その日Zadirisは集落の若い女を連れて薬や食料になる草や木の実、茸に関して教える勉強会を行っていた。
Zadiris達のraceに生まれたものの多くは知識の伝達をあまり重要視しないが、こうして若い世代を教える事の重要性を彼女は解っていたし、日頃から周囲の者に言い聞かせているので彼女の集落の者もmaybe解っているはずだ。
連れてきているのが女ばかりだったのは、Zadirisのraceでは性別によって姿と素質が大きく分かれるからだ。男は戦いとBody労働に、女は頭脳労働に向きやすい。所詮は目安だが、今のところ集落の男で頭の良い奴には既に十分教えているから、今日は連れてこなかった。
certainly他のmonstersからの襲撃が無いと油断した訳ではない。Zadiris自身腕とmagicに自信があったし、勉強会をするのは森の端だ。強いmonstersは出ないし、この季節にはadventurerも来ないはずだった。
「そっちに行ったぞっ!」
「クソっ、すばしっこいっ! 逃がすなよっ!」
だが、こんな状況に成ったのはやはり油断していたからだろう。
五人組のadventurerに見つかってしまった。
「気を付けろっ、そいつはMageっ、上位種だ! 油断するなよっ!」
「当たり前だっ、こいつ以外には逃げられたんだ、こいつを捕まえないと冬が越せないだろっ!」
Zadirisはmagicでadventurer達を惑わし、女達を逃がす事に成功していた。だが、その代わりにManaを使い過ぎてしまった。これからadventurer達と戦って、勝つ事は難しいだろうと思う程度に。
なら逃げるしかないのだが――――。
「はっ、はっ、はっ」
まるで犬か何かのように、勝手に息が早くなる。heartが早鐘を打ち、苦しくて仕方がない。
『もう息が上がるとはっ! 寄る年波には勝てんか』
そう嘆くZadirisの横を、矢が通り過ぎて行く。adventurerが狙っていると、Zadirisは反射的に右に曲がった。
「あぁっ!?」
その三秒後、足が宙を蹴った。崖だ。森と森の外の境界線にある、小さな崖だ。落ちても死ぬ事は無いし、普段なら、森の中なら簡単に飛び下りられる高さの崖だ。
だが、この時は致命的だった。
まともにbalanceを崩したZadirisは、毬のように崖の斜面を跳ねて転がり落ちるようにして落下した。
「ぅっぐっ」
ざざっと地面を転がり、うつ伏せのconditionで止まる。起き上がろうとしたが、手足に力が全く入らない。命の危機だというのに、そんな事より休むのが先だと、言うことを聞きやしない。
ただでさえ息が上がっていたのに、Devil Nestsから出た事でimpactを受けているのだ。本当にageは取るものでは無い。
『だが、まあよい。儂一人が死んだところで、一族が滅びる訳ではない』
Successorは既に指名してある。頼りになる男衆も居る。次代を担う若い者達は逃がした。
余命十年ほどの自分にしては良くやった方じゃないか。これ以上耄碌する前に、そろそろ死んでおいた方が良いだろう。
複数の笑い声と足音が近づいてくる。adventurer達だ。きっとこれからZadirisにトドメを刺し、Magic Stoneや素材になる部位を奪うのだろう。
それは別に構わない、似たような事は今までZadiris自身数え切れないほどやって来た。積極的にはしなかったが、adventurerを殺した事だってあったのだ。
恨みはすまい。一思いにやるがよい。
うつぶせのまま静かに目を閉じるZadirisだったが、adventurer達は彼女を足に引っかけて仰向けにさせた。
止めを刺すなら背中から刺し殺せばよいだろうに何故? そう訝しく思って目を開けたZadirisの視界には、下卑た笑みを浮かべるadventurer達の顔が映った。
「へぇ、追いかけ回している時から思ったが、上玉じゃないか」
「そうか? 俺はもう少し育ってる方が好みだが」
「お前の好みなんか聞いてねぇよ。重要なのは、こいつが高値で売れるかどうかだ」
売るという言葉に、殺す前に素材の吟味でもしているのかと思ったZadirisだがそうでない事がすぐに分かった。
「こいつらの雌は裏のSlave商に高く売れるからな。お蔭で今年の冬は楽に越せるぜ」
adventurer達はZadirisを殺してMagic Stoneと素材を採るために追いかけていたのではなく、彼女を生け捕りにしてSlave商に売り飛ばすつもりだったのだ。
冗談ではないとZadirisは目を見開いた。負けた以上殺されるのも仕方がないが、Slaveにされて死ぬまで慰み者にされるなんて冗談では無い。
「貴-sama等っ!」
