night目が効くScyllaのGuard達に案内された彼女達が墓地として使っている沼で、VandalieuはOrbiaの死体を掘り起こしていた。
「彷徨える霊よー」
それっぽい適当な呪文モドキを唱えているが、実際に死体を掘り起こしたのは【Golem Transmutation】skillで沼の泥から作られたMad Golemである。
「沼の泥がまるで生きているかのように……!」
「【Spiritualist】ってこんな事も出来るのね」
Guard Scyllaが沼の泥が蠢き、泥だらけの死体が出てくる-sama子に息を飲む。聞けば、やはりここでも【Spiritualist】は珍しく、昔は居たらしいがここ千年程Scyllaから【Spiritualist】は出ていないらしい。そのため「いや、それ【Spiritualist】違う」と言うツッコミは無い。
それを良い事に、未知のskillを使っている事を誤魔化したVandalieuは、現れたOrbiaの死体の検死を始めた。とは言っても、Scylla族の葬儀である泥沼に沈められて数日経った死体だ、葬られたため残留思念も薄れていて、分かる事は少ない。……DNAや指紋が残っていても、検出や照合する技術が無いので元からそれらの証拠に期待はしていない。
しかし掘り起こしたOrbiaの死体のcondition自体は良好だった。Decompositionが抑えられており、沈められた時と同じconditionが保たれているようだ。Earthで泥の中で保存された死体がミイラ状に成って発見される事例が在ったと思うが、それと似たような物かもしれない。
「これは酷くやられていますね」
ただ巻かれていた布を取ると、死体の-sama子は惨いと言うしかないconditionだった。体中切り傷だらけで、特に胸とlower bodyが酷い。乳房は左右共にズタズタにされていて原形を止めておらず、lower bodyのtentacleは全て切断されていた。
それに、body partに押されたAldaの聖印の焼印。
「このconditionで沼の近くに生えている木の幹に縛り付けられ、晒されていたそうだ。切り落とされた部分は、殆どが獣に持って行かれてしまったのか、発見できなかった。それ以外は、幸い多少齧られたぐらいだったが……」
何でも乳房はVidaを信仰するfemaleにとっては生命の象徴として重要な部位で、lower bodyのtentacleはMythの時代神に成ったScyllaのMerrebeveilの象徴らしい。
つまり犯人達は意図的にScyllaの尊厳を傷付ける壊し方をしている。
焼き付けられたAldaの聖印、そして死体に刺さったままだった矢はAmid Empireの討伐軍で使われていた物らしい。
(Earthの刑事物なら、証拠が揃い過ぎていて怪しいと思うところだけど……)
これは明らかに見せしめやProvocationの為の殺人だ。犯人が正体を隠すつもりが無いのなら、証拠が揃い過ぎている事を気にする必要はない。
「どうだ、何か分かりそうか?」
「まあ、やってみます」
死体に触れて、その部分から【Spirit Form Transformation】で伸ばしたSpirit Formで内部をスキャンする。
(頭蓋boneに致命傷none。矢傷も重要な臓器は傷付けていないし……切り傷のどれかが死因か?)
意外な事に死因がはっきりしない。生活反応……傷を付けられたのが生前と死後のどちらなのかが解れば良かったのだが。
「どうだ? 何かわかったか?」
「-kunが会わせてくれたOrbiaの-sama子を見て私達、正直ほっとしたのよ。私達、彼女が生きたままこんな酷い目に遭わされたんじゃないかって思っていたから。
でも、生きていた時と同じ元気なOrbiaの姿を見て、安心した……」
黙ったままのVandalieuに色々Guard Scylla達が話しかけてくる。やや気が散るが、そのお蔭でふと気が付いた。
「そう言えば、Orbiaは自分が殺された時の事を覚えていなかった……」
最初は単にshockでMemoryが飛んだのかと思ったが、それにしても覚えてなさすぎる。psychological shockで忘れていてもSpirit Formに歪みが出るか、何かに怯える等挙動に不自然さが現れるものだが、それが彼女には全く無い。
生きているHuman観察経験はまだ数年だが、死者の観察経験は二度目の人生を含めれば約三十年のVandalieuだ。間違いない。
ならOrbiaはpsychological shockで忘れているのではなく、本当に自分が殺される時の事を覚えていない事になる。
ならまず考えられるのは頭部に攻撃を受けて意識を一瞬で刈り取られた場合だが、既に頭蓋boneや脳に深い傷が無いのは解っている。
(他にheart、無傷。頸椎、無傷。それ以外の各種内臓はそこそこ傷ついているけど、即死には至らない臓器だ。lower bodyの方はnerveやmuscleは在っても、tentacleの根本に在るサブの脳らしい物以外は内臓none。
うーん、俺がScyllaの生態を知らないから見つけられないだけかな?)
