Eileek・Marme Popeから告げられた聖戦に異を唱える者は、Amid Sacred Empireには誰もいなかった。
近々聖戦を行う事は政治や軍事、そしてtempleに関わる誰もが察していたからだ。……一部の国民やMirg Shield Nationを含めた属国の王族やNobleは内心苦い思いをしていたが、表立って逆らえるはずもなかった。
EmpireからSacred Empireと変わった事で、為政者であるAlda templeのPopeの言葉は『God of Law and Life』Aldaの言葉となっている以上、政府に逆らうと神に逆らう事になってしまうからだ。
特に、Mirg Shield NationはBoundary Mountain Rangeの一部が動きArk Mountain Rangeとなった際に、Amid Sacred Empireが派遣したHeinz達Heroによって救われている。そのため、表立って反抗する事はできなかった。
「しかし、聖戦を始めるとしてもどうするのです? 敵はあの人跡未踏のBoundary Mountain Rangeの向こう側です。海路から攻めようにも、恐ろしいDemon Seasのmonstersと渦と岩礁が待ち受けています。
やはり、こちらから攻めるのは不可能なのでは?」
だが、意見と言う形でMirg Shield Nation王は遠回しに「無理ではないか?」と問いかけた。
その-sama子は宗主国に媚びるばかりではない、しっかりと意見の言える王であるように見えたが、内心では戦々恐々としていた。神の意志の元、Boundary Mountain Rangeを無理に超える、もしくは海から強引に上陸するために自国の兵に死の遠征を命じるつもりではないかと不安に駆られていたからだ。
以前の、まだEmpireだった頃の宗主国ならMirg Shield NationがDecayしかねないような事は命じなかった。歴代のEmperorはそれだけreason的であり、同時に維持する価値がMirg Shield Nationにあったからだ。
しかし、Boundary Mountain Rangeが動いた事でMirg Shield NationのOrbaum Elective Kingdomに対する盾としての役割は終わり、その価値は激減してしまった。
また、Amid EmpireはSacred Empireへと変わり、新たな支配者であるEileek・MarmeがこれまでのEmperorと同じように属国との関係を維持するつもりがあるのか、不安視する者はMirg Shield Nationの中に少なくない。今回の聖戦のついでに多すぎる兵を削るつもりではないかと、Mirg Shield Nation王が考えても無理はなかった。
以前はSacred Empireになって変わった宗主国に対して「-sama子を見よう」などと思っていた彼だが、その結果Sacred Empireの危なっかしさを思い知る事になり、今では以前下した日和見な判断を後悔していた。
「確かに……既にMirg Shield Nationが過去に侵攻した際に使った道も、tunnelも存在しない」
「まさかtunnelの再建から始めるのか? 開通するまで何年かかるか分からんぞ」
「いや、海の上をmagicでFlightすればいいのでは?」
「idiotを言え、過去にそれを試した先人がいなかったと思うのか? 彼らはその命をもって我々に教訓を残してくれたのだぞ」
「そうだ、Duke Farzon領と合流してOrbaum Elective Kingdom側からBoundary Mountain Rangeを抜けるtunnelを探すのはどうだ!? こちら側にあった以上、あちら側にもtunnelがあるはずだ!」
「それこそ何年かけるつもりだ!? Duke Farzon領軍と船で合流して、その後Orbaum Elective Kingdomの他のDuchy全てを敵に回して戦争をしながら、あるかどうかも分からんtunnelを探す……とても無理だ」
「そもそも、向こうはMountain Rangeを動かせるのだぞ。そんなに時間をかけていたら、向こうからMountain Rangeを動かして攻め込んでくるぞ!」
招集されたSacred EmpireのNobleや属国の王族とその臣下達が、囁きというには大きすぎる声で意見を交わす。彼らに共通しているのは、Amid Sacred Empireでは重要視されない立場にある者達である事だ。
対して、Amid Sacred Empireで重要な立場にある者達は最初から結論を知っているかのように落ち着いている。
「落ち着いてください。主Aldaは既に、我々が実行するべき事をOracleより告げています。
