mountain banditに扮したKarcan達Knightの一隊から第七cultivation villageを守る防衛戦は、村を守る事に関してだけなら順調に進んでいた。
村を包囲していた三十人程の弓兵と歩兵は、VandalieuがKarcanを殺した頃には既に半減していた。
『おおおおおおおん!』
「うおわっ! Golemだと!?」
「のわあああ! 何だこのSlimeは!?」
村を包囲して待機していたSub-Knight達は、命からがら逃げ出してくる村人を矢で射るだけで良かったはずだったが、実際に向かって来たのは石や、一見Slimeにも見える液体金属『Death Iron』で出来たGolemだった。
Vandalieuがせっせと地中に設置したGolemは、Rank3のStone Golemが十体、Rank7の液体conditionの『Death Iron』Golemが三体。それぞれ【Strengthen Follower】と【Strengthen Subordinates】のskill効果で、Rankが1から2上のmonstersに相当する力だ。
Sub-Knight達が纏まっていれば、敵わないまでも足の遅いGolemから半数は逃げ出す事が出来ただろう。だが、彼らは村を包囲していたのでバラバラになっていた。
「な、何故、Goblin程度しか出ないはずの場所で、大量のGolemに黒いSlimeが!? ごぶべばっ!」
波のように覆いかぶさってきたDeath Iron Golemに飲み込まれて、最後のKnightの姿も消えた。Death Ironは液体だが、重さは元に成った鉄と変わらない。しかも GolemのMysterious Strengthで抑え込まれるので、一度飲み込まれれば余程のMuscular Strengthの持ち主でなければ脱出は不可能だ。
『お゛お゛ぉぉ』
そしてGolem達はSub-Knight達の死体を持ったまま、Vandalieuが作った小規模Dungeonに向かうのだった。死体を隠蔽するために。
十人の騎兵に対して、Kasim達は善戦していた。
「うおおおおっ! 【Stone Shield】! Shield Bashっ!」
KasimがDefense Powerを増した盾で思いっきり殴り、それを受け切れなかったSub-Knightが堪らず落馬する。
ZenoがそのSub-Knightを狙うが、そうはさせるかと仲間が射線を遮る。
「ぐうっ! 虚仮脅しのつもりか!」
普段と違い軽装の皮鎧であったことが幸いしてすぐに立ち上がるSub-Knightに、相変わらずskill levelが足りず【Shield Bash】をActivateできないKasimは言った。
「気合の表れだ!」
十対三で戦わなければならないのだから、気合を入れないとやっていられない。
そのKasimの横でも、Festerが雄々しく剣を振るっていた。
「うおおおっ! リナは、俺が守る! 【Triple Thrust】!」
連続で素早くthrustを放つ【Sword Technique】のMartial ArtsをActivateし、馬上の敵を狙う。
Sub-KnightはFesterのthrustを、一回目は身を捻って避け、二回目は自身の剣で逸らし、三回目は食らったが脇腹の肉を少々削られるだけに抑えた。
「隙あっ……り?」
【Triple Thrust】は凄まじい速度で三度thrustを繰り出すMartial Artsだが、逆を言うとthrustを三度凌げば隙が出来るMartial Artsでもある。
それを知っていたSub-Knightは、多少の手傷を負っても三度凌いで反撃に出ようとしたのだが、軽傷の筈の脇腹からごっそりVitalityを持って行かれ、力が抜ける。
Festerの剣に付与された【Bloodshed Enhancement】の効果だ。
「ぜやぁっ!」
そのSub-Knightの隙を逆に突いたFesterの通常のthrustが鎧の隙間に入り、Sub-Knightが白目を剥いて落馬する。
「アントンっ!」
「次は誰だっ! かかってこいっ、リナには指一本触れさせねぇぇっ!」
「誰だ、それは!?」
仲間が倒されて動揺するSub-Knight達と、初めて人を殺した心理的衝撃をVandalieuから受けた助言を活かして耐えるFester。
「アントンの仇だっ!」
彼の言葉通りに、二人のSub-Knightが切りかかって来る。
「idiotっ、お前がProvocationしてどうする!」
「【Provocation】!」
すかさずZenoが弓でSub-Knight達を牽制し、Kasimが敵の敵意を強制的に誘導するMartial Arts【Provocation】でSub-Knight達の狙いを自分に向けさせる。
「こいつ等、聞いていたより強いっ」
副隊長が思わずそう呟いてしまう程度に、Kasim達は強くなっていた。三人ともadventurerの等ClassこそEClassのままだが、既にDClass並の実力を備えている。
だからSub-Knight達と実力的には五分以上。そこにVandalieuの付与magicが加わって、十対三でも油断できない強敵と化していた。
村人を狙うために分散したら各個撃破されるのではないかと恐れる程に。
(Karcan隊長は何を手間取っているのだ!?)
