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Chapter 111: 目を見て話そう

「この度は突然の訪問にもかかわらず会談の席を設けて頂き、感謝します。Periveil -dono

 そう礼儀正しく頭を下げるのはResistanceの使者ではなく、使者を伴ってやって来た『新生Sauron Duke軍』の指導者、Raymond Parisだった。


 戦死したSauron Dukeの隠し子という経歴が不自然に感じない整った顔立ちと、何より気品を漂わせている。

 以前は思わずRaymondに見とれ、若いScyllaには頬を染める者が少なくなかった。


「何、今は米の収穫も終わった農閑期だし猟もやらない時期だ。VidaMerrebeveilの祭りまでまだ少し日もあるからね。意外とみんな暇なのさ。

 しかしleaderが直接来るとはただ事じゃないね」

 Periveilも、このHumanの青年が凡人ではない事を感じ取っている。


 Periveil達にとってVandalieu程ではないが、Raymondは人を惹きつけるcharisma性と思わずその言葉に頷きたくなる、上に立つ者特有の威厳を既に放っている。

 Raymondなら何かをやり遂げるかもしれない。そう思わせる何かが、彼にはある。


「ええ、脅かす訳ではありませんが、早速本題に……入る前に彼女達は、一体?」

 そのRaymondが困惑の混じった顔で視るのは、Privelに隣り合って座るPauvinaと、その前に座るVandalieuだった。


 この場に居るのはPeriveilを初めとした集落の主だったScyllaやその夫。そしてRaymondと二人の新生Sauron Duke軍のmember

 そしてPrivelPauvinaVandalieuである。当然だが、三人はかなり浮いて……と言うか、やはりPauvinaが抜きんでて目立っていた。


 だがそれでいてScylla達が注目しているのはPauvinaではなく、Raymondから見ると精巧な人形のように見える少年ともShoujoともつかないVandalieuだった。

 奇妙な空気と妙な違和感を覚えながら尋ねたRaymondに、Periveilは何でもない事のように三人を手で指した。


「そう言えばintroductionするのは初めてだったね。この子はPrivel。あたしの末娘さ」

Privelです、よろしくお願いします」

 視線をVandalieuから上げ、挨拶するPrivelに「こちらこそ」と返すRaymond


「それで、彼女と一緒に居るこちらの――」

 自分よりGiantPauvinaをどう呼ぶか迷うRaymond。大きさを考えるとGiant raceでも大人に成って居るはずなのだが、顔や頭と体のbalanceを見るとまだ十age前後のShoujoのように見える。


「初めまして、Pauvinaです。VanImoutoです」

Vandalieuと申します。Pauvinaの兄です」

「そ、そうですか。初めまして」

 大きさと不似合いな幼い声で挨拶するPauvinaと、例によって見過ごされていたVandalieuが声を出した事に思わず動揺してしまう。


 しかし、挨拶されても何故childがこの場に居るのかの謎が解けていない。


「このVandalieu -kunはまだ小さいのに【Spiritualist】でね、殺人事件の捜査を手伝ってくれているのさ」

 だがPeriveilの説明で全ての謎が氷解した。

「それは……凄い。事件については私も気にかけていたが、【Spiritualist】の協力が得られるなら心強い。それにしても-kun-samaageで希少な【SpiritualistJobに就くとは、aptitudeがあるようだね。羨ましいよ」


 就くためには生まれ持ったaptitudeが必要と言われる【SpiritualistJobは、殺人事件の調査では大きな力を発揮する。その所有者なら、childでもこの場に居る事は不自然ではない。

 しかし Raymondはこう続けた。


「だが、【SpiritualistJobに就ける者は本当に非常に少ない。-kunが嘘をついているとは思わないが、すぐには信じられない」

「それは尤もだと思います」


 Vandalieuはまだ本物の【Spiritualist】にしか会った事が無い。しかし実際には「自分は【Spiritualist】だ。霊が見える」と嘘を言い、詐欺を働く不届きな偽物が居るだろうなと思っていた。

