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Chapter 95: ファイエル

 肩を大きく上下させて荒い息をしながらも、Terneciaは麻薬のようにMentalを満たす解放感に「ケヒヒ」と笑い声を上げていた。その姿はVampireらしからぬものと化している。

 側頭部や額だけではなく、背中や腹、二の腕や手の甲、太腿や膝や脹脛からも捻じれ枝分かれしたが生えている。


「くふぅっ……見たかい? 味わったかい? これがDemon King Guduranissealedされていた一部……【Demon King's Horn】の力さ」

 Terneciaが何万年も前に手に入れた、Demon King Fragment。それがこのの正体だった。あらゆるmagic防御を穿ち、Adamantiteすら易々と切り裂くこの【Demon King's Horn】こそが彼女の切り札だった。


 同じくDemon King Fragmentをその身に宿すBirkyneGubamonと協力して、Heroic God 's Divine Protectionを得たHero達から逃げ延び、他のEvil God (M)を奉じるPure-breed Vampireとの戦いに勝ってきた。

 だが、それも今日までか。

「そうか、ふふ、あいつ等、あたしを裏切ったんだね。ああ、そうさ、あいつ等なんて必要ない。あたしはこんなに強いじゃないか。そうだよ、強いんだ。あいつ等なんて要らない。殺して、Demon King Fragmentを奪って、EmpireElective Kingdomに在る他のfragmentも――ぐっ!」

 未だに自分を助けに来ないBirkyne達にKilling Intentを滾らせたTerneciaだが、呻き声を上げて頭を抑えた。


(拙いっ、侵食がもう始まっている。早く抑えなければ……!)

 Demon King Fragmentは、持つ者に絶大な力を与える。それこそ、神とすら戦える程の力を。

 だが、その代償は大きい。Demon King GuduranisBodyfragmentは今も生きている。偽の宿主であるTerneciaMentalBodyを乗っ取り、revivalのために他のDemon King Fragmentを集めようとするのだ。


 そうでなくてもDemon King Fragmentが宿すGuduranisManaは、本来ならLambdaに存在しない性質を持っているので宿主を蝕む。

 その度合いは【Demon King Encroachmentskillの形でStatusに表示される。既にTerneciaの【Demon King Encroachment】のlevelは5。levelが上がれば上がるほどDemon King Fragmentを自在に使える-samaになるskillだが、逆に言えばその分Demon Kingに近付き、Mentalが侵されている証拠だ。


 すぐに気を静め、【Demon King's Horn】を抑え込もうとするTerneciaだが、彼女の周りで倒れていたHeinz達が立ち上がったのを見て中断を余儀なくされる。

「これが……Demon King Fragmentの力か」

Adamantiteの盾が穴だらけなんて、やってくれるよ」

 Heinz達はそれぞれ重傷を負っていたが、どれもこれも致命傷には届いていなかった。そしてその重傷も徐々に癒えていく。


「……やれやれ、あんた達の方がよっぽどVampireらしいね。何故今ので誰も死んでない?」

 DelizahAdamantiteの盾や、HeinzMythrilDragonscaleを合わせた鎧も【Demon King's Horn】は切り裂いた。普通なら幾らAClass adventurerでも一人くらい……特に軽装のEdgarJenniferは致命傷を負って然るべきだ。

 だが、現実は全員生存していて戦闘を続行しようとしている。


 目の前に居るのはAge of Gods Eraから生きるmonsterで、数多のGodsを倒したDemon King Fragmentを宿しているというのに、瞳に諦めの色は無い。

(まさかこいつ等の内誰かがあのJobを? いや、それならあたしはもっと追い詰められているはずだ。なら、精々素質を持つ奴が居る程度か)


「まあ、どうせ死ぬまで殺すだけだけどねぇ! 【Raging Spiral Throw】!」

 【Throwing Technique】の上Class Martial Artsの名を叫ぶと、Terneciaは何とbody partに生やした【Demon King's Horn】をProjectile Fireした!

