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Chapter 359: True Demon King Vandalieu

 絶対的predatorを前にした時……いや、今まさにpredatorchinに捕まりfangsthrust立てられた被predatorが覚えるdespair感。

『何故だっ!? 何故我がBodyfragmentが、貴-samaの声で、貴-samaの名を名乗る!?』

 それに抵抗しながら、Guduranisは理不尽に怒り、Vandalieuに憎悪をぶつけていた。


「それはまあ、俺も困惑しない訳ではありませんが……」

 Vandalieuも、【Demon King Fragment】がmain bodyであるはずのGuduranisではなく自分に帰順する……事は予想していた。だが、真の意味で【fragment】がVandalieu自身になるとは考えていなかった。


「残り少ないManaで起死回生の一手を狙うとしたら、俺に向かって特攻して【fragment】を奪い返そうとするだろうと予想していましたから、結果的には当たりましたけど」

『戯けるな! 我がBodyが、何故貴-samaのものになる!? 何故我が、このDemon King Guduranisが、奪われる!?』

 叫びながら、GuduranisVandalieuに反撃を繰り出し、脱出しようと試みていた。


 しかし、力強く動いていた【腕】も、Flightや空気砲の射撃を可能とした【鼻】も、magicを助けた【脳】も、【Sebaceous glands】や【paw】もGuduranisの思い通りに動かなかった。

「何故も何もないでしょう」

 逆に、VandalieuGuduranisBodyをこうしている今もAbsorptionしつつあった。メリメリと肉やboneが軋む鈍い音をさせながら、heartを貫いた腕から飲み込んでいく。


「弱肉強食。お前が掲げた法則通り、強者が弱者の肉を喰らっているだけです。疑問や理不尽さを感じる余地は、全くないでしょう?」

 かつてGuduranisは、生きるためにこの『Lambdaworldに侵略を開始した。大義名分も、このworldの住人に対する慈悲も理解も共存への試みもなく戦いを仕掛け、汚染し、monstersを創り出して殺戮を行った。


 だから、Guduranisがより強いVandalieuに蹂躙され、奪われても何の不思議もない。

Shut Up! Humanでいる事に拘る女々しいmonsterが!』

 しかしGuduranisは因果応報だと思い知って潔く観念するような存在ではなかった。Bodyの制御を取り戻す事を諦め、そのために使っていたManaをすべて使った死のArtificial SpiritGuduranis Shadowを創り出してVandalieuを攻撃させた。


『貴-samaらも、行け!』

『はい、Rokudou -san!』

 さらに、Moriya達のGhostにもVandalieuへの攻撃を命令する。Moriyaは自力でArtificial Spiritを創り、他のJohnnyIguchiCatherineSugiuraは各々Abilityを使用し、magicを唱える。

 それらの攻撃は『Origin』での経験がskillに反映されているといってもRank2のGhostでしかないため、GuduranisManaを供給していた時よりもAttack Powerは格段に落ちる。


 だが、Guduranis Shadowを創り出した事でManaが底をついたGuduranisにとって、他にできる悪足掻きはなかった。


『行けぇぇ!』

『ギオオオオオオ!』

 特にそれまでGuduranisが活かせなかったMurakagaは、Guduranis Shadowに憑いて【Sleipnir】をActivateGuduranis Shadowの性能をさらに引き出してみせた。


 さらにGuduranisAbsorptionしているVandalieuは動きが取れず、抵抗する事もできずGuduranis Shadowの攻撃を受ける……かに見えた。

「【腕】、【paw】」

 素早くVandalieuの背中から生えた第三の腕にあるpawが、Guduranis Shadowの拳を弾いた。


『なんだと!?』

 それは紛れもなく、【Demon King's Arm】と【Demon Kingpaw】だった。だが、それだけではない。Vandalieuは背からさらにtentacleを……象の【鼻】を生やし、その先端をGuduranis Shadowに向けて膨らませた。


「【Blazing Prison Dragon Cannon】」

『グギャアアアア!?』

『六、Rokudouぉ――』


 赤黒い炎の竜巻が【鼻】から噴射された。Guduranis Shadowは避ける事もできず、飲み込まれた。ただのGhostに過ぎないMurakagaは耐えきれず消滅し、魂を喰われた。残ったGuduranis Shadowは、そのままArtificial Spiritを倒し終わった直後のHeinz達の方に吹き飛ばされていった。


