Hero Preparatory Schoolでは、学校内において生徒の立場は平等であると校則に明記されている。

　しかし、学校があるのは世俗から離れた陸の孤島ではなくElective Kingdomの首都であり、生徒達の三分の一は学校の寮ではなく家から通っている。

　そうである以上どんなaptitudeの持ち主でもSlum街出身の生徒が、Nobleの生徒に対して対等に振る舞うのは難しい。

　もちろん校長であるMeorilithも、そうした事情は分かっている。だが、彼女はただInstructor達が生徒の出身に関わらず平等に評価するように、そして生徒間でのtroubleを抑止するために「生徒は平等である」という大義名分を立てているに過ぎない。

　Nobleである生徒の親から賄賂を受け取り、便宜を図って贔屓するInstructor。相手が平民出身だからと自分のpartyに入るよう強制しようとするNoble出身の生徒。

　そうした者達を校則という大義名分さえ立てておけば、Noble 家ごと処罰する事が元ＡClass adventurerであるMeorilithには可能だからだ。

　生徒やInstructorに対する処罰はともかく、生徒の親に対する処罰は校長の権限から逸脱しているので、彼女が直接処分を下す訳ではないが。

　ただ、規則には何事にもgreyzone……白とは言い切れないが黒ではない範囲が存在する。

「見ろ、Elizabeth -samaだぞ」

　金色の髪を左右で纏めたtwintailのShoujoが、六人の生徒を引き連れて歩いているのを見た生徒が隣を歩く生徒に囁く。

「今日もwaist purseをぞろぞろと引き連れてOhime-sama気取りかよ」

「idiot、Ohime-sama気取りじゃなくてOhime-samaなんだよ。前Sauron Dukeの末娘だぞ！」

「知ってるよ。でも、認知はされていてもIllegitimate Childだって噂じゃないか」

「それは噂だって言っただろ！　Duke 家の継承権を持っている以上、彼女の母親がどんな立場であれSauron DuchyのOhime-samaなのは確かだ」

　Hero Preparatory Schoolでは、Noble出身の生徒が財力やconnectionを活かして他の生徒を自分のpartyに入れる事を認めている。

　財力やconnectionは家の力であって生徒の実力ではない。しかし、家の力を全て排除するやり方も現実的ではないからだ。

　adventurerの実力には優れた仲間を見つけ、一緒にpartyを組むことも含まれる。貧しいが清廉潔白で誇り高い少年Shoujo達があっさり死んで、金持ちNobleのyoung childの取り巻きになって優れた装備を貰った世渡り上手が生き残る。そんな事が現実には幾つかあり、その場合adventurerとして賢いのは後者である。

　certainly、Nobleのyoung childの取り巻きをしていたら捨て駒にされてあっさり死んで、清廉潔白で誇り高い少年Shoujo達は強い結束で結ばれていたために全員生き残ったなんて事例も、無い訳じゃない。

　結局は経済力や人脈はただの判断基準の一つであり、それだけではなく当人の実力や人格を見て仲間としてやっていけるか判断するべきだという事だろう。

　Elizabeth Sauronとそのwaist purse達がそこまで考えているかは不明だが、数は多い。

「姫-sama本人を含めて七人か。学校のpartyでは最多じゃないか？　一人はSauron Duke 家の侍女だからともかく、数だけは大したもんだよな」

「idiot、姫-samaも侍女も含めて、成績は俺達以上だぞ。後の四人も平均並みには……あれ？　一人増えてないか？」

「ん？　……あ、本当だ。確かあれって、春期入学生の中でも話題になった奴だったよな」

「しかし、どうしたのかしら？　Dungeonでの実習は今日じゃないわよね？」

「違うわよ。意中のあの方を誘いに行くのよ、きっと！」

「あんたね、その言い方じゃ逢引に誘うみたいじゃない。Alexが誤解されたらどうするのよ」

　そう囁く女子生徒達を無視して通り過ぎたElizabeth一行は、目当ての男子生徒の姿を見つけると足を止めた。

「Alex、今日こそ良い返事を聞かせてもらうわよ」

「……あんた達もしつこいなぁ」

　取り巻きを引き連れ高飛車な態度をとるElizabethに、Alexは溜め息を吐いた。

　Alex。彼はOrbaumから少し離れた農村出身の少年である。顔立ちは整っているが中肉中背で、body part的に優れているようには見えない。

　しかし、Elizabethと同じ去年の秋期入学者の中ではtop classの成績の有望株である。

　道場やMageの私塾もない農村出身であるにもかかわらず、教官役も認める【Sword Technique】と【Archery】の使い手で、magicまで使いこなし、「既にＤClass adventurerの中でも上位、いやＣClass adventurerに匹敵する」「十年、いや百年に一人のGeniusだ」とInstructor達に評価されている。

