前触れもなく眩暈を覚え、急に体が重くなったように感じられた。
急Diseaseか、毒でも盛られたかと思ったが、そうではなかった。Statusを確認したら、【Rubicante 's Divine Protection】と【Rodcorte’s Divine Protection】が消えていたのだ。
自分を支える大切な何かが失われた事を理解したCarlosは、そのshockのあまり崩れるように倒れ伏した。
それから約十日。何をやっても上手く行かない。body partの不調はすぐに無くなったが、実戦でも訓練でも自分の腕が急に頼りなくなったように感じてならなかった。
blessingsがあった頃は、戦闘の度に、依頼を達成する度に、自分が成長しているという実感があった。少しずつだが階段を確実に登っていると確信できた。だが、今は壁の前で足踏みを続けているだけのような気がする。
それからは坂を転がり落ちるように、Carlosは堕ちて行った。漲っていた自信は粉々に砕け散り、天気が悪いのも、足をぶつけたのも、酒の飲み過ぎで気分が悪い事だって、blessingsが無くなったせいだと、reasonでは違うと分かっていてもそう考えてしまう。
無くなったのが【Rodcorte’s Divine Protection】だけなら、Carlosもここまでshockを受けなかっただろう。彼にとってRodcorteは、Rubicanteから受けたOracleに指示があったから祈った正体不明の神でしかない。確かにblessingsを頂いたから感謝はしているが、敬意を抱き日々祈りを捧げているかというと、そんな事はない。
無くなれば残念に思うが、酒浸りになるほどshockは受けなかったはずだ。……彼と同じHero CandidateのEdiliaも、【Rodcorte’s Divine Protection】を失ったが、それを悲観する-sama子はなかった。
だが、無くなったのは【Rodcorte’s Divine Protection】だけではなく、Carlosが信仰していたRubicanteから与えられたblessingsも同-samaになくなっていたのだった。
「俺は……俺はもうダメだ。神に見放された俺は、もうお終いなんだ。お前等も、俺なんかと別れてもっといい仲間を探した方が良いぜ」
「BAKANA事を言うなよ、Carlos!」
Adventurer’s Guildに併設された酒場で昼間から酒を煽るCarlosを、同じpartyの仲間達は何とか慰めようとしていた。
「そんな事ないって。無くなったblessingsだって、生まれつき持っていた訳じゃない。お前がblessingsを得たのはadventurerになって、俺達とpartyを組んだ後じゃないか」
「あの時はまだ全員EClassだったけど、あんたはあたしらを引っ張って、しっかりleaderをしていたよ」
「それにblessingsを失ったのは、誰が何と言おうと、お前が悪いんじゃない。それだけは確かだ」
そうだそうだと残りの仲間達も口々に言う。実際、Carlosには自分が何故【Rubicante 's Divine Protection】を失ったのか、心当たりがなかった。
Fire-Attributeの神である『God of Heat Haze』Rubicanteは、厳格な神ではないはずだった。教義も、普通にadventurerをしていれば、まず破る事はない程度の緩いものだ。だから、RubicanteはCarlosが教義を破ったから見限った訳ではないはずだ。
では、Carlosにreligionが無かったから見捨てられた可能性はあるだろうか? blessingsを与えた神への敬意が、Carlosには欠けていたのか?
