来るのだと。
そしてGhoul達はVandalieuが提供した肉と、思った以上に使わなかったのでついでに提供したmountain banditのwineで宴会を開いていた。
その数およそ百人。他に数日かけてGoblinを狩りに行っているWarrior達が十人程居るので、更に増えるらしい。monstersの生態にいまいち詳しくないVandalieuだが、Devil Nestsに存在するmonstersの集落としては最大規模だろうと想像するのは難しくない。
因みに、そのGoblin狩りに出ているWarrior達のleaderがZadirisの末娘らしい。何でも、女だがmagicよりもWarriorとしての才に恵まれているのだとか。
そして獅子に似た頭と足より長い腕を持つGhoulの男と、灰褐色の肌以外はHumanの女と大差ないGhoulの女が、口々にZadirisを助け肉と酒を提供したVandalieuを称え、Cookingにtongue鼓を打っている。その-sama子は、Vandalieuに「良い事したなぁ」と和ませるのに十分だった。
肉の正体を知っていても、その感想は変わらない。
やっぱり、食事は皆で食べたほうが美味しいし。
「Vandalieu、お前も食え」
Vigaroがよく焼けた肉の刺さった串を差し出すが、Vandalieuは首を横に振った。
「ちょっと人肉を食べるのには抵抗があるので」
そう、Vigaro達が串に刺して焼き、香草等と一緒に煮て食っているのはVandalieuがZadirisを助けた時に殺した、五人のadventurerの肉。つまり、人肉だった。
Undeadではないなど、Vandalieuの持っているimageとは違ったGhoul達だが、人肉を喰うという特徴は当てはまっていた。
「そうか？ poisonトードの足より美味いぞ？」
VigaroはVandalieuが食べているpoisonトードの後ろ足の丸焼きを見て首を傾げるが、隣に座っているZadirisが彼を窘めた。
「あまりしつこく誘うな、VandalieuはDhampirなのじゃからbloodは飲んでも肉は食わんのじゃろう」
「そうか？ じゃあ、酒はどうだ？」
「Vandalieuはまだ一ageじゃぞ、酒は毒にしかならん。宴の席でresistance skillでも付けさせる気か！」
「一age！？ そうなのか？ 我はてっきり体が小さいだけでもっとageを取っていると思ったぞ」
Vigaroが目を見開いて驚くが、Vandalieuの言動を見ていると見かけよりずっと年月を生きているように思っても不思議は無い。いや、思い込む方が自然だろう。
「まあ、magicを使ってUndeadを何体もTamerしてadventurerを五人倒すような坊やじゃ。body partが小さいだけの大人と思っても不思議は無いが……」
「そうですか？ まだまだ若輩者の一age児なんですけど」
『見えん見えん』
声を揃えて首を横に振るZadirisとVigaro。Vandalieu本人も「だろうな」と思ったので、気にしないが。
実際、magicやUndeadの事を除いても今のVandalieuを見て「あどけない一age児」と思うHumanは居ないだろう。無表情で、生気の無い死んだ瞳、目の前にいるのに希薄な存在感。髪はDarciaが生後半年の頃に殺されたせいで伸び放題で、着ている物はボロ布以上服未満の代物。
どう好意的に見ても幽霊の類だろう。
「Elder、私達も恩人に挨拶しても？」
「是非お願いしますっ」
しかし Ghoulの女達が持った印象はそうでは無かったようだ。数人のGhoulの女達が黄色い瞳を輝かせてVandalieuを見つめている。
その視線を受けて、Vandalieuは目を瞬かせた。これまでの人生で、霊以外の誰かからの人気を勝ち取った事が無かったので、驚いているのだ。
「うむ、坊や、この者達は集落の中でも若い女達でな、今儂が色々と教えているところなのじゃよ」
Zadirisがintroductionした女達は、確かに若く見えた。大体の者が十代半ばから二十age前後に見える。ただ、彼女達にElderと呼ばれるZadirisの方が幼い容姿をしているのだが。
「可愛いぃ、髪の毛が鬣みたい」
「綺麗な瞳、左右で色が違うのね」