「おお、言葉が分かるのか。流石Mageだ、これは相場より高く売れるぜ」
fangsを剥いて睨みつけるZadirisの眼光を見下ろすadventurer達は、笑みを深くするだけだ。何とか残り少ない力を振り絞り、一人ぐらいは道連れにしてやろうとしたが、adventurerの一人がknifeを彼女にthrust刺した。
「あぐっ! あっ、ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
その途端、激痛がZadirisのwhole bodyを駆け巡った。
目の前が真っ白になり、まるで小娘のようなscreechを上げるのをenduranceできない。
「痛いよなぁ、お前等は痛みに強いが、このknifeはPain upっていうmagicが付与されたmagic itemで、このknifeで傷つけられると通常の三倍以上の痛みを感じるのさ」
「この前捕まえたmountain banditも、このknifeで軽く切られただけで泣きながらhideoutの場所をゲロしたからな」
「あぐぅっ……はーっ……はーっ……」
激痛からZadirisがやや持ち直した時には、もう気力は何時の間にか零した涙と一緒に流れ落ちてしまっていた。
「へへっ、どうせやりまくってんだろう? だったら売り飛ばす前に味見してもいいよなぁ」
「おいおい、気を付けないと引っかかれるぜ」
「良いけどあまり無茶はするなよ。後、さっさと済ませろ、他のmonstersが来たら面倒だ」
adventurerの一人がZadirisに跨るように腰を降ろし、彼女の服を脱がしにかかる。灰褐色の胸の膨らみを露わにして、鷲掴みにするが彼女から男が期待する反応は返って来なかった。
「チッ」
それが不満だったのか、男がZadirisに刺さったままのknifeに手を伸ばした。
「ひっ」
またあの激痛を味わうのかと、Zadirisはscreechを上げようとしたが――。
「ぎゃあ!?」
森からmonstersが出てこないか警戒していたadventurer達の内、Thiefの男が濁ったscreechを上げた。
Thiefの背中には、矢が生えていた。Zadirisは咄嗟に、集落の仲間が助けに来てくれたのかと思った。adventurer達も、同じ事を考えたようだ。
「こいつを助けに来たのか!?」
Zadirisに跨っていた男も含めて、adventurerのWarrior達がWeapon Equipmentを抜いて森に対して構える。だがローブ姿のMageは、Thiefに刺さった矢を抜いてやりながら叫んだ。
「idiot bastard! 森からじゃないっ、後ろだっ!」
Mageの視線の先には僅かな音しか立てず、しかし猛Speedで近づいてくる馬車と、boneだけの獣の一団があった。
「あ、Undead Monster!? なんでDevil Nestsじゃなくて草原の方からくるんだ!?」
「知るかっ! それより弓矢を持ってる奴がいる、さっさと前に立ってくれ!」
狼狽える盾職の仲間に、身に着けているleather Armorのお蔭で致命傷を免れたThiefの男が怒鳴ってからpotionを口にする。
そうして傷を癒し態勢を整えようとしているadventurerの一団に、Vandalieu達は襲い掛かった。Bone Manが矢を番え、第二射を放つが、これはThiefの男に回避されてしまった。仕方ない、所詮skill level1だ。
遠距離攻撃の手段が少なすぎる。SalireとRitaにも弓矢を覚えさせようかな。
そう思いながらcarriageに隠れているVandalieuは、呪文を唱えているらしいMageに向かって術を放った。
「……【Magic Absorption Barrier】」
黒いManaの塊が、Mageの男に向かって飛んでいく。彼は咄嗟に何かの防御magicを使って防ごうとしたが、黒いManaの塊はその術のManaをAbsorptionしてNullificationにしてしまう。
「う、うわぁっ!? あのGhost Carriage、妙なmagicをっ! 何だこれは!?」
Mageの男を黒いManaの塊がdome状に包み込むが、今のところ何のDamageも受けていないように見える。
「それより早く術を唱えろっ!」
剣や槍、斧と盾を構える前衛達が迎え撃たんと前に出るが、次の瞬間整いかけていた戦線が大きく崩れる。
『はぁっ! 退かなければ踏み潰して参りますぞ!』
Ghost CarriageのCouch Driving台で手綱を握るSamが、そう叫びながらAccelerationを指示したのだ。白い朧のような馬が嘶きながら、猛Speedで迫ってくる。
