耳にthrust刺さる甲高い絶叫を上げて、最後のGoblin Barbarianが倒れた。

　そのまま敵が動かない事、新たな敵が出てこない事を確認したKasimはぽつりと呟いた。

「……勝ったな」

「ああ、勝った。俺達だけで」

「しかも四匹同時にな」

　大きく息を吐いて、胸いっぱいに息を吸い込む。そして叫んだ。

「いぃぃぃやったぞぉぉぉぉっ！」

「やったぁぁぁっ！　俺達はやったんだぁぁぁっ！」

「よっしゃっ……でもそろそろ静かにしようぜ。まだDungeonの中なんだし」

「そうだな……」

「Zeno、お前いつも落ち着いてるよな」

「scout職が落ち着いてなくてどうする」

　一転して落ち着いた三人は、速やかにGoblin Barbarianの死体からMagic Stoneが無いか探して剥ぎ取って行った。

　『Garan’s Valley』から地上に戻ったKasim達は、Magic Stoneや素材を運びながらguild Cardに似た薄い金属板を眺めていた。

「このDungeon Card、かなり便利だな」

　それはVandalieuがcultivation villageのAdventurer’s Guild出張所に在った、guild Cardに情報を入力するためのmagic itemを調べ、Talosheimに残っていたAdventurer’s Guildのguild Card用のmagic itemを改造して発行できるようにした物だ。

　Hell Copperと、Vandalieuのblood。そして発行を希望する者のbloodを使って作るそのCardは、何と所有者に条件付きだがDungeon内のTeleportationを可能にする機能がある。

「VandalieuはDungeonからDungeonにTeleportationできるようにしたかったらしいけど、今のままでも十分便利だよな」

「TeleportationできるのはCardの所有者が到達した事のある階層の入り口だけだけど、それが普通だもんな」

「普通じゃない。一流のalchemistが作った装置が置いてあるか、限られたDungeon以外では階段を全部上り下りして移動するのが、普通だ」

　Dungeonは危険なmonstersの巣だが、同時に資源の宝庫でもある。だが、その資源を利用するためにはadventurerが背負って外まで運ぶしかないのが殆どだ。itemボックスやその劣化版(それでも希少で高額だが)のmagic itemでも持っているか、Space-Attribute Magicの使い手が仲間にいるか、そのDungeonが馬車や荷車を持ちこめる構造でなければ、最大でも背負って運べる分しか持ち帰れない。

　そしてその量も、途中monstersに襲われる危険性を考えれば上限を下げなければならない。

　だがこのDungeon Cardはそれを随分楽にしてくれる。目的の階層まで一度到達すれば、次回からは途中で消費するはずのEnduranceや時間を零にして、Teleportationする事が出来る。

　更に、帰る時も階段まで辿り着ければ、地上まで一瞬で帰れる。やはり時間とEnduranceの消費も零で。

　だからやりようによっては階段の近くでmonstersを狩って、素材を十分集めたら階段に入って地上に戻り、素材を置いたらその日の内にもう一度Dungeonに潜る。そんな事も可能だ。

「やっぱりDungeonは違うな。強いmonstersがこれでもかって出てくるから、Experience Pointがどんどん稼げるし」

「そうだな。cultivation villageの周りだと、Rank２が最大だったもんな」

　だがKasim達の-samaな新米adventurerにとって重要なのは、Dungeonの存在そのものだ。通常のDevil Nestsを上回る頻度でmonstersと遭遇するDungeonは、勝てる実力があるならExperience Pointの宝庫である。

「開拓地に居た頃の俺達じゃ、『Garan’s Valley』の下層階に近付くのも難しかったけど」

　Zenoの言う通り、彼らがGoblin Barbarianの群れを大したinjureもせず倒せたのは彼等の実力が上がったというのもあるが、Vandalieuの【Strengthen Follower】skillでAbility Valuesが爆上げされたのと、装備の水準が上がった事が大きい。

　Kasim達はVandalieuの友人だから特別に高性能な装備を貰った……訳ではない。Red Wolf Knight団との戦いでWeapon EquipmentやDefense Equipmentにガタが来ていたので、Talosheimで普通に流通している武具の中でも安い初心者用装備を融通してもらっただけだ。

