再構築とDecayを繰り返しながら、少しずつ組み立てられていく『自分』と、それを手伝ってくれている皆をVandalieuは楽しげに見つめていた。
何時の間にか人が増えた気がするけれど、今はそれを気にするより楽しさの方が勝っていた。
『Van~、この黒くてネバネバの何かが取れないよ~』
ふと気がつくとPauvina達がblock……Vandalieu's Fragmentに混じった何かを発見したようだ。
『一部のfragmentに、黒く粘り気が強い何かが混じっていまして……旦那-sama、これは何でしょうか?』
『あまり良いものじゃないのは分かるんだけど、Slightly Vandalieu -samaっぽくないし』
BellmondやEleonoraも困惑してその何かを見ている。Vandalieuが周囲のeyeballやcompound eyesで彼女達が指差すfragmentを確認すると、そこには黒い筋のような物が入っていた。
上等なeating meatに入ったサシのように、黒い何かがfragmentに混じっているのが見える。それを確認した瞬間、Vandalieuは何故か嫌悪感を覚えた。
Human、誰しも自分の中に認めたくない一面を持っているものだが、そうした類のものとは違うsignを感じる。しかし何なのか思い出せない。
『は~い、Uncoolですね』
思い出せなかったので、頭蓋boneのdomeの中にいるKanakoに踊ってもらった。彼女の足が動く度に、灰色のchunk of meatに溝が刻まれて、Vandalieuにとって程良い刺激になる。
『むっ、loseはいられん!』
Bone Manがそれに触発されたのか目の前のfragmentに切れ目を入れ始める。やや刺激が強いかもしれない。
だがそうしているうちに思い出した。あの黒い物は、Rodcorteにかけられた三つのCurseだと。
【Experience gained in previous life not carried over】、【Cannot learn existing jobs】、【Unable to gain experience independently】の三つのCurseをVandalieuはRodcorteにかけられている。
それらは今も効果を発揮しているが……今ではVandalieuの障害には殆どなっていなかった。
寧ろ、Curseのお蔭でManaの量が増えている可能性もあるぐらいだ。
『それでどうするのじゃ、坊や? かなりboneじゃが、全てとってみるか?』
Zadirisに問われたVandalieuは迷った。ここで組み立て作業を中断してCurseを解く事にチャレンジするか、それとも無視して作業を続けるか、どちらにしようかと。
Curseの内【Experience gained in previous life not carried over】は、『Lambda』にreincarnationして既に十年以上経っている今現在ではほぼ意味が無い。それに【Cannot learn existing jobs】も、新Jobが幾つもあるconditionなので不自由はしていない。
【Unable to gain experience independently】は唯一今も障害になっているが、【Dead Spirit Magic】やDemon King Familiar等があるので多少気を付ければ問題無い。
そうしたCurseを解くために、魂の再構築を止める価値があるのか。
そして止めたところで、Curseを解く事が出来るのか?
Vandalieuは試しに組み立て終わっていた手を使って、適当なfragmentを一つ切り開いてみた。そして断面をよく見ると、小さな黒い斑点のような物を見つけた。
『……これは、全てを取り除くのはとても無理ですね』
Princess Leviaが残念そうに肩を落とす。
黒い何かを全て取り除くには、Vandalieuのsoul fragmentを全て細かく裁断でもして、一つ一つ確認しながら作業するしかない。だが、Vandalieu's Fragmentはchildの掌に乗るSizeから、Vigaroが四本の腕をすべて使わないと抱えられない大きさまで、-sama々だ。
それが恐らく高層ビルと同じぐらいの体積分転がっているのである。何時の間にか人数が増えているが、それでも手が足りない。
『それに、幾ら坊主でもfragmentを更に細かくバラバラにしたら悪impactが出るんじゃねぇか? 今だって多少は困ってんだろ』