「すみません、ちょっと俺の頭に触れて暫くじっとしていてください」
「頭に? こうか?」
「このままじっとしていればいいの?」
やや困惑した-sama子のGuard Scyllaの二人が、言われた通りVandalieuの頭に手を乗せる。
「はい、そのままで。気持ち悪かったりするかもしれませんが、enduranceしてください」
「えっ? はっ、ぐぅぅぅっ?」
「な、何かがっ、入ってくるぅっ!?」
そして触れているところからSpirit FormをGuard Scyllaの二人の体内に侵入させる。
彼女達に、GhoulやBeast race以上にEarthやLambdaのHumanと姿形が異なるScyllaの生理学を知るために協力して貰うのだ。
(上半身はやっぱり基本ホモサピエンスに近くて、内臓の働きも……lungの作りが変わっている事以外は同じかな? えーと右のお姉-sanのstomachが荒れ気味っぽい。治しておこう)
悶えるScylla達に少しserviceしつつ、生の生理学をざっと学ぶがOrbiaの死因の手掛かりは見つからない。
もう一度Orbiaの死体を調べると、不自然な傷が一つある事に気が付いた。
「指?」
Orbiaの左の薬指に、needleが刺さったような小さな傷があった。
小さくて浅い傷だが……Orbiaは死ぬ前に、秘密のloverから指輪を受け取っていた。
「念のために……」
死体に残っていた残留思念を読み取ってみる。そこには余程嬉しかったのだろう、Curseの氷やmagicで保存されていた訳でもないのに、鮮明な映像が残っていた。
左の薬指に指輪を嵌めている自分自身の手の映像が。
秘密のloverの姿は不鮮明で姿は確認できなかったが、前髪が特徴的だという事は分かった。
「証拠の指輪を見ないと何とも言えませんけど……反吐が出そうな真実が待っている気がします」
指輪を渡したOrbiaのloverが怪しい。指輪に毒を仕込んで彼女を毒殺した疑いが濃厚だ。
しかし、毒は時間が経ち過ぎたのかOrbiaの死体からは見つけられない。証拠の指輪も、残留思念の映像だけでは細工がされているか分からない。
もしかしたらOrbiaのloverは無実で、指の傷はその日偶然棘か何かが刺さっただけ。彼女の死因は隠れていた殺人犯が、即効性の毒を縫った矢を放ったからという事もあり得ない話じゃない。
今の時点でOrbiaに伝えるか悩むところである。
「どーしたもんでしょう」
「うぅ、何を、したんだ? なんだか、お腹が温かいような……」
「も、もう終わり? 終わり、よね?」
悩むVandalieuは、溜め息をついた直後に自分のせいで腰を抜かしてへたり込む、Guard Scyllaの二人に気が付いたのだった。
Scylla族のAutonomous Territoryの境界と接している砦の司令官を任されているMirg Shield Nation出身のKurt Legstonは憂鬱な顔で、暫く前から滞在していMardock Zet隊長の報告を聞いていた。
「つまり、Resistanceをわざと逃がして泳がせ、hideoutを割り出すtacticsを続行中という事ですか」
「その通りであります」
Legston Earl 家の三男(現在は長男が当主なので、当主の弟という分家の立場だが)で砦の司令官であるKurtに、Mardockは言葉だけは慇懃に、表情は見るからに嫌味っぽく答えた。
器用な男だ。実際、仕事もそつなくこなすのだろう。
「targetのResistanceは練度も低く、hideoutを割り出せば恐らく数日中に壊滅させられるでしょう」
Mardockは占領軍司令部が任命した対Resistance討伐部隊のCommanderだ。占領軍が手を焼いているSauron領のResistance organizationを討伐するため、この砦に滞在している。
実家の地位も軍の序列もKurtの方が上なのだが、Mardockは在る理由から彼を見下していた。そしてKurtも不愉快に思いながらも、それも無理は無いと諦めている。
何故ならMardockは軍上層部から活躍が期待され、既に幾つかのResistance organizationを壊滅させている花形部隊の隊長。
