peddlerのRudyは、自分は恵まれていると思っていた。
Maggio Viscountの御用商人の家の三男として生まれたRudyは、生まれた順番のせいで家を継ぐ事は出来なかったが、両親も兄二人も彼を差別せず育ててくれた。長男次男と同じ高度な教育を施し、「お前は家を継げないから」と早くから独立のための準備をさせた。
そして成人したRudyは、まずpeddlerとして経験を積む事から始めた。実家からの援助金を受け取ったのは独立した時の一度だけで、-sama々な苦労を経験しつつもそれなりにやって来られた。
そして行商も三年目。そろそろ貯めた金で馬車を買って他の商人を誘い隊商を組むか、それとも何処かに腰を落ち着けて店を開くかと考える程度には、商売は上手く行っていた。
だが、数日前mountain bandit団に襲われた事でRudyは運が尽きたと思った。
護衛にEClassのadventurerを二人雇っていたが、mountain bandit団は二十人程いて数の暴力の前にやられてしまい、もっと護衛を雇うべきだったと後悔したがもう遅い。
商品と金を奪われ、命も取られそうになった時に叫んだ言葉は「私のfamilyなら身代金が払える!」だった。最低の命乞いだ。
だが、誇り高く死ぬのは商人の仕事じゃない。familyに迷惑をかけてしまうが、何とか生き残って商売を立て直さなければ。familyが払ってくれた身代金は、その商売で返せばいい。
一番良いのは、颯爽と現れたadventurerやKnightの一団がmountain bandit団を討伐して自分を助けてくれた上に、奪われた金と商品を奪い返してくれる事だが、世の中そんなに上手くは行かないだろう。
そう思いながら、暗くジメジメした地下牢での監禁生活に耐えているRudyの耳に、物音が聞こえた。
『誰か地下に降りてきた?』
梯子で誰かが下りてくる小さな音に気が付いたRudyは、粗末でやや臭う毛布から身を起こすと木の格子の外側を見つめるが、真っ暗で何も見えない。
mountain banditが下りて来たなら、蝋燭や生活魔法の灯を灯してくるはずだ。気のせいかと思ったが、ヒタヒタと裸足で何者かが近づいてくる足音が聞こえる。
そしてその足音は、牢の前まで来ると止まった。しかし、闇の中には相変わらず何者の姿も見えない。
「だ、誰だ?」
得体の知れないhorrorに声を上擦らせながらそう問うと、地面の方から声がした。
「ああ、すみません。ここが暗い事に気がつきませんでした。【Demon Fire】」
ぼぉ。青い握り拳程の大きさの炎が、地下牢を照らした。
「っ!? ゴッ、Ghost!?」
Rudyの目に映ったのは、ボサボサに乱れた白い髪に蠟の-samaに白い肌の、布きれ以上服未満のボロを纏った幼児だった。
その生気の無い姿に、Rudyはこの幼児はmountain bandit団に殺されたchildが化けて出たUndeadだと思い込み、毛布を抱きしめて震え上がった。
「……いえ、生きています」
Rudyのscreechに『もしかしてこの人も霊が見えるのかな?』と驚いたVandalieuだが、自分が怖がられているだけだと知って、肩を落とした。一応助けに来たのにそこまで怖がらなくてもと、自分のappearanceを棚に上げて不機嫌になるが、気を取り直して話を続ける。
「貴方を捕まえたmountain bandit団は、全員始末しました。それで俺は見ての通りadventurerではなく、Dhampirです」
淡々と言葉を続けるVandalieuに、Rudyは徐々に落ち着きを取り戻して行った。ただ、あまり自分の立場が好転していない事に気がついて、顔を青くしたが。
「Dhampir……じゃあ、私を殺すのか?」
Dhampir。Rudyが生まれ育ったこの国では、monstersの一種であり討伐対象だ。特に、God of Law and Life AldaのCleric達は特殊なUndeadであると言って憚らない。
なのでadventurerやKnight団と違って自分を助ける義理は無いどころか、こうして顔を見てしまった以上口封じに殺される可能性が高い。
しかし、目の前のDhampirのchildは首を横に振った。
「いいえ。俺の事を黙っていてくれるなら、殺すつもりはありません」
「ほ、本当か?」
「はい。あなたは一度mountain banditに捕まったけれど、mountain bandit団同士の抗争のどさくさに逃げ出す事に成功した。そう言う事にしてください。
その代わり、俺については誰にも、一言も話さないでください」
半信半疑といった-sama子のRudy。彼から見れば、善良な悪魔にでも出会ったようなものだから無理も無いが。