本来なら表と裏の両方の門から突入し、攪乱しながら抵抗するadventurerや村人を各個撃破するはずだったのだが、このままでは負ける事は無いにしても受ける被害が大きすぎる。
「Swordsmanは私が相手をするっ! 二人はそのまま盾役を抑えていろ、残りはBow Userを片付けろっ!」
これ以上allyに死人が出ては拙いと、浮足立つSub-Knight達に副隊長は指示を出すとFesterに向かって馬を走らせた。
Karcanと同じくJobも地位も【正Knight】である彼は、Festerよりも高い技量を持つ。馬上の有利を活かせば、付与magicがかけられていてもそう簡単に負けはしない。
「クソっ! Zenoっ、何とか逃げ回ってくれっ!」
そう仲間に叫びつつ副隊長を迎え撃とうとしたFesterは、頭上を何かが猛Speedで通り過ぎるのを感じた。
すると、迎え撃とうとした敵の首から上が果物の爆ぜる-samaな音と共に消えた。
「「「「「「えっ?」」」」」」
思わずFester、そしてSub-Knight達も間の抜けた声を漏らす。masterの頭部が爆砕した事にも気が付かず、走り出した馬がそのままFesterの横を走り抜けて行った。
ぐらぐらと揺れる副隊長の手から、ぽろりと長剣が落ちる。
「もう少しで馬に当たる所だった。【Telekinesis】砲は狙いが難しいですね。液体金属のDeath Ironなら弾丸を潰さないよう注意しなくてもいいから、使えるかなと思ったのに。やはり銃身が無いとダメか」
そんな声を聞いて上を見上げてみれば、そこには握り拳大の黒い球体を幾つも周囲に浮かべたVandalieuが居た。
「じゃあ、残りは普通に行きますね」
驚愕から立ち直っていないSub-Knight達の見ている前で、Vandalieuの周囲にBlack Flameの槍が幾つも出現する。
「ま、待って――」
「【Black Flame槍】」
咄嗟に降伏しようとしたらしいSub-Knightから順に、全てのSub-Knightにmagicを放つ。
「ちょっ!? おいっ! 今降伏しようとしてなかったか!?」
「すみません、timing的に間に合いませんでした」
何度目かの嘘に気分が悪くなるが、仕方がない。
「そうか……まあ、俺の気のせいだろ。Weapon Equipmentを持ったままだったし」
Kasimはそう言うと、死体になったSub-Knight達から関心を失ったようだ。彼から見ればSub-Knight達はただのmountain banditなので、容赦なく殺したVandalieuを非難するつもりは元から無く、驚いて思わず質問しただけだったらしい。
「助かったよ、戻って来てくれるのが遅れていたらヤバかった。命を救われたのは二度目だな」
「これで全部か? じゃあ死体の片付け、いや、まず馬が逃げない内に集めないと」
「う゛ぶっ!」
「……Fester、お前は村長-sanの所に説明に行って来い」
「ま、まかぜどげ」
「俺は、逃げたmountain banditが一人居たので追いかけてきます」
「一人で――うん、大丈夫だとは思うけど、何か手伝うか?」
「大丈夫です、俺よりもここをお願いします」
「分かった」
飛んで行くVandalieuを見送ったKasimは、彼に粉々に砕かれた敵の頭の破片を集めなければならない事に気がついて、顔を顰めた。
「いっそ、全部焼いて貰えば良かったな」
「かっ……かけっ……」
Frotoは石に置き換わったように動かない自分のbody partに愕然とし、こちらを見つめる数え切れないcompound eyesをdespair的な気持ちで眺めていた。
麻痺毒が含まれた"scale powder"をばら撒く、Rank3のパラライズモス。
弱った生物を酸性の唾液で溶かしながら喰う、Rank2の死肉蠅。
短時間なら透明に成れる、Rank3のclear Dragon Butterfly。
密林の殺し屋、Rank4のChameleon Mantis。
そして金属鎧も飴細工のように破壊する強靭なchinと"poisonous needle"を持つRank5のCemetery Bee、鉄より強靭な角とexoskeletonを持つRank4のLance Centipede。
chinやfeatherの音が、Frotoには自分の死へのカウントダウンのように聞こえた。
彼は優秀なMageだが、基本的に研究者であるため実戦経験に乏しい。KarcanがFrotoを連れて来たのも、戦力としてよりもcultivation villageの人々の顔を全て知っているからという理由だった。
それでもCemetery BeeとLance Centipede以外の、monsters数匹なら何とか撃退できたかもしれない。一種類の毒なら、magicで解毒する事が出来た。
しかし蟲型という共通点はあっても一度に十数匹、複数のraceの襲撃に対応できる力はFrotoには無く、複数の毒をすぐ解毒する技術も無かった。
(こ、こんなはずでは! 誰かっ、助けてくれ! 私はこんな所で死んでいいHumanではないんだっ! 私が死ねば、この国にとって損失は計り知れないんだぞ!?)