「防ごうとしないで! 避けるか攻撃してください!」

 Daianaの警告の意味を理解して、Heinz達は迫りくるDemon King's Hornを避けるか、Weapon Equipmentを叩きつけ軌道を変える。


「俺達で隙を作るっ、【Million Slashes】!」

「行け、Heinz! 【Thousand Radiant Destructive Fists】」

 共に【-Transcend Limits-skill等をActivateさせたEdgarJenniferの上Class Martial Artsが、回転しながら迫るDemon King's Hornを弾き、叩き落とす。


「任せろ! 【Evil-destroying Radiant True Strike】」

 そしてChipurasを真っ二つにした時よりも激しく輝くMagic Swordの切っ先が、Terneciaに迫る。

「【Evil Wall】!」

 だが、Terneciabody partから再び【Demon King's Horn】が生える。


 【Demon King's Horn】はDragon等のboneとは違い、性質としては鹿や犀のに近い。鹿のが毎年生え変わるのと同じで、【Demon King's Horn】はTerneciaが望んだ場所に望んだ形で生える。

 彼女のslitが多く肌を露出した服装も、いざという時【Demon King's Horn】を使う時の為だ。


 曲がり枝分かれしながら生えたが絡まり、盾と化してHeinzMagic Swordと激突する。

「うおおおおおおおっ!」

「あああああああああっ!」

 【Demon King's Horn】を貫き、切っ先で穿とうとするHeinz。そうはさせじと、更に【Demon King's Horn】を生やして防御を固めるTernecia


(こいつかっ! やはりこいつが【Guider】だ!)

 選ばれた仲間だけでなく、数多の存在をGuiding者。Age of Gods EraBellwoodZakkartChampionが就いたのを除けば、この十万年でも両手の指で数えられる程の者しか就いていない。

 ある意味、Championの条件とされているJobだ。


 【Guider】の恐ろしさは、本人の強さだけではなく仲間やそのGuidanceを受けた者を際限無く引き上げる事だ。

 それはかつてChampion達のGuidanceを受けたTernecia本人が良く知っている。


「があああっ! 【Evil Wall】! 【Evil Armor】! 【Spiral Pulverizing Strike】! 【Light-crushing Dark Spear】!」

「くっ!?」

 連続で【Shield Technique】や【Armor Technique】、【Throwing Technique】に【Spear Technique】の上Class Martial ArtsActivateさせ力技でHeinzの攻撃を耐えきり、そして後退させたTerneciaは歯軋りをさせながら、【GuiderCandidateとその恩恵に与るだろう彼の仲間達を睨みつけた。


 Heinzも、こいつ等も、こいつ等が飼っているDhampirのガキも、何としても殺すべきだ。このまま放置して成長する隙を与えれば、自分達は成す術も無く狩り尽くされるかもしれない。

 今はまだTerneciaの方が強い。このまま押し切れば、七割以上の確率でHeinz達を殺せるだろう。


 だが――。


「クソっ、magicが使えりゃあ、もっとやりようがあるってのに!」

 上Class Martial Artsの連続Activateで頭痛を訴える頭でそんな事を考えるが、Demon King Fragmentが持つ謎のManaは、他のattribute magicとの相性が悪い。そのため、【Demon King's HornActivate中はTerneciamagicNo-Attribute Magic以外Activateできないのだ。

 普段ならそんな欠点は、Demon King Fragmentの力の前には意味を成さないのだが。


《【Demon King Encroachmentskilllevelが上がりました!》

「がひぎゃあっ!?」

 頭の中に声が響いたと同時に、【Demon King's Horn】の禍々しさが一層強くなる。激しい頭痛と霞む視界とは裏腹に痺れる-samaに広がる快感。Terneciaの危機感は極限まで高まった。


(このままじゃ、こいつ等を殺してもあたしがfragmentに乗っ取られちまう! ここは出直すしかない!)


「あんた達っ、必ず殺してやるから覚えておいで!」

「っ! 逃げる気だっ!」

「させるかぁっ!」

 逃げに転じたTerneciaを追おうとしたHeinz達だったが、再び彼女がProjectile Fireした【Demon King's Horn】に阻まれた。


 そして、Heinzへの対処を終わらせた時には、Terneciaの姿は何処にも無かった。




 奥歯に仕込んだlegend Class magic itemを使用して、とっておきの隠れTeleportationしたTerneciaは、そのまま崩れる-samaに倒れ込み、磨き抜かれた石材で作られた滑らかな床に額を付けた。

「な、何とか逃げられたね……」

 早く態勢を立て直さなければならない。BirkyneGubamonHeinzが【Guider】に成り得ると伝えて、総がかりで殺さなければならない。

 Mountain Rangeの向こうに居るDhampirを待ち受けている場合じゃない。


 Hihiryushukakaもどうかしている。何が『Evil God of Joyful Life』だ、Undeadを作れるDhampirよりも、奴らの方がずっと危険じゃないか。何故奴らの方を殺せと、早くOracleを下さなかった!