Borkusの言う通りで、既に一度バラバラになったからと言ってその破片を更に細かくしても大丈夫とは限らない。
それに、何時までも手足に力が入らないのは困る。Moksiの町に潜入したのは、MurakamiやBirkyneを誘きだす為でもあるのだから。
『じゃあ、fragmentの表面にある分だけでも取っておくか? 多少はマシになるかもしれないぜ』
何時の間にかいたSchneiderがそう提案した。黒い部分を全ては無理でも、ある程度取ればCurseの効果が軽くなる事は十分考えられる。
気休めではあるが、放っておくのも気持ちが悪い。
『分かった。じゃあfragmentの表面にある部分だけ取って集めるぞ、上手く剥せない時は近くの奴と協力しあえよ!』
Schneiderがそう号令を出し、皆がそれに応じて……Slightly鈍い動きで動き出す。やはり夢だからか、意識の働きが鈍いようだ。
『おぉぉぉ~ん』
そうして集まった黒いCurseの塊をKnochenが運んでくる。
それを受け取ったVandalieuは、まさか誰かにくっつけるわけにはいかないので【Soul Devour】で砕く事にした。喰らわずに、砕いて消滅させるだけだ。
Curseの一部は、Vandalieuの手で容易く砕け散った。
Rodcorteは、自身のDivine Realmに戻った後すぐに『Five-colored blades』のmember、『Ash Blade』のEdgarの魂にかかりきりになっていた。
『……この作業にどれほどの意味があるのか?』
本来なら、Rodcorteは傷を負った魂の修繕……治療は行わない。意味がないからだ。
Rodcorteの手元に魂がある時点で、通常ならその魂が宿っていたBodyは死んでいる。つまり人生を既に終えている。
ならどれだけ傷ついていようとCircle of Reincarnation systemに乗せてそのまま来世に送ればいいだけの事だ。そうすれば魂の傷はほぼ治る。
Humanに生まれ変われば健常な魂を持つ赤子と比べれば少々変わった行動や反応が増えるかもしれないが、それだけだ。数年も経てば魂の傷は完全に治り、新たな人生を歩むだろう。
Human以外に生まれ変わる場合は、そうしたimpactすら出ないはずだ。
だと言うのに何故Edgarの魂の修復をしているのかと言うと、『God of Law and Life』Aldaに依頼されたからだ。彼が脱落すると、『Five-colored blades』の戦力が大きく落ちるので何とかして欲しいと。
『確かに、『Five-colored blades』はVandalieuを大きく追いつめた。今まで奴と戦った者達の中で、最も善戦した。それは認めよう』
少なくともこれまでRodcorteが送り込んだReincarnator達……【Gungnir】のKaidou Kanataや、【Death Scythe】のKonoe Miyajiよりは、ずっと。
一連の戦いのrecordを見たRodcorteも、彼らならVandalieuを倒せるかもしれないと言う可能性を感じる事が出来た。……万に一つ程度には。
あのDungeonではVandalieuの力は大きく制限されていた。半減とまでは言わないが、三分の二に届いたか怪しいとRodcorteは見ていた。
しかも、途中で『God of Records』Curatosが乱入しなければEdgarだけでは無くDelizah、そして肝心のHeinzまで魂を喰われ消滅していたに違いない。
それにあのDungeonは大きく破壊されてしまっていて、あれ以上Heinz達が強くなれるかも不明だ。
『だと言うのに、Cheat Abilityも無いこの男を復帰させるために私の手を塞ぐとは……しかも治療の為以外には彼の魂に余計な事をするなと注文までつけるとは。
てっきり、Reincarnatorと同じCheat Abilityをつけるようdemandしてくるかと思ったのだが』
『……いや、AldaってKami-samaの判断は正しいと思うぜ。あんたに余計な事をするなって釘を刺したのは大正解だし、他にもな』
Aranがそう言いながら、Rodcorteに声をかける。彼の視線はEdgarの魂に注がれており、痛ましげな-sama子だ。
霊的な生命体であるFamiliar Spiritに昇華したAranにとって、深く傷ついた魂は見ていて気分の良いものではないはず。
例えるなら、whole bodyの九割以上の生皮を剥されたEdgarに、消滅したNiltarkのHeroic spirit Lukeのskinを移植して、更にEdgarのrecordを元に整形Surgeryを施す。そんな作業である。