 しかも Vandalieuappearanceでは、RaymondPeriveilからintroductionされたとしても、すぐには信じられなくても仕方がない。


「では、俺が【Spiritualist】である証明をお見せします」

guild Cardでも見せてくれるのかな? このAutonomous Territoryでは発行するguildbranchが無い筈だが――」

「いえ、もっと確実な証拠です。【Visualization】」

 そしてVandalieuの前……ではなく、横にOrbiaの霊が姿を現した。


Ghost!?」

Delegation Leaderっ、下がってください!」

 見える-samaになったOrbiaの霊に思わずRaymondの部下が立ち上がるが、本人は「落ち着け」と部下を制止した。


-kunは、被害者の娘の霊か」

『こうして話すのは、初めてだよね。Delegation Leader -san。今日で十一日目だったかな、殺されたOrbiaだよ』

「よろしく……と言うのも、変な話なのかな。まさか【SpiritualistJobに他人に霊を見せるskillが……いや、magicか? in any case、方法があるとは驚いた」


『アタシも驚いたよ。それで……最近変わった事は無かった? Resistanceの誰か襲われたとか、連絡がつかないとか……』

「っ! ……いや、私には特別何も報告は来てはいない。事件に関係のある事なのか?」

『うん、でも何も無いなら良いんだ』

 ほっとした-sama子のOrbiaだが、Raymondは逆に顔色が悪くなったようだ。表面は平静を保っているが、彼女に質問された時、明らかに動揺していた。


Orbia -sanは死んだ時の事を、loverからのプレゼントが無い事以外覚えていないらしくて、犯人の顔も分からないんだ。だからVan -kunには、ボク達と一緒に他の犠牲者の霊を探しに、他の集落に向かう事になってるの」

「だからこの事件もあと少しで解決しそうなんだ。外から来てくれたあんた達にまで心配をかけて、すまなかったね」

 Privelがそう説明し、Periveilがそう結ぶ。


「それは、何よりです。同じVidaworshiperとして、一刻も早く事件が解決する事を願っています。

 それで我々の用件は――」

 その後、Raymondは『新生Sauron Duke軍』のleaderとして、占領軍の和平案を飲まない-samaにとPeriveil達を説得し始めた。


 Aldaを国教とするAmid EmpireScylla族をそのままにするはずが無く、必ず裏切るはずだ。今の内に自分達Resistanceと同盟を結び、Orbaum Elective KingdomともCoordinationして占領軍と戦おう。自分ならそれが出来る。

 そう訴えるRaymondには説得力があった。それは自前のcharisma性だけではなく、実際にElective Kingdomに協力者が居て連絡を取り合っている自信からだろう。


 多少演説に穴もあったが、それはScylla連続殺人事件を根拠に占領軍を糾弾する予定だったのを、演説から差し引いたからだろう。


「あんた達が言いたい事は分かった。でも、事はAutonomous Territoryの皆に関係する事だ。悪いが、あたし達だけじゃ決められないよ」

certainlyです。ですが、冬の誕生祭では全ての集落の長が集まると聞いています。その時に話し合っていただければ十分です」

 この場での返答を避けるPeriveilに、Raymondはそう言って引いた。


 恐らく彼は冬の誕生祭までの間、ここ以外の集落にも足を運んで同じように説得を重ねる予定だったのだろう。

 選挙活動に少し似ていると、Vandalieuは思った。


「それでは失礼します。今日は時間を作って頂き、感謝します」

 そして「食事でも」とPeriveil達の誘いを辞退して、礼儀正しく退室した。外に配置されたGhost達が、そのまま集落から出て行くRaymondたちの後ろ姿を確認する。