実際、Vandalieuもこの若きpeddlerの口を封じてしまった方がいい事は分かっている。しかし、彼にはRudyを出来る限り殺したくない理由があった。
『日頃の行いは、出来るだけ良くしておきたい。将来のために』
と言う、simpleな理由である。
自分の身を守るためなら、Lambda全体で殺しても罪に問われないmountain bandit等なら、別に良いのだ、殺しても。しかし、Rudyのようなただの被害者を、自分の安全のために殺してしまうのは外道と言うしかない行いだ。
そうした行いは、たとえ他人に知られなくても自身の人格に甚だしい悪impactを与えると、Vandalieuは考えていた。
実際、Earthで自分を差別した叔父family、ferryを爆弾で自分達ごと爆破沈没させたterrorist達、Originで自分を含めて大勢のHumanに人体実験を行っただろう科学者達は、外道に堕ちた狂人にしかVandalieuには見えなかった。
彼らと同じ外道に堕ちた狂人になる訳にはいかない。
彼らを嫌悪しているから、同じ存在に成りたくないという気持ちが無いわけではない。だがそれ以上に、VandalieuはこのLambdaで、EarthやOriginでは味わえなかった幸福な人生を歩みたいという願いがある。その願いを叶えるためだ。
裕福で快適な生活に、familyや友人に囲まれた温かいHuman関係。それを外道狂人の類が築き、破綻させずに維持する事が出来るだろうか?
それに、後半世紀程先だろうが将来reincarnationしてくるAmemiya Hiroto達Cheat共に、もし外道に堕ちていたら正義の名の下に粛清されかねないという問題もある。
奴らはCheatなので、証拠一つ目撃者の一人も残さなくても過去の罪を暴き出しそうな気がする。きっと人の心を読んだり、過去を見たり、直接的に罪を暴くような特殊Abilityを持っているのが何人かいるだろうし、magicの適性も高いはずだから。
なので、出来ればRudyの-samaなただの被害者を殺すような事は避けたいのだ。
「それでいいなら、分かりました。私はadventurerでもなんでもないからね」
そして幸いな事にRudyは熱狂的なAlda believerという訳ではなかったので、Vandalieuの条件を飲んで生き残る方を選んだ。
更に彼が賢明だったのは、Vandalieuを見た目の幼さで侮らなかった事だ。自分の腰よりも、更に低い所に頭があるこのchildを、恐れて慎重になった事だ。
尤も、Rudyにとっては当然の対応だったが。
見た目にそぐわない大人びた口調に、漂わせている不気味なsign。とてもただの幼児には思えない。
がちゃりと、mountain bandit団の頭が持っていた牢の鍵を使って南京錠を外す。自由に成ったRudyはほっと安堵の溜め息を吐くが――
「ああ、もし俺の事を誰かに話したら悪霊を放つので、心変わりはしないでくださいね」
念のためにとVandalieuに脅されると、Rudyは青い顔でガクガクと頷いていた。
縄梯子を上って地上に出たRudyは、転がるmountain bandit達の死体とblood塗れのUndead達、そしてRank upしてwhole bodyを青白い淡い光に包んだBone Birdが、不吉な鳴き声を上げながら歓喜しているのを見て震え上がった。
そして、たとえ白金貨で山を作られても絶対にこの事は秘密にしようと誓ったのだった。
mountain bandit達が飲んでいた酒を飲んでhorrorを紛らわせながら朝を迎えたRudyは、Vandalieuからmountain bandit団に奪われた自分の荷物を受けとった。更に「生きている馬は使えないので」とmountain bandit団の馬を譲られた。そして同-samaに譲られた彼が他のmountain bandit団から奪った荷車に繋いで、去って行った。
護衛も無い一人旅だが、周辺を縄張りにしていたmountain bandit団はVandalieuに全滅させられているので、Goblinの群れに出くわすような不運に見舞われない限り、無事目的地に辿り着く事が出来るだろう。
期せずして馬を手に入れた彼は、これを機に馬車を買い隊商を組んで商売を広げる事になるのだが、それはVandalieuにはあまり関係の無い話だ。
一方Vandalieuはnightが明けるまでの間に、Undead達の欠けたboneを予備parts……これまでに手に入れた動物や人のboneと交換し、Phantom BirdにRank upしてSpirit Formの翼を手に入れFlightする事が可能になったBone Birdと遊んだり、mountain banditの死体を埋めたりして朝まで過ごし、その後ぐっすり昼近くまで眠った。
Rudyの見送りは、Bone Man達に投げっぱなしで。