 そしてMoriyaが創り出したArtificial Spiritも圧倒的な火力で薙ぎ払い、よりAttack Powerの上がった【Hollow Bullet】を受けたMoriya達も次々に消滅していった。Johnnyは【Balor】でenergyAbsorptionし耐えようとしたが、Vandalieumagicに込められたManaは圧倒的で、彼がAbsorptionできる限界を超えていたため無力だった。


 Abilityと前世から引き継いだ経験に裏打ちされたskillがあっても、Rank2のGhostではどうしようもなかったのだ。


『す、既に我がBodyfragmentを、思うままに……おいっ! この状況を見ているのだろう!?』

 Moriya達を喪った事よりも、既に自身のBodyが奪われている事に驚愕したGuduranisだったが、突然天に向かって叫び始めた。


Rodcorteよ! 貴-samaが持っている我の他のsoul fragmentを解放し、我に合流させよ! 今、我に手を貸せばVandalieuを倒してやるぞ! 我がこのまま食われれば、Vandalieuを倒す機会は永遠に潰えるのだぞ!』

 Guduranisが呼びかけたのは天ではなく、今もDivine Realmから見ているはずのRodcorteだった。彼が持っている他のGuduranissoul fragmentがあれば、再びManaを取り戻してVandalieuとの戦いを仕切り直す事ができる。

 それどころか、魂が完全に近くなれば今度こそBodyfragmentを奪い返す事ができるかもしれない。


 だが、Rodcorteからの反応はなかった。

『な、何故だ!? 貴-samaVandalieuさえ滅ぼせれば、このworldのことはどうでもいいのではないのか!?』

 そのGuduranisの叫びも、Rodcorteは聞いていた。しかし、彼はGuduranisRokudouを乗っ取ってrevived時からpanicに陥り、冷静な判断力を失っていた。それでもrevived GuduranisVandalieuを倒してくれるという可能性に望みを託していたが、既に敗退目前。


 そしてpanicの度合いが深くなる中、Guduranisの【soul fragment】をさらに解放するという選択肢を提示されてもすぐに動く事はできなかった。

 いや、accurateには動こうとしたがSelf保身が頭に浮かび、動く事ができなかったのだ。


 Rodcorteが管理する他のDemon Kingsoul fragmentを解放し、Guduranisの元に届けるには何者かにsoul fragmentを埋め込んでGuduranisの近くにreincarnationさせるしかない。その対象はRokudouの配下の中でただ一人彼のDivine Realmに留まっているDa Longしかいないのだが、彼はRokudouと違いただのHumanである。Guduranissoul fragmentに耐えきれず、埋め込んだ次の瞬間には乗っ取られてしまうだろう。


 そしてrevived不完全なGuduranisが、窮地に陥っている自分自身を素直に助けに行くだろうか? 自分自身を見捨て、RodcorteDivine Realmから他のworldに脱出する事を試みるのではないか? その際、Rodcorteから力を奪おうとするのではないか。


 そうした危険性を考えると、Vandalieuを殺すためとはいえ決断する事はできなかった。そもそも、Rodcorteにとって最も優先するべきは自分自身。もしかしたら魂を砕けないようにCurseを施す間もなくrevived Guduranisに、力を奪われるかも……最悪の場合そのまま滅ぼされるかもしれない。そうなったら、Vandalieuが死のうがworldがどうなろうがRodcorteにとって意味はないのだ。


「お前が神頼み、それもRodcorteにとは、Manaだけではなく、万策が尽きたようですね」

『くっ、臆したか、ロドコル……ガガッ!?』

 形容しがたい激痛を覚えた。そして、その正体に気がついたとき真のdespairhorrorに気がついた。


『貴-samaっ、我が魂を喰らおうとしているのか!? この、我の!?』

「ええ、sealedするよりも喰らって消滅させた方が安全ですから。Rokudouの魂も放置できませんし、Edgarは仇だし」

 Humanではない、Bodyを千々に割かれ魂をバラバラにされても死なないGuduranisにとって、魂の消滅は終わり……revival不能の死を意味する。


 十万年前は、Vandalieuが現れるまではDemon Kingを名乗りReignする過程で克服し、超越したと思っていたInstinct的なhorror


『よくもっ、よくもよくもよくも我を! だからこそ貴-samaが憎かった! 腑抜けになったBellwoodよりも! その腑抜けに拘るAldaよりも! そのAldaに選ばれたChampionモドキよりも! 貴-samaが憎い!』