 一方、その頃Vandalieu達はざっとroomの中心に集まって、相談していた。


「やっぱり、Raymond達は違うんじゃないかい?」

「うん、ボクがプレゼントが指輪だって事を伏せてカマをかけても引っかからなかったし、本当に知らないんじゃないかな」

『でも明らかにRaymond -sanは動揺していましたよ!』

「動揺していたのですか? Princess Leviaは洞察力が鋭いですね」

Van-chanと人の顔を見ないとダメだよ」


『確かに動揺していたけどそれはアタシのせいだよ、きっと。ほら、幽霊だしさ、きっと怖かったんだよ、うん』

「「「それはない」」」

『声を揃えなくても良いんじゃない!?』


 もしかしたら犯人はResistanceの関係者かもしれない。既にPrivelOrbia達はVandalieuから伝えられていた。

 Raymond達『新生Sauron Duke軍』との付き合いは一年以上に及ぶ。普通ならそう言われても、すぐには信じられないが……。


「昨日夢でMerrebeveilからOracleを受けてね。驚いたけど、なんかとりあえずVandalieu -kunを信じれば良いっポイ?」

「ボクもっ! 何かkaa-sanみたいにblessingsも貰えて、代わりにVan -kunにくっついてれば良いっポイよ!」

『アタシもアタシも! blessingsがついて、Reincarnationに還るなって言われたっポイ。幽霊でもOracleって来るんだね』


「ありがとう、Merrebeveil

 Merrebeveilが早速頑張ってくれたらしい。Demon King Fragmentを抑え込まなくて良くなった分、力を振るってくれたようだ。


 他のScylla達も『Tentacle King』のsecondary nameを獲得した結果、Vandalieuから並々ならぬ存在感やcharisma性を(originallyVida's Miko』や【Insect UserJobである程度、覚える者も居たが)覚える-samaになったため、彼の言葉を完全に否定する事は出来なくなっていた。


 しかし洗脳した訳ではないし、これまでのMemoryが無くなった訳でもない。Raymondの立ち振る舞いを直に見て言葉を聞くと、あの凶悪な殺人事件と関係している-samaには思えなくなるようだ。

 実際、Privelが仕掛けた言葉のTrapにもRaymondは口を滑らせなかった。


 よくあるmysteryのお約束なら、犯人はうっかり口を滑らせるものだが。


「でも、奴は事件について知っていますよ」

『何か気がついたんですか、陛下!?』

Vanっ、大丈夫!?」


「……そんな信じられないみたいに言わなくても。まず、Raymondはあの演説で事件について一言も触れませんでした。大事件なのですから、犯人が自分達以外だと思っているなら、解決の目途が経っていたとしても触れて良い筈です。

 後、彼は俺にKilling Intentを覚えていました」


 死の危険を感知する、【Danger Sense: Death】は常時Activateしている。例え、空々しく響く演説を聞いている時にも。




 人生とは分からないものだと、『Sauron Liberation Front』のleader、『Liberating Princess KnightIris Bearheartは思った。

「下がれ、貴-sama等っ! でなければこのbody partは手に入らんぞ!」

 しがないKnightの長女でしかない自分が『Princess Knight』なんて大それたsecondary nameで呼ばれる事もそうだが、まさかこんな脅し文句を使う事に成るなんて。


「おのれっ、つまらん虚仮脅しを!」

「迂闊に刺激するな、idiotが! 万が一この女の身に何かあったらどうする!?」

「落ち着きなさい、Princess Knight -san。話し合いましょう、このままじゃ貴女の部下も全員助からないわよ」


 自分の喉にtea spoon程の大きさの小さな短剣を当てるIris、そしてその周囲には狼狽えながら下がる十数人の黒ずくめ、彼らの足元にはblood塗れで倒れるIrisの仲間達と、白い煙を立てている動かない黒ずくめが二人。


