聖戦から約二年が過ぎ、『Lambda』worldの各地は日常を取り戻しつつあった。
といっても、以前と同じ日々に戻った訳ではない。Alda's FactionのGodsに対する信仰の衰退と、それに代わって盛り上がったVida's Factionへの信仰。それまで出入りが制限されていた、Vida's New RacesのAutonomous Territoryの解放。
新たにできたArk Mountain RangeによるContinent西部との断絶に、Vidal Magic Empireという大国の出現。
Human社会はあまりにも大きく変化していた。だが、Humanが慣れる生き物である事はanother worldでも変わらない。そして、変化したworldでもそれぞれの日常を過ごすようになる。
……Amid Sacred EmpireがあったContinent西部では、まだ元属国同士の争いが続いているので非日常の連続を過ごしている者も少なくないが、それだけの期間非日常が続けば、非日常が日常に入れ替わる。
そうして日常が戻ってくると、Royal Nobility達も以前から行っていた政治活動を活発化させるものだ。
まず、Jahan DuchyのHadros・Jahan Dukeが婚約を発表した。相手はOrbaum Elective KingdomのNobleの令嬢……ではなく、なんとDemon KingのContinentの地下にあるGartlandのSnow Ice Giant raceの族長Zolkの娘だ。
また、Birgit Duchyのゲラルト・Birgitも第四夫人をDemon continentのご令嬢から迎えようと水面下で調整中だ。
二人だけではなく、多くのNobleがVidal Magic Empireの王や有力な地位にある人物と縁を結ぼうと政略結婚を検討している。
Orbaum Elective Kingdomの保守的な考え方を持つNoble達は、このnewsに大きな衝撃を受けた。Orbaum Elective KingdomではRoyal NobilityがHuman以外のraceの妻や妾を迎える事を歓迎しない風潮が、今までは強かったからだ。
ElfやDwarfですら寿命が長すぎ、当主が亡くなった後で実権を握って家を乗っ取る恐れがあるとして敬遠されてきた。それなのにVida's New Racesから、それもHadros・Jahanの場合は正妃を迎えるというのだから騒がれないはずが無い。
しかし、革新的な考えを持つRoyal Nobilityからすれば、友好的な同盟国であるVidal Magic Empireと婚姻によって関係を強めようとするのは当然の事だ。
もちろんVidal Magic Empireの各有力者達も、Orbaum Elective KingdomのRoyal Nobilityと積極的に縁を結ぼうと嫁や婿を迎えようと働きかけている。……Vidal Magic Empireの場合は、HumanはHell race、ElfはChaos Elf、DwarfはDvärgensに遠からず変異してしまう事を国民が分かっているから、より抵抗が無いのだ。
そしてVandalieuの身近な人物への打診も多い。とはいえ、ZadirisやBasdia、KanakoやEleonoraなど明らかにVandalieuが娶る予定の相手に話を持って行くような勇気ある命知らずはいなかった。
「ほう、kaa-sanに縁談ですか」
しかし、Darciaに再婚話を持って行くような歴史に名を残しかねない蛮勇の持ち主が複数人いた。
為政者の母で夫を亡くした未亡人への求婚は、Orbaum Elective Kingdomの常識でも考えられない。他のNobleよりも先に強力なconnectionを得ようと焦ったか、他のNobleを出し抜く裏技だと思い違いをしたか、悪評でもいいからnameと顔を売ろうとしたのか……それとも本気でDarciaと結婚したいと思ったのか。
「では、まず最低限俺よりも強い事を証明してください。コロシアムで決闘をしましょう。もちろん、本当に命のやり取りをするわけではありませんが」
そして、意外な事にVandalieuはその話を拒絶しなかった。話自体は認めたうえで、全力で迎え撃とうとしたので、より質が悪いかもしれない。