　……その安い初心者用装備が、彼等がoriginally装備していた安物よりもずっと高性能だっただけで。

「確かに、前の盾と鎧だったらinjureくらいしたかもな」

　Kasimが見るのは、自身が装備しているIron Turtleの盾と鎧。originally彼が装備していた型に溶けた金属を流し込んで作る、鋳造の青銅の盾と鎧と比べてDefense Powerは段違いに高く、しかも若干だが軽い。

「ああ、鋳造品で良いって言ったら、あの爺-sanに滅茶苦茶怒られた。儂は鍛造武具しか作らんって」

　Festerの剣も、Dataraが鍛え上げた一品である。一応安物であるため彼の渾身の作と評される一品に比べれば、ずっと切れ味も硬度も劣っている。

　しかし、Niarkiの町のAdventurer’s Guildで「安物だ」と言って見せたら、同世代のadventurerは金持ちの嫌味としか解釈しないだろう。

「ああ、Tarea -san達も含めて……良い人なんだけど、皆感覚がちょっとズレてるよな」

　Zenoの装備も地味にupgradeされている。普通なら中堅adventurerが愛用する水準の品を、「余り物ですけど」と渡されたのだ。

　このTalosheimは外部と隔絶されているため、外の経済や情報が入って来ない。なので、一歩町を出るとRank３……鋭いfangsとclawsを生やした凶暴なRaptorかそれ以上のmonstersがうろついている環境で生き残れる水準が、最低限だと定義される。

　結果、普通の町で流通している安物は作る意味が無いのだ。

「まあ、良い事ばっかりじゃないけどな」

「確かにな」

　そう言いながら旧Adventurer’s Guild跡、現在は完全にreformされて看板も下げられているPlace of Exchangeへと入った。

　中は本物のAdventurer’s Guildと何も変わらない。

「はい、買い取りですね？　五千Lunaに成ります」

『mayonnaiseとketchupとEnt syrupのセットと交換ですね？』

『すみません、生Creamは売り切れなんです』

　違うのは、現金以外にも物品と交換できる事だろうか。

「Cream、売り切れたのか」

「ワサビマヨ、まだ入ってないのか」

「お前等……今日は現金で買い取ってもらうって決めただろ」

　悲しげな顔をするKasimとFesterの後頭部を、そう言ってZenoが軽く小突く。

　Lunaと言う通貨が流通しているTalosheimだが、まだまだ商店の類が少ない。そのため、ここで現金よりも物品に交換する者も変わらず多かった。

　小突かれたFesterは「そうだったな」と気を取り直すと、輝くようなSmiling Faceを浮かべて列に並び、CounterのShoujoに話しかける。

「リナっ、今帰ったぜ」

「ようこそPlace of Exchangeへ。換金ですか？　交換ですか？」

「おいリナ、俺だって」

「換金ですか？　交換ですか？」

「おーい、リーナー？」

　Counterの受付嬢、第七cultivation villageのAdventurer’s Guild出張所の非正規職員だったリナは、営業スマイルでloverのFesterに対応していたが、徐々にSmiling Faceが引き攣り始める。

「リーナー？」

「だからっ、今仕事中なのっ！　injureは無い無事でよかった心配してたのよ大好き！　これで満足なら早く素材を出して換金か交換か選びなさいっ」

「は、はいっ！」

　慌てて背負って来た素材をCounterに並べるFester。KasimとZenoはその背後で仕草だけでリナに謝る。

　因みに、Festerとリナはこれが二人の平常運転だ。既にしっかり尻に敷かれているが、それぐらいがFesterには丁度良いのだろう。

「討伐証明以外はMagic Stoneばっかりね。あ、やったじゃない。Goblin Barbarianを自分達だけで倒すって目標を叶えたのね。

　はい、全部で五百Lunaよ」

「五百、かぁ……」

「ええ、別に怒っているから少なく見積もった訳じゃないんだけど……ここの相場だとね」

　リナが集計したKasim達が狩って来たmonstersの討伐報酬とMagic Stoneは、Hartner DuchyのAdventurer’s Guildなら二千Baum以上で買い取ってもらえるだろう量と質だ。

　しかし、Talosheimだと五百Luna程度に成ってしまう。

　これはUndead GiantやGhoulのExplorer(Adventurer’s Guildに登録している訳ではないが、実質同じ事をやっているので、何時の間にかこの名称が定着した)の質が高い事と、Talosheimの周囲やDungeonで出現するmonstersのRankと遭遇率が高いから。そしてVandalieuが存在するのがその理由だ。