対してKurtは、Mirg Shield Nationの前MarshallであるLegston 家の三男だが左遷されたCommanderだ。
大失敗に終わったBoundary Mountain Rangeへの遠征。一つ上の兄のChezareが帰らぬ人に――遠征軍の半分以上がUndead Transformationして帰ってきてしまった事を考えると、せめてもの幸いだが――なったが、Kurt本人は遠征軍には関わっていなかった。
だから表向きは何の処分も無かった。しかし、やはり連帯責任や他の将兵への引き締めという理由もあって、Kurtは本国を離れ、この重要度の低い小さな砦に赴任する事になった。
何せOrbaum Elective Kingdomが建国する以前、当時まだDuchyではなくSauron Kingdomだった当時の為政者が、「Scylla族に自治権を認めたけど、念のために関所を兼ねて砦でも建てておこう」という理由で建てられたのがこの砦だ。
Scylla族が無謀な反乱でも企てない限り軍事的価値は、無きに等しい。
その反乱もAmid Empireの外務族のNobleが行っている交渉が進んでいるので、まず起きそうにない。
つまりKurtは念のために配置された警備員の警備隊長程度の存在なのだ。
ただ本国のPalpapek Marshallからも「今はほとぼりが冷めるまで、休暇だと思って耐えて欲しい」とのletterを受け取っているので、何時か返り咲けるだろうと腐らず日々務めているのだが……。
(Marshall -dono、自分はこんな不愉快な男と過ごす休暇なら要りません)
気分的には今すぐ、前線の一兵卒でも良いから仕事を交代して欲しいKurtだったが、それを態度に出す訳にはいかないのでグッと耐える。
「しかしそんな連中を幾ら捕らえても、新生Sauron軍やSauron Liberation Frontを捕らえなければ意味が薄いのでは?」
だが、つい余計な一言が口から出てしまった。しかし Mardockは厭味ったらしい笑みを強張らせるどころか深くする。
「確かに、新生Sauron軍のDelegation Leader、Sauron Dukeの隠し子Paris。そしてその弟の副Delegation Leader、Rick。Sauron Liberation Frontの『Princess Knight』を捕らえれば大金星でしょう。
しかし、重要なのはResistanceが我々占領軍によって次々に捕らえられているという実績を、このSauron領の民草に教えてやることです」
それによって一般市民のResistanceへの期待感は薄まり、反乱の気運も収まる。
無駄に終わる反抗よりも、大人しく恭順した方が得だと教え込むのだ。
「それに最近は主だったResistance organizationがこの近くに集まっているという情報もあるのでね。恐らく、Scylla共に我々Empireとの交渉案を飲ませたくないのでしょうな。
我が部隊がDukeの隠し子とPrincess Knightを捕らえ、処刑する栄誉を賜るのは時間の問題でしょう」
Self陶酔を滲ませてそう断言すMardockに、Kurtは彼がギャフンと言う姿を見たいと思ってしまった。
「それは結構な事ですな。ですが、今は交渉がまとまるかどうかの大事な時期。幾らResistanceを討伐するためであっても、Scylla族のAutonomous Territoryには十分な配慮をお願いします」
Amid Empireの属国であるMirg Shield NationのNoble 家出身のKurtは、当然Alda believerだ。しかし Alda believerである前に彼は軍人である。上層部の命令は絶対だ。
その上層部がScylla族に対して決戦ではなく交渉で臨むと判断した以上、それに従う事に異論は無い。邪魔をするなど論外だ。
そのため、Mardockの隊がScylla族のAutonomous Territoryの近辺で派手な動きをして、彼女達に占領軍からの脅迫だと解釈されて交渉の席で揉める事を憂慮したのだ。