Bellmondっ……何処でボサッとしているんだい!? さっさと来いっ、あんたはあたしの【Foolish Dog】だろうが!」

 最後に残った腹心の一人……最も役に立たない僕をTerneciaは呼んだ。


 心も体も壊れて見目も醜く、ここの番人兼非常食しか出来ない愚図だ。しかし、【Offering】のUnique skillを所有している。そのskill効果で喰らう者のVitalityManaを完全に回復させ、殆どのStatus Effectを解除する事が出来る。

 Bellmondbloodを飲み干せば、Terneciaは即座に完全回復する事が出来る。そのために今までここで飼っていてやったのだ。


 今こそ拾ってやった恩を命で返してもらおう。


「何故来ないっ! さっさと――あぁ?」

 苛立ちを隠さず立ち上がりかけたTerneciaの目に映ったのは、Bellmondではなく同じ顔のchildが五人、自分に筒の先を向けている光景だった。


 一瞬思考が止まるが、Terneciaの生存Instinctが絶叫を上げる。

「【Telekinesis】銃、ファイエル」

 轟音を響かせて筒から何かが発射される。その一瞬前に、Terneciaは鎮めようとしていた【Demon King's Horn】で我が身を守ろうとした。


 しかし、素のconditionでもAdamantiteの盾を裂いた【Demon King's Horn】を、筒から発射された弾丸は飴か何かの-samaに貫くと、Terneciaの首に命中した。

 驚愕に見開いたTerneciaの顔が掻き消え、とさりと残った首から下のbody partが再び床に崩れ落ちる。

 そして弾丸が彼方の壁に激突した轟音と振動が。更にその数秒後、ポチャンと何かが地底湖に落ちた音がした。


「流石Orichalcumの弾丸はAttack Powerが違いますね。……でもManaを込め過ぎたかなぁ」

 反動を受けて掻き消えたSpirit Formの自分四体と、爆ぜた竹のようになってしまった銃身を見て、Vandalieuは溜め息をついた。




 色々飛び散ったBellmondfragmentを彼女に繋ぎ合わせて戻したVandalieuは、彼女からTerneciaがここに来た時に現れる場所が、mansion内から地底湖に直接ボートで漕ぎ出せる邸内の港だと聞き出した。

 Terneciaが奥歯に仕込んでいるlegend Class magic itemは小さくて携帯性に優れるが、その代わり予め登録した場所一か所と、前回Teleportationする前に居た場所の二カ所しかTeleportation出来ないらしい。


 そしてLemureに遙か遠くから見張らせていたHeinz達がTerneciaを追い詰め、ここに彼女が逃げて来る瞬間を、Orichalcum製の弾丸を銃身にセットして待ち受けていたのだ。


 その間Terneciaの隠れの裏に移動用の極小Dungeonを作ったり、散策したり、彼女が作ったUndeadTamerしたり、magic itemや物品を回収したりしていた。

 因みに、Bellmondを堕とした時から、今日で一週間だ。


「思ったより早く、それも消耗しているconditionで来ましたね」

「いや、もっと他に言う事があるのでは?」

「他に……? 何かあります?」

「えぇー」

 あっさりとAge of Gods Eraから闇のworldReignしてきたPure-breed Vampireを倒した事に、特別感慨も何も抱いていない-sama子のVandalieuに、Bellmondは若干呆れたような声を出した。


 しかし Vandalieuからすると、父の仇の親玉でZandiaTalosheimHeroの死体を持ち去ったGubamonや、Eleonoraの元masterBirkyneに比べると、Terneciaは敵としての重要性はずっと下だ。

 certainly二百年前のTalosheimMirg Shield Nationの戦争に後ろで糸を引いていた一人なので、彼の心の「絶対殺すlist」には載ってはいるが。