しかし魂の修復作業に興味があるのか、Aranが視線を逸らす-sama子は無い。
見られて困るものではないので、Rodcorteはそのまま訊ねた。
『他にも、とは?』
『俺達Reincarnatorに期待してない事さ。今まで送り込んだ奴はMurakamiとその仲間を除けば、結局全員黒星だろ? だったら、Aldaからすれば自分達が育てている中で最も強い手札は絶対に喪いたくないだろうよ』
言われてみれば、確かにその通りだ。先にあげた【Gungnir】と【Death Scythe】は無残に敗北し、【Venus】と他二名は裏切った。【Noah】は Bahn Gaia continentから逃げて棄権し、【Super Sense】もそれに続こうとしている。
他の数人もまだ成果を出していない段階だ。
Aldaからしてみれば実績の無いReincarnator達を信用できなくても無理は無い。
『まあ、そうなるとその重要な手札をあんたの手に預けるのが解せないんだが。他のKami-samaでどうにか出来なかったのか? blessingsを与えたりFamiliar SpiritをAdventさせたり、魂を扱う事だってしているだろうに』
Rodcorte以外のGodsを知識でしか知らないAranには、そう思えるらしい。
確かにblessingsを与えるのも、【Familiar Spirit Advent】skillのActivateに応えて一時的にFamiliar SpiritをAdventさせるのも、魂に関わる行為と言えなくもない。
しかし、今Rodcorteが行っている行為とはdimensionが異なる。
『自分達で出来ると思うならAlda達も私に頼まなかっただろう。それでも頼んだと言う事は、彼らは自分達では不可能だと考えたと言う事だ』
何せ廃人寸前のEdgarの魂を、Edgar本人になるべく近い形で修復しなければならないのだ。人格やMemoryだけでは無く、彼が獲得したskillを以前と同-samaに使えるようにしなくてはならない。
Aldaの知る限り、そんな事が出来そうな神はRodcorteぐらいだった。
(Vida's Factionになら、あるいは存在するかもしれないが)
Rodcorteからすれば不愉快な想像だが、Circle of Reincarnation systemを扱っていると言う意味ではVidaも魂の専門知識を持っていると言える。その彼女自身や、彼女のSubordinate God達ならEdgarの魂を修復できるかもしれない。
最も、AldaにとってはRodcorte以上にあり得ない依頼先になるだろうが。
『私としては、私に話しかける今のお前の行動の方が信じ難いが。やはり会議で決まった事や、『Five-colored blades』とVandalieuの戦いの事が気になるのか?』
『……当たり前だ』
『なるほど、それで他の二名が『Five-colored blades』のrecordからVandalieuの情報を分析している間に、お前がこうして私から話を聞き出そうとしている訳か。【Inspector】の方が適役では? 私が嘘をつかない保証は無いと思うが』
『泉だと、あんたが何も答えないかも知れない』
『……ふむ、確かに』
Edgarの治療をしながら、【Inspector】のAbilityで見抜かれないよう嘘ではない範囲で返答しながら秘密を守る。Rodcorteにとっても面倒な行為だ。それよりは、質問を無視して一言も応えない方がずっと楽だろう。
だが会議……Alda達との話し合いでは、Aran達に隠す程の事は何も決まっていなかった。彼らも予想している範囲の事ばかりだったのだから。
『Reincarnatorに関しては、Vandalieuと戦う意思をどうしても示さない場合、Memoryを消す。そして成人のBodyを与えてAlda達の勢力下のtemple内にreincarnationさせるか、Abilityだけ回収して赤子としてreincarnationさせる事になった』
『前者に関しては予想していたが、後者は何でだ?』
『Reincarnator毎に向き不向きがあるだろうとAlda達が考えたからだ。幾らMemoryを消し、Championとして仕立て上げても、以前の性格が残る以上戦いに不向きな者は不向きなままであるらしい』
人格的な要素が完全に消えるまでMemoryを消すと、その人物は言語や歩き方まで忘れて赤子同然のconditionになってしまう。そのためReincarnator達を戦力に仕立て上げたいのなら、言語等基本的な知識は残したままMemoryだけを消す事になる。だが、そうするとReincarnatorの性格も残ってしまう。