 Vandalieuはできるだけ早くGuduranis達の魂を喰らい尽くそうとするが、さすがDemon Kingの魂と言うべきか、歯ごたえがあるうえに激しく暴れるので、咀嚼するのに時間がかかる。


 Heinz達はVandalieuが押し付けたGuduranis Shadowとの戦いを余儀なくされているが、こっちに来るのは時間の問題だろう。

 彼らにとってもGuduranisの消滅は歓迎するところだろうが、仲間であるEdgarの魂が砕かれるのは見逃せないのだろう。


 ……Edgarを見捨てて逃げられるよりは良いので、Vandalieuにとっては好都合だが。

「偉大なるVandalieuよ、私のmagicspaceを閉ざし、『Five-colored blades』共をGuduranis Shadowごと閉じ込めました。多少は時間を稼げるでしょう」

「ありがとう、Gufadgarn。こいつがなかなかしぶといので、助かります」


『貴-samaらぁぁぁ!』

 Guduranisはさらに憎悪の炎を燃やしてVandalieuを罵倒する。そうする事でしか、目前に迫った消滅へのhorrordespairに耐える事ができないのだろう。


『呪ってやるっ! 呪ってやるぞ、Vandalieu! たとえ我が魂を貴-samaが喰らったとしても、我は滅びぬ! 貴-samabloodとなり、肉となり、いつの日か貴-samaの魂とBodyを奪ってrevivalしてやるぞ!』

 Guduranisの凄まじい呪詛に、Staff of the Five Sinsに宿るFidirgは震え上がった。常人なら、そんな事はあり得ないと考えつつも「もしかしたら」と不安を覚えずにはいられなかっただろう。


「では、試してみるといいでしょう」

 しかしVandalieuは躊躇わずGuduranisの魂を咀嚼した。

「十年でも、百年でも、好きなだけ。俺はその間にお前の残りのsoul fragmentを喰らい、BodyfragmentAbsorptionし続ける。そして、千年後にお前の名はMythの中にしか残らなくなる」


Vanダ――』

「ご馳走-sama

 何かが潰れる耳障りな音が響き、Guduranisの声は不自然に途切れた。そのまま黒い巨体はVandalieuの中に吸い取られるように消えていった。


「怨嗟や呪詛は、日ごろから聞きなれています。お前は、霊の声に耳を貸したことがないかもしれませんが」

 日ごろから霊に囲まれているVandalieuにとって、怨嗟や呪詛の言葉は聞き飽きていた。自分に向けられることは【Death-Attribute Charm】、そして【Guidance】によってほぼなかったが……それもこのworldreincarnationしてから積んだ経験で慣れている。


 Guduranisのそれにも、動揺する事はなかった。ただ、油断せず確認は行った。

(俺よ、Guduranisの魂を喰らった事で俺に何か変化は起きていますか?)

Manaが増えていたり、増えたskillintegrationされたり、それぐらいです。俺が危惧するような事は起きていません)

(俺からも観測できません。俺に変化は起きていないと思います)

(まあ、念のために定期的に経過観察は行いましょう)


 自分の中の複数の思考に確認を取り、調査して、さらにはanother worldにいる自分の一部にも調べてもらう。だが、Guduranisの呪詛を裏付けるような事は起きていなかった。

 起きているのは、level upによらないManaの増加やskillの取得やintegrationだ。Guduranisの【Instinct】と【Memory】と【粉】、そしてEdgarRokudou、さらに他のReincarnatorの魂を喰らった事で、急激な変化が起きている。




Manaが二百億増加しました!》

《【Demon King's Nose】、【Demon KingSebaceous glands】、【Demon Kingpaw】、【Demon KingRight Arm】、【Demon KingLeft Arm】、【Demon King's Brain】が、【Demon King's Body】に合流しました!》

《【Demon KingInstinct】、【Demon KingMemory】を獲得しました!》

《【Demon King's Body】が、【True Demon King】にAwakeningしました!》

《【Demon KingInstinct】、【Demon KingMemory】が【True Demon King】にintegrationされました!》




(……なるほど、あの呪詛はこういう意味でしたか)

(人を真のDemon King呼ばわりとは、なんて邪悪な)

Gods of Statusは、もしかして俺が嫌いなのでしょうか?)