VandalieuにとってRudyはただの他人に過ぎないとは言え、あんまりかもしれない。
そして目覚めたVandalieuは、mountain bandit達の食べ残しで昼食を取った。
menuは塩を振って焼いた肉に、breadとcheese。salad代わりの野菜の乾物に、干し魚のsoup。dessertは森で手に入れた果物。
「mountain banditの方が食生活豊かだ……」
食べながら、気がつきたくなかったその事実にVandalieuは若干落ち込んだ。
mountain banditを襲撃してその食料を手に入れているお蔭で、硬くて臭い狸や狐の肉をenduranceして食べていた時よりは、大分食事事情も改善した。しかし、Cursed Tool等のUndead TransformationさせたCooking器具を使ってCookingをすると、中々上手くいかない。
Cursed Toolは悪霊に憑りつかれて自ら動き出した道具のmonstersだが、力も器用さも無い。そのため、Cookingにははなはだ不向きなmonstersだった。
ならBone Manにでもやらせればいいのだが、Bone Manも宿っている霊は人の物では無くoriginally虫やmouse等の小動物の霊なので、Cookingという概念を持ってない。「野菜を切れ」と頼めば、野菜に向かって剣を思い切り振り降ろしてまな板まで切断するだろう。
剣や弓を覚えただけでも、成長としては十分すぎるのだ。
そしてVandalieu自身はというと――
『ダメ! まだ一ageなのにCookingなんて! 火傷したらどうするの!?』
「でもkaa-san、干し肉や焼き固めたbreadを直接食べるのは一age児のstomach腸には悪いと思うよ。俺は普通の一age児の数倍chinの力はあるけど」
『ダメったらダメ! 火傷したらどうするの!?』
「……水と【Heat Leech】で冷やす」
Death-Attribute Magicは生命attributeの反対なので、回復の類は苦手だった。無い事は無いのだが、それは「致命傷や重Diseaseは治せるけど、命にimpactのない軽傷は治せない」と言う、非常に微妙なものだ。
whole body大火傷なら治せるが、手のskinがケロイド状になるくらいだったら今のVandalieuの技量では難しいだろう。
『じゃあダメっ!』
「はーい」
恐らく生前、「childが小さい内は火傷を負わないように気を付けよう」と強く意識していたせいだろう。それが死後、霊に成った事でrunaway気味になっているのかもしれない。
ただ、一ageに成ったばかりのVandalieuの手足は短く、鍋を扱うと思わぬinjureをする可能性があるのは確かであるため、Darciaの主張も間違ってはいない。
結果、現在はWood Golem Transformationした薪にbody partを擦り合わせさせて火種を作ってもらってお湯を沸かし、そこにBone Man達が砕いたbreadと千切った干し肉を投入して煮込んだ物が、Vandalieuの常食になっていた。
味は……まあタヌキやキツネのミートBallよりはマシ。
「いいんだ。大人に成ったらたく-san稼いで、腕の良いChefを雇って毎日美味しいご飯を食べるから。
ええっと、それよりも今日の収穫は……」
まず、mountain bandit達のWeapon Equipment。他のmountain bandit団ではknifeを木の棒に括り付けた手製の槍や、棍棒、弓矢等品質が低い物ばかりだったが、流石この辺りでは最大規模のmountain bandit団だ。全員良いWeapon Equipmentを持っていた。
材質は普通の鉄だが、型に金属を流し込んで作った鋳物では無く-chanと職人が焼きを入れた物だ。その内幾つかは刃毀れしていたりBone Monkey達に砕かれていたりするが、抵抗の余地なく一撃で殺されたために無傷のWeapon Equipmentも多い。
それはmountain bandit達が着ていた皮鎧も同-samaで、修繕に修繕を重ねていた他のmountain bandit団の物と比べればずっと上物だ。
きっと、Weapon Equipment商人の馬車でも前に襲った事があるのだろう。
後は馬車の中に在った財宝。Rudyの荷物は全て渡したが、それでもかなりの量が三頭立ての馬車の中に詰まっていた。
まず現金が約五万Amid。次に、詳しい価値は分からないがaccessory類が少々。色も綺麗な上物の生地が一山、上物らしいwineの樽が二つ。更にMirg Shield NationではProductionされていないため高Class品になっている砂糖。
そしてmountain bandit達の予備のWeapon Equipmentに、食料。