その残った性格が戦いを好まない性格や、自分に馴染みの無い宗教に不信感を覚える性格である場合、邪魔になる。
『reincarnationした後templeの者達に不信感を覚えて逃げ出したら、面倒な事になるそうだ。それぐらいならいっそ、与えた力を回収して他の者に与えた方が可能性は高いと言う事らしい』
『なるほど。いっそ、その方が良いかもな』
Aranは『Origin』でまだ生きている仲間達の事を想い、そう考えた。Memoryを消され、力を取り上げられる。しかし、それは死んで生まれ変わるのなら当たり前の事だ。仲間達の中に三度目の人生が待っていると知っている者は、誰もいないのだし。
少なくとも、本人の意思に反してVandalieuに魂を喰われるかもしれない戦いを強制されるよりはずっと良いだろう。……特に、【Angel】のNarumiは知らないままでいた方が幸せである事があり過ぎる。
『Reincarnatorと言えば、『Origin』で何かあったのか? お前達の思考に妙な偏りを感じるのだが?』
『何の事だ?』
Edgarの治療の合間に、Aran達のrecordをざっと見たRodcorteがそう言葉に出して尋ねたが、Aranは平然としていた。
しかし AranをFamiliar Spiritに昇華させたRodcorteは、彼が動揺を隠しているのを見透かしていた。これはEdgarの治療が多少遅れても、Aran達のrecordを精査すべきかもしれないと言う考えが意識を過る。
だが、それとは別の理由ではRodcorteはEdgarの治療を止めた。自身の力の一部……極一部が消滅した事を感じ取ったからだ。
『……Vandalieuが私のかけたCurseをほんの一部だが砕いたのか? 無駄な事を』
RodcorteがVandalieuの魂にかけたCurse。あれは既にRodcorte本人にすら解けなくなっている、主にVandalieuのせいで。
『Five-colored blades』のrecordから見たが、Vandalieuは他者の魂を砕くだけでは無く喰らう事でAbsorptionしている。そのせいで魂の形が大きく変貌してしまっている。
もうRodcorte自身が消滅しても、Curseが解けるかは分からない。確実に解除するには、Vandalieuが自分自身の魂ごと消滅させるしかないだろう。
だがVandalieuがCurseの解除を試みたと言う事は……やはり魂を傷つけられ、自分で自分の魂を喰った程度ではすぐに回復してしまうようだ。
『あまり時間をかけている余裕は無いか』
『Origin』のReincarnator達は、数年の内に動き出すだろう【Avalon】のRokudou Hijiriによって前回よりも多くの数が死ぬ事になるだろうが……それを待ってはいられないかもしれない。
そうなると、今Rodcorteの手の中に在るEdgarは現在存在する対Vandalieu戦力としては貴重な存在になり得る。
『だが、このままでは復帰するまで時間がかかる。このHeroic spiritの破片も、使える部分はすべて使ってしまったし……仕方ないか』
『えっ? おい、何だ、それ!?』
Rodcorteは懐からDemon King Guduranisのsoul fragment……その中でもnameを付けて分類する程ではない残留思念やMemoryの断片を取り出し、それを使ってEdgarの治療を続けた。
『おい、今、見ただけで危険だって分かる色の粉を振りかけたよな!?』
『-kunが知らなくても良いものだ』
Demon Kingのsoul fragmentである事は変わりないが、originally廃人同然になるところをHeroic spiritのsoul fragmentを移植なんて前代未聞の事を行っているのだ。多少の副作用は構わないだろう。
AldaがsealedしているGuduranisのsoul fragmentでも重要な部位……fragment同士を繋ぎ合わせGuduranisとしてrevivalするのに必要な【Demon King's Core】と、fragmentが宿主にInfestせずにGuduranisその物として活動するのに必要な【Demon King's Existence】と結びつくと危険かもしれない。
しかし、その可能性より復帰したEdgarの魂がVandalieuに喰われる危険性の方がずっと大きいので考慮する程ではないだろう。