『Chargeぃぃぃぃぃっ!』
「に、逃げろぉぉぉぉっ!」
盾職の男が叫ぶと、adventurer達が一斉にSamの進行方向上から飛び退く。幾らDefense Powerがあろうが、【Stone Shield】や【Stone Wall】といったShield TechniqueやArmor TechniqueのMartial Artsがあろうと、三頭立ての馬車がUndead TransformationしたSamの【High-Speed Running】+【Charge】のコンボを受け止めきる事は出来ない。
早めに逃げたお蔭でadventurer達は全員が回避に成功し、SamはZadirisの爪先から二meter離れた位置で華麗なドリフトターンを決める。これも、Spirit Formの馬が実際はSamの一部だからこそ出来た芸当だ。
本来ならシェイクされるはずのcarriageの中も、【Impact Resistance】skillのお蔭でVandalieu以外は体勢を保っている。
「ガァァァァァ!」
「グォォォォォン!」
そして体勢と戦列を崩したadventurer達に、Bone WolfやBone Bear、Bone Monkeyが襲い掛かる。それでもadventurer達はそれなりの腕を持っていたのか、何とかWeapon Equipmentを構え直してそれぞれ初撃を回避する。
「ゲェェェェェ!」
「オォォォォォォ」
上空から襲撃するBone Birdのclawsと、背後から襲撃する馬車から飛び降りたBone Manが加わった事で劣勢どころか早くも敗色が滲んでくる。
「な、何でRank3のmonstersがDevil Nestsの外にいるんだ!」
「知るかっ! 【Single Flash】っ!」
「おいっ、援護のmagicはまだか!?」
盾を叩き割る勢いで振るわれるBone Bearの前足をある男は何とか防ぎ、ある男はSword Techniqueの基本Martial Arts【Single Flash】をBone Monkeyに回避され、最後の一人は何時までも援護しないMageに振り向かないまま怒鳴りつける。
「炎よ、我が手に集まり……ダメだ! magicが、Manaが吸われてmagicが使えない!」
Mageも言われるまでも無く呪文の詠唱をしているのだが、体内のManaを練り上げる度に奪われていく。それはVandalieuが放った【Magic Absorption Barrier】の効果だ。Barrier内でmagicを使おうとすると、完成する前にManaを奪われてしまう。
Barrierを破るにはAbsorptionできない程のManaを放出するか、耐Barrier用のmagicを使うか、単純に纏わりついて来るBarrierが追い付けない速度で逃げればいい。だがVandalieuが桁外れのManaを注ぎ込んで唱えたこのBarrierを破れるのは、magicの大達人ぐらいだ。
当然、このMageのManaや術では不可能だ。だったら全力で走ればもしかしたらBarrierを振りほどけるかもしれないが、まさかそんな方法で脱出できるとは思わないMageは只管狼狽していた。
「ち、畜生っ! 何だこいつ等!? 何処を攻撃すればいいんだ!?」
一方、ThiefはSalireとRitaを相手に戦っていた。本来なら純粋な戦闘力では劣るThiefが正面からmonstersと、それも一対二で戦っては分が悪い。
しかし、SalireとRitaはそれぞれのWeapon Equipmentを何とか振り回しているだけのconditionで、俊敏なThiefにとって彼女達の攻撃を回避するのは難しくない。
だがThiefは短剣を握ったまま二人に対して攻めあぐねていた。通常のLiving Armorなら、倒すのは難しくない。短剣を鎧の隙間にthrust入れ、兜や胴体の繋ぎ目を破壊してparts毎にバラバラにしてやればいい。
だが、SalireとRitaには兜の部分が無い。特にRitaは、胴体部分も上下で既に分かれている。
バラバラにしようにも、既にバラバラなのである。Living High-Leg ArmorとBikini Armorの彼女達は。
「頭は、急所は何処だ、チクshowッ! ギャン!?」
冷静に成ろうとするが、頼りになる前衛の仲間達は劣勢。Mageは役立たずと化している。混乱したThiefは、戻ってきたSamに轢かれて、ゴム毬のように跳ね飛ばされ犬のようなscreechを上げた。
逆転の機会を潰され続けたadventurer達は、骸となって横たわった。
