「IslaとChipurasと『Lunatic Dog』のBellquertによりますとー、山を登ってー空を飛んでー湖に潜ってー」
VandalieuはIsla達が情報をthrust合わせてconjectureした道順を、適当に歌いながら湖の辺で準備体操をしていた。
春に成ったと言ってもまだ三月。Swimmingには早い時期だ。そしてVandalieuは、あまりSwimmingが得意ではない。
「学校のプールで何とか五十meter泳げるぐらいですからねー……今は潜水なら三十分以上可能だけど」
オットセイやアシカ、ラッコはどれくらい水に潜ったままで泳げただろうか。そろそろ超えられたかな?
どうでもいいかと考えるのを止めて、Vandalieuは「とー」と飛び込んだ。
「ギチギチギチギチッ!」
途端後頭部から出て来たPeteが岸に向かって頭を伸ばし、Vandalieuを引き戻してしまう。衝撃で「ほげっ」と妙な声を出しつつ、背中から着地する。
『陛下っ、大丈夫ですか!? 凄く変な声が出てましたよ!』
「た、maybe? Pete、俺の中に居れば風呂と一緒で大丈夫ですから。あ、ちょ、止めてっ、根っこを伸ばして岸に根付かないで」
水の中に潜るのを嫌がるPeteや植物系monstersの抵抗を宥めるのに、暫し時間が流れた。共生とは中々大変だ。
冷たい湖水の中を、Vandalieuはすいすいと歩いていた。
手から出したImmortal Entの枝を器用に操って、湖底の土や岩を足場に進む。
『海水だったら嫌がられたでしょうけど。何時か海に潜る機会があるかもしれないし、今の内に対策考えておいた方が良いかな?』
Spirit Formの口でそんな事を呟きながら、湖底を進む。暗いが、ここでも【Dark Vision】skillのお蔭で視界に問題は無い。
ただ泥や微生物で濁っていたら流石に【Dark Vision】でも見えなくなるので、水が澄んでいて助かった。
『ん?』
すると、前方に十数人の槍を携えた人shadowが現れた。だがよく見ると、確かに人型をしているがwhole bodyがscaleに覆われており、顔は人と魚を混ぜたような作りに成っている。
水棲の亜人型monsters、Gillmanだ。
同じ水棲の亜人型には、魚の胴体にHumanの手足が生えた姿の、海のGoblinと評されるSahuaginが存在するが、GillmanはそのSahuaginよりもずっと高位のmonstersだ。
HumanとはMental構造が異なるためcommunicationを取る事は難しいが知能自体は高く、貝殻やcarapaceで武具を自作し、大きければ数百人規模の群れを作る。
Humanとは生存域があまり重ならないので知名度は低いが、Fishing村ではOgreよりも恐れられる。そして彼らを創りだした存在と『God of the Seas』Tristanの間には何か因縁があるのか、Merfolkを目にした時はBerserkerの-samaに暴れる事から『MerfolkのNemesis』と呼ばれている。
『グブブブ』
『ブッグキュブギュ』
そしてGillman達は、その魚のような目に分かる困惑を浮かべてVandalieuを遠巻きに見ていた。
maybe、「あれは何だ?」とか「手足から枝が生えているぞ」とか、そんな事を仲間と話しているのではないだろうか?
