Vandalieuが去って一週間後、Adventurer’s Guild Terow branchで初探索の権利を勝ち取った『Wind Chasers』のleader Cashewとその仲間達は、張り切ってDungeonに入って行った。
彼らが初探索の権利に拘ったのは、何もHonoraryや昇Classだけが理由では無い。Dungeonで手に入る宝物も大きな理由だった。
Dungeonで出現するmonstersのRankや、手に入るitemの質や価値はある程度決まっている。しかし、それは定期的にadventurerが入る、発見済みのDungeonの場合だ。
誰も入らずmonstersを討伐しない期間が長くなると、Dungeon内のmonstersは数を増やしmonsters同士の殺し合いを行って、勝ち残った者がlevelを上げ、場合によってはRank upしてしまう。そのため攻略の難易度が跳ね上がるのだが、Dungeon内で手に入るitemの価値もそれに合わせて跳ね上がる。
それが今まで誰にも探索された事の無い未発見のDungeonだったら、尚更だ。初探索とは、ハイriskであると同時に、ハイreturnなのだ。
そのためCashew達も装備を整えて危険に備えながらも、大量の収穫を期待していた。
しかし、入ってみると拍子抜けだった。地下一階で出て来るのはただのGoblinが殆どで、その中に時折Goblin SoldierやArcherが混じる程度。地下二階は持って来ていたランタンに火をつけて、警戒して進めば手こずる程では無く、地下三階も、足元のぬかるみに注意すれば楽勝だった。
「出て来るmonstersは殆どRank1だな。偶にRank2が居るけど、数は少ないし」
「これはもしかして、Dungeonの中でも攻略難易度が低いFClass Dungeonなんじゃないか?」
Dungeonには難易度に応じてAdventurer’s Guildが等Classを付ける。それはその等Classと同じadventurerが、何名かのpartyを組んで攻略するのが望ましいという基準で付けられる。
FClass Dungeonというのは、Dungeonの中でも最も攻略難易度が低い、新米adventurerの修行場として使われる迷宮だった。
certainly、Dungeon内で得られる収穫はDClass adventurerのCashew達から見れば、小遣い程度でしかない。
「しかし、何でこのDungeonの階段は坂になっているんだ? あそこの昇り降りが一番きついぞ」
「さぁ? 足腰を鍛えろって事じゃないか?」
そんな風に雑談に興じる余裕があったのも地下三階まで。地下四階に降りたら、彼らは懸命に戦わなければならなかった。
「オォォォォォォ」
「死ネェェェェェェッ!」
「なんでいきなりRank3のZombie Soldierやレイスが出て来るんだよっ!」
「Cashewっ! 奥からSkeleton Archerが狙ってるぞ!」
「ひぃっ! Stone Golemまで来たぞ!」
地下三階まではVandalieuがmonstersを一度討伐していたため、Rank2のmonstersは大分数を減らしていた。しかし、地下四階からは一体も倒していないのでそのままだった。
しかも Trapを回避するためにVandalieuが作って放置していたStone Golemまで、DungeonのMonsterに混じって襲ってくる。
そして【Death-Attribute Charm】のskillを持っていないCashew達に、Undead達は猛然と襲い掛かったのだった。
Cashew達『Wind Chasers』はCClassへの昇Classを狙うだけあって、Rank3だけでは無くRank4のmonstersとも戦った事があるし、party全員の力を合わせてRank5のmonstersを倒した事もある。Rank3のmonstersなら、party memberの倍の数と戦っても勝てるだろうveteranだ。
しかし、際限無くRank3のmonstersと戦い続けられる程じゃない。
「クソっ! 一旦引くぞっ!」
被害が大きくなる前に戦略的撤退を選んだCashew達はTerowに戻り、achievementの独り占めを諦めて『Steel Wings』と『White Stars』と協力して再びDungeonに挑む事になる。
veteranのDClass adventurerが十五人も居たので地下四階を難なく突破し、地下五階も何とか攻略したが、ボスMonsterのRank6、Blackスカル・Generalと、その配下Rank4のCurse Armor十体に大苦戦する事になる。
