まだ雪は降っていないが吐く息が白くなる寒さの中、KnightであるKarcanが率いる一隊が間道を南に進んでいた。
人数は五十人程で、Knight団の所属ではあるがKarcan以外には副隊長を含めた三人しか正式にKnight叙勲を受けている者は居なかった。
隊を構成するのはSub-Knightと言う立場にある者達で、将来のKnight CandidateやKnightのyoung childである者達だ。練度としてはKnightに劣るが平均的なSoldierと同じかやや上とされる。
そんな彼らがHartner Duchyの紋章が刻まれた鎧兜ではなく、古びて修繕の跡が幾つもある皮鎧を身に着けている。その姿は一見すると身綺麗なmercenary団のようだった。
「確かに気持ちの良いmissionではないがこれもLucas公子の為、Hartner Duchyの未来の為、そして我々の民草の為だ。そんな顔をするな、まるで敗残兵の-samaだぞ」
「ですが、本当に必要な事なのですか? 既にLucas公子が家督を継ぐ事は決まったのも同然なのでしょう?」
参謀格で参加しているLucas派の工作員、Vandalieuが善良なAldaのClericだと信じ込んでいるFrotoが、Karcanに意見を述べる。彼が言う通り、当初家督を継ぐのは難しいだろうと予想されていた長男だが母親が妾であるLucas公子の家督相続が、ほぼ内定していた。
Mage guildの元Guild Master、Kinarp達の行動によって明らかに成った、Evil God (M)派のVampireに複数のNobleが通じていた大scandal。それによって生じた大波に、当初家督相続が確実視されていたDuke 家次男で本妻の息子であるBelton公子は飲み込まれた。
自身の身は守れたものの、彼を支持する者達がVampireに与していた事が明らかになったため、家督争いから身を引く結果になった。Orbaum Elective Kingdomで公peerageに就く事は、Elected Kingに立Candidateする権利を手に入れるという事だ。身内に人類の裏切り者が居たのでは任せられないと、他のDuchyや現Elected Kingからの意見が続出したためだ。
対してLucas公子は自分の支持者や部下の中にVampireと通じている者が居ないか厳しく調べ、自ら狩り出し処断して見せるというShowを行った。
Belton公子も【Five-colored blades】に依頼する等して自身の潔白をappealしたが、一度疑われると狩り出された者も「蜥蜴のtailではないのか」と効果が弱くなる。
そして信用と有力な支持者を失い、Aldaを含めた全てのtemple関係者から距離を置かれた事で人心も離れBelton公子は失脚したのだった。
尤も、最悪彼自身も急Diseaseで何処かへ静養のため連れていかれたり、人里離れたtempleで信仰に生きる事に成ったりする可能性もあったので、それを考えれば失脚でも御の字だろう。
彼は今後Lucas公子がDukeを継いだら、Duke 家の分家として生きていく事に成る。
そして現Hartner Dukeは春まで持ちそうにないらしい。ここまで状況が整えば、余程の事が起こらなければLucas公子がDukeに成るのは決まったと考えて良いだろう。
今更Belton公子が行っていた開拓事業を潰して意味があるのか疑問に思っても仕方ない。
しかし KarcanはFrotoの耳元で囁いた。
「Froto -dono、そうは言うがこのまま何もしなければお前は元の閑職に戻るだけだぞ」
Frotoの顔が強張る。Mage guildの閑職に甘んじていた彼が、巡教のClericに身を扮してcultivation villageを巡って情報を集め、それをKarcan達に流していたのは、全てHartner Duke 家のお抱えMageに成るためだった。
栄達を手に入れるために苦労してきたのだ。それがこのままでは水泡に帰す。
「もう一仕事して望みの報酬を手に入れるか、それとも『ご協力感謝する』と言う言葉と小金を受け取って今まで居た場所に戻るか。どちらか一つだ」
「……分かりました」
そう迫られれば、断る事は出来なかった。
実際にはLucas公子にとってKarcan達の行動は利益にならない。それどころか、僅かだが不利益に成る。
ただKarcanの上役も立て続けに起こっている事件への対処に追われており、明確に開拓事業潰しのmissionを中止するとの命令を彼に伝えていなかった。
『現状待機』
これがKarcanの受けた命令である。Lucas公子自身や彼を支持するKnight団上層部の、今は迂闊に動くべき時ではないという意思が端的に込められている。
しかし Karcanはそれを深読みし、「お前達にはもう期待しないから動くな」と言われたのではないかと思い込んだ。そしてこのままでは自分は、Successor争いに何の力にもならなかったと切り捨てられるのではないかと恐れた。
そして当初計画していた「演習と偽って町を離れて間道に入り、mountain banditに扮してcultivation villageを襲って壊滅させる」と言うtacticsを実行しようとしているのだ。
冷静に考えれば思い留まれそうなものだが、裏の仕事を割り当てられていたKarcanの猜疑心は普段より強く、視野は狭くなっていた。