 昨日違法Slave商人が違法Slaveを輸出しようとするのを防ぎ、Slaveにされた人々を保護したIris達は、彼女達を一先ずhideoutで休ませていた。

 そこをこの黒ずくめ達に襲撃された。見張りを強引に突破して、何人かは空まで飛んで攻め寄せて来たのだ。


 昨日殺したSlave商人の仲間か、取引していた犯罪organizationが寄越した刺客かと最初は誰もが考えた。

 しかし Irisが咄嗟に逃がした元Slave達を無視し、Slave商人を直接殺したDavisを倒しても止めを刺そうとしない。

 更に仲間達を次々に倒す手練ればかりなのに、Irisと相対すると妙に動きが悪くなる奇妙さ。


 そしてDavisが隙を突いてSlashつけた黒ずくめが、自分達が攻め込んで来た時に破った木戸から差し込むSunlightに、焼かれてscreechを上げてのた打ち回ったのを見て、Intuition的に気が付いた。

 奴らはVampireで、狙いは自分のbody partだと。


「そうだな、このままではお前達はmasterに炭のfragmentを幾つか持って帰る事になり、怒りを買い、粛清でもされるのではないかな? この『純潔の守護者』の効果は知っているだろう?」

 Irisが自分の喉に先端を触れさせている短剣と言うにも小さな刃は、『純潔の守護者』と言う銘のmagic itemだった。


 高貴な身分のfemaleの為に作られたsuicide専用のmagic itemで、所有者が自らの意思で喉や胸元にthrust刺すとActivateし、所有者は生きた松明と化し、数秒で黒い炭と化す。

 originallyは敵に生死を問わず辱められないようにと、作られた完全にsuicide専用のmagic itemだ。


 今では殆ど出回っていないbone董品だが、曾祖母の代からIrisに伝わって来た品だ。


「調子に乗るなよ。何なら貴-samaの首を一撃で刎ね、噴き出したbloodを壺に溜めて届けるという方法もあるのだぞ」

「ほぅ、貴-sama等の主はcollectionbloodだけでも構わないのか?」

「貴-samaっ……何故Gubamon -samaの事を」


Resistanceなんて言っても、体制側から見れば犯罪者と変わらない。お蔭で私も悪い仲間から話を聞く機会が増えてしまったよ」

 Vampire達は裏社会の更に奥深い闇の中に巣食ってきたが、完全に自分達の存在を隠し続ける事は不可能だ。

 特に有名所である『Evil God of Joyful LifeHihiryushukakaを奉じるPure-breed Vampire達の噂は、裏社会の事情通にはそれなりに知られていた。


「どうする、汚らわしいVampire共? 私は本気だぞ、Undeadにされるよりは自ら命を絶った方がマシだ。suicideを戒めるAldaも、愚かな元believerを見逃してくださるだろう」

 Irisが本気である事を理解したVampire達は、Sunlightから身を守るために被った覆面の下で悔しげにlipsを歪めた。


 猜疑心に狂ったGubamonは、手下のVampire達を出来るだけ逃がさずにUndead Transformationするため、彼等に難題を命じた。

 現在所在の分かっている名の知れたadventurerKnightClergymanRoyal Nobilityを拉致して連れてくるようにと。

 Space-Attribute Magicの使い手であるGubamonは、手下達を集めるとtargetを指名してteleportで強制的に送り出す。そして、期限までに送り出した場所に拉致したtargetと迎えを待てと命じる。


 Gubamonへのhorrorが植えつけられているVampire達は、そのまま逃げ出すという選択肢を取れない。彼が狂乱したままならそうしたかもしれないが、難題を命じる彼の上辺は以前の比較的正気だった頃に戻ったようにVampire達には見えた。


 逃げ出してもSpace-Attribute Magicで追っ手が放たれる、生き残るには命令を達成するしかない。そう多くの者は思い込んでしまった。実際にはGubamonの手下は急速に彼自身の手で数を減らしており、更に命令を達成しても結局殺されるのだが。


 十数人のNoble-born Subordinate-born入り交ざった即席teamを慣れない土地に送り出す事で、逃げる相談もし難く命令を達成すれば生き残れるという望みについ賭けてしまう。そして上手く行けば、collectionも増える。

