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Chapter 402: 強者が我を通す

 Vandalieuが魂を纏い、小柄な少年の姿から漆黒のwhole body甲冑を纏ったどこか禍々しい姿に変わる。

「【True Instant Response】、【瞬斬】!」

 その刹那、HeinzHigh-SpeedHoly Swordを振るって斬撃を放った。


 VandalieuCloneであるDemon King Familiarが自分達の持つHoly Swordに対して弱くなっている事は、Heinzも気が付いていた。だから、Vandalieu本人にも効くのではないかと思い、試したのだが……。

『……やはり、俺の魂そのものには効果的とは言えないようですね、そのHoly Swordは』

「ああ、どうやらそのようだ」


 Heinzの攻撃によってVandalieuが受けたDamageは、魂の鎧で守られた事でほんのかすり傷にしかならなかった。

 彼が持つBellwoodHoly Swordは、Guduranisを倒すために鍛えられたものだ。そしてGuduranisは、Vandalieuと違い魂をBodyから出すことは無かった。


「だが、傷つけられる以上倒せるはずだ!」

『それは、机上の空論です』

 Vandalieu自身、自分を不死身だとも不死だとも思っていない。理論上は、自分も死ぬ事を否定もしない。しかし、だからこそ死なないように備えてきた。


 そして、『Five-colored blades』に勝てると確信したからこうして戦っているのだ。

 しかし、それは『Five-colored blades』も同じだ。

「【Radiant Life】!」

 Light Attributeと生命attributeMana同時に付与し、Vandalieudeath attributeに劇的な効果を与えるmagicを唱えてSlashかかる。


 VandalieuDemon King FamiliarというCloneが存在する事は知っている。そして、今ではmain bodyの頭部すら急所にならない事も分かっている。Cloneを自分達の武具で倒せることは分かっているが、そのCloneが自分達の手が及ばない場所にもcountlessに存在する事も察している。

 これだけ考えるとまるで無敵のようだが、Vandalieuは大きな弱点を抱えている。


 守るべき大事な存在だ。


『【変則Screw Strike・連弾】、【死十連弾】』

 まず回復手段を潰そうとVandalieuは回転するcountlessの【Demon King's Horn】を-sama々な軌道で放ち、同時に正面から【Death Bullet】の乱れ打ちでDaianaを狙う。


「【百輝連拳】!」

「【持続賦活】!」

 しかし、拳で-sama々な攻撃に対応できるJenniferDaianaの守りに入り、【Radiant Life】が付与された聖拳で【horn】death attributemagicを殴り落とす。

 そしてDaianaが、自分を含めた仲間のEnduranceを常時回復させるmagicを唱える。


 Vandalieuの弱点である「大切な存在」の範囲は広い。Orbaum Elective Kingdomの友人達はもちろん、このBoundary Mountain Rangeの国々全てが含まれる。

 故にVandalieuHeinzから絶対逃げない。逃げる必要があったとしても。


 追い詰められても、Heinzを倒すために他の場所にいるDemon King Familiarを投入してでも戦い続ける事を止めないだろう。それはAldaTrial's Dungeonでの戦いで、幻だと分かっていても咄嗟にDarciaを守ろうとした事から分かっている。


 当のAldaは、Vandalieuは追い詰められれば各地に配置した仲間を見捨てると読み間違えていたようだが……直接刃を交えたHeinz達は見誤っていなかった。

(問題は、私達がそこまでVandalieuを追い詰める事が出来るのか、という事だ)

 そして最大の問題が、自分達とVandalieuの力量の差にある事も忘れていない。


「だが、今以上の機会はない! それに、これ以上-kunGuduranisに近づける訳にはいかない! ここで倒し、sealedする! 【千輝刃】!」

『【Hell Copper体】、今以上の機会はない、というのには同意します。今回は、お前達を殺す絶好の機会です』

 Heinzが放った煌めく斬撃を魂の鎧をMartial Artsで硬化させて防いだVandalieuとしても、この戦いは彼を殺す好機だと判断していた。


 Orbaumの時と違い、雲より高く聳えるMountain Rangeに挟まれ、Barrierで阻まれた戦場。そして、Aldaが自由に動かせる大国も滅びに向かっている。