馬車main bodyも含めると、二十万Amid以上の価値になるだろう。Japan円に換算すると二千万と、大金ではあるが財宝という程では無いように感じるだろうが、Evbejia以外に町が無いこの辺りでこれほど略奪したのは中々のものだと言えるだろう。
この場合mountain bandit団の手際を褒めるのではなく、警備隊の不手際を責めるべきかもしれないが。
「まあ、食料以外はあまり意味無いけど」
相変わらず現金は使う機会が無いし、生地は頑張って服作りに挑戦した結果今着ているボロしか出来なかったし、mountain banditのお宝を活用しきれないVandalieuの現状は変わらなかった。
だがWeapon Equipmentと鎧はBone Manが使えるし、皮鎧をバラバラにすればBone MonkeyやBone Bearのboneを守るDefense Equipmentに出来るだろう。
だが、幾らお宝があってもtransportation手段が問題だ。馬は全てRudyに渡してしまったので、残っているのは馬車のcarriageのみ。Bone Bear達に引っ張らせるつもりだとしても、馬車の改造が必要になる。
しかし、Vandalieuには考えがあった。
「さて、誰にしようかな」
Vandalieuが周囲の霊を見回して呟くと、死んだばかりのmountain bandit以外では珍しく生前の姿形を保っている細身の中年maleの霊が進み出た。
『どうか私に、このSamめにお任せください! 私は生前あるNobleの下で馬番とCouch Drivingを兼任しておりました! 馬車の扱いなら誰にも負けません!』
生前馬車を扱っていたらしいSamの霊がまだ成仏せずに残っていた事は、VandalieuにとってFortuneだった。それに、Manaを供給されている訳でも無いのに生前の形を保っているところを見ると、Mental力も期待できそうだ。
ある意味、Samの霊こそが一番の収穫かも知れない。
『Vandalieu -samaには、私と娘達の仇を討っていただきました! 奴らに、慰み者にされて殺された娘達の恨みをっ! ご恩返しに娘達共々終生お仕え致します!』
maybe、そう言うSamの後ろで佇んで頭を下げている二つの霊が、Samの娘達なのだろう。どちらも黒焦げに成っていて体の輪郭が辛うじて女の物と分かるくらいなので、見分けがつかないが。
maybe、慰み者にした時やり過ぎて商品に成らなくしてしまったか、それともこのmountain bandit団はSlave商人と伝手が無かったか。そのどちらかが原因で殺されてしまったのだろう。
mountain bandit団の霊を見つめると、震え上がったからmaybeそれで正解だ。
「じゃあ頼みました、Sam」
mountain bandit達の霊は使い潰そうと心に決めて、Samの霊をcarriageだけの馬車に降ろす。
「起きろっ」
そしてVandalieuがManaを注ぎ込みながらそう命じると、ギシギシと音を立てて馬車のcarriageが軋んだ。
「……前進」
そして一言そう言うと、馬車は肝心の馬が居ないのに車輪がゆっくりと回転しだす。それを確認してVandalieuは満足げに頷いた。
「SamのCurse・Carriage化成功。これで移動の足は手に入った。じゃあ森に戻りながら、Goblinでも轢き殺させてlevellingしよう」
二日後、Rudyからmountain bandit団の情報を聞いた街道警備隊がmountain bandit団のhideoutに踏み込んだが、彼らが見たのはmountain banditの死体が埋められ盛り上がった土と、掘り起こしてそれを貪る獣やGoblinだけだった。
馬車の車輪の跡が外に続いていたが、それはmountain bandit同士の抗争を勝ち残った連中だと考えられ、特別な捜査が行われる事は無かった。
馬車の跡に、馬の蹄の跡が無かった事に警備隊長は首を傾げたが、態々報告書に残すような事は無かった。
Baronet Bestero、この一年上機嫌だった。
あのWitchを捕まえて処刑してから、良い事ばかりが続く。確かにあの後二月ばかりHigh Priest達に森を占領されたり、三人ほどHunterが行方不明になったりしたが、そんな事は些細な事だった。
死体こそ確認していないがDhampir討伐を認められ、Mirg Shield Nation王より勲章を授与された。それにより周辺の領主からも一目置かれ、『wineしか取り柄の無い田舎領主』と言う嘲りを掻き消した。
そして今年はwineの出来もその材料になるブドウの出来も良いし、ここ何年かの頭痛の種だったmountain banditによる治安の悪化も、初夏の頃から収束している。