だがEmotionalには確かにZadirisより彼女達の方が幼いようだ。introductionされた途端Vandalieuを争うように代わる代わる抱き上げる。
「お、おい、あまり乱暴にしてはいかんぞ」
足を掴んで持ち上げたり、逆さまに抱き上げたり、一age児にするにはかなり乱暴な扱いだった。VandalieuはDhampirだったお蔭で、既に成人male以上に頑丈だったから平気だったが。
しかし平気でも普通ならこんな扱いを受ければ不快に思うのが当然だ。しかし、Vandalieuは彼女達の荒っぽい歓迎に少しも怒らなかった。
『あれ？ これってもしかして……モテてる？』
今までの人生でこんなに異性にチヤホヤされた事は無い。人生三度目にして、初めて到来したモテ期か！？ Vandalieuの思考は、そこで止まっていたので扱いの乱暴さに腹を立てるどころではなかったのだった。
Ghoulの女達は誰もが容姿の整った美女かBishoujoで、その上密林のようなDevil Nestsに集落を構えている関係で皆露出度が高かった。Humanの男でも彼女達に纏わりつかれたら鼻の下を伸ばすだろう。
彼女達も人肉を喰っていたという事実が気に成らなければだが。
「俺はVandalieuと言います。よろしくお願いします」
そしてVandalieuはfragmentも気に成らなかった。
考えてみれば、あのadventurer達はHumanの女の子を襲って強姦した上にSlaveにして売り飛ばそうとしていた訳ではない。彼らが襲っていたのは、社会的にmonstersと認定されたGhoulのZadirisだ。
certainly Slaveとして彼女を売り飛ばすのは違法行為だが、それは「Tamerした訳でも無いmonstersを町にいれた」と言う罪状なので、HumanのShoujoを違法に売り飛ばすのを禁じる法とは趣旨が違う。
そしてVandalieuが襲撃した時点では、彼らはただmonstersの雌を強姦しようとしていただけだ。それは別に犯罪でもなんでもない。何処の国が「monstersの雌を強姦、又は辱めてはならない」なんて法律を施行するのか。いや、妙なdiseaseが流行らないようにという意味でならするかもしれないが。
倫理的にはfemale adventurerやguildの受付嬢は顔を顰めるだろうし、軽蔑するだろう。しかし、ruleには違反していないのだ。
そもそもadventurerはmonstersを退治して人々を守るための存在だ。そしてGhoulはGoddess Vidaにrootsを持つが、Amid Empireとその属国ではmonstersと定義されている。
だから殺す前に強姦しても法的には何の問題も無い。
よって、Vandalieuがadventurerを殺した行為はただの襲撃であり、死体から装備品を剥ぎ取った行為はmountain banditそのものだ。
しかし、そこで更に考えると「だからどうした」と言い返せる。
何故ならVandalieuはDhampir。Amid Empireとその属国では、Humanでもなんでもない「monsters」と定義されている存在だ。
つまりGhoulと同じだ。Humanを襲い、害をなす存在だ。
だったら油断しているadventurerの一団を襲撃して皆殺しにして装備品を略奪し、その挙句肉を振る舞って何が悪いというのか。
なんたってあのadventurerにとってVandalieuはGoblinやpoisonトードと同じ存在だ。気にする必要が何処にある。
もしVandalieuがAmid Empireの勢力圏でDhampirの人権保護活動をするつもりなら、気にする必要があるかもしれないが……そんなつもりはさらさら無かった。頼まれても御免だ、そんな面倒な事。
こうして歓迎してくれる分HumanよりもGhoulの方に親しみを感じるぐらいなのだ。こんなに喜んでくれるなら、mountain banditの死体も保存しておけばよかったかな？ 今度からはそうしよう。
そんな事を浮かれながら考える。
「うちの子もVandalieuみたいに強くなってくれると良いんだけど。もう三十ageなのにまだ親離れ出来ないのよ」
「ねぇ、あたしのお腹撫でてくれない？ 赤-chanがあんたみたいな強い子に生まれるようにって」
「私、Bildeって言うの。今度生まれるchildが男だったら、あんたのnameをもらっても良い？」