結局また撤退するfeather目になった上に、Dungeon初攻略をAdventurer’s Guildが依頼したCClass adventurer partyに譲る事になるのだが、結局そのCClass adventurerも落胆する事になる。
「未攻略と聞いていたから期待していたが、これっぽっちか」
無事Blackスカル・Generalを倒した彼らだったが、宝物庫にCClass adventurer達が期待するような財宝は無く、彼らの感覚からすれば小遣いのような価値しか無いものばかりだったからだ。
Blackスカル・Generalが持っていたWeapon Equipmentと盾も、戦っている最中はManaをAbsorptionする等厄介な力を持っていたが、倒した途端ボロボロに崩れてしまって手に入れる事が出来なかった。
Undead系のmonstersは他のmonstersよりもMagic Stoneが出現しやすいとはいえ、originally Rank4以上のmonstersからは大体Magic Stoneが手に入る。
彼らは落胆と共にこのDungeonを外れだと判断して後にするが、自分達より先にadventurerでもなんでもない幼児が攻略していたとは夢にも思わなかった。
後に、このDungeonはEClass Dungeonであり、未攻略時地下四階以下に強力なmonstersが出現したのはadventurerに間引かれなかった期間が長かったためだと判断される事になる。
そして後世新米adventurerの修行場として利用されるのだった。
monstersの皮の上に金属で装甲を追加し、裏地にはやはり柔らかいmonstersの毛を使用して柔肌を傷つけないようにした丁寧な作り。更に込められたManaによって各種Resistanceが付与されるため一見薄く脆い観賞用の物だが、実際には下手な板金鎧よりも優れたDefense Equipmentとなっている。
青いHigh-leg型の鎧は切れ込みが鋭い股間の上でVの形に分かれ、臍と重要な内臓が収まっている腹が無防備に晒される事になる。更にその上の胸の膨らみの三分の二ほどしか隠さないだろうし、背中は尻のすぐ上まで剥き出しになるだろう。
赤いBikini型の鎧も面積の少なさではloseいない。やはり胸の膨らみは三分の二程しか隠さないだろうし、ボトムの方はBeastmenのようなtailのあるraceが着用する事も考慮しているのか、かなりのローライズとなっている。
そんな水着のような胴体部とは違って、肩当てや手甲、脚甲はしっかりとした作りになっている。そのunbalanceさがまるで着用者があられもない格好で拘束されているように見え、見る者には刺激的な光景になるのではないだろうか。
女の子が着ていたらだが。
「やっぱり、気にするような事は何も無かった」
Vandalieuは、しみじみと自分の前に立っている二着の鎧、High-leg ArmorとBikini Armorを見て頷いた。
そう、鎧だけだ。
accurateに言えば、High-leg ArmorにはSamの娘の内長女のSalireの霊が。Bikini Armorの方には次女のRitaの霊が宿っている。
二人とも年頃の娘で、Samが言うには母親似の可愛い娘らしい。
『………………』
しかし、鎧に宿っている今はその鎧しか見えない。death attributeに適性を持つVandalieuの目でもだ。
霊の姿は黒焦げの焼死体だったので見えない方が良いのだろうが。
Samに頼まれこの鎧に彼女達を憑りつかせLiving Armorにする時にも言ったが、実際こんな露出度の高い鎧に宿っていても彼女達の肌は小指の先ほども晒されていないので、気にする必要が全く無いのだ。
胸を覗きこんでも、見えるのは胸の谷間では無くて鎧の裏地だけだし。
「まあ、Rank3の仲間が増えたと思えば十分か。
じゃあ早速実験の方をやってみよう」
そう言いながらVandalieuはSalireとRitaにManaを過剰に注ぎ始めた。death attributeを帯びた黒いManaが、何十万何百万とSalireとRitaの二人に吸い込まれていく。
『……………っ!』
身悶えするように二人が震え出すが、暫く続けてみてもそれ以上の変化は無さそうだ。
Statusを確認しても、Rankもlevelも変化は無い。ただのLiving High-Leg Armorと、Living Bikini Armorのままだ。