(困ったなー、このworldってmonstersにはJapan語通じないんですよね。Gillmanの霊が居れば【Visualization】で通訳させるけど、見かけないし)
そう困っていたVandalieuだが、どうやらGillman達はこの珍客を「正体不明だが、とりあえず始末しよう」と決めたらしい。【Danger Sense: Death】で感知出来るbloodthirstを向けながら、槍を構えて近付いてくる。
そんな対応を取られたら、Vandalieuも悩む必要はない。
『underwater戦って、気が乗らないんですけどね。Princess Levia達に手伝ってもらえないし』
そう言いながら、VandalieuはCursed Weapons化したクナイを投げ、underwaterにDeadly Poisonを撒いた。
『でもまあ、道案内の当てが出来たのはFortuneでしたね』
因みに、GillmanのRankは3。ただunderwaterや船上で戦う事に成る場合が多いので、Adventurer’s GuildはRankを1多く考えて戦う-samaにと訴えている。
ZombieにしたGillmanに案内をさせ、Vandalieuは湖底の隠されていたunderwater洞窟を発見し、そこを一時間ほどかけて抜け、ざぱっと水面から顔を出した。
「あー、死ぬかと思った」
息が苦しくなる度にZombieにしたGillmanの喉に噛みつき、lungの中の空気を吸わなければ危なかった。
Gillman達には脇腹にエラがあるが、On Waterで活動するためにlungも備えている。
因みに、口と口で人工呼吸しなかったのはただの拘りである。Zombieなのはin any case、魚面のmonstersがファーストキスの相手なのは、絶対嫌だ。
音も無く水面から顔を出すGillman Zombieに手伝わせて岸に上がったVandalieuの視界には、大きな地底湖とその辺に建つ一見上品に……しかしよく見ると悍ましい佇まいのmansionが在った。
「おやおや、本当に死んでくださった方が助かったのですが。招いた覚えのないお客-sama」
そのVandalieuを出迎えたのは、如何にも出来そうなButlerといった印象の人物だった。中肉中背の、Lambdaでは高価なモノクルが似合う中性的な美形だ。
「どうも、勝手にお邪魔して申し訳ありません。俺はVandalieuと申します」
「おや、やはり貴方-samaが例のDhampirでしたか。お噂はかねがね、私も是非一度お会いしたいと思っておりました。
申し遅れました。私、当mansionでButler長をしております『Foolish Dog』のBellmondと申します。本日はどのようなご用件で?」
慇懃に一礼するBellmondに、Vandalieuは答えた。
「はい。今日は貴方の職場を武力制圧しようと思いまして。これから実行しますが、宜しいですか? まあ、ダメと言われても日を改める事は出来ませんが」
「そうでしたか。それは丁度良い、私も貴方-samaを殺そうと思っていたのです、よっ!」
穏やかな笑みから、fangsを剥き出しにした狂笑に変えて、Bellmondが細い指を動かす。その途端、Vandalieuの左右を守っていたGillman Zombieがバラバラに成った。
音も無く、鮮やかな切断面を晒しながら五体を十以上のpartsに切り分けられたGillmanが地底湖の岸部に転がる。
ぽ-chanとGillman Zombieのfragmentが湖面に落ちる音を聞きながら、Bellmondは微動だにしないVandalieuに落胆を覚えた。
「ふふ、何が起きたか分からないでしょう? 私はこう見えても数万年の時を生きていましてね、その成果ですよ。貴方にも堪能していただけると――」
「極細の金属の糸を、magicと指先で操っている。magicは……Wind-Attributeかな。雷って、Wind-Attributeの一部ですよね?」
「な、何と!?」
まさか一瞬で自分の秘技を見抜かれるとは思わなかったBellmondが、思わず狼狽する。だが、すぐに彼は指の一本一本を別々の生き物の-samaに奇怪にくねらせた。
「フッ、こんなにも簡単に見抜かれるとは意外でしたが、だから何だと言うのです? 既に貴方は私の糸の虜! 逃げる隙間は在りませんよ」
Vandalieuの周囲を糸で包囲したBellmondは、自身の必勝を確信して落ち着きを取り戻した。
ここまで包囲網を完成させれば、Vandalieuが呪文を唱える前に始末できる。まだ残っているGillman Zombieがこちらに回り込もうとしているが、接近されたところであの程度の雑魚、軽くあしらえる。
「さあっ、御両親の元にお逝きなさいっ!」
僅かに指を曲げる。それだけの動作で、Vandalieuの首が落ちる。そのはずだったが……返って来たのは鈍い手応え。
糸が、思い描いたように動かない!
