PauvinaとPrincess Leviaを置いて、耳に届いたscreechの主の元に急いだVandalieuが見つけたのは川で溺れているらしい、Earthではまず見ない明るいグリーンブロンドのBishoujoだった。
「きゃーっ、きゃーっ、きゃぁぁぁ~♪」
screech(?)を上げながら、両腕でばしゃばしゃと水面を叩いている。その周りには、危険なmonstersや殺人犯らしい妖しげな人shadowは存在しない。
ただ溺れそうになっているだけ……なのかもしれない?
「うーん?」
川岸の茂みから顔を出すような姿勢のまま、伸ばしたtongueをしまうのも忘れてVandalieuはBishoujoをじっと見つめた。
何故かと言うと、目の前の光景がとても奇妙だったからだ。
普通のSwimming自慢の人なら溺れかけているBishoujoを助けなければと、すぐ川に飛び込むかもしれない。
しかし、どう考えてもあのBishoujoが溺れかける訳が無いのだ。
まず、あのBishoujoは間違いなくScyllaだ。
溺れているBishoujoのlower bodyは水に隠れて見えないが、もうすぐ冬に成るこの時期、ScyllaのAutonomous Territory内でScyllaの集落近くを流れる川に、胸に布を巻いただけの半裸で入っている。状況証拠的には、もう断定して良いだろう。
lower bodyがoctopusのtentacleになっているのはcertainly、Merfolkほどunderwaterに適応していないが半日程度ならずっと潜りっぱなしでいられるraceだ。
certainly、Scyllaの中には泳ぎが苦手な人も居るかもしれない。それに川の増水や体調不良が重なれば、溺れる事だってあるだろう。
しかし、この川の流れは穏やかだ。今もBishoujoの横を、木の葉が緩やかに流れて行った。
「そして何より、俺の【Danger Sense: Death】に少しも反応しない」
それはBishoujoがVandalieuに対して無害である事と同時に、彼女が死ぬ危険性が今は全く無い事を表していた。
「それにscreechもよく聞けば、screechじゃないですし」
何故か歌う-samaな抑揚がある。
しかし、だとすると彼女は何でこんな所で溺れる演技なんてしているのかという疑問が生まれる。
Earthのfantasy作品では、Scyllaは溺れた演技をして助けようと近付いてきた者に襲い掛かるMonsterとして扱われる事がEarthではあったが、それだろうか?
でも、それにしてはKilling Intentは無さそうだ。
『それでそれで、行くの? それとも無視する?』
恐らくBishoujoの知り合いだろうOrbiaの霊に聞こうにも、彼女は何故かSuper Excitingと瞳を輝かせてVandalieuが何かするのを見守る姿勢だ。
「うーん、とりあえず声はかけましょうか」
助けを求めているようには見えないが、一応危険な殺人犯が辺りに居るかもしれないのだ。声ぐらいはかけた方が良いだろう。
濡れるのが嫌なので【Flight】で飛んで近付こうとして、magicの行使を察知されて敵と勘違いされたら面倒だと思ったVandalieuは、指先から伸ばした糸を【Thread-reeling】で足代わりに操って進む事にする。
見えない糸を足代わりにしている姿も異-samaだが、正面から見れば水面を歩いているように見えるだろう。
「きゃー♪ きゃあぁ~あ♪」
「もしもし、すみませんがちょっと良いですか?」
「きゃー……はへっ?」
声をかけられて、きょとんとした顔をVandalieuに向けて動きを止めるBishoujo。やはり、本当に溺れていた訳ではないらしい。
「な、何でこんな所にchildが、それも川を歩いて? そ、それよりも、あんた今、ボクに、近付いた!?」
そう言いながら、Bishoujoの表情と顔色が目まぐるしく変わる。前半は驚きから困惑に変わり、後半にかけて徐々に頬を赤く染めながら狼狽え始める。
余程動揺しているのか、彼女の周りにぐねぐねとoctopusに似たtentacleがのたうっている。
よく表情が変わる人だな、羨ましい。やっぱりScyllaだったのか。another worldにはボクっ娘が存在するのか。そんな事を思いながら-sama子を見ていたVandalieuは、彼女が落ち着く-sama子が無いので声をかけた。
「大丈夫ですか? 落ち着いてください、俺はあなたに対して何の悪意も持っていません」
それに対してBishoujoは頭を抱えてのけぞった。
「しかも声をかけられるとか!?」
どうしろと?