certainly同じ占領軍所属のMardockが、Scylla族との交渉について知らないはずはないのでただの確認のつもりだったのだが。
「おやおや、精強で知られるMirg Shield Nation軍人がoctopus女共相手に及び腰ですかな?」
だが帰って来たのはこの言葉だ。octopus女とはScylla族にとって、酷い侮辱に当たる。
交渉中の今軍人が、それも勤務中に口にして良い言葉ではない。
「Mardock -dono、くれぐれも注意をお願いします」
Mardockがどんな価値観の持ち主で、Scyllaに対して何を考えているのかは知らないが、彼が何かやらかしたらKurtと部下がとばっちりを受けるのだ。重ねて確認するが、Mardockから聞けたのは「ご心配には及びませんよ」と言う、全く安心できない返事だけだった。
「交渉が決裂し、Scylla達がAutonomous Territoryから出て攻め込んで来れば占領軍は勝てる。だが、中途半端に怒らせて籠城でもされたらどうするつもりだ。占領軍の上層部は、自分が手柄を上げる事しか考えていないLunatic Dogに手綱も付けないのか」
Mardockより若いはずのKurtは苦りきった老け顔で、Mardockが退室した後そう毒づいた。
Scylla族はSauron Duchyの前身であるSauron Kingdomが建国されるずっと昔から、この山間の沼で生活していた。彼女達にとっても不便な傾斜のきつい斜面を棚田にし、Farmingと採集で生計を立て、外の快適な平地に領域を広げようとはしなかった。
それがScylla族の生存戦略だったからだ。
Alda temple主導の聖戦を唱える国々、領土を欲した侵略戦争、中には美女揃いのScyllaをSlaveにしようと戦争を仕掛けてきた国もあった。
その度にScylla達はHuman達の軍が不得意な沼で戦い、それでも持ち堪えられない時はfamily単位でバラバラに山に逃げた。
そして何年も何十年も待ち、敵がScylla達の土地を扱いかねている頃に襲い掛かって土地を取り戻してきた。
初代Sauron王が初めてScyllaの自治権を認め、当時の族長の娘を自身の側室に迎え、末の息子を婿に出した。
「その婿に来た国王の末息子の曾孫が――」
「Periveil -sanなの!?」
「うんにゃ。あたしの一番新しい夫と、そこのOrbia」
「そっちっ!?」
VandalieuがOrbiaの死体の検死をしている間、Pauvina達は、集落の長PeriveilからScylla族の歴史を物語にしたものを聞かされていた。
「つまりボクはOhime-samaの玄孫で、Orbia -sanはボクの伯母って事になるね」
『ちょっと、あんたの親父とアタシは姉弟じゃないからっ! younger cousin同士だから! オバじゃないのっ!』
Scyllaは四百年程生きる長命raceなので、彼女達にとっては何百年も前の話でも少し前の先祖の話程度だ。
そしてfemaleだけの単性raceのため他raceの男と婚姻するScyllaだが、childは半々の割合で夫のraceとして生まれてくるそうだ。女児ならScylla、男児なら夫のraceと分かり易い。それ以外の場合もあるが、それが起こるのは数千年に一度程度の奇跡的な割合である。
『じゃあ、Orbia -sanとPrivel -sanは、世が世ならOhime-samaだったかもしれませんね』
Princess Leviaがそう言うと、PeriveilのSmiling Faceに皮肉が混じった。
「まあ、初代国王の-samaな人の治世が続いていたらね」
自治権を保証され王族のblood縁に成ったScylla達だったが、初代国王が崩御して数年後妾だった族長の娘と彼女が産んだ娘達は、新王の決定によってScylla族のAutonomous Territoryに戻されてしまった。王位継承権も放棄させられて。
それ以降も、Sauron KingdomがSauron Duchyに変わってもScylla族の自治権は認められたが、Autonomous Territoryを出る事も禁じられてしまった。