動かなければ、Frotoに言った事が自分にも降りかかるのではないか。そんな疑心暗鬼に駆られているのだ。
だが表面上はそんな追い詰められたMental conditionにあるとは微塵も見せず、Karcanは自分が率いる隊の者達を見回す。Frotoは納得したし、元からSpyだった偽商人は黙々と進んでいる。だが、他の者の士気は高いようには見えなかった。
『このままでは拙いか』
cultivation villageの戦力は、大した事は無い。一番大きな第七cultivation villageでも人口は約二百五十人で、専業のSoldierは居ない。adventurerは難民出身の者が三人居るが、情報ではまだEClassで最近やっとDClassへの昇Classが見えて来たところらしい。実力的には、隊のSub-Knight達と変わりないだろう。
五十人も居れば皆殺しにする事は難しくない。adventurer達は注意する必要があるが、注意すれば問題無い程度だ。
唯一の気がかりはDhampirの少年だ。何故か町から逃走したので所在の確認が出来なかったが、万が一今もcultivation villageに居たとしても、治癒magic以外ではDClass adventurerと同じ程度の戦力だ(と彼等はconjectureしている)。Frotoの付与magicを受けたKarcanを含めた正Knight達で囲んでかかれば一方的に始末できるだろう。
だが、士気の低さは良くない。気が緩むと思いもよらない失敗をするものだ。cultivation villageから生き残りを、それも自分達の顔を見た生き残りを出したり、油断して返り討ちに遭ったり。
それは避けたい。
仕方ないかとKarcanは割り切ると、彼が率いる若者達をその気にさせる言葉を発した。
「諸-kun、このmissionは汚れ仕事だ。成し遂げても、表向きには我々は演習を行ったに過ぎないので賞賛される事は無い。
だが、missionの性格上我々はmountain banditに扮する必要がある訳だ。mountain banditが無力な村でする事と言ったら、何だ?」
Karcanの言葉を、最初は訳が分からないという顔つきで聞いていたSub-Knight達の顔がはっとする。
mountain banditが村でする事と言えば、略奪に暴行、強姦、拉致というのがtheoryだ。
「隊長っ!? 良いんですかっ」
普段Sub-Knight達は厳しい規律の下生活している。彼らは近く正Knightの親からKnight位を継ぐ身であるため、普段から武芸や学術に励み、Soldierの模範と成らなければならない。
将来はSoldierをCommandingし、剣を持って国を守る立場にある。そのため大っぴらに美食や酒を愉しむ事も、色街で女を抱く事も簡単には出来ない。
特にSauron領がAmid Empireに占領されてからは、常在戦場と言わんばかりの空気が漂っていて少しのハメも外す事が出来ない。
そんなSub-Knight達にKarcanは言った。
「certainlyだ。ただ、誘拐はnoneだ。-chanとmountain banditらしく愉しんだら、mountain banditらしく始末しろ。
childが出来る心配はしなくて良いからとハメを外し過ぎるなよ! 腰を抜かして馬に乗れなくなった奴は引きずって行くからな」
途端沸き立つSub-Knight達。中には女よりも臨時収入が手に入る事を期待している者もいるが、やはり大多数は女を好きに犯して良いという異常なシチュエーションに、興奮を隠せない-sama子だ。
そんな中、Frotoはこれから自分達がcultivation villageで起こすであろう未来を想像して流石に青くなった。
originally彼の役目は情報収集だったので、村人達が嬲り殺しにされるところを直に見る事に成るとまでは考えていなかったのだ。
死体を目にするのと、目の前で嬲り殺しにされるのを見るのでは、やはり受ける衝撃が異なる。
だが、今更止めようとは言えないし逃げ出す事も出来ない。
(恨むならお前達の故郷を奪ったAmid Empireを恨んでくれ、私は何も悪くない、ただ私自身に見合った地位が欲しかっただけなんだ)
偽Clericはそう責任転嫁するだけだった。
冬支度を順調に済ませた村々を見て回ったVandalieuは、各村で何時もの治療を行い、こっそりGolemを配置したら第七cultivation villageに戻っていた。
そして『何でも屋』で移動の途中で獲った鼠のmonsters、Rank2のBloodsuckingラットをCookingしてもらい、見た目よりコクがあって美味い肉を皆に振舞った。
そしてKasim達と同じroomに泊まった。
(とりあえず、順調)
Slave鉱山が無くなった事でcultivation villageにはpeddlerが来なくなってしまったが、春までは問題無いらしい。温かくなったら村の若い衆をKasim達が護衛しながら町まで買い出しに行かなければならないそうだが。その際、商業guildに寄って、誰か行商に来てくれないか相談してみるそうだ。
彼等はTalosheimの国民ではないと言っても、自分を慕ってくれている人達だ。Gopher達を助けるためだったが、彼等に不利益を及ぼした事にVandalieuは若干の罪悪感を覚えていた。
(Dark nightのfangsが健在なら手を回せたのですけど……この人達俺の国に来ないかな?)