　そのため、何らかのUnique skillか神's Divine Protectionを獲得していると噂されている。武術系skillかmagic系skill、もしくはその両方の獲得と成長の難易度を緩和する、legendのHeroが持っているとされたskillか、Great God 's Divine Protectionを得ているに違いないと。

　しかし、噂は一部しか合っていなかった。彼はたしかに、Unique skillを持ってはいるが、噂されているようなものではなかったからだ。

「悪いけど、何度来られてもあんた達の仲間になるつもりはない。それに、俺はもうpartyを組んでいる。他所を当たってくれ」

　呆れたような視線をElizabethに向けるAlexの眼。それは、対象のStatusを看破する【Magic Eye of Appraisal】のSuperior Skill、【Magic Eye of Great Appraisal】だ。

　skillの詳細……後どれほどの経験を積めばskillの獲得やlevel upが可能なのか見る事ができる【Magic Eye of Great Appraisal】をAlexは幼少期から使って、自分自身のskill levelを上げてきたのだ。

　水面に映る自分の顔を見てStatusの詳細を確認し、効果的な【Sword Technique】や【Archery】の練習方法を独学で工夫してきた。

　magicも、村長の家にあった本を元にしてManaの練り方を体得するまで時間はかかったが、今ではattribute magicまで習得している。

　そして野生動物のStatusを見て、弱っている個体を見つければ狩ってlevelを上げ、更に獲物として村に持ち帰り実績を積んで、村の大人達を納得させてこのHero Preparatory Schoolにやってきたのだ。

　adventurerの最上位、ＳClass adventurerを目指すために。

　だから、彼は仲間も【Magic Eye of Great Appraisal】を使って厳選していた。自分以上の剣やmagicの達人になりえるaptitudeやUnique skillを眠らせていた者を見抜き、彼らのaptitudeを目覚めさせ信頼を得てpartyを組んでいる。

　もちろん、仲間はaptitudeだけではなく信頼できる人格かどうかも考慮している。

　同じ村出身の幼馴染や、この学校で知り合った友人、それになけなしの生活費を削って購入したSlave。三人ともAlexに見い出される前は、誰も注目していなかった。

　しかし Alexが【Magic Eye of Great Appraisal】で眠っていたaptitudeを目覚めさせてからは、彼と同じく将来はadventurerとして確実に名を上げるだろうと評価している。

　Alexが購入したSlaveのShoujoはこの学校の生徒ではないが、Slaveは所有者の持ち物とされるので実習には参加できるので、その際に存在を生徒達に知られている。

　そんなAlexから見れば、Elizabeth達は仲間にする基準に遠く及んでいない。既に彼女のStatusはwaist purseの五人の分も含めて何度も確認しているが、将来性まで含めても選考外だった。

（別にaptitudeが無いって訳じゃないけど、この程度じゃなぁ……）

　Elizabeth本人は、この学校の生徒の中では五本の指に入る実力を持っている。剣もmagicもそれなりで、ＤClass adventurerやKnightとしてなら今からでも活躍できるだろう。

　しかし、【Magic Eye of Great Appraisal】で見てみると、今のlevelから次に上がるまでに必要な時間が極端に長い。既に成長の壁にぶつかっているようだ。

　曲げずに努力すればＣClassにはなれるだろうが、ＢClass以上になれるかは分からない。そしてＡClassになるのは、まず不可能だろうとAlexは見ていた。

　他の取り巻き達は、それ以下だ。侍女はElizabethよりも一段以上落ち、Dwarfの女生徒と男子生徒三人はこの学校の生徒の平均と同じかそれ未満だ。

　もちろん、Unique skillは何も持っていない。Alexが仲間になっても、目覚めさせられるaptitudeなんて何もない。

　だからこそ断ったのだが、自分がAlexに見切られていると気が付いていないElizabethは諦めるつもりがないようだ。

「そのことは気にする必要はないわ。あなたの仲間ごと私のpartyに入ればいいのよ」

「……合計で十人になるぞ。それに、Slaveがmemberにいるけど構わないのか？」

「あら、十人以上でもいいじゃない。party memberに人数制限は設けられていないはずよ。それに、adventurerは出自ではなく実力が全てのはずよ」

　そのElizabethの答えを聞いて、Alexは初めて彼女の評価にplus修正を加えた。

　彼女が言うようにparty memberに制限はない。guildは最低でも三人以上、できれば五人前後が望ましいとしているが、十人以上のmemberで活動するadventurerも珍しいがいない訳じゃない。