存在を認めるが、それ以上は認めない。そんな態度だったそうだ。
「お蔭でAutonomous Territoryに外から来るのは許可証を持ってる商人の隊商と、依頼を受けたadventurer、あと視察に来るcivil officialぐらいでね。時々そのまま残ってくれる人も居るけど、そこそこ不自由してるよ」
『そんなっ、Sauron領ではVida信仰が盛んなのではないのですか!?』
「また偉い人がAlda信仰に被れたの?」
shockを受けた-sama子のPrincess Leviaと、首を傾げるPauvinaにPeriveilは「まあ、Vida信仰にも色々あるからね」と答えた。
「中にはAlda程じゃないが、ScyllaやLamiaなんかのmonstersのbloodが混じっているraceを差別する宗派もあるのさ。まあ、急に態度が変わったのは宗教絡みじゃなくて政治的な理由らしいって、あたしがchildの頃当時の長が話してくれた気がするね」
二代目の国王が即位した当時、彼の有力な支持者が前王の寿命が長いScyllaの姫がRoyal Palaceで長くinfluenceを持つ事を嫌ったからだとか、そんな事情だった気がする。
二代目の国王は腹違いのImoutoとその一族を冷遇するのは本意ではないと、その証拠として当時は色々Autonomous Territoryを援助していたが、三代目以降はそのまま距離が開いていったらしい。
Coup d'étatや政変が起これば初代国王のbloodを引くScyllaを担ぎ出そう、逆にそれを危惧するあまり暗殺しよう、等の動きもあったかもしれないが、Sauron Kingdomの治世はstabilityしていた。Amid EmpireというGiantな敵国が誕生し、KingdomからOrbaum Elective KingdomのDuchyに変わっても、為政者の代替わり自体は円滑に行われてきた。
今はEmpireに占領されてしまったが、何百年も前の国王のbloodlineに誰も価値を見出していないため、扱いは変わっていない。
「それに、ボク達にとってもお婿-san探し以外では悪くない待遇だったから」
「閉じ込められたのに、悪くないの?」
聞き返すPauvinaにPrivelは大きく頷いた。
「うん、閉じ込められているお蔭で不自由だけど、何百年も平和だったからね」
Autonomous Territoryから出る事を厳しく制限されたScylla族だが、代わりに彼女達は徴兵の対象にされなかった。Sauron Duchy軍がAmid Empireの侵略軍と戦っている間も、のんびりと稲作に励みcrocodileや魚を獲って暮らしてきたのだ。
戦時ではやや税が重くなるが、逆にいうと負担といえばそれぐらい。働き手を取られないので、何時もよりやや多めに狩やFishingで獲物を取ればそれで済む。
Scylla達から見ると忙しないHuman社会と関わらずに済むし、税さえ払っていれば昔と違って集落に攻め込まれる事も無いので丁度良かったのだ。
『ええっと、外の社会に出てみたいとか、そんな事を考えたりは?』
「いや、あんまり。話には聞いてるけど、Human Sizeの町って不便そうじゃん?」
「興味はあるけど、苦労してまで行く程じゃないかなって」
『あの人も将来はこの自治領にboneを埋めるつもりだって……て、これ秘密だったっ!』
このように、あまり外に関心を持たなかったらしい。どうやら、Scylla族は全体的にslow lifeを好む傾向があるraceの-samaだ。
Sauron DuchyとScylla族Autonomous Territoryは都会の大家と店子の-samaな、ドライな関係が続いていたため、Amid Empireに占領されても「隣人の為に戦おう!」なんて気運は全く無いらしい。
Vandalieuが疑問に思った、何処か他人事のような態度もそれが理由だ。Periveil達からすると、自分達に火の粉がかからないなら誰がSauron領を支配しようが構わないのだ。