最初求婚者達やその家臣達は、Vandalieuが真顔で冗談を言ったのだと思った。しかしその後に「まだ間に合う、撤回するべきだ」と忠告する者達が現れ、主-kunであるDukeから「友好関係にしこりを残す事になるので、自重するように」という書状が届き、Vidal Magic Empireで新しいコロシアムの建設工事が始まるという情報を入手して、彼が本気だとやっと理解した。そして、殆どの求婚者が慌てて撤回した。
残りの数少ない求婚者も、Darciaが一貫してVandalieuを諫めるどころか応援する立場を取り続けたため、心が折れたのか撤回したという。
しかし、未亡人の母がダメなら他の親類縁者を狙おうという者もいる。というか、そちらの方が主流派だ。
しかし、義理のImoutoであるPauvinaやJadal、Vahbiは、それぞれVandalieuに嫁入りが内定しているのは、当然。実の息子のBakunawaに縁談を持って行くのは、Size的にも論外。第二子がいると聞いて、目を輝かしたら、『Giant of the Moon』Dianaとの間に生まれたTrue giant Aradiaだと知って肩を落とす。
こうなったら嫁に娶るのではなく嫁入りでも構わないと思い切ってみれば、元『Majin King』Godwinや『Sword King』Borkus、Noble Orc王Budarion等、Human社会のご令嬢が嫁ぐにはhurdleの高い相手ばかり。
なお、ArthurやKasim等Heroとして活躍したがHonorary Nobleでもない平民は、Orbaum Elective KingdomのNoble達から政略結婚の対象とは見られなかったようだ。
また、『Thunderclap』のSchneiderを始めとした『Storm of Tyranny』の面々も、対象から外されていた。
本来ならSClass adventurerは平民出身でも、下手なNobleよりも縁を結ぶ価値は大きい。しかし、長い間敵国だったAmid EmpireのSClass adventurerとして名を馳せていた事、そして本人がAmid EmpireのNobleを真昼間に殴り殺す事件を起こした経験があるため恐れられていた。
もっとも、Lissanaに言わせると「ZodやDaltonはともかく、Schneiderは囲っている女が多いから敬遠されただけでしょ」と言う事らしいが。
ではOrbaum Elective KingdomのSClass adventurerである『True』Randolphはどうかと言うと……事態をいち早く察知した元Hero Preparatory School校長のMeorilithに促されて、彼女と偽装結婚していた。
小規模ながら式を挙げ、しかもその立会人をVandalieuに頼むという徹底ぶり。これでNoble達は正妻をMeorilithから自分の娘に変えろとは、口が裂けても言えなくなった。
現在の正妻より高い地位の家出身の妻を迎える場合、第二夫人ではなく既にいる正妻を第二夫人にして正妻として迎える事がある。後々家が荒れたり、Successor問題が起きたりするのであまり歓迎はされないが、慣例としては昔から存在する。
しかし、友好国のEmperorであるVandalieuを立会人にしたためMeorilithがRandolphの正妻である事に異を唱える事は、Vandalieuに異を唱えると同じ事だとNoble達が考えるよう仕向けたのだ。
そして第二夫人、第三夫人でも構わないと言い出す者達が現れる前にDemon KingのContinentの地下にあるGartlandに高跳びしたのである。
……偽装なのかは怪しいところだが。
「うるさいNoble達から逃げるという目的もあるが……Randolph、私達は今までそうした関係に何度かなった事がある。しかし、お互いの関係をはっきりさせないままだった。お互い若くないんだ、今後の人生を考えるためにも五十年ぐらい正式な夫婦をしてみないか?」
「俺達が中途半端な関係を続けてきた主な原因は俺にある気がするというのに、お前の方から歩み寄られて俺がこれ以上逃げるのはドラマーとしてあまりに情けない。今度こそお前との関係に向かい合おう」
「……そこはドラマーじゃなくてadventurerとか、なんならsimpleに男として、でも構わないと思うぞ」