 Orbaumの時のように逃げられないし、逃げた後再び向かってくるまでに態勢を整える事も出来ないだろう。


 Heinzが何を考えているのかは、Vandalieuも察している。それについてとやかく言うことは無い。Vandalieu自身も、殺されたDarciarevivalという、Manaが多いだけの赤子に成し遂げられる当てのない奇跡に挑んだのだから、特別思うことは無い。


 ……目標が自分の抹殺である事以外は。

『そのsealedを管理するのがAldaなら、すぐにでもrevivalできそうですけどね』

「言いたい事は分かる。worldを救った-kunを――」

『ああ、そう言うのは面倒なので無用で。お前に褒められても全く嬉しくない。それに、お前達にAldaをどうにかして欲しいと期待もしていません。それは……お前らを殺した後に、俺がやる』


 ぐだぐだとした問答を今更Heinzとする意味はない。Vandalieuは、Heinzの言葉を遮ると、黒い炎を纏った拳で殴りかかった。

「【Divine Iron Wall】!?」

 Delizahがその拳を盾で受けるが、Vandalieuはそれで止まらなかった。なんと、黒い甲冑の腹からVandalieuBodyが出現したのだ。


『凍えちゃえ! 黒焦げだぁ!』

 甲高いfemaleの声と、男の声が続けてVandalieuの口から放たれ、同時coldと電撃が放たれた。

「くっ!? 【Radiant Life】が効かな……いや、効いているが効きが悪い!?」

「なんで!? Vandalieuが使えるのはdeath attributeと無attributemagicだけじゃ……!?」


 そのVandalieuが放ったcoldと電撃は、【Radiant Life】もHoly Swordや聖盾の効果も薄かった。HeinzDelizahは攻撃を防ぎきれずにDamageを負ったが、傷はVandalieuが放った攻撃によるものにしては深くはなかった。

「しまった! こいつはVandalieuPossessionしたGhostだ!」

『その通りです!』

 そう、Vandalieuの魂の中に在ったBodyを【Possession】したPrincess LeviaOrbiaKimberlyが動かしているのだ。


 UndeadであるためLight AttributemagicHoly Swordは効くが、death attributeManaではないからVandalieuと比べると明らかにAttack Powerが下がる。

 そのPrincess Levia達が【Possession】した自分のBodyHeinzDelizahの相手をしている間、Vandalieuは遠距離攻撃で纏めた残りの二人の元に向かった。


 二人にcountlessDeath Bullet【horn】や【bone】の弾丸を放って動きを封じながら、HeinzDelizahがこちらに来ないようにPrincess Levia達を後頭部や背中に出現させたeyeballから怪光線を放って牽制する。

「く、クソ! Daiana、あたしを盾にして離脱しろ!」

「そんな、無理です!」

『そう、無理です。ぺっ!』


 そして、Heinz達が駆けつけられない間に纏めた二人に向かって、neurotoxinを多量に含んだmucusを大量に吐き出す。

「「ぐぶっ!?」」

Gufadgarn

「御意」


 そして、Gufadgarnが二人の背後に開いた【Teleportation Gate】に向かって、二人を押し出した。

『これで、残りはNineroadだけです』

 消えた【Teleportation Gate】の方は見ずに、VandalieuHeinzDelizahに向き直ってそう告げた。




 Heinz達『Five-colored blades』とVandalieuが本格的な戦いを開始した事は、Divine Realmにいる『God of Law and LifeAldaも察知していた。

『急げっ! Bellwood達に加勢するのだ!』

Nineroad -samaを失うわけにはいかないっ!』

 その結果、countlessHeroic spirit達が地上へAdventし、Mirg Shield Nation側に開いたままになっているBoundary Mountain Rangeの谷を通って助太刀するべくHeinz達の元に向かっていた。


 Heroic spirit達は一人一人が生前Heroだった者達であり、普段は【Demon King Fragment】が複数同時revivedり、Demon King Army Remnantsの邪悪な神が姿を現して暴れ出したりした時など、地上のHuman達では対処できない場合に備えている。一度地上にAdventすれば、再び地上にAdventできるようになるまで数百年以上力を蓄えなければならない。そのため、軽はずみに地上にAdventできないのだ。