しかし、それもないはずだ。blessingsを得る前のCarlosのreligionは、人並みだった。しかし、blessingsを与えられてからは人並み以上にRubicanteを敬った。
食事の前とsleeps前に短くだが祈り、依頼料を稼ぐたびに少額だが喜捨や寄付を行った。熱狂的とは言えないが、確かに信仰していたのだ。
それなのにblessingsを失ったのだ。
「そんな事ねェよ。きっと、俺が気づかない内に何かやっちまったのさ。それか……俺にblessingsを与えても、これ以上先は無いって見切られたのかもな」
Carlosはそう言って自嘲する。まさか自分がKanakoのIdol Concertに夢中になって、そのまま導かれてしまった事が、Rubicanteが彼からblessingsを取り上げた理由だったとは、全く気がついていなかった。
「気を落とし過ぎないように。捨てる神あれば、拾う神ありと言います。きっと、Carlos -sanを評価する神が現れますよ」
そして、Carlosがblessingsを失った理由を察しているVandalieuは、彼の仲間と一緒に彼を慰めていた。
何故ならHero Candidate……元Hero CandidateだったらしいCarlosを懐柔し、仲間に引き入れる為と言うのはオマケで、本当の理由は彼を哀れに思ったからだ。
間違った事をしたとは思っていないし、KanakoがGuiderに目覚めたせいでとも考えていないので、罪悪感は覚えていない。
Vandalieuは、ただCarlosに同情しただけなのだ。
certainly、CarlosがDougをpartyの仲間に勧誘しようと、Kanako達に付き纏った事は覚えている。しかし、それで彼に対して悪印象を持つには至っていない。
何故なら、優れた存在が注目されるのは当然だからだ。それに、CarlosのDougに対する勧誘は、多少しつこかったが、当人同士で既に話は済んでいる。
……勧誘手段が悪質だった者達は『Hungry Wolf』のMichaelこと、Milesが締め上げている。そして、関係者を人質に取るなど悪辣だった者達は、今現在Lucilianoに管理、飼育されている。
「お酒を飲むだけでは酔いが速く回ってしまいますから、何かつまみも食べてください。Master、適当に何かお願いします。支払いは俺が――」
「待ってくれ! 支払いは俺達がする!」
「流石にchildに酒のつまみを奢らせる訳にいくか!」
だから元気づけようとしているのだが、流石に奢るのはCarlosの仲間達によって阻止されてしまった。
それに、Vandalieuの慰めはCarlosにSlightly響いていないようだ。やはり、十二ageのchildの慰めの言葉には説得力を感じないのかもしれない。
「Carlosの旦那、今は人生のどん底に落ちちまったように思えるだろうが、そんな事はねぇ。俺も利き腕を失った時はそう思ったが、今は何とかadventurerに復帰できた」
「オレだって、両手足が無くなった時でも『もう終わりだ』とは思わなかったぜ。何とか生きていくにはどうすればいいか、考えるのに必死だったよ」
「あんたも、必死に考えて、必死に生きていれば、何とかなるんじゃないですかね」
だが、Vandalieuと一緒にCarlosを慰めるSimonとNataniaの言葉は響いたようだ。
「ほ、本当か? 本当にそう思うのか?」
「そりゃあcertainly。あんたのbody partは五体揃っていて、仲間もいる」
「blessingsが消えたって言っても、Ability Valuesが下がったり、他のskillが無くなったりlevelが下がった訳じゃないんだろ? だったら、諦めなければどうにかなるさ」
「まあ……それに、どう言う訳かAbility Valuesは上がっているようだし」
SimonとNataniaの言う通り、Carlosは別に弱くなった訳ではない。確かにblessingsを失った事で、将来の伸び代と、成長効率は下がった。しかし、現在持っている力はそのまま維持している。それに、Ability Valuesに限って言えば、KanakoとVandalieuに導かれた事で上がっているぐらいだ。
そもそも、Carlos自身に素質があったからRubicanteにHero Candidateに選ばれたのだ。腐らず鍛えれば、まだまだ伸び代はある筈なのだ。
「そうかな? ……blessingsを失った俺でも強くなれると思うか?」
まだ半信半疑と言う-sama子だが、Carlosは気を持ち直しかけていた。
(これで、この人は大丈夫でしょう。後、気になるのは、main bodyが上手くやってくれるかどうかですね)