そう聞き返す前にVandalieuの胴体にtentacleが巻きつく。
「ちょっとこっち来て!」
そして川の辺まで連れて行かれたのだった。
「うあああああ……どーしよーどーしよーマジでどーしよぉ~。ボクは求愛の儀式の練習してただけなのにぃぃ」
川の辺で頭を抱えて懊悩しているScyllaのBishoujoによると、彼女が川でしていたのはScylla族に伝わる伝統的な求愛の儀式の練習だったらしい。
結婚を望むScyllaは、泳ぎながら歌とdanceで「誰か私と結婚してください」とappealする。
男はそのScyllaと結婚したければ、水に入ってScyllaに近付き声をかけるか抱きつく。
以上の手順を踏むと、プロポーズが成立するそうだ。
「なんとまあ……」
EarthではTrapとされている行動が求愛の儀式として採用されているとは思わず、驚くVandalieuだった。
(maybe、Zakkartや他のChampionから聞いた話をVidaや他の人がScyllaの始祖に伝えて、それが形を変えて残ったのかな?)
Scyllaを初めとした新raceを数多く生み出したGoddess Vidaだが、彼女も別に最初から生まれてくるraceのappearanceや内面をあらかじめdesignして産み出した訳ではない。
Demon Kingとの戦争で荒廃したworldを復興するために、強いraceを産み出そうとしただけだ。予想くらいはしただろうが、最初から肌の黒いElfや、lower bodyがoctopusのtentacleに成っているfemaleだけのraceを産もうと考えた訳ではないはず。
だから、結果的に産まれた各raceの始祖の姿から、かつてChampion達から聞いただろうEarthのMythやlegend、fantasy作品に登場する存在からnameを取ったのだろう。
それでScyllaはそう名付けられ、始祖に伝わった話が奇妙な求愛の儀式に形を変えたのだろう。
『今はそんなにしないけどね、この儀式。何でもずっと昔、本当に溺れてると勘違いした男が何人も出て、その後で揉めたらしいから。今じゃもう交際しているカップルとか、この娘みたいに祭の儀式としてするぐらい。
あたしとあの人もしなかったしね』
懊悩しているBishoujoからの説明を、Orbiaが補足する。
どうやらJapanで例えると交際の前に詩を贈り合う-samaなものらしい。
「教えてくれれば良かったのに」
知っていたら近付かずに離れた所から声をかけたのに。
『だって、Vida's Mikoなら言わなくても知ってると思ったのよ』
「だって気が付かなかったんだもんっ!」
Orbiaの霊が見えないBishoujoが、自分が言われたと思って反論する。しかし、言い終わると肩を落として深い溜め息をついた。
「はぁ……でもやっちゃったもんは仕方ないか。恥ずかしいからって、一人で練習していたボクが悪いんだし。
ボクはこの近くの集落のScyllaで、Privel。-kunは?」
「Vandalieuと言います」
『Privelは族長の十二番目の娘なんだよ。やったねっ、コネゲット!』
最初の悲劇的な雰囲気は何処に? そうOrbiaに突っ込みたい衝動を抑えてSelf introductionをする。
「Vandalieuか。じゃあVan -kun、お父-sanとおkaa-sanは何処? 求愛の儀式の事を説明しないと……」
「え? 事故って事でNullificationにならないんですか?」
「ならないの、ボクShrine Maidenだから。まあ、本当に結婚まで行かなくても良いんだけど、お祭りに協力して欲しいんだよ」
目撃者も居ないのだから、無かった事にすれば良いのにとVandalieuは思うが、Privelの立場上それは出来ないらしい。
「Shrine Maidenって言うのは、冬の誕生祭でKami-samaに求愛の儀式を捧げる役なの。それで、Shrine Maidenに選ばれたら相手を一人だけ選んで求愛の儀式をするんだけど……二人以上の相手を選んじゃいけない決まりなんだよね」
まさかこんな所をchildが通りかかるなんてと、Privelは溜め息を付く。
「ボクは……ある事情で急にShrine Maidenに決まって、まだ相手の人を選んでなかったからまだ何とかなるけど……-kun、男の子だよね? 結構ゴツゴツしたnameだし」
「男の子ですね」
「じゃあ、ダメだ。-kunのおkaa-sanたちに説明して、儀式に協力してくれるようお願いしないと。それでダメならボクのkaa-sanに事情を説明して、女Kami-sama達に謝ってShrine Maidenを他の子に交代して貰うけど」
信仰的な問題らしい。本来のVida信仰には儀式的な物は殆ど無いそうだが、集落の結束力を高める為等の理由で考案されたのかもしれない。