因みに、以上の事情をSauron Duchy出身のKasim達元cultivation villageの面々は知らなかった。彼らは小さな村の出身で、領内にScylla族のAutonomous Territoryがある事は知っていても、Sauron DuchyとScylla族の歴史的経緯までは知らなかったのだ。
町の図書館で歴史書を研究すれば別だったろうが、Kasim達がadventurerに成って都市に一時滞在していたのは、難民と成ってHartner Duchyに逃げ込んだ後の話だ。
「最近はResistanceの人達が良く来るけどね。一緒に戦ってくれとか、食料や物資を援助して欲しいって」
ただ、Scylla族としてはやはり自治権を保証してくれた長い実績のあるSauron Duke 家の方が為政者としては望ましいので、Resistanceとも交渉は持っているようだが。
「こっそり食料や物資を援助したり、Autonomous Territoryの中を移動したり隠れ家を作るのを黙認するぐらいは良いんだけど、参戦は嫌っていうのが、あたしや他の集落の長の意見なのよ。
一応義理が無い訳じゃないし、同じVida believerの頼みだけど、一族の者を危険に晒して勝ったとしても、あたし達の利益は少なそうだし。
まあ、今Vandalieu -kunが調べてくれてる事件のせいで占領軍の言う事は信用できないって言いだす長も居るし、あたしも迷ってるけど」
「あの、kaa-san? そこまで話しちゃっていいの? ボクも初めて聞く話だし――」
『私とPauvina -chanも居ますし、部外者に聞かせるのは拙い話ですよね?』
ペラペラと重要情報を話すPeriveilに、最初は興味深そうに聞いていたPrivelとPrincess Leviaが、思わずそう質問する。
しかし Periveilは涼しい顔で、とんでもない事を言った。
「良いじゃないか、あのVandalieu -kunはPrivelの婿に成るんだし、そうしたらみんな身内さ」
「な、なんでそうなるの!?」
『陛下がPrivel -sanの婿ですか!?』
驚くPrivelとPrincess LeviaにPeriveilは「いや、だって求婚の儀式したんだろ?」と聞き返した。
「それはそうだけどっ、あの子まだchildだしっ!」
「もしかしてShrine Maiden役の誓いを忘れたのかい? 求婚の儀式を必ず果たすってMerrebeveilに誓っただろう」
「そうだったっ!」
どうやら、宗教的な理由でPrivelはあの求婚の儀式で決まった相手を必ず婿にしなければならないらしい。
「Van、ここに住まないよ。時々来る事は出来るけど。後Vanの事好きな人多いよ?」
「時々来てくれるなら問題無いよ。HumanやBeast raceと違って、あたし達Scyllaの結婚はchildが生まれて十年くらいで区切りをつけるからね。後、妻や夫の数も決まってないからこっちは問題無いよ」
Scyllaはfemaleだけのraceなので、夫とは必ずraceが異なる。すると当然寿命も異なる。なのでScylla族の結婚はchildが生まれてある程度大きくなるまでで区切る事に成っている。
更に常にScyllaと同じ人数の夫Candidateが居る訳ではないので、妻や夫の数は特に決められていない。当人達次第とされている。
ただ基本的に夫の数が妻より多かった事は無いので、実質的に一夫多妻制である。
更に区切りをつけると言っても情が通じた相手なので、結果的にどちらかが死ぬまで添い遂げる事の方が多い。逆に、Autonomous Territoryに迷い込んだ旅人が数日だけScyllaと通じて再び旅だったという事も何度かあったそうだ。
そうScyllaの結婚観を説明し終えたPeriveilだったが、それが終わるとPauvinaとLeviaに手を合わせて拝むようにして言った。
「そう言う訳だから何とかならない?」
「良いよ」
『問題ありませんよ』
そしてあっさりnod PauvinaとPrincess Levia。これには逆にPeriveil達が驚いた。
「えっ? 良いのかい? マジで?」
「ねぇっ、別にどうしてもあの子を婿にしないとダメって訳じゃなくて、ダメならMerrebeveilに何日か……maybe一月以上だけど、祈祷して許してもらえばそれで大丈夫なんだけど……」