『これで治療に必要な時間を短縮する事が出来る。お前達には、その間私の代わりにsystemの-sama子を見てもらう事になる』
『……分かったよ』
粉の正体について聞き出すのは不可能だと諦めたらしいAranは、そう返事をしてRodcorteから離れて行った。
その後ろ姿を見ずに、Rodcorteは考えていた。
(Aran達三人は不忠実なりに役には立っている。私がAldaとの話し合いに向かう事が出来たのも、今Edgarの治療に専念できるのも、Aran達がsystemの-sama子を見ているからだ。egoの無いFamiliar Spiritでは、こうはいかない。
今暫くは放置した方が良いだろう。少なくとも、『Earth』や『Origin』の-sama子を見ている限りは問題無いはずだ。Vandalieuは『Lambda』にしかいないのだからな)
Aran達のrecordを見る事よりもEdgarの治療を優先したRodcorteだが、そのせいで彼は『Origin』にVandalieuはいなくても、Bandaがいる事を知る機会を逃したのだった。
宿屋で目覚めたVandalieuは念のためにStatusを確認したが、やはりCurseはそのままだった。
しかし昨日よりもずっと手足の痺れが軽くなっており、body partを動かせる事を確認してほっと息を吐いた。
そしてDarciaと宿を出て、まずFood Stallを購入した。
「Vandalieu、本当に大丈夫なの?」
「問題ありませんよ、kaa-san」
VandalieuはEleonora達が潜入し牛耳っている犯罪organizationの情報網で、去年Food Stall稼業を引退した老人を割り出し、彼から中古のFood Stallを買いとった。
「少し綺麗にすれば問題無く使えます」
口止め料を込めて相場の三倍の額を受け取ってホクホクしながら去っていった老人は、大切にこのFood Stallを使っていたようだ。掃除すれば、すぐに表通りに立てるだろう。
「そうじゃなくて、手足の痺れとManaの事よ」
だがDarciaが心配しているのはVandalieuの手足に残った痺れと、完全には回復していないManaについてだった。
「……まあ、串焼きはそんなに難しいCookingじゃありませんから。Manaも半分ぐらいまでは回復していますし」
魂が再構築中であるためか、VandalieuのManaは半分程しか回復していなかった。
半分しか回復していないconditionでもManaは約三十五億もあるので、問題無いと言えば無いのだが、Darciaの顔は心配そうだ。
「でも、もし戦いになったら危ないじゃない。……やっぱりBellmond -sanを呼んで、bloodを飲んだ方が良いんじゃない?」
声を潜めてDarciaはそう提案した。【Offering】のUnique skillを持つBellmondのbloodは、Manaを急速に回復させる効果がある。普段なら彼女のbloodを飲めばすぐに全快するはずだ。
「だけどkaa-san、今Bellmondは犯罪organizationでボスの秘書兼Lover役をしていますから、今呼ぶのはちょっと……。それに、これはmaybe魂関連の問題でしょうから普通にbloodを吸っただけでは治らないかも知れません」
折角誰にも気がつかれずに犯罪organizationを乗っ取ったのに、それを破綻させる危険を冒させた挙句意味がありませんでしたでは、あんまりだろう。
「そうね、魂に関する事だとどうなるか分からないものね。……そうだわっ、kaa-sanのbloodを飲んでみるのはどうかしら? kaa-san、これでもVida -samaの化身だし、もしかしたら効果があるかもしれないわ! Veld senseiも、間違ってもDemon King Army RemnantsのEvil God (M) Evil God (P)のrevivalを企む奴にはbloodを渡すなよって言ってくれたから!」
流石『Goddess of Life and Love』の化身。そのbloodにはある意味絶大な価値があるようだ。
「それにkaa-san、Regenerative Powerには自信があるのよ。Vandalieuがお腹いっぱいになるまでbloodを飲んでも、すぐに元通りになるわ」
そしてDarciaは【Super Rapid Regeneration】skillを5levelで持っているので、blood液もすぐ治るようだ。
「……じゃあ、一度宿のroomに戻ってから」
今は声を潜めているが、流石に屋外でBloodsuckingするのは拙い気がした。そのためFood Stallを掃除した後、一旦宿に戻ってからVandalieuはDarciaのbloodをBloodsuckingする事にした。