「何っ!? これは……そうかっ、貴方も私と同じ【Thread-user】かっ!」
Bellmondの糸が、Vandalieuから伸びた糸状の物に絡みつかれていた。
「いえ、そのJobにはありません。でも、糸状の物を操る事は出来ます」
Bellmondの極細の金属糸は、Vandalieuから伸びた髪の毛と、tongueと爪から生成される粘着質な糸に残らず絡め取られている。
Vandalieuの【Thread-reeling】levelはBellmondに比べてずっと低いが、自分の周りに張り巡らせるだけで良かったので、絡め取るのは簡単だった。
「……Dhampirはそんな事が出来るraceなのですか?」
「いや、他のDhampirの人知らないので」
accurateにはHeinzが保護している名も知らぬDhampirのShoujoなら見た事があるが、見た事があるだけなので彼女が糸を吐けるかどうかは知らない。maybe、出来ないとは思うが。
Bellmondは、委細は異なるが自分と同じ糸を操るDhampirに挑戦的な笑みを向けた。
「なるほど、ではこれはVampireとDhampirでは無く、Thread-userとThread-userの戦い……まさか、同じ糸を使う敵と戦う機会に恵まれるとは思いもよりませんでした。Hihiryushukaka -samaには心から感謝しておきましょう。
さあ、互いに死力を尽くして戦おうではありませんか! 勝利の栄光を掴むために!」
どうやら、Bellmondの中の妙なswitchが入ってしまったらしい。まるで親友と語らっているかのように、瞳には無evilな輝きがある。
そんな瞳でVandalieuを好敵手の-samaに扱って宣言すると同時に、音を立ててBellmondの靴が内側から裂けた。
「さぁっ! お客-sama、私の二十の指から放たれる糸に持ち堪えられますかな!?」
何とBellmondの足の指は、まるで猿の-samaに一本一本が長くなっていた。
それを器用にくねらせて糸を操るBellmondには先程覚えた落胆は残っておらず、その胸は高鳴るばかりだった。
好敵手の登場か、それとも何か予感しているのか。何にせよ、目の前の存在が自分に何かを与えてくれる事を疑わなかった。
Bellmondが放った糸がVandalieuの糸に次々に絡め取られる。だが、Bellmondの糸はVandalieuの糸を潜り抜け、切断しながら徐々に迫って行く。
「どうなさいました? 守りだけでは勝てませんよ!」
「そうですね」
『ではそろそろ反撃に転じましょう』
「っ!?」
離れたところから聞こえた声に、Bellmondは驚愕して視線をそちらに向けた。
すると、Bellmondから見て左のやや離れた場所にGillman Zombieが集まっていた。まさかGillman Zombieが喋ったのかと思っていると、彼らのscaleだらけのbody partから次々にVandalieuが生えて来た。
「えっ? なっ? お、お客-sama、御brothersですか?」
するりするりとGillman Zombie達から出て来るVandalieuの姿に困惑したBellmondが、自分と攻防を繰り広げている方のVandalieuに尋ねる。
「いえ、どれもこれも俺自身です。貴方と戦っているのは、【Long-distance Control】skillで動かしている、俺のBody」
『こっちは、【Out-of-body Experience】して分裂した後Gillman Zombieと一体化していた、Spirit Formの俺です』
『では、攻撃に転じますねー』
そう言いながら、Spirit FormのVandalieu達はGillman Zombieが背中に括り付けていた長い筒状の何かをBellmondに向ける。
「BodyとSpirit Formですと!? い、いやいやお待ちくださいお客-samaっ、それはおかしいっ、それではBodyを……main bodyを囮にして私を欺いたと仰るのですか!?」
「まあ、main bodyと言えばmain bodyでしょうか」
「私の糸を絡め取りきれず、切り刻まれたらとは考えなかったので? 事実、後一分もあれば私は貴方の五体をバラバラに出来るのですが」
「五体をバラバラにされた程度なら、三分以内に繋ぎ直せば俺は死にません」
「……Noble-born Vampireでも、そこまでされたら死ぬのですが?」
「後、こんな方法もあります」
するりとVandalieuの首筋からwormの頭が生えた。その頭に唯一ある口が開き、中からどろりとした液体が溢れ出す。
その液体は……Hell CopperはVandalieuのbody partを覆うと鎧の形に成った。Golem TransformationしたHell CopperをDataraが鎧に鍛え上げた物だ。
更に、周囲の自分の糸とBellmondの糸を撒き込んで【Magic Absorption Barrier】と【Impact-Negating Barrier】を張る。