『安請け合いして良いの? あの子、アタシのあの人と同じくらいモテそうに見えるんだけど。何か変なオーラ出てる感じで』
聞き返す三人に、PauvinaとPrincess Leviaは「no problem」と再び答えた。
現時点でVandalieuは一夫多妻制が決まったも同然なので、そこにPrivel一人が加わっても大して変わらないのだ。Scyllaの結婚観もGhoul同-samaかなり緩いので、諍いに成る事も無いだろうし。
EleonoraとBellmondは意見があるかもしれないが、結局反対はしないだろう。UndeadのRitaとSalireも反対はしないはずだ。彼女達の目には常日頃Vandalieuの周囲に擦り寄るcountlessの霊の姿が見えているのだし。
(それに、この集落の長のPeriveil -sanとblood縁に成る事は陛下にとってplusの筈!)
そしてPrincess Leviaはそう打算も働かせていた。政治に疎い彼女だが、偶にはこれぐらい考えるのだ。
「じゃあ、問題無いねっ!」
「えええっ!? と、とりあえず本人にも確認しようよ!」
『何々? あの子に何か不満でもあるの、Privel? 将来はあの人と同じくらい良い男に成るよ、きっと』
「Orbia -san、『あの人』について教えてくれないと何の保証にもならないって。まあ、後何年かしたら……」
Privel達生きているScyllaも霊のOrbia程ではないが、【Demon Path Enticement】のimpactを受けている。だからPrivelも満更でもない-sama子だった。どの道、誰かを婿にする予定ではあったのだし。
『でも、陛下はDhampirですが大丈夫ですか? 今、Amid Empireと交渉中なんですよね。後、何年かくらいではまだPrivel -sanより幼いappearanceのままかもしれませんよ』
Autonomous Territoryが今交渉している占領軍が属するEmpireでは、DhampirはUndeadの一種として扱われているので討伐対象である。
「Dhampirか。知られたら占領軍が煩くなるだろうけど……知られなければ良いから、秘密にすればいいか。それに今すぐじゃなくて、何年か後の話だし」
しかし別に構わないらしい。
「寿命にしても、Humanの数倍ぐらいなら寧ろ丁度良いじゃないか。あたしら、四百年生きるし」
『いえ、陛下はDark Elfとのハーフですが』
「あー、問題無い問題無いDark Elfとの……Dark Elf!?」
Princess Leviaがそれを気にして確認を取ると、Periveil達はギョッとして驚いた。
「Van -kunの片親ってDark Elfだったの!? ボク、Beast raceかGiant raceのbloodが混じってるHumanとのDhampirだと思ってた、体も小さいし獣の耳とtailも無いし」
『アタシもDark ElfとのDhampirだとは思わなかったよ。初めて見た』
どうやら、PrivelとPeriveilは、VandalieuがDark ElfのDhampirだとは思わなかったらしい。
あのabnormalな肌の白さで、気が付けというのが無理ではあるが。
HumanとのDhampirだと寿命は三百ageから五百ageでScyllaと近い。しかし、千年を生きるDark ElfとのDhampirだと、三千年から五千年。差は圧倒的である。
「Dark Elfか~。まあ、良いんじゃない?」
「そうだね」
だが、結局あまり気にならないらしい。
「種籾やカモやHuge Capivaraの番だけで、Orbiaの仇を見つけてくれるって坊やをそれだけの理由で嫌ったら、それこそVidaとMerrebeveilから罰を当てられちまうからね。
Privel共々Orbiaをよろしく頼むよ」
「うん、任せて!」
『ちょ、ちょっとっ! 族長、Pauvina -chanっ、アタシはあの人の無事を確認したらReincarnationの環に還るってばっ!』
「Orbia -san、あの子にLevia -sanと同じようにTamerされたんじゃないの? だったら一緒に居ようよ~」