唯一動くeyeballで必死に助けを探すが、その当ては全く無い。彼の上役だったKarcanは最初に、あっさりと殺されたし、その部下達も次々と後を追った。確か、Spyの男もその中に混じっていたような気がする。
あの-sama子では、他のSub-Knight達もVandalieuに皆殺しにされてしまっただろう。
もし生き残りが居たとしても助けに来る程の関係ではなかったし、来たとしてもこのmonstersの群れを彼らが倒せるとは思えない。
もうダメだと諦めた時、蟲共の後ろから紅と紫紺の瞳が現れた。
「お久しぶりです」
emotionsの無い顔と声で、Karcan達を瞬く間に殺したVandalieuがFrotoを見下ろしていた。
(ひぃっ!)
喋れないFrotoは胸中でscreechを上げる。そんな彼に向かって手を差し伸べながら、Vandalieuは続けた。
「Karcanって言う人の霊から、事情は大体聞いています。本当はClericじゃなくて、cultivation villageを潰すために潜入していた、雇われMage。目的は出世だそうですね」
(全てバレている!? 【Spiritualist】でもあったのか!)
驚愕にhorror、そして死んで霊になったとはいえすぐに自分を売ったKarcanを胸中で罵る。
(待ってくれっ、私は止めたんだ! こんな襲撃に意味は無いとっ、でもKarcanが強行したんだ!)
本来なら第七cultivation village以外は、今回の襲撃の前にFroto自身が関与したtacticsによって幾つか壊滅しているはずだった事を都合よく忘れて彼はそう訴えるが、毒で麻痺したtongueが言葉を紡ぐ事は無い。
「言いたい事があるらしいですが、俺は貴方から聞きたい事は無いので。
しかし、困った事をしてくれました」
村を守るためにmountain banditを撃退した。それは問題無い。だが、実はmountain banditがKnightだった問題だ。
普通ならKarcan達がKnightの恥さらしとして処分されて終わりだ。しかし、そこに難民問題や開拓事業が本来は棄民政策であった事、最後はほぼ独断だったにせよKarcanがLucas派の意思で動いていた事を考えると、そう簡単には終わりそうにない。
演習という名目で出て来たらしいが……Knight団のHumanがKarcanの行方不明と、cultivation villageで退治されたmountain banditがイコールで繋がる事に気が付くのは確実だ。
その時、彼らがどう動くか。Vandalieuとcultivation villageにとって都合が良いのは、彼らが動かない事だ。
Knight団やNoble達が事無かれ主義に走り、Karcan達はmountain banditと関係無く演習中に行方不明に成ったと処理してくれれば、何も起きない。
しかし、Vandalieuはこれまでの経緯からもうHartner Duke 家やそれに近しいNoble 家を、全く信用できなかった。
きっと、何か仕掛けてくる。
「殺す前にKnightだって分かっていたら、生け捕りにできたら色々やって誤魔化す事も可能だったけれど……扮装に凝り過ぎなんですよ。本物のmountain banditみたいにすぐ死ぬなんて卑きょ……幾らなんでもそこまで言うのは理不尽か」
Vandalieuの手が、徐々にFrotoに近づいて行く。Frotoは何時その手から黒い炎が放たれるのかと、指からclawsが伸びるのか、気が気ではなかった。
だが、そうはならなかった。Vandalieuの手は、Frotoの顔に添えるような形のままだ。もしかして助けてくれるのかと、Frotoは思った。
(ありがとうっ、本当にありがとう! 知っている事は何でも話すし、-kunのためなら何でもするっ! だから助け――!?)