 とはいえ、Heroic spiritは神ではない。戦闘力に優れた者が死後Familiar Spiritになった存在を、『Heroic spirit』と呼んでいる。だからworldの維持管理に直接かかわってはいない。そのため、worldの維持に必要不可欠な神よりもAdvent後のimpactはずっと少なくて済む。


 つまり、Heroic spiritとはGodsにおける、非常時に駆けつけるための待機戦力だ。だからこそ、彼らは大国同士の戦争ではAdventしない。

 数万人の命が失われる事態を解決したために、数千万人が死に絶える事態に対処できないような事にならないために。


『捕らえられた者達のためにも、主命を果たすのだ!』

 だからこそ、AldaHeinzと彼にAdventしているBellwoodを助けるために動かせるHeroic spiritを全て動かした判断は、非難されるべきものだ。

 彼らがVandalieuに魂を滅ぼされて消滅しても、worldの存続には何のimpactもない。ただ神と人の勢力図の変化が決定的になり、Alda's Factionが衰退するだけだ。


 そもそも我が身と惚れ込んだChampionHero可愛さに動いてはならないのが、本来神のあるべき姿であるはずだ。だが、Heroic spirit達も含めてそれを指摘する者はいなかった。

 NineroadHeroic spirit達は、worldの維持管理にも必要な主の危機なので致し方ないが……。


だが、鳥よりも早く空を駆けるHeroic spirit達の前に立ちはだかる者達がいないわけではない。


「来たぞ」

「クックック、派手に他国の領土を侵犯してくれたものだ」

「ここは地上だ。我々の流儀に従ってもらわなければならんな!」


 『Five-colored blades』が通った時は森の中でsignを殺し待機していたVidal Magic Empireの切り札が、Alda's Factionの援軍を防ぐため動き出したのだ。


「貴-samaっ、ここを通りたければ――」

「通行料として命を頂くぜえ!」

idiot者―っ! それはmountain banditの脅し文句だ!」

 それは、百名を軽く超えるVampireMajin Raceを中心とした集団だった。


『っ!? 何、VampireMajin Race!?』

『おのれっ、Vidaの先兵如きに、聖務の邪魔はさせん!』

 Heroic spirit達にかかれば、Noble-born VampireMajin Raceが相手でも容易く蹴散らせるはずだった。


『ぐわっ!?』

「そんな舐めた攻撃が、我達に通じるか!」

 しかしHeroic spiritが放った攻撃は一団の中でも若いというよりも幼い容姿の少年Vampireに防がれ、それどころか予想外の反撃を受けてしまった。


『っ!? 貴-samaElper!? 気を付けろっ、こいつらはただのVampireではない! 十万年前にVampireTrue Ancestorによって変異した、元Champion軍……Pure-breed Vampireの生き残りだ!』

「今更気づいただかっ!? 悲しいもんだな、Guduranis相手に戦った戦友だっちゅうのによう!」

Draganか! おのれ、これほど嬉しくない再会はないぞ、死に損ないめ!』


「そりゃ、オラのセリフだ! 今度はこっちの番だっ! もっともお前は死んだ後みたいだけどなぁ!」

 Vampire達はNoble-bornではなくPure-born……それも、VandalieuによってAbyss Pure-bornに変異した歴戦のVampireだった。彼らはDemi-Godであり、しかも Guduranis率いるDemon King Armyと戦ったChampion軍の生き残りでもある。


 Alda's FactionGodsに仕える古参のHeroic spirit達がまだ生きていた頃、十万年前Bellwoodに率いられてVidaを強襲した時に戦った者達だ。

『こいつら、十万年前より強くなっている!?』

「数年前まで眠っていたが、Bodyを失ってHeroic spiritになった貴-samaらと違い、我達は研鑽を重ねていたのだ!」


 Vida’s Resting GroundBarrierを維持するために眠っていたPure-breed Vampire達だが、Bodyは止まっていても思考が完全に止まっていた訳ではない。

 Bodyの外の出来事を知覚する事はほぼできなかったが、思考を重ね、Manaを巡らせていた。そして、それは目覚めたのちのBody的な鍛錬に活かすことが出来た。


 対して、Heroic spirit達はBodyを失いStatus systemからも外れている。しかも、普段Divine Realmで待機しているので実戦からも遠のいている。