「fangsは遠慮しないで深くまで刺すのよ。浅いと、すぐに傷口が塞がっちゃうから」
「はい、kaa-san」
Darciaの首筋に、言われた通り深くfangsで噛みつく。温かいbloodが口内に溢れて来て、Vandalieuはその味を感じた瞬間目を見張った。
濃厚で滋味豊か、それでいてすっとbody partに染み入るように抵抗なく入って来る。すると、body partの奥底から力が湧いてくる。
「んっ……こうしていると、昔Vandalieuにお乳を上げていた頃の事を思い出すわね」
普段なら羞恥でVandalieuが悶えるような事を、Darciaが囁く。しかしそれが意識に残らない程、彼の体内には力が漲っていた。
今朝目覚めてから手足に残っていた痺れが消えていく。
《【Vitality Enlargement】skillを獲得しました!》
《【Vitality Enlargement】と【Bloodwork】skillのlevelが上がりました!》
Darciaのbloodの効果はそれだけにとどまらず、何とbloodを飲んだだけでskillを獲得し、更にlevelが上がった。
一口飲んだだけでこれなのだから、Evil God (M)やEvil God (P)のsealedの一つや二つ軽く解けそうだ。Goddessの化身のblood、恐るべし。
「kaa-san、もう大丈夫です。これ以上飲むと、力が漲り過ぎてどうにかなりそうです」
fangsを引き抜いてVandalieuがそう言い終る頃には、Darciaの首筋の四つの傷は綺麗に塞がっていた。
「そう、じゃあ一休みしたらFood Stallを引いて商業guildまで行きましょうね」
「……今なら地平線の向こうまでFood Stallを引いて走れそうです。ただ、痺れは良くなったけれどManaはまだ回復していないみたいです」
「やっぱり魂の方に原因があるみたいね。でも痺れには効いたし、効果はあるのかもしれないわ。
じゃあ、これから毎日一回kaa-sanのbloodを飲みましょうね」
「……商業guildに仮登録したら、出来るだけ早く家を借りるか買うかしましょう」
最初に泊まった『Starling Inn』程ではないが、この宿も防音設備やsecurityが厳重とは言い辛い。それにbloodを吸っている途中で宿の従業員がroomを掃除に来たら面倒だ。
Vandalieuは親子のprivateを守るため、予定を早める事を決めた。
商業guildは、町の入口近くにあったAdventurer’s Guildと違い町の中心部……領主であるMoksi Earlの住まい兼政治の中枢である館の近くにあった。
平民が住む住宅街や商業区と、領主を筆頭にしたNobleや高Class官僚や成功した商人やadventurer等が住む高Class住宅街の丁度境目なので、丁度良い立地なのだろう。
そこに向かうまでの間、DarciaとFood Stallを引くVandalieuは町の人々の視線を大いに集めた。
「やっぱり、Dark Elfって目立つのかしら?」
「そうですね。見回してみても、Elfは何人か見かけましたけど、Dark Elfは一人もいませんし」
「でも私の【Chaos】skillだと肌を白くは出来ないのよね。……あ、もしかして耳を丸くすれば良かったのかしら」
accurateにいえば、町の人々が注目しているのはDarciaだった。Alcrem Duchyの交易都市の一つであるこのMoksiでも、Dark Elfは珍しい存在だ。
そのDark Elfの美人が歩いているのだから、町の人々が思わず視線を向けてしまうのも無理は無い。
「……それでもあまり変わらなかったかも」
だがDarciaが耳を丸くしてHumanのように変装しても、 Bahn Gaia continentの北部に位置し雪のように白い肌の人々が多い中、褐色の肌をした美女は、やはり注目を集めてしまうだろう。
なお、町の人々にはVandalieuはDarciaが連れているServantか何かに見えているらしく、一度視線を向けられた後は殆ど見られていなかった。やはり親子だと気がついている者は、誰もいない。
「明日から、hoodを深くかぶって顔を隠した方が良いかしら?」
「まあ、目立つ事は悪い事じゃありませんよ。Radarで俺の居場所が分かるMurakamiはともかく、Birkyneは俺達がいると言う情報を掴まないと、気がつかないでしょうし」