一気にガクッと落ちたが。彼女達の全員が母親か、もうすぐ母親になる予定らしい。お腹がまだflatだから気がつかなかった。
別に彼女達とそういう関係に成れると思っていた訳ではないし、強く希望している訳でもない。何せ、まだ一age児なのだから、成りようがない。しかし、どうしようもなく気分が盛り下がるのを感じるのだった。
同時に、そんな事でガッカリする自分自身の性格はどうなんだ？ っと、adventurer達を始末した時にも覚えなかったSelf嫌悪に苛まれるのだった。
「ええいっ！ 疲れてぐったりしているではないかっ、さっさと坊やを放すのじゃっ！」
傍から見るとただぐったりしているだけにしか見えなかったのだが。
Ghoul、最低でもRank３のUndead系のmonsters。他のGoblinやOrc、Kobold等の亜人系monstersよりも高い知能と社会性を持ち、性別でappearanceが大きく異なる。
共通して黄色い瞳に灰褐色の肌を持ち、力が強く、爪から麻痺毒を分泌し、肉食を好む。また毒と痛みに強く、Vitality旺盛である。
雄は獅子の頭を持ち、WarriorとしてのAbilityに優れ、特に力と麻痺毒の強さが雌を上回る。
対して雌は総じて美しい女の姿をしており、body part Abilityでは雄より劣るがその多くがmagic的な素質を持ち、簡単なmagicを使う事が多い。
ただ雌でも優秀なWarriorはいるし、雄のMageが存在しない訳ではない。
また、GhoulはHumanの死体を同族に変化させる特殊な儀式を行う事がある。
上位種としてGhoul WarriorやGhoul Berserker、Ghoul Mage等が存在し、過去にはさらに上位のGhoul TyrantやGhoul Elder Mage等が確認されている。
『これが私の知っているGhoulに関する情報だけど……そのGhoulの集落で春になるまで過ごすつもりなの？』
「はい。あとkaa-san、GhoulはUndeadでは無くVampireと同じでVidaにrootsを持つraceらしいです」
心配顔のDarciaに、Vandalieuはいつも通りの無表情で応えた。
『だから余計に心配なのよ。UndeadだったらVandalieuのskillで友好的になるけど、違うのよ？ あの人達のお腹が減って、Vandalieuを食べようとしたらどうするの？』
目覚めたばかりでZadiris達を直接見ていないDarciaにとって、その心配は至極真っ当なものだった。
「大丈夫だと思うよ。maybeだけど。少なくとも、Evbejiaにstealth込んだ時みたいな『死のsign』はここでは感じない」
Vandalieuは彼らの友好的な態度に、完全ではないにしてもある程度気を許していた。
尤も、DarciaもVandalieu本人もまだ気が付いていないが、彼のDeath-Attribute CharmのskillはGhoul達にもしっかり効いていたのだが。
「それに、適当な場所で春まで過ごす必要があるのは変わらないので。Zadiris達からは何時まででも居て良いと言われているし」
既に春まで居て良いかと打診して、communityのtop達に快諾されているVandalieuだった。魅了系skillと肉は偉大である。
「後、春までの間に色々とZadirisから教えてもらいたいので」
『それはOrbaum Elective Kingdomについてからで良いじゃない……とは言えないのね？』
「はい、guild Cardの問題があると分かったので」
Vandalieuは酒を降ろしたため幾分広くなった馬車のcarriageに置いた、五枚のguild Cardに視線を走らせた。それは宴に供したadventurer達の持ち物で、彼らのnameと彼らがＤClass adventurerである事が書かれている。
certainly後で処分するつもりだが、adventurer達の霊からとても重大な情報を聞いたので、その前に少し調べていたのだ。
guild Cardは、他人に自分のStatusを表示する機能がある。本来専用のmagicやmagic itemを使わなければ見られない、他人のStatus。
ただ、Statusを何処まで見せるのかはCardの持ち主が調整できるらしい。nameと現在のJobだけか、今までのJob Historyまで見せるか、Ability Valuesやskillまで見せるのか。それが持ち主の自由なのだそうだ。