　それに、adventurerに出自は関係ない。だが、このHero Preparatory SchoolにはNoble出身の生徒が多いのでSlaveを蔑視する生徒が多い。Slaveは生徒ではないので、差別しても校則違反にはならないのだ。……具体的な危害を加えた場合は、Slaveの所有者である生徒のpropertyを傷つけた事になるので、ある程度の歯止めはかかっているが。

（だけど、全員が同意見という訳じゃなさそうだな）

　Elizabethの後ろ、女子はともかく三人の男子生徒はどこか不満そうな顔つきをしている。まあ、彼らはElizabethがAlexにご執心であること自体気に食わないので、Slaveの件はオマケのようなものだが。

「悪いけれど、新memberのCandidateにはもう見当をつけてるんだ」

　そう言ってAlexはElizabeth達の横を通り抜ける……のは無理そうなので、踵を返して他の通路を進もうとする。

　Alexが新memberに誘いたいCandidateとは、この前行われた春期入学試験で目覚ましい成績を見せた大型新人、Pauvina Zakkartだ。まだ直接見たことはなく、Statusも確認していないが、聞いた噂をどれほど過小評価しても、現時点での実力は自身に匹敵するとAlexは見ていた。

　『Fallen Champion』Zakkartの名を姓に名乗っている事、そしてAlcrem DuchyのDarcia Honorary Earlの養女である事から、templeやNoble絡みのtroubleに巻き込まれる危険もある。しかし、その危険を犯しても惜しくない人物かもしれない。

　それを確かめるためにも、まず彼女のStatusを確認したい。

　Elizabeth達が前に立ちはだからなければ、Alexは春期入学生の教室に向かおうと歩き出していただろう。

「あなたが必要なものを私は提供できるわっ！　それでも不服なの！？」

　だが、そうElizabethから声をかけられたため、Alexは立ち止った。

　たしかに、高い実力と優れた仲間を持つAlexにもまだ必要なものがある。それは経済力だ。どれほどAbility Valuesやskill levelを高めようと、adventurerの頂点に立つには優れた装備やmagic item、potionなどの消耗品が必要だ。

　もちろん自力で稼いで手に入れる事も可能だ。ＳClass adventurerを目指すなら、本来そうあるべきだろう。しかし、Alex達は未成年でしかも学生である。稼ぐ手段は限られていた。それにＣClass adventurerに匹敵すると言われていても、Alexは自身の実力をＤClass上位からＣClass下位程度だと考えていた。

　だから、Rank５以上の強敵と戦った経験の無い自分達が、大金をいきなり稼げるようになるとは思っていない。

　学校を卒業してから、経験を積みながら稼ぐというのが妥当だが、今の内に良い装備を揃えられれば卒業後一気にachievementを挙げる事ができるかもしれない。

「……あんた達では無理だよ」

　だが、Alexは再び足を動かして、振り返りもせずElizabeth達を拒絶した。なぜなら、彼はElizabethの身の上を既に知っていたからだ。

　Elizabethは前Sauron Dukeの末娘でも、母親はAmid Empireの侵攻が始まる数日前に愛妾として認められた人物だ。Knight 家の長女だからその娘はIllegitimate Childではないけれど、周りの評価は似たようなものだ。

　しかも現Sauron DukeであるRudelと無謀なSuccessor争いをして惨敗……後ろ盾のNobleにも切られかけていて、Adventurer's School校にいるのはadventurerとして名を上げて、自分の価値を高めなければならないからだ。

　おそらく、後ろ盾のNobleから援助を続ける条件として、学校の最優秀賞を取る事を求められたのだろう。その年卒業する生徒の中でも、Meorilith校長が認めるほど優秀な生徒に与えられる賞。