何故か気持ちよさそうだが。
「やっぱりダメか」
Bone Man達にも同じ事をしたが、やはり何も変化は無かった。……心なしかboneが艶々していたり、ヒビが消えていたりした気がするが。
Dungeonで遭遇したSkeleton GeneralやLiving Armorは、目に見えて強そうになったのだが。
『もしかしたら、Rank up条件を満たしていないのかも』
「条件?」
『ええ、monstersのRank upについて私は詳しく知らないけど、HumanのJobと同じような物ならlevel up以外にも条件があると思うのよ』
Darciaが言うには、Job changeにはlevelが上限に達する以外にもいくつかの条件が付く場合がある。例えば、Apprentice MageのJobに就いているadventurerがlevel100に到達しても、MageにRank upするには何かのmagic skillを一定の水準で、accurateには2Lv以上のskillを一つ以上獲得していなければならない。
skill以外にもKnightにJob changeするにはKnight叙勲を受けていなければならないし、Magic Sword UserにJob changeするにはMagic Swordを所持していなければならない等、一定の儀式やHonorary、所持品が条件に関わる場合もある。
他にもBeast FighterにJob changeする事が出来るのは、Beast raceのみという生まれが条件になる場合もある。
DarciaはmonstersのRank upにも同じような条件があるのではないかと言っているのだ。
「じゃあ、あのSkeleton GeneralやLiving Armorは既にlevelは上限に達していたけど、条件が満たされていなかったからRank upできなかった。
そこに俺がManaを注いだから条件が満たされて、Rank upした?」
『そうなるかもしれないわ』
「なるほど」
確かに言われてみれば尤もだ。GoblinもRank upしてGoblin Mageに成ったからmagicを使えるようになる訳では無く、magicのaptitudeを持つGoblinがそれを磨いた結果、Goblin MageにRank upできたと考えるのが自然だ。
つまりManaを込めるだけでRank upするような楽な話は無いという事だ。
「じゃあ、今度level100に達してもRank upしないUndeadが居たら試してみよう。
Salire、Rita、実験に付き合ってくれてありがとう。後は皆と一緒にWeapon Equipmentの練習をしていて」
彼女達はMaidだったので、当然武術の心得は無い。なので、一からskillを身に着けるべく訓練を続ける必要があるのだ。
そのため二人にはそれぞれWeapon Equipmentを選んでもらう事にした。maybe初心者らしく剣か、槍を選ぶだろうと思ったら……。
『…………』
SalireはHalberdを、RitaはGlaiveを手に取った。いずれもDungeonの宝物庫で発見した、具体的な効果は不明だがそこそこ強力なmagic itemなのだが……素人向けとは言い難い気がする。
「……それで良いの?」
尋ねるVandalieuに、ブンブンとWeapon Equipmentを振って「大丈夫!」とappealするSalireとRita。流石Living Armorというべきか、生前だったらとても持ち上げられない重量Classの業物を危なげ無く上下させている。
「なら良いけど、難しかったら剣や槍に替えるんだよ。重いWeapon Equipmentが良いなら棍棒とかもあるから」
Vandalieuがそう言うと、二人は嬉しそう(maybe)にBone Man達と一緒にskillを磨くための訓練を始めた。
経験則からskillは使えば使う程level upしていくと分かったので、睡眠も休憩も必要としないというUndeadの特性をfull活用して訓練を実施しているのだ。
とは言っても、Vandalieuを含めてHalberdやGlaiveの使い方を知っている者は誰も居ないので、上段から振り降ろしてみたり、槍のように突いてみたり、横薙ぎに振ってみたりといった素振りを延々行うぐらいだが。
実戦よりずっと効率は悪いが、常にExperience Point源のGoblinやmountain banditを探し回る修羅のようなlevelling作業をしながら旅をするのは、Bone Man達が大丈夫でもVandalieuが付き合いきれない。それに、何故自分がMirg Shield Nation内の治安維持に貢献しなければならないのかという気持ちもある。