 それまでは、【Demon King's Body】を持っているHumanであると認識してきたVandalieuにとって、この【True Demon King】呼ばわりはshockだった。




《【Unlimited Development】、【Increased Learning Speed】、【Artificial Spirit Creation】、【Copy】、【Attack Power 2x Augment Multiplier】、【energy Absorption】、【Sleipnir】、【Inevitable Target】を獲得しました!》

《【Unlimited Development】、【Increased Learning Speed】、【Artificial Spirit Creation】、【Copy】、【Attack Power 2x Augment Multiplier】、【energy Absorption】、【Sleipnir】、【Inevitable Target】が【True Demon King】にintegrationされました》




 しかも、獲得したskillintegrationされてしまった。もちろん、一度取得したskillを喪う方法はblessingsのように神から与えられるskill以外ないし、取得したskill名をいちいち発表しなくてはならないわけではないので、公にしなければいいのだが。


Vandalieuっ! Guduranisを食べたみたいだけど大丈夫!? 具合が悪くなったりしていない!?』

Bocchanっ! ただいま参りました!』

 そこにeating preyし終えたと見て取ったDarciaと、rescue活動を終えたSam達がやってきた。


「大丈夫です、kaa-san。【Demon King's Body】が【True Demon King】というskillに変化しましたが、俺は俺のままです」

 青空を美しく、風を清々しく感じる。地上の瓦礫のを見ると虚しさや痛々しさを、その中でも無事なSilkie Zakkart MansionHero Preparatory SchoolAdventurer’s GuildShelterを創った建物を見ると、安堵を覚える。

 familyや仲間に愛着を覚え、殺し合いで荒れた心が癒される。


 故に、自分のHuman性と正気はfragmentも損なわれていない事をVandalieuは確信した。


 正気に関しては異論がある者もいるだろうが、この場にそれを指摘する者はいない。それよりも大事な事があったからである。

Vandalieu……あなたはこのworldでもっとも偉大な事を成し遂げました』

 Darciaは自身の体に降りている『Goddess of Life and LoveVidaの言葉を紡ぎ、自慢の息子を称賛した。


『まだGuduranissoul fragmentは残っているけれど、これでかのDemon Kingの完全revivalは未来永劫潰えました。あなたは、誰がなんと言おうとこのworldSaviorです!

 あなたに、Godsを代表して感謝を!』




《【Savior】、【Demon King Slayer】のsecondary nameを獲得しました!》




 この瞬間、『LambdaworldGuduranisの完全revivalというhorrorから解放された。【Instinct】と【Memory】、そして【粉】が消滅しただけではない。VandalieuAbsorptionしたBodyの【fragment】は、Guduranisが接触して帰還を呼び掛けても戻らない事がはっきりしたのだ。


 もはやGuduranisは自身のBodyを、Vandalieuを殺したとしても取り返す事ができないのだ。彼はもう魂だけでなく、Bodyも大きく欠けたconditionでしかrevivalする事ができない。

 GuduranisがどれほどのFortuneに恵まれ、どれほどの陰謀を巡らせ、それが完全に成功したとしても。


 Vidaが言った通り、まだVandalieuAbsorptionしていないBodyの【fragment】や、RodcorteAldaが管理している【soul fragment】は残っている。それらのrunawayは、今後も起きるだろう。


 特に、今回は『Lambdaworldの外に存在するはずのRodcorteDivine Realmで管理されていた【soul fragment】がsealedから解き放たれたのだ。今後、同じことは二度と起きないと信じる事はできない。

 だが、同じことが起こってもVandalieuがいれば対処できる。


 このsecondary nameはその賞賛と信頼、そして役目を頼まれたという事だろうとVandalieuは解釈した。

「光栄です」

 『Demon King Slayer』の『Savior』としての役目を受ける事は、Vandalieuにとって何のマイナスにもならない。今までと同じ事をするだけだ。