だが、初めてguild Cardを作る時は全ての情報がguildの職員に対して表示されてしまう。
「っと、いう訳でadventurerに成った瞬間、俺のskillやらCurseやらがバレます」
『うーん、厄介だよねぇ。普通なら、報奨金が貰えるねって喜ぶところだけど』
Adventurer’s Guildでは、未知のJobやskillの発現や獲得を見せたadventurerに報奨金を支払っている。
そしてVandalieuがすでに獲得している【Death-Attribute Magic】や、【Death-Attribute Charm】は未知のskillだった。
それをDarciaはVandalieuが前世や前々世について説明した時に、初めて聞かされている。accurateには息子のskill構成を聞いて、その中に初めて聞かされるskillがある事に気が付いたのだが。
『guildに登録した瞬間、有Adeptに成っちゃうよね。Mage guildは間違いなく注目するだろうし。
後、Curseについてもきっと騒がれると思う』
「でも今更skillを忘れたり、Curseを前もって解いたりする事は出来ないので、guildに登録する前にある程度の知識と技術、力を手に入れておこうと思います」
このworldで両親の無いVandalieuがHuman社会で生活するには、身分の保証が必要であり、そのためには何処かのguildに登録する必要がある。そしてどのguildでもguild Cardが存在するため、どうやってもVandalieuのskillとCurseは明らかになる。
ただ、guildは基本的に会員を守るためのorganizationなので、幾ら未知のskillやCurseの解明の為だと言ってもVandalieu自身の身柄を不当に拘束、拉致する事は無い。他の会員にしても、会員以外の者達にしても、未知のskillやCurseを受けているからと言って、Vandalieuをどうにかする事は出来ないはずだ。
表向きには。
世の中の誰もが規則や倫理観を守る善良な人々ばかりではないのは、よく分かっている。
『仕方ないか。Zadirisって人はmagicも使えるみたいだし、色々教えてもらうのよ。magicその物は習得できなくても、きっとdeath attributeのmagicに応用できるはずだから』
「はい、kaa-san」
こうしてVandalieuは暫くの間、Ghoul communityで生活する事に成ったのだった。
《【Death-Attribute Charm】skillのlevelが３に上がりました！》
《【Strengthen Follower】skillを獲得しました！》
一見すると、それは青紫色をしたヒレ型の何かとしか言いようの無い物だった。触れてみるとぬるっとした手触りで、中途半端に柔らかい。
少なくとも、食べ物だとはとても思えない物体だった。
本当に食べられるのか？ 何かの冗談じゃないのか？ そう訝しみながら、Vandalieuはそれを一口食べてみた。
やはり微妙な歯応えと、若干苦く若干辛い微妙な味と、その癖臭い訳ではないが香ばしい訳でもないという微妙な匂いが鼻孔に漂う。
原料が何なのか聞いていなければ、肉なのか魚なのか、それとも野菜かと首を傾げる所だ。
「どうだ、Van。Gobu-gobuの味は？」
「……美味しいです」
自分の名を縮めた愛称で呼ぶ長身の女Ghoulに感想を聞かれたVandalieuは、つい反射的に心にもないお世辞を口にしていた。この辺りに治る事の無いコミュ障のimpactが表れている。
「Van、今まで何を食べていたんだ？ これを美味いと思うGhoulはいないぞ」
そのお世辞にしてもVandalieuが無表情なので全く効果が無いのだが。黄色い瞳に憐れみが浮かんでいる女Ghoulに何か言い返そうとして、自分の食生活があまり言い返せる物でない事に気が付いた。
「……Giantカエルの後ろ足」
母乳とblood以外ではそれが一番美味しかった。
「まあ、Devil Nestsには美味いmonstersや果物が幾らでもある。お前はまだ一ageなんだから、気にするな」