そうすれば色々enduranceする事は無い。既にいるFirst cultivation villageの面々の-samaに家や家具、食べ物を与え、仕事を斡旋する事が出来る。
Gobu-gobuなんて保存食ではなく美味い恐竜の肉を、たっぷりの調味料で味付けした物を食べてもらえる。
各村にLemureの見張りや、Stone GolemやDeath Iron Golemを数十単位で配置する必要はない。Hartner Duke 家が何をしようと、今や第六城壁建造中のTalosheimで安全に暮らしてもらえる。
いっそ全てを話してしまうかと、思わなくもない。
だが、それはcultivation villageの人々にHuman社会から決別する事を迫るのと同じだ。
それが彼等の幸せに繋がるかどうか、Vandalieuは自信が無い。
Hartner Duchyがもう少し信用出来たら、政府やguildの奥深くまでPure-breed Vampire達と繋がっていなければ、もっと採れる選択肢も多かったのだが。
(やはり、Pure-breed VampireとHeinz達が邪魔だ。何とかして消す……せめて数を減らさないと)
真っ当な手段で何かしようとすればPure-breed Vampire達が邪魔になる。真っ当でない手段を取ろうとすると、Heinz達が邪魔になる。
Pure-breed VampireとHeinz達は敵同士の筈なのに、まるで手を組んでいるかの-samaにVandalieuの道を阻んでくる。
(一人は、状況が揃えば始末できる。そこから上手く行けば……ああ、でも『上手く行く』可能性を前提とするのは危険か。Kinarpに持たせた情報で何処まで追い詰められるか分からないし、timingが合わないと……Chipuras達は霊の損傷が酷くて何を聞いても要領を得ないし、Islaの情報だけじゃ……)
Heinz達のやり方は、派手だ。そのお蔭でLemureに町の上空から見張らせるだけで戦闘がある事が解るし、死者の霊を見つけて【Spirit Communication】する事も出来るのだが……霊の損傷も大きいのはどうにかならないだろうか。
Terneciaの腹心、【Five Dogs】の内【猟犬】のIslaはすぐUndeadにしたからMemoryの損傷はほぼ無い。しかし Heinzに真っ二つにされた【Distinguished Dog】のChipurasの霊は損傷だらけだ。
霊が手に入りそうなのは残りの【Lunatic Dog】と【Fighting dog】の二人。五人目の【Foolish Dog】は秘密の隠れ家から動かないらしい。【Lunatic Dog】か【Fighting dog】が良い情報を提供してくれると良いのだが。
そう思いながら、【Dark Vision】skillのお蔭で昼間同然に見えるroomの天井を見上げる。
眠れない。
何故かtonightは【Insect Binding Technique】skillの効果でVandalieuの体内に居るPete達がnight遅くまでワシャワシャと動き回り、skinの下を這う感触がしてVandalieuの安眠を妨げていた。
くすぐったくて、思わず「フ、フ、フ、フ」と笑ってしまう。
【Abnormal Condition Resistance】が睡魔も抑えてしまうので、こうなると完全に目が覚めてしまう。仕方ないと、Vandalieuは起きる事にした。
そろそろnight明けも近い。朝のTrainingでもして時間を潰そう。
音も無く二段ベッドの上から這い降りたVandalieuは、床にハンカチ程の大きさの鞣した皮を敷くと、まだ眠っているKasim達を起こさない-samaにtongue立て伏せを始めた。
腕ではなく【Body Stretching:tongue】skillの効果で伸ばしたtongueで全体重を支える、過酷なTrainingだ。tongueはmuscleで出来ているのできっと効果も高いだろう。
Kasim達に見られたらかなりの問題だが、三人はHumanでnight目が利かないので起きて来てもすぐ止めれば問題無い。
だが、Vandalieuはほんの数回でそれを中止した。村の周囲に配置してあるLemureがmountain banditらしい複数のshadowを見つけたからだ。
(……何だ、こいつ等?)
