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Side Chapter 47: 平和なAlcrem Duchy

 北に鉱資源豊富な『Iron NationMarmook、西にEmpirestomach袋たる『Grain NationYondo、南に交易の要である『Sea NationKallahad、そして東に防衛の要である『盾の国』Mirg Shield Nation

 四つの属国に支えられ、磐石の治世を敷いていたAmid Empire。これを打倒し、Continent統一を図るのは誰もが不可能だと考えていた。


 威勢のいい事を言って予算を確保しなければならないElective Kingdomの軍人や、軍の要職に就いているNobleだって、本音では無理だと思っていた。

 そう思っていないのは、何も知らない者か、真正のidiotぐらいだ。


 だが、状況が変わった。

 秘密部隊にして、その一人一人が一軍に匹敵する力の持ち主である『Fifteen Evil-Breaking Swords』は欠け、SClass adventurer partyStorm of Tyranny』は、その力をEmpireに向かって振るっている。


 そして若き……いや、幼いと評しても過言ではない少年がAlda Grand TemplePopeとなり、帝位には名-kunと称えられていたMashkzarではなく、それまで、一般にはnameも知られていない、凡庸な男がついている。


「状況……いえ、情勢は、そして時代は大きく変わろうとしているのです。Alcrem Duke閣下、なにとぞご決断を」

 時に熱弁を振るい、時に冷静にriskreturnを説明したSauron Duke 家に仕える外交官に返事を求められたTakkardAlcrem Dukeは、「ふーむ」と小さく呻いた。


 艶のあるフサフサな髪に、たるみの無い張りのある肌。最近十ageは若返ったとreputationの彼だが、RudelSauron Dukeが外交官を通じて発案したtacticsには、良い顔をする訳にはいかなかった。


Sauron Duke -donoからの提案は、よく分かった。その内容も、riskも、returnも、全てだ。しかし、我が領にも事情がある事は理解できるだろう」

 Takkardの目配せに、Alcrem Duchy側の外交官が、Sauron Duchy側の外交官に口頭で説明する。


 彼が語っているのは、今年Alcrem Duchyを襲った二つの大事件の内、Dukeにとって身近な方……Evil God (P) Forzajibar revival事件による、経済的損失と、復興事業の進捗状況だった。

 実際にrevivedのは『Evil God of RobberyForzajibarではなく、『Evil God of CannibalismZeezoreginだったが、それを知っているのはごく一部の者達だけだ。


 そして、被害も実際はCamouflage Humanの巣だった『Holy Wastelands』がDecayした事だけだったので、実際には『被害』には当たらない。

 そんな事を口実にしてでも、彼等はSauron Dukeからの提案を断りたかった。


Alcrem Duke閣下が置かれている状況は、こちらも承知しております。ですが、来たるべきAmid Empireとの戦争を前にして、あれを放置する訳にはいかない事はご理解していただきたい」

 それは、Amid Empireを協力して攻撃する同盟を組み、連合軍をorganizationしようという誘いではない。


「あの、本当の意味でDevil Nestsと化した旧Scylla Autonomous Territoryを放置するのは、危険すぎる! ですが、Sauron Duchyだけの力ではどうにもならない! 恥をendureんで、協力を願いたいのです!」

 そう、標的はAmid Empire軍でもMirg Shield Nationの砦でもなく、旧Scylla Autonomous Territoryなのである。


Rudel -donoが危惧している事は、儂も理解している」

 DukeであるRudelから見ると、旧Scylla Autonomous Territoryは謎のUndeadの群れに奪われた領地だ。

 Undead達は旧Autonomous Territoryから出てこないが、侵入を試みる者は皆殺しにされ、Undeadの仲間入り。今まで生きて帰って来た者はいない。


 使い魔を用いた偵察も、ことごとく失敗に終わった。どうやら、見ただけでMentalを苛むmonolithや地上絵が設置されているらしく、Mage達は例外無く正気を失った。