と言う会話があったので、いつの間にか偽装ではなくなっているかもしれない。
「夫婦Idol Unitと言うのも新しいかもしれませんね」
そうKanakoも言っていたので、二人の独立debutする日も近いようだ。
一方、そのVandalieu本人への見合い話は殆どなかった。既に十人を超える相手が内定しているのと、彼が人であると同時に神であるため遠慮されたようだ。
ただ、世の中には「正式な妾でなく、非公式なLoverでもいいので」と娘や姉やImoutoを差し出そうとする者が居る。Vandalieuに対してもそう言った話があったが――。
『いやいや、貴方の人生にはもっと他に選択肢がありますよ。俺で良ければ相談に乗りましょう』
Vandalieuはそう言いながら、差し出された手を握るように見合い相手の夢に出現し、人生相談に乗り、場合によってはVidal Magic Empireの人々との縁談を纏めたり、婚姻を先送りするためにHell raceやVampireなどVida's New Racesに変異して寿命を延ばす事を勧める等をしていた。
「Vandalieu、最近Orbaum Elective KingdomのNobleの間で、『人生に行き詰まったらVandalieu魔Emperorに求婚すれば解決する』って噂が流れているらしいのよ」
「Van -samaの事だから、良かれと思って人生相談に乗っていたのでしょうけれど……直接Van -samaが相談に乗るのではなく、間に誰か挟むべきかと」
「その通りです、旦那-sama。噂がこれ以上広まったら、女装した-dono方から求婚されるかもしれませんよ」
「……既に昨日夢で見ました」
また見合い話が来たので相手の夢に出たら、なんと相手は中性的なnameの青年だった。
領地経営が厳しくて他のNobleに援助を求められる程のコネが無く、自暴自棄になって出した見合いの申し込みが偶々ノーcheckでVandalieuの元に届いてしまったらしい。
「とりあえず話を聞いて、しかし他国のNobleの財政問題に俺がDukeを飛び越えて直接干渉する訳にもいかないので、コネのあるChamber of Commerceに融資してもらう事になりました」
「それは、結局借りたお金が返せなくなるだけじゃないかしら?」
「それが狙いです。借金の形に領地の統治権を他のNobleに売り、身軽な平民になって人生をやり直したいと」
「なるほど。旦那-samaがそのNobleは平民になってもやっていけると思ったのなら、やっていけるのでしょう。それで、そのまま続けるおつもりですか?」
「……出来るだけ早期に噂を鎮静化させましょう」
Vandalieuは別に男を助けたくない訳ではないが、見合いを申し込まれるのが相談に乗るきっかけというのは嬉しくない。
Vidaの教義では、同性愛については特段禁止されてはいない。生命attributeのGreat Godなのでchildを産み育てる事を推奨してはいるが、childが出来無い関係を殊更否定はしていない。
Vandalieuもそのpolicyに習おうと考えている。
「でもどうするの? 政略結婚は後何年かすれば沈静化すると思うけど」
Eleonoraが言う通り、政略結婚はいくらOrbaum Elective Kingdom側が過熱しても、数年内に事態は沈静化する。Orbaum Elective KingdomのNobleや豪商は多いが、彼らも無限に未婚femaleを抱えている訳ではない。
bloodの繋がった娘以外にも、孤児院などから政略結婚に使うために養女として迎える事があるが、その場合も一人前のLadyとして教育するのに時間がかかる。半端なconditionで送り込めば、両家の縁を結ぶどころか養家に泥を塗りかねないからだ。
なので、新しい政略結婚要員は短い時間では補充されない。
それに、今の政略結婚ブームはOrbaum Elective Kingdomから見ると、前触れもなく出現したVidal Magic Empireと縁を結ぼうと慌てているからだ。なので、縁談がある程度まとまれば自然と沈静化するだろう。
「Van -samaに縋る者は減る事はあってもいなくなる事はないわよ」
「どんな国にも追い詰められている人は居るものね。さすがにNobleでもないとVandalieuに求婚は出来ないと思うけど」