 失敗しておめおめと戻って来たらそのままUndeadに。死ぬなりして戻って来なくても、その程度の愚物失っても惜しくはない。


 何とも乱暴で欠陥だらけの、狂人だから実行できる策だった。


 その策に踊らされているVampire達は、対人戦の心得自体はある。誰かを攫うのも、不得意ではない。しかし、それなりの実力があるorganizationleaderを、大きなinjureをさせずに生け捕りにして攫う事が出来る程器用ではなかった。

 上手く手加減が出来ずに戸惑っている内にIrisに目的を見抜かれてしまった。


 Human如きの脅しに屈するのは気に入らないがと苦い思いを押し込めて、Vampire達の暫定leaderは口を開いた。

「……良いだろう、お前の仲間の命は助けてやる」

 そう言いながら倒れたままのIrisの仲間に治癒magicを唱えて見せた。


「おい、正気かMash!?」

「つべこべ言わずにpotionをかけるなりなんなりして手当してやれ。死なない程度に回復させればいい。アンバー、お前も足の下の女のbloodを止めろ」

「……分かったわよ」


 渋々といった-sama子で、Irisを拉致する際彼女の傷を癒すために持ってきたpotionを彼女の仲間に振りかけ、magicで治療を施す。


「うぅ、お嬢っ……ダメだ、逃げて下せぇ……」

 辛うじて意識があるDavisがそう声を出すが、Irisは彼を見ないまま「それは出来ない」と答えた。

「皆には私が死んだ時と同-samaに行動しろと伝えてくれ」

 Irisが自分の死体を残さないために『純潔の守護者』を持ち歩いていたのは、自分が死んだ後仲間から代わりの『Princess Knight』を立てる為だった。


 Sauron Duchyが健在だった時は数あるKnightの娘でしかなく、Resistancemission中も覆面を被っていた彼女の顔はあまり知られていない。

 Resistanceの象徴の一つ、『Liberating Princess Knight』の中身が変わっても、誰も気が付くまい。


「これでお前の仲間は死なない、今はな。後は貴-sama次第だ」

「良いだろう。だが、まずはこのまま私と一緒にhideoutを歩いて出て貰おうか。そうしたらこの『純潔の守護者』と私自身を預けよう」

「チッ、手間をかけさせるな。我々の気が変わらないとでも思っているのか?」


「お互い-samaだ。行きがけの駄賃とばかりに仲間に止めを刺されたら堪らないのでな」

「……良いだろう。だが貴-samaこそ気を変えるなよ。その時は取って返して貴-samaの仲間もそうでない者も皆殺しにしてやる」


 hideoutからIrisを中心にVampire達が歩いて出て行く。その後をDavisは必死に這いずって追ったが、彼が見たのはhideoutの外で途切れた幾つもの足跡と、落ちている『純潔の守護者』の破片だけだった。




 Raymondに宣言した通り軽い昼食を取った後、Vandalieu達はPrivelと護衛役の(検死の時案内してくれた)Guard Scyllaを二人加えて集落を出発した。

 そして集落に剣戟の音やscreechが届かないだろう距離まで離れた頃に、彼らは現れた。


Vandalieu -kun、だったね。少し、私の話に付き合ってくれないか」

 Raymond自身はWeapon Equipmentを手に持っていないが、彼の周りには既に剣の柄に手を置いた部下達が道を塞ぐように展開している。背後でも同-samaに五人程が退路を塞いでいる。

 恐らく、離れた場所に弓兵やMageも配置しているのだろう。そんな生命反応がある。


「驚いてはいないようだね」

 尋常ではない雰囲気だが、Vandalieu達は動揺していなかった。彼が無表情なのは何時もの事だが、PrivelGuard Scylla達は、突然現れたはずのRaymond達に対して動揺はしていなかった。悔しそうな、失望したような視線を向ける。