次々に、そして易々と防御を固めるVandalieuにBellmondは唖然とした。しかも、BarrierはBellmondの糸を巻き込んでいるので糸がほとんど動かない。
「失礼を承知でお尋ねしますが……お客-samaはmonsterかMonstrosityではございませんか?」
糸を操ろうと指を動かす度に、逆に糸が食い込んで指からbloodが飛沫を上げる。こうなったら両手足を切断して逃げるしかないが、そのための呪文を唱える代わりにBellmondはそうVandalieuに尋ねた。
避けようの無い敗北に鼓動は激しくなり、頬は紅潮し、瞳が震え視界が滲む。
「当方は一応Humanのつもりなので、そう言われるのは甚だ遺憾です」
そう答えながら、Spirit FormのVandalieuは筒に銀の弾を装填……しようとして別の弾に変えた。
筒……内側に弾丸を回転させるためにSpiral状の溝を掘った銃身に鉄の弾丸を装填し、少し角度を調整して【Telekinesis】で打ち出す。
「ファイエル」
淡々とした声とは裏腹に、轟音と共に弾丸が発射された。
「くっ……ふしゃあっ!」
Bellmondは何と先が二股に分かれたtongueを伸ばし、それで糸を操りVandalieuが撃ち出した、Lambda初の銃弾を逸らそうとした。
しかし鉄の銃弾は糸を弾き飛ばし、Bellmondの胴体に命中した。
『【Artillery Technique】skillを獲得しました』
どうやら、Lambdaでは銃を使うskillは【銃術】ではなく【Artillery Technique】と評されるらしい。
地底湖の遥か向こう側の壁に鉄製の弾丸が激突し、壁が一部崩落するのを見ると、銃ではなく砲扱いなのも納得ではあるが。
それに、Vandalieuが【Telekinesis】銃のHit RateとAttack Powerを高めるために作ったこの銃身は、nameの通り銃身だけで、引き金もマガジンも無いので、銃とは評し難いだろう。
だがVandalieuは銃身を使用した【Telekinesis】銃のAttack Powerを認めつつも、地下では必要な時以外使わない-samaにしようと心に決めた。
「ところで話せます? Orichalcumや銀じゃなくてただの鉄製の弾丸を使いましたし、狙いもずらしたので死にはしないはずですけど」
「かっ……へひゅっ……お、お見苦しい姿を、お見せして……申し訳……」
Vandalieuは無残な姿で転がったまま、しかし慇懃な口調を崩そうとしないBellmondを見下ろしていた。
右の脇腹から胸にかけて大きく抉れ、臓物やboneのfragmentがbloodに混じってあちこちに飛び散っている。更に、撃たれた後吹き飛ばされ地面に何度か転がったせいで、Bellmondが操る鋭い糸がBellmond自身のBodyを傷付けていた。
手足に指は残っておらず、tongueもズタズタだ。
しかし、見苦しいとBellmondが評しているのはそれ等ではないようだ。偽装の為のmagic itemであるモノクルが砕けた事で露わに成った、自分の姿の事だ。
破れた衣服から、酷い火傷の痕や引き攣った傷跡が幾つも見える。端正な顔も半分程火傷で覆われており、片方の瞳も白濁している。
そして耳の形が変わっていた。
「femaleだったとは驚きました。後、originallyはBeast raceだったんですね。Vampireって、他のVida's New Racesからでも成れるのですか?」
「……森猿系Beast raceと呼ばれるrace出身でございます。尤も、純粋なBeastmenではなく、先祖にLamiaのbloodが混じっていたようですが。このtongueと、後今は分り難くなっていますが、失明した方の瞳の形がLamiaの物です。
Vida's New RacesもVampireに成る事は、不可能ではありません。ただ九割の確率で失敗する上に、副作用で命を落とす可能性があるだけです。
しかし、何故私が女だと分かったのですか? ご覧の通り、女らしい箇所は全て焼かれるか切り落とされているはずですが」
「傷口から内臓が見えていますから」
「なるほど……これは失念しておりました」
苦笑いを浮かべて、実はfemaleだったBellmondは「それで、止めは刺さないのですか?」と尋ねた。
「お客-samaほどではありませんが、私も伯peerageを持つNoble-born Vampire。この程度なら回復します。元通りに動くかは分かりませんが、半日もあれば辛うじて歩ける程度には。
それに、こうしておしゃべりに興じている今も、magicを唱えようと思えば出来ない訳ではありません」
「でも唱えようとしていませんよね。それどころか、もう反撃する気も無い。それに、【Death-Attribute Charm】のskillが効いていますね?」