Vandalieu一行の被害は、Bone WolfやBone Bearのboneが何本か折れたのとSamのcarriageで一人転がっていたVandalieuのinjureぐらいだ。
『も、申し訳ありません、Bocchan』
「……良いって。すぐ治るから」
思いっきり額が切れていてbloodが流れているが、【Rapid Healing】skillがあるから何日かで治るだろう。
Bone Wolf達のboneも、最近Death-Attribute MagicでUndeadの損傷を治せる事が分かったのですぐ回復可能だ。
結果、損害は軽微と言える。
「ふぅ、反省が必要だな」
しかし、Vandalieuは反省していた。軽はずみにadventurer達を襲撃した事を。
今回簡単に勝てたのは奇襲が上手くいった事とDeath-Attribute Magicによる初見殺し、そしてadventurer達の腕がそれほど高くなかったからだ。
guild CardというAdventurer’s Guild発行の身分証を確認したが、adventurer達はDClassだった。これがCClass以上なら返り討ちに遭っていた可能性が高い。
パッと見て強さが分からないadventurerを襲撃するのは、それだけ危険度が高い行為なのだ。
でも、女の子を襲う暴漢を見逃すという選択肢は無い。
「次は、もっと-chanとしっかり奇襲しよう」
反省終了。
adventurer達の身ぐるみを剥いで死体の始末や、早速擦り寄ってきているadventurer達の霊から情報を収集するのは後にして、まずは襲われていた女の子を助けなければ。
【Sense Life】でさっき調べた時は、今すぐ死ぬようなconditionでは無かったが大分弱っているようだった。もしもの時はこの前Dungeonで手に入れたpotionの出番だろう。
「うっ……」
一方Zadirisはてっきりこれから殺されるのだと覚悟していた。adventurerを殺したのは仲間では無く、Undeadなのだから、当然自分も殺すだろうと思っていたからだ。
「大丈夫ですか?」
思っていたが、何時まで経ってもUndeadは彼女に対して襲い掛からず、それどころか何時の間にか近くに立っていた、額からbloodを流している幼児にそう話しかけられた。
驚きと困惑、もしかしてこの幼児は死霊の類ではないかという恐れ。そして何よりまだknifeを生やしたままジンジンと激しい痛みを訴える傷のせいで、質問に答える事が出来ない。
そんなZadirisを見下ろして、Vandalieuは「肌の色は変わってるけど、可愛い子だな」と思った。
ageは十代半ばか、その前後ぐらいだろうか。可愛らしい顔立ちに、濡れた瞳が庇護欲を駆りたてられる。Earthなら余裕でIdol debutできる容姿だ。
灰褐色の肌というのは変わっているが、ここはanother worldだしそう珍しくはないのかもしれない。
露わになっている胸も――。
『おっと、これ以上見るのはいけない』
あっさりとVandalieuはBishoujoの胸から視線を逸らした。Emotionalにはin any case Body的には乳幼児なので、libidoに目覚めていないのが幸いか。視線が嫌らしくなっていなければ良いのだが。
まあ、実際にはUndead並に生気の無い死んだ瞳なので、じっと見つめられると羞恥心や嫌悪よりhorror心の方を抱かせる視線なのだが。
それに気がつかずに、Vandalieuはまずは傷の治療だとZadirisの腹に刺さっているknifeの柄に手を伸ばした。
「まっ、やめ……っ!」
だがそのknifeは痛みを増すmagic itemだ。抜かれればまたあの激痛を味わう事になると、ZadirisはVandalieuの手を止めようとした。
「……【Painlessness】」
痛みが激しいのかと気が付いたVandalieuは、Death-Attribute MagicでZadirisが感じている痛みを消した。
「っ!?」
一瞬で痛みが消えて驚くZadirisの腹部から、Vandalieuはknifeを一気に引き抜く。そして三Class potionを傷に振りかける。
するとまるで冗談のように傷が塞がっていく。肉が覗いていた傷口が見る見るうちに塞がり、新しいつるりとしたskinが出来る。傷跡が全く残っていない。
外科的な治療と傷跡を残さない整形技術と、Earthで同じ事をするには時間と手間がかかるのにLambdaではpotionをかけるだけ。こういう分野ではLambdaの方がEarthより進んでいるなと、Vandalieuは思った。
三Class potionのaccurateな販売価格を知ったら、その感想も吹き飛ぶだろうが。