tactics上、Vandalieu達はある程度目立たなければならないので、注目を集めるのは悪い事ばかりでは無い。
しかし Darciaが目立つと言う事はtroubleも起こり易くなると言う事でもあった。
「よう、姉-chan。俺達と付き合わねぇか?」
「丁度仕事が終わったばかりでよ、酌でもして一緒に祝ってくれよ」
そう言いながら、Darciaの前を塞ぐようにして二人組の大男が現れた。腰にWeapon Equipmentを下げたままなので、adventurerかmercenaryだろう。
彼らはDarciaの太腿より太い腕と、金が詰まっているらしい布袋を見せつけながらニヤニヤと笑っている。
「ごめんなさい、私達は忙しいの。一緒に祝ってくれる人が欲しいなら、他を探して」
それに対してDarciaは温和そうな笑みを維持しながら、しかしきっぱりと断った。男達の正面に立ったままで。
「おいおい、つれねぇ事言うなよ」
そう言いながら男の一人がニタリと笑いながら、Darciaの腕を掴もうとする。もう一人は彼女の胸元に視線を張りつかせ、鼻の下を伸ばしている。
「そうそう、俺達はこれでもmercenary guildじゃ名の知れた――い、忙しいところ引きとめて悪かったっ。俺達はこれで失礼させてもらうぜ!」
「ど、どうした? これから良いところじゃ……」
「いいから来いってんだよ! じゃ、じゃあお邪魔しました~!」
しかし腕を掴もうとしていた男は突然それを止めると、慌ててpartnerの腕を掴んで逃げるように去っていった。
男に腕を掴まれたらboneが折れない程度に掴み返してやろうと思っていたDarciaは、目を瞬かせてその後ろ姿を見送った後、Vandalieuを振り返って首を傾げた。
「Vandalieu、今何かしたの?」
「俺はまだ何も。皆も同じですよ」
「……追いかけて、肥料?」
「Eisen、追いかけちゃいけません」
そう会話しつつも、二人も周囲で見ていた人々も何故あの二人組が逃げ出したのか分からなかった。二人は「まあ、別にどうでもいいか」と考えるのを止めて商業guildにそのまま向かい、周囲の人々はあのDark Elfの美女は元adventurerか何かで、それに気がついた男がpartnerを連れて逃げ出したのだろうと勝手にconjectureし、納得していた。
実際には、partnerを連れて逃げ出した男は【Intuition】skillを5levelで持っており、その勘の良さで戦場を生き延びてきた男だった。その【Intuition】がDarciaに手を伸ばした瞬間「こいつに手を出すとヤバイ!」とWarningを鳴らし、男はそれに従って逃げ出したのである。
美女から逃げ出すと言う情けない姿を数十人に見られたが、表通りで美女に腕を捻り上げられるか、Vandalieuに何かされるよりはずっと良い判断だった。
商業guildは一見すると役所のような外観をしていた。
「てっきりもっと派手かと思っていました」
「商業guildでは直接商売をするわけじゃないから、これで良いのよ」
『出入りするのは一般の客では無く、商人やその従業員、そして税関係の官僚ばかりですからな』
そう言いながらFood Stallを止めてguildに入ると、既に昼近い時間である事もあって、内部には殆ど人はいなかった。
この分なら仮登録も早く終わるだろう。しかし商業guildの事はAdventurer’s Guild以上に分からないため、何か起こりはしないかと不安が拭えない。
そんなVandalieuは、この日の為に頼りになるアドバイザーを準備していた。
Pure-breed Vampire Terneciaの腹心である『Five Dogs』の一人、BellmondとIslaの元同僚であるVampire……のGhost、『Distinguished Dog』のChipurasである。
Heinzによって討ち取られた彼だが、Human社会に潜入し十年もHartner Duchyの商業guildでSub Guildmasterを務めていた前歴を持っている。その経験と知識が今役立つ時だ。
『何、仮登録でtroubleが起こる事は滅多にありません。自信を持って、後ろめたいことなど何もありませんと言う態度で受付嬢に受け答えすれば大丈夫です』
Chipurasは好々爺然とした、輝くようなSmiling Faceでそう保証する。恰幅の良い体格が貫録と頼もしさを演出し、Vandalieuの不安を払しょくした。
『まぁ……あのHeinzめに真っ二つにされて殺されたせいで若干生前のMemoryに不安があるのですが』