そう言いながらVandalieuの頭を撫でる女Ghoulの名はBasdia。朝方戻ってきた、Goblin狩りに赴いていたWarrior達のleaderで、Zadirisの末娘だ。
百九十ｃｍを超える長身に、鍛えられたmuscleとfemaleらしい豊かな曲線を併せ持つ二十代半ば程の美女だ。Earthなら美しすぎるfemale athleteとか格闘家とか呼ばれるかもしれない。
そしてZadirisによく似ていた。彼女達を見れば、誰もがageの離れたsistersだと思うだろう。ZadirisがImoutoで、Basdiaが姉だと思い込んで。
「しかし、HumanはGobu-gobuを作らないのか。Human達の集落ではそれほど美味い物が沢山食えるのか？ だとすれば、adventurer共の美味さにも納得だが」
「いや、単純にGobu-gobuの作り方を知らないだけだと思います」
「知らない？ 何故だ、材料なら何処にでもあるし、adventurer共がよく狩っているじゃないか」
何処にでもあるし、adventurer達がよく狩っているとBasdiaが言うGobu-gobuの材料。それはGoblinとGobubu Grassの汁だった。
まず、Gobubu Grassというのは一般的に草のGoblinと呼ばれる紫色の雑草で、Breeding力が強く潰すと紫色の汁を出す。一応は魔草の一種だが、直接的な害は無い。ただ人が世話している畑に何時の間にか生え、畑の養分を旺盛に吸って生え茂るという、農家の天敵のような草だ。
そして魔草の一種だが、不味くて食用に適さず更に薬の材料等にも成らないという厄介な存在だ。
Breeding力が高いだけの、百害あって一利noneである所からGoblinのような草、Gobubu Grassと名付けられた厄介者だ。
そしてGoblinだが、誰もが知っている通り肉は臭くてとても食えたものでは無い。bloodも、内臓も同-samaだ。VandalieuもGoblinのbloodと虫の搾り汁。どちらかを飲まなきゃいけないなら後者を選ぶ程の不味さを誇る。
そのGoblinの肉を適当な大きさに切った物を、Gobubu Grassを潰して作った汁に丸一日漬ける。するとGoblinの肉から臭みが抜けて、美味くは無いものの不味くも無い程度の味になる。しかも、一年程は腐らないため保存食としても使えるGobu-gobuになるのだ。
「獲物が取れない時に、私達はこのGobu-gobuで凌ぐのだぞ」
「手間も技術も干し肉を作るよりもかからない、便利な非常食兼保存食だとは思いますけど……HumanはそこまでしてGoblinを食べようとは考えないでしょうから」
Vandalieuの言う通り、HumanならGoblinをどうにかして食用にしようと工夫を凝らすより、Goblin以外のもっと美味しい物が無いか探し、栽培や狩る事にその労力を使うだろう。
「そう言うものか」
納得したのか、それとも理解を諦めたのか、Basdiaは肉切り包丁でblood抜きしたGoblin肉を切る作業に戻る。これから十数匹分のGoblin肉でGobu-gobuを作る仕事が残っているのだ。
Basdiaは若いGhoulの中では男も含めて一番腕が立つのだが、集落での地位はあまり高くない。Ghoulの社会では男は強さ、女はmagicの腕と産んだ子の数で地位が決まるそうで、彼女はmagicが苦手で更にまだchildを産んだ事が無いので、武術が幾ら達者でも上の立場には成れないらしい。
Earthにいるその手の問題解決に熱心な人達が「差別だ」と怒り出しそうだなと、Vandalieuは残りのGobu-gobuを食べながら思った。いや、monsters扱いのGhoulの社会formに文句を言う程暇じゃないか。
「早くchildを産んで偉くなりたいものだ。偉くなれればGoblin狩りやGobu-gobu作りではなく、もっと美味い狩りがいのある獲物を狩りに出る事や、雑事をしている時間を強くなる事に集中できるのだが」
Houseworkや日用品作り、家や集落を囲む柵の手入れ等は地位の低いGhoulの仕事なのだそうで、それにGobu-gobuの材料のGoblin狩りやGobubu Grassの採集といった仕事も含まれる。
例外なのはWeapon Equipmentや鎧作りで、それが出来るGhoulは弱かったりchildを産んだ事が無かったりしても、集落から尊敬されるそうだ。