「ああ、この地下spaceが崩落する事を心配しているのでしたら、耐震工事はしておいたから大丈夫です。最悪でも、逃げる時間は稼げます」

「……それはmansionの隣に幾本も太い岩の柱を建てているのを見れば分かりますが」

「彼女が言いたいのはそんな事ではないだろう、師Artisan


 蟲にInfestされそのままVandalieuの体内に装備されてでも、Pure-breed Vampireが作ったUndeadが見たい! と研究者魂を燃やしてやって来たLucilianoが口を挟んだ。

 久しぶりに見た、生きているHumanが理解してくれたかと共感を覚えるBellmond


「早くそこに転がっている貴重な素材を回収しなければ! Age of Gods Eraから生きるPure-breed Vampireの、それもEvil God (M) 's Divine Protectionを受ける-samaな希少個体! その価値は計り知れないのだぞ!」

「……いや、私はそんな事を言いたい訳ではないのですが」

 ああ、価値観が合わない。やはり自分は狂っているのか。Bellmondは欲望にギラギラと瞳を輝かせるLucilianoの姿に、孤独感を覚えた。


「それもそうですね。【Death Delay】、Infestよろしく」

 倒れたまま痙攣を始めたTerneciabody partに術を施し、蟲をInfestさせる。そしてずるりと彼女のbody partを体内に装備する。

 床に流れた大量のbloodは勿体ないので、Blood Golemにして口元まで来てもらってゴクゴクと飲み干す。砕けたfragmentは荷物の中に回収だ。


《【Bloodworkskilllevelが上がりました!》


 一度bloodを飲んだだけでskill levelが上がるとは、腐ってもPure-breed Vampireだ。


「帰ったら私にも調べさせてくれたまえよ、師Artisanしかし……頭部の回収はdespair的か。Bellmond嬢から聞いていた【Petrifying Magic Eye】や脳のfragmentでも良いから欲しかったのだが……」

「私はだんだん外に出るのが怖くなってまいりましたよ。-kunHumanの業は、一万年前より深くなっているようではありませんか」

「それより、俺が【Telekinesis】銃で撃った時体中から生やしていたや棘の-samaな突起物は何か知っていますか?」


「あれは……いえ、私は存じません。ただ、恐らく【Demon King Fragment】ではないかと」

 あくまで慇懃な口調を崩さないBellmondの答えを聞いて、Vandalieuは手に持っていたfragmentに【Appraisal】をかける。


Ternecia:詳細は不明だが、Demon King Guduranisbloodと同質のManaが宿っている』


「なるほど……あ、二人とも俺から離れて。そろそろ来る」

「「来る?」」

Terneciaはまだ死んでいません」

 Vandalieuの言葉の意味を二人が理解したのと同時に、離れた湖面から黒く捻じれたが飛び出してきた。


 それをVandalieuBarrierを張って止めようとしたが、次の瞬間脳裏に走った【Danger Sense: Death】の警告に従って床に伏せる。

 その頭上を、投じられたは【Impact-Negating Barrier】を易々と貫いて通り過ぎて行った。

「なるほど、あのBarrierは効かないと。しかし……よく生きていますね」

 若干驚きを覚えつつ立ち上がったVandalieuが見たのは、湖面から水を滴らせて浮かび上がった、鬼気迫る形相を浮かべたTerneciaだった。


「ごろずっ! ごろじでやるっ!」

 常識を超越した再生Abilityで新しい胴体が生えつつあるが、脊椎や肋boneに内臓と僅かなmuscleが絡みついているだけのconditionで、それを所々黒い硬質な何かで繋ぎ止めているようなconditionだ。

「どうやら、首かheartを破壊したら死ぬと言う常識は、Pure-breed Vampireには通じないようです」

 そう言いつつも、即座に【Golem Transmutation】で元の形に戻した銃身を使って【Telekinesis】銃を再度撃つが……あっさりと避けられた。


「瀕死めいたconditionに見えるのに素早いですね」

 激高していても流石に自分が深手を受けた攻撃を忘れてはいなかった。

「不意打ちでなげりゃっ、当だるがあ゛っ!」

 轟音と共に地下spaceが揺れるが、Terneciaは存外素早く回避行動をとった。それだけ【Telekinesis】銃を警戒しての事だが、実は【Telekinesis】銃には次弾発射まで数秒のタイムラグがあり、射程距離はidiotみたいに長いが動く目標に対する命中精度に難がある等、欠点満載の実験Weapon Equipmentだった。