「じゃあ、俺は昨日とった胡桃でも処理していよう」
まだ日が高いし、まだ眠くないから昼寝も後で良い。一人怠けているのも落ち着かないので、Vandalieuは昨日拾った胡桃の処理を始めた。
食料は十分すぎるほど足りているのだが、味付けが塩のみでは飽きるので胡桃でsauceを作るのだ。
まず、昨日の昼に採取した壺一杯の胡桃。まだ青く、果肉が付いているのでこのままでは食べる事が出来ない。これを地面の上に広げる。
「一月分くらいか。【Decomposition】」
そしてDeath-Attribute MagicでDecompositionを一月分ほど急速進行させる。すると、青かった果肉は黒くドロドロになる。
Golemに汲ませておいた湧水で腐った果肉を洗い流すと、種子が出て来る。後はこの殻を剥けば中の胡桃が出て来るが、慌てて握り潰したりしてはいけない。そうすると殻のfragmentと胡桃が混じってしまい、食べられる量が減るからだ。
そこでWood Golemにした薪に自力で擦り合わさせて起こした焚火で、胡桃をEARTH Golemに軽く炒めてもらう。すると殻が割れやすくなるのだ。
『後は、冷めた後knifeで殻を割れば大丈夫よ』
以上、Darciaの豆知識。流石森の民だけあって、彼女は森の幸に付いて詳しかった。
Vandalieuは【Heat Leech】で熱を奪って冷ました胡桃の殻を爪で割った。knifeでと言われたが、最近爪がある程度なら自由に伸ばせるようになったので、早速活用している。
「将来的には、これで戦えるようになったりして」
亡き父親はUnarmed Fighting Techniqueの達人で、clawsで戦うのが得意だったらしい。これも遺伝だろうか? そう思うVandalieuにDarciaは何か思ったのか、口を開いた。
『将来かぁ……Vandalieuは将来成りたいものってあるの?』
「将来? 上Class adventurerに成って手柄を立ててNobleに成りたい。そして社会的名声を手に入れたい」
『……前半はchildらしいけど、後半はちょっとどうかと思うの、kaa-sanは』
「でも、俺には一番必要なものだよ、社会的名声」
パキパキと胡桃の殻を爪で割りながら、Vandalieuは答えた。
「将来Amemiya Hiroto達がreincarnationして来た時に、Rodcorteに何を吹き込まれても俺に社会的な名声があれば滅多な事は出来ないだろうから」
最近気が付いた事だが、VandalieuとAmemiya Hiroto達には共通点がある。Earthに帰れず、死ぬまでLambdaで生きて行かなくてはならないという点だ。
Amemiya達がどんなCheat Abilityを持っていても、社会を敵に回す事は簡単には出来ないだろう。何故ならこのworldにreincarnationして来ている段階で、彼らにはこのworldの親brothersが、肉親がいる。そうして育つうちに友人だってできるだろうし、もしかしたらloverも出来ているかもしれない。
Vandalieuがもし社会的な名声を手に入れていたら、そんな彼らは迂闊に手出し出来なくなっているはずだ。それは自分の肉親や関係者に、迷惑をかける事になるから。VandalieuがNobleになっていたら尚更だろう。
「kaa-san、権力と名声があれば社会は俺の盾になるんだ」
『う~ん、ちょっと私が聞きたかった事と違うような気がする。Vandalieuは、そのAMEMIYAって人達をどうにかできたら、どんな夢があるの?』
「あいつ等をどうにかしたら……」
ここまで言われれば、Darciaが聞きたい事が何なのかVandalieuにも察する事が出来た。つまり、将来の夢、成りたい職業や叶えたい願望を彼女は知りたいのだ。Earthのchildが、メジャーリーガーやサッカー選手、actionスターに成りたいというような、あどけない夢を。
しかし、困った事にVandalieuは夢見るchildでは無い。
昔はFlight機のpilotに憧れていた気がする。しかし伯父のfamilyと暮らすようになってからは、machoに憧れた。丸太のような二の腕、割れた腹筋になる事を夢見た。それぐらい強くなれれば、この伯父の支配から抜け出せると。
でもそれもDarciaが聞きたい事とは違う気がする。
ではなんだろうか? Originで夢見たのは自由の二文字だけだったし。