　Rank３のmonstersが頻繁に出現し、二千人を超える大勢のExplorerが普通にそれを狩る。なので、monstersの討伐報酬は必然的に外のworldと比べて安く設定されている。

　更に、都市全体のmagic itemの動力源であるManaをVandalieuが常識はずれのManaで充填するので、Magic Stoneの需要も外のworldよりも低くなってしまう。

　cultivation villageの面々が来るまでは国民の殆どがＣClass adventurerに相当する戦闘Abilityを持っていたTalosheimだが、逆に言うとExplorerとして食っていくには、ＣClass adventurer並の戦闘力が必要に成るのだ。

「ここ、結構過酷だな」

「まあ、強くなるまでの辛抱だ。頑張ろう」

「そうだな。実際levelも上がったし」

「頼むわよ。共働きでも良いけど、養うつもりは無いからね」

　換金を済ませたKasim達は、リナと勤務時間が終わったら食事をする約束をしてPlace of Exchangeを出た。

　Food Stallで売っている物で軽食を済ませながら、Dungeonでかいた汗を流すためにPublic bathhouseに向かう。

「……さっきは過酷だって言ったけど、やっぱり俺、今から外に戻るかって聞かれたら断るな」

「俺も」

「俺も絶対断る」

　Kasimの言葉に間を置かず同意するFesterとZeno。彼らの手には、食べかけのFood Stall食がある。

　KasimはホットDog、FesterとZenoはHamburgerだ。

　一口食べれば肉汁とsauceが口の中を弾け、レタスや刻んだ玉葱の食感が歯に心地良く響き、柔らかいふかふかのbreadがそれを程よく吸って口の中に長居しない。そして飲み下せば、二口目を食べたくなる。

　これが一つ五Lunaで売っているのだ。それも、別に知る人ぞ知る名Chefが営んでいる隠れFood Stallではなく、Place of Exchangeを出入りするExplorerを客にする普通のFood Stallで。しかも作っているのは、Kasim達と同じ元cultivation villageの村人だ。

「Niarkiの町で同じくらい美味い物を食べようと思ったら、どれくらいかかるかな？」

「うーん……白breadに肉に新鮮な野菜にsauceに……十Baumくらいか？」

「前に一度、教官がOrc肉の焼肉食わせてくれた事あっただろ？　あれ、十Baumくらいらしいぞ」

「後このbread、明らかに町で売ってる白breadより柔らかいし」

「じゃあ、二十Baumくらいかな？」

　改めて手に持っている軽食を見る三人。

　ふわふわのbreadに、腸詰と言う未知の技術で作られた肉を挟んだホットDog。ミンチにした後成形して焼いただけとは思えない程肉汁豊かなハンバーグ、食感を豊かにするための玉葱とレタス、そしてketchup sauce。

　それらを合わせたCookingが、たったの五Luna。通貨が違うのでaccurateには同価値では無いのだが……Niarkiの町で、予算五Baumで買えるFood Stall食は――。

「えーっと、黒breadと干し肉のsandwich。正体不明のsauce付」

「Drying野菜と豆のsoup、運が良ければ肉のfragmentが何個か入ってる」

「混ぜ飯大盛り」

　最後にZenoが言った混ぜ飯とは、Food Stallの亭主がその日安く手に入れた食材を南部米と一緒に炒めた物だ。日によって具が肉だったり魚だったり変わるため、同じFood Stallでも当たり外れが大きい。

　売りは量と安さ。

　今手の中に在るご馳走がそれらに変わるぐらいなら、多少の変化は笑って受け入れるべきかもしれない。

「ところで、何でこれホットDogって言うんだ？」

「Hellhoundの肉を使ってるからじゃないか」

「……Hellhoundの肉って、食えたっけ？」

「いや、普通にanother worldでのnameをそのまま持って来たんじゃないか？　たい焼きとかキューバsandwichと同じで」

　そう言いつつ軽食を済ませて、Public bathhouseに入る。因みに、Giant race以外の住人も増えたのでHuman Sizeの浴槽も併設されている。時々Undead Giantが「半身浴」している時もあるが。

「入りに来たぜ、おStepfather -san」

「その呼び方はまだ早いって言ってんだろ！」

　「何でも屋」の親父だったリナの父親がFesterに怒鳴って返した。

　他の都市との交流も無く、全ての住民に住居が支給されたTalosheimでは宿屋の需要は無い。そこで、「事務官しません？」とのVandalieuの誘いを「宮仕えは性に合わねェ」と断って、このPublic bathhouseで働いているのだ。