「やっぱり偉くなって強くなりたいですか？」
「ああ。私は強い奴が好きだし、強くなりたいからな」
パッと見て女Warriorといった姿のBasdiaは、やはり女Warriorらしい性格をしているようだ。
「それに、ageの事もあるからな」
Basdiaは今年で二十五ageになったらしい。Ghoulのfemaleはchildを妊娠するまでappearanceのageが止まらないそうなので、このままではappearance ageがZadirisの倍になってしまうと悩んでいるそうだ。
見る限り……見上げる限り、気にする必要は無いとVandalieuは思ったが。
「Vanがもう少し大人だったら、種を貰うのだがな」
「ぶっ！？」
「どうした、Gobu-gobuが喉に詰まったか？ 大丈夫か？」
驚いて牛の首も落とせそうな肉切り包丁を落として、Vandalieuを持ち上げるBasdia。その貌には特に恥じらいとかそういった物は浮かんでいない。
「いえ、しみじみとした口調でとんでもない事を言うから、驚いただけで」
種を貰うなんていきなり言われて、驚かない訳がない。しかし、Basdiaは「そうか？」と首を傾げた。
「母上が言うには、集落に中々妊娠出来ないGhoulの女が居る時にHumanの男を生け捕りにしたら、命を助ける代わりに種をdemandする事は何度かあったらしい。Human等の他raceの種の方が、Ghoulの種よりもchildが出来る可能性が高いそうだ。
Humanの男の方も、協力的で上手く行く事が多いらしい」
「そりゃあ、命がかかっているなら必死になって協力するでしょうね」
男なら、死ぬか子作りかだったら誰だって後者を選ぶのではないだろうか。特にGhoulのfemaleは肌や瞳の色を気にしなければ、Humanのfemaleと変わらない姿をしているし。その上――。
「Ghoulの女の人は、皆魅力的ですからね」
昨日からVandalieuが見るGhoulの女達は、誰もが美女かBishoujoばかりだ。命が助かる上にセックスできるなら、余程貞操観念が強固か熱狂的なAlda神信仰者の男でもない限り「ＹＥＳ！」を連呼するのではないだろうか？
少なくとも、自分だったらそうする。
「Humanの目から見てもそうか。それは嬉しいが、私では無理だろうな」
「何故ですか？」
「私は二十五になってしまった。adventurerの中で最も多いHumanでは二十五ageを超えると、年増と呼ばれてidiotにされるそうだ」
このLambdaでは医療技術がEarthやOriginよりも遅れているため、平均寿命が短い。代わりにmagicがあるのだが、magicの恩恵に預かる事が出来るのはある程度propertyがある者だけだ。そして産婦人科関係のmagicを使えるMageの割合は少ない。
そしてこのworldでは子孫を作る事は重要な課題である。機械技術が未発達であるため、産業の主体が全て人であるためだ。畑を耕すのも人、服を作るのも人、家を作るための石材を切り出すのも人、国を守るために戦うのも人、全て人の手を必要とする。magicだって人が唱えるし、magic itemを作るのも全て人だ。
そのためHumanでは二十五ageまでには結婚するのが一般的だ。女adventurerの場合はそれを過ぎる場合が珍しくないが、それはその女adventurerがpropertyを持ちコネを持っている事が多いから。もしくは、書類上は結婚していなくても事実上の配偶者がいる場合等だ。
certainly、このworldのfemaleの妊娠率がEarthに比べて低いという事はなく、四十代でも妊娠する可能性は残っているのだが、二十代半ばを過ぎたfemaleを急かす意味でも年増呼ばわりする事が多いのだった。
certainly、そんなHuman社会の事情をBasdiaが知っている訳がないので、adventurer達の雑談を盗み聞きしたGhoulの、又聞きの又聞きというあやふやな知識に基づいての認識だったが。
「あまり気にする事は無いと思いますよ。Basdia -sanはとても若いと思います」
VandalieuにしてもHuman社会の事情や風潮に詳しくないので、「このworldのHumanって、ageにこだわり過ぎじゃないか？」とやや反感を覚えた。Earthで高校生、Originでも二十ageまでしか生きた事が無い彼に、子孫を残す重要性に理解を示すのはやや難しい。