「……幸せに成りたいなぁ」
しばし黙考した結果、出たのはsimpleすぎる結論だった。
ゴリゴリゴリ。殻を割って穿りだした胡桃を石の皿の上ですり潰しながら、Vandalieuは遠くを見つめた。
「幸せに成って、暖かい家庭やHuman関係を築いて、そしてluxuryに暮らしてみたい」
何とも曖昧でよくある夢だが、これがVandalieuの本音だった。Earthで死ぬ前に考えていた、理想だった。
とは言っても、別に助手席に美人を座らせたキャデラックやフェラーリのような高Class車に乗りたいだとか、服を高ClassブRandで固めて腕には高Class時計を嵌めたいとか、都心に豪邸を建てたいとか、そういったluxuryでは無い。
Vandalieu自身が自覚していない事も含めて言えば、彼は根深いluxury complexにかかっている。
VandalieuがAmamiya HirotoだったEarthでの人生で彼を育てた伯父は、両親が居ない彼が大人になってから一人でも強くしっかりと生きられるように、厳格に育てようとした。
そのため彼に甘える事を過剰に禁止し、更に甘やかさないようにと一切のluxuryを禁止した。クリスマスや誕生日を彼にだけ祝わないのは、まだ序の口だ。
Earth時代のVandalieuは、伯父が「luxury」だと思う事は全て禁止だった。
game、玩具はluxuryだから友達から貸してもらっても遊んではいけない。流行り物もluxuryだから禁止。ヨーヨーが流行っている? ベーゴマが人気? 変わった形の消しゴムを集めるのがブーム? 全て禁止だ。持っていたら今すぐ捨てろ。
steak、Cakeもluxury。ハンバーグsteakはsteakだからluxuryなので禁止。だから学校の給食でも食べるな。食べたら全て吐け。お徳用パック? 得をしようとするのは甘えだから禁止だ。steak味のスナック菓子も禁止だ。ああ面倒だ、甘い物は全て禁止だ。
外食はluxuryだからfast foodだろうとなんだろうと禁止、旅行はluxuryだから学校の遠足も禁止、レジャーはluxuryだから一人だけ留守番、新品の衣服はluxury……。
luxuryアレルギーなのではないかと思う程、伯父はVandalieuのluxuryを禁止した。カップramenやコンビニの菓子breadでさえ、商品名や宣伝文句に「luxury」とか「極上」とかそう言った言葉が付いているだけで、「親もいないのにluxuryしやがって、甘ったれるな」と罵声を叩きつけ平手で打つ。
海外の貧しいchild達のドキュメンタリーがtelevisionで放送された後は、最悪だった。何もしていないのに、突然この子達はこんなに苦労しているのに、親もいない身分でこんなに甘ったれて恥ずかしくないのかと怒鳴られて平手打ちを何度受けた事か。
そのため私服は同い年の伯父夫婦の実子のお下がり、食事は何時の頃からか自分の分だけ自炊。普段から挙動がおかしかったので、友達も出来ずInstructorからも警戒されと良い事none。
しかも伯父は握り拳で殴るのは虐待だが平手で打つのは躾だという信念の持ち主なので、伯父が自主的に反省する事も無かった。
certainly、伯母とyounger cousinも伯父を止めない、Vandalieuを助けるために伯父を止めるよりも、止めずに放置した方が自分達は安全だからだ。
もしこれらの仕打ちは金が無くて仕方なくというのなら、まだ納得の余地もある。だが金はあったのだ。VandalieuのEarthでの両親が残した遺産に、生命保険金。そして事故の加害者から支払われた賠償金。
合計すれば、当時の価値でchildを三人程赤ん坊から育てて私立大学を卒業させても尚残る程の金額だ。
なのにあの仕打ちなので、もう言う事は何も無い。
高校の修学旅行だけはPart time jobして自分で貯めた金で行けたが、その結果terroristによって船が沈没したので踏んだり蹴ったりだ。
家を出る時に両親の遺産の内まだ残っている金額全てを渡すという話だったのに、結局全て伯父夫婦の物に成ってしまった事も考えると、特に。
そして始まった二回目の人生は、Originでの実験動物生活。luxuryどころか自由すらない人生では堪ったものではない。
だから三度目の今生でこそ、幸せに成ってluxuryに暮らしたいとVandalieuは望んでいた。
とりあえず、お金が使える社会で暮らしたい。
「具体的に何がluxuryなのかは、Orbaum Elective Kingdomに行ってから考えるけど」