(ブグルルル)
このVandalieuは、本物ではなかった。VandalieuにCamouflageしたKühlが、発声型のDemon King Familiarを取り込んでいるのだ。
そうである証拠に、彼の背後にはGufadgarnが潜んでいない。……それに気がつける者は、そういないが。
ではmain bodyはと言うと――
見渡す限り青い海しか見えない、ある海域の上空を五隻のGiant帆船が進んでいた。
その内一隻の船首に、Vandalieuの姿があった。
「動きはないようですね」
そう彼が呟くと、彼の背後のspaceが揺らめき、Gufadgarnが姿を現した。
「偉大なるVandalieuよ、こちらから仕掛けますか?」
「いえ、もう一回りしてみましょう。Cuatro、旋回を続けてください」
『イエス、サー! 右旋回を維持!』
Undead船員の復唱が響くのは、Demon KingのContinentの沿岸ではなく、『Goddess of Water and Knowledge』Periaが眠っている海域の上空だった。
何故なら、BotinのDefense Corpsとばかり戦闘を繰り返していると、PeriaのDefense Corpsが援軍としてDemon KingのContinentへ差し向けられる恐れがあるからだ。
それを防ぐため、Repobillis達の霊から聞いたPeriaがsealedされている海域にも足を延ばしているのだ。どちらも狙っているかのように偽装するために。
「Van -samaっ! 戦いが無いのは良い事ですわ。Guardが暇なのは平和な証拠と言うではありませんの」
船首に居るVandalieuに、Tareaがそう声をかける。最近Vandalieuと離れる事が多かった彼女としては、彼と一緒に出掛けるのは悪くない。
しかし、Rank13以上のMythに出てくる神と矛を交えるような戦場は、流石に遠慮したかった。何せ彼女はmagicや武術の達人ではなく、武具造りの職人なのだから。
「それに折角の良い天気ですし、from here離れた海域で遊ぶのが良いと思いますわ! 私たちも水着になって、musicを演奏して踊って、tropical juiceを飲むのは、とっても楽しいですわよ、きっと!」
そのため、Vandalieuから以前聞いた、彼のimageするcelebrityっぽい事の内一つを口にして促す。
luxury complexを抱えているVandalieuは、『Earth』や『Origin』でcelebrityがやりそうな事をしてみたいと言う欲求が強い。
何年も前だが、Talosheimに作ったState Managed cassinoで、BasdiaやZadiris、EleonoraにBunny Girlの衣装を着てもらって『美女を侍らせながらgamblingをするcelebrity』ごっこをしたくらいなので、筋金入りだ。
「いや、流石にそれはちょっと」
だが、今回のTareaの企みは不発に終わった。
「な、何故ですの!?」
驚くTareaに、Eleonoraが半眼になって応える。
「それはそうよ。昨日まで歌って踊っていたのに、また踊って過ごしたんじゃ気分転換にならないわ」
昨日までKanakoの元でlessonを続けていたEleonoraに、Bellmondも続けた。
「それに水着と言うのも……ここは空ですからね」
ここは上空約千meter。とても海にいる気にはなれない。certainly、Cuatroの高度を落とす事も可能だが、それは海のmonstersから襲われる可能性が高くなる事を意味する。まあ、並のmonsters程度ならすぐ撃退できるだろうが……。
「海中からDemi-Godに襲われたら大変じゃからな。船底を徹底的に堅牢に改造したCuatroならともかく、形だけ真似ただけの他の四隻は一溜りもあるまい」
「今のところはDemi-Godが出てくる-sama子はないが、誘い出す為にわざと隙を見せるのにも限度があるだろう」
そしてZadirisとBasdiaも口々に反対する。
「そう言う訳なので、今回はレジャーはnoneです。また今度遊びましょう。
それに、Tareaも口では嫌がっていても気合が入っているじゃないですか」
Vandalieuがそう声をかけたTareaは、既にTransformation EquipmentをActivateしていた。
「これは気合ではなく、不安の現れですわ! Defense Powerが上がるから着ているのです!」
「でもTarea、Demi-Godと戦う俺達の-sama子を見れば、新しいTransformation Equipmentの開発のヒントが思い浮かぶかもしれませんよ?」