　だが、彼女達にはそれを自力で獲得できるほどの力は無い。それを彼女自身が分かっているから、Alexを勧誘する事に拘っているのだろう。

　それまで平凡な生徒だった仲間を、瞬く間に学校でもtop classの成績の優良株にした彼を仲間に引き込めば、自分達もそうなれるのではないかと期待して。

（そんな身の上の奴が俺に用意できるものなんて、たかが知れている。それどころか、下手に関わると面倒なことになるだけだ。……同情はするけれど）

　自分にElizabethの情報を売った人物が、Elizabethに力をつけられたら困るあるNobleの手のものだったのを思い出して、Alexは溜め息を吐いた。

　背中にかかるElizabethのwaist purse達の罵声が聞こえなくなった頃に、長身に細身の少年が彼に駆け寄って声をかけてきた。

「おい、Alex。あれで良かったのか？」

　少年のnameはRobin。Alexより一つ上の生徒で、彼の仲間の一人だ。

　元は盾職志望だったが【Shield Technique】のaptitudeがdespair的に無い事と、【Natural Genius: Two Spear Style】のUnique skillが眠っている事をAlexが見抜き、今では斧と盾ではなく二振りの槍を振るう特殊なやり使いとして頭角を現した少年だ。

「いいって。Elizabethの事はRobinも知ってるだろ？　それに、これから噂の新入生を見に行く」

「ああ、それは覚えてる。新入生が噂通りの実力とaptitudeだったら仲間に誘う、だろ？　だからいいのかって聞いているんだが……」

「Elizabeth達六人の誘いを断った事と、新入生のPauvina Zakkartと何か関係あるのか？」

　Alexが困惑した-sama子でRobinの顔を見ると、彼は呆れたように溜息を吐いた。

「Elizabeth達七人の中に、そのPauvina Zakkartの兄貴の、Dhampirがいたぞ」

「えっ！？　マジか！？」

「マジ。白髪でオッドアイの生徒は、この学校で一人だけだ」

「あいつら……いつの間に仲間を増やしたんだ！？」

　どうせいつもの事だろうと、Statusを確認するどころか取り巻き達に視線を向ける事もしなかったAlexは、存在感が薄くずっと黙っていたVandalieuに全く気が付いていなかった。

「その……どんな-sama子だった？　お前はVandalieu Zakkartに気が付いていたんだろ？」

　自分が袖にした集団に、まさかこれからscoutしようとしている女子生徒の義理とはいえ兄が混じっていたとは思わなかったAlexは、額を押さえながら尋ねた。

　あまり悪印象を持たれていないと良いのだが。そう祈るが、それに応える神はいなかったようだ。

「……ずっと無言で、睨むでもなくお前の事をじっと見てた。瞬きもせず、目を見開いたままじーっと。何故かは分からないが、ゾッとした」

　Robinの答えを聞いたAlexは、思わず頭を抱えた。

　時間はElizabethがAlexを勧誘する少し前に巻き戻る。

　Vandalieuは、校舎の空き教室の隅で昼食をとっていた。

「……所詮、俺に楽しいSchool lifeは無理だったという事か」

　Hero Preparatory Schoolに入学したVandalieuは、流れるようにBocchiに陥っていた。

　Pauvinaと別のclassになったVandalieuは、彼なりに努力して新しい友人、学校での実習でpartyを組む相手を探した。

　しかし、classmate達はVandalieuを明らかに避け、Instructorも特にfollowしようとしなかったため彼一人が孤立してしまったのだ。

　それはまず、CenterのNoble達が息のかかったNobleのyoung childをVandalieuの近くに送り込もうとしている事が関係していた。

　Vandalieuは入学試験でも成績がtop classではなかった生徒達の教室。平均前後から合格barelyの成績の生徒が集まる教室に所属している。その教室にもNoble出身の生徒はいるのだが……CenterのNoble達の息が直接かかっている生徒は、その教室にいなかったのだ。

　そうした者達は、Pauvinaがいるtop classの成績の生徒が集められた教室にいる。そのため、classmateのNoble出身の生徒は親から「Vandalieu Zakkartという生徒の周りには、ある方々の意思で動いている者が行く予定なのでお前は近づかない方が良い」と言われて距離をとる者ばかりだった。

　そして、Vandalieu自身が自分の実力を隠しすぎた事も悪かった。

　Vandalieuの入学試験の成績なら、一緒に組みたいという生徒が殺到する程ではなくても、十分partyを組むことができるはずだった。

　しかし、彼が学校初日に行ったSelf introductionで……

「得意なのは【No-Attribute Magic】と【Unarmed Fighting Technique】、【Throwing Technique】、それに【Staff Technique】です。それと、TamerでもあるのでTamed Monsterも連れています」

