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Side Chapter 7: 遠い所から彼を想う

 連行された先で彼女のために作られた特殊な監房を見た【Metamorph】、Shihouin Mariは小さく笑った。

Order-madeで一room作ってくれるなんて、太っ腹ね」

 棘も皮肉気な響きも無い口調で話す彼女だが、body partの中には特殊なマイクロチップと爆薬が埋め込まれている。


 どんな姿にもなれるMariを、万が一にも逃がさないための措置だ。

「……力が及ばず、済まない」

 Amemiya Hirotoは、Mariの言葉には応えず謝罪した。その苦しげな顔は、まるで彼の方が罪人のように見える。彼とMariに同行している他のReincarnatorも同じ-samaな表情をしていた。


 しかし MariはそんなHirotoにやれやれと小さく苦笑いを浮かべた。

「謝る事じゃないわよ。あたしを殺さずに済むように頑張ってくれた事は解ってるから」

 Mariは同じReincarnatorであるKaidou Kanataを殺した。terroristに与した訳ではないが利用し、偽情報で政府や仲間を翻弄して、標的のKanataが一人でmissionに就くように仕向けた。


 Kaidou Kanataの死は、Reincarnator達に大きな衝撃を与えた。それまで災害rescueterroristの制圧等でReincarnator達は人の死には……災害の被害に遭った一般人やterrorist以外にも、一緒に活動していたallyの軍人や助けるはずだった要rescue者の死にも接している。

 だが、やはり同じReincarnatorであるKanataの死は別格の衝撃だった。


 神から新しい人生を与えられ、Earthからanother worldOrigin』にreincarnationし、magicaptitudeや特殊な「Cheat Ability」を与えられた自分達でも死ぬし、殺せると言う現実を直視させられたのだ。


 そして、それが切掛けになりそれまで『Bravers』と言う一つのorganizationに集まっていたReincarnator達の間に、罅が入った。

 いや、accurateには罅は見えないだけで在ったのだ。MariKanataを殺したのは、その罅が無視できる限界を超えただけの事だ。


 だが仲間の中にはそれらを全てMariのせいだと考える者も存在する。各国の政府や軍も、姿形だけでは無く指紋やretina、静脈すら対象そっくりに化ける事が出来る『Metamorph』の力を持つMariを、危険視している。

 同時に、彼女を庇い抹殺では無く監禁する事に止めるよう主張したHirotoに不信感を覚える-samaになった者も。


-kunが殺したのはKaidou一人だ。大統領のお嬢-sanも、保護される-samaにしていた。動機も理解できる。初犯だし、本来なら死刑ではなく悪くても終身刑、国によっては有期刑が妥当だ。

 そもそも、-kunKanataを殺した国は死刑制度を廃止している。都合とemotionsだけで-kunを抹殺するべきだなんて、selfishnessにも程があるだろう」


「相変わらず硬い考えね」

「柔らかいよりいい。少なくとも、外から見ても僕が何を考えているか分かり易いだろう」

 事務職まで含めると全員がEarthからのReincarnatorではないが、身内が多いBraversが対外的に信用されるためには国や国際社会のruleに忠実である事が必要だと言うのが、Hirotoの考えだった。


 Earth並の科学とEarthに無いmagicがあるOriginでも原理不明の力を持つReincarnator達は、何かあればミュータント扱いされる。実際、今もそう主張している団体が存在する。

 だからこそ自分達は社会のruleを順守すると言うポーズが必要なのだ。


「だがそう言っておきながら、僕はKanataの犯行に気がつかなかった。僕が謝っているのは、その事に関してだ」

「それこそ、自分の手で殺す前に相談しなかったあたしに謝る事でも無いわね」

 そう言いながら、Mariroomに入って行った。


 扉が閉まりMariの姿が見えなくなってから、Hiroto達は踵を返した。

「……あいつらの情報は?」

Murakami達は『The 8th Guidance』と合流した後の行方は分りません」

 Mariの護送に付き添っていた一人、Minami Asagiは口調こそ丁寧だが瞳に怒りを湛えて答えた。


 Murakami……Earthで高校InstructorだったMurakami Junpeiと言う名のReincarnatorは、彼も含めて十人のgroupBraversを離れ、何とterrorist groupと合流して姿を消してしまった。

 Rodcorteは「仲違いは納まった」と言ったが、当事者のHiroto達にとっては嵐の前の静けさでしかない。


「あいつ等、一体何を考えているのか……特にMurakamiは俺達の担任だったんですよ? 普通Instructorが生徒を扇動してterroristに加わりますか?」

「彼が-kun達の担任Instructorだったのは、もう三十年近く前だ」

 護送に加わっていたもう一人、【Oracle】のEndou KouyaAsagiにそう指摘した。しかしAsagiは彼の言葉に納得できないようだ。


「でもっ、俺達は仲間じゃないですか。それなのに裏切るような真似して……許せませんよ」

 AsagiEarthでは運動部の熱blood漢で仲間思いな少年で、全体主義的な考え方をする所がある学生だった。そして、Earthでの過去を引きずっている傾向が強い。

 今まではそれが良い方向に作用していた。Reincarnator達がanother worldでの新しい人生と、突然渡された強力な力に振り回されない-samaにするためには、『Earth』という共通する過去とそこでの経験という拠り所が必要だったのだ。


 だが、それを頼りにしすぎて見るべきものを見ていなかったからこそ起きたのが、今の問題だ。

Asagi、僕達はもうEarthで死んでから二十年……後数年で三十年に成る。それだけの時間が過ぎれば人だって変わる。それを僕達は考えるべきだった」

Hiroto -san、そりゃあEarthnewsでも、逮捕された犯人が『昔は良い奴だった』って同Class生に語られる事が在ったのは俺も知ってますけど、俺達は仲間――」


Kanataはその仲間の母親の臓器を闇で流したぞ」

「そりゃあ、そうですけど……それはあいつが誘惑にlose道を誤ったからじゃないっすか! 俺達は、犠牲になったTanaka達三人の分まで、戦わないといけないんですよっ! じゃないと、あいつらが浮かばれないじゃないですか!」


Asagi、気持ちは解るけれど……私達は前世のMemoryと妙なAbilityを持っているだけの、Humanだよ」

Kouya -san、あんた……何が言いたい?」

 熱くなるAsagiに冷や水をかけるようなKouyaの物言いに、Asagiが彼を睨みつける。


Murakamiin any case、僕達はもうOriginで生きている時間の方が長い。これからは、仲間だからと盲信するのは止めようと言う事だ。僕達は力を持っているけど、その前に一人のHumanでもある。誘惑に駆られたり……価値観が変わる事もある。そうKouyaは言いたいんだ。

 僕も、同意見だ」


「それは……Hiroto -sanの言いたい事も分りますけどねっ、俺は納得できませんよ!」

 そう言い捨てると、Asagiは足を止めたHiroto達を置いて足早に離れて行った。

 その逞しい背中を見送りながらHirotoは苦笑いを浮かべると、黙っていた他のReincarnatorに「悪いがあいつの愚痴の相手になってくれ」と言って、先に行くよう促す。


「あいつの方が余程石頭だと思うが、あれくらい変わらないと逆に助かる事も多いな」

「私も嫌いなわけではないよ。私達しか周りにいないと、事あるごとに『Earthでは』と言うのが面倒なだけで」

「確かに」

 残ったHirotoKouyaはそう言って笑い合うと、肩の力を抜いたまま話を続けた。


Murakami達の居場所は、【Oracle】で分からないのか?」

 KouyaCheat AbilityOracle】は、対外的にはまるで神からのOracleや預言の-samaに考えられている。しかし、実際には万能とは言えない力だ。

 Kouyaの【Oracle】は、彼が求めた結果に至るための方法を『何か』が答えるだけだ。


 その『何か』を、Kouyaは最初神だと考えていた。だが、経験から神の-samaな全知全能の存在ではない事に気がついた。

 彼が行った質問の幾つかに、『その目的は達成不可能だ』との答えが返って来たからだ。

 だから、【Oracle】で得られる答えは人類の集団無意識だとか、アカシックレコードだとか、そういった何かにaccessして、答えを得ているのだと考えていた。


 それによると、Hirotoの質問の答えは――。

「後暫く……具体的な期間は質問する度に違うから分からないが最短で三カ月、長くても三年後にはnewsで解るらしい」

「それは奴らが何かをしでかすって事か。それじゃあ、それを前もって防ぐ方法は?」


「……済まないが分からない。それも毎回変わるんだ。具体的に何をするのか分からないと、accurateな質問は出来ない」

 『Murakami達が行うテロを防ぐ』、『Murakami達が行う誘拐を防ぐ』、『Murakami達が行う麻薬取引を防ぐ』……どれもこれも別の質問である。

 大雑把に『Murakami達が犯す犯罪を防ぐ』だと、『一時間後Murakamiがガムをポイ捨てする前に捕まえる』と言う、微妙な答えが返ってくる。


 一応その時もガムのポイ捨てが犯罪になる国や地域のSatelliteや監視cameracheckしたが……certainly見つかるはずが無い。


Murakami達も私の【Oracle】について知っている。だから複数の犯罪計画を立てたり、ガムのポイ捨てなんかの軽犯罪を何処かでしたりして攪乱している」

「そうか。Ability以外で探すしかないな。出来れば、彼らを殺すような事は避けたいのだが……」

「奥-sanの為にもか」

「ああ。Earthに居た頃とは別人だと思えと言ったばかりだが、過去が消せないのも事実だ」


 不条理に断ち切られたEarthでの人生と、残してきたfamilyとの絆。そしてOriginで経験する不幸。

 それらが惜しければ惜しい程、辛ければ辛い程、Earthでの思い出は輝いて見える。

 仲間同士での殺し合いは、Hirotoの妻と成ったAmemiya Narumiには辛いだろう。


「……私は、-kunに話していない事がある」

 それをKouyaも知っているから、Hirotoにも今まで打ち明けられない事があった。

「何かを隠している事は薄々気がついていた。あの秘密研究所が被験者のUndead Transformationで壊滅した事件の、暫く後から」


 あの事件でworlddeath attributeと言う新しいattributeを知り、そして失った。Hirotoにとっても忘れられない事件だった。必要に迫られたとはいえ、Braversが災害や事故のrescueだけでは無く、今の-samaterroristや犯罪organizationと戦うようになる切掛けになった事件だ。


 しかしKouyaにとっては別の意味で忘れられない事件だった。


「あの後……皆で軍事訓練を受け始めた頃だ。私は『私達Reincarnatorが誰一人殺されずに済む方法』を尋ねた。

 答えは、『不可能。既に殺されている』だった」

 そしてHirotoにとっても益々忘れられない事件に成った。


「それは、本当か? MariKanataを殺すずっと前に……」

「その後、私はManaが切れる前に【Oracle】に質問したよ。その殺されたReincarnatorが誰なのか、殺した奴は誰なのか、知る方法は無いかと。

 『何処で誰に殺されたのか』は『あの研究所の事件ファイルを見ろ』とその番号を。『そのReincarnatorEarthで誰だったのか』は、『Naruse NarumiEarthで死ぬ前の話を聞けば解る』と言う答えを貰ったよ」


 Kouyaの告白は、Hiroto達にとって恐ろしい真実を明らかにする事だった。

「そうか、僕達はあの時点で……仲間に止めを刺していたのか」

「私はただ、『安全にUndeadを退治する方法』をOracleに聞いたつもりだったが……彼にとっては酷い裏切りだったろう」


 Amamiya Hirotoreincarnationする前にOriginへのreincarnationを終えていたKouya達には、何故彼ただ一人だけが合流せず、あの研究所で被験者になっていたのかは分からない。

 しかし、自分達が何故合流できたのかも「不思議なDestiny」というあやふやなものでしかない。


Amamiya Hiroto……彼もreincarnationしていたのか」

 Narumiを助けようとして先に死んだ少年。妻は、最初彼とAmemiya Hirotoを勘違いして接してきた。それが夫婦のなれ初めだったので、Hirotoも自分と似たnameの少年の事を覚えていた。


「だがKouya、あの時彼は既に――」

「分かっている。Undead Transformationしていた。既に死んでいて、危険な存在になっていた。元のHumanに戻す方法は無い。

 だから、私達に出来るせめてもの事は、彼を楽にしてやる事だけだった」

 少なくとも、OriginでのUndeadはそういう存在だ。周囲のManaを歪め、汚染するMonstrosityUndead Transformation直後はまだ人格を残しているケースも僅かだが、何時それらを無くして邪悪なmonsterに成るか分からない。


 人を生き返す方法が存在しないのに、Undeadを人に戻す方法があるはずがない。


 だからKouyaAmamiya Hirotoを殺させた事自体は後悔していないし、罪の意識もない。

「だが、私は彼を見つけられたはずなのに見つけられなかった。【Oracle】で、彼にどうすれば会えるのか質問するだけで良かったんだ。ただ……どういう訳か、それまでも仲間に関しては質問していたのに、Oracleは彼の存在を答えなかったけれど」

 それはKouyaが尋ねた仲間が、「Earthからreincarnationした、神からAbilityを貰った存在」と言う定義だったからだ。


 Amamiya Hirotoは、Earthからreincarnationしてきたが、Cheat Abilityも何も受け取っていない。だから『仲間』の範疇に入らなかった。


 罪悪感に苛まれているKouyaの肩に手を置いたHirotoは、「あまり思いつめないほうがいい」と言った。

「僕達はただのHumanだと言ったのは、-kunだ。【Oracle】も-kunも万能じゃない、自分を責めるな」

「だが……」

「彼は死んだ。もう会えないし、謝罪する事も彼から赦してもらう事も出来ない。僕達に出来る事は、彼の-samaな犠牲者を……Death-Attribute Magicの研究の犠牲者を出さない-samaにする事だけだ」


 現実問題、死者は生き返らない。話す事も何もできないから、直接謝罪する事も出来ない。

 遺族に賠償しようにも、OriginでのAmamiya Hirotoには親族も友人も存在しない。

 だから罪悪感を覚え贖罪の機会を求めるなら、Hirotoの言う-samaSelfが満足するまで何かをするしかない。


 『殺した人の分まで、人を救え』だ。


「……そうだな。彼を生き返せない以上、そうするしかない。-kunの奥-sanにはどうする?」

「黙っていてくれ。彼女を苦しめたくない」

「ああ、それが良い。話しても、彼にはもう会えない。なら、知らない方が良い。

 -kunに対しても言える事だったが……巻き込んで済まない。黙っているのは限界だった」


「気にするな。death attributeについて少しでも知る事が出来たのは、これからの戦いにも意味のある事だ」


 KouyaがもしOracleで「Amamiya Hirotoにもう一度会うには?」と質問していれば、「死後、Amamiya Hirotoだった存在に会える」と明確な答えがあり、それから自分達に「次」がある事をconjectureする事が出来たかもしれないが、彼らがそれを思いつく事は無かった。


「……そして、それを知ったからには何としても『The 8th Guidance』のmemberを捕まえたい、生きたままで。certainly諜報機関とは、違う理由で。Amamiya Hirotoが最後に助けた人達だからな」

 『The 8th Guidance』……それはあの秘密研究所でUndead TransformationしたAmamiya Hirotoが暴れた際に、彼は自分と同じ実験体にされていた人々を助けている。その元実験体たちが結成した犯罪organizationだ。


「あの時は事件の裏を知らず、彼らの保護を国際機関に任せてしまった。だが、今度こそ失敗はしない」

 ReincarnatorMurakami達が合流したThe 8th Guidancemember達は、保護されたはずの国際機関でも秘密裏に失われたdeath attributeの研究に利用された。彼らはそこから独力で脱出し、今もdeath attributeの研究を行おうとする機関やorganization相手にテロ行為を働くほか、幾つもの事件を引き起こしている。


 他の犯罪organizationとは全く異なる、半ばcult宗教の-samaな集団だ。そして彼らはDeath-Attribute Magicについて何かを知っていると、各organizationから狙われている。


「彼らを助ける方法はもう聞いてある。だけど、難しい」

「どんな答えだ?」

「……出来るだけ早くMurakami達を捕まえるか、殺す。それが答えだ。Murakami達は、『The 8th Guidance』に協力しているんじゃない。利用して、maybe裏切るつもりだ」


 想像以上に困難な答えに、Hirotoは眉間を抑えた。




 一柱の神が目を閉じたまま佇んでいた。

 その姿は年老いた男と青年、そして少年の三位一体。かと思えば、それぞれ分厚い書物を携えた三人の美女に変わる。


 神の名は『Magic God of Time and ArtsRicklentAldaVidaと同じ、原初のgiantから生まれた十一柱の神だ。

 彼ともう一柱の神は、AldaVida-samaに特定の姿や性別を持たない無性にして、無貌の神だった。

 その彼が目を開いてじっと見つめるのは、彼らが創りだしたworld Lambdaだ。


『預言は成就した。Arkは帰って来た』

Zakkartでは?』

 何時の間にか、Ricklentの前に四つの頭を持つ獅子が居た。


Zuruwarn、彼はArkでもある』

 異形の獅子の姿を取っているのは、『God of Space and CreationZuruwarn。彼は、spaceを司り、何処にでもいると同時に何処にも存在しない存在だ。


『確かに。彼はZakkartであり、Arkであり、Vandalieuであり、Transgressorである。

 我等の無謀な姉にして勇敢なImouto以外に、応えた者は?』

Vida以外に我の預言に応えられた者は少数』


『我らの激情にして愚か者に成りかけたbrothersは?』

Zantarkは、我と離れすぎている。不明』

『では愚直にして一途な新たなbrothersは?』

『彼は応えた。だが見つけられずに彷徨っている』


『そうか。では我らはこれからどうする? 我はTransgressorに媚びるつもりだが』

 そのZuruwarnの物言いに、初めてRicklentが表情を浮かべた。

 顔を顰め、苦笑いをする。


『媚びると言う表現は、使うべきではない。彼女も、Arkも望まない』

『では、汝は媚びないのか?』

『媚びぬ。Arkの目的に沿うよう協力し、機嫌を取るつもりだ』

『やはり媚びるのではないか』


『当然だ。彼はTransgressorなのだから』


 Zuruwarnは遥か昔、Demon Kingとの戦いで危機に陥ったLambdaを救うためにanother worldの住人を招く事を提案した。その時彼は、実は「Championを召喚しよう」とは一言も発していない

 彼は、『Transgressorを呼ぼう』と言ったのだ。


 異なるworldから招かれた、あらゆる領域を犯し掻き回し、新たな何かを創り出す存在。

 既存の秩序を打ち壊す破壊者にして、新たな秩序の誕生を促すChaos

 善を叫びながら悪を撒き、悪を掲げて善を成す者。


 それをZuruwarnTransgressorと評した。

 another worldの知識と常識、価値観を持つ故に、神である自分達にすら出来ない事を可能とする者達。彼はそれに賭けたのだ。

 そして、賭けは残念ながらこのままでは負ける。


 だからこそ、ArkでありZakkartであるTransgressorには頑張ってもらわなければならない。

 十万年前に続いて現在もworldを背負わせるとは、神でありながら不条理な事をしているとは思うが。


Transgressorは我々を敬ってはいない。我々のSubordinate Godが、Aldaに協力しているからだ』

 残ったGodsleaderであるAldaの下に、RicklentZuruwarnSubordinate God達は今も存在している。

worldを維持するための業務だけを行う、我々のSpirit Clone達だが……彼にただ一方的に理解を求めるのもまた不条理だ』


 『秒の神』、『分の神』、『時間の神』、『前の神』、『点の神』、『奥の神』、『後ろの神』と言った、時間やspaceの概念を支えattributeを支える役割を与えられたGodsで、実態は高度な人工知能に等しい。


 十万年前、AldaVidaのどちらが勝つにせよworldを維持しなければならないので、半ば以上眠っていたRicklentZuruwarnはそれらのSubordinate God達に戦いに一切かかわらない事を命じた。

 結果、中立を維持した彼等は後のMythには勝者であるAldaを支持したGodsの一員とされてしまった。


 TransgressorVandalieuから見ればRicklentZuruwarnも、決定的な敵では無いにしても、allyには思えないだろう。

 そしてこのまま裏で糸を引いている-samaな真似ばかりしていたら、敵と誤解されてしまうかもしれない。


 故に少々無理をしても彼に「自分達はallyだ」と知ってもらう必要がある。


『とは言っても、大した事は出来ないが。我らは力を失っている。特に我は、失ったconditionでやらねばならぬことが多い』

『大した事でなくても十分だ。彼自身が、大したことを成すだろう。我が見込んだ者とは言え。流石Ark

Zakkartでもあるがね。だが、それは同意。ZakkartArkが再現できなかったramenや味噌、醤油を彼は再現した。あの調子ならcurryも遠くはないだろう』


 Ricklentboneを抉り出すようにして、Zuruwarnは臓腑が弾けるような激痛を味わいながら、それぞれがVandalieuに『協力』した。


『活かせるかは、彼次第だが』

『彼次第だが、彼ならどちらにしても新しい存在を作るだろう』


 そしてZuruwarnは消え、RicklentはまたLambdaを見つめ続ける。


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