 Pauvinaに至っては、「いっぱい出て来たね」と呑気な-sama子で周囲を見回している。


「はい、予想はついていたので」

 それにどれ程bloodthirstを隠していても【Danger Sense: Death】を常時ActivateしているVandalieuに、尾行ならin any case待ち伏せは通用しない。

 それが無くても、Raymond達がScyllaの集落から出る時にLemureGhostに尾行して貰ったので動きは筒抜けだった。


「なるほど。やはり、彼女が覚えていないと言っていたのは嘘か」

 RaymondVandalieu達が驚かなかったのも、そう解釈したようだ。その言葉とこの待ち伏せで、Scylla連続殺人事件は自分達の犯行だと自白したも同然である。


しかし随分と早く、しかも大胆な手段に出ましたね」

「必要に駆られてね。それに、大胆な事が出来なければResistanceなんてやっていられないさ」

 Raymondの言う通り、彼らにとってこの待ち伏せは必要な事だった。Scylla連続殺人事件をAlda過激派の犯行だと訴え続けていた自分達が、事件の真犯人だった事が明らかに成る事は絶対に避けなければならないからだ。


 Orbiaが本当に事件当時のMemoryを失っているのか、Raymondは確証が持てなかった。失っていたとしても、これから思い出さないとも限らない。

 犠牲者を即死させる毒を使ったはずだが、見開かれた犠牲者の目が最後に何も見ていないとは断言できない。


 それに、他の犠牲者の霊も都合良く事件のMemoryを失っているとは考えられない。実際には、まだ事件現場に霊が残っているのかも怪しいのだが、【Spiritualist】のmemberが居ないRaymond達はそれを知らない。


 だからRaymondVandalieuが他の集落に辿り着く前に止める必要があったのだ。


「それで、話とは俺達の口封じですか?」

「そう急がないでくれ。-kunageの割に思慮深く賢いようだから提案するが、私達の仲間に成ってくれないか?」

 Raymondの提案には、Vandalieuも驚いた。


「ふ、ふざけないでよっ! なんでVan -kun-kun達の仲間に成るのさっ、それよりもOrbia -san達を何で殺したのか答えてよ!」

 Privelが激高し、食ってかかろうとしてGuard Scylla達に「落ち着いてっ、私達は囲まれているのよ!」と制止される。


 その-sama子を見てRaymondは「やはりな」と呟く。

Vandalieu -kun、私が-kunを評価しているのは【Spiritualist】である以上に、短い時間でScylla達の心を-kunが私以上に掴んだ事だ」

 RaymondScylla達の前で覚えた違和感、それは彼女達が向ける好意だ。


 Raymondは単純な実力だけではなく、人を魅せるcharisma性を持っている。だからこそ、Sauron Dukeの遺児とは言え、継承権を持つ他領に脱出した他のchild達や親類とは違い、既に放棄させられたため継承権の無いIllegitimate Childである彼が『新生Sauron Duke軍』のleadershipをとっている。


 だが今日のPeriveil達との会談では、彼女達の意識は殆ど口を開かなかったVandalieuに向かっていた事にRaymondは気が付いていた。

 彼や彼の部下達にはそれが何なのか分からなかったが、VandalieuにはScylla達を惹き付ける何かがあると。


「私達も、Scylla達に好きで酷い事をしている訳ではない。全てはSauron Duchyを取り戻す為、Sauron Duchyの全ての人々を解放するためだ。

-kunが説得してくれれば、Scylla族もSauron Duchyの一員なのだという自覚を取り戻し、一緒に戦ってくれるだろう」


 Raymond達がAlda過激派の犯行に見せかけたScylla連続殺人事件を引き起こしたのは、Scylla達が占領軍の交渉案に同意するのを防ぎ、それだけではなく戦力としてResistanceに加える事を狙ったからだった。

 『新生Sauron Duke軍』と名乗っていても、実際には軍隊程の軍事力は無い。だが五千人のScylla族の戦力が手に入れば、占領軍相手に軍として戦う事も不可能ではない。