「俺はVandalieuと言います。良ければbody partを洗う水や、拭く布を用意しましょうか?」
呆然とした-sama子で自分を見上げる女の子に話しかける。きっとpanic conditionなのだろう、荒くれ者に刺されたうえに強姦されかけたのだから無理も無い。
『Earthならこういう時婦人警官が対応するんだろうけど……』
femaleなのは幽霊のDarcia(VandalieuとUndead以外には見えない)、SalireとRita(動く鎧にしか見えないのでfemaleと認識してくれるかどうか不安)だけだ。なので、消去法でVandalieuが彼女に対応する事になる。
(絶対不適材不適所だと思うけど)
EarthとOrigin、どちらの人生でも異性と碌に付き合いの無かった自分に、性犯罪の被害者に対応するなんてdelicateな真似が出来る訳がない。
その証拠のように、女の子の目に涙が浮かんでいる。傷を治す前から涙や汗で顔が濡れていたが、再び泣き出しそうだ。
「うっ……うぁぁぁぁぁぁぁっ!」
そして案の定泣き出し、その上Vandalieuを抱きしめた。
その勢いは猛烈で、反射的にSalire達がZadirisからVandalieuを取り戻そうとしたぐらいだ。それを手で制して、彼女の成すがままに抱きしめられているVandalieuは夢心地……っと、いう訳では無かった。
彼女が見た目よりずっと力が強かったからだ。
流石にboneが折れる程じゃないが、呼吸がし辛い。ついでに爪が地味に食い込んでいる。
(け、結構苦しい……でもOriginで受けた改造Surgeryや人体実験程じゃないし)
そう強がるが、流石に可愛い女の子に抱きしめられる事を喜ぶ余裕は無かった。
「いや、本当に助かった。主は儂の命の恩人じゃ、adventurer達を倒してくれたのみならず、貴重なpotionまで使ってくれて、何と礼を言えばよいか」
「はぁ……」
ガラガラとVandalieu達はDevil Nestsの中を進んでいた。Zadirisが落ち着くのを待ち、adventurer達の死体から装備を剥ぎ取ったあと、Vandalieu達はDevil Nestsに入ったのだ。
「すまんな、集落まで後少しじゃ」
Zadirisを送り届けるために。
何故monstersが跋扈するDevil Nestsの中に彼女の集落があるのかというと、彼女が一般的にはmonstersと呼ばれるrace出身だったからだ。
「儂らGhoulは痛みに強いが、あのmagic itemはまさにHELLの苦しみじゃった。その上まさかSlaveにして売り飛ばそうとは……Humanは恐ろしいわい」
そう、ZadirisはGhoulだったのだ。
肌の色からもしかしてHuman以外のraceかもしれないとは思っていたが、まさかGhoulだとは思わなかった。
しかし、Couch Driving台に腰かけているZadirisの腿に腰かけるようにして抱かれているVandalieuは、自分の持つGhoulのimageが彼女と違い過ぎて、どうにも違和感を覚える。
「Ghoulって、Undeadじゃ無いんですか?」
そもそもVandalieuの中のGhoulのimageは、Undeadの一種でZombieより強く死肉を特に好んで喰らうMonsterという物だ。後、爪やfangsに毒を持っているくらいか。
しかし Zadirisからは、Darciaが殺されてからは感じた事の無かった心地良い人のぬくもりが伝わってくるし、そもそも【Detect Life】で彼女からVitalityを感知している。彼女はHumanではないかも知れないが、紛れも無く生物なのだ。
『Bocchan、私達一般人の間ではGhoulはVampireに近いZombieの上位種だと言われております』
Samが言うには、Lambda worldのGhoulはVampireの劣等種のような扱いらしい。生きているし、子孫も残す。しかし人を襲う凶暴なmonstersであり、力が強く痛みに対するResistanceを持ち、手足の爪から毒を分泌する。
そして新鮮な死体を邪悪な儀式で同族に変化させてしまうらしい。
「うむ、Zombieの上位種ではないが前半はやや正解じゃ、Sam」
しかし、Zadirisが言うには実態は違うらしい。
GhoulはVampireの劣等種というか、劣った親戚のような関係らしい。そしてZombieとは全く関係無い生態をしている。
「簡単に言えば、儂らGhoulの始祖はVampireの始祖の双子の弟、若しくはImoutoだったらしいのじゃよ。Ghoulもまた、Goddess Vidaの子という事じゃな」