「仕方ありません。遺憾ですが……もっと宗教活動に力を入れましょう。templeを建立したり、常任のPriestを育てたり」
「Giant Idol Statueの建造計画を進めるだけで十分なのでは?」
「Bellmond、俺もGiant像の建造が止められないと分かった時はそう思っていました。ですが……あれは宗教施設というより観光施設と化しています」
originally、神はbelieverに寄り添うものだ。もっとも、殆どの場合は寄り添い見守るだけで神が直接実社会にimpactを与える程の支援を行う事はない。代わりに悩めるbelieverの相談に乗るのがtempleに勤めるPriestやClericだ。
temple関係者は人々の医療や教育を施す以外にも、Mentalや社会的な問題解決のための役割も果たしてきた。
各地に建造計画があるVandalieuのGiant Idol Statueは、集客力は見込めるがそうした役割を果たすには向いていない。Orbaum Elective Kingdomにはまだ無いが……そうした向き不向きはVidal Magic Empireとあまり変わらないだろう。
そしてVidal Magic Empire内では、Vandalieuに何か相談したい場合はその辺にいるDemon King Familiarに話しかければいい。対して、Orbaum Elective KingdomにDemon King Familiarがいるのは全体から見れば極一部の場所だけだ。
そのため、普通のVandalieu templeやVandalieu Priestが必要になるのだ。
「正直、あまり気が進みません。俺のtempleやClergymanが増えてもGiant像建設は止まらないでしょうし」
「旦那-sama、先ほどご自分で役目が違うと言ったではありませんか」
「それにVandalieu、Orbaum Elective Kingdomの貴方の像はVidal Magic Empireに比べるとだいぶ大人しいじゃない。大きくても十数meterぐらいだって」
Darciaが言うように、Orbaum Elective Kingdomの各地で計画が進んでいるVandalieu Idol Statueは、Vidal Magic Empireの各地にある像よりもだいぶ小さい。
神とは言え友好国の為政者の像を、自国の城より大きく作る事は憚られたようだ。……単に建造技術や経済的な理由で百meter強のGiant像を立てる事が難しいのかもしれない。
「kaa-san、十数meterの像でも十分大きいです。それに……templeとClergymanを増やす事も、色々根回しが必要になると思います。やりますけど」
その後、VandalieuがOrbaum Elective Kingdom内に自身を奉じるtempleの建立とClergymanの育成と派遣に力を入れようとしている事を大使館経由で伝えると、やはりひと騒ぎ起こった。
宗教の力でOrbaum Elective Kingdom内でのinfluenceをEnlarged (3)させ、内側から乗っ取るつもりではないかと疑う者達が一定数出たのだ。
ただ、VandalieuやGeneral兼Prime MinisterであるChezareはそうした者達が出る事を予想して、丁寧に根回しを続けた。
その甲斐あって、troubleらしいtroubleは何も起こらず事態は進んだ。
疑っている者の半数以上も、本気でVandalieuが宗教でOrbaum Elective Kingdomを内側から乗っ取るつもりだと考えている訳ではない。……もうVandalieuのinfluenceは十分高くなっており、templeやそこに赴任するClergymanの数を多少抑えたところで大差はないからだ。
彼らが疑っているようなポーズをとったのは、Vidal Magic Empireのtempleで育成されるClergymanに、自Duchy出身のHumanを参加させるのが目的だ。そうする事で手に入るVidal Magic Empireの情報量を増やそうという目論見がある。
また、反対意見を述べる事でVidal Magic Empireのinfluenceが大きくなる事に反発を覚えている者達の不満を、少しでも和らげようという意図もあったようだ。