 しかも、回復して正気を取り戻したと思ったら、『神の元へ行く』と書置きを残して姿を消した者までいる始末だ。


 その上、旧Scylla Autonomous Territoryの近くに点在していた村が、次々に集団失踪を遂げており、Autonomous Territoryに入らなければ安全とは言えない状況になっている。

 このままでは、将来Amid Empireに攻め込む時、不意にUndeadが溢れ出して自軍に襲い掛かって来る危険性を常に抱えなくてはならない。


 それどころか、旧Scylla Autonomous TerritoryからDevil Nestsが広がり続け、いずれSauron Duchyの他のNobleの領地にまで及ぶかもしれない。

 その前に、他のDukeに大きな借りを作ってでも、どうにかしなければならない。


(それは儂も分かる。理解できる。儂がSauron Dukeだったとしても、同じ事を考えるだろう。だが……あそこは既にVidal Magic Empireの領地だから、手を出す訳にはいかんのだ!)

 しかしTakkardAlcremは旧Scylla Autonomous Territoryの真実を知っていた。


 あそこに出現する強力なUndeadの群れは、彼と秘密裏に同盟を結んでいるVidal Magic Empireの軍勢であり、その内側ではMagic Empireの飛び地として、運営されている事を。


 旧Autonomous Territoryの外側を守っているUndead達は、無差別に生者を襲い殺すmonsterではなく、統率された軍だ。Vandalieuの命令がなければ、Autonomous Territoryから出てSauron Duchyや軍を襲う事はない。

 それに、近くの村が集団失踪しているのは、単に村の住民が集団で旧Scylla Autonomous Territoryに移住しているだけだ。彼等はEmpire民として、Sauron Duchyの領民だった頃よりも快適に暮らしている。


(そもそも、武力でどうにかしようとするのが間違いだ。あれをどうにかできる武力が我が国にあるなら、Mirg Shield Nationの城塞なんて軽く突破している)

 Undead軍の数は、最大で万単位。そのRankは低くても5だと聞いている。中には、Rank10を超える者もいるという。


 敵に回す場合は、まだ一人減ったままの『Alcrem Five Knights』や、Five Knightsに匹敵する各Duchyの秘密部隊を全て投入しなければ、戦いにすらならないだろう。

 そして、それでも勝つ事は出来ない。戦いになるだけだ。


(そもそも、そうなったら儂はVandalieu -donoに包み隠さず全ての情報を伝えるのだが。

 もっとも、だからと言って、この話に乗る訳にはいかん。Vandalieu -donoにも受けないようにと頼まれているし)

 今年の春から、VandalieuCenterAdventurer's School校に通う事になっている。なので、面倒な事に関わっている時間は無いのだ。


 Amid Empire軍に対する壁であるSauron Duchyに、被害を与え過ぎないように軍を撃退するのはVandalieuにとって面倒な事でしかない。しかも、一応Sauron DuchyVida believerの多い領であり、軍人もVida believerが多いのだ。


 そして、Takkardとしても被害を自軍に及ぼしたくはない。

(……将兵を無駄死にさせる訳にはいかん)

 平民の中には、Nobleは徴兵した民やSoldierを使い捨てる事に、何も感じないと思っている者が一定数いる。


 しかし、まともな政治力を持つNobleなら、そんな事はない。たしかに、「死んで来い」と命令する事はある。生還が望めない死地へ、「行け」と命じて、将兵を送った経験は、Takkardにもある。

 だが、それは相応の理由あっての事だ。


 専業のKnightSoldierは育てるのに金がかかるし、領内の治安維持と安全保障に欠かせない。

 徴兵した兵も、平時はFarmerであり、職人であり、商人であり、Chefであり、Pharmacistであり……貴重な労働力である。


 そんな大切な将兵を、しなくていい戦争の為に失うのは、堪え難い。


「儂も理解している。しかしだ。我がAlcrem Duchyは、revived Evil God (P)を再びsealedするために、『Knight of the Crumbled MountainGordiと、『Holy Wastelands』を守っていた彼の一族を失ってしまった。