「kaa-sanから聞いたMythに、Ghoulは出てこないけど?」
「まあ、accurateには分からん、儂も先々代の最Elderから聞いただけじゃからな」
VandalieuがDarciaから聞いたMythでは、VidaはLamiaやScylla、Harpy、Arachne、Centaur等を生み出したらしいが、そこにGhoulが加わるとは聞いていなかった。
だがまぁ、Darciaも全てを知っている訳ではないし、地方によってMythの内容が変わるのはあり得る話だ。その話は彼女が起きた時に聞いてみればよい話だ。
だが少なくともZadirisが属する集落のGhoulは、彼女が語った話を信じているらしい。……だからと言って、別にHumanに友好的な訳ではないが。誰だって、自分をmonstersの一種として殺そうとする連中と仲良くしたいとは思わないものだ。
実際、Zadirisも若い頃は何人ものadventurerを返り討ちにしたし、仲間をadventurerに殺されている。
「しかし、まさかSlaveにして売り飛ばそうとは。殺されるのなら負けた以上仕方がないと、諦められるのじゃがなぁ」
Zadirisにとって、自分がHumanのlibidoの対象になるというのは衝撃の体験だったようだ。だが、彼女が知らないだけで裏社会ではそういう事は珍しくないのが現状だった。
monstersの中には肌の色や一部の形が違うだけで後はHumanと姿形は変わらないというraceがいるため、そのraceの女をSlaveとして売り買いしようとHuman達が思いつくのは当然だった。
「全く、Orcのように女なら何でもいいというものでもあるまいに。そう思わんか?」
そう問いかけられたVandalieuは、Zadirisを見上げて首を横に振った。
「あなたは魅力的だと思いますよ」
Ghoulだと聞いた後で改めてZadirisを見ても、Vandalieuの目には彼女が可愛らしく映った。
黄色い瞳と灰褐色の肌はエキゾチックだなと思うし、fangsも八重歯のように見えて可愛い。幼さの残る頬の曲線に、その癖艶めかしいlipsは、もし彼がもっと年上の普通の少年なら初恋に落ちたとしてもおかしくない。
その点、なんだか損をしているような気がするVandalieuだったがそれはさて置き、つまりZadirisにはSlaveとしての価値が十二分にある。
「だから連中は女なら何でもいいとあなたを襲った訳では無く、最初から狙いを付けていた可能性があると思います。これからは気を付けた方が……どうかしました?」
「い、いや、何でもないっ」
言葉通りの意味で魅力的だと言ったVandalieuの言葉に、Zadirisは妙な胸の高鳴りを覚えていた。
(待て待て、幾ら命の恩人と言えど赤子と言っても良いchild相手に何を考えている)と思っても、高鳴りは中々収まらない。
(みょ、妙な坊やじゃな。Undeadを使役したり、未知のmagicを使ったり。それに、じっと見つめられると妙な気分に……こ、これがVampireの魅了の視線かっ!?)
Dhampirに関して中途半端な知識があるため、ZadirisはVandalieuに対する気持ちを若干誤解するのだった。
「確かにそうじゃなっ、これからは気を付けねばなるまい。
集落の女衆にも注意を促さねばならんな。老い先短い儂が狙われたんじゃ、若い者が狙われないとも限らん」
そしてZadirisはGhoul communityの最Elderだった。なんと、今年で二百九十ageらしい。そしてGhoulは三百年前後が寿命らしい。老い先短いと言うSelf申告に嘘は無かった訳だ。
Vandalieuが【Detect Life】で調べた時、弱っているように感じられたのは腹の刺し傷のせいでは無く老いのせいで弱っていたからだったのだ。
「……adventurerにGhoulの実ageは分からないと思いますけど」
皺ひとつない十代の瑞々しい肌を保っているZadirisに言うと、苦笑いを浮かべた。
「ふむー、Ghoulだけで暮らしているとそういう事に鈍くなるようじゃな。儂らGhoulの女は、初めてchildを身籠ったageでappearanceが止まるが、集落の者は大体女のageを知っておるからな。
ん? どうした坊や? 眠いか?」
「いえ……」
俯いて溜め息を吐いたVandalieuは、Zadirisの言葉を聞いて理由もわからずがっかりしていた。
「そうか? なら、今の内に約束して欲しいのじゃが……儂が小娘のように泣きじゃくった事は秘密にしてくれんか? 無論、Sam -donoもじゃ」
「構いませんよ」