なお、本気で疑っているどこかの『Knight of Roaring Flames』Brabatieuのような疑り深いNobleも、上司に当たる者達が説得した事で事件を起こすような事は無かった。
「坊や、そろそろ儂等を娶る時期じゃと思う」
「Vanも昔よりは大きくなったからな」
「……そう言えば、俺もそろそろ年頃でしたね」
だがしかし、事件の芽はOrbaum Elective KingdomのNoble達だけではなく、Vidal Magic Empire内部にこそあったのだ。Vandalieuがそれに気がついたのは、あまりにも遅かった。
その結果、Vandalieuは王城の謁見の間にfemale陣によって連れ込まれていた。
『それじゃあ、あっしらはしばらく散歩でもしてますんで~』
『気にせずお励み下され~』
GhostのKimberlyやChipurasまで、気を遣って離れていった。
「そう言えば、今日は朝からSamやKnochen、Bone Manを見ていませんね」
しかも、male陣は朝から離れていた。
「それでVan -sama、nightの順番はどう決めますの? くじ引きでも何でも私達は構いませんわよ」
「いえ、まずは旦那-samaの希望をお伺いするべきではないかと」
「Bellmond、普通はそうだと思うけどVanに任せていたら何時になるか分からないよ?」
積極的にVandalieuとnightを供にしようとするfemale陣。服装は普段と同じだから、選ばれたらすぐさまベッドへと言うつもりはなさそうだが、Vandalieuは彼女達の強い意志を感じた。
「普通、結婚式を挙げるのが先では?」
普通はEmperorだろうがNobleだろうが、結婚する時は式を挙げ、盛大な宴を催す。それこそ相手が非公式のLoverでもない限り。
そしてVandalieuの周りにいるのは、一族の長やその娘だったり、一国の姫だったりと、高い社会的地位にあるfemaleが多い。普通ならBody関係になる前に式を挙げるのが正しいだろう。
「まあ、貴方。何を言っていますの? 式ならもう何年も前に挙げたじゃありませんか」
「Amelia、落ち着いて下さい。瞳孔が開いています」
しかし、普通でない事がVandalieuの周りでは多いにも事実だ。Elizabeth Sauronの母、Amelia Sauronもその一人である。
娘のElizabethの父親を彼女より年下のVandalieuだと思い込み続けている彼女のInsanityは、今日も絶好調だ。……なお、彼女は亡き前夫とも結婚式を挙げていない。
「お母さま、落ち着いて。ほら、前の時は色々あったでしょう? だから、今度は公式にって話なのよ」
「……そう、そうだったわね。前は正式な式を挙げる前にAmid Empireが攻め込んできて、それどころではなくなってしまったのよね」
娘のElizabethに誤魔化されて、Memoryを修正するAmelia。なお、彼女は娘もVandalieuに嫁ぐことに関して何も疑問に思っていないようだ。……その辺りの事が彼女の中でどう補完されているのか、Elizabethも確かめていない。
「まあ、Ameliaはともかく、儂等はその辺りは無くて構わんぞ。儂等Ghoulにはoriginally結婚という制度自体が無かったからな」
そして、Zadiris達Ghoulには結婚という制度がない。しかし、それはDevil NestsでGhoulだけの集落で暮らしていた時の話。
「おばあ-chan、あたしは結婚式やってみたい。Vahbi -chanも」
「そうじゃな、JadalとVahbiは結婚式を挙げような」
「ううん、おばあ-chanとおkaa-sanとVanの結婚式。dress姿のおばあ-chan、きっと可愛いと思う!」
Zadiris達GhoulがTalosheimに移住してから産まれたJadalやVahbiは、物心つくころには他のraceの文化や習慣に触れるのが当たり前の環境だったため、価値観も変わっている。
「わ、儂のdress姿って、Transformした時とそう変わらんじゃろう。なあ?」
「Zadiris -san、ウェディングdressとStage衣装は違いますよ」
「そうだぞ、kaa-san。Kanakoが言うように、Defense Powerや付与されている効果が違うはずだ」
「そう言う事じゃないんですよ、Basdia -san!」