『Heroic God』Bellwoodを降ろしたHero Heinzによって、Boundary Mountain Rangeを割り、活路を開くのです」
そして、Eileekによって告げられたのは、これまでの常識を力技でねじ伏せるとんでもないtacticsだった。
だが、それなら可能だと多くの者達は納得した。
AClass adventurerはもちろん、SClass adventurerであるSchneiderがwhole body全霊の力を振り絞った一撃を放てば高さ数百meterの山ぐらいなら割ったり砕いたりして破壊する事ができる。
だが、一撃で標高数千meterに及ぶBoundary Mountain Rangeの山々を破壊する事はさすがに不可能だ。崩すことができたとしても、その結果大量の土砂がMirg Shield Nationに雪崩れ込み、その後住み処を崩されたBoundary Mountain Rangeのmonstersが雲霞の如く押し寄せてくるのは想像に難くなかった。
しかし、『Heroic God』Bellwoodを降ろした『Blue-flame Sword』のHeinzの一撃なら、Mountain Rangeを割る事ができるはずだ。態々神が聖戦を始める手段としてOracleで指定したのだから。
「そ、そんな事をすればBoundary Mountain Rangeに巣くうmonsters達が、再び我が国に襲い掛かってくるではありませんか!」
だが、Mirg Shield Nation王はそれを信じたうえで異議を唱えた。tacticsが実行された場合、主な戦場になるのは彼が治めるMirg Shield Nationなのだから、当然ではある。
「聖戦が終わった後、後に残るのはBoundary Mountain Rangeの内側に続く入り口です! どうか、聖戦後に我が国を守る方策を……せめて、Mountain Rangeを割る位置の選定を我が国に任せていただきたい!」
Boundary Mountain Range内に繋がる入り口が、新たな領土を得る足掛かりになるとは、Mirg Shield Nation王はfragmentも考えなかった。
何故なら、それは約七年前に失敗に終わった第二次Talosheim遠征で得た数少ない、しかし貴重な情報と教訓から危険な考えだと分かっているからだ。
Boundary Mountain Range内の土地は全てDevil Nestsで、強力なmonstersが数えきれない程群れており危険極まりない。そう報告を受けて浄化して普通の土地にできるか検討するよう宮廷Mageや学者達に検討させたが、無理だという結論が出た。
Devil Nestsを浄化する時は、浄化したいDevil Nestsを一度にすべて浄化するのが定石だ。一部だけの浄化では、その範囲内のmonstersを駆除しつくしても新たなmonstersが範囲外のDevil Nestsから入り続けてしまうからだ。だから全ての土地がDevil Nests化しているBoundary Mountain Range内では、浄化作業中に他のDevil Nestsからmonstersが侵入し続けてしまって浄化できないと考えられる。
もちろん、侵入してくるmonstersを二十四時間常に駆除し続ければ浄化する事もできるが……そのために必要な戦力や費用を考えると、とても現実的ではない。それこそ、Boundary Mountain Rangeを動かす『Demon King』や、割る事が出来るHeinzなら別かもしれないが。
そんな危険な場所と地続きになったら、Mirg Shield Nationはどうなってしまうのか? Mountain Rangeを割った谷の入り口から徐々にDevil Nestsに侵食されてしまうに違いない。
そうならないためには、Mountain Rangeを割る場所を人里から離れた場所にし、Boundary Mountain Range内部からmonstersが押し寄せてDevil Nestsを広めないように守るための砦を築かなくてはならない。
そのためには年単位の時間がかかるため、実質聖戦を止めてほしいと主張するのと同じだ。だが、Mirg Shield Nationの王としてはそう主張せざるを得ない。
「心配することはありません」
しかし、Mirg Shield Nation王に応えたのは厳しい拒絶やfake-believerのレッテルではなく、温かい言葉だった。
「偉大なる『God of Law and Life』Aldaは、そのような事は既に承知しています」
「ほ、本当ですか!?」
目を見開いて問い返すMirg Shield Nation王に、Eileekは微笑んだまま頷いた。
「聖戦に勝利した時、あなたの不安は全て消え去り、悩むことは何もないでしょう」
そう告げた途端感極まったように神に祈りだすMirg Shield Nation王を眺めながら、Eileekは思った。なんて不遜で、それ以上に哀れな男なのだろうか、と。
『God of Law and Life』Aldaは、聖戦を始める事でMirg Shield Nationが戦場の一つになる事、そして聖戦の結果国土が蹂躙され大きな被害を受ける事は最初から理解している。
そして、聖戦に勝利した後、よほど運が良くなければMirg Shield Nationは滅亡する事も。
それを理解しているが、それは「必要な犠牲」だと判断し、生贄の羊となるMirg Shield Nation民の事を憐れみその犠牲を悼みつつも、それを仕方なしとしている。
それをEileekはOracleによって知っており、Aldaが「必要な犠牲」とMirg Shield Nationを定めた以上異を唱えるつもりはなかった。
むしろ、Mirg Shield Nationの全ての民はAldaにその最期を悼まれる事に感謝しながら、喜んで命を捧げるべきだとすら考えている。
だから、Eileekは真実をそのままMirg Shield Nationに伝えた。
AldaはMirg Shield Nationが不安に思っていることは全て承知している。そして、聖戦に勝利した時には既にMirg Shield Nationは国としての体を為していないconditionだろうから、Mirg Shield Nation王が不安に思う事は全てなくなり、悩むどころか考える事もないだろう、と。
だが、それは自分達だけは例外だと考えるarroganceさからくる冷酷さによるものではない。Mirg Shield Nation以外の属国、そしてAmid Sacred Empireも同-samaに生贄の羊なのだから。
EileekはAldaにとって、自分もまた生贄の羊であり、Mirg Shield Nationとの違いは捧げられる可能性と時期が異なるだけである事を知っている。
それもまた神の意思であり、この命を神に捧げられることにHonoraryを覚え、このworldの未来を左右する聖戦のために命を投げ打つことができるとEileekは心から喜んでいた。
例外は、Mirg Shield Nationが生贄の羊である事を知りつつも、自分はそうなる事はないと思い込んでいる者達、Amid EmpireからAmid Sacred Empireへ鞍替えし、進んで前Emperor Mashkzarを差し出したNoble達だ。
彼らは知らない。Aldaは最悪の場合、Amid Sacred Empireだけでなく Bahn Gaia continent全土から聖戦を生き残ったHero達を撤退させて人が住んでいる島などに移住させ、そこで態勢を立て直しContinent奪還のための準備を改めて進めるつもりである事を。
全てを知るEileekは、哀れな彼らにそれを教えるつもりはなかった。
同時刻、Duke Farzon領でも聖戦の報せは届いていた。情報伝達の方法はDuke Farzon領とAmid Sacred Empireの間を行き来する超一流の密使やGenius的なSpace-Attribute Mage……などではなく、やはりAldaからのOracleだった。
Duke Farzon領のAlda templeには、EileekほどOracleをaccurateに受け取る事が出来るaptitudeの持ち主はいない。しかし、聖戦を始める、という短い内容を取り違える事はない。
Duke Farzonはこの聖戦こそ自分がこの世に生まれた意味だと信じ、Duke軍だけでなく義勇兵を募って全てを投じる構えだ。
その動きは当然大きくなり、他のDuchyに察知され、Vidal Magic Empireにも情報は伝達される。
Vidal Magic Empireの首都であるTalosheimの城で、Vandalieuはしばらく考えてから口を開いた。
「とりあえず、Amid Sacred Empire側のBoundary Mountain Rangeに国があるKijin nationには一旦避難してもらうとして……政治や軍略に疎い俺でも分かりますが、これは囮とか陽動の類ですよね? Duke Farzon領だけではなくAmid Sacred Empireの動きも含めて」
『はい、私も同意見です』
『その通りです、さすがVandalieu -sama』
生前Mirg Shield Nationの武官だったChezareも、何万年もHuman社会を裏から操ってきたVampires serving Evil GodsだったIslaも、同意見だった。
Amid Sacred Empireが送り込もうとしてくる大軍勢は、Boundary Mountain Rangeまで一月以上街道を進軍してやってくる。それも、軍団のCenterにはHeinz達『Five-colored blades』が万全の態勢を維持するため大型の馬車に乗って待機しているという。
普通の敵国を相手にする場合ならともかく、foot workが軽いVandalieu達にとってそれはBoundary Mountain Rangeに到着する前に攻撃してくれと、叫びながら行進しているようなものだ。
いや、VandalieuがAmid Sacred Empireの征服を目論んでいるなら、軍がAmid Sacred Empireから出発してすぐには戻れなくなった時点でSacred Empireの首都を急襲して占拠しようとするかもしれない。
つまり、AldaはVandalieuにそうして欲しいのだ。軍団のCenterで馬車の中に陣取り姿を見せないHeinz達は、考えるまでもなく偽物で、本物はどこかで待機しているのだろう。
Duke Farzon領の方も考えるまでもなく、陽動だ。Duke Farzonがどれほどやる気になっても、彼らにはVidal Magic Empireと直接刃を交える術がないからだ。
陸路ではBoundary Mountain Rangeを越える以前に、まずBirgit DuchyやHartner Duchyを横断しなければならず、海路でも、Amid Sacred Empireと同じようにDemon Seasのmonstersや荒々しい海流や岩礁を抜けねばならない。
もちろん、Orbaum Elective Kingdomの各Duchyにとっては陽動ではなく防衛線を展開しなければならないわけだが。今のDuke Farzon領を除いたOrbaum Elective Kingdomは、Vidal Magic Empireの友好国だ。当然だが、高みの見物をするつもりはない。
『各Duchy軍には求めに応じて援軍を送り、陛下はいつでも動ける態勢を維持して待機するのがよろしいかと』
だが、Chezareが言うようにいきなり援軍を送りつけるのは、防衛線がよほど追い詰められた時だけにするべきだろう。そうでなければ各Duchy軍の顔を潰すことになる。
たとえ、Duke Farzon領軍に他のDuchyの精鋭達が組み込まれているとしても。
外交を含めた政治に、手続きとその順序は無視してはいけない重要なものなのである。……もちろん、世の中には手続きをしている暇のない緊急事態というものがあるが、その場合は事後承諾という素敵な言葉がある。
それに、彼らがVidal Magic Empireに援軍を要請するのを躊躇う事はないだろう。
「それで、肝心なのはAlda's Factionの動きだな。陽動を仕掛けた裏で、どう動くと思う? 狙いは陛下の暗殺だと思うが」
Chezareの弟で副General兼副Prime Ministerという地位にいるKurtがそう言うと、最初に応えたのはEleonoraだった。
「本物の『Five-colored blades』を中心にした少数精鋭の部隊を、このTalosheimに送り込もうとするんじゃないかしら? Amid Sacred Empire側の陽動部隊にBarrierを破壊させて、Nineroadかまだ健在のはずの『God of the Reflexions』LarpanにTalosheimまで【Teleportation】させて」
『いや、実はHeinz達はもうDuke Farzon領で潜伏していて、Birgit Duchyや、KatieのいるHartner Duchyに攻め込み甚大な被害を与え、救援にVandalieu -samaが駆けつけたところを狙うつもりかもしれないわ』
Eleonoraに続いてIslaが、しかし彼女とは異なるconjectureを述べる。何かと競い合う事が多い二人だが、今は真剣に話し合っているのか、無意味な言い合いをする-sama子は見られない。
『なら、Jahan DuchyやSauron Duchyにもう潜伏している可能性もあるよね? GufadgarnやJane Doeに感知されないよう、街の外にSpace-Attribute Magicで【Teleportation】して、時が来るまでそのまま野宿していればいいんだから』
だが、Zandiaがそう言うと、警戒するべき範囲が広すぎる事に全員が気付いた。
『Earth』と違い、このworldのHumanは個人で戦略兵器並みのAttack Powerを持つ者がいる。VandalieuやSchneider達、そしてHeinz達『Five-colored blades』がそれだ。
そしてこのworldは、『Earth』程Humanが管理している土地は広くない。街と街の間にある森や林にでも潜伏されたら、探し出すのは困難だ。
そして『Five-colored blades』はadventurer partyである。本来、そうした野外での活動はお手の物だ。一週間でも一カ月でも潜伏し続ける事が出来るだろう。
『まあ、さすがにDemon continentやGartlandやその周辺に潜伏するのは不可能だろうから、Candidateから外して良いと思うけど』
「そうなると、奴らが潜伏しているとしたら前もって見つけるのは困難だな」
Kurtはそう結論付けた。VandalieuがDemon King Familiarを増やすのも限界がある。さすがにOrbaum Elective Kingdom全土を、文字通り草の根を分けて大捜索することはできない。そして霊やUndeadを動員するのは、より難しい。
「Vandalieuならもしかしたら可能かもしれないけど、そのためだけにかかりきりになったり、使えるManaが減ったり、思考の数をDemon King Familiarの操作に取られてmagicの制御が甘くなってしまうかも。
それが敵の本当の狙いかもしれないものね」
「そうですね、kaa-san。だから、重要な街の周りなどにDemon King Familiarを待機させるだけにしましょう。……まあ、Heinzはそういう事はやりたがらないと思いますけど」
「師Artisan、言葉の後半の意味は?」
「そのままの意味です、pupilsよ」
Vandalieuは半眼になってLucilianoの質問に答えたが、さらに説明を促されたのでしばらく無言の抵抗をしたのち、口を開いた。
「弁護する訳ではありませんが、Heinzは無暗に人を殺す事や街を破壊する事で快楽を覚える奴ではありません。特にAldaがHumanとして定義するHuman、Elf、Dwarfの三raceは。……さらに言えば、Vida's New RacesであってもHumanの社会にとって都合が悪くなければ、害を与えようとはしなかったそうです」
VandalieuはHeinzを心の底から憎んでいるし、Heinzが消えた方がこのworldは清くなると、Heinzが存在する限り真の幸福はないと確信している。蛇蝎とHeinzなら、蛇蝎とベストfriendになる事を迷わず選ぶ……既にだいたいの蛇蝎はVandalieuと親しいのだが。
しかし、それで情報を歪めてはならないと踏み留まる程度にVandalieuは冷静で、そしてcowardだった。
Heinz達『Five-colored blades』はadventurer partyで、Alda believerだ。しかし、Human社会のHeroであると同時に街で暮らすVida believerやVida's New Racesに対しては迫害を行う事はなかった。Alcrem Duchyではむしろ人と同じ権利を獲得するために動き、一定の成果を上げていた。
monstersの一種とされていたGhoulや、Duke Farzon領で政府の者を誘惑して情報を引き出していたMajin Raceや【Demon King Fragment】を守っていたMerfolkの部族には容赦しなかったが……それもHuman社会では悪とされる対象だったからだ。
Vandalieuとしては、だから許すとか見逃すという気には全くならないが、それでもAldaのfanatic……Eileekのような者とは違うと思っている。
『だから、陛下をおびき出すためだけにOrbaum Elective Kingdomの街を攻撃する事はないと? しかし、AldaがGuduranisのsoul fragmentすら利用しかねないと言ったのは、陛下ですが?』
「Chezare、確かに言いましたが、AldaとHeinzは別人です。HeinzはAldaの化身ではないし、Aldaをその身にAdventさせた事もありません」
何より、HeinzはAldaと同一人物ではない。思考やMemoryを共有していない別々の存在であり、そうである以上Aldaが聖戦と位置付けるこの戦争で、「必要な犠牲」と定めた存在の命を、「必要ない犠牲」と考える事は十分あり得る。
特に、Orbaum Elective Kingdomの各DuchyにはAlda believerもまだ存在するのだ。
「戦争だからと割り切る事ができる人もいますが、Heinzにそれができるとはとても思いません。……ふう、ちょっと休みますね」
Heinzを弁護するつもりはなくても彼のsupportようなことを口にした事でたまったstressを癒すため、Vandalieuはmain bodyである自身の活動を休止した。
目を開けたまま動かなくなったVandalieuをひょいと抱き上げて、Darciaは彼の意見に頷いた。
「確かに、revived GuduranisとVandalieuの戦いに介入してきたとき、VandalieuじゃなくてGuduranisを倒すことを優先していたわね」
「じゃが、坊やを誘き出すために町を攻撃するならHeinz以外の者、『Fifteen Evil-Breaking Swords』でも……いや、無理か。誘き出した後、激怒している坊やに瞬く間に殺されるだけじゃな」
Vandalieuを誘き出すだけなら、Heinz以外でもできる。しかし、Zadirisが言うように誘き出した後のVandalieuの相手をできるのは、BellwoodをAdventさせたHeinzぐらいだろう。彼の足を止めて時間稼ぎをするだけでも、至難の業なのだから。
殺すとなれば、他の選択肢はない。
『Aldaの『Pile of Law』は警戒しなくていいのか? Alda自身がAdventしてきて坊主に杭を刺そうとするって奇策も十分あり得ると思うぜ』
「偉大なるVandalieuに変わって、このGufadgarnが答えよう。その場合、偉大なるVandalieuは一旦引けばそれで十分。また、不意を突かれても回避する事が可能だ」
Borkusが警戒するAldaのDivine Authorityである『Pile of Law』は、Lambdaの神に対して絶対的な効果を発揮する。しかし、杭であるため、Aldaが対象に直接thrust刺さなければ効果を発揮する事ができない。
つまり、Aldaの間合いの外まで引けば刺さらない。そして、AldaはWar Godではないので神としての力はあっても、戦闘に関する高い技術を持っている訳ではないから彼が振りかざす杭を避ける事もVandalieuなら不可能ではない。
MythではGreat Godである『God of Space and Creation』Zuruwarnや『Magic God of Time and Arts』Ricklentが何度かAldaの『Pile of Law』で罰を受けたepisodeが残されている。そして、十万年前の戦いでVidaは『Pile of Law』で滅多刺しにされた。
しかし、ZuruwarnやRicklent、そしてVidaもWar GodとしてのDivinityを持っていないため戦いが得意ではない。さらに言えば、ZuruwarnとRicklentの場合はそもそも『Pile of Law』から逃げるつもりがなく、甘んじて罰を受けたのだ。
そのepisodeが起きた時代はDemon King Guduranisがこのworldに来る遥か以前の事で、全てのGreat Godが揃っていた時代。色々とやらかすZuruwarnとRicklentも、このworldにとって必要不可欠な存在であり、二柱ともその事を自覚している。だから、当時は正気を保ったまま問題なく法を司っていたAldaが下す罰から逃げる意味がなかったのだ。
罰を受けて償えば、元通りGreat Godとして他の神と肩を並べる事ができるが、逃げ回ってばかりではお互いの関係が悪くなってしまう。だから別のspaceへの【Teleportation】や、Aldaの周囲の時の流れを遅くしての逃亡を選ばなかった。
そしてVidaは、Bellwoodの攻撃によってDamageを受けた後に『Pile of Law』を受けたので避けられなかっただけだ。
「とはいえ、これは地上にAdventしたため存在できる時間が限られているconditionのAldaの攻略法であって、AldaがYorishiroにAdventした場合は話が異なる。
AdventするYorishiroに高い技量があれば、それで『Pile of Law』をその技量で振るう事が可能になるかもしれない」
Vidaを体に降ろしたDarciaと同じという事だ。
「その場合は神ではない我々が接近戦に持ち込み、旦那-samaには杭が届かない距離まで下がってもらうのが最善でしょうか」
「Bellmondの意見に同意する」
「それで、話題を元に戻すが……皆はHeinzが何処で何を狙っていると思うのじゃ?」
『陛下の意見を考慮すると、おそらく奴が命を奪う事を躊躇わない存在が暮らす場所、その奥深くまで切り込んでくるのではないかと。
つまり、このTalosheimに来る確率が高いと考えます』
Demon King退治の物語の定石は、少数精鋭による敵中枢への侵入と、Demon Kingの暗殺である。
これもまた、Demon King扱いされているVandalieuにとっては不快な話だが。
「とりあえず、奇策はtheory通りの対応を徹底してから考えましょう」
冬が深くなり、あと数日で年が明ける頃、Amid Sacred Empire Holy Army……略してHoly Armyは、進軍を続けていた。
その総数は約十万。……Amid Sacred Empireと四つの属国の総戦力を合わせたにしては、数が少ないように感じるかもしれない。
しかし、この十万は全てが精鋭で構成されているのだ。
一兵卒でも、通常ならRank2相当のmonstersを倒せる程度であるところを、Rank4のmonsters相手に互角以上に戦える腕利きのSoldierばかりだ。参加を募ったadventurerやtemple WarriorやKnight達も、CClass以上の者を厳選している。
Vandalieuとその配下達を相手にする以上、弱兵は肉の盾どころか邪魔にしかならない。
この数カ月で鍛えに鍛えた精鋭を、集めに集めてこの数なのだ。もちろん、Eileek・Marme Popeも加わっている。だが、同時にこのHoly ArmyはAlda's Factionにとって囮でしかなかった。
Vandalieu達がすぐに見透かしたように、このHoly Armyの中にHeinz達『Five-colored blades』はいなかった。彼らがいるはずの馬車に乗っているのは、偽者だ。
そして、Holy ArmyにはAldaに忠実ではない者達も含まれている。
(Temple Headの合図と同時に、戦列から全力で離れる)
(『God of Law and Life』Aldaが本当に狂っているのかは分からん。だが、Eileekが狂っているのは間違いない)
(我々が信仰するのは、Aldaではない。なら、神の言葉を信じるのみ)
(Botinよ、Artisanたるあなたが鍛えたこの身に力を)
(Periaよ、その英知を我に授けたまえ)
(Ricklentよ、我に時's Divine Protectionを)
(Zuruwarnよ、Chaosの先に希望を指示したまえ)
彼らはEileek達Alda templeによって捕らえられていたところをVandalieuに助けられたClergyman達から指示を受けた、もしくは、Aldaへの不信感を上手く隠し通す事ができた者達のUnder Commandにある者達。そして、それとは関係なくVida's Factionに転向したGodsから直接Oracleを受けた者達だった。
彼らは皆、立場上Holy Armyへの参加を断る事ができなかった、もしくはHoly Armyに加わった同郷の者や友人を助けるために断らなかった者達だ。
当然だが、彼らはHoly Armyの一員として戦うつもりはない。
そんな一枚岩ではないどころか、板状の岩を積み重ねたような軍ともいえない軍がHoly Armyだった。
後数時間、行軍を続けてBoundary Mountain Rangeを射程距離に収めたら、Heinzの代わりに馬車に籠っている者達がMountain Rangeを破壊。そうしてできた入り口から攻め込む手はずになっていた。
だが、突如Mountain Rangeから轟音が響きだした。それはGiantなMonstrosityの咆哮のようだったが、そうではない事をMirg Shield NationからHoly Armyに参加した者達は知っていた。
「Mountain Rangeが……Mountain Rangeがまた動くぞ!」
「Demon Kingめ! 先に仕掛けてくるつもりだ!」
Holy Armyが近づいてくる間、彼らからは何も起きていないように装いながらゆっくり時間をかけて【Golem Genesis】で作られた谷が、その入り口を現した。
そしてそのMountain Rangeからは、countlessのmonstersが……目をblood走らせたTyranosaurusの群れや、咆哮を轟かせながら走るHill Giant、midairを泳ぐFlying Huge Shark等がHoly Army目掛けて全速力で近づいてくる。
「迎え撃て!」
「今だ、逃げろ! 退け、退けぇ!」
それに対してHoly Armyはいきなり足並みが乱れた。いざ、Demon King Armyとの戦いに身を投じようとするhot-bloodedな者達と、これが合図だと予定通りHoly Armyから離脱しようとした者達。
chain of commandは一瞬でDecayし、離脱しようとする者達以外の動きが鈍る。
『うおおおおおおっ! 蹴散らせぇぇぇ!』
「逃げようとする者は追うな! その場に留まる者は殺せ!」
「Noble Orc軍、前進せよ!」
その側面から、潜んでいた『Sword King』BorkusやVigaro率いるVidal Magic Empire軍と、Budarion率いるNoble Orc軍が襲い掛かった。
「しまった! 既にBoundary Mountain Rangeの外で待ち伏せていたのか!?」
そう、これ見よがしにMountain Rangeを開いて見せたのは陽動。そして、谷から出てきた雑多なmonstersの群れは囮の捨て石に過ぎない。
Boundary Mountain Range内部にいるmonstersの内、突進力に優れた種類を適当に集めて後ろから追い立てただけで、Vidal Magic Empire軍の一部ですらなかった。
決戦のFirst幕は、まずはVidal Magic Empire側の奇襲が成功した形となったのだった。