『私はBocchanに従うだけですので』
「うむ、重ね重ね感謝じゃ。
っと、話している内に何か来たようじゃな」
穏やかに会話しているが、今Vandalieu達が進んでいるのはDevil Nestsだ。他の通常の森林や原野と比べ物に成らない数のmonstersが、高密度で生息している。Samの周囲をBone ManやBone Wolfが守っているため、今まではとち狂ったGoblinが一匹襲い掛かって来て返り討ちにされただけだったが。
Zadirisに言われて【Detect Life】を使用すると、五十meter程前方にHuman大かそれよりやや大きな生命反応が、十数個存在する。
しかし、常にActivateしている【Danger Sense: Death】には反応が無いので、bloodに飢えたmonstersが待ち伏せている訳ではないようだ。
『Bocchan?』
「とりあえず、そのまま進もうか」
森なのでBone Birdに空から偵察させても効果が薄いだろうと、そのまま-sama子を見ていると木のshadowや茂みからmonstersが姿を現した。
現れたmonstersは五体のある人と大まかには同じ形をしていた。しかしその頭部は獅子の物だった。それも百獣の王らしい誇り高さを凶暴さにすり替えたような、fangsを剥き出しにし鬣を振り乱している獅子の頭だ。
首から下は灰褐色の肌に、背筋を伸ばして直立していても地面に指が付きそうな程長い腕と言った異-samaさに目が行きがちだが、野生の肉食獣のような強靭さと柔軟さを併せ持つmuscleが付いている事も見逃してはいけない。
同じ人型のmonstersでも、これまでVandalieu達が倒してきたGoblinとは一線を画する存在だ。
しかし、何故かそのmonsters達はKilling Intentでは無く困惑を浮かべていた。
「おお皆よ、良く迎えに来てくれたっ」
っと、ZadirisがVandalieuを抱いたまま立ち上がった。
「Elder -sama、おで達、助けに……なのに、何故Undead連れて戻ってきた?」
「無事なの嬉しい……だども、そいつら何?」
グルグルと唸るような口調で、しかし獅子の口で器用に言葉を話すmonsters達。このconditionは一体と彼ら同-samaに困惑するVandalieuに、Samが小声で囁いた。
『Bocchan、Ghoulは雄とめ……男と女で大きく姿が違うと聞き及んでいます。実際に見るのは、初めてですが』
同じraceなのにZadirisは肌の色とfangsを除けばHumanそっくり、片や男はどう見ても人外の姿。Ghoulというのは随分個性的な生態をしたraceのようだ。
「うむ、adventurer共に襲われて危ないところをこの坊やに助けられたのじゃ。Undeadもこの坊やが従えている」
「その小さなchildがadventurerを!?」
「それにUndeadを従えている……?」
一方、Zadirisの言葉にGhoulの男達は信じられないと顔を見合わせた。まあ、すぐには信じられないだろうなと、Vandalieuも思う。
すると、ぬっと森の奥から他のGhoulの男達よりも二回りは大きい、背の高さが二meterまで達しているだろうGiantなGhoulが姿を現した。
Monsterの皮を使ったleather Armorを身に纏い、鮮やかな鳥のfeather根飾りで鬣を飾っている。
背中には、Brown BearでもBisectionできそうなGiantなBattle Axeを背負っている。恐らく、このGhoulが男達のまとめ役だろう。
「Vigaro、お主まで出て来たのか。長が軽々と集落を空けるなと、何度教えた」
「まだ長はお前だ、Zadiris。長の危機なら、Warrior長の我が出るのが当たり前だ」
「実質的な長はお主じゃ。儂が居なくてもお主が居れば集落は回る」
「じっしつてき? 集落がまわる? お前は何を訳の分からない事を言っている? adventurerに襲われた時に頭を打ったのか?」
「……前言撤回じゃ。この物知らずめ、後しばらくは頭の方を鍛えねばならんな」
「ゼンゲン? 言っておくが、我は頭も鍛えている。この前、Orcを頭thrustで倒した」
自信満々に胸を張るVigaroに、深々とZadirisがため息をついた。吐息が後頭部に当たってくすぐったい。それにしてもあのVigaroってGhoul、丸太のような二の腕だ。どうやったらあれぐらいmuscleが付くのだろうか? ぜひ教えて欲しい。
「それで、そのchildはどうするつもりだ?」
「無論、集落で持て成すつもりじゃ。この坊やは気前が良くての、宴で出す肉まで提供すると言ってくれておる。問題あるまい?」