　そして資金を貯めて、Talosheimが他の都市と交易する時までにまた商売を始めるつもりのようだ。

　入浴料を支払って、服を脱いで風呂に入る。因みに、このPublic bathhouseは男女別である。混浴の浴場は男女の出会いの場になっているので、Festerが入れないのだ。

「ふぅ……風呂っていいなぁ」

　肩まで浸かって、一言、残りの二人も「そうだな」と同意する。

　Kasim達がお湯の風呂に初めて入ったのは、Talosheimに来てからだ。Sauron領でもcultivation villageでも都合良くhot springが湧いている-samaな事は無かったし、大量のお湯を沸かせる経済力も無かった。

　Earthの現代Japanなら気軽にお湯を沸かせるが、Lambdaでは薪を集めるか高価なmagic itemを使うか、Fire-Attribute Magicでも習得しなければお湯を沸かせないのだ。

　普通に薪を使うにしても、切り倒した後Dryingさせないと木材は燃えにくい。手間と時間がかかり、風呂の為に毎日消費する事は出来ない。

　それがTalosheimだと気軽に、安く入れる。最近ではボイラーに燃料ではなくFlame Ghostが入っていたりするので、自然にも優しい。Ghost達にとってもじっとしているだけでそこそこの給料が稼げるので、人気のバイトらしい。

「それに石鹸も安いもんな。Niarkiの町で見た時は一個百Baumだったけど、ここだと三Lunaだし」

「確か、monstersのblubberから作ってるんだっけ？」

「一番安いのはな。果物から作ったのは高いが、良い匂いがするぞ。女に贈ると喜ばれる」

　ぐるぐると唸るような口調で居合わせたGhoulの男が話しかけてくる。

「あ、ボダン-san。どうも」

　どうやらボダンという名のGhoulは、Kasim達と同じExplorerで顔見知りらしい。

「……Fester、俺はバデンの方だ」

「えっ？　あっ、すんません！」

　顔見知りではあったようだが、他のGhoulと間違えたらしい。だが、仕方ないだろう。男Ghoulの顔は獅子のものなのでHumanとは作りが大きく違うので、余程見慣れないと見分けを付けにくい。

　浴場で全裸に成っているconditionでは中々見分けはつかない物だ。

「ところでバデン-san、その石鹸について詳しくっ！」

「どれくらいの値段なんですか！？」

　日々一人身の寂しさを感じているKasimとZenoが話題に食いついた事で、バデンも人違いについてはあまり気にしなかったようだ。

　最近発売された蜂蜜石鹸を贈り物にすると良いかもしれないと、贈る相手も居ないのにKasimとZenoが結論を出した頃に、バデンは風呂から上がって行った。

　バデン以外にもAnubisやBlack Goblin、Orcus、Undead Giantがこの浴場では汗を(一部かかないのもいるが)流している。

　Kasim達を含めた元cultivation villageの面々も、Talosheimに移住した当初は驚いたがすぐに慣れてしまった。【Strengthen Follower】による親近感の効果もあるが、話して見ると意外なほど話が通じるからだ。

　旧来の住民と新住民を交流させるためのeventも開かれているので、起きるtroubleも精々ケンカぐらいで激しい対立にはdevelopmentしていない。

　cultivation villageが難民の寄せ集めで村に複数のraceが暮らしていた事も、良かったのかもしれない。

　それにこの一言で大抵の奇妙な隣人に対して納得できる。

「Vandalieuに比べると皆普通だしな」

　本人はそんな言われ方をするのは不本意だろうけれど。

「でも、あいつって結構普通のchildっぽいところもあるよな」

「ああ、何考えてるか分かり易いし」

　生前のPablo Marton辺りが耳にしたら「気でも狂ったのか！？」と聞き返しそうな言葉だが、Kasim達は至って正気だった。

　Vandalieuは無表情で声も平坦だが、実は顔以外を見ると存外何を考えているか分かり易い。手足や、最近ではある程度自由に動くようになった髪も使って動揺や驚き、emotionsを表現しているからだ。