 【Demon King Fragment】のAbsorptionVandalieuにとって何のriskにもならないし、今回のようにGuduranisが不完全でもrevivedら、大国が滅亡……そして放置すればそれ以上の危機にworldが瀕する事になる。そのため、このworldの何処でrevivedとしても放っておくことはできない。


 RokudouEdgarは消滅したが、Guduranisが何らかの方法でこのworld人々monstersの魂をAbsorptionして、StatusPseudo-的に得てしまう可能性もあるのだし。

 それに、『Savior』と『Demon King Slayer』のsecondary nameは、Vidal Magic EmpireEmperorとして活動する助けになるだろう。


『ギオオオオオオ!』

 そんな事を考えていたVandalieuが我に返ったのは、Artificial Spirit達の咆哮を聞いたからだ。

Guduranisが消滅しても、消えないとはちょっと面倒ですね」

「おそらく、StatusRankを得た事でmagicCreation物ではなくGuduranisに従うmonstersとなっているのでしょう」


 YuumaBorkusも、残りのArtificial Spiritと戦っている。それぞれ対処法も既に分かっているので、すぐ退治してくるだろう。

 問題なのは、『Five-colored blades』だ。


『ギアアアアアアアアアアア!』

 耳障りな断末魔のscreechと共に、Gufadgarnspaceを操って張った『Barrier』が破られた。その向こうには、消えていくGuduranis Shadowと、ずいぶん消耗したconditionHeinz達がいた。


『【Heroic God Advent】は解けたみたいね』

「それは良かった」

 【Demon KingMemory】を喰らったVandalieuは、既にGuduranisのごく最近のMemoryを見る事ができるようになっていた。それによれば、【Heroic God Advent】を使ったHeinzの攻撃に、僅かだがGuduranisの【Danger Sense: Death】が反応していた。


 Heinzの攻撃でDamageを受けた結果、Vandalieuに殺される可能性がある、という意味で反応しただけかもしれないが、我が身で検証したいとは思わない。

Vandalieu -sama、【Heroic God Advent】を使っていない奴なら……」

 Samcarriageから出てきていたEleonoraや、Artificial Spiritを倒し終わったBorkus達がHeinz達に向けてWeapon Equipmentを構える。


Eleonora、皆、Heinzの相手は主に俺がします。BellwoodがいなくてもHoly Swordを持っていますし。Randolph senseiは見ていてもいいですよ?」

「はい、露払いはお任せください」

「俺はお前達の因縁とは関係ないが……まだ一応お前は生徒だからな。Instructorが眺めているだけというのも問題だろう」


 戦力的にHeinzの方がVandalieuよりも圧倒的に不利だが、HeinzはSClass adventurer。対して、Vandalieuの公的な立場は、Honorary NobleであるDarciaの息子で未成年の学生でしかない。そのため、HeinzがもしVandalieuに戦いを挑んだ場合、RandolphVandalieu側に立たないと臨時講師である立場上拙いのだ。


 もちろん、そうした事務的な理由だけでVandalieuの側に自分からとどまっているわけではない。


「……Edgarの魂は、もう消滅したのか?」

 その時、戦闘による消耗か【Heroic God Advent】が解けた反動か何かから立ち直ったらしいHeinzがそうVandalieuに向かって問いかけてきた。


『噛み砕いて、喰って、滅ぼしました。Rokudouと、Guduranisの魂と一緒に』

 そう答えながら、Vandalieuはすぐに【Soul Breaking Arts】をActivateさせた。Guduranis達の魂を喰らった事で、Manaは既に完全に回復している。Edgarを殺され、激高したHeinzが切りかかってきても、返り討ちにする自信はあった。


「そうか……Edgarの事は、残念だが-kunにとやかく言える資格があるとは思っていない。Edgarにとっても、Guduranisにいいように利用され続けるよりは、良いはずだ。