 Orbaum Elective Kingdomの協力者を通じてElective Kingdom軍を動かせれば、占領軍を倒す事も夢ではないだろう。


「それに、何より-kunDhampirだ。私達の象徴として申し分ない。Orbaum Elective Kingdomで最近Pure-breed Vampire殺しのHeroのお蔭で盛り上がっているAlda Reconciliation Factionbeliever達も、-kunの存在には心を動かされるだろう」

 迷っているのか小刻みに瞳を動かすVandalieuの目を見つめ、Raymondは畳みかけた。

「このままでは我々の故郷は、-kunDhampirmonstersと断じるEmpireの新たな属国にされてしまう。私達と一緒に、戦ってほしい」


 年の割には賢く落ち着いているように見えても、やはりchildだ。必ずその気にさせられる。そう確信していたRaymondだったが、彼にVandalieuが返したのは良い返事ではなかった。

「質問ですが、何故Scylla族を巻き込もうとするのですか?」

 Pauvinaが欠伸を噛み殺し、Privel達が息を飲んでVandalieuがどう答えるかを見守っている中、彼が発したのは質問だ。


「それは――」

 その質問にRaymondは動揺せず、前もって考えていた答えを返そうとした。VandalieuScylla達に好かれているように、彼もScylla達に好意を持っているだろう事は簡単に想像できることだ。

 だが幼くして【Spiritualist】に就き、更に瞳に迷いを見せているが表情や声にemotionsや動揺を現さない、大人以上の自制心の持ち主だ。


 間違わなければ、必ず説得できる。そう確信してRaymondは回答を続けた。

Scylla達の戦力と自然の要塞であるこのAutonomous Territoryが、欲しかったからだ。何故なら、占領軍に我々主導のtacticsで勝利する事が、Illegitimate Childであり継承権を一度放棄した私がSauron Duchyを治めるためには必要だったからだ。

 そのために弟に汚れ仕事を頼んだ。悪い事をしたとは思っていない。

 Orbiaだったか、彼女を含めた犠牲者達に悪い事をしたとは本当に思っていない。戦争に勝利するためには、必要な犠牲だ」


「そんな事言ってっ、ボク達は騙され――え?」

 反射的に叫んだPrivelの動きが、途中で止った。きょとんとした顔で目を瞬かせてRaymondを見る。

「だ、Delegation Leader? 何を言っているんですか?」

「どうしたんですっ、Raymond Delegation Leader!」

 逆に落ち着いていたRaymondの部下達が困惑し、狼狽え始める。


(何だっ? 私は今何を口走ったのだ!?)

 そして周囲の反応から、自分がとんでもない事を口走ってしまった事に気が付いたRaymondも驚き慌てるが、彼の口は彼自身の意思を離れて言葉を紡ぎ続ける。


Elective Kingdomに逃れたDuke 家の継承権を認められた嫡子が力を付け、彼を頂点としたSauron Duchy奪還tacticsが始まるのを待っていては駄目だ。それでは我々Resistanceがどんな戦功を上げても、私はDukeには成れない。

 このSauron Duchyをより良くするためには、私がDuke 家を継ぎ、治めなければならない! そのためには戦力が、私を中心にした軍で占領軍と戦う必要があったんだ!」


 それがRaymondの本音だった。

 Scylla族がSauron Kingdomの時代から政治や軍事に関わらなかった経緯を蔑にし、Autonomous Territoryの外にすっかり関心を無くしたScylla族を強引に戦力として加えるために、陰謀を巡らせたのだ。


 だがそれを話すつもりは無かった。


「そう、そのまま俺と彼女の質問に答えてください」

 ギョロギョロと、eyeballを目まぐるしく動かしてRaymondMentalを【Mind Encroachmentskillで攻撃し、暗示をかけているVandalieuは言った。


 そしてRaymond達が何か反応を見せる前に、「彼女」が姿を現す。


『教えて、あの人が……Rickがアタシを殺したの?』


 ゾッとする程冷たい問いが、Raymond達の耳を打った。


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