「二人ともVan -samaに出会ってから新しい文化や習慣に触れてきましたけど、長年続いた価値観からは中々抜けきれないようですわね」
元HumanのTareaがそう言ってため息を吐く。
「それよりも、JadalやVahbiはまだ早いんじゃない? Zadiris二号になっちゃう」
Ghoulのfemaleのappearance ageは、初めて妊娠するまで止まらない。逆に言うと、どんなに若くても妊娠すればappearanceの成長が止まるので、その辺りは慎重にならなければならないのだ。その事を元HumanのadventurerだったKatiaが指摘するが、Bildeがすぐに答えた。
「心配しないで。二人はまだVanと結婚しないから。あと五年ぐらい先かな?」
「なら安心ね」
「そう言えば、Human社会風のウェディングdressって具体的にどんな物なの? ボク、聞いたことはあるけど、見た事がないんだよね」
「確か、色は白でlower bodyを全て隠すんだったか?」
ScyllaのPrivelがArachneのLarge-buildのGizaniaがそう言いだす。確かに、octopusや蜘蛛のlower bodyを持つ彼女達がHuman用のウェディングdressを着ても、不格好になってしまうだろう。
「某やIris -donoは肩や背中の生地を無くせば、鎌腕や翼を出せそうでござるな」
「それはウェディングdressとしては露出しすぎではないだろうか? それに、今の私はMajin Raceだ。Majin Raceには、結婚する際に祝う事は殆どないから……」
EmpusaのMyuzeやMajin RaceのSuccubusに変異したIrisは、左右の肩から生えた先端が鎌になっている腕と、背中の翼をどうにかすれば着られるだろう。
しかし、Majin Raceは享楽的な性格のものが多いため、結婚に拘らない者が多い。何時別れるか分からないし、別れた後数年から数百年後にまた同じ相手とくっつく事も珍しくないため、夫婦になる事よりchildが生まれた事を祝う事が多い。
「その辺りは気にしないで良いそうよ。当人達が好きなように祝い、周りも好きなように祝福するのがMajin Raceの流儀だって聞いたわ」
しかし、結婚する事を祝ってはいけない訳じゃないと、DarciaはIrisを諭した。
「それに、Godwin -sanもGeorge -sanも、あなたの結婚式に出たがると思うわ」
「そうでしょうか? ……そうですね。やはり、私も式を挙げたいと思います」
Darciaの説得で、自分の気持ちを正直に口にするIris。なお、この場にDarciaがいる事に誰も違和感を覚えていない。
『まあ、dressは個人ごとに合わせるしかないんじゃないでしょうか? 私達は複雑ですが』
『鎧だもんねぇ、私達。Bocchan、どう思います?』
Living ArmorのRitaとSalireは、main bodyが鎧であるためdressを着る事に複雑な思いを抱いていた。
「複雑と言う事は、嫌ではないんですね?」
『父-sanが喜んでくれそうですから』
「じゃあ、ウェディングdress風の装飾を付ける事にしましょう。
ところで、話が結婚式を挙げる方向で進んでいますが、反対意見はありませんか?」
female陣がVandalieuをここに連れて来たのは、結婚式の相談が目的ではなかった。しかし、Body関係を持つのはVandalieuの希望通り結婚式の後、と言う話の流れになっているので彼はそう尋ねた。
『特にないわよ。Vandalieuも私達の予想通りその気になってくれたし』
LegionのPlutoがそう答える。彼女達が一度に集まってVandalieuに迫ったのは、そうすれば彼も向き合うだろうという計算が有ったからだった。
『GhostやEnmaは異議ありっと言っているけどな! あと、私はdressよりタキシードの方が好みだ!』
『Ghostはともかく、Enmaは似合いそうなのにね』
『Valkyrieはmaybe、裾を踏んで転びたくないだけだと思う』
複数の、しかも少数派だがmaleの人格も含まれているLegion達のMentalでは-sama々な意見があるようだ。
『それに、結婚式を挙げるって事は国家行事になるので陛下の意識も変わると思いまして』