既に【Danger Sense: Death】にまったく反応しないBellmondにそう問い返すと、彼女は驚いたような顔をした後、納得したように息を吐いた。
「なるほど、魅了系のskillですか。ですが、私はお客-samaに魅了されたというよりも、お客-samaを殺せば何かが変わる、殺せなくても殺してくれると、そんな心情にthrust動かされているのですが?」
「あー、そういう方向に効いたんですね」
魅了とは言っても、誰もが文字通りの意味で好意的に成る訳ではない。Diseaseんでいたり狂っていたりする場合は、Bellmondの-samaな反応を示すのだろう。
つまり、ヤンデレ。
考えてみれば、以前倒したSercrentやIslaはVampireなのにEleonoraと違い友好的には成らなかった。それも単純に【Death-Attribute Charm】をレジストしたのではなく、屈折した形で効果を発揮したのかもしれない。
Sercrentの魂は砕いたので、Talosheimに戻ったらIslaに改めて話を聞いてみよう。
これからは気を付けよう。
「それで、まさか私に寝返れなどとは言わないでしょうね?」
「寝返れ」
「……言うのですか」
「言うのですよ」
呆れたような顔のBellmondに、Vandalieuは続けた。
「別に貴女は俺を殺そうとしただけですし、俺は貴女に恨みは無いですし、Thread-userについて教えて欲しいので。
後、現在Butler募集中です」
「……私は極悪人ですが?」
「んー、でも後ろに何も憑いていませんし。もしかして、ここの番人を長年やっていて表に出てないとかではないですか」
「……正解です、お客-sama」
BellmondはVandalieuには数万年を生きていると言ったが、実際にはVampireに成ってから一万年程しか生きていない。
彼女は一万年前、産まれた部族をその身に現れた祖先のbloodによる異形を咎められて追放された。そして、彷徨いやっと辿り着いた人里で、monsters扱いされて暴行を受けたのだ。
そして死に瀕していた彼女を、Hihiryushukakaを奉じるVampires serving Evil Godsが拾った。
「私のmasterは丁度、このmansionの番をさせる従順な手下を探していたようでして。これでも万が一の時逃げ込むためのShelter兼作品の保管庫だから、裏切るような者には任せられない。
それで、私の-samaに半死半生の者を見つけては助けてVampireに仕立てたのですよ」
「その割には、あまりLoyalty心があるようには見えませんが」
「ふふ、一万年も生きていると色々あるのでございますよ。特に、こんな体では。Vampireに成る前の傷痕は、治せないのでね」
最初の数年は、masterに恩を返すため必死に努力した。同じような境遇の仲間達と切磋琢磨した。
そして実力が認められ、いよいよVampireの一員となった数十年は徐々に減っていく仲間達に涙を流しつつも、彼らの分も恩返しをしようと、がむしゃらに腕を磨いた。
そしてこのmansionの番を任せられて数百年。だんだん、自分は利用されているだけなのではないかと考えるようになってきた。
Vampireに成って千年目、masterから偽装用のmagic itemであるモノクルを投げ渡された。「このmansionで醜い姿を晒すんじゃないよ」と言う言葉と共に。
そして一万年目。何もかもが虚しくなった。戯れで覚えた技を振るう機会も滅多に無く、あってもすぐに終わってしまう。いっそ逃げ出そうかと思っても、逃げた後何かしたいのかと考えると答えは見つからず。
ならいっそ死のうかとも思うが、死ぬ気にもなれず。
ふと気がつくと数年経っていた。そんな摩耗した心理conditionで過ごしていたある日、現れたのがVandalieuだった。
「じゃあ俺に寝返っても良くないですか?」
VandalieuはBellmondがTalosheimの事に関わっていないらしい事に満足すると、そう言った。
彼もBellmondがただの被害者だと思っている訳ではない。一万年の間に幾人も殺し、幾つも罪を重ねただろう。
だが、それらはVandalieuにとってどうでも良い事である。
「正直、善悪なんてあやふやなもの、どうでも良いんですよ。国や文化、時代であっさり変わる程度の物です。そもそも、俺は大多数の人にとっては悪人らしいですから。
自分と関係無い社会と場所の善悪なんて知りません」
Vandalieuは、絶対的な善が存在するとは考えられない。悪と言う概念があるから、善が存在する。そう考える彼にとって、善悪の基準はあやふやな物だ。
実際、EarthでもOriginでも善は彼を助けなかった。
certainly自分の経験だけで全てを決めつけるのは視野狭窄だとも思うが、Lambdaではこれで今まで上手くいっているのだし、別に良いだろうと考えている。
「……お客-samaを殺そうとした件については?」