『そう? でも上Class adventurerに成ったらその時点でとてもお金持ちになっていると思うけど』
「ああ、大丈夫だよ。-chanとGordan High PriestとHeinzは殺すから」
『う、うん、ありがとう。でも無理しないでいいのよ?』
「分かった。あいつらを余裕で殺せるくらい強くなるね、kaa-san」
『それなら、安心して良いのかしら? でも無理はしないでね』
Slightly言いたい事がずれて伝わっている気がするDarciaだが、軌道修正出来る可能性が低い事を悟って諦めた。実際、Orbaum Elective KingdomでNobleになるならAmid Empireとその属国で活動するGordanとHeinzは、敵になる可能性が高い人物であったし。
Vandalieuが殺す必要があると思うのなら、必要なのだろう。
すり潰した胡桃に森で手に入れた香草を加えて、出来上がり。本当はここに香りの良い油を加えたいところだが、無いのでenduranceだ。これで今日の夕食も美味しくなるとVandalieuは満足げに息を吐いた。
「でも、焼き固めたbreadじゃなくてご飯が食べたいなぁ」
伯父のluxuryアレルギーも、流石に米には滅多にActivateしなかった。しかし Earthで生きていた時は何とも思わなかったが、最後に米飯を食べてから二十年以上経っている今ではとても懐かしく思う。
『ご飯って、お米の事? 確かOrbaum Elective Kingdomで作っているって聞いた事あるわ。breadのAmid、米のOrbaumって言うし』
「マジで!?」
Vandalieuの中で、Orbaum Elective Kingdomの株が上がった!
Vandalieuが一age四か月に成った十月。秋が深まり冬の近づく時期に、ようやくMirg Shield Nationの東端まで辿りついた。
これ以上東は自然とDevil Nestsしかない土地だ。Vandalieu達はそれを更に越えてMountain Range越えをしなくてはならない。
だが流石に冬にMountain Range越えを試みるのは無謀だろうと思うので、春まで周辺のmountain banditを襲撃しながら森の中に潜伏しようか。今、日が沈むのをDevil Nestsに近い林の中で潜伏しているように。
Vandalieuはそんな事を考えていた。
「そういえばスキーってした事ないな。今のbody part Abilityならすぐ滑れるようになるかな?」
Status上の数字なら、Vandalieuのbody part Abilityは唯一低かったAgilityでも既に平均的な成人maleを上回っている。だが、流石に未経験者が自然の斜面を滑るのは無謀だろう。
『スキー? それもEarthの物ですか?』
Couch Driving台に座る白いぼんやりとした人shadow。Samが話しかけてくる。Ghost Carriageに成ったSamのSpirit Formだ。彼は同じくSpirit Formの馬の手綱をそこで取っている。
その姿は心霊写真に写った幽霊のように不確かだが、姿がまったく見えない時よりも話がしやすいとVandalieuは思っていた。
「Earthのスポーツだよ。板を足に付けて雪の斜面を滑るんだ。こっちのworldには無い?」
『聞いた事はありません。ソリなら聞いた事がありますが』
SamやDarciaと話していてVandalieuが知ったのは、このLambdaにはEarthのようなスポーツが殆ど無いという事だ。accurateには、純粋に競技やレジャーとして楽しむ類のスポーツが無いのだ。剣や弓矢の技術で競い合う事はあるが、それはmonstersの討伐やHuman同士の戦争で使われる事が前提になっている。陸上競技や馬術もそうだ。
例外なのは俗にいうRoyal Nobilityの嗜みとして習う物ぐらいらしい。
Lambdaには野球やサッカーといった球技や、サーフィンやスキーといったレジャースポーツが存在しないのだ。
それはmonstersという強力で多数の外敵が存在する事で、Earthよりも余裕が無い事が理由として挙げられるだろう。そんなスポーツ競技に優れたbody part Abilityを費やすくらいなら、戦えという事だ。
スポーツ競技としてdevelopmentしているかはin any case、十万年もあればソリからスキーくらい発明されていても良いだろうとは思うのだが。その辺りがRodcorteに劣等world扱いされる由縁かもしれない。まあ、Samが知らないだけで実は雪国に似たような物があるかもしれないが。