「そう言ってもらえると、嬉しいな」
そう言って微笑むBasdiaは、本当に綺麗で魅力的だった。抱き上げられた事で近づいた彼女の肌は綺麗で、深い胸の谷間はもし彼が思春期なら、思わずじっと見つめてしまいそうな程深い。
肉食中心の食生活でこんなに綺麗なのは、きっとHumanとGhoulの体質の違いによるものだろう。
「そういえば、母上から聞いたがVandalieuは珍しい術が使えるそうだが、どうにかして私に種を付けられるようになる術は無いか？ 生命attributeの術には、body partの一部を急成長させる物があるらしいが」
「……ちょっと無理っぽいです」
だが、BasdiaのcomplexはVandalieuが思うより深いらしい。今度mountain banditやadventurerを襲撃する機会があったら、生け捕りにして彼女に提供しようかとも思うが、それはそれで複雑な気分になるのだった。
「そうか、娘が無理を言ってすまんの」
自分の家で話を聞いたZadirisは、軽くVandalieuに頭を下げた。彼女としても、当然娘の子作りは重大関心事である。
「Vandalieuが普通に種を付けられるageになるまで、大体十年。それまであの子のageでは待てんじゃろうからな。儂も初孫が見たいと、せかしすぎたかもしれん。
……それよりも儂は、種云々の意味を坊やが知っている事の方に驚いたが」
「まあ、そういう事もありますよ」
そういえば、普通の一age児は種だのなんだの言われても意味が分からないのが普通だった。それに気が付いたVandalieuは、とりあえず曖昧に誤魔化す。ZadirisやVigaro、Basdiaには好感を持っているが、流石に前世云々について打ち明ける事は躊躇われたからだ。
「それより初孫ってどういう事か……は、説明しなくても分かりますけど」
Vandalieuは、木とその葉で編まれた天井と壁で出来た竪穴式住居の隙間から聞こえる男女の嬌声に、やれやれと小さい肩を竦めた。
嬌声の主は、集落のGhoul達だ。どうやらGhoulには結婚という制度や価値観が無く、複数の異性とnightを過ごすのが一般的であるらしい。
これはGhoulが危険なDevil Nestsで生活している事、女は早く妊娠しないとAgingが止まらない事、そして寿命が長い分Humanよりずっとchildが出来にくい事が理由として挙げられる。
たった一人の相手だけに拘っていたら、集落を維持できないのだろう。
Basdiaの将来産む子をZadirisが初孫と言うのも、そのせいだろうとVandalieuはconjectureしていた。
彼女はBasdiaの前に二人息子を生んでいるそうだが、その息子達のchildが存在するのかＤＮＡ検査がこのworldに無いため、知る事が出来ないからだ。
それに実際、昨日の宴会でも誰も「夫」や「妻」、「孫」や「祖父母」をintroductionしていない。
「うむ、そういう事じゃ」
Zadirisも否定しない。やはり、これがGhoulの社会formなのだろう。
「まあ、Basdiaの場合は父親が誰かは解っておるが」
「誰なんですか？」
「Vigaroじゃよ」
Basdiaは二十五age。Zadirisが彼女を産んだのは、二百六十五ageという事になる。そのageならGhoulでも十分老齢で、Endurance的な事を考えてchildを作るような事はしないのが普通だ。
しかし、その時はKoboldとの抗争で奴らがHumanから略奪した酒を手に入れ、それを飲んでいたらしい。
「その酒が集落で作っている酒よりもずっと強くてのぉ。それで酔っ払って気が付いたら同じ寝床で朝を迎えた訳じゃ」
「……そうでしたか」
ロマンスのfragmentも無い出生秘話だった。
「坊やも、酒には気を付けるのじゃぞ。酒は飲んでも、飲まれるなじゃ。
さて、ではそろそろmagicの手解きをしてやろうかの」
Zadirisは老齢で弱っているが、Ghoul Mageだ。certainly Death-Attribute Magicは使えないが、彼女の手解きはVandalieuにとって有益だろう。
そしてBone ManやSalire、RitaはVandalieuが手解きを受けている間、GhoulのWarrior達から武術を教えてもらう事になっている。