 今は、再びsealedしたEvil God (P)revivalしないようBorgadon templeの再建を急ぎ、他の邪悪な神を奉じる者達が動き出さぬよう睨みを利かせるのが重要だと考えている」


 実際には、消滅しているのでEvil God (P)Evil God (M)revivalする事は未来永劫あり得ない。邪悪な神を奉じる者達が動き出す-sama子も、無いようだ。……Vandalieuの拠点となっているAlcrem Duchyから、脱出した形跡なら幾つかあったが。

 そのため、本当ならAlcrem Dukeが急がなければならない事業や、軍を動かせない程の懸案事項は存在しない。


 ……Duke Farzon領では『Five-colored blades』のHeinz達がDungeonから出て来たとか、まだ出て来ていないとか騒がれているが、それこそ軍でどうこうできる問題ではない。

 TakkardAlcrem自身の政治力を活用し、情報を収集しなければならない問題だ。


「そのため、残念ながら協力する事は難しい。無論、資金的、物資的な協力は惜しまないつもりだが」

 領が隣り合っているために、完全に拒絶するのも難しい。ここは必要経費と諦めて、資金と物資の援助でTakkardは誤魔化すつもりだった。


 Sauron Duke 家からの要請に対して、Alcrem Duke 家は軍ではなく金と物で誤魔化す事は歴史上何度もあった事だ。向こうも、それで引き下がるだろう。


「お待ち下さい、ならば人材をintroductionするという形で援助して頂きたい」

 だが、外交官は引き下がらなかった。

「……その人材とは? 我がDuchyの将兵ではないようだが」


「……まず、『TrueRandolph -donoを」

 Sauron Duchy側の外交官が最初にあげたのは、Orbaum Elective Kingdomで百年以上活動しているSClass adventurernameだった。


 確かに、軍でもどうにかできない正体不明の敵と戦うのなら、超人の中の超人であるSClass adventurerの協力が欲しくなるのは当然だ。数年前にSClassへ昇Classした『Five-colored blades』もいるが、彼等はまだDungeonから姿を現していない。そのため、頼れるのはRandolphのみだ。


 彼は国間の戦争に協力しない事で知られているが、旧Scylla Autonomous Territoryは国ではない(と思われている)ので、connectionさえあれば依頼を受けてもらえるだろう。

 しかし――。


「確かにAlcrem DukeRandolph -donoContactを取る事が出来ますが、それはSauron Dukeも同じでは? それが無理でも、Dolmad Marshallを通じて連絡を取るという方法もあると思いますが」

 そうAlcrem Duchy側の外交官が訊ねると、苦い口調で答えた。


「実は……Rudel -samaは先代を通じてRandolph -donointroductionされた訳ではないので、関係が強くないのです。また、Dolmad Marshallを頼るのも、領政の独立を保つためには問題があるかと」

 その答えから、Takkard達はRudelSauronが置かれている状況を、見抜いた。


(なるほど。Randolphに対して、何かやらかしたのか。しかもDolmad Marshallから距離を置かれつつあると)

 RudelSauronは、accurateにはRandolphに対して「やらかした」と評す程の事はしていない。ただ、忠告を無視しただけだ。その程度なら、originally Nobleに期待していないRandolphは溜め息をつくだけで依頼を受けただろう。

 しかしRudelが依頼しようとした時、RandolphBardRudolfとしてMoksiに潜入していたため、連絡がつかなかった。


 それを「彼の機嫌を損ねたから」連絡がつかなかったとRudel側は誤解したのだ。


 そして、Orbaum Elective KingdomElected Kingに仕えるDolmad Marshallから距離を置かれつつあるのは、事実だった。これはRudelが旧Scylla Autonomous Territoryを取り戻すのに手こずっているためで、彼から統治者としてのAbilityを疑われているからだ。


「……そう言う事なら、連絡してみよう。応えてくれるかは、Randolph -dono次第だが」

 Takkardはそう答えたが、実際にRandolphと連絡するつもりはない。彼がもし依頼に応じて、旧Scylla Autonomous Territory攻略軍に加わってしまったら、Undead軍にも被害が出るからだ。


Vidal Magic Empireとの友好関係にひびを入れる訳には、絶対にいかんのだ!)