　と語った事、それが問題だった。Vandalieuとしては話せる範囲で自分の得意分野を正直に話しただけだが、生徒達の受け取り方は違った。

　【No-Attribute Magic】は、一般的にはattribute magicの練習用に習うmagicであり、下に見られている。実際、種類も少なく効果も単純で、大量のManaと高い制御力が無ければNo-Attribute Magicだけで上に行くのは難しい。

　その【No-Attribute Magic】を得意分野にあげるという事は、他のattribute magicはそれ以下の腕前という事だ。それではいくら制御力があっても、Mageとしては期待できない。

　そして【Unarmed Fighting Technique】と【Throwing Technique】は、数年前にHartner Duchyのcultivation villageで知り合い、仲間になったKasim達からも聞いていたが、adventurerには不人気なskillなのだ。

　body part AbilityでHumanを超えるmonstersと戦うのに、リーチも短い生身で戦っていては習熟する前に命がいくつあっても足りない。それに、飛び道具とは言っても弓より射程距離が短く、矢よりも高価で嵩張る事が多い投擲物を使う【Throwing Technique】も、新人adventurerの実力と経済力ではきつい。

　それはVandalieuも覚えていたので、今回は【Staff Technique】とTamerとしての腕前もappealした。

　【Staff Technique】のlevelは高くないが、学生としては十分以上に通じる技量に達している。それにTamerしたTamed Monsterを戦力に加えられるなら、他の生徒にappealする事ができるだろうと。

　しかし、実は【Staff Technique】はadventurerの間の評価は「Mageの護身術」でしかなかったのだ。

　Warriorなら普通は槍や棍棒、斧を使う。刃がついておらず、打撃を与えるのに有効な部分もない棒状のWeapon Equipmentをmain Weaponにmonstersと戦う前衛のWarriorはまずいない。

　そのためMageが敵に間合いを詰められた際、呪文を唱え終わるまでの時間稼ぎをするための護身術という扱いなのだ。

　そして、Vandalieuの場合、生徒達が彼のTamed Monsterとして知っているのはOrbaumではやや噂になっている『謎の植物型monsters』Eisen。そして『cursed mansion』でTamerしたというUndead。

　Tamerとしては素晴らしいachievementだろう。しかし、実習とはいえ実践に限りなく近い戦闘を経験する仲間としては、本当に信頼できるのか不安が残る。

　それに、Tamed MonsterはあくまでもmasterであるTamerに従っているだけで、Tamerの仲間に従う訳ではない。

　さらに、Dhampirとして優れたbody part Abilityを持つ事も追加してappealしたが、Vandalieuは試験で実力を上手く加減しすぎていた。

　そのため、他の生徒達はVandalieuを『No-Attribute Magicしか使えない、body part Abilityは高いが将来的には前衛としても頼りない、残念な生徒』と評価したのだった。

　しかも、Zakkartの姓や母親がHonorary Nobleとしても珍しいDark Elfである事から、Noble出身以外の生徒からはtroubleに巻き込まれることを警戒され、「とりあえず-sama子を見よう」と、遠巻きにされてしまったのである。

　そしてInstructorも、その状況を自分から改善しようとはしない。この学校が目的としているのは、思春期の少年Shoujoに学業を教える事ではない。卒業後、adventurerとして命がけの戦いを生き抜けるように育てあげる事が目標だ。

　程度を超えたイジメや生徒間の争いは止めるが、そうでなければInstructorたちから積極的に干渉することはない。

　そのため、Vandalieuは一人ぼっちで昼食をとるconditionになっていた。

『気にすることはありませんぞ、Vandalieu -sama！　我々がいるではありませんか！』

『もとより、下等なHuman共には御身の供は過ぎた役目かと』

　生前VampireだったLight AttributeのGhost、ChipurasやDarockに慰められたVandalieuは、気を取り直して食事を再開した。

「それもそうですね」

『そうですとも！　やはりVandalieu -samaの供はHumanではなく、御身のFollowersか我々Undeadが相応しいかと！』

「Darock、俺が同意したのはChipurasですからね。でも気持ちは受け取っておきます、ありがとう」

『ははっ！　ありがたき幸せ！』

　そんな会話をしながらも、Vandalieuは周りの霊や【Body World】にいる冥達に意識を向け、学校生活での寂しさは脇にどけようとした。

　このAdventurer's School校はOrbaumに滞在する名目と、後導かれる生徒や教職員がいたら、ついでに勧誘しようと思って入学したのだ。それだけ考えればいいだろう。