若干不安がぶり返して来た気がする。そう思いながらVandalieuは受付嬢がいるCounterに向かった。
「すみません、仮登録をしたいのですが」
「畏まりました。ですが、書類に記入するのは事業主本人でなければならないと決まっているので……」
「はい、俺が事業主です」
「え? あちらのDark Elfのfemaleではなく、-kunが事業主? 冗談じゃなくて?」
「はい、本当に俺が事業主です」
『そう、ここは押し切るのです!』
商業guildで登録するのは事業主だけで、従業員は登録しなくても構わない。だから登録するのはVandalieuだけで、Darciaは串焼きFood Stallの従業員と言う事にする予定だった。
「……では書類に記入をお願いします」
guildの受付嬢はVandalieuが事業主であるという主張に納得しがたい-sama子だったが、未成年が商売をしてはいけないと言う法律はAlcrem Duchyには無い。
彼女には聞こえないChipurasの助言を実行するVandalieuに、仕方なくと言った-sama子で書類とペンを差し出した。
「代筆は必要ですか?」
「いえ、大丈夫です」
Vandalieuはそれにnameとage、race、それに事業の内容を記入していく。
「仮登録期間の三か月間事業を継続出来なかった場合、登録を抹消しますので気を付けてください」
「店は一日も欠かさず毎日開かないとダメでしょうか?」
「いえ、定休日はご自由に。しかし、三か月後に帳簿を提出して貰いますので、それで事業継続には無理があると判断された場合も、登録を抹消させていただきます」
具体的な審査基準は言われなかったが……生活が出来る程度稼いでいるなら構わないと言う事だろう。
書き終えた書類を受け取った受付嬢は、記入された内容を確かめながら説明を補足していく。
「Food Stallですか。Food Stallを行う場所はguildで決めますので、少々お待ちください」
「自由には決められないんですね」
「はい、昔Food Stall同士の場所とりで諍いが起きたそうで、それからこの町ではFood Stallの場所は商業guildで指定することになっています。後は……Dhampir?」
「あ、はい。この通り俺はDhampirです」
そう言いながらVandalieuは、付けたまま忘れていた眼帯代わりの布を外して、紫紺と紅のオッドアイを受付嬢に向けた。
「これは……fangsとclawsの方も見せてもらえますか?」
「はい」
驚いた-sama子の受付嬢に、fangsとclawsを見せる。
「な、なるほど。確かにDhampirですね……初めて見た」
Orbaum Elective Kingdomで今公的に存在するDhampirは『Five-colored blades』が保護していたSelen一人で、多くの人がDhampirを見るのは初めてだった。この受付嬢も例外では無い。
「Dhampirだと、何か問題がありますか?」
『その調子です』
まさかHartner DuchyのAdventurer’s Guildの時のような展開かと、思わず身構えるVandalieuとChipuras。しかし受付嬢は「いえ、そう言う訳ではありません」と首を横に振った。
「では、少々お待ちください」
そう言って受付嬢は書類を持って事務所の奥に下がっていった。Food Stallを開いていい場所を決めに行くのだろう。
「Vandalieu、大丈夫みたいね」
「そうですね」
『儂の言ったとおりでしょう』
一度乗っ取った犯罪organizationに商業guildの規則を調べさせた後だったが、不安はあった。しかし問題無く手続きが終わりそうなので、二人はほっと安堵した。
しかし中々受付嬢が戻って来ない。
「……思ったよりFood Stallが多くて、空いている場所が少ないのかしら?」
「Alda believerのFood Stall店主の隣にならないようにとか、気を使ってくれているのかもしれません」
『……嫌な予感がしてきましたぞ』
そう言いながら待っている三人の前に先程の受付嬢を後ろに連れた、恰幅の良い髭を生やした壮年の男がやって来ていった。
「ようこそ、商業guildへ。私、当guildのSub Guildmasterを務めるYosefと申します。少々お話がありますので、事業主-samaはどうぞ執務室までおいでください」
Yosefの言葉を聞いて、Vandalieuは思った。【Danger Sense: Death】に反応は無いが、この壮年の男からは嫌な予感がすると。
誰もが【Intuition】skillを持っている訳では無い。例えば、このYosefのように。