 Giant Idol Statueの完成とEmperorFirst子誕生を祝うための式典に出席したTakkardAlcremと、腹心の部下達は、Vidal Magic Empireの姿を目にした。


 Orbaum Elective KingdomVidal Magic Empireの軍事力の差は、想像を絶していた。

 BrabatieuValdiria等、『Alcrem Five Knights』なら、戦う事は出来るだろう。だが、それは個人としてでしかない。軍と軍がぶつかり合った場合、Orbaum Elective Kingdom軍はFive Knightsのような強力な個が残るだけで、後は瞬く間に屍と化すだろう。


 上位のadventurerや、神にblessingsを与えられたHero達が参戦すればもっと戦力は集まるだろうが、為政者たるTakkardはそんな不確定要素に頼る訳にはいかない。実際、Hero達はMoksiAlcremに危機が訪れた時、駆けつけるどころか、事前に逃げ去っていたのだ。

 Vandalieuから逃げるためだったとしても、そんな者達を信頼する事は出来ない。


 そして、問題は軍事力の差だけではない。純粋な国力の差が大きい事が最大の問題だ。

(たしかに、人口では、我がAlcrem Duchyの方が上だ。だが、あれほどの像を、殆ど民の力だけで建立する国力が、我が国にあるか!? 考えるまでもなく、無い!)

 他にも、優れた武具のProduction力に、全Empire民にstability供給される食料……知れば知るほど自国との差を思い知らされる。


 人口についても、Vidal Magic EmpireTalosheim以外にも『Storm of Tyranny』が帰還したのが初めての生還例とされるDemon continent、そして他にも飛び地の領地が存在するらしいので、合計すればAlcrem Duchyを超えるかもしれない。

 そもそも、Magic Empireの人口の定義とは何なのか。城壁を守っているShadow Sniperや、他のUndeadGolemはどうなのか。


 もっとも、そんな細かい事を考えなくても数十年後には人口でもElective Kingdomを上回りそうだ。

(今は行き来も限られている。しかし、将来何らかの方法で……Mountain Rangeをどうにかして旧Scylla Autonomous Territoryに街道を通したり、何らかの力で安全な航路を造ったり、民の自由な行き来が可能になれば、Elective KingdomからMagic Empireへ移住する者が大幅に増える!)


 adventurerはもちろん、新しい素材や商品を求めるalchemistや商人が我先にと向かうだろう。VampiremonstersUndeadが国民として扱われている国へ行く事に、忌避感を覚える者もいると予想できるが……当てにならない。

 Vidal Magic Empireには、Orbaum Elective Kingdomから移住した者達が既に大勢いるのだから。


(実際、儂もUndeadに対する忌避感を覚えていない自分に気がつき、愕然としたくらいだからな)

 そんな事をTakkardが考えている間に、外交官同士での話がまとまりRandolphへの口利きは行われない事になったようだ。


Randolph -donoよりも、『Five-colored blades』を頼ってはどうかね? 噂ではDungeonから出たと聞いているが」

 そして、自分が……Alda Reconciliation FactionHeinzに近づき好感を得ようとして、Beastmenの就職に関する差別制度を撤廃した自分が触れないのも不自然なので、仕方なくTakkardHeinz達のnameを出した。