Lemureを通して見ると、数十人程の皮鎧を着て布を口元に巻いた武装集団で、それだけならただのmountain banditなのだが、何故か馬に乗っている奴らが多い。
一人二人ならin any case、二十人程が乗っている。それも逞しい馬ばかりで、先頭のカイトShieldを持った男が跨っている馬なんて思わず触れたくなるほどムキムキだ。
普通のmountain banditは略奪品を運ぶ馬車はin any case、騎兵は揃えない。馬は何でも食べる訳ではないので餌代がかかるし、本来はcowardな生き物だ。そしてmountain bandit自身、originallyは食い詰めた農民やSlum街の住人が堕ちるものなので、Mountして戦う技術は無い。だから、軍馬なんて持っていても餌代の無駄だ。
そもそも、小さい村一つ襲うよりもその軍馬を売った方が大きい儲けになるのだから。
実際、Vandalieuがこれまで襲って略奪を繰り返してきたmountain bandit団でも、騎兵は一人も居なかった。
(じゃあ、このmountain bandit団は食い詰めたmercenary団かもしれない)
普段はmercenaryとして働き、仕事が無い時はmountain bandit行為で食いつなぐ。そんな連中がLambdaには存在する。
そしてそんな連中は戦場ではmercenaryとして自身の武力を売りに金を稼いでいるため、普通のmountain banditと比べると圧倒的に強い。
少なくとも並のSoldierよりも強いし、skillだって持っているしMartial Artsだって使用してくる。
そして遅ればせながら、【Danger Sense: Death】が反応する。このままだと村が壊滅するかも……いや、確実に壊滅する。
「拙い……」
純粋な敵としては脅威なのではない。mountain bandit団がVandalieu一人を狙って襲ってくるだけなら、彼は何時か駆逐したGoblin Kingと千匹の群れの時同-samaに圧倒する事が出来る。
難しいのは村人に犠牲を出さずに勝つ事だ。今までの-samaに自重していたら、確実に手が足りない。
……仕方ない、少し本気を出そう。
Vandalieuは素早くroomに置いてあるKasim達の装備に【Energy Absorption】や【Bloodshed Enhancement】をかける。
「mountain banditの襲撃だー!」
そして【Scream】skillを使って出した大声で、Kasim達を叩き起こす。
「しゅ、襲撃!?」
「この村をかぁ!?」
流石にまだ新米でもadventurer。驚きながらも素早く起き出してくるKasim達に、Vandalieuは手早く状況を説明する。
「数十人程の屈強なmountain banditが村に迫っています」
「何だって!? 本当か!?」
「はい、蟲の知らせで」
Pete達がざわめいて眠れなかったから早めに気が付けたので、嘘ではない。
それを聞いたKasim達は大慌てでWeapon Equipmentや鎧を身に着け始める。
「Festerだったら疑うところだがっ」
「Vandalieuだからな!」
「俺と違って寝ぼけるとかないし!」
どうやらFesterは寝ぼけた事が過去に在るらしい。
「でも屈強なmountain banditって、俺達で大丈夫か?」
「四の五の言うなっ、数十人だぞ、大丈夫じゃなくてもやるしかないだろっ!」
「maybe一対一なら何とかなると思いますよ」
緊張が声に滲んでいるZenoやKasimに、(付与magicもかけてあるし)と保証するVandalieu。
実際、昨日Kasim達は「もうすぐDClassへの昇Class試験を受けられそうだ」と言っていたので、既に並のSoldier以上の実力がある。後は人を殺す事が出来れば、殺しても心を乱さずにいられれば、一対一なら簡単には負けないはずだ。
しかし意外な事にKasimでもZenoでもなく、Festerが真面目な顔をしてVandalieuに話しかけた。
「なあ、Vandalieu。コツとか、知ってるか? 人をこ……戦う時の」
どうやら彼等は、Vandalieuと稽古や模擬戦を繰り返すうちに彼が対人戦の経験もある事を何となく感じ取っていたらしい。それでこれまで人型の生物はGoblinやKoboldしか殺した事が無い自分達に、助言を求めているのだ。
「コツですか」
しかし、改めて尋ねられると返答に困るVandalieuだった。今まで何人も直接殺し生きbloodを飲み、死体をUndeadにして利用して来た彼だが、その際特別何かを思った事や覚えた事は無い。彼の主観では人を殺すのも、釣った魚を捌くのも何も変わらないのだ。
こうしている間もmountain banditは襲撃の準備を整えている。三つのgroupに別れ、弓兵と歩兵は回り込んで村を囲み、その包囲が終わるのを待って、騎兵の半分は村に二つある門の内街道に面した表門から、残り半分は狭い裏門から襲撃するつもりらしい。
まず騎兵で攪乱し、逃げ出した村人達を弓兵と歩兵で仕留めるつもりらしい。
(Golem起動、敵が近づき次第排除抹殺)
(Princess Levia達は透明なまま上空で待機)
(うーん、Festerになんてアドバイスしよう?)