「う、それはそうですけれど……」
「それに、俺が守りますから」
「分かりましたわ!」
渋い表情を一瞬で満面の笑みに変えるTarea。現金な事だが、戦闘が起きたら彼女はVandalieuが守る事は決まっていたので、特に文句は出なかった。
「ですが旦那-sama、このまま旋回を続けても相手が亀のように籠城しては、意味がないのでは? いっそあれを使ってみてはどうでしょう?」
しかし、提案は出た。Bellmondがtailで指した偽Cuatroの船内には、Provocation用の切り札が詰め込まれている。
それを使えば、Periaを守っている者達も激怒し、行動を起こすかもしれない。
「でも、それで相手が無視したら意味がなくなるわ。別に戦わないといけない訳じゃないのだから、このまま帰っても良いんじゃないかしら?」
だが、Eleonoraは真逆の意見を述べた。確かに、Vandalieu達にはPeriaを守っているGodsを今倒す必要性がない。
彼等がsealedを解こうとしているのは、『Mother God of the Earth and Craftsmanship』Botinであって、Periaではない。こうしてPeriaが眠っている海域の上空を旋回しているのは、「VandalieuはBotinだけではなく、Periaも狙っている」とAlda's FactionのGodsに思わせるための偽装工作のためだ。
「確かに、Eleonoraの言う通り無理に戦う必要はありませんね」
Provocation用の切り札は、あくまでもProvocation用。相手の動揺や怒りを誘うには効果的なはずだが、戦力的にはそこまで重要ではない。だが、無駄に切るには躊躇いを覚える程度には、創るのに労力を割いている。
このまま温存して次の機会を待つのも手ではある。
「そうじゃな。Demon KingのContinentにsealedされたBotinと違い、Periaが眠っているのは海の中。Godsも、守りの姿勢じゃしな」
「俺達がPeriaに近づくには、海の中に入らなければなりませんからね。Water-Attributeの神やDemi-Godは、待ち構えた方が有利に戦えますからね」
Vandalieuが海上から【World Breaker Hollow Cannon】を撃ったとしても、護衛のGodsにはPeriaを守る自信があるのだろう。もしくは、Periaが眠っているのは特殊なspaceの内部で、外からの攻撃にimpactされないという可能性もある。
……それが本当かどうか、試す訳にはいかないのが苦しいところだ。
「じゃあ、今回は帰りましょうか。ただ、偽Cuatro四番艦を-donoに残し、何かあれば自爆させましょう」
背中を向けた途端、敵が襲いかかって来る危険があるが、自爆用の偽Cuatroは既に切り札でもなんでもない。作るのも、相応の木材と【Demon King's Blubber】があればいいので、costも安い。
なので、-donoにするには都合が良かった。
「では、from here暫く離れたら【Teleportation Gate】を――」
その時、海中からGiantな水柱が天に向かってそそり立った。
『行け! 奴らを倒せ!』
水柱から飛び出したのは六柱の龍やgiant、Beast King……だけではなかった。
「奴らが抱えているのは、giant……いや、Golemのようね」
Eleonoraの目には、自分達と同じくらいの大きさのGolemを後ろから抱えながらFlightする、Demi-God達の姿が映っていた。同じ人型のTrue giantはともかく、龍とBeast Kingはかなり不格好だ。
「どうやら、あのGolemを私達と戦わせるつもりらしいな」
「何を落ち着いていますの!? あのGolemは全てOrichalcum製ですわよ!」
Golemは材質と大きさによって強さが変わる。Tareaが見抜いたように、あのGolemがGodsのみがRefiningできるOrichalcum製なら、Demi-Godと同じ百meter Sizeである事も考えると、Rankは最低でも13以上。
かつてVandalieu達が倒した、Talosheimの王城地下にあった壊れかけの、そしてあれらよりも小さいDragon型のOrichalcum Golemよりもweakという事はないだろう。
「船長、迎撃開始だ」
『アイ、サー! 迎撃開始!』