 当然、本音ではこの提案を蹴って欲しいと思っている。Heinzの参戦は、Randolphが参戦した場合以上の混乱と被害を巻き起こす事は想像に難くないからだ。

「……彼らを推薦するとは、最近Vida Fundamentalismに乗り換えたと噂のDuke -donoらしくありませんな」

 しかしSauron Duchy側の外交官から見て、今のTakkardHeinzを旗頭に掲げるAlda Reconciliation Factionとの関係は、良好ではなかったようだ。


 実際、GhoulVida's New Racesと認める改革を行って以来、Alda Reconciliation Factionとの関係は冷えている。表面上は何もないが、だからこそAlda Reconciliation FactionDuke側に抱いている不信感や警戒感が伝わって来るというものだ。

 だが、それがSauron Duke側にも伝わっていた事で、今回は事なきを得られそうだ。

 これで一安心とTakkardが胸を撫で下ろしかけた。


「それよりも、Vida信仰が盛んな我がSauron Duchyとしては、『Vida’s Incarnation』とも称えられているDarciaZakkart Honorary Countess -donoと、そのご子息の『Patron Saint of Transforming EquipmentVandalieu -donointroductionして頂きたいのですが」

 だが、特大の爆弾発言が炸裂してしまった。


VidaFamiliar SpiritAdventさせる事が出来、Evil God (P) sealedHeroZakkart Honorary Countess -donoが訪ねてくだされば民も不安から解放されるでしょう。更に、優れた技術を持ち、優秀なTamed Monsterを複数従えているご子息なら旧Scylla Autonomous Territoryで何が起きているのか、探り当てる事が出来るかもしれません。Scyllaも一匹、従えているようですし」


 しかも、爆弾は一発では終わらなかった。

 Sauron Duke側の外交官の真意が、彼の背後にいるRudelSauronの真意はTakkard達にとって不明だ。何かに勘づいているのかもしれないし、勘づいていないのかもしれない。


 しかし、この外交官の物言いがVandalieuの耳に入れば、機嫌を損ねるのは確かであり、それを許している時点でRudelSauronが彼の正体と真実に気がついていないのは明らかだ。


「それと、『Magical Girl』のKanako Tsuchiyaとその仲間達、そして最近名を上げている『Flying Sword』と『Iron Cat』の両名にAdventurer’s Guildを通じて指名依頼を入れようと思うのですが、構いませんか?」

 adventurerguildに所属しているため、Kanako達を雇うのにTakkardAlcrem Duchyの為政者と官僚に断りを入れなければならないという法はない。


 しかし、他のDuchyを拠点にしている優秀なadventurerを無断で、それも複数雇う場合は誤解を生むため、余程の緊急事態でなければ事前に根回しをするのが暗黙の了解となっている。

 Takkard達は、その暗黙の了解がある事を先人達に感謝した。お蔭で、止める事が出来る。


「申し訳ないが、Darcia -donoのご子息が春にはCenterAdventurer's School校に入学する予定なのです。彼女もそれに付いて、Centerに行く予定でして、確認はしていませんが、親子と関係の深い『Magical Girl-dono、それにご子息のpupilsである『Flying Sword』と『Iron Cat』、さらに友人の『[Heart Warriors]』もそれに倣うのではないかと。

 いや、Honorary Nobleとはいえ領内のNobleの統制も取れず、お恥ずかしい限りですな」


「は、いえ、それはどういう……?」

 まさか、全て断られるとは思っていなかったらしいSauron Duke 家側の外交官が、戸惑った-sama子で聞き返して来る。それを、自分側の外交官と協力して煙に巻こうとするTakkardに、Brabatieuがこっそり耳打ちした。


 何か気がついたのかとTakkardが思ってみれば――。

「お館-sama、これはもしやRudelSauronが仕組んだ我々とZakkart -dono達との間に溝を入れるための、離間工作なのでは? いや、我が領の戦力を削り、その間に良からぬ事を企んでいる可能性もありますぞ!」