「Sam、スキーって言うのは――」
スキーについてVandalieuが話そうとしたその時、微かに声が聞こえた。
「女のscreech?」
『そのように聞こえましたな』
そして、風に乗って微かに香るappetiteの湧く良い匂い。bloodだ。
この風が吹いて来た向こうで、女がscreechを上げてbloodを流している。つまり、何者かに襲われている。
『どうなさいますか?』
何故Samがこんな事を聞くかというと、自分達が「助けに行く」とか「関わり合いになるのを避ける」といった普通の対応を取るとは限らない集団だからだ。
なんといっても全員がこのMirg Shield Nationでは討伐対象のmonstersだ。可哀想な女の人を助けたら、女の人がお礼に討伐依頼を受けたadventurerの集団を連れて来てくれましたなんて展開が、容易に想像できる。
なので、合理的にriskを考えるなら無視して旅を続ける事を選ぶはずだ。
だからと言って顔も知らない赤の他人の女の人を助けないという選択肢も、Vandalieuの性格と目標を聞いた今では選ぶとは思えない。
「Sam、風上に向かって。Bone Birdは先行偵察、Bone ManとSalire、Ritaは馬車に乗って」
Vandalieuの選択は、『とりあえず危なそうだったら助けてからその後の事を考える』というものだった。
日和見的ではあるが、女の人が殺されてしまった後で「やっぱり助けよう」と女の人を生き返らせるなんて事は出来ない。だがそれに対して、この選択肢を実行すれば「やっぱり助けるのを止めよう」と殺して口封じする事が出来る。
なので、合理的に考えてこの選択が正しい。そうVandalieuは思った。
「ゲェェェ」
Bone Birdが鳴きながらSpirit Formの翼をfeatherばたかせて飛び上がり、それまで訓練にいそしんでいたBone ManやSalire達が馬車に飛び乗る。
『了解しました、Bocchan』
Spirit Formの馬が緩やかに走り出す。一行の中で数少ない会話可能なUndeadであるSamだが、彼はVandalieuに意見を言う事はあっても、反対はしない。
そしてVandalieuはBone Birdと視界をmagicで同調させる。これでBone Birdの視界を自分のもののように見る事が出来るのだ。
高く、高く飛び上がると林に近い森のDevil Nestsの外れ、森と草原の境目で数人のHumanが何かをしている。
Bone Birdのeyesightはeyeballが無いためか、それともVandalieuのmagicがimmatureだからか、生きている鳥程には良くない。
しかし、Human達の-sama子を大雑把に知る事は出来た。数は全部で五人……いや、六人。
その内、立っているのが四人。倒れているのが、一人。その倒れている一人に跨るようにして中腰になっているのが一人。
倒れている一人以外は、全員男。金属鎧を身に着けているのが三人。皮鎧が一人、ローブ姿が一人。跨っているのは、金属鎧の一人。
装備がばらばらである事から、恐らくadventurerだと思われる。一応周囲を警戒しているようだが、彼らの警戒はDevil Nestsからmonstersが出てこないかであって、林の方から襲撃される事は想定していないようだ。
boneと淡く光るSpirit Formだけでbody partが構成されているBone Birdを昼間に、それも離れた空を見上げて見つけるのは難しいので、偵察に気がつかれる可能性は無い。
そして倒れているのは、髪の長い変わった肌の色の……灰褐色の肌の女。半裸の格好で、bloodを流している。
今、中腰になっている男が女の胸に手を伸ばした。
「Sam、Silent Stepsで全速力。皆、奴らを皆殺しにしよう」
それを見た瞬間、Vandalieuの頭にbloodが上る。そして冷静に、彼は男達を皆殺しにする事を決めた。彼らはadventurerのようだが、程度の低い、mountain bandit紛いの連中なのだろう。
こんな所にもBlue-flame SwordのHeinzのような奴らが居るとは、この国のadventurerにはモラルは無いのかと嘆かわしい気分になる。
『畏まりました、Bocchan』
Samが手綱を上下に揺らし、馬車の速度を一気に上げる。だが、それでいて馬車の中は揺れないし、しかも音が信じられない程小さい。