(やっぱりHigh-Speedで飛び回る敵にはまだ当たらないか)

 Bellmondの時は自分のmain bodyを囮に動きを封じたし、さっきは待ち受けての不意打ちだ。action映画のprotagonist-samaに自由自在に使いこなすには、まだ工夫が必要だろう。


「ぢね゛っ! ぢね゛え゛えぇっ!」

 既に正気のfragmentも残っていない-sama子のTerneciaから、更に【Demon King's Horn】がProjectile Fireされる。High-Speedで回転する捻じれ枝分かれしたは、掠っただけで大きく肉を抉り取る事だろう。


「枝と蔓を伸ばして」

 Barrierが通じないその攻撃を、Vandalieuは体内に装備しているImmortal Entの蔓や枝、そして自身が伸ばす糸で絡め捕る事にした。


 構造上引っかかる個所が多い【Demon King's Horn】に対してそれは有効で、弾く事は出来なくても軌道を大きく反らす事に成功する。

「それで師Artisanっ、これからどうするのだね!?」

「ちょっと気に成る事があるので考えます」

「それは余裕と受け取って良いのだろうか!?」


Princess LeviaManaはガンガン渡すのでお願いします。Eleonora、俺に【Acceleration】を」

『はい、陛下』

 姿を現したPrincess LeviaGhostが黒い炎の槍や髑髏に成ってに体当たりして、少しでも勢いを消そうとする。

「任せて、Vandalieu -sama

 そしてするりとVandalieuから現れたEleonoraが、【Acceleration】の時attribute magicを唱える。彼女はLuciliano-sama、自分のbody partに蟲をInfestさせてVandalieuの体内で待機していたのだ。


 【Acceleration】で時間が早まったVandalieuは、【Dead Spirit Magic】も使ってDemon King's Hornを迎撃しながら、思考を深める。

 それを見てLucilianoBellmondも、援護しようと動き出した。LucilianoImmortal Entに付与magicを唱え、Bellmondは得意の糸で【Demon King's Horn】を逸らすのに協力する。


Bellmondぉぉぉっ! なんでアタシを裏切ったあ゛!? この恩知らずの駄犬があああっ!」

 しかし、かつての配下の裏切りがハッキリした事でTerneciaの狂乱がますます激しくなった。怒りで逆に呂律は正常に近付いたようだが、十分に伸びきっていないまで乱射してmansionが瓦礫に変わりつつある事も全く気が付いていない。


 一万年のLoyaltyを捧げた相手のそんな姿に、Bellmondは失笑で返した。

「とは申されましても『お客-sama』、こちらの新しい『旦那-sama』の方が私に大変良くしてくださるそうなので。

 確かに命を助けられた恩はございますが、一万年も犬の-samaにお仕えしたのですからもう十分でしょう?」

 命を助けられた恩は命で返すと言う者もいるが、それは個人の価値観や、絆やHuman関係等による。

 それに、Bellmondは実際一万年も【Foolish Dog】呼ばわりのまま仕えたのだから、ただ裏切り者呼ばわりもどうだろうか?


「このクソ女が! 他の尻軽女共々ブチ殺してやるよ!」

「私が尻軽……!」

『ゆっ、許しません!!』

originally口の悪い方でしたが、いやはや……」

「ああ、私に関しては無視してくれて結構。出来れば存在自体忘れてください」


 一見気の抜けたやり取りに見えるが、【Demon King's Horn】が一撃でも当たればLucilianocertainlyBellmondEleonoraも、Vandalieuも助からない。Princess Levia達だってVandalieuManaが切れたconditionで当たれば、消滅してしまうだろう。

 いくらTerneciaが単調なProjectile Fire攻撃しかしてこなくても、気の抜けない状況だ。


 そしてTerneciabarelyconditionだ。Heinz達との戦いで消耗したManaMental力も戻っていない状況で受けた致命傷。自前のRegenerative Powerと【Demon King's Horn】のお蔭で何とか命は保ったが、そのせいで【Demon King's Horn】を解除できないまま戦闘を続行するfeather目に成った。


 お蔭でmagicが使えない。Flightを維持し、莫大なManaを消費しながらProjectile Fireして戦うしかない。常に動き回らなければ何時あの正体不明の筒で撃たれるか分からないので、【Petrifying Magic Eye】も使えない。

 それにbonemuscleがまだ三割ほどしか戻って来ていない今のbody partで格闘戦をしようものなら、反動で自分がDamageを受けかねない。


(クソォっ! せめて胴体の方を回収できれば! こいつ等、あたしのbody partを何処にやりやがったんだっ!?)