　実習でのpartyも、しばらくすれば同じ教室の生徒だけではなく、他の教室や他学年の生徒と組む事が許可されるようになる。それまで待てばいいだけだと。

　無意識にだが、同じ教室の生徒達と友人になるための努力を続けようとは考えなかった。

　なぜならVandalieu自身、そしてDarciaや仲間達も気が付いていなかったが、彼は自分から他人との距離を詰める方法を知らないからだ。

　『Earth』では友人を一人も作る事ができず、親しい人は誰もいなかった。そして『Origin』とこの『Lambda』ではVandalieuが何もしなくても霊が、death attributeに親しい存在が、導かれた者達が自分達から寄ってきて、仲間になってくれる。

　そのため、彼は自分から近づいてこない存在とどう親しくなればいいのか、単純な事しか分からないのだ。

　だからこそ、Elizabethは偶然彼を仲間に加える事ができた。

「おや？」

　突然教室の扉が開き、中に数人の生徒が入ってきた。

「お嬢-sama、今日も彼を勧誘しに行くのですか？」

「certainlyよ。成功するとは思っている訳じゃないけど、新入生も入ってきたし、この私がAlexを狙っていると改めて広めておかないと、また奴の仲間が増えて勧誘し辛くなるかもしれないもの」

　入ってきたのは、Elizabeth Sauronとそのwaist purseの取り巻き達だった。彼らは教室の隅にいたVandalieuに気が付く-sama子もなく、Alexを勧誘するためのtactics会議を始めた。

「しかし Elizabeth -samaの誘いを何度も断るとは、平民の分際でarroganceな奴だ」

「Elizabeth -sama、うちの家と懇意にしている商人がいるのですが、その者に命じて奴の親brothersを借金漬けにしてしまうのはどうでしょう？」

「なるほど。いくら奴が強情でも、familyを人質に取られたらnodしかない」

　取り巻きの内男子生徒達の発言を後ろで聞いているVandalieuは、tacticsの中身とその結果が危険なものになりつつあるのを見かねて、声をかけようとElizabeth達に近づいた。

　Alexという生徒の事は知らないが、だからといって無視するには悪辣すぎると思って。

「ダメに決まっているでしょう！　学校にばれれば退学になるのは私達だし、もしそれでAlexを仲間にできても、彼から恨みを買うだけだわ！

　普段から言っているでしょう、手段は選ぶものよ！」

　しかし、その前にElizabeth自身が男子達を叱責し、軌道を修正した。

「さすがお嬢-samaです！」

「Maheria -chanの言う通り、校則違反は止めた方が良いと思うけど、このままじゃいつまでも彼を仲間に引き入れるのは無理なんじゃない？」

　Maheriaというnameらしい侍女のShoujoはElizabethの言葉に感激し称賛するが、DwarfのShoujoは彼女のpolicyに物足りなさを感じているようだ。

　Elizabeth自身も、今まで何度も勧誘が失敗に終わっている事から、このまま続けても意味はないのではないかと思い始めていた。

「たしかに、Zohnaの言う事も尤もね。でも、Alexの仲間の二人にも断られているし、残る一人は彼のSlaveだから勧誘しようがないし……」

「じゃあ、色仕掛けなんてどうです？」

「それで落ちそうに見えるの、彼が？　あいつの私達を見る目は男子に向ける目と何も変わらないのよ。それに、手段は選ぶって言ったばかりよね？」

　半眼になったElizabethに睨まれ、「すみませーん」とおどけた態度で引き下がってVandalieuの斜め前に立つDwarfのShoujo、Zohna。

「でも、このあたりが潮時ね。皆、Alexの勧誘は今回で最後にするわ」

　Elizabethの発言に驚く取り巻き達と、発言とSelfの存在をappealする機会を失い立ち尽くしているVandalieu。

「しかし Elizabeth -sama、Alexの奴は使えます。奴を利用すれば、首席卒業も夢ではありません！」

　Hero Preparatory Schoolも通常のAdventurer's School校と同じく、必要な単位を取ればいつでも卒業する事ができる。しかし、優秀な成績を修めたと校長であるMeorilithが認めた場合は、彼女がOrbaum Elective Kingdom政府に推薦状を出し、その結果勲章が授与されることになっている。