頬に触れたVandalieuの冷たい手から、音も無く蟲が生えた。
colorfulだが毒々しい色のwormの目の無い頭部が、幾つもVandalieuの手から生えたと思うと、その長いbody partをくねらせながらFrotoの顔の上を這い回る。
「綺麗でしょう? これは生物のbody partにInfestするTypeの蟲です。脳とか、内臓とか、色々な所にInfestします。先に言っておきますが、意識を乗っ取られる事はありません。痛みも何もかも全て鮮明なままです」
ぬらぬらしたparasites達が、Frotoの口や鼻、耳から体内に入って行く。
「はえ゛、え゛、ぉ、お、おっ!」
ガクガクと不気味に痙攣するFrotoを見ながら、Vandalieuは告白した。
「もしかしたら気が付いていないかもしれないから言っておきますね。俺は、とても怒っています」
VandalieuはFrotoの裏切りに怒りと失望を覚えていた。彼はFrotoに感心していたし、Aldaのbelieverなのに良い人だと思っていた。
だというのにこの裏切りだ。彼の安否を心配していた過去を消したいくらい。
「まあ、originally工作員だった貴方にしてみれば、気が付かなかった俺が間抜けなだけなんでしょうけど。騙される方がバカなんだって、そう言いたげな目をしてますし」
(そんな事思ってないぃぃぃぃぃぃっ!)
生きているFrotoの声はVandalieuに聞こえない。
そのまま蟲がFrotoにInfestし終わるのを待つと、Vandalieuは彼のbody partを掴んだ。
すると、音も無くFrotoのbody partがVandalieuの手の中に入って行く。
(わ、私はどうなるんだぁぁぁ!? 誰か助けてくれぇぇぇ!)
誰の耳にもその叫びを届ける事が出来ないまま、FrotoはVandalieuの中に消えていった。
「裏技ですが、parasitesをInfestさせた生物も【Insect Binding Technique】で装備できるのです」
Hartner Duchy内のDevil Nestsに居たGhoulや、農村から取引で手に入れた家畜をDungeonで運ぶために、Vandalieuは彼等に蟲をInfestさせ、体内に装備してTeleportationしたのだ。
尤も、その時は害のない蟲を一匹、それもDungeonでTeleportationする直前にInfestさせ、Talosheimに着いたらすぐに解放したが。
このままFrotoを生きたままTalosheimに運び、その後始末すれば死体をcultivation villageの人々に発見されたり、億が一にもGhost化したFrotoが村の周辺に出るような事も無い。
【Death-Attribute Charm】も完全無欠ではないので、念を入れられる余裕がある時は入れるに限る。
ただFrotoを装備した分容量が減ったのか、一匹だけ収納できなくなってしまった。
「容量barelyまで装備すると、こんな不測の事態が起きて困る事になるのか」
「キチキチキチ?」
どうするのと言いたげなPete。Lance CentipedeにRank upした今の彼は、アナコンダよりも大きい。
「……まあ、門番係の人達にはもう知られましたし、大丈夫でしょう」
ちょっと叱られるかもしれないが、maybe連れて行っても大丈夫だろう。
「とりあえず、mountain banditの処理が終わったらLemureをNiarkiの町やNinelandの周辺に配置しておかないと。虫Undeadも放って……はあー」
第七cultivation villageの人々はmountain banditの襲撃に驚き、それを防いだVandalieuやKasim達を称えた。朝だったのでそのまま宴には成らなかったが、mountain banditの装備を剥ぎ取ったり、死体がUndead TransformationしないようVandalieuに焼いてもらい灰を埋めたり、馬を集めたりしている内に昼に成り、そこで祝う事に成った。
「いちいち人のnameを叫ばないでよっ!」
「だ、だって、お前を守りたくて必死だったんだ!」
「だから、そう言う事を皆の前で叫ばないで! ……二人きりの時に言いなさいよ」
Festerは人を初めて殺したEmotional衝撃から立ち直ると共に、リナとの関係も進みそうである。
Adventurer’s Guildの職員と現役adventurerの男女はどちらかが引退しないと結婚できないらしいので、ゴールはまだ先だろうが。
「……なんか解せない。あいつがリナ好きなのは前から知ってるけど」
「解せないって言うか、単純に寂しいな。一人身って」
「知ってるか? Morrisの奴あのageで婚約したらしいぞ」
「あー、幼馴染の……彼女ってどうすれば出来るかな?」
KasimとZenoが遠くを見つめていたが。