【Rough Road Travel】skillで舗装されていない草原を、【High-Speed Running】skillを起動して走る事を可能とする。発生するはずの音は、馬がSpirit FormでありSamの一部であるため蹄の音も【Silent Steps】skillで消す事が出来る。しかも、激しいはずの揺れも【Impact Resistance】skillによって、軽減している。
Samも馬車としてはCheatである。是非高Classリムジンを目指してもらいたいものだとVandalieuは思った。
その馬車の横をBone Bear、Bone Wolf、Bone Monkeyが野生のSpeedで並走する。
「Bone Manは俺の合図を待って弓で皮鎧を先制攻撃。maybe Thiefだから、逃げられると厄介だ。Samなら追いつけるだろうけど、念のため。
ローブ姿のMageらしいのは、俺が無力化する。皆は、他の金属鎧の三人を二人一組で相手して」
Bone Manが弓に矢を番えるのを横目に、Vandalieuは言った。
「さぁ、女の子を助けよう」
これこそが善行である。
・Name: Salire
・Rank: 3
・Race: Living High-Leg Armor
・Level: 1
・Passive skills
Special Five Senses
Physical Ability Enhancement:2Lv(NEW!)
Water-Attribute Resistance:2Lv(NEW!)
Physical Attack Resistance:2Lv(NEW!)
・Active skills
Housework:2Lv
・Name: Rita
・Rank: 3
・Race: Living Bikini Armor
・Level: 1
・Passive skills
Special Five Senses
Physical Ability Enhancement:2Lv(NEW!)
Fire-Atribute Resistance:2Lv(NEW!)
Physical Attack Resistance:2Lv(NEW!)
・Active skills
Housework:1Lv
Monster Explanation:
・Living Armor
鎧に悪霊化した霊が宿った存在。その多くはSoldierやKnight、adventurerなど生前鎧を着て戦った経験のある者の霊だが、生前のMemoryや人格が残っている個体は少ない。大多数は生ある者を無差別に襲うだけの存在と化している。
強さは宿る鎧と持っているWeapon Equipmentに寄るが、Chain MailやHalf-Plateに宿った個体はRank3。fullプレートArmorに宿った個体はRank4に分類される。
極稀にmagic itemの鎧に宿る場合があるが、その場合のRankはそのmagic itemの機能による。
討伐証明部位は、Rankに関わらずほぼ確実に手に入るMagic Stone。素材は宿っていた鎧と、持っていたWeapon Equipmentや盾。Manaを帯びているので、倒された後にmagic item化する可能性がある。そのまま使うのは呪われる可能性があるので危険だが、浄化等をすれば安全に使用する事が可能。
SalireとRitaの場合はmagic itemの鎧に霊が宿っているが、生前がWeapon Equipmentの扱いを知らないMaidであるためskill levelが低く、Rankも相応に低下している。
ただ鎧の機能は損なわれていないので、Defense Powerやresistance skillにimpactは無い。
Skill explanation:
・Mental Corruption
psychological錯乱、traumaの深さ、horror症の深刻さ等を表すskill。毒物やCurse、magicなどからMentalを守るresistance skillとしても機能する。
ただしこのskillの習得を奨励するorganizationは多くの場合裏社会とかかわっているか、裏社会そのものである。都市部ではこのskillをDiseaseの一種と解釈している場合もあり、専門の治療院が存在する。
実際このskillの持ち主はabnormalなサディストや殺人鬼、悲惨な戦いを経験したSoldierやadventurer、殺人への忌避感や罪悪感を奪われたAssassin等が多い。しかし歴史に名を遺した芸術家や発明家等、achievementを遺した者も少なくないため、このskillを持っているからといって身柄を拘束される事は少ない。