　いつからか、それを手に入れた生徒は『最優秀賞の受賞者』や、『主席卒業』と他の生徒から評されるようになっていた。

　それはElizabethや取り巻き達だけではなく、多くの生徒達が目標とするものだった。……Vandalieuはあまり興味を持っていなかったが、利用するって言い方が悪いなと思っていた。

「たしかに、Alexが持っているはずの、他人のaptitudeを目覚めさせるUnique skillを使えば、私達の『最優秀賞』は確実になるわ」

　Vandalieuは続くElizabethの言葉に、なるほどそういう事かと納得して、教室の隅に戻ろうとした。

「でも、このroomに集まった私達なら、あいつの力を借りなくても『最優秀賞』は可能なはずよ！　そうでしょう！？」

　しかし、そのElizabethの言葉にVandalieuの動きが止まった。

　彼はElizabethの言葉に、自分達だけで可能だと思うならなぜAlexという生徒を何度も勧誘していたのかという矛盾点に疑問を覚えた訳ではない。

（『教室に集まった私達』……つまり、俺も入っている？）

　っと、思い違いをしたからである。ちなみに、Elizabethも取り巻き達も、空気よりも希薄な存在感を放つVandalieuの姿にまだ気が付いていない。

　だが、Vandalieuは自分が気づかれていない事に気が付いていない。

『Vandalieu -samaなら最優秀賞も可能とは……この娘、Humanにしては見る目があるようだ』

『ハハハハハ！　結束の力ぁ～っ、麗しい友情ぅ！　昔は見るたびに反吐がでたァ！』

『二人ともShut Up！　Vandalieu -samaっ、何をお考えかは分かりませんが、たぶん勘違いです！』

　Darockは腕を組んで頷き、Bellquertは突然歌いだし、Chipurasは嫌な予感を覚えて必死にVandalieuを止めにかかる。

「勧誘が失敗しても成功しても、一丸となって頑張りましょう！」

　そう言ってElizabethは手を伸ばす。彼女の手の上に、取り巻き達は「はい！」と声を揃えて自分達の手を重ねた。侍女のShoujo以外は、Elizabethの言葉をあまり信じていないようにも見えるが。

　DwarfのShoujoは若干の呆れ、男子三人はただただElizabethに対する媚が瞳に浮かんでいる。

「はい」

　そして最後に、死んだ魚のような瞳の少年の手が乗った。

「っ！？」

　それまでVandalieuの存在に気が付いていなかったElizabeth達が、揃って目を見開いて硬直した。彼女達六人は、Vandalieuに（誰だ、お前！？）と驚きの籠った視線を向ける。

　だが、Elizabethは驚きながらも、自分達が入る前からこの教室でVandalieuが一人で昼食を食べていたのだと、彼の後ろに置かれたままの弁当箱と水筒から推理する。

「た、たたっ、頼もしい仲間も増えたし、今からAlexの教室に向かうわよ！」

　そして、反射的にVandalieuの存在に最初から気が付いていたかのように見栄を張る。

　自信家のようにふるまっているElizabethだが、本当はcowardで小心者な一面が彼女にはあった。Alexの勧誘に失敗しても自分達なら大丈夫だと言い切ったのも、取り巻き達に「このままAlexの勧誘に失敗し続けたら、失望され見限られるのではないか」と考え、勧誘を止める口実を捻り出した結果だった。