【Parallel Thought Processing】でLemureとGolemに指示を出し、Levia達を配置に着かせ、Vandalieuの頭は忙しく回転する。
結果出た答えは、陳腐なものだった。
「戦わなかった場合、負けた場合起きる事を想像する事です」
「想像?」
「はい。俺達が負けたらmountain bandit団はこの村で何をするか、奴らがリナ-sanをどうするか」
『何でも屋』の看板娘で、Adventurer’s Guild出張所のただ一人の職員であるリナ。mountain bandit団が若い彼女を見つけたらどうするつもりか、説明するまでも無いだろう。
そして彼女の事が好きなFesterは剣を握りしめた。
「……分かった。まだ人が殺せる自信は無いが、怖気づくのも吐くのも終わってからにする」
Earthの漫画で見た、戦うのを嫌がるprotagonistを奮い立たせたheroineの台詞を使ったが、思ったよりも効果的だったらしい。
(『相手をpumpkinか何かだと思え』と言うのとどちらが良いか迷ったけど、こっちで正解だったか)
「安心しろ、-chanと盾職の俺が守ってやるからさ」
「俺は背中を守ってやるけど、摩ってはやらないからな。それは後でリナに頼め」
「いや、本当に吐くって訳じゃ……クソっ、それでVandalieu、何処に行けば良い? やっぱり表門か?」
「三人は裏門をお願いします。十人程騎兵が来るので、俺が行くまで持ちこたえてください。村の人達には、家から出ないよう声をかけて。
表門は、俺が処理します」
「分かった!」
普通自分達の半分程のageの少年が一人でやると言い出したら止めるべきだが、Kasim達はVandalieuが自分達三人で一度にかかっても勝てない力量の持ち主だと知っているので、木戸を外して飛び出していく彼を引き止めず、裏門に向かった。
「襲撃!! 襲撃!! mountain banditの襲撃!! 戸締りをして家で待機!!」
【Scream】skillでそろそろ起き出して来るだろう村人達に警告する大声を聞きながら。
「騒がしいな、まさか、気が付かれたんじゃ?」
「気が付かれてもtacticsは変わらん! 所詮新米adventurerとただの村人だ!」
怖気づく部下を大声で叱咤して、Karcanは剣を抜いた。
cultivation villageの方から聞こえる甲高い声に嫌な予感を覚えたが、それを無視してKarcanはtacticsの開始を告げた。
「遠慮する事は無い、奪って殺せ! これは正義の為だっ!