　自分でも表情と声に変化が無い事を分かっているので、顔以外の部分を使う事でemotions表現のbalanceを取っているのだろう。

　緊張している時は完全にemotions表現をしなくなるので、それはそれで分かり易い。

　それにcultivation villageに居た時から気が付いていたKasim達が、Vandalieuに普通に接するのは当然の事だろう。

　当人が聞いたら、自分のMental ageの退行具合を客観的に思い知らされて、それなりに衝撃を受けるだろうが。

　もうすぐ八ageのVandalieu。彼はEarthとOriginを含めると、四十代半ばで壮年も見えてくる年月を生きているのだ。

「それに、怖いとか『Monstrosity』とか言われると落ち込むみたいだしな。俺達くらいは怖がらない-samaにしてやろうぜ」

「Kasim、そう言うお前もこの前VandalieuとPublic bathhouseでばったり会った時、screechあげたじゃないか」

「いや、あれは……仕方ないだろ！？　お前らだってビビってたじゃないか！」

　Kasimが湯船に浸かっていると、実は先に湯船の中で(懲りずに)脳天まで浸かっていたVandalieuが音も無く真横に出てきたのだ。本人は湯の中で目を瞑っていて、息継ぎのために頭を出しただけだったらしいがあれは驚く。

　不可抗力だとKasimが主張するのも無理は無い。

「まあ、確かに仕方ないよな。俺も気が付かなかったし。【Detect Presence】skill、持ってるのに……」

　scout職としてのprideが傷付いた事を思い出し、地味にZenoが落ち込んでいる。

「何にしても、俺達は『怖い』とか言わない-samaにしようぜ」

「そうだな」

　そう言ってこのTalosheimの王兼友人との接し方を決めたのだった。

　Mercury Mirrorに反射されるSunlightも弱くなる黄昏時。

　リナとの待ち合わせの場所に向かっていた三人は、通りがかりに出来ていた人集りに興味を惹かれてそれを見てしまった。

　十数人のchild達が開けた土地に建てられた遊具で遊んでいる。

　Kasim達は見慣れていなかったが、Earthでは代表的な遊具の砂場や滑り台、ジャングルジム、鉄棒等を使ってchild達が元気に遊んでいる図は、本来なら微笑ましいものかもしれない。

　しかし、遊んでいるchild達が全員同じ顔で、一言の笑い声も漏らさず人形のような虚ろさだけを漂わせ、音も無く動き回っている光景は、とても微笑ましいとは思えない。

「「「怖い……」」」

「おや、奇遇ですね」

　思わずKasim達が呟くのと、Vandalieuが彼等に気が付くのは同時だった。

　その瞬間、countlessに居たVandalieu達が輪郭を崩し、ただ一人そのままだったBodyを持つVandalieuに集約される。

　幸い、Kasim達の呟きは聞こえなかったようだ。

「えーっと、何をしてたんだ？」

「皆の憩いの場兼child達の遊び場として公園を作ったので、設置した遊具に不具合が無いか確かめていました」

　originally Talosheimには公園等が無かったので、Vandalieuが周囲の建物を「ちょっと横に動かしますね」と移築して、作ったspaceに公園を作ったようだ。

　そして【Golem Transmutation】で材料の形を変えて設置した遊具に不具合は無いか、自分で試していたらしい。

「公園か……都会にはこういう場所があるのか？」

「さぁ？　Ninelandには在りませんでしたね。でも、こういう場所はあると便利ですし」

「そういうもんか」

　態々公園を作る理由とその価値に思い至らないKasim達もそう言うが、Vandalieuも「何となくあった方が良いだろう」と言う程度の感覚で作っているので、詳しく説明できない。

　公園には親の目が届くchildの遊び場や親同士の交流の場、-sama々なレクリエーションに使える等の-sama々な利点があるのだが。

「それで、点検は終わったのか？」

「はい」

「じゃあ、これから早めの夕飯でもどうだ？　リナと待ち合わせしてるんだ」

「食べる場所を王城にしても良いなら。今日は新しいCooking器具を使って新しいCookingに挑戦する予定なのです」

「マジかっ！？　ラッキーっ」

「それで何を作ってくれるんだ？」

「カリーとナンです」

「えっ？　カリーと何だって？」

「ナンです」

　どうやらVandalieuは、タンドリーオーブンを自作してcurryよりもカリーを先に作るつもりらしい。

「Festerとリナが結ばれる時に作ると言ったので。

　ところで、もうすぐ情報収集も一段落するのでCream遠征が本格的に始まりますけど、Kasim達はどうします？」

「あー、あれか。Lizardmanかぁ……まだちょっと地力を鍛えたいな」

　新作Cookingやもうすぐ始まる遠征戦について話ながら、和やかにリナとの待ち合わせ場所に向かう四人だった。