街道警備隊や子飼いのKnightどころか、adventurerの手柄でも無いのが不満だがmountain bandit問題は重大な問題だったため、たとえ抗争による同士討ちだったとしても、喜ぶべき事だった。
そして極めつけが、昇爵だ。
まだ正式に決まった訳ではないが、近々Amid EmpireのImperial Capitalに召喚を受ける事になるだろうと、内々に知らせが来た。
彼の曽祖父、初代Bestero Baronetからの悲願だった男peerage。それが手に入る。
それを確信した今、たとえglassの中身がwineでは無く酢だとしても気持ち良く飲めるだろう。それほど浮かれていた。
夏の蒸し暑いnight、Evbejiaの外壁の外でうろつくshadowがあった。
「入れ、入れ、入れ」
countlessの霊を引きつれたVandalieuは、その霊を一つ一つ外壁に宿らせていた。
もしその姿を見かけた者がいたとしても、Vandalieuが何をしているか全く分からなかっただろう。Death-Attribute Magicに適性があるか、Spiritualistでもなければmonsters化してUndeadになっていない霊の姿を人が見る事は出来ないのだから。
警備兵に気がつかれれば矢を射られたかもしれないが、彼らの仕事は外壁を越えて中に入ろうとするmonstersや賊を防ぐ事で、night間に外壁の外側に出るmonstersや賊を退治する事では無い。彼らの警戒心は門とその周辺に限られていた。
明かりも持たずに外壁から離れた所を移動する幼児の姿に気が付く可能性は、限りなく低い。
若しくは、Mana感知skillを持つadventurerや歴戦のKnightなら気が付いたかもしれない。しかし、Vandalieu自身まだ気が付いていないが、Death-Attribute Magicに適性を持つVandalieuのManaは他人から感知されにくいという性質を持つ。
そのため、1levelや2levelのMana感知skillでは目の前でmagicを行使されても気が付けない。
3level以上でも余程集中していなければ無理だが、そもそも近くに強いmonstersが出現するDevil NestsやDungeonが無いEvbejiaのAdventurer’s Guildでは、腕利きでもDClassが精々なのでMana感知を3level以上で取得している者はいなかった。
そしてEvbejiaの外壁を半周した辺りで、Vandalieuはふぅっと息を吐いた。
「これで終わりか……二日かかったけど、準備は完了。後は一言いうだけで復讐も達成できる。
でも、明日の朝にしよう」
翌日、昨日までと何も変わらない朝日に照らされるEvbejiaの人々は、誰も気が付いていなかった。
この日、Evbejiaの名がMirg Shield Nationはcertainly、Amid Empireにまで鳴り響くDestinyの日だという事を。
ただし、『奇怪な事件が起きた町』として。
「崩れろ」
ミシリと、これまでGoblin等のmonstersや危険な野生動物、そしてmountain banditから町を守っていた、高さ五meterの石の壁が音を立てた。
警備兵が訝しげな顔をしたその時、ボゴンっと音を立てて外壁が崩れた。
『ウォォォォォォォン!』
外壁が崩れたかと思うと、次々にGiantな人型になって立ち上がり怨念を滾らせる悪霊の声のような咆哮を青空に轟かせた。
そして、ズンズンと音を立ててそのまま歩き去って行く。
「な、何だっ!? 何が起こったんだ!?」
「隊長! 外壁が、外壁がGolemになってしまいました!」
「そんな事は見れば分かる!」
警備隊長が叫んでいる間も、彼らが守っていた門までGolemの一部と化してそのまま歩き去って行く。
「ぼさっとしてないでGolemを止めろ!」
「ですが隊長、暴れもしないでただ歩いて行くだけですよ。町の方に行くならin any case、態々手出ししなくても……」
慌てる隊長に対して、部下は彼の命令に乗り気では無い-sama子だ。だがそれも当然だろう、誰が高さ五meterの石材で組まれたgiantの前に出たいと思うのか。
そもそも、警備兵が持つ鉄の槍でStone Golemをどうしろというのか。平警備兵達からすれば、隊長の正気を疑っても無理はないだろう。
「idiot者! あれは町の外壁だぞ! あれが無くなったらtonightからどうやって町を守るつもりだ!」
しかし、平警備兵達もはっとするような、重大な問題があった。
外壁が無ければnightに活発に活動する猪や狼、熊が町に入って作物や家畜を食い、更にはHumanを襲う。Goblinだってmountain banditだって入り放題だ。