 それに責めるなら、Edgarの魂に何かしたRodcorteという神にだ」

 しかしHeinzVandalieuの予想に反して激怒した-sama子もなくそう続けた。


『そのRodcorteが何かする原因になったのは、俺がEdgarの魂を傷つけたからだと思いますが?』

 もしかして「お互いに改めて話し合おう」等と言い出すつもりではないだろうなと、内心嫌悪感に唸りながらVandalieuがそう言うが、Heinzは首を横に振った。

 どうやら、Edgarの死に関しては本当にVandalieuを恨むつもりはないらしい。


「このworldに大きな害を成す存在……Rokudou Hijiriの件が解決したら、私は-kunに命を差し出しても構わないと考えていた」

 しかも、さらにそう伝えてきた。EleonoraRandolphから、驚き困惑するsignが伝わってくる。


『その代わりに、自分以外の仲間やAlda Reconciliation Factionの人達、それにSelenに害を及ぼさないようにdemandするつもりでしたか?』

「その通りだ。DelizahEdgarの命も頼むつもりだったが……」

「そんなっ、Heinzが首を差し出すのに私が差し出さないなんて道理が通らないじゃない!」


 それは聞いていなかったのか、Delizahが驚いた-sama子で口を挟む。


『なるほど。その条件ならいいでしょう。ただ、今お前が手にしているHoly Swordも折ります。それと、未来永劫絶対に俺からは手を出さないと約束する事はできません。あなたの死後、この取引について恨みを募らせた者が何か企んで実行した場合や、取引成立後に別の理由で何かしでかす場合が考えられますから』


 Heinzの言い出した取引を、Vandalieuは前向きに検討していた。Bellwoodを降ろす事ができるHeinzを滅ぼせるなら、Heroic spiritしか降ろせないDelizahの命は後回しでいい。それに、Heinz以外の関係者はoriginallyどうするつもりもなかった。Selenに至っては、できるだけ関わりたくないぐらいだ。


 それに、Heinzが口にしたのは仲間やAlda Reconciliation Faction……つまり、Amid EmpireAlda believerや……『God of Law and LifeAlda main bodyは含まれていない。

 切り札であるHeinzを喪ったAldaを追い詰め力を奪ったり、Amid Empireと戦争を起こして滅亡させたりしても、取引を破った事にはならない。


 Heinzにとっては、believerである自分の主でGreat GodであるAldaの命を乞うという発想自体がないのだろう。Amid Empireに対しても、Empireの属国であるMirg Shield Nation出身であっても、建国当初からの敵国であるOrbaum Elective Kingdomへ活動の拠点を移してHonorary Noble位を得た今の彼にとって、Empireに対する帰属意識は全くないのだから、取引の条件に思いつかなかったとしても当然だろう。


 さらに考えれば、取引が成立してHeinzを殺した後、Delizah達がHeinzの復讐を企てて実行しようとしたら、その際に彼女を殺せばいい。

 こちらから煽るような真似をするつもりもないし、Delizahが何事も企まず大人しく人生を生きたとしても、彼女の寿命が尽きるまで百数十年待てばいい。


『なら、あなた達は何故今もVandalieuWeapon Equipmentを向けているの?』

 だが、Darciaが指摘したようにHeinzはこうしている今もVandalieuに向かってHoly Swordの切っ先を向けている。


「それは……事情が変わったからだ。今の-kunと、取引をすることはできない! -kunは、Guduranisの魂をただ滅ぼしたのではなく、喰らったのだろう!?」

 そう言って、改めてHoly Swordを構えるHeinzに、Vandalieuは困惑を覚えた。


『その通りですが……まさか、Guduranisの戯言を信じるつもりですか?』

「何故戯言と言い切れる?」

 Heinzの言葉に、Vandalieu達に衝撃が駆け抜けた。そんなBAKANAと、思わず言葉を失う。


Guduranisは狡猾で恐ろしいほどしぶとい。Edgarの治療を依頼したAldaも、彼に何かを仕掛けたRodcorteという神も、Guduranisrevivalさせるつもりはなかったはずだ! だというのにrevivedという事は、神の目をもってしてもDemon Kingの企みを見抜けなかったとしか思えない。

 そのDemon Kingの魂を、神ではない-kunが抑えられるとは思えない」


『お前に言われてもfragmentも嬉しくないですが……お前から見ればそう考えるのが妥当ですか』

 VandalieuGuduranisの魂を喰らっても、impactを受けていない事をまったく信用できないというHeinzの発言に対して、Vandalieuはやや困惑したがお互いの信頼の無さによるものだろうと解釈して、納得した。