 ――陰謀論だった。


「……代わりと言っては何ですが、我がKnightから腕利きを派遣しましょう」

「お館-sama!?」

 Sauron Duchyの旧Scylla Autonomous Territory奪還tacticsを、事前に止めるのは難しそうだ。ならば、内部に手の者を送り込んで、情報をVidal Magic Empire側と共有しながらtacticsをいい具合に失敗させるのが望ましい。


 疑り深すぎる腹心に、若干苛立ちを覚えたからという短気な理由では決してない。

(ああ、Dukeではなく、いっそEarlだったなら楽ができただろうに)




 疲れ気味なTakkardAlcrem Dukeに、「代わって欲しい」と思われているとは知らないIsaac Moksi Earl。彼が治める交易都市Moksiは、今日も平和だった。


「きゅーっ」

「ぎゅぎゅーっ」

 透明感のある白いbody partに円らな瞳、そして長い脚が人気のTamaGyokuが、今や『Vida Street』と呼ばれるようになった歓楽街の裏路地で、Vandalieuの代わりにFood StallCookingをしていた。


「……遂にTamed Monsterが営業し始めたぞ、このFood Stall

 このを拠点にして活動しているadventurer party、『Rock Iron Party』のleaderRockFood Stallを眺めながら乾いた笑いを浮かべた。


Tamed MonsterCookingを仕込むTamerとしての腕に感心すればいいのか、Tamed MonsterFood Stallを任せる経営policyに驚けばいいのか、分からん」

「あれは良いのかい? Guard -sanよ。Food Stallの後ろにMaid -sanが座ってるけど、あの人Tamerでもなんでもないんだろ?」


 Rockの仲間に話を振られた、そろそろ新人の二文字が取れつつあるGuardKestは、苦笑いを浮かべて答えた。

「構わないそうですよ。Tamerの監督はTamer guildの管轄ですし……歓楽街の事は、大ごとにならない限り、Hungry Wolf警備に任せるっていう、暗黙の了解がありますから」


「それって、結局Vandalieu次第って事か。Hungry Wolf警備のボスはあいつだし、『True Ruler of the Red-Light District』だし。……Devil Nestsで初めて会った時は、こんな大物になるとは思わ……いや、本当はあの頃から大物だったのか?」

「細かい事はどうでもいいさ。とりあえず、焼きSquid串でいいな?」


 日によって串に刺す食材が変わるこのFood Stallだが、今日は『Garess' Battlegrounds』に出現する、Squidmonstersmainに扱っているようだ。

 ちなみに、『後ろに座っているMaid -san』はRitaSalireではなく、生前はPure-breed Vampire Birkyneの配下の一人だったVampire Zombie MaidMagisaである。


 初めてFood Stallを……高RankTamed Monster達を見た人が怯えないよう、「Tamer-sama子を見ているから大丈夫だ」と勘違いさせるために配置されているのだ。

 ……実際にはTamerではないどころか、Humanですらないのだが、そこまではRockも気がつかなかった。……真実を知っているのは、Moksi Earlだけである。


「……色々な意味でいいのか? あいつ等がSquidCookingして」

「まあ、足が多いけどoctopusじゃなければCannibalismにはならないから、いいんじゃないか?」

「え、あいつ等Squidじゃないのか?」


 accurateには、Krakenである。それも、floating Little Kraken。フワフワとmidairを浮遊する事が出来る、胴体だけでHumanと同じ長さのある小型のKrakenだ。

 Squidoctopusの仲間ではあるが、別の種である。なので、Cannibalismではない。……例えるとしたら、Lionが虎を食べたとしてもCannibalismとは言わない、という感じだ。


 ちなみに、TamaGyokuの親でVandalieuによってUndead Transformationされてrevived Little Kraken Zombieは、Food Stallの裏でSquidを捌き、串に刺してタレをかけている。