「普通だったらあたしもReincarnationの環に還る事を勧めるけど、Levia -sanと同じようなUndeadに成れるなら大丈夫さ。残っちゃえ残っちゃえ」
『そんな気軽に~っ、だからアタシには心に決めた人が居るんだってっ』
『あの、Orbia -san、別に陛下にTamerされた人は皆陛下のloverやLoverに成らなければならない訳じゃありませんからね』
そんなガールズトークで盛り上がっていると、外から「長、良いですか?」と声をかける者が居た。
「今来客中だから、そこから用件を言いな」
瞬間的に長の顔に成ったPeriveilに、外から声をかけて来た者は幾分躊躇った後「明日、客が来るそうです」と答えた。
「お客-san? 占領軍の人だったら、あたし達それまでに出てくけど――」
「いんや、ただ『客』って言った時は、Resistanceの事さ」
Vandalieuが腰を抜かしたGuard Scyllaの二人を【Telekinesis】で運びながら帰って来たのは、それからすぐだった。
・Monster explanation::Scylla
『Goddess of Life and Love』Vidaとmonsters(具体的なrecordは残されていない)の間に生まれた、美女の上半身とoctopusのlower bodyを持つrace。
他のappearance的特徴として、緑色の髪や瞳を持つ個体が多い。
appearance通りunderwaterに適応したraceでMerfolkほどではないが水辺を好み、池や湖、沼地、川辺で暮らす事を好む。ただ好むというだけで、見た目以上にDryingに強い。
その生態からLizardmanとはHuman以上に領土を争う事が多い。
素のRankは3で、集落単位で暮らしている群れにはほぼ必ずRank5以上の長が存在する。
主なWeapon Equipmentはlower bodyのtentacleで、【Unarmed Fighting Technique】と【Whip Technique】のskillを習得している事が多い。また生まれつき【Mysterious Strength】skillを獲得しているので、上半身の細腕も見た目にそぐわぬ腕力を秘めている。
tentacleの先端や上半身の指からoctopusの-samaに墨を出す事が出来、それを目潰しに使用してくる事がある。
またその出自の為か、生命attributeやWater-Attribute、土attributeのmagicを習得している者が多い。
Scyllaと戦う時は水辺が戦場に成りやすい為、Rank以上の強敵に成る場合が多い。
太古の時代は水辺で溺れている演技をして、助けようと水に飛び込んだ男を攫うmonstersとして恐れられていたが、それはScylla族に伝わる求愛の儀式で、彼女達から見れば歌とdanceで夫に成る男を誘っていただけだった事が研究者の間では知られている。
生息地として最大なのは、 Bahn Gaia continentのSauron Duchy(現在はAmid Empire占領下)の南端に位置するAutonomous Territoryだが、他にも小規模な集落が点在している。
因みにMythの時代、Scyllaの始祖やその娘達はtentacleの先端が狼や竜、蛇等の頭になっていたと当時の文献の写本には記されている。しかし現代ではこの記述を、Alda templeがVida's New Racesの一種であるScyllaに邪悪なimageを付けるための虚偽であるという説を支持する研究者が大多数である。
討伐証明は特殊な形をした尾bone。素材としては胆や上半身のboneがAlchemyの素材に、lower bodyのtentacleが食用に成る。又、ink sacsの墨がinkや染料の材料に成る。
ただし既にScyllaの大多数が陽気で人と交流できる理解力のある存在である事が知られているため、Amid Empire等、Reconciliation Faction以外のAlda templeの力が強い場所でなければ討伐依頼はまず出されない。