「俺が勝ったので、ノーカンです」
殺し合いの場合は、勝った方が敗者に権利を持つとVandalieuは単純に考えていた。
monstersの場合は素材とMagic Stoneを剥ぐし、mountain banditの場合は殺すかbloodを吸う。
戦争でも敵兵を殺せば手柄、捕虜にすれば報奨金も割増になる。
ならBellmondに勝ったVandalieuが彼女を勧誘するのも自由だろう。
「それに極論を言えば、生きたまま俺に寝返るか、死んだ後寝返るかの違いだけですよ。ただ、死ぬとMemoryや人格が崩れたり大きく変わったりするので、生きたまま寝返ってくれた方が助かります」
Chezareの-samaにUndead Transformationした後の方が輝く場合もあるが、あれはレアケースである。
「それで、どうします?」
『陛下の方に着いた方が良いわよ』
『私達もこうして陛下に憑いてるし、Ghostなのに美味しい物が食べられるのよ。ですよね、Levia -sama』
『はい。貴女が陛下の力に成ってくれれば心強いです。お願いできませんか?』
【Dead Spirit Magic】の出番が無かったため暇だったらしいPrincess Levia達、Blaze Ghostが姿を現すと、Bellmondはどちらにしてもこのお客-samaからは逃れられないらしいと諦めた。
「畏まりました、お客-sama。ですが、条件が二つございます。
一つはお客-samaがごmaster -sama……Ternecia -samaを倒す事。もう一つは、私のbody partを元に戻す事です」
VandalieuがTerneciaに殺されれば寝返る甲斐もないし、今のBellmondのconditionではThread-userについて教えButlerとして働く事も出来ない。
「分かりました」
普通ならSClass adventurerでも簡単には頷けない条件に、Vandalieuはあっさり頷いた。
「とりあえず、内臓とboneを集めて繋ぎますね。Princess Levia、皆、火を抑えてください。Bellmondのモツが焼けそうです」
『ああ、ごめんなさい! 今離れますねっ』
「お客-sama……人の内臓をモツと言うのはどうかと」
判断を早まったかもしれない。そう思いつつも、Bellmondは彼に期待するのを止められないでいた。
「ぐあああああっ! て、Ternecia -sama、バンザァァァァァイ!」
Earthの特撮物なら爆発して果てそうな断末魔の声を上げつつ、侯peerageを持つNoble-born Vampire、Darockがheartを女Warriorの拳に貫かれて倒れた。
彼は数万年の時を生きた、Terneciaの側近の中でも彼女に次ぐ武威を持つと称えられ【TerneciaのFighting dog】のsecondary nameで闇のworldに知られた男だったのだが。
「ふんっ。幾らbody partを霧にしようが、我が【Radiant Fist Technique】の前には無力だ」
白く輝くmagic itemの手甲でDarockを倒したJenniferは、仲間と共に最後に残った親玉を睨みつけた。
Pure-breed Vampire、Ternecia。彼女は腹心の最期にclicking tongueすると、何時ものProstituteを思わせる格好のままJennifer達を睨み返した。
「やれやれ、やってくれたね。あたしの【Five Dogs】も、一人を残して全滅……Isla以外の三匹を始末するとは、ちょいとあんた達を舐めていたよ」
周囲には建造物の残骸や木々が転がっている。ここは彼女の拠点の一つで、中々洒落たmansionだったのだが……戦いの余波で周囲の森ごと荒野に成りかけていた。
「しかし派手にやるね。legendのChampion Bellwoodは、花一つ踏み折るのにも心を痛めたもんだが、あんた等は違うのかい?」
以前よりも月と星が良く見える-samaにされた拠点を見回して言うTerneciaに、Heinzは答えた。
「人里離れたmonstersしか居ない森を守るために、貴-sama等を滅ぼす事を躊躇う事こそ罪だ。
この森が水源地だったら、私も考えたが」
another worldの知識を忌避していたBellwoodだったが、自然環境に関する知識だけは積極的に広め、残していた。森が水を貯える事もその一つだ。
「チっ、【One who tears through the darkness】らしい事を言ってくれるじゃないか。だが、あんた達の口上は聞き飽きた! 続きはあたしのUndeadに成ってから歌うんだね!」
物理的な圧力すら伴うbloodthirstを放ちながら、Terneciaは内心では苛立ち、やや焦っていた。
(BirkyneとGubamonは何をしてるんだい!? 何故さっさと来ないっ、このままじゃ、あの切り札を使わざるを得なくなるじゃないかっ!)