「ぐる……」
VigaroはZadirisの言葉に首を傾げた。普段の彼女なら、幾ら命を助けられたとは言え他のraceの者を集落に入れる事を許しはしないからだ。
そもそもGhoul達が暮らすのはDevil Nestsであり、同族以外の生物は天敵兼獲物という環境だ。場合によっては他の集落のGhoulと殺し合いになる事も珍しくない。
だからZadirisも、そしてVigaroも、排他主義でありそれは生き残るためには間違っていない。
VandalieuがDhampirだという事にはVigaroも気がついている。提供してくれるという肉にも興味はある。しかし、集落の場所を知られるのは危険ではないかという思いの方が強かった。
まるでOrcのsoupに浮かぶeyeballのように生気の無い瞳で、Zadirisを見上げているVandalieuから敵意や危険性は感じないが……いや、何かが妙だ。
あの死んだ瞳に自分を映して欲しい、このchildのために何かしてやりたい。そんな気持ちになっている自分にVigaroは気が付いた。
「ダメなら俺達はここで失礼しますけど……」
そうVandalieuに言われると、Vigaroや彼に従うGhoulの男達は胸を締め付けられるような感覚に小さく呻いた。罪悪感、そしてここで引き止めなくてはVandalieuが去ってしまうという焦り。
「ダメじゃねぇっ! 我達の集落まで案内するっ、是非歓迎させてくれっ」
咄嗟にVigaroはそう叫んでいた。おお、っと歓声を上げる男衆。
「Vandalieu、お前は我達の客だ、歓迎する。
グルルルルルルルルウゥゥゥゥゥゥゥ!!」
そして突然天を仰ぐと、猛獣の咆哮のような大声を上げるVigaro。ビリビリと空気を震わせる大音声に驚くVandalieuに、Zadirisが言った。
「集落の者に伝えているのじゃよ。Elderは無事、客が来る、宴の準備をしろとな」
こうしてVandalieuは、生まれて初めて自分に友好的なcommunityに迎えられたのだった。
・Name: Zadiris
・Rank: 5
・Race: Ghoul Mage
・Level: 100
・Job: none
・Job Level: 100
・Job History: none
・Age: 290age
・Passive skills
Night Vision
Pain Resistance:3Lv
Mysterious Strength:1Lv
Paralyzing Venom Secretion (Claws):2Lv
Mana Recovery Rate Increase:4Lv
・Active skills
Light-Attribute Magic:4Lv
Wind-Attribute Magic:2Lv
No-Attribute Magic:2Lv
Mana Control:5Lv
Alchemy:2Lv
・Status Effect
Aging
Ghoul Mage
通常のGhoulがmagicを一定以上習得した存在。その腕前は新米adventurerを上回り、またphysical battleも優れたbody part Abilityと爪の麻痺毒を活かしてある程度こなす事が出来る。
他のGhoulよりも頭が良く、族長やその参謀的な立場になっている個体が多い。そのため単独で居る事はほぼ無く、周囲に配下のGhoulが複数いる事が多い。なので、討伐する際はpartyを組む事をguildでは推奨している。
討伐証明は右耳。素材は両手足の爪に、Manaが籠ったeyeballとtongue、liverが薬の材料に、脊髄がAlchemyの触媒に出来る。Rank5のmonstersの中では討伐の危険度は高く、討伐報酬と素材の売買を合計しても割に合わないと考えるadventurerが多い。
ただし、Ghoul Mageは雌である事が多いため闇のSlave商が高値で買い取っている。しかしその場合生け捕りが大前提であるため危険度が高く、返り討ちに遭う場合が圧倒的である。
裏市場で取引されるGhoul Mageは、通常のGhoulの雌にmagicを教え込み、Rank upさせた個体が一般的。
Ghoul MageにRank upするためには最低でも一つのattribute magicのskill levelが3以上である事が必要。
ZadirisはGhoul MageとしてはMana制御に優れ、平均的な個体より上の実力を持つが、AgingによってEnduranceとManaが減退しており戦闘Abilityが著しく下がっているconditionである。