さあ、行くぞbastard共!」
そうCommanderが駆け出すと、mountain banditに扮したSub-Knight達も荒々しく雄叫びを上げ駆け出した。
「ひぃっ! 本当に来た!?」
「idiot bastard、狼狽えるな!」
村の表門でnightの見張りをしていた村の男達が、近付いてくる雄叫びと蹄が立てる恐ろしい音に青い顔で震え上がる。
やはりGoblinや獣とmountain banditでは、受ける衝撃が違うようだ。
「senseiっ! 後は頼みます!」
「どーれ」
訪れる度に医療行為をしているため、senseiと呼ばれる事も多くなったVandalieuは、mountain banditを皆殺しにする手順を整えた。
普段はmercenaryをしているmountain bandit団だろうが、今のVandalieuからしてみれば雑魚でしかない。近付いて来たところを【Mana Bullet】で打ち、適当にclawsを振るえばそれで終わりだ。
だが、奴らは馬に乗っている。
(この村にとって中々の現金収入に成る筈)
なので、馬は生かしておきたい。風向きが逆ならまず揮発性の麻痺毒を撒くだけで良かったのだが、生憎こちらが風下だ。
「ではよろしく」
そう言うと、黒い炎の槍が八本出現する。
「うわっ、magicか!?」
「はい、Fire-Attribute Magicです」
さらりと村人に嘘を付いて、【Dead Spirit Magic】を放つ。
「門は俺のMartial Artsで破壊する、俺に続け――がっ!?」
先頭で剣を振り上げていた男の胸に、Black Flameの槍がthrust刺さり、そのまま二本目三本目と続き、男――Karcanの臓腑を焼き焦がす。
木の門の上に浮いた、白髪の小さな少年を見つけ、Karcanは愕然とする。
(BAKANAっ!? 治癒magicとUnarmed Fighting Techniqueだけでは無かったのか!?)
そして愕然とした顔のまま、馬上から転落した。
「た、隊長!?」
「Karcan -donoっ!?」
動揺して隊列を乱し、馬を止めてしまうKarcanの部下達とFrotoの-sama子を見ながら、chanceと言わんばかりにVandalieuは続けてBlack Flameの槍を放ちながら、クナイを投げる。
「ひぎゃあっ!?」
「せ、【Stone Wall】! ぐああっ!?」
「がっ……ど、毒だっ! 毒が塗ってある……かはっ」
次々に胸を貫かれ体内から焼かれるか、DataraやTareaが作った特製クナイ(Cursed Weapons化済み)によって傷つき毒にやられて倒れるKarcanの部下達。
中には咄嗟に盾を構えてMartial ArtsをActivateする者も居るが、【Shield Technique】のlevel1のMartial Artsである【Stone Wall】程度では、Vandalieuの【Dead Spirit Magic】や【Throwing Technique】には意味を成さない。
【Mysterious Strength】skillを4levelで習得した彼が投げる、DragonのboneやDeath Ironで作られCursed Weapons化したクナイは、ちょっとした砲弾並のAttack Powerがある。しかも毒まで塗ってあるので、掠り傷でも負えばそれで終わりだ。
「ヒィィィッ!」
最後尾にいたFrotoがいち早く逃げ出すが、その背にVandalieuはクナイを投げようとして……死んだ事により【Death-Attribute Charm】の効果を受け、擦り寄って来たKarcan達の霊の言葉を聞いて動きを止めた。
「Pete、皆、捕まえて置いてください」
Peteを含めた数十匹の蟲型のmonstersがVandalieuから飛び出すと、Frotoを追って行く。
そして残りの蟲で馬に麻痺毒を注入させ、まだ息があったmountain banditを【Dead Spirit Magic】で黒焦げにする。
「何もそこまでしなくても……」
「まだ息がありましたから、念のためです」
村人に何度目かの嘘を言うVandalieu。だが仕方ない、何故ならこのmountain banditは……Karcan達はこの国のKnightだったのだから。
Karcan達が何故cultivation villageを襲撃したのかまだ細かい事情は聴いていないが……。
(拙い事に成った。こうなったら、Knight達は全員身元が分からない-samaに殺さないと)
そう思いながら、Vandalieuは身を翻す。
「ところであの蟲っぽいものは!?」
「俺の愉快な仲間達です。心配しなくても大丈夫。では、俺は裏門の方を見て来るので」
背中に村人達の「分かった!」「頼んだぞ!」と言う声を聞きながら、VandalieuはKasim達が戦っている裏門の方に向かった。
「senseiって、Tamerだったんだな」
「おー、凄いよな。あ、でも黙って村に持ち込んだ事は後で一言言うべきか?」
「そうだな……でも昨日水虫を治してもらったばっかりだしなぁ」
「そう言えば、俺も歯痛を……軽く注意しておくぐらいにするか」
「そだな」
馬が逃げない-samaに繋いでいく門番の男達は、蟲型のmonstersがTamer guildではTamerできないmonstersとされている事を知らなかった。
実際にTamerの姿を見ない人々の知識はその程度である。