『Four Captains of the Dead Sea』が復唱すると、Cuatroと偽Cuatro達の船底に仕掛けられた【Demon King Fragment】製大砲が轟音を轟かせて砲弾を放ち、Giantなeyeballやlipsから怪光線や音波砲を放ち始める。それはGolemと、それを抱えて飛ぶDemi-God達に降り注ぐが……。
『Golemを盾にしろ!』
Demi-God達はGolemを盾にする事で、怪光線や砲弾の直撃を避けた。【Demon King Fragment】はoriginally、Orichalcumでしか対抗できなかったDemon King GuduranisのBodyだ。そのため、VandalieuにAbsorptionされた今でもOrichalcumに対して一方的に優位に立てる訳ではない。
『だ、ダメだ! このGolemでは耐えきれな……ぐああああああっ!?』
だが、砲弾を受け続けたOrichalcum Golemの内一体が砕け、それを抱えていた龍と一緒に落ちて行った。
Orichalcumは確かに【Demon King Fragment】に対抗する事が出来る、優れた金属だ。しかし、所詮は素材である。作り手の技術の高低によって、性能が変わるのは当然であった。
「しまった。Orichalcum Golemを過信しすぎましたか。折角の食材とOrichalcumが……」
「旦那-sama、まだ五体と五柱登って来ますので、あまり気を落とさず」
加減を間違えたと肩を落とすVandalieuを、慰めるBellmond。彼女の言った通り、残りの五体のGolemは、怪光線や砲弾を受けて傷つきながらも、しっかりDemi-Godの盾となっている。
『くっ! Great God謹製のOrichalcum Golemが砕かれるとは……修理が甘かったか!』
Demi-God達が抱えているOrichalcum Golemは、十万年前Demon King Armyとの戦争当時に使われ、破壊された物を、Periaを守るGodsが修理したものだった。
Demon KingのContinentでsealedされているBotinを守るために、多くのDemi-Godが集められた。その分PeriaのDefense CorpsにはDemi-Godが少なく、地上における戦力が不足したのでそれを補うために、壊れたGolemを引っ張り出したのだ。
(もっとも、Golemだけに機動力が低く、空に浮遊する事は出来ても素早く飛ぶことが出来ぬ。こうして運んでやらなければ、midair戦ではただの的……盾でしかないのだが。
修理する時にFlight Abilityを加えるよう、進言するべきだった!)
まさかVandalieuが空飛ぶ船団でやって来るとは、想定外だった。過去の自分をCurseつつ、『Beast King of Sea Snakes』Zabackは仲間と共にGolemを懸命に運んだ。
このOrichalcum Golemを接近させたら、Zaback達は離脱して、仲間と合流するつもりだった。
今、この場に姿のない仲間達は、Periaを守るために大急ぎでspaceを歪めている最中だ。Vandalieuが上空から【World Breaker Hollow Cannon】を撃ったとしても、Periaに届く前に歪曲させ逸らす事が出来るように。
それまでの時間を稼ぐため、旋回を止めたVandalieu達が攻め込んで来る前に行動に出たのだ。
実際には、Vandalieuは攻め込むどころか撤退しようとしていたのだが……Godsはプレッシャーに耐えきれなかったのである。
(もう少しだ!)
そして船団まで残り百meterまで近付いたZaback達だが、Vandalieu達はoriginallyこうなる事を、PeriaのDefense Corps達が自分達から襲い掛かってくるのを待ち構えていたのだ。
「このまま接近されるとCuatroが傷つくかもしれないな。Van、そろそろ出て良いだろうか?」
「構いませんが、狙うのは皆で一組……一体と一柱にしてくださいね」
「分かった! 皆、狙うのはあのウナギにしよう!」
「Basdia、あれは海蛇よ!」
「まあ、蛇もウナギも似たようなものじゃ。かば焼きにすればどちらも美味い」
「流石にそれは暴論だと思いますが」
BasdiaやEleonora達がCuatroからZabackに向かって飛び降りて行く。BasdiaやZadirisのTransformation EquipmentはVandalieuが改良した結果、Flight Abilityが付与されている。そしてEleonoraとBellmondは、そもそも自力で飛ぶ事が出来る。
「では、自爆船以外の偽Cuatroはパージを。切り札を順次切っていきましょう」