『Talosheimの王-samaっぽくなったのも、戴冠式をしてからだって聞いたしね』
Princess LeviaとOrbiaがそう補足する。それはVandalieuにも自覚があった。
形式や儀式は人の意識を変えるきっかけになる。約十年前にTalosheimの王に即位する戴冠式を行ってから、確かに一国の王としての自覚がVandalieuにも芽生えて……いたと思う。
(昔の事を思い出すと、つい『もっと上手くやれたのでは?』と思ってしまいますね)
「っと、言う事は、もしかしてKami-samaになった事を記念する式典をやれば、Kami-samaっぽくなるって事?」
「Elizabeth -sama、それはTalosheimで何度もやっているはずですから、それは例外なのでは?」
「another worldでもやっているらしいし」
『それよりも気になる事があるんだけど、質問していい?』
生前Church of Vida長だったJeenaが、真剣な顔をして訪ねて来た。
『Vanって、出来るの? 見た目は際どいageに見えるけど』
彼女が気にしているのは、Vandalieuに生殖Abilityが備わっているか否かだったようだ。彼女の言葉に対する反応は、確かにそれは重要だとnod者と、頬を赤らめる者に分かれた。
「できますよ。もちろん、Myth的な方法ではなく生物学的な方法の方も」
質問されたVandalieuは前者だったので、真面目に答えた。結婚においてchildを作る事だけが目的ではないが、重要事項である事には変わりない。
DhampirであるVandalieuは十代になってからしばらくすると、成長が極端に遅くなる。なので、Humanなら成人となる十五ageになっても、Vandalieuのappearanceはそれ未満のchildと同じだ。しかし、彼は全ての【Demon King Fragment】をAbsorptionしている。
そのため、Vandalieuは既に生殖Abilityを獲得していた。
「それに、見た目だけなら大人になれますよ。ちょっと歪んでいたり、ねじれていたり、普通より数が多かったり少なかったりしますが」
「それは大人になれるのではなく、異形にTransformできるだけよ」
「皆で頑張って協力して一度惜しいところまで行ったけど、どうしても違和感が残っちゃうのよね」
「maybe、粘土細工とか特殊メイクが上手い人が手伝ってくれれば、顔だけは何とかなると思いますけど」
originally another worldから現れた異形の生物のBodyなので、Humanの形を保ったまま変化するのには【Demon King Fragment】は向いていない。
「特定の誰かに似せる事よりも、自分の大人の姿を自然に再現するのが難しいとは思いませんでした。
まあ、俺のappearanceはともかく……結婚式はどうしましょうか?」
「一度に挙げるのは人数が多いから、何人かずつにするのが良いと思うわ。Venueも、Talosheimだけじゃなくて各地を巡る形にして」
「じゃあ、最初の式のmemberだけど、まずDarcia Mamaは決まりだよね」
「えっ? いや、私はVandalieuの母親なのだけど?」
「そうじゃな」
『異議なし』
「ちょっ、ちょっと待ってっ」
ごく自然な流れで自分もVandalieuと結婚する流れになっている事に気が付いたDarciaは、焦って声を上げた。
「Darcia Mama、そんなに照れなくてもいいのに」
「Pauvina -chan、そうじゃなくてね、私とVandalieuは――」
「kaa-san、その問題について考えたのですが……厳密にいうと、今のkaa-sanは俺と実の親子ではありません」
「ええっ!? そ、そんな、酷いわ、Vandalieuっ!」
息子から飛び出した親子じゃない発言に、Darciaは思わずよろめく程のshockを受けた。
「まさか、これが反抗期? Vandalieu、成長したのね」
「kaa-san、Body的にはと言う話です」
「Body?」
「そうです。今のkaa-sanのBodyは、Gufadgarnが保管していたZakkartの遺産と、俺が作った素材で出来ています」