(そう言えばBragaも春頃までは一人身仲間とこんな事を言っていたっけ)
「Vandalieu、お前のageだと分からないだろうけど……女の子とは仲良くしとけよ」
「……そうします」
これ、色々ばれたら後でグチグチ言われるだろうなと思いつつ、そうKasim達に答えるしかないVandalieuだった。
後、まだ体内で痙攣しているFrotoの事に関しては沈黙を貫いた。
その後、cultivation villageではAdventurer’s Guild出張所のリナが「二十人のmountain banditを全員撃退した」と報告し、Kasim達に報酬を支払った。……Golem達に倒された三十人の事は、村人は存在した事すら知らない。
Karcan達が乗っていた馬は、全てVandalieuの物に成った。originally mountain banditの殆どを彼が倒したので、報酬はKasim達、馬はVandalieuという割り振りになったからだ。
ただ、Vandalieuには使い道が無いので馬達は各cultivation villageに割り振られ農耕馬として第二の人生を歩む事になる。
「今、俺は一般人のままなので馬のお金を受け取ると商業と言う事で税金を納めないといけなくなるので、adventurerに成ったら適当に払ってください」
「うーん、良いのかい? 担保に差し出す物も碌に無いし……」
「良いですよ、馬の世話を丸投げするんですから」
それにもし生きたまま馬を連れ帰ると、Samが傷つく。
『Bocchanっ! 私という者が居ながら、生きている馬に走るんですか!?』
「Sam、そんな浮気した亭主を詰める-samaに言わなくても……」
前、地方の村から家畜や苗を集めていた時、うっかり農耕馬を一頭貰ってしまったので連れ帰ったら、こんなやり取りがあった。
どうやらVandalieuが空を長時間飛べるようになり、更にDungeon間をteleport出来るように成った事にSamは危機感を覚えているらしい。
(いっそ馬の賃貸業で商業guildに登録してこようかな)
ふとそんな事を考えるが、馬の由来に問題があるのでしばらく-sama子を見た方が良いだろう。
その後、実際にmountain banditを討伐した事で心構えが出来たKasim達はNiarkiの町で受けたDClass昇Class試験に無事突破したようだ。
その時点では、まだ何事も無かった。
《【Insect Binding Technique】、【Coordination】、【Strengthen Subordinates】、【Strengthen Follower】、【Death-Attribute Charm】、【Throwing Technique】skillのlevelが上がりました!》
《【Thread Refining】skillを獲得しました!》
年が新しくなって暫く、Lucas公子は杯に注がれたホットwineに口を付ける気に成れないまま、胡乱気な視線で体中を強張らせている部下を眺めた。
ここは彼の執務室で暖かさが保たれているのだが、あの部下の胆は冷えっぱなしの-samaだ。その証拠に、顔も肩も見るからに固そうだ。
このホットwineが必要なのは自分よりも彼かもしれないが、Lucas公子が彼に与えられるのは温もりではなく事務的な質問だった。
「それで、Karcan Lassenとその隊の行方は?」
部下の顔が一層強張った。
問題に成っているのは、二週間の予定で演習に出ていたKarcan Lassenと言うKnightと彼がCommandingする一隊が行方不明になっている事だった。
Lucas公子自身は、Karcanはnameと顔はMemoryの片隅に在るといった認識だった。弟のBeltonとの跡継ぎ争いで行った、数ある裏工作の内一つを担当している人物。
代々Hartner Duke 家に仕えるKnightを務めるLassen 家の出で……つまり代々一介のKnightで終った家系出身の、ごく平均的なKnightだった。
certainly一介のKnightが悪い訳ではない。領内をmonstersや犯罪者、敵国から守り、Soldierと領民の規範となる立派な務めだ。
しかし Karcanは自分のAbilityよりも上の地位を欲した。そこに今Lucas公子の前で強張っている部下……Red Wolf Knight団Delegation Leader Pablo Martonが注目し、工作の一つを任せられた。
「それが……予定を過ぎても何の連絡も無く、人をやって調べると演習予定地には居ないようでした。
それと、cultivation villageが二十人程の馬に乗ったmountain banditに襲撃されたが、無事撃退したという報告がAdventurer’s Guildに在ったそうです」
その答えに、Lucas公子はwineを飲んでいないのに眩暈を覚えた。