Vandalieuがそう言うと、偽Cuatroの内一隻が内側から砕け散り、白濁した瞳と土気色の肌をしたgiantが姿を見せた。
『ウオオオオオオオオオ!』
稲光を撒き散らしながら、True Giant Zombieと化した『Thunder Giant』Radatelが咆哮をあげ、自身に迫ったGolemとTrue giantを迎撃する。
『貴-samaはRadatel!? くっ、遺骸をUndeadにされたのか。何と惨い事を!』
True giantはRadatelを知っていたため、顔を怒りに歪めながらOrichalcum Golemを解放し、二対一で倒す構えを取る。
『ふはははっ! まさか、ここでOrichalcum Golemと戦う事になろうとは、思っても見ませんでしたぞ!』
『おおぉん! おおおおおおおおおおおおおおおお!!』
そして別の偽Cuatroからは、SamとKnochen、そしてPeteが現れた。TalosheimでのOrichalcum Dragon Golemとの戦いに参加していなかったSamと、その戦いの結果別々のUndeadから一つにFusionしたKnochenが、猛っている。
『じゃあ、私達はGolemを抱えている龍の方ですね! 父-san達にはloseいられませんよ、Hoof!』
『行きますよ、Mane! Peteもついて来てください』
そしてRitaとSalireはそれぞれHoofとManeを駆って、Peteを引き連れてGolemを抱える龍に向かって行く。
「ギシャアアアアア!」
『Great Vortex Dragon God』Zwoldoを喰い殺した事で、Peteは更にRank upし、今やCentipedeのEmperorと評すべき威容を誇っていた。今なら、並の龍相手なら単体でも相手が出来るだろう。
……Living Armor sistersを乗せているManeとHoofは、実力的にはかなり場違いだが、【Familiar Spirit Demonic Advent】を使用しているのでmaybe大丈夫だろう。
一組が途中で脱落し、残り五組中三組も足止めされている。RadatelはZombie化したimpactで弱くなっているが、それを【Demon King Fragment】製の鎧で補っているので、True giantとOrichalcum Golemのタッグでも簡単には倒せない。逆に、Sam達は時間さえあればGolemと龍を倒しきるだろう。
そして残り二組には、今回Vandalieuが用意した切り札が向かっていた。
『ハハハハ! 完全revivalだ!』
『気分が良いな! Alda側に付いた貴-sama等を見下ろすのは!』
『実に爽快ッス!』
『十万年前の仕返しだ! 受け取れ!』
『あ、そう言えばこいつ、十万年前にいたっスかね?』
scaleに覆われ、指が単眼蛇の首に置き換えられたGiantな手のような姿をしたEvil God (P)、『Evil Dragon God of Five Sins』Fidirgだった。口から光弾を吐きながら、彼はAlda's FactionのDemi-Godを見下ろし、笑っている。
『BAKANA! 貴-samaはAldaに五つの首の内四つを消し飛ばされた筈! それが、たった十万年でrevivalし、寄り代を創り出すに至ったというのか!?』
『狼狽えるな! 奴はVida's Factionでもザコの部類だ! 所詮はVidaのwaist purse。すぐに倒すぞ!』
動揺する仲間を叱責したgiantの言う通り、Fidirgの強さはDemon King Armyの邪悪なGodsの中でも下の部類だ。十万年前のVidaとAldaの戦いを生き残ったのも、武勇ではなく運によるものが大きい。
確かに完全revivedのは驚くに値するし、敵戦力としても侮るべきではない。だが、上位のGhoulやVampire達、KnochenやPeteと同程度の脅威だ。
『儂がGolemと協力してFidirgを潰す! 貴-samaはVandalieuを抑えろ!』
『くっ、致し方あるまい!』
giantから指示を受けた『Beast King of Sea Urchin』Dolsteroは、needleで挟むようにして支えているOrichalcum Golemを盾にしながら、Vandalieuが乗るCuatroに迫る。
本来のtacticsでは、ここまで近付いたらGolemを投げつけるように放り捨て、転身するはずだった。だが、既に一組やられ、残りの二組も足を止められ上空から大砲に狙われながらphysical battleを強いられている。
このままでは十分な時間を稼ぎきれない。Golemだけではなく、自分達も戦う必要があるとDolsteroは覚悟した。