火炙りの刑で一度死んだDarciaは、Zakkartが作った『生命のRoot』に、Vandalieuが作ったOrichalcumのbone格や集めて加工したmonstersの内臓や【Demon King Fragment】製の素材、そしてGoddessのbloodを加えて創ったBodyにreincarnationしている。
そのため、厳密に言えばDarciaのBodyはVandalieuの母親のDark Elfのものではない。raceもChaos Elf Sourceになっている事からも、Statusの神のお墨付きもある。
『Body的には、むしろ私達の方がDarciaに近いんじゃないかしら?』
『あたし達のこの体は、originally Darciaの体を再生しようとして失敗したchunk of meatだからね』
と言うLegion達。本人達も時々忘れるが、彼女達の魂が宿るGiant内chunk of meatは、originally DarciaのBodyを再生しようとして出来た失敗作だったのだ。
「そう言われると、確かにそうだけど……魂は私のままだけどいいのかしら?」
「魂は俺とkaa-sanが問題だと思わなければ、問題にならないかと」
魂はVandalieuと親子のままだが、魂は魂だ。遺伝的には何のimpactもない。
それに、世の中に大勢存在するloverや夫婦の前世や前々世は親子やbrothers sistersではなかったと証明する事は出来ない。
Darciaの場合は、人格とMemoryをそのまま受け継いでいるという点が普通とは異なる。しかし、それが問題なら、この先Darciaが何らかの原因でMemory Lostになって過去のMemoryを失った場合、問題はなくなるのか? と言う疑問も発生する。
「もちろん、これは俺が考えた理屈で偏っています。なので、kaa-sanが納得できない場合は他の手段を用意しています」
「……凄く嫌な予感がするけど、念のために聞くわね。どんな手段なの?」
「Vidaに求婚します。maybe、OKしてくれると思います」
「ええっ!? Vidaって、Vida -samaの事よね!?」
『Vida’s Incarnation』のDarciaを落とすなら、まず『Goddess of Life and Love』Vidaから。普通ならChurch of Vidaに出家するという意味になるだろうが、Vandalieuの場合はそのままの意味になる。
何せ、VidaのDivine Realmには現在進行形でVandalieuのCloneがCircle of Reincarnation systemの調整のために滞在している。全てのCloneをmain bodyに変える事が出来る彼にとって、今すぐVidaのDivine Realmに行くのは容易い事だ。
もちろん、行ってGoddessに直接求婚できるのと、プロポーズをGoddessが受け入れるのは別の問題だ。
(でも、Vida -samaならmaybe受け入れちゃうわよね。誰も止めないだろうし)
しかし、VidaならVandalieuの求婚を受け入れるという確信がDarciaにはあった。originally Vidaは愛のGoddessであるだけに奔放で、複数の神やHeroと関係を持ったというMythは山ほどある。
そして、十万年前にVida's New Racesを生み出すために『Mountain Queen Dragon God』Tiamatや『Giant of the Sun』Talos、元Demon King Armyの邪悪なGods……MerrebeveilやZanalpadna、そしてUndead TransformationさせたChampion Zakkartと契っている。
自身の化身が生き返る前に産んだ息子が守備範囲外と言う事は無いだろうし、躊躇う事もないだろう。
「Great Godに求婚するとは、Mythやlegendに残るGodsやHeroと並ぶ偉業。それでこそ偉大なるVandalieu」
「あ、やっぱりいたのね、Gufadgarn -san。それはともかく……Vandalieu、確かにその方法なら私が納得するかは関係なくなるけれど、プロポーズの言葉としては落第よ。
お父-sanの爪の垢を煎じて飲ませたいくらい」
「返す言葉もありません。では皆-san、改めて……俺と結婚してください」
「はいっ!」
「うむ」
「当然だ」
「もちろんですわ!」
「はーいっ!」
重なった声の中に、否と答えるものは無いのだった。