『いい気になるなよ! 我々はAlda -samaの元でHeroic spirit同士訓練を重ね、技を磨いてきたのだ!』

 しかし、待機しているとはいえ訓練が出来ないわけではない。老いから解放された彼らは、好きなだけ技を高め合う事が出来る。


「そんな事はオラ達も同じだ!」

「むしろっ、稽古相手の多-samaさでは我らの方が上だ!」

 しかし、それはAbyssal Pure-breed Vampire達にも当てはまる事だ。それを証明するように、Pure-breed Vampireと共にHeroic spirit達の前に立ちはだかったMajin Race達も彼らを前に一歩も引かず戦闘を続けている。


 Heroic spirit達が振るう剣をclawsで弾き、Materializationして得た仮初のBodyfangsthrust立て、強力なmagicを放つ。

「はっはぁっ! これがHeroic spiritの実力かい!? 出し惜しみせず全力で来なっ!」

 tailを鞭のように振るうObscene-Majin Succubusを含め、彼女達は『Vida’s Resting Ground』と呼ばれるChurch of VidaBarrierの維持に加わるために眠っていたMajin Raceだ。


 つまり、生きながらPure-breed Vampire-samaDemi-Godの域に到達した者達なのだ。Heroic spirit達と互以上に戦えて当然なのだ。

「右翼! もっと真剣に! 左翼は突出しすぎない! 上空は遠距離攻撃を休まない! 大kaa-sanは突出しすぎです!」

「よし、分かった! 儂があの婆-samaを止めてきてやろう!」

「父-sanは突出しすぎです! もっと下がってください!」


 ……一部、寝所で眠っていなかった世代のMajin Raceもいるが、HumanからObscene-Majinに変異した現Majin Queen Irisは個人主義者が多いMajin RaceCommandingして、彼らに集団としての力を発揮させるという重要な働きをしていた。

 前Majin Kingで彼女のMajin Raceとしての父であるGodwinも、並のHeroic spirit相手なら確実に勝てる実力者だ。戦力としては申し分ない。


『お、おのれっ! このままでは聖務を果たせん!』

 そしてHeroic spirit達にとって不利な事に、彼らの時間と力は有限で、目的はAbyssal Pure-breed VampireMajin Raceの討伐ではないという事だ。


 全力でElperPure-breed VampireGodwinMajin Raceを撃退する事が出来たとしても、それで力を使い果たして『Five-colored blades』に助太刀する前に地上に留まる力まで使い果たしてしまえば、聖務を果たすことができない。

 だが、手加減して勝てる相手ではない。


『……仕方がない。後はお任せします』

 Heroic spirit達の中でも古参の者はそう呟く。そして、すぐ号令をかけながら前に出た。

『全力でこの者達を浄化せよ! それこそが我らの勝利に繋がる!』

『『『おうっ!』』』

 号令に従って、Heroic spirit達の攻勢が激しくなる。Martial ArtsActivateさせ、magicを唱え、戦いに全力を振り絞り始めた。


 好戦的なGodwinAldaVida's FactionGodsに行った仕打ちを知り苛立っていたAbyssal Pure-breed Vampireは、それでこそ戦い甲斐があると全力で迎え撃つが、WarriorではなくCommanderとしてこの場にいるIrisは疑問を覚えた。

Heroic spirit達は何故本気になった? 『Five-colored blades』へ助太刀するのは諦めたのか?)

 Heroic spirit達の目的は、考えなくても分かる。それを防ぐために、彼女達はここでVandalieuの要請に応えて待ち構えていたのだから。


 援軍を防ぐためならMountain Rangeに開いた谷を閉じればいいのだが、あえてそのままにしてAdventしたHeroic spirit達の侵入口を限定し、待ち構えて撃退するというtactics。そうVandalieuから説明を受けた時、Irisは彼のDemon King Familiarを一体預かっていた。


「陛下、Heroic spirit達の動きが妙です。何か企んでいるようですが……」

 耳飾りにCamouflageしている蟲型Demon King Familiarを通じて、IrisVandalieuにそう報告した。

『分かりました。何かあったら助けに来てもらうので、皆によろしく』


 そして、Iris達の目を掻い潜ってHeroic spirit達に後を頼まれた存在は戦場を後にした。Gufadgarnがこの場にいれば、もしくはmain bodysealedしていなければ何かを察知したかもしれないが、彼女は今Vandalieuに潜んでいた。



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