警備隊の数は限られた数の門を守るのには十分でも、外壁の代わりに町の周囲を全て守るには不足過ぎる。
そんな重大な問題を認識しても、どうにもならない事もあった。
「で、ですが……っ」
焦燥を滲ませる警備兵達だったが、事態が重大だからと言って彼らの実力がそれに比例して上がる訳ではない。
彼らは、町から離れて行く外壁だったStone Golemの後ろ姿を眺める事しか出来なかった。
外壁が突然Golemになって歩き去って行く。その珍事にEvbejiaの全ての人々は気が付いたが、咄嗟の事で対処できずにいた。
Baronet Bestero愕然と立ち尽くし、KnightとSoldier達は狼狽し、Adventurer’s Guildでは緊急依頼を出そうと職員が大慌てで叫び、町の人々は唖然とした。
だが、それだけでは終わらなかった。
「土が、土がGolemに成ったぞ!」
「あれは俺の畑だっ! 俺のブドウ畑の土だっ!」
「待てっ、俺の麦畑! 待ってくれ~っ!」
畑の土が生えている作物や木ごと起き上がり、Golemになると一足早く町から離れたStone Golemを追って歩き出したのだ。
それに気が付いた農民たちは、必死の形相で走り出した。
材質が土とはいえ自分より大きなGolemを止めようとはただの農民としては大した勇気だが、農民だからこそ、彼らはあのGolemをこのまま逃がす訳には行かなかった。
Golemが背中に生やした作物や木を取り戻す事以上に、Golemのbody partを作る土こそが彼らの命だ。
Farmingに重要なのは、土だ。作物を実らせるには、彼らが肥料をやり耕し、何年もかけて作って来た土が必要不可欠。
それが無くなってしまえば、一から土を作るところから始めなくてはならない。すぐに肥料が手に入るEarthやOriginならin any case、このLambdaではより時間がかかるだろう。
葡萄畑を持つ農民は、それに合わせて木も育てなければならないのでより深刻だ。
そして畑だけでは無く――。
「うわっ! 領主さまの館が! 館が二階から崩れて次々にGolemになって行く!?」
「Adventurer’s Guildもだ! あそこには仲間が居るんだぞ!」
領主の館、Adventurer’s Guildの建物も、次々にGolemになって町の外に歩いて行こうとする。
Golem達の動きは鈍い。しかし、body partが大きいためそれに比例してコンパスもGiantだ。町のHumanやKnight、adventurerはGolemの討伐に、瓦礫の回収にと追われる事に成った。
その-sama子を、Vandalieuは清々しい気持ちで眺めていた。
外壁、畑、Adventurer’s Guildと領主の館。これらに雑多な霊を宿らせて待機させるのは大変だった。外壁だけでも二日かかり、畑やAdventurer’s Guild等はそれぞれが一日がかりの作業に成った。
だが、始めるには一言言えばそれだけでよい。まるで苦労して作ったドミノが成功した時のような、実に爽快な復讐劇だ。
「ほら、kaa-san。kaa-sanを嗤った奴等が全員情けない顔で喚いているよ」
外壁や建造物がGolemになって動き出した時点で、Evbejiaは死に体だ。Golemを倒して建物だった残骸を取り戻しても、結局修理しなければならないのは変わらない。
残骸によっては使えない物も多いだろうし、何とか掻き集めてもそのまま元に戻せるのは畑の土くらいのものだろう。
これからEvbejiaはあの高くて分厚い外壁を建て直さなければならない。そうしなければ、危険なmonstersが存在するこのLambdaでは、町の運営が出来ない。
certainly、立て直す間の警備も整えなければならない。警備兵の増援、adventurerへの依頼、材料の発注にStonemason職人や労働者の手配、莫大な時間と、何より金がかかる。
Bestero Baronetが館の立て直しを後回しにして、更に私財を擲っても賄えない程の金が。
当然Mirg Shield Nationの政府に泣き付くだろうし、それで昇爵も立ち消えだ。
更に、実はwine蔵にもVandalieuは手を伸ばしていた。
蔵の中のwine樽に、【Decomposition】のmagicをかけてwineを全て腐らせた。更に、【Sterilization】で蔵が保存している酵母を一匹残らず死滅させておいたのだ。
まだ誰も気が付いていないようだが、Evbejiaの産業は既に抹殺されたも同然だ。これを立て直すには、冗談でもなんでもなく十年単位の時間がかかるだろう。
『うん、kaa-sanのためにありがとう、Vandalieu。大変だったでしょう? この優しい復讐をするの』