その心の乱れを見抜いたように、『Goddess of Sleep』MillのClericであるDaianaが追加の付与magicを唱えようとする。
「させるかいっ! カァ!」
「こっちのセリフだよっ、【大Provocation】!」
奇声を上げて右目に移植した【Petrifying Magic Eye】をActivateさせようとしたTerneciaだったが、その敵意をDelizahが【Shield Technique】のMartial Artsで強引に自分へ向ける。
途端嫌な音を立ててDelizahの手足の先端から石化が始まる。だが、Terneciaは彼女から視線をすぐに外した。
「くっ!」
何時の間にかstealth寄っていたEdgarが、Blind Spotから彼女を狙ったのだ。Light Attributeのmagicが付与されたMythrilの短剣が、Terneciaの急所を狙う。
それをclawsで防ぎ、そのままEdgarを裂こうとすれば、何と彼の姿は霞のように消えてしまった。
「っ!? 【Clone】か!」
「良く分かったな。大抵の奴は、magicと間違えるんだが」
【Armor Technique】の高等Martial Arts、残像を利用したCloneを作りながらEdgarが短剣を振るう。ほとんどが幻だとしても、もし見逃した攻撃が本物ならと思うと、無視できない。
「合わせろ! 【Radiant Sword Single Flash】!」
「【Radiant Fist Barrage】!」
そこにHeinzのMagic SwordとJenniferのMagic Fistが襲い掛かる。流石にTerneciaも全てを捌く事は出来ず、body partに幾筋もの傷を負う。
どれも彼女のVitalityから見れば掠り傷だ。しかし、対Vampireに特化したHeinz達の攻撃は、掠り傷でもTerneciaに大きな痛みを与え、驚異的な再生Abilityも大きく減退させ、それ以上に彼女の集中力を乱す。
「……群れるな餓鬼共が! 【風刃乱舞】!」
苛立ちを抑えられず、自分の周囲にcountlessの風の刃を乱射するTernecia。これでHeinz達は一旦下がらなければならなくなり、彼女はその隙に態勢を立て直す事が出来るはずだった。
「GoddessのGuidanceによりManaよ、安らかなれ。【Deep Slumber Wave】」
だが、Daianaが唱えていたmagicにより、TerneciaのmagicのAttack Powerが大幅に削られる。Heinz達が装備しているDragonの素材や魔導金属をふんだんに使ったDefense Equipmentの対魔Defense Powerで弾かれてしまう程度に。
そして逆に隙を作ったTerneciaに、Heinz達の攻撃の勢いが増す。
(こいつ等……自分より強い相手と戦う事に慣れている!)