　そのため、彼女はとっさに自分を大きく見せようと、失態を隠そうとする悪癖があった。たとえ、それが隠す意味のない失態だったとしても。

「は……はいっ」

　取り巻き達はVandalieuの存在に驚きながらも、Elizabethが知っているようなので異を唱えられず、動き出した彼女に置いて行かれないよう歩き出す。

　そしてElizabethの取り巻き……仲間になってBocchiを脱却したと思い込んで浮かれているVandalieuは、彼女達の後をついて行った。

　そして現在に至るのだが……Elizabethは内心で少しほっとしていた。

「なんて生意気な平民だ！　我々には無理だなんて……！」

「本来なら不敬罪で牢にぶち込んでやるところだぞ。これだから身の程知らずの田舎者は！」

「やはりあんな下賤な者の手など必要ありませんよ、Elizabeth -sama。あなたの言った通りです」

　取り巻きの男子達が口々にそう言うが、彼らの前でAlexから勧誘を断られて失敗するのはこれで最後だと思うと肩が少し軽くなったように感じた。

「彼の事はもういいわ。せいぜい、これから私達の誘いを断ったことを後悔させてやりましょう」

　開放感と男子達を宥めるためにそう口にするElizabethの後ろで、ZohnaはVandalieuに話しかけた。

「ねえ、あんた、何を考えてるの？　さっきからずっと黙っているけど」

「いえ、ただ……彼女と同じことを考えています」

　VandalieuはAlexのreputationや噂をまだ知らない。だが、彼の態度がひどく気に入らなかった。

　自分に視線すら向けず、無理だと言い切るAlexの態度。正直、こちらの男子生徒達の態度もかなり問題があるが、それを差し引いてもやはり不愉快だった。

　その感想に彼のtraumaを刺激する学校という環境や、Elizabethへ覚えた好感もimpactしている事をVandalieuは自覚している。

　だから別にAlex本人には何もしない。彼を直接害するのはcertainly、実習の妨害や、familyを人質に取ろうなんてしない。嫌がらせも、陰口を囁く事すらしない。

「だから、少しだけ頑張ろうと思います」

　ほんの少しだけ本気を出して、学校生活を過ごすだけだ。

（尤も、俺が少し本気を出そうと出すまいと、あのAlexという生徒とは入学した時期が違うので、彼やElizabeth -sanの最優秀賞争いに直接のimpactは与えられないでしょうけれど）

「少しだけなの？　変なや……今気が付いたけど、その目と髪の色……あんたってもしかしてVandalieu Zakkart？」

「はい、申し遅れました。Vandalieu Zakkartと申します」

「本当に本人！？　ちょっ、……Elizabeth -samaー！？」

　この日、DandolipとMeorilith、そしてCenterの大Noble達に激震が走った。

―――――――――――――――――――

Name: Alex

Race: Human

Age: １３

Title: なし

Job: Magic Archer

Level: ３７

Job History: Apprentice Hunter、Apprentice Mage、Warrior、Magic Swordsman

・Passive skills

Enhanced Muscular Strength：１Ｌｖ

Poison Resistance：１Ｌｖ

・Active skills

Trap：１Ｌｖ

Silent Steps：２Ｌｖ

Dismantling：１Ｌｖ

Archery：４Ｌｖ

Cooking：１Ｌｖ

Sword Technique：４Ｌｖ

Mana Control：２Ｌｖ

No-Attribute Magic：２Ｌｖ

Light-Attribute Magic：１Ｌｖ

Coordination：２Ｌｖ

Magic Fighting Technique：１Ｌｖ

・Unique skill

Magic Eye of Great Appraisal

●Skill explanation:：【Magic Eye of Great Appraisal】

　【Magic Eye of Appraisal】の上位Unique skill。【Magic Eye of Appraisal】は視認した存在のStatusを看破するが、【Magic Eye of Great Appraisal】は看破したStatusに表示されているJob levelやskill levelが、後どれくらいで上がるのか、より詳細に見る事ができる。

　更に、まだStatusに表示されていない、眠ったままのaptitude(Unique skill)まで見抜くことが可能。

　例えば、あるadventurer志望の少年を【Magic Eye of Appraisal】で見た場合は、少年が【Sword Technique】skillを１levelで持っている事等、少年のAbility Valuesや今現在所持しているskillが分かるだけだ。

　しかし、【Magic Eye of Great Appraisal】の場合は、少年の【Sword Technique】skillがどれくらいで１levelから２levelに成長するのか詳細に見る事ができる。

　毎日行っている鍛錬だけなら、一年。それに合わせて自分と同格の相手と模擬戦を行えばあと半年、更に週に一回程GoblinやHorn Rabbit等を相手に実践を経験すれば一か月かかる。このように分かるのだ。

　また、まだ少年が所持していないskill……各magic系skillや、他の武術系skillを後どれくらいで獲得するかも見る事ができる。

　Alexはこの効果によって自分はどんなskillに適性があるのか見極め、また効率の良い修行方法を独学で見つける事で自身のskillをlevel upさせてきた。

　また同じ方法で他人のまた目覚めていないUnique skillやaptitudeを見抜き、仲間としている。

　ただし、欠点としてこのskillは他のMagic Eye系skillと同じく、目を移植する事で他人に奪われる可能性がある。

　また、視覚を基準とするskillであるため、Statusを見続けるためには対象を視界に収め続けなければならない。

　そして、このskillの所有者の力量が対象に遠く及ばない場合は、対象のStatusの文字の一部、もしくは全ての文字が読めなくなってしまう。