鼓動、呼吸、それはリズムだ。
「フッ!」
迫りくるGiantな炎の拳を、電撃を、毒液を、ステップを刻んで回避する事が出来る。やはりリズムだ。
「【轟風Edge Storm】!」
そして風のAnimaに呼びかける言葉も、countlessの風の刃による嵐のように激しい攻撃magicも、それによってwhole bodyを切り刻まれた、角を生やし鬣から雷を発し、酸の唾液を持つ恐竜型monstersのUndead、Destroy KaizerレックスZombieや、resistance skillを持っていても低levelだと近づくだけで焼き殺されてしまう業火の体を持つブレイズGIANT Ghostもリズムである。
『GYAOOOOOOO!』
『GOAAAAAAAAA!』
『UOOOOOOOOOO!!』
今も群れで咆哮のChorusを奏でている。
「つまり、戦いはmusicだ」
「Randolph……お前、実はさっきの攻撃が頭に直撃していたんじゃないか?」
唐突にBAKANA事を言い出したpartnerに、Meorilithは胡乱な視線を向けたが、掛け合いに興じるには敵が強すぎたのですぐに意識を戻した。
二人はVandalieuが作ったSClass Dungeonで訓練をしていた。
丁度いい敵がいない、と話していたRandolphだったが、それは彼が知るworldでの話。Vidal Magic EmpireではVandalieuによって作られたSClass Dungeonと、GufadgarnがDark Elf nation(既にChaos Elf化した国民ばかりだが、まだ改名していない)に固定した『Trial of Zakkart』が存在する。
その内、『Trial of Zakkart』の難易度の高さは階層の多さと謎かけの難解さとTrapによるもので、monstersの強さはそれほどではないのでVandalieu作のSClass Dungeonに彼らは放り込まれた。
Demon King Familiarを相手にしているBorkusやBone Manとは違う。Vandalieuからは「まずは、勘を取り戻しましょう」と言われた。
その扱いはRandolphのprideに触ったが、実際勘が鈍っている事を自覚していただけに何も言えなかった。
そして、Dungeonに放り込まれてから思い知った。Demon King Familiar相手の訓練がこれより辛いなら、自分には無理だと。
『GUOOOOOOO!!』
出現するmonstersは、SClass adventurerとして数えきれない程のmonstersを倒してきたRandolphでも知識に無いmonstersばかりで、しかも Dungeonのtheoryを無視して、全力でこちらを殺しに来る。
「いや、多少Fatigueはしているが、俺は絶好調だ」
出現するmonstersはVandalieuのCreation物だが、彼らはDungeonに侵入する存在を倒すためには手段を選ばない。
Dungeonボスと中ボスがroomから出て階段を駆け上がって合流し、お互いにCoordinationしながら侵入者を数と質の暴力で倒そうとするのなんて、既に基本戦略である。
最近はDungeonボスのroomの奥にある宝物庫から宝を持ち出し、岩などを積み重ねてボスroomの前に偽宝物庫をArchitectureし、Dungeonをclearしたと気を抜いた侵入者の不意を突くという真似までするようになった。
非常に狡猾で、Killing Intentが高い。
しかも驚くべきことに、このDungeonのmonstersはこのconditionでVandalieuに導かれたconditionである事が判明した。侵入者がVandalieu本人だったとしても、情けも容赦も躊躇もせず殺しに来るのに。
どうやら、monsters達は侵入者に容赦なく襲い掛かる事を「それがVandalieuのためであり、これがVandalieuの願いである」と解釈しているらしい。
いわゆる、愛故に振るわれる鞭、愛の成せるMurderというやつだ。
今、RandolphとMeorilithに拳を振り上げ、fangsを剥くUndead達も、愛故に襲ってくるのである。その愛のお陰で、彼の勘は早くも戻っていた。
「その証拠を見せてやる」
そう言うや否や、RandolphはブレイズGIANT Ghost……炎のgiantがGhost化したUndeadに向かって駆け出していく。
「待てっ、無謀すぎる!」
『GYAOOOO!』
Meorilithの制止の声を、Destroy KaizerレックスZombieの咆哮がかき消した。Dungeonに出現するmonstersはraceが違ってもある程度Coordinationして戦うが、このDungeonのmonstersはまるで長年同じteamを組んでいたかのように動く。
Destroy KaizerレックスZombieが、炎のgiant Ghostに接近するRandolphに向かって電撃の雨を降らせた。そんな攻撃に当たるRandolphではないが、回避のために足が止まり、その隙を炎のgiantが突く。そんなtacticsだったのだろう。
「【水乙女の群柱】」
しかし、なんとRandolphは足を止めずSpirit Magicで作りだした複数の水の柱で電撃を防いで見せた。
「【水乙女の轟流】!」
『Oooo……!!』
そして、電撃を帯びた水の柱を操り、炎のgiant Ghostにぶつける。慌てて援護に向かおうとするDestroy KaizerレックスZombie達だったが、そこにMeorilithのmagicが降り注ぐ。
Randolphの隙を突くtacticsが失敗した隙を、逆に突かれた事でmonsters達は敗れたのだった。
「確かに調子はいいようだが、私が咄嗟に合わせなかったらどうしていたつもりだ?」
「お前なら合わせられると思ったから、やったんだ。そして、それも含めて調子が良いという事だ」
引退後、格下のmonsters相手に一人で戦う事しかしていなかったRandolphは、仲間とCoordinationして戦う戦法から離れ過ぎていた。
そのため、最近の彼は仲間とCoordinationして戦うという選択肢を無意識に外して考えるようになっていた。
Schneiderもparty memberと協力して戦わなければGuduranisのsoul fragmentとは戦えないというのに、勘の鈍っていたRandolphがこれでは話にならない。
「……そう言えば、お前が現役の時はこうして組んで依頼をこなしていたな」
「ああ、お前も勘が戻ってきたようだな、Meorilith」
『では、次のroomに行きますか? それとも、その前に一息入れます?』
二人についてきているDemon King Familiarがpotionを出しながら尋ねると、RandolphとMeorilithは息を吐いて意識を切り替えた。
「……まず、移動の前に周辺の安全を確認する」
「背後への確認も必要だ。このDungeonの敵は、扉や階段の陰で何時間でも待ち伏せし続ける奴らだからな」
『いや、Trapのつもりはないのですが』
「分かっているが、休んでいる暇はない」
早くこのDungeonから卒業して、Demon King Familiarとの特訓に向かわなければならないのだからと、RandolphとMeorilithは周辺の安全確認を入念に行うのだった。
「なかなか……いえ、かなり良かったですよ、Bacias -san!」
『Goddess of Rain Clouds』Baciasが歌ってdanceたい……Idolになりたいと希望したのは、何も歌やdanceに興じたいからではない。彼女の目的は、愛するArthur、Vandalieu、Miriam、そして彼らの仲間の力になる事だ。
それと歌とdanceに何か関係があるのかと、疑問に思うかもしれない。しかし、関係は大ありだ。
BaciasがMariにblessingsを与える条件でBodyを作ってもらってまで自身のmain bodyに極めて近いSpirit CloneをAdventさせたのは、自身の布教を行うためだ。
「ほ、本当ですか? 私、まだ新しいdanceに慣れていませんでしたし……」
「大丈夫ですよ、Bacias -sanには強いCharacter性がありますから! もちろんdanceの完成度が高いに越したことはありませんけど」
Status systemの対象ではないGodsには、いくらmonstersを倒してもExperience Pointは入らない。彼らが強くなるのに必要なのは、believerだ。
believerが増えればそれだけ信仰の力を得られ、blessingsを与えられる人数や、believerにAdventさせるFamiliar SpiritやSpirit Cloneを増やすことができる。
しかし、『Goddess of Rain Clouds』BaciasはGodsの中ではマイナーな存在で、主に信仰されているAlcrem Duchyでもbelieverは少ない。……Baciasを主に祭る大きなtempleは無く、Nineroadや他の神を祭るtempleに合祀されているか、小さな祠が点在するぐらいだった。
しかし、彼女's Divine Protectionを得たArthur達の活躍によって『Goddess of Rain Clouds』Baciasの名は世間に広まりつつある。また彼女のVida's Factionへの転向を受け入れたVandalieuによって、Vidal Magic Empireでも彼女への信仰が広まりつつあった。
だが、以前と比べれば格段に増えたとはいえ、まだまだマイナーである事に変わりはない。
「わ、私、頑張ります! は、恥ずかしくて死にそうですけど!」
そこでBaciasは自ら動く事にしたのだ。そのための手段として、歌って踊るIdolになる事を決断したのである。
ArthurやVandalieuが戦っているのだから、自分もじっとはしていられない。力になりたいと。
Goddessが……実際にはmain bodyに限りなく近いSpirit Cloneだが……直接布教する事に、Zuruwarnは笑い転げながら賛成し、他のVida's FactionのGodsも良い思い切りだと応援した。
Godsが地上にいた太古の時代はGodsが直接人々に教えを説いたのだ。それが今できないのは、地上にAdventするのに力を大量に消費するようになってしまったからだ。それが解決できるのなら、止める理由はない。
もちろん、それはYorishiroを作るMariと布教の場となる舞台を運営するKanakoが受け入れればの話だ。
だが、Baciasの場合はKanakoが彼女にCharacter性を見出した事、そして彼女を受け入れる事で後々Goddess系Idolをプロデュースするきっかけになると考えたため、諸手を挙げて歓迎された。
「……いいんでしょうか?」
MiriamはBaciasを応援していいのか、いまいち踏ん切りがつかなかった。Arthurと自分にblessingsを与えた『Goddess of Rain Clouds』が、フリフリのミニskirtや丈は長いが深いslitが入ったロングskirtで、danceを踊るのは如何なものかと、つい思ってしまう。
しかし、『Vida’s Incarnation』であるDarciaだって同じようなcostumeで歌って踊っている。それも、最初期のmemberとして。
とはいえ、彼女は『Vida’s Incarnation』であってVida本人ではない。
だが、それならBaciasだって実際にはmain bodyに限りなく近い、Memoryと人格を共有しているSpirit Cloneであって、神本人ではない。
「……大丈夫なんじゃないか? 上手く、誤魔化せてるようだし」
そして、Nataniaが言うようにBaciasの正体は公には伏せられている。
Baciasは『Goddess of Rain Clouds』Baciasの子孫で、代々nameを継承している一族だとされている。
そのため、Idol Statueに似ていても「子孫なら似てもおかしくないだろう」と人々には解釈されている。
「あまり喜べないけど、それで揉める人もいないんだし」
そして、Baciasを奉じるClergymanはほぼいないため、Baciasの子孫として同じnameを名乗るfemaleがIdol debutしても問題視して問い合わせてくる人物も存在しない。
「まあ、オレとしては自分も戦うって言ってきたのに、歌とdanceのlesson しかしてないけど大丈夫なのかなって思わなくもないけど」
「あ、それはですね、Natania -san、Bacias -samaには戦闘関連の力や権能がほぼないから、戦闘に向かないだけなんです」
Miriamが言ったように、BaciasはWeather Godであり凶兆を予言するGoddessだが、戦闘に関する逸話は全くない。
Humanだった頃のBaciasはその知識と経験、そして独自のIntuitionで天気を予報した事で人々の尊敬を集め、死後にWind-AttributeのGoddessとなった。そのため、Humanだった頃には戦闘をほぼ経験しなかったのだ。武術の嗜みはなく、magicは多少齧っていたが戦闘に役立つmagicは殆ど覚えていなかった。
そして神になった後も、既に新しい世代のWind-AttributeのGodsには『God of Thunderclouds』Fitunと言うWar Godが存在したため、戦闘関連での信仰は彼女に集まらなかった。
Goddessだから力を振り絞ってAdventすれば、広い範囲に暴風雨を巻き起こし災害を引き起こす事も可能だが……それと引き換えに消滅の危機に瀕してしまう。
そして今から鍛えようとしても、さすがに時間が足りないだろう。
「それもあって、このままではHeroic spiritもいないからこれ以上Arthur -sanの力になるのは難しいので、せめて今からでも信仰を集めようって思ったみたいです」
「なるほど。女Kami-sama達も色々考えてるんだね」
「あ、あとこの事を本人に言っちゃだめですよ。……僅かな時間で複雑怪奇な経過を経て真の友になって、Stigmataとかを刻まれちゃいますから」
「せ、Stigmata? あんまり聞かない言葉だけど、なにそれ?」
「はい、Vandalieu -sanが言うには神の祝福の形の一つらしいです。具体的にどんな効果があるのかは分かりませんけど……maybe、blessingsの一種です」
『Lambda』worldでは、GodsがbelieverにOracleを託し、Familiar Spiritを派遣し、blessingsを与える事は広く知られている。しかし、Stigmataについてはあまり一般的ではない。時折、「神から与えられた祝福の証だ」とClergymanが自身のBodyにある変わった形の痣を見せるなどするが、具体的にどんな効果があるのか説明されてはいない。
しかし、虚ろな瞳で気を付けるよう忠告するMiriamの顔を見たNataniaは、髪を振り乱したBaciasが自分にStigmataを刻もうとする姿を幻視して寒気を覚えた。
「ああ、気を付けるよ」
「あ、二人とも、最後に皆で一度合わせますよ! 終わったら一休みして、次はDungeonで訓練ですからねー! ほら、Bug Brain-kunズもスタンバイしてください!」
『『『はーい』』』
Kanakoの号令に合わせて、訓練で不在のRandolph達の穴埋めとして導入された脳から直接蟲の足が生えている、Kanako命名Bug Brain-kun型Demon King Familiar達が楽器の準備に取り掛かる。
演奏者の穴埋めは普段KnochenのFissionが担当するのだが、KnochenはVandalieuのように遠く離れた場所でFissionを動かすことができないため、この体制になった。
なお、彼らはリハーサルの時しか出てこないので、まだ観客が良く訓練されていない場所でのStageだって問題ない。
こうしてMiriam達は、IdolとHeroの二足の草鞋を履く忙しい毎日を送るのだった。
そして、表舞台に立たない者も忙しくないわけではない。
「さあ、Van -sama! もっと、もっと吐き出してくださいな!」
Tareaは上機嫌で、Vandalieuから搾り取っていた。
「ふしゅるるるるる!」
『もぐもぐもぐもぐ』
『じゃあ、次は俺がもぐもぐされますね』
『『『『ふしゅるるるる!』』』』
『角とfangsとbone、抜き取り終わりましたよー』
『crystalあがりました』
Vandalieu main bodyが糸を吐き、Demon King FamiliarがManaが尽きかけた他のDemon King Familiarを喰らい、bloodや角やfangsやboneやcrystal等の【Demon King Fragment】の素材をProductionして採取する。
「ふしゅるるるるっ! Tarea、ちょっとノルマが厳しいです」
Vandalieuがそう軽く泣きを入れるほど、Tareaが課したノルマは厳しかった。しかし、彼女も好きでVandalieuから素材を搾り取っている訳ではない。
「仕方ありませんわ、Van -sama。だって、決戦前に装備を充実させなければならないのですから」
Arms ArtisanであるTareaの仕事は、仲間たちの武具を作る事だ。そのために、彼女はKanakoのlessonから離れてProduction活動に専念している。
「それに、決戦が……つまりHeinzとBellwoodを倒すchanceがいつ来るか分からないのでしょう? だったら、急げるだけ急いでおかないと」
そう言いながらVandalieuがtongueの先端から出す糸を糸車で巻き取るTareaが主張するように、時間があるうちに急ぐべきなのだろう。
そう、決戦の時は迫っていた。