盾職のDelizahが敵の敵意を引き受け、Edgarがfollowし、Jenniferが手数、Heinzが高Attack Powerの一撃で攻め、Daianaがmagicで全体を援護する。
そのCoordinationが高度に行われるのだ。そしてTerneciaは彼ら相手に力が発揮しきれずにいた。一人ではHeinz達のCoordinationに対応しきれず。どうしても大技を決められない。
そして苛立ちや焦りを抑えられず、思わず放つ単調な攻撃はDelizahとDaianaに防がれるか力を削がれてしまう。
「このあたしがっ、Champion共との戦争からも生き延びたこのTernecia -samaがっ、青臭いガキ共相手にっ!」
荒れ狂うTernecia。確かに、彼女は強い。並のDragonならfeather虫同然に潰せる程の力を持つ、生態系の頂点にReign出来る生物だ。
しかし、だからこそTerneciaは十万年前よりも弱くなっていた。
十万年の間奪った命は数知れず。しかしそれは殆ど一方的な虐殺で、互角に戦える相手との戦いは数えるほど。そして、ここ数万年はcountlessの手下の上にReignする暴-kunとしてしか存在していない。
命の危機を覚えない悠久の日々は確実にTerneciaの勘を鈍らせ、鋭かったMental力と技を摩耗させ緩ませてしまった。
そんなTerneciaにHeinz達の高度なCoordinationを破る地力は残っていない。だが、こんな時のために彼女達はPure-breed Vampire三人による合議制を維持していたのだが――。
(くっ、BirkyneもGubamonもあたしを見捨てる気か!)
だが、頼みの綱の援軍も現れない。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」
浅くない傷を受けたTerneciaが濁った絶叫を上げる。Heinz達は、このまま行けば勝てると確信しつつも、油断なく攻撃を重ねる。
そんな彼らに、Terneciaはfangsを剥き出しにした狂笑を向けた。
「あたしを追い詰めた事を後悔して死ねっ! 【Demon King's Horn】Activate!」
その瞬間、Terneciaのbody partの至る所から生じた角にHeinz達は裂かれた。
・Name: Bellmond
・Age: 約一万age(Vampire化当時18age)
・Title: 【Ternecia’s Foolish Dog】
・Rank: 10
・Race: Vampire Count(Noble-born Vampire Earl Jungle Monkey-species Beast race)
・Level: 7
・Job: String Master
・Job Level: 7
・Job History: Apprentice Hunter、Apprentice Thief、Thief、Assassin、Servant、Thread-user
・Passive skills
Dark Vision
Mysterious Strength:3Lv
Rapid Regeneration:5Lv
Abnormal Condition Resistance:6Lv
Self-enhancement: Subordination:10Lv
Mana Recovery: Damage:10Lv
Detect Presence:7Lv
Intuition:3Lv
Mental Corruption:7Lv
・Active skills
Bloodsucking:7Lv
Archery:1Lv
Throwing Technique:1Lv
Dagger Technique:9Lv
Wind-Attribute Magic:2Lv
No-Attribute Magic:1Lv
Mana Control:1Lv
High-Speed Flight:1Lv
Silent Steps:8Lv
Trap:5Lv
Dismantling:3Lv
-Transcend Limits-:1Lv
Housework:10Lv
Thread-reeling:7Lv
・Unique skill
Offering
Terneciaの側近である『Five Dogs』の中である意味最も重要な役目を与えられた、最もweak人物。他のFive Dogsのmemberからは、「Watchdogの-samaな奴」と嘲笑される事もしばしば。
一万年の人生の九割以上を、時たまTerneciaが来る時以外は決められた言動を繰り返すか、すすり泣きや喘ぐようなscreech、金切り声を上げるだけのUndeadしか居ないmansionの番人(と、もう一つの役目を)していたため、Mental conditionは廃人手前で、Self破壊願望に憑りつかれている。
ただ、そのお蔭で他のVampireから距離があり、その点では正常と言える。
本来は密林で暮らす森猿系Beast raceのfemaleで、先祖に混じっていたLamiaのbloodが部分的に出ている。
ただVampire化前に受けた激しい暴行により、体中に傷や火傷の痕が残っている。片目もその際失明し、本来生えている長いtailも切り落とされている。
片目の失明とTerneciaの「最終的に逆らわないならそれで良い」と言ういい加減な育成policyにより、実際に『Five Dogs』最弱。magic itemもモノクル以外装備していない。
またVampireはmagicのaptitudeに補正が掛からないため、折角 Noble-born Vampireに成ってもBeast raceだった生まれのせいでmagicが下手なままだった。そのため糸を操る補助程度にしかmagicを使わない。
ただ、【Dagger Technique】も使って戦えばもっと強かったのだが……趣味を優先する趣味人である。
地味にHousework Masterで、特に掃除は数年単位でMemoryが飛ぶようなMental conditionでもそつなくこなす。