だが、その覚悟では足りなかった。
『潰せるかどうか!』
『試してやろう!』
Fidirgが光弾を口から吐くが、それはgiantが盾にしているOrichalcum Golemによって防がれ、Golemにも大した傷を与えていないように見えた。
『犬だけではなく、weak蛇もよく吠えるようだな! 船が放つ弾の方がまだ効く……なにぃ!?』
giantがあざけるように叫ぶが、その途中でFidirgが黒いオーラのようなものを放ち始める。
『【Familiar Spirit Demonic Advent】ッス!』
何と、FidirgはVandalieuのCloneをBody代わりの寄り代に宿したのだ。
『blessingsもFamiliar Spiritも与えられぬのなら、逆にFamiliar Spiritを貸して頂くまでよ!』
『き、貴-sama! 神としてのprideは無いのか!? それに、Statusの無い貴-samaが何故そんな事が出来る!?』
神としてかなり情けない事を叫ぶFidirgにgiantが思わず叫ぶが、Fidirgはすぐ言い返した。
『弱者のwisdomってやつっス!』
『お前達も、Statusが無いのにmagicや武術を使っているじゃないっスか!』
弱さを自覚している者に、それを指摘しても意味はない。Status systemはHumanのためのものなので、Godsは持ちえないものだが、だからと言ってmagicや武術、そうした経験や技術、技能をGodsが使えない訳ではなかったのだった。
『いや、HumanのFamiliar Spiritを自分に降ろす神は、Fidirgが史上初だと思いますよ』
『つまり、先駆者って事ッスね!』
『では、くらえ!』
VandalieuのCloneからのツッコミも軽く流したFidirgの五つある口に、それまで放っていた白い光弾ではなく黒いenergyが凝縮されていき、それが限界まで高まった瞬間、黒い五条の光線が放たれた。
『BAKANAぁぁぁぁ!?』
黒い光線はそれまでの光弾を弾いていたOrichalcum Golemを貫き、そのままgiantに五つの風穴を空けた。
『仮にも神が、Demon Kingと言えど、人に力を授けられる事を良しとするとは……!?』
Gufadgarnによって命を喪った仲間のgiantがGolemの残骸ごと回収されるのを止める事が出来ないDolsteroは、砲弾を掻い潜りながらも驚愕していた。
Fidirgがとったのは神としての存在意義をかなぐり捨てるような行いだ。神は優れ、偉大であり、人々にblessingsをもたらす存在だからこそ信仰されるのだ。
神は確かにbelieverの信仰をenergy源にしているが、流石にここまで直接人の力でEnhanced (1)される事はない。
これではbelieverから見放されてしまうかもしれない。
「そうではありません。俺とFidirgは対等な関係です」
だが、Dolsteroが近づこうとしているCuatroの船首に、Vandalieuが反論を口にしながら杖を持って現れた。その杖は、これまで使っていたGyubarzoの杖ではない。
「Transform、Staff of the Five Sins Activate」
杖から五本の管が伸びてVandalieuの腕とFusion。そして、杖頭から五つの蛇の頭を思わせる突起が生える。
『ま、まさかっ!? ひ、ひいいいいい!』
生存Instinctがかき鳴らす「逃げろ!」という警報に従って、DolsteroがOrichalcum Golemを放り出して逃走を図る。Golemはその場に浮かぶと、Dolsteroを守るように唸り声をあげてCuatroに迫ろうとするが……放り出された場所は遠すぎた。とても間に合わない。
「【Absolute Death Flash】」
Vitalityを奪う【Death Cannon】を凝縮して一つの光線にした新たな【Hell King Magic】に貫かれ、Orichalcum GolemとDolsteroは断末魔の声をあげる間もなく倒されたのだった。
《【Constant Mana Recovery】、【Mass Strengthen Adherents】、【Murder Healing】、【Self-Reinforcement: Murder】、【God Alchemy】、【Simultaneous Multi-cast】、【Staff Technique】、【Soul Devour】skillのlevelが上がりました!》
《【Strengthened Magic Power with a Staff】skillを獲得しました!》