 Magisaは偽Tamerと、会計を担当。


「チュー」

Squid串を六本くれ。こっちのGuard -sanの分も頼む」

「えっ? いや、俺は……」

「いいっていいって、もう仕事は終わったんだろ? だったらこれは賄賂にはならないから気にすんな」


「チュッ!」

 そしてMarollUrumiSurugamousesisterswaitressである。体長三meterbody partを後ろ足で支え、前足で器用に注文をとる姿は、顔を見なければ熊のようだ。


 性質の悪い酔っぱらいも、このFood Stallに絡もうとはしない。一年前と比べて、Moksiの歓楽街の治安は劇的に良くなっていた。




 その治安向上に貢献している人物はその頃、書類のと格闘していた。

「ふぅ、社員の管理も楽じゃないわね。本店と支店じゃなくて、ごとに事務所を出して、書類を相互でやり取りする方法にしない?」


Human社会にGoblin通信機やGolem FaxGufadgarnJaneはいませんから、書類を運ぶ手間が激増するだけですよ』

「そこはボス達に頑張ってもらって。どんな書類もrecord出来るんでしょ?」

『……ボスをFax代わりにするのは感心しませんよ』


 『Hungry Wolf』のMichaelことMilesに、tentacleで筆記用具を操り、書類仕事を手伝っているDemon King Familiar達。彼らが見ている書類には、Alda temple関係者やbelieverの動きが記されていた。


「過激な思想を持っていたAlda believer数名が、今度はAlcremOpen Plazaで聖歌を歌って抗議活動をしたみたいね。見向きもされなかったみたいだけど」

『聖歌って、あのVida's New Races排斥を推奨する歌でしょう? AlcremOpen Plazaで歌って支持が得られると本気で思っていたのでしょうか?』


 Alcrem Duchyは、Vandalieuが来る前の時点でさえ、Alda Reconciliation Factionの支持者が多かったDuchyだ。今更、過激派が支持されるはずがないのだが……。

Moksiでやるよりは、マシだと思ったんじゃない?」

ShowKanakoに勝負を挑む程、無謀ではなかったという事ですか』


 そう言いつつも、このbeliever達はKanako達のConcertを意識してmusicで抗議活動を行ったため、活動自体は平和だった。

 問題は、他の過激思想を持ったbeliever達である。


Tamer guildへの放火未遂、うちの警備員への暴行未遂、あたしやKanako達への襲撃、ボスのへの侵入……個人で勝手に動く連中って、organizationに責任を追及できない分、厄介よね……」

 Alcrem Dukeが発表した改革が進むにつれ、過激なbeliever達の動きが激しくなっている。


『まあ、その分雑に扱っても文句が出ないのでいいですが』

 そうした過激なbeliever達は、MilesKanakoへの襲撃やVandalieuによって幽霊mansionと化しているに侵入する等、無謀な行動をした結果、街から姿を消す。

 そして洗脳されたり、偽者とすり替わっていたり、頭の中身だけすり替えられたりした後、何事もなくを出て行ってから、改めてどうにかなるのだ。


 彼等がどうなっているのかは、彼等が犯そうとした犯罪によるのだが……今まで姿を消した者達の目的は、Alcrem Duchyの方では犯罪Slaveに落とされるか、処刑されるのが相当のものばかりだった。


God of Lawbelieverが率先して法律を破るのは、何故なのでしょうね?』

「あいつ等は、自分が正しいと思う法律だけ守っていればいいんでしょうよ。それより、Reconciliation Factionの動きが不気味なぐらい何も掴めないんだけど。ボスとDarcia -samaKanakoletterを送って来るぐらいで」

『……公的で穏健な動きしか見せない敵は、面倒極まりないですね』


「ところで、ボスのmain bodyって、今、何をしているの?」

Demon KingContinentspaceの捻じ曲がったDungeonを攻略中です。通路を歩いていると、右に向かって落下して、気がつくと天井に叩きつけられている事がある。そんなDungeonです。

 ……今からでも来ます?』


「パス。気分転換になるような、もっとsimpleDungeonを攻略している時に、呼んで頂戴」


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