SamやBone Bird達はそれぞれ集落の手伝いをする事になっていた。Devil Nestsのmonstersを狩る手伝いは、やはり彼らのExperience Pointと成り、成長を促す事だろう。
こうしてVandalieuの、初めて行う独学以外の修行が始まったのだった。
・Name: Vigaro
・Rank: ５
・Race: Ghoul Barbarian
・Level: ７８
・Job: none
・Job Level: １００
・Job History: none
・Age: １６７age
・Passive skills
Night Vision
Mysterious Strength：４Ｌｖ
Pain Resistance：４Ｌｖ
Paralyzing Venom Secretion (Claws)：１Ｌｖ
・Active skills
Axe Technique：４Ｌｖ
Unarmed Fighting Technique：２Ｌｖ
Commanding：３Ｌｖ
Coordination：２Ｌｖ
・Name: Basdia
・Rank: ４
・Race: Ghoul Warrior
・Level: １７
・Job: none
・Job Level: １００
・Job History: none
・Age: ２５age
・Passive skills
Night Vision
Mysterious Strength：２Ｌｖ
Pain Resistance：２Ｌｖ
Paralyzing Venom Secretion (Claws)：３Ｌｖ
・Active skills
Axe Technique：２Ｌｖ
Shield Technique：１Ｌｖ
Archery：２Ｌｖ
Throwing Technique：１Ｌｖ
Silent Steps：１Ｌｖ
Coordination：１Ｌｖ
・Status Effect
Infertility
・Ghoul Warrior
通常のGhoulが更に戦闘Abilityを高めた存在。Ghoulの群れでは小隊長や、他に上位のGhoulが存在しない場合は族長を務める。
毒のあるclawsだけではなくUnarmed Fighting TechniqueやWeapon Equipmentの扱いに長け、Martial Artsを使用する。ただ見かけは通常のGhoulとあまり差が無いため、勘違いしたadventurerが油断して返り討ちに遭う場合があるので注意が必要。
討伐証明は右耳。素材はfangsと手足の爪、薬の材料になるliver。
通常のGhoulがGhoul Warriorになるには複数の武術系skillを２level以上で習得している事が必要。ただ、多くのGhoulがlevel１００に到達するまでにその条件をclearする。
BasdiaはmagicよりもBody的なaptitudeに恵まれたため、そちらを伸ばす事に集中した結果このStatusになっている。Status EffectのInfertilityを受けているが、Ability Valuesやskillに悪impactは出ていない。
・Ghoul Barbarian
Rank upしたGhoulが更に武術の腕を磨き、そのMysterious Strengthを高めた存在。通常のGhoulよりも二回りは大きい体躯を誇り、その腕で振り回すWeapon Equipmentで敵を薙ぎ倒すような戦闘方法を好む。その分知能は低い個体が多く、頭の中では戦う事だけを考えている。
そのため群れでの地位は低く、Ghoul Mageに利用されている場合が殆ど。また、素質的にBarbarianは雄だけであり、雌のBarbarianは今まで確認された例は無い。
討伐証明は右耳。素材はfangsと手足の爪、弓の弦の材料になる腱、Manaを帯びた鬣等。
GhoulがBarbarianになるには【Mysterious Strength】skillを３level以上、両手持ちのWeapon Equipmentを扱うskillが４level以上必要。
Vigaroの場合は他のBarbarianと違い頭も良く、次期族長の立場にいる。更にCommanding Abilityに優れているため、通常のBarbarianは単独で戦う事を好むが、Vigaroは常に仲間を率いて戦う。
そのため通常よりも討伐しにくい。