 胴体を回収して切断面をくっつければ、まだ何とか出来たのにと内心悔しがるTernecia

 Lucilianoが彼女のBodyを回収するよう促したのは、隠れたfineプレーだった。


 一方、VandalieuTerneciaDemon King Fragmentを使うのを見て考えていた。

(俺も【Demon King's Blood】を飲んだ。なら、同じような事が出来るのでは? でもあれから半年以上経つけれど、そんなsign全然ないし)

(禁断の力とか無いのかな? まずは【Out-of-body Experience】、俺自身のbody partを精査。……おや?)

 Eleonoraに【Acceleration】して貰った思考で、自分を調べると体内に微妙な異物(?)を見つける。


(我を集めよ、我を集めよ、我を完全体とせよ)


 聞き覚えの無い小さな声が聞こえる。明らかに自分以外の意思が体内に存在するようだ。

 何とも……不愉快な。

(我を集めよ、我を完全体とせよ)


《【Demon King侵しょ―――】》


(お前は俺の一部。俺は我、我は俺)

(我を集め……おれ? われは俺、俺は……我? 俺は俺を集めよ、俺を完全体にせよ)

(そう、それで良い)

 Pete達ならin any case、自分を構成するbone肉の中に自分以外の意思があるのは良くない。


Unique skill、【Demon King Fusion】を獲得しました!》


 そんなskillを獲得したと脳内アナウンスを聞いたのと同時に、【Demon King's Blood】の使い方が分かった。

「死ねぇいっ!」

 すると、丁度良いtimingTerneciaの攻撃がImmortal Entの枝を貫き、Bellmondの糸を引き千切って迫って来た。


 それに対してVandalieuは、clawsで自分の首を切った。


Vandalieu -samaっ!?」

 screechのようにEleonoraVandalieuの名を叫ぶが、彼の首からbloodが噴水の-samaにほとばしり、そのまま蛇の-samaにくねりながら【Demon King's Horn】に激突する。


「「なっ、何だそれは!?」」

 奇しくも同じ事を叫ぶTerneciaLucilianoの前で、何と【Demon King's Horn】がVandalieuの首から迸った【Demon King's Blood】に呑まれ絡み取られる。


「何でお前がDemon King Fragmentを! まさかNinelandsealedを……ひぃっ!?」

 【Demon King's Blood】がを絡め取っても止まらずに自分に迫って来るのを見たTerneciaは、慌てて逃げようとする。だが、前触れも無く重くなったbody partが言う事を聞かない。


「これはっ、まさか……あたしを見限るつもりかぁっ!? がは!」

 blood液の凝固作用で硬くなった【Demon King's Blood】が、Terneciaが生やした【Demon King's Horn】を小枝の-samaに圧し折りながら彼女の臓腑にめり込む。

 内臓が弾け、死が迫るのを感じると共に何かが会話しているのがTerneciaには聞こえた。


(我よ、俺よ、main bodyに合流せよ。集まれ我よ、俺を完全体とせよ)

(宿主不能、宿主不能、我はより優れた宿――main bodyに合流する。我は俺、俺は我)


 生皮が剥がれる-samaな気味の悪い音が響き、【Demon King's Blood】は【Demon King's Horn】を取り込んだままVandalieuの傷口に戻った。後に残った僅かなboneと内臓を首から垂らしただけのTerneciaは、成す術も無く再び地底湖に落下した。


《【Demon King's Horn】を獲得しました!》

《【Demon King Fusion】、【Mind Encroachment】、【Grotesque Mindskilllevelが上がりました!》


「よし、勝った」

 小さくガッツポーズをとるVandalieuの周りで、EleonoraPrincess Leviaは愕然とし、Bellmondは口元を引き攣らせ、Lucilianoは何故か感動のあまり涙している。


「今のは……良しなの?」

『ええっと、あの人は倒したようだけど……』

「まさかDemon King Fragmentを宿していた上に、それで【Demon King's Horn】を奪ってしまうとは。我ながら、大変な方にtailを振ったものです」