「なるほど。あのcultivation villageを、二十人程の馬に乗った、裕福なmountain banditが襲撃したという訳か。あの小さな村を? ……Pablo、もしやmountain banditは二十人では無く五十人以上いたのではないか?」
「いえ、Adventurer’s Guildのrecordでは二十人とありました。ですが……私もそう考えます」
つまり、Karcanは演習と偽って隊を率いて町を出て、mountain banditに扮してcultivation villageを襲撃し、そして返り討ちに遭ったという事だろう。
小さなcultivation villageに、正Knight三人とSub-Knightの五十人の隊が壊滅。mountain banditに扮するために幾分装備の質を落としていた事を考慮しても、信じ難い。
しかし去年のHartner DuchyではLucas公子にとって信じ難い事が幾つも起きていた。
Karcanがした事も、その末路も、Lucas公子にとって信じ難い事の一つだ。
「あの開拓事業には手を出すなと……いや、Beltonの醜聞が明らかに成った直後に全ての工作を中止しろと俺は命じたはずだが?」
Lucas公子は、「これは足の引っ張り合いをしている場合ではない」と裏工作の中止命令を出していた。
Belton自身は潔白だったようだが、複数の有力NobleがPure-breed Vampireに与した事は信じられない大事件だった。対応を誤ると他のDuke 家からの信頼を失うどころか、「人類の裏切り者にはとても任せられない」と公peerageの剥奪を訴える者達が大勢出かねない。
いや、その前に領内で反乱が続出するかもしれない。
あのまま足の引っ張り合いに始終していればHartner Duke 家その物が終わるかもしれない瀬戸際だったので、裏工作の数々は止めたのだが……何故Karcanは動いたのか。
「それが……どうやら、功を焦ったようでして」
「そうか。そんな人選をしたのだから、そうなるのも仕方ないか」
溜め息をついて、Lucas公子はこの問題をどう処理するか考えた。
演習中の事故で全員行方不明では拙い。拙いが、大きな問題ではない。
Karcanが率いていたSub-Knight達は、Knightのyoung child、中にはNoble 家の次男や三男も居た。当然、彼らの実家はLucas公子の支持者だ。彼と弟の間に起きていた争いを当然知っている。
だから行方不明では納得しないだろうが、それは多少強権を振るえば不満は残るだろうが黙らせる事は可能だ。
だが、問題はcultivation villageの動きが不気味な事だ。
「cultivation villageの連中、どう思う?」
「恐らく……弱みを握ったつもりなのではないでしょうか」
「同感だ」
五十人では無く二十人のmountain banditとしてAdventurer’s Guildに届けている。これをLucas公子は「この事は黙っておいてやるから、解ってるな?」と言うcultivation villageの意思表示だと解釈していた。
実際、今の時期にscandalは拙い。普段ならどうとでも出来るが、今はElected Kingや他のDuke達の目がこちらの粗を探している時期だ。どんな難癖を付けて来るか分かったものじゃない。
だから今回の真実を知っているという事は、充分な弱みに成る。
そのため、Lucas公子は「何らかの手段で、村人達と村出身のadventurerが総出でKarcan達を返り討ちにした」と認識していた。
VandalieuについてKarcanが詳しく報告していたら、Lucas公子たちも違うconjectureをしただろう。だがKarcanはVandalieuについて死の瞬間まで自分達だけで対処できると思っていたので、自分のAbilityを疑われる事を恐れるあまり報告していなかったのだ。
「恐らく、難民の中にSauron領のKnightか何かが紛れ込んでいるのでしょう。もしかしたら、独自の勢力を築くつもりかも知れません。
あの辺りはDevil Nestsも無く、Slave鉱山があんな事に成ったのでこれからは人も滅多に寄り付かなくなるでしょうから」
Pabloのconjectureにやはり放置はできないかと、Lucas公子は息を吐いた。
彼自身が難民達を邪険に扱い、下Class兵という名の消耗品として使い潰そうとしていた事や弟との跡継ぎ争いで同じようなcultivation villageを工作の結果幾つか潰している意識があるため、無意識の内に彼らを敵だと、「機会があれば自分を害する存在だ」と認識している事も関係していた。
それに自分が継ぐHartner Duchyに、Sauron領出身で正体不明の武力を持った勢力を放置する事は出来ない。
「Pablo、貴-samaの責任だ。Red Wolf Knight団で対処しろ」