Darciaの霊は、莫大なManaを持つ小さな息子を愛おしげに見つめた。この復讐の何処が優しいのかと、異論を唱える者は多いだろう。しかし、彼女の言う通りVandalieuのmagicとMana量を考えれば優しいと言えなくも無いのだ。
外壁で作ったGolemを町の外では無く内側に向かわせれば、それだけで町に大きなDamageを与えられたし、死傷者を大勢出せる。ここに領主の館やAdventurer’s Guildの建物から作ったGolemを加えれば、壊滅的な被害を出せるはずだ。
Gordan High PriestやFive-colored bladesのHeinz達は、この町をとっくに去っているのだから。
他にも井戸水を【Deadly Poison】のmagicで毒にするか、単純に【Disease】のmagicで疫Diseaseを流行らせるという手段もある。
やろうと思えば、EvbejiaのHumanを一人残らず殺す事だってできるのだ。
それをやらずに、外壁を崩すのも朝を待って行った事を指して優しいとDarciaは思ったのだ。
「あいつらが俺にした事と同じ事をしただけだよ」
VandalieuはDarciaの言葉を肯定も否定もしなかった。だが、町のHumanに慈悲をかけたつもりは無かった。彼にとって、Evbejiaに罪の無い人々は一人もいない。一人残らず、処刑されたDarciaを見世物にして嗤った罪人だ。
だから、同じ事をしてやった。
「俺はこれから何年も、何十年もかけてkaa-sanを取り戻す。kaa-sanの霊に合う、新しいBodyを作るんだ。
だから、この町の連中も何年も、何十年も頑張れば元の生活に戻れる程度で済ましただけだよ」
今回の件で、直接の死者は誰一人出ていない。出ないように、外壁や建物が途中で崩れないようGolemが動き出す順番にも気を配ったのだから、当然だ。
だから、取り返しのつく物しか壊れていない。
『そうね、chanceをあげたんだもの、やっぱりVandalieuは優しい子だわ』
考え方によっては、何十年も耐えなければ元に戻らない被害を与えたと言えるのだが……既にDeath-Attribute Charm skillの効果で魅了されているDarciaに、それを指摘する意思は無い。
Vandalieuは触れる事が出来ないDarciaの手に撫でられると、目を僅かに細めた。
「じゃあ、そろそろ行こう。Bone Bird、宜しく」
「グェェェェェ」
首を絞められた人の呻き声のような鳴き声を上げて、Phantom BirdにRank upしたBone Birdがbone翼を広げる。
Darciaのbone片を懐に仕舞い、Bone Birdの左右の足をそれぞれ掴む。
青白く光るSpirit Formに包まれたbone翼がfeatherばたき、VandalieuはCurse・Carriageで待つBone Man達の所に空を飛んで戻ったのだった。
・Name: Vandalieu
・Race: Dhampir(Dark Elf)
・Age: 1age
・Title: none
・Job: none
・Level: 100
・Job History: none
・Ability Values
Vitality: 34
Mana: 100,001,247
Strength: 32
Agility :7
Endurance :33
Intelligence :45
・Passive skills
Mysterious Strength:1Lv
Rapid Healing:2Lv
Death-Attribute Magic:3Lv
Abnormal Condition Resistance:3Lv
Magic Resistance:1Lv
Dark Vision
Mental Corruption:10Lv
Death-Attribute Charm:2Lv
Chant Revocation:1Lv
・Active skills
Bloodsucking:3Lv
-Surpass Limits-:2Lv
Golem Transmutation:3Lv(UP!)
・Curse
Experience gained in previous life not carried over
Cannot learn existing jobs
Unable to gain experience independently
・Name: (Bone Bird)
・Rank: 3
・Race: Phantom Bird
・Level: 17
・Passive skills
Dark Vision
Spirit Form:1Lv(NEW!)
Mysterious Strength:1Lv(NEW!)
・Active skills
Silent Steps:1Lv(NEW!)
High-Speed Flight:1Lv(NEW!)