「あれ? でも他の集落でも-kunみたいに白い髪の子って居たかな? -kun、何処から来たの?」
ふとVandalieuに見覚えが無い事に気が付いて、しげしげと彼を見つめるPrivel。
『Privelがあたしの代わりにShrine Maidenに成ったんだ。originallyあたしと同じCandidateだったもんね』
彼女が急にShrine Maidenに成った事情は、本来Shrine Maidenに指名されていたOrbiaが殺されたかららしい。
「分かりました。協力します」
Earthでは宗教的な事に関わっていなかったVandalieuだが、現世では『Vida's Miko』だ。思いっきり宗教関係者である。
そうである以上、同じVidaを信仰するPrivelとScylla達に協力するべきだろう。Orbiaも喜んでくれそうであるし。
それに、Scylla族の好感度は種籾を分けてもらうためにも稼いでおきたい。
「えっ、良いの? ありがとう! でもまずご両親に説明しないと」
「大丈夫です、理解のあるkaa-sanなので」
念のためにDarciaが宿っているremainsはキャンプ地に置いて来ている。今はRita達が守っているはずだ。この場には居ないが、maybe大丈夫だろう。
「Van~」
そうこうしていると、Pauvinaの声が聞こえてきた。
「うん? 友達……だよ、ね?」
聞こえてきた幼い声にそちらを向いたPrivelが、そのまま硬直した。
金をそのまま使った-samaなブロンドの、見た目は八age前後のShoujo。ただし、身長は約二meter半ば近く。しかも、用心の為か片手にはBrown Bearも殴り殺せる鋼鉄製のMaceが握られている。
「Scylla -san見つけたの? 凄いね、Vanっ」
ニコニコと無evilなSmiling Faceを浮かべながら、ばしゃばしゃと川を歩いて渡るPauvina。どうやら、Princess Leviaは姿を消しているようだ。
「Imouto的存在のPauvinaです」
「そ、そう、随分大きいImoutoだね。Beast raceとGiant raceのハーフかな?
やあっ、ボクはPrivel。よろしくね」
Pauvinaの金髪から見える三角形の耳に気が付いてそう見当を付けるPrivelだが、流石にHalf-Noble Orcだとは気が付かない。……歴史上Pauvina以外存在しないだろうraceなので、気が付かなくて当たり前だが。
「よろしくお願いしますっ。Van、Orbiaお姉-sanの事は話した?」
「Orbiaお姉-san? なんで-kun達がそのnameを? Orbia -sanは十日前に……」
PauvinaがOrbiaの事を口にしてしまうが、Orbia本人が『後はあたしが説明するからさ、magicかけて』と言っている。
確かに口下手な自分が説明するよりも良いかもしれない。それに生前からの知り合いなら大丈夫だろうと、VandalieuはOrbiaに【Visualization】を使った。
『Privel、ごめんね、あたしが死んじゃったせいで迷惑かけちゃって』
虚空から浮き出る-samaに姿を現すOrbiaに、Privelは目を見張った。そして、瞳に涙を浮かべると――
「お、Orbiaさ~んっ!」
感極まって、Orbiaの胸に飛び込もうとした。
『ちょおっ!?』
しかし、Orbiaは【Visualization】のmagicで普通の人にも姿が見える-samaになっただけのconditionだ。
実体はない。
結果、PrivelはOrbiaをthrust抜けて後ろに居たVandalieuにtackleするような形で川に落ちたのだった。
(……ラッキースケベって、ラッキーじゃないな)
Privelに押し潰される形で川に落ちたVandalieuは、しみじみとそう思った。
決して大柄ではない、どちらかというと小柄なPrivelだがそれは上半身だけの話だ。
lower bodyは根元から先端まで三meterは越える太いtentacleが八本生えているので……彼女の体重は百キロを超えているのだ。
ひぃひぃと情けない-sama子で、Resistanceの男女が走っていた。
「クソっ、もうResistanceなんてやってられるかっ!」
「Haj兄貴が言い出したんじゃないかっ、Resistanceを名乗れば飯が食えるって!」
「うるせぇっ! お前らだって反対しなかったろうが!」
accurateには、Resistanceを詐称していた男女が走っていた。
彼らは故国の為に侵略者と戦う崇高な志を持つ若者達では無く、単に真面な職にありつけず食いっぱぐれた若者達だった。
adventurerをやろうにも、食って行けるDClass以上に成れる自信も度胸も、自分を根気強く鍛えるpatience力も無い。
だからといって、大それた犯罪に手を染める程自暴自棄にもなれない。
そんな時Resistanceと名乗れば、村や町で食料を援助してもらえるという話が耳に入った。
彼らはそれに飛びついた。実際にAmid EmpireとMirg Shield Nationの占領軍と戦おうなんて、無謀な事はしない。ただ、幾つかの村や町をこっそり巡って、支援者にResistanceと名乗って少々援助して貰うだけだ。
実際に抵抗運動をしている訳じゃないから占領軍に目を付けられる事は無いだろうし、村人から無理に奪う訳じゃないからAdventurer’s Guildに討伐依頼が出される事も無い。
儲けは少ないが、危険は本物のResistanceと出くわさないよう気を付けていれば良いだけの、楽な商売だ。
つい一時間前まではそう思っていた。
彼らの考えは甘かった。占領軍の何とかってNoble率いるResistance討伐隊に見つかってしまったのだ。
討伐隊はResistanceが今までどんな事をしてきたのか、軍に与えた具体的な損害の大きさ、そんな事は事前に調べない。
Resistanceと名乗る連中を狩り出し、狩り出してから調べれば良い。
亡きSauron DukeのIllegitimate Childとその弟が率いる『新生Sauron Duke軍』や、『Liberating Princess Knight』率いる『Sauron Liberation Front』等の有名どころならin any case、幾つも存在している無名のResistance organizationに時間をかけるつもりは無いのだろう。
「ちくしょうっ、ベンやBigスがやられたっ! ターミも……あんたのせいだよっ!」
「俺のせいかっ!? ミーチャっ、お前だって二束三文でbody partを売るようなProstituteに落ちずに済むって、喜んでただろうが!」
「煩いっ、今は逃げるんだよっ! 少しでも遠くに!」
討伐隊は彼等偽Resistanceを待ち伏せして、三分の一程を弓矢で倒した。彼らは抵抗する事も仲間を助ける事も出来ずに逃げだし、今に至る。
背後に討伐隊の追手のsignは無いが、突然現れるのではないかというhorrorが止められず、彼らは足を止める事が出来なかった。
しかし限界はすぐに来た。heartは弾けそうだし、呼吸は荒く、足は熱く痛む。一人が堪らず立ち止まると、それを合図にしたように皆立ち止まって座り込んだ。
暫く、彼らが呼吸する息遣いだけが山を満たした。日差しは冬が近いのに温かだが、それに和む余裕は彼等に無い。
「に、逃げるって、何処へ?」
呼吸を整えた仲間にそう尋ねられ、ここまで夢中に逃げてきたHaj兄貴と呼ばれた男は顔をくしゃくしゃにした。
「ちくしょうっ! Resistanceなんてやらなけりゃあ、こんな事には――」
『れじすたんす?』
「っ!?」
突然聞こえた聞き覚えの無い声に驚いて顔を上げると、茂みから上半身を覗かせた半裸の美女がこちらを見下ろしていた。
(あれは、Scyllaっ!?)
Hajは、美女の髪と瞳の色が緑である事から彼女のraceをScyllaだと見てとった。
彼はScyllaの髪や瞳は緑色が多い事を知っていたのだ。それに冬の近いこの時期、目の前の美女のように半裸で森を出歩くのは、Scyllaぐらいだ。
(そう言えば、ScyllaのAutonomous Territoryが近かったな。何時の間にか入ってたのか。そうとなれば……)
「ああ、そうだっ、俺達はResistanceだ! 追われてるんだっ、匿ってくれ!」
「そうなんだよっ、助けてっ!」
「頼むっ、少しの間だけで良いっ、一晩だけでも!」
目の前に現れた希望の蜘蛛の糸を掴もうと、Resistanceの芝居を再開するHaj達。Scyllaの集落に逃げ込み、追って来ているかもしれない討伐隊から身を隠そうと企んでいるのだ。
Scyllaの女は暫くHaj達の-sama子を虚ろな表情で眺めた後、もったりとした口調で応えた。
『れじすたん、す、たすける』
その返答に、Haj達の顔が希望に輝く。
「ああ、ありがとうっ、あんたは俺達の命の恩人っ、Goddessさ……ま……?」
Hajの見ている前で、バキバキと茂みが折れる。Scyllaの美女の上半身が、近付いてくる。
ただ、上半身に続くはずのlower bodyはoctopusのtentacleではなく丸太よりも太い大蛇のものだった。
「ら、Lamia? 違うっ、LamiaでもScyllaでもねぇっ!?」
一瞬大蛇のlower bodyを持つVida's New Racesと思ったHajだったが、すぐに自分がとんでもない勘違いをしたと気が付いた。
美女のlower bodyは、更に太い蛇のbody partに繋がっていたのだ。そして、その根元に繋がっているのは、美女のlower bodyだけではなかった。
耳の尖ったDark Elfの、脇腹にエラのあるMerfolkの、両腕が翼に成っている Harpyの、額にcompound eyesがあるArachneの、小柄なDwarfの、背中に翼が生えたRyuujinと肌が青紫色のMajinの、鬣を伸ばしたCentaurの、容姿だけ見れば美女と称えられるべき女達の上半身が、蛇の首に繋げられていた。
「ひゅ、ひゅ、HydraのVariantだぁぁっ!?」
accurateには、切断した頭部の代わりにraceの異なる美女九人の上半身を縫い合わせて作られた、Hydra Zombieなのだが、そんな事はHaj達にはどうでもいい事だ。
『『『れじすたんす~♪』』』
重要なのは、目の前の存在が自分達ではどうにもならないmonsterである事だけだ。
「に、逃げろぉっ!」
謳う三人(三本?)の美女と、無言のまま迫る他の六人の美女に対して叫んで、一目散に逃げ出そうとするHaj達だったが、ついさっき限界以上にEnduranceを消費したばかりだ。走るどころか、歩くだけでも精一杯な者が殆どだ。
「ぎやあ゛あ゛っ!」
そこに何かが連続して弾ける-samaな音と、耳をふさぎたくなるような断末魔のscreechが上がった。
驚いて足を止め、Haj達が上を見上げると……そこには異-samaに大きな手足をして、背中からはepidermisの翼を、腰からは先端に"poisonous needle"を生やした蛇のtailを伸ばした肉感的な美女が飛んでいた。
片手に下げた見覚えの無い濃い緑色の服を着た男が、バヂバヂと音を立てながら白い煙を上げている。
「ひ、ひいぃ……お、おかあちゃぁぁん……」
horrorのあまりへたり込んで涙を流すHaj。他の偽Resistance達も、膝から崩れ落ちる-samaにして倒れ込んだり、尻餅をついた姿勢のままバタバタと逃げようと手足を動かしている。
『れじ……ずだ……?』
『『『れじすたんす~♪』』』
『だずげ、る゛ぅ?』
『かくま、う』『おわれ』『おわれてる』『かく、まう』
YamataとRapiéçageは、たどたどしい言葉とHaj達には理解不可能な仕草で会話を成立させると、Haj達を捕まえ始めた。
「ひやぁぁぁぁっ!」
「助けてぇぇぇっ!」
「死にたくないっ、死にたくないっ。お願い殺さないでくれよぉぉ……」
『だすけ、るぅっ』
『か、くまう』『かくま?』『かくっ』『まう……まう……』
泣きながらscreechを上げて命乞いをするHaj達をそれぞれ捕まえて、周辺の警戒に出ていた二人はキャンプ地に帰ったのだった。
・Name: Yamata
・Rank: 6
・Race: Patchwork Hydra Zombie
・Level: 0
・Passive skills
Dark Vision
Mysterious Strength:3Lv
Deadly Venom Secretion (Fangs):6Lv
Magic Resistance:1Lv
Underwater Adaptation
Dragon Scale:1Lv
Rapid Regeneration:7Lv
Body Extension (Neck):3Lv
・Active skills
Singing:3Lv
Dancing:3Lv
Parallel Thought Processing:4Lv
Scream:3Lv
・Monster explanation::Patchwork Hydra Zombie
九本の首を持つHydraのVariantの死体の頭部を切り落とし、異なるraceの美女の上半身を繋ぎ合わせて作ったTerneciaの芸術作品(Zombie)。
その造形は見事で、異形の美を体現している。
ただ、その戦闘力は通常のHydraよりも大幅に落ちている。Weapon Equipmentになるべき毒fangsが無く、上半身の殆どはDefense Powerが低いからだ。
Rankは6だが、実際にはRank4のmonstersと互角程度の力しかない。
ただ、originally Terneciaは動くインテリアとしてこのUndeadを作りだしたので、それで問題無かったのだろう。
人造であるため当然だが、Lambdaでは未発見のUndead。Terneciaと同じ悪趣味の持ち主が存在しない限り、同一の個体は存在しないだろう。
VandalieuがTerneciaの隠れ家から回収した後は、改造Surgeryなどを繰り返した結果、それぞれの上半身の口を使って言葉を発し、犬歯を毒fangsに変え、腕を動かして物を持つ事等が出来るようになった。
逆に言うと、Surgeryを受ける前はそれすら出来なかったのである。