 実際の原因は、Vandalieu達とHeinz達でGuduranisの認識が異なる事だ。

 Vandalieuにとって、Guduranisを喰らいAbsorptionするという行為は、食材を食べる事の延長線上にある……つまりただの食事だ。煮魚を食べたからといって、魚に脳を乗っ取られるなんてことはあり得ない。それがトンカツでも、牛sirloinsteakでも、焼き鳥でも、Guduranisdance食いだったとしても同じだ。


 しかしHeinz達はGuduranisの魂をAbsorptionするという事をRokudou HijiriEdgarと同じconditionになる事だと解釈している。それだけ彼らにとってGuduranisは恐ろしく、なにより未知の存在だ。どんな力を隠し持っているか、分からない。


 魂を噛み砕いて喰らったとVandalieuに言われても、魂を視認できないHeinzにはそれを信じる事ができない。バラバラにされても【fragment】として存在し続けたのだから、VandalieuAbsorptionされた今もegoを保っており、ただ潜伏しているだけではないのか。そう思えてならないのだ。


「今さっき、-kunAbsorptionされたのもGuduranisの思惑通りだったとは考えられないのか? -kunに自らAbsorptionされ、そのまま潜伏して機を待ってRokudou HijiriにしたようにBodyを乗っ取る。

 そうする事でGuduranis-kunが集めてAbsorptionしたfragmentを手に入れ、より完全なconditionで――」


 Heinzの主張は、一理ある。彼以外にもそう考えるAlda's FactionGodsbelieverは……つまり、Vandalieuに導かれない者達は、少なくないだろう。

 Vandalieuも、よく考えればそれを察しただろう。彼が察しなくても、彼の周りの人々……DarciaZadirisが察して、彼に教えて相互理解を深めるよう促したはずだ。彼も、それに従っただろう。


『それ以上を言う意味はないでしょう』

 相手が、『Five-colored blades』のHeinzでなければ。

 困惑を、無意味と片付けたVandalieuHeinz達を殺すために鎧をより攻撃的に変化させ、【-Transcend Limits-】等のskillActivateさせていく。


「……今の-kunの姿と、なによりも-kunが放つsignの禍々しさは、私にはGuduranisのようにしか見えない」

『立場や価値観の違いで、善悪の基準や感じ方は簡単に変わるものです。なにより……お前の感想はどうでもいい!』

 VandalieuはまずHeinzとの間合いを詰めようとした。SwordsmanであるHeinzを相手取るには、遠距離戦の方が有利なのは分かっているが、接近してHeinzを自ら押さえ、DarciaEleonora達がDelizah達とのCoordinationを妨害するのが効果的だと考えたからだ。


 HeinzFatigueに耐えながら残った気力を振り絞って再び【Heroic God Advent】をActivateさせた。装身具に宿っているBellwoodが、再び彼の体に宿る。一度時間切れまで使った直後のActivateなので、このconditionは一分ともたない。だが、Activateしなければ数十秒でVandalieuに負けると判断した。


 VandalieuHeinzが衝突する寸前、激しい風が前触れもなく周囲を覆った。塵を巻き込んでいた訳でも霧に包まれていた訳でもなく視界を遮った激しい風は、やはり突然やんだ。

 だが、そこに『Five-colored blades』のmemberの姿はなかった。


『これは……?』

『どうやら、Nineroadの仕業ね。Wind-Attributeの強いManaを感じたから、一瞬だけAdventして、そしてHeinz達四人を逃がしたのよ』

 DarciaVidaの言葉に、拳の振り下ろしどころを喪ったVandalieuはがっくりと肩を落とした。


「申し訳ありません、偉大なるVandalieuよ。spaceではなくWind-Attribute故、妨害が間に合いませんでした」

「いえ、いきなり横槍を入れられたのです。対応できなくて当然でしょう」

 【Soul Breaking Arts】を解いたVandalieuは、大きく息を吐いて顔を上げた。


「では、戦後処理をしましょうか。……Nineroad templeの再建を手伝うのは最後にするとして……まずはあの『門』をどうにかしないといけませんね」

 殺して消えるGuduranisとは違い、地上に残っているcountlessの『門』を見下ろして、Vandalieuはどうしようかと考え始めた。



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