「全ての禁術の頂点の一つ、Demon King Fragmentを間近で研究する事が出来るなんて! ああっ、師Artisanpupils入りして良かった!」


「思いも寄らぬ所でpupilsの中の俺の株がincreaseしてますが、それはin any case Experience Pointと素材を回収しましょう。あ、kaa-sanには首を切ったのは秘密にしてくださいね」

『あの、陛下? body partは大丈夫なの?』

「問題ありません」

 心配そうなPrincess LeviaEleonoraに、Vandalieuは頷いた。首筋の傷は癒えたし、Manaを大量に消費した事以外は不調も無い。


Demon King Fragmentであっても、俺を構成するbone肉の一部に成った以上、俺の一部です」

 自分の利き手が突然独自の意思を持ち、「これからは俺の言う事を聞け」なんて言い出したら邪魔で仕方ないだろう。

 なので、同化できるなら同化しておくべきだ。


「それなら、まあ、maybe、良いと思うけど」

『ええ、まあ、そうね』

 Slightlyまだ二人とも困惑気味だが、これからDemon King Fragmentを使いこなすようになれば納得してくれるだろうと思ったVandalieuは、Terneciaを回収する事にした。


Bellmond

「畏まりました、旦那-sama

 糸が閃き、湖面を漂っていたTerneciaを引き上げ、床に落とす。


「う゛っ」

 驚いた事に、顔に濃い死相を浮かべているがTerneciaはまだ生きていた。

「では、まずPetrifying Magic Eyeを回収しましょう」

 しかし当然ながら慈悲は無い。


「ま、待てっ……やめっ……たすぎゃあああああ!」

Magic Eyeの類は死ぬ前にDismantlingしないと移植できないと、Mage guildから持ってきた禁術書に在ったので待ちません」

 容赦なくDismantlingを進めるVandalieuに片目を取られたTerneciaは大きく口を開けてscreechを上げ……更にBellmondに指を口の中に突っ込まれた。


「貴方が奥歯にmagic itemを仕込んでいるのは存じていますので」

 そう言って薄く微笑むかつての部下の瞳を、Terneciaは直視した。そして気が付いた、Bellmondが以前の彼女とは別の存在に成りつつある事に。


(こいつ……っ! あのHeinzの仲間と同じだっ、自分以外の誰かに存在を引き上げられている! 誰だっ、誰がこいつを……!)

 残った方の目で見まわすと、Bellmondと同じものがLucilianoEleonoraの瞳にもあった。

 そして、最後に見たVandalieuの瞳を見て確信した。こいつだと。


「そっちの目はMagic Eyeじゃないから別に良いか」

 【Demon King's Horn】を失い、【Demon King Encroachmentskillを失った今なら分かる。このDhampirの危険さが。こいつにくらべれば、【Guider】だって大したことは無い。


(こいつにだけは殺されちゃいけない!)

 Instinct的なIntuitionか、それともHihiryushukakaから's Divine Protectionか、horrorに慄くTerneciaだが、今は文字通り手も足も出せず、何もできない。

 だが、彼女は悪運に恵まれた。


「あ、これは予想外」

 そうVandalieuが呟くのと、ほぼ残骸と化しているmansionからやや離れた場所に二人の人shadowが現れるのは同時だった。

Eleonoraっ!?」

「これは一体何事じゃっ!?」


 Terneciaを降すために、BirkyneGubamonが彼女の隠れTeleportationしてきたのだ。

 もしかしたら彼女がDhampirに与しているかもしれないと邪推していた二人だが、自分の目で見た光景を理解できずに一瞬棒立ちに成る。

 それはVandalieu達も同じで、まさかここに他のPure-breed Vampireが、それも二人一緒に現れるとは想定外の事態だった。


「しまったっ!」

 その隙にBellmondの指を吐き出したTerneciaTeleportationし、姿が消える。

「それは良いから逃げますよ」

「おぅぶっ!?」

 反射的にTerneciaが消えた辺りに手を伸ばすBellmondの口に、適当なwormを突っ込ませてInfestさせると、EleonoraLuciliano共々体内に装備。

 そのまま、自分自身を【Telekinesis】で砲弾のように撃ち出